家畜糞尿の消臭方法
【課題】住民の住環境を阻害し、観光客の観光地への印象を悪いものにしている家畜の糞尿の悪臭を安価な地域の産業廃棄物の有機酸を使って環境にやさしい家畜糞尿の消臭方法を提供する。
【解決手段】家畜糞尿のアンモニアおよびアミン類は、揮発しやすく周辺環境の悪臭を形成するばかりでなく、このアルカリ性物質が微生物の発生生成を阻害し、悪臭を減少させない特徴を有する。そこでアンモニアおよびアミン類を地域で産出する廃棄果実、果実残渣およびその他の産業廃棄物から抽出した有機酸により中和し、アンモニアの揮発を抑え微生物生成の障害毒を削除し、結果として悪臭を減少させる方法。
【解決手段】家畜糞尿のアンモニアおよびアミン類は、揮発しやすく周辺環境の悪臭を形成するばかりでなく、このアルカリ性物質が微生物の発生生成を阻害し、悪臭を減少させない特徴を有する。そこでアンモニアおよびアミン類を地域で産出する廃棄果実、果実残渣およびその他の産業廃棄物から抽出した有機酸により中和し、アンモニアの揮発を抑え微生物生成の障害毒を削除し、結果として悪臭を減少させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、家畜の糞尿のアンモニアおよびアミン類の悪臭を地域産の廃棄果実、果実残渣およびその他の産業廃棄物から生成した有機酸により中和し、悪臭を減少させる方法に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来の家畜糞尿から発生する臭気の消臭方法において、工業的に生産されたリンゴ酸、クエン酸、酒石酸乳酸から選ばれる少なくとも一種類の酸を含有する消臭剤が知られている。（例えば、特許文献１参照）
【０００３】
家畜糞尿のアンモニアおよびアミン類は、揮発しやすく周辺環境の悪臭を形成するばかりでなく、このアルカリ性物質が微生物の発生生成を阻害し、悪臭を減少させない特徴を有する。そこでアンモニアおよびアミン類を地域で産出する廃棄果実、果実残渣およびその他の産業廃棄物から抽出した有機酸により中和し、微生物生成の障害毒を削除し、結果として悪臭を減少させる方法を明らかにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００４】
【特許文献１】特開2009‐268754 号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
しかしながら、牛、豚、ヤギ、鶏、鶉等の家畜、犬、猫その他の愛玩用の家畜の糞尿は、表１家畜糞尿の臭気成分分析表に示すように、アミン類、アンモニア、メルカプタン、硫化水素、その他臭気を発する微量成分を含んでおり、アミン類、アンモニアのアルカリ成分が糞尿をアルカリ性にし、酵母、乳酸菌の生成を阻害し臭気を減殺することなく、悪臭物質のメルカプタン、その他のアミン類を保持し続ける等問題があった。
【０００６】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、環境にやさしい家畜糞尿の消臭方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
上記課題を解決するために、本発明は次のことを提案する。
家畜糞尿に生成するアミン類、アンモニアを摘果果実の果汁の有機酸を使用して中和し、家畜糞尿から発生する悪臭を削減することを特徴とする家畜糞尿の消臭方法である。
本発明によれば、摘果果実は、病虫害果、成長不良果、きず果、日陰果、奇形果を摘果し、有機酸を潤沢に有するレモン・ミカン類、ウメ・杏類、ブドウ類の酸性果汁でアミン類、アンモニアを中和させ、その他のりんご、桃、バナナ、マンゴーなど酸性果汁の少ない果汁は酵母を加えて発酵させ、これに麹などを添加し酸度を高めるなどして中和し使用することにより家畜糞尿から発生する悪臭を抑制できる。
果実以外の農業廃棄物としては、木炭・竹炭を生成する過程で発生する木酢、竹酢の有機酸を使用して、アミン類、アンモニアの中和に使用することができる。
本発明においては、果汁を絞った残りの果皮および果肉を乾燥させ、これを家畜糞尿に混ぜることにより、アミン類、アンモニアを果皮および果肉に吸収させ、果実酵素により悪臭を削減することができる。
【０００８】
ところで、摘果果実の果汁の酸性を示す有機酸は、クエン酸、リンゴ酸、キナ酸、酒石酸などがある。また、酸度の高い果実としては、レモン、ウメ、ナツミカン、キウイフルーツ、アンズ、イチゴ、ミカン、オレンジが挙げられる。これらの中で収穫する果実の品質向上のために摘果が行われ、ほとんどが堆肥化されている。
【０００９】
これらの果実の摘果時は糖分は少なく、有機酸が優っている。この摘果時の果実の有機酸を搾汁して、家畜糞尿に添加すると糞尿が有するアミン類、アンモニアと酸・アルカリ反応を起こし、中和がなされる。
【００１０】
中和された家畜糞尿の中のカビ類が活性化し、家畜糞尿中のデンプンなどの炭化水素が分解されブドウ糖をつくり、酵母、乳酸菌もアルカリ性では活性が極端に低下し、酸性に傾くと活性が向上する。酵母の働きによりブドウ糖をさらに分解させ、酵母、乳酸菌の増殖により、更に有機酸を生成し、悪臭を減殺して行く。
【００１１】
酸性果汁の少ない果汁は酵母・麹・酢酸菌を添加し酸度を高めるなどして中和に使用する。酸性果汁の少ないブドウ、カキ、バナナ、メロン、リンゴ、ナシは糖分に優れており、この糖分からコハク酸、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、酢酸を生成させて、家畜糞尿のアミン類、アンモニアの中和を行う。
【００１２】
木酢、竹酢の有機酸を使用して、アミン類、アンモニアの中和に使用する場合、酸度が低いため大量の木酢、竹酢を必要として、家畜糞尿の乾燥処理に不都合を生ずる場合は、必要に応じて、工業製品の有機酸、無機酸を併用する。ただし、木酢、竹酢を使用することによってタール成分臭によるマスキング効果が期待できる。
【００１３】
果汁を絞った残りの果皮および果肉を乾燥させることにより、果皮および果肉の果実酵素を濃縮させ、この果実酵素で悪臭成分を不活性化させ、また果皮および果実の水分率を低下させることによって、家畜糞尿の水分を果皮・果実に吸収させて悪臭成分の飛散を防止する。
【００１４】
用語の説明をする。
果汁の有機酸とは、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、キナ酸などを指す。
家畜糞尿から発生する悪臭とは、家畜によって臭気成分が異なるが、中心はアミン類、アンモニア、メルカプタン、硫化水素、硫化メチルであり、糞尿が嫌気状態に置かれると低級脂肪酸（プロピオン酸、酪酸、ノルマル吉草酸、イソ吉草酸）が発生するので家畜糞尿の切り返しを行い、低級脂肪酸の発生を防ぐ。
木酢とは、木材を木炭にする時に、発生する乾留液で、ここでは木酢液の下部に沈んだ木タールも含む。４００種類もの成分を有し、家畜糞尿の臭気のマスキング効果が期待できる。
竹酢とは、竹から竹炭を得る時に、発生する乾留液で、ここでは竹酢液の下部に沈んだ竹タールも含む。４００種類もの成分を有し、家畜糞尿の臭気のマスキング効果が期待できる。
果実酵素は、果実毎にその成分が異なり、家畜糞尿の悪臭成分を酵素反応で急速に削減させる働きを持つが、果実酵素成分のどの成分が家畜糞尿の臭気のどの成分を分解、不活性化するかは明らかではない。
【発明の効果】
【００１５】
家畜糞尿の中で特に問題になるのは、牛舎、豚舎、鶏舎で排出される家畜糞尿の処理である。この時発生する家畜糞尿の悪臭の問題で、畜舎周辺の住民や観光客に不快な思いをさせ、生活環境を著しく悪化させている。
【００１６】
悪臭といわれるモノの特徴は、悪臭成分の分子量が小さく、揮発性の高いものが問題となる。特に無風状態の時には、臭気の拡散が抑えられ、臭気の広がった範囲の臭気濃度が高くなり、悪臭の問題が具体化される。
【００１７】
家畜糞尿の中で、最も多いアミン類、アンモニアを果実から得られる有機酸により酸性にすることにより、アンモニア・イオンとして安定させ揮発性を抑え、あわせて悪臭分解を進める酵母、乳酸菌、放線菌を増やすことができる。安定した家畜糞尿堆肥として臭いの発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【００１８】
【図１】果実有機酸の散布方法フローを示す。
【発明を実施するための形態】
【００１９】
図１に示すように、この発明の実施形態は、地域一帯の家畜飼育農家と市役所等の行政機関と臭気削減会社と果実栽培農家が一つになって推し進める必要がある。というのは臭気の広がりは約２０ｋｍ四方に及び、個別の家畜飼育農家だけでは、本質的対応ができないからである。
【００２０】
また、その地方の住民のための住環境、観光のための自然環境を著しく悪化させる問題であるだけに、行政機関としての市役所等も無関係でいることはできない。
また臭気削減会社として、さまざまな消臭対策を実施しているが、消臭剤が高価で対策に大きな予算を計上しなければならず、家畜飼育農家も市役所などの行政機関と臭気削減会社も運用が困難なのが実情である。
【００２１】
そこで果実栽培農家の廃棄物を有効に活用して、安価な有機酸を家畜飼育農家に供給し、家畜糞尿の悪臭を削減し、あわせて家畜飼育農家で発生して処理に苦労している家畜堆肥を果実栽培農家に供給するサイクルを作ることにより、お互いが経済的で有効な環境サイクルを形成できる。
【００２２】
この提案で困ることは、家畜飼育農家の果実有機酸の供給と果実栽培農家の摘果果実から有機酸を搾汁することである。そこで臭気削減会社が摘果果実から有機酸を搾汁して、家畜飼育農家の指定された場所まで有機酸を配達し、合わせて臭気の測定をし、市役所などの行政機関と家畜飼育農家に報告し、住民および観光客への悪臭対策を明らかにすることができる。
【実施例】
【００２３】
表１に示すように家畜糞尿の臭気成分はアミン類、アンモニアからなり、家畜糞尿の臭気が気になるには家の窓を開け放つ5月から10月である。摘果時期を果実毎に見てみると、ウメ、スモモ、桃、リンゴが5月、ブドウ、イチジクが6月、カキ、ミカンが7月、イチゴが11月と臭気対策に適したように摘果が行われる。
【表１】
【００２４】
この摘果時期に臭気削減会社が搾汁機を果実栽培農家に搬入して搾汁を行う。搾汁は表２に示すように、ミカン、ウメ、ブドウの摘果果実搾汁によって消臭が可能となる。搾汁がなされた果皮および果実は果実栽培農家の空き地で乾燥しても良い、乾燥された果実果皮は家畜糞尿の消臭に有効であることを表３に示している。また搾汁後の果皮は家畜飼育農家から仕入れた堆肥に混ぜて分解しても良い。
【表２】
【表３】
【００２５】
果実有機酸をタンクに入れて臭気削減会社にて保管、家畜飼育農家の依頼を受けて、家畜飼育農家の指定のタンクに臭気削減会社が配送、家畜飼育農家が家畜糞尿を乾燥させる時に果実有機酸を散布する。
【００２６】
果実栽培農家および家畜飼育農家の負荷が過重にならぬよう臭気削減会社が補完を行い、地域の経済的な運用を補完する。
【産業上の利用可能性】
【００２７】
この産業廃棄物の有機酸による家畜糞尿の消臭方法が運用されるようになると、農業と畜産と工業・商業従事者の存在する中間的な都市においては、各家庭で発生する生ゴミをこの家畜堆肥の中で分解し、家畜堆肥以上に肥料効率の良い堆肥が、臭気も少なく処理費も少なく運用して行けるようになる。
このことによって生ゴミ処理費用は焼却がなくなり大幅に削減されるばかりでなく、生ゴミを焼却により処理する大型の焼却炉も不要になる。
そればかりでなく「家畜堆肥＋生ゴミ堆肥」は各農家および市民園芸家から喜んで使ってもらえるようになり、一層のエコサイクルが促進される。
【符号の説明】
【００２８】
１ 家畜飼育農家から臭気対策依頼
２ 臭気削減会社による臭気測定
３ 臭気削減会社による臭気削減案作成
４ 臭気削減会社による市役所等への臭気削減案の相談
５ 市役所等による補助金算定
６ 市役所等から家畜飼育農家および臭気削減会社への臭気削減指示
７ 臭気削減会社から実施計画家畜飼育農家に報告、家畜飼育農家による実施計画承認
８ 臭気削減会社から果実栽培農家へ摘果果汁発注
９ 臭気削減会社または果実栽培農家にて廃棄果実集荷
１０ 臭気削減会社または果実栽培農家にて果実搾汁実施
１１ 臭気削減会社にて搾汁成分調整
１２ 臭気削減会社にて果実有機酸を家畜飼育農家に配送
１３ 臭気削減会社と家畜飼育農家にて有機酸授受
１４ 家畜飼育農家にて有機酸散布
１５ 臭気削減会社にて臭気測定
１６ 臭気削減会社にて家畜飼育農家および市役所等へ臭気測定結果報告・指導
【技術分野】
【０００１】
本発明は、家畜の糞尿のアンモニアおよびアミン類の悪臭を地域産の廃棄果実、果実残渣およびその他の産業廃棄物から生成した有機酸により中和し、悪臭を減少させる方法に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来の家畜糞尿から発生する臭気の消臭方法において、工業的に生産されたリンゴ酸、クエン酸、酒石酸乳酸から選ばれる少なくとも一種類の酸を含有する消臭剤が知られている。（例えば、特許文献１参照）
【０００３】
家畜糞尿のアンモニアおよびアミン類は、揮発しやすく周辺環境の悪臭を形成するばかりでなく、このアルカリ性物質が微生物の発生生成を阻害し、悪臭を減少させない特徴を有する。そこでアンモニアおよびアミン類を地域で産出する廃棄果実、果実残渣およびその他の産業廃棄物から抽出した有機酸により中和し、微生物生成の障害毒を削除し、結果として悪臭を減少させる方法を明らかにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００４】
【特許文献１】特開2009‐268754 号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
しかしながら、牛、豚、ヤギ、鶏、鶉等の家畜、犬、猫その他の愛玩用の家畜の糞尿は、表１家畜糞尿の臭気成分分析表に示すように、アミン類、アンモニア、メルカプタン、硫化水素、その他臭気を発する微量成分を含んでおり、アミン類、アンモニアのアルカリ成分が糞尿をアルカリ性にし、酵母、乳酸菌の生成を阻害し臭気を減殺することなく、悪臭物質のメルカプタン、その他のアミン類を保持し続ける等問題があった。
【０００６】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、環境にやさしい家畜糞尿の消臭方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
上記課題を解決するために、本発明は次のことを提案する。
家畜糞尿に生成するアミン類、アンモニアを摘果果実の果汁の有機酸を使用して中和し、家畜糞尿から発生する悪臭を削減することを特徴とする家畜糞尿の消臭方法である。
本発明によれば、摘果果実は、病虫害果、成長不良果、きず果、日陰果、奇形果を摘果し、有機酸を潤沢に有するレモン・ミカン類、ウメ・杏類、ブドウ類の酸性果汁でアミン類、アンモニアを中和させ、その他のりんご、桃、バナナ、マンゴーなど酸性果汁の少ない果汁は酵母を加えて発酵させ、これに麹などを添加し酸度を高めるなどして中和し使用することにより家畜糞尿から発生する悪臭を抑制できる。
果実以外の農業廃棄物としては、木炭・竹炭を生成する過程で発生する木酢、竹酢の有機酸を使用して、アミン類、アンモニアの中和に使用することができる。
本発明においては、果汁を絞った残りの果皮および果肉を乾燥させ、これを家畜糞尿に混ぜることにより、アミン類、アンモニアを果皮および果肉に吸収させ、果実酵素により悪臭を削減することができる。
【０００８】
ところで、摘果果実の果汁の酸性を示す有機酸は、クエン酸、リンゴ酸、キナ酸、酒石酸などがある。また、酸度の高い果実としては、レモン、ウメ、ナツミカン、キウイフルーツ、アンズ、イチゴ、ミカン、オレンジが挙げられる。これらの中で収穫する果実の品質向上のために摘果が行われ、ほとんどが堆肥化されている。
【０００９】
これらの果実の摘果時は糖分は少なく、有機酸が優っている。この摘果時の果実の有機酸を搾汁して、家畜糞尿に添加すると糞尿が有するアミン類、アンモニアと酸・アルカリ反応を起こし、中和がなされる。
【００１０】
中和された家畜糞尿の中のカビ類が活性化し、家畜糞尿中のデンプンなどの炭化水素が分解されブドウ糖をつくり、酵母、乳酸菌もアルカリ性では活性が極端に低下し、酸性に傾くと活性が向上する。酵母の働きによりブドウ糖をさらに分解させ、酵母、乳酸菌の増殖により、更に有機酸を生成し、悪臭を減殺して行く。
【００１１】
酸性果汁の少ない果汁は酵母・麹・酢酸菌を添加し酸度を高めるなどして中和に使用する。酸性果汁の少ないブドウ、カキ、バナナ、メロン、リンゴ、ナシは糖分に優れており、この糖分からコハク酸、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、酢酸を生成させて、家畜糞尿のアミン類、アンモニアの中和を行う。
【００１２】
木酢、竹酢の有機酸を使用して、アミン類、アンモニアの中和に使用する場合、酸度が低いため大量の木酢、竹酢を必要として、家畜糞尿の乾燥処理に不都合を生ずる場合は、必要に応じて、工業製品の有機酸、無機酸を併用する。ただし、木酢、竹酢を使用することによってタール成分臭によるマスキング効果が期待できる。
【００１３】
果汁を絞った残りの果皮および果肉を乾燥させることにより、果皮および果肉の果実酵素を濃縮させ、この果実酵素で悪臭成分を不活性化させ、また果皮および果実の水分率を低下させることによって、家畜糞尿の水分を果皮・果実に吸収させて悪臭成分の飛散を防止する。
【００１４】
用語の説明をする。
果汁の有機酸とは、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、キナ酸などを指す。
家畜糞尿から発生する悪臭とは、家畜によって臭気成分が異なるが、中心はアミン類、アンモニア、メルカプタン、硫化水素、硫化メチルであり、糞尿が嫌気状態に置かれると低級脂肪酸（プロピオン酸、酪酸、ノルマル吉草酸、イソ吉草酸）が発生するので家畜糞尿の切り返しを行い、低級脂肪酸の発生を防ぐ。
木酢とは、木材を木炭にする時に、発生する乾留液で、ここでは木酢液の下部に沈んだ木タールも含む。４００種類もの成分を有し、家畜糞尿の臭気のマスキング効果が期待できる。
竹酢とは、竹から竹炭を得る時に、発生する乾留液で、ここでは竹酢液の下部に沈んだ竹タールも含む。４００種類もの成分を有し、家畜糞尿の臭気のマスキング効果が期待できる。
果実酵素は、果実毎にその成分が異なり、家畜糞尿の悪臭成分を酵素反応で急速に削減させる働きを持つが、果実酵素成分のどの成分が家畜糞尿の臭気のどの成分を分解、不活性化するかは明らかではない。
【発明の効果】
【００１５】
家畜糞尿の中で特に問題になるのは、牛舎、豚舎、鶏舎で排出される家畜糞尿の処理である。この時発生する家畜糞尿の悪臭の問題で、畜舎周辺の住民や観光客に不快な思いをさせ、生活環境を著しく悪化させている。
【００１６】
悪臭といわれるモノの特徴は、悪臭成分の分子量が小さく、揮発性の高いものが問題となる。特に無風状態の時には、臭気の拡散が抑えられ、臭気の広がった範囲の臭気濃度が高くなり、悪臭の問題が具体化される。
【００１７】
家畜糞尿の中で、最も多いアミン類、アンモニアを果実から得られる有機酸により酸性にすることにより、アンモニア・イオンとして安定させ揮発性を抑え、あわせて悪臭分解を進める酵母、乳酸菌、放線菌を増やすことができる。安定した家畜糞尿堆肥として臭いの発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【００１８】
【図１】果実有機酸の散布方法フローを示す。
【発明を実施するための形態】
【００１９】
図１に示すように、この発明の実施形態は、地域一帯の家畜飼育農家と市役所等の行政機関と臭気削減会社と果実栽培農家が一つになって推し進める必要がある。というのは臭気の広がりは約２０ｋｍ四方に及び、個別の家畜飼育農家だけでは、本質的対応ができないからである。
【００２０】
また、その地方の住民のための住環境、観光のための自然環境を著しく悪化させる問題であるだけに、行政機関としての市役所等も無関係でいることはできない。
また臭気削減会社として、さまざまな消臭対策を実施しているが、消臭剤が高価で対策に大きな予算を計上しなければならず、家畜飼育農家も市役所などの行政機関と臭気削減会社も運用が困難なのが実情である。
【００２１】
そこで果実栽培農家の廃棄物を有効に活用して、安価な有機酸を家畜飼育農家に供給し、家畜糞尿の悪臭を削減し、あわせて家畜飼育農家で発生して処理に苦労している家畜堆肥を果実栽培農家に供給するサイクルを作ることにより、お互いが経済的で有効な環境サイクルを形成できる。
【００２２】
この提案で困ることは、家畜飼育農家の果実有機酸の供給と果実栽培農家の摘果果実から有機酸を搾汁することである。そこで臭気削減会社が摘果果実から有機酸を搾汁して、家畜飼育農家の指定された場所まで有機酸を配達し、合わせて臭気の測定をし、市役所などの行政機関と家畜飼育農家に報告し、住民および観光客への悪臭対策を明らかにすることができる。
【実施例】
【００２３】
表１に示すように家畜糞尿の臭気成分はアミン類、アンモニアからなり、家畜糞尿の臭気が気になるには家の窓を開け放つ5月から10月である。摘果時期を果実毎に見てみると、ウメ、スモモ、桃、リンゴが5月、ブドウ、イチジクが6月、カキ、ミカンが7月、イチゴが11月と臭気対策に適したように摘果が行われる。
【表１】
【００２４】
この摘果時期に臭気削減会社が搾汁機を果実栽培農家に搬入して搾汁を行う。搾汁は表２に示すように、ミカン、ウメ、ブドウの摘果果実搾汁によって消臭が可能となる。搾汁がなされた果皮および果実は果実栽培農家の空き地で乾燥しても良い、乾燥された果実果皮は家畜糞尿の消臭に有効であることを表３に示している。また搾汁後の果皮は家畜飼育農家から仕入れた堆肥に混ぜて分解しても良い。
【表２】
【表３】
【００２５】
果実有機酸をタンクに入れて臭気削減会社にて保管、家畜飼育農家の依頼を受けて、家畜飼育農家の指定のタンクに臭気削減会社が配送、家畜飼育農家が家畜糞尿を乾燥させる時に果実有機酸を散布する。
【００２６】
果実栽培農家および家畜飼育農家の負荷が過重にならぬよう臭気削減会社が補完を行い、地域の経済的な運用を補完する。
【産業上の利用可能性】
【００２７】
この産業廃棄物の有機酸による家畜糞尿の消臭方法が運用されるようになると、農業と畜産と工業・商業従事者の存在する中間的な都市においては、各家庭で発生する生ゴミをこの家畜堆肥の中で分解し、家畜堆肥以上に肥料効率の良い堆肥が、臭気も少なく処理費も少なく運用して行けるようになる。
このことによって生ゴミ処理費用は焼却がなくなり大幅に削減されるばかりでなく、生ゴミを焼却により処理する大型の焼却炉も不要になる。
そればかりでなく「家畜堆肥＋生ゴミ堆肥」は各農家および市民園芸家から喜んで使ってもらえるようになり、一層のエコサイクルが促進される。
【符号の説明】
【００２８】
１ 家畜飼育農家から臭気対策依頼
２ 臭気削減会社による臭気測定
３ 臭気削減会社による臭気削減案作成
４ 臭気削減会社による市役所等への臭気削減案の相談
５ 市役所等による補助金算定
６ 市役所等から家畜飼育農家および臭気削減会社への臭気削減指示
７ 臭気削減会社から実施計画家畜飼育農家に報告、家畜飼育農家による実施計画承認
８ 臭気削減会社から果実栽培農家へ摘果果汁発注
９ 臭気削減会社または果実栽培農家にて廃棄果実集荷
１０ 臭気削減会社または果実栽培農家にて果実搾汁実施
１１ 臭気削減会社にて搾汁成分調整
１２ 臭気削減会社にて果実有機酸を家畜飼育農家に配送
１３ 臭気削減会社と家畜飼育農家にて有機酸授受
１４ 家畜飼育農家にて有機酸散布
１５ 臭気削減会社にて臭気測定
１６ 臭気削減会社にて家畜飼育農家および市役所等へ臭気測定結果報告・指導
【特許請求の範囲】
【請求項１】
家畜糞尿に生成するアミン類、アンモニアを摘果果実の果汁の有機酸を使用して中和し、家畜糞尿から発生する悪臭を削減する方法
【請求項２】
請求項１の摘果果実は、病虫害果、成長不良果、きず果、日陰果、奇形果を摘果し、有機酸を潤沢に有するレモン・ミカン類、ウメ・杏類、ブドウ類の酸性果汁でアミン類、アンモニアを中和させ、その他のりんご、桃、バナナ、マンゴーなど酸性果汁の少ない果汁は酵母を加えて発酵させ、これに麹などを添加し酸度を高めるなどして中和に使用し、家畜糞尿から発生する悪臭を削減する方法。
【請求項３】
請求項１の果実以外の農業廃棄物としては、木炭・竹炭を生成する過程で発生する木酢、竹酢の有機酸を使用して、アミン類、アンモニアの中和に使用し、家畜糞尿から発生する悪臭を削減する方法。
【請求項４】
請求項２の果汁を絞った残りの果皮および果肉を乾燥させ、これを家畜糞尿に混ぜることにより、アミン類、アンモニアを果皮および果肉に吸収させ、果実酵素により悪臭を削減する方法。
【請求項１】
家畜糞尿に生成するアミン類、アンモニアを摘果果実の果汁の有機酸を使用して中和し、家畜糞尿から発生する悪臭を削減する方法
【請求項２】
請求項１の摘果果実は、病虫害果、成長不良果、きず果、日陰果、奇形果を摘果し、有機酸を潤沢に有するレモン・ミカン類、ウメ・杏類、ブドウ類の酸性果汁でアミン類、アンモニアを中和させ、その他のりんご、桃、バナナ、マンゴーなど酸性果汁の少ない果汁は酵母を加えて発酵させ、これに麹などを添加し酸度を高めるなどして中和に使用し、家畜糞尿から発生する悪臭を削減する方法。
【請求項３】
請求項１の果実以外の農業廃棄物としては、木炭・竹炭を生成する過程で発生する木酢、竹酢の有機酸を使用して、アミン類、アンモニアの中和に使用し、家畜糞尿から発生する悪臭を削減する方法。
【請求項４】
請求項２の果汁を絞った残りの果皮および果肉を乾燥させ、これを家畜糞尿に混ぜることにより、アミン類、アンモニアを果皮および果肉に吸収させ、果実酵素により悪臭を削減する方法。
【図１】
【公開番号】特開２０１２−１０１２０７（Ｐ２０１２−１０１２０７Ａ）
【公開日】平成２４年５月３１日（２０１２．５．３１）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１０−２５４４０６（Ｐ２０１０−２５４４０６）
【出願日】平成２２年１１月１５日（２０１０．１１．１５）
【出願人】（５１０３０２００９）有限会社 アユチ (1)
【出願人】（５１０３０２０１０）
【出願人】（７１００００７５６）
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２４年５月３１日（２０１２．５．３１）
【国際特許分類】
【出願日】平成２２年１１月１５日（２０１０．１１．１５）
【出願人】（５１０３０２００９）有限会社 アユチ (1)
【出願人】（５１０３０２０１０）
【出願人】（７１００００７５６）
【Ｆターム（参考）】
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