説明

容器搬送装置

【課題】回転部分のブッシュの摩耗を抑え、メンテナンスの手間とコストを抑える。
【解決手段】グリッパ20を開閉するためにカム15や開度増大装置17のカム部201、スプリング80から押圧力や引張力が作用すると、その押圧力や引張力によるモーメントは、シャフト部材90を介してスライドブッシュ60に主に作用し、シャフト部材91にはほとんど作用しない。また、スライドブッシュ60もグリッパ20の中心線上に配置されているため、偏荷重が作用しにくい。さらに、スライドブッシュ60は、容器100を保持するグリッパ20の外周側端部20aから最も離れた、内周側端部20bに位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PETボトル等の容器に飲料等を充填する飲料充填装置等に用いられる容器搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のPETボトル等の容器搬送装置として、回転自在な回転体の外周に複数のグリッパを取り付け、このグリッパで容器を把持して回転搬送するものが知られている。
【0003】
図9に示すように、このようなグリッパ301は、グリッパ301側に設けられたカムローラ302が、容器搬送装置の固定部側に設けられたカムプレートに接触することによって、開閉動作が行われるようになっている。すなわち、回転体に取り付けられたグリッパ301が回転体とともに回転しているとき、カムローラ302がカムプレートに接触すると、カムプレートの外周形状にならってカムローラ302が回転体の内外方向に変位し、これによってグリッパ301が開き、カムローラ302がカムプレートから離脱すると、スプリング等の付勢力によってグリッパ301が閉じるようになっている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
ここで、グリッパ301は、複数枚のリンクプレート306を、シャフト307で回動自在に連結することによって、このシャフト307を中心として回動して開閉自在となっている。シャフト307による連結部においては、リンクプレート306に形成された孔と、シャフト307との間に、樹脂等によって形成された筒状のブッシュ308が装着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−315715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記したようなグリッパ301においては、以下に示すような問題が存在する。
飲料充填機等に用いられる容器搬送装置は高速で連続運転されるため、グリッパ301は多数回の開閉動作を繰り返す。すると、ブッシュ308が摩耗し、その摩耗粉が発生する可能性がある。
このような摩耗粉が容器内に混入するのは品質的に好ましくない。このため、ブッシュ308は、グリッパ301の外周側端部301aで保持する容器からなるべく離れた位置に配置するのが好ましい。ところが、グリッパ301は、回転体から外周側に向けて張り出して(オーバーハングして)設けられているため、シャフト307には、回転体から外周側に張り出したグリッパ301の外周側端部301aが下方に下がる方向のモーメントが作用する。シャフト307を、グリッパ301の内周側端部301b側に配置すればするほど、このモーメントは大きくなる。
そこで、特許文献1に記載された構成では、シャフト307は、グリッパ301の外周側端部301a、内周側端部301bの中間付近に配置されているが、これによりブッシュ308が容器に近くなり、摩耗粉の容器内への混入の可能性が高まってしまっている。
したがって、摩耗粉の容器内への混入を確実に防ぐため、ブッシュ308の点検・交換を適切なタイミングで行わなければならず、これには手間とコストがかかっている。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、部分のブッシュの摩耗を抑え、メンテナンスの手間とコストを抑えることのできる容器搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的のもとになされた本発明の容器搬送装置は、円板状の回転体と、回転体を水平面内で回転可能に支持する回転軸と、回転体の外周部に周方向に間隔を隔てて複数設けられ、容器を保持可能なグリッパと、回転軸に固定され、グリッパを開閉させるカムと、を備えている。そして、グリッパは、回転体に固定的に設けられた第一の支持軸と、一対の第一のアーム部材が第一の支持軸に回動自在に設けられることで開閉可能とされ、第一のアーム部材の一端部に容器を保持する保持部を有したグリッパアーム部と、第一の支持軸に対し回転体の内周側に設けられ、回転体の内周側と外周側を結ぶ放射方向に長手方向を有した長穴と、長穴内に収容され、長手方向にスライド自在とされたスライドブッシュと、スライドブッシュに支持された第二の支持軸と、一対の第二のアーム部材の一端が第二の支持軸に回動自在に設けられ、他端が第一のアーム部材の他端部に回動自在に連結された駆動アーム部と、第二の支持軸に設けられ、カムの外周面に対向するローラ部材と、を備えることを特徴とする。
このような構成においては、長穴が第一の支持軸に対し回転体の内側に設けられ、この長穴に沿ってスライド自在なスライドブッシュに第二の支持軸、ローラ部材が設けられている。したがって、第二の支持軸は、グリッパにおいて、回転体の最も内周側に位置するよう設けることができる。その結果、スライドブッシュを、グリッパにおいて、回転体の外周側に位置する容器保持部から最も遠い位置に配置することができる。
【0008】
このようなグリッパにおいて、第二の支持軸は、グリッパの幅方向中心に配置するのが好ましい。
【0009】
また、長穴の内周面に、長穴の周方向に連続する突条または溝が形成されるとともに、スライドブッシュの外周面が、突条または溝に噛み合う断面形状を有した構成とすることもできる。これにより、スライドブッシュのスライドを確実にガイドすることができる。
ここで、突条または溝はいかなる形状としても良いが、第二の支持軸の軸線方向に対して傾斜した傾斜面を有し、当該傾斜面にスライドブッシュが噛み合うようにすることもできる。このようにすると、グリッパの開閉のためにローラ部材を押圧したりしたときに、スライドブッシュに作用する力を傾斜面を介して長穴側に確実に伝達できる。
【0010】
スライドブッシュは、いかなる構成としてもよいが、上下二分割構造とされ、長穴の上方から組み付ける第一のブッシュ部材と、長穴の下方から組み付ける第二のブッシュ部材とを組み合わせることで形成することもできる。
【0011】
このとき、突条または溝の表面の摩擦抵抗が、スライドブッシュを挟んで一方の側と他方の側とで互いに異なるようにすれば、長穴に沿ってスライドブッシュが進退すると、一方の側と他方の側の摩擦の差により、スライドブッシュが回転する。これにより、スライドブッシュの周方向の全体が均等に摩耗し、特定部位のみが摩耗するのを抑制することができる。
【0012】
このようにスライドブッシュが回転する場合において、スライドブッシュが第二の支持軸周りに一方向のみに回転し、反対方向への回転を阻止する回転方向規制部材を備えるのが好ましい。
【0013】
ところで、この回転体のグリッパとの間で容器を受け渡す他の装置との動作に位相差が生じると、グリッパで容器を確実に保持出来なくなる可能性がある。そこで、位相差等が生じた場合に、カムによるグリッパの最大開度よりも大きな開度でグリッパを開くグリッパ開度増大機構をさらに備えるのが好ましい。
このとき、第二の支持部材に第二のローラ部材を設け、グリッパ開度増大機構は、第二のローラ部材に対し、回転体の径方向に進退する押圧部材を備える構成とすることもできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、長穴が第一の支持軸に対し回転体の内側に設けられ、この長穴に沿ってスライド自在なスライドブッシュに第二の支持軸、ローラ部材が設けられている。したがって、第二の支持軸は、グリッパにおいて、回転体の最も内周側に位置するよう設けることができる。その結果、スライドブッシュを、グリッパにおいて、回転体の外周側に位置する容器保持部から最も遠い位置に配置することができる。
また、グリッパを開閉するためにカムや第二の支持軸に押圧力や引張力が作用すると、その押圧力や引張力によるモーメントは、第二の支持軸を介してスライドブッシュに主に作用し、グリッパの他の部分にはほとんど作用しない。したがって、スライドブッシュ以外の各部の摩耗等を抑えることができる。
このようにして、回転部分のブッシュの摩耗を抑え、メンテナンスの手間とコストを抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施の形態における飲料充填装置の全体レイアウトの一例を示す図である。
【図2】容器搬送装置の平面図である。
【図3】容器搬送装置の立面図である。
【図4】グリッパの側面図である。
【図5】グリッパの平面図及び側断面図である。
【図6】グリッパの開閉動作を示す平面図である。
【図7】グリッパ開度増大機構を示す立面図である。
【図8】グリッパの他の例を示す図である。
【図9】従来のグリッパの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1に示すように、PETボトル飲料充填装置は、空の容器(図示無し)を洗浄するリンサー1、リンサー1で洗浄された容器に飲料を充填するフィラー2、飲料が充填された容器にキャップを取り付けるキャッパ3を主に備えている。
リンサー1に対しては、図示しない搬入コンベアから、リンサー搬入ホイール5iを介して容器が供給される。そして、リンサー1で洗浄された容器は、リンサー搬出ホイール5oにより搬出され、中継ホイール6を経て、フィラー搬入ホイール7iを介してフィラー2に供給される。フィラー2で飲料が充填された容器は、フィラー搬出・キャッパ搬入ホイール7oにより搬出されてキャッパ3に供給され、キャップが装着された容器は、キャッパ搬出ホイール9oを経て、図示しない搬出コンベアへと搬出されるようになっている。
【0017】
リンサー1、フィラー2、キャッパ3は、それぞれ、回転しながら、リンサー搬入ホイール5i、フィラー搬入ホイール7iで搬送される容器を1本ずつ受け取り、回転搬送中に、空の容器の洗浄、容器中への飲料の充填、容器へのキャップの取付を行う。
【0018】
また、リンサー搬入ホイール5i、リンサー搬出ホイール5o、フィラー搬入ホイール7i、フィラー搬出・キャッパ搬入ホイール7o、キャッパ搬出ホイール9oは、それぞれ回転しながら、リンサー1、フィラー2、中継ホイール6、キャッパ3に対する容器の受渡し、受け取りを行うようになっている。
ここで、リンサー搬入ホイール5i、リンサー搬出ホイール5o、フィラー搬入ホイール7i、フィラー搬出・キャッパ搬入ホイール7o、キャッパ搬出ホイール9oの構成について説明する。リンサー搬入ホイール5i、リンサー搬出ホイール5o、中継ホイール6、フィラー搬入ホイール7i、フィラー搬出・キャッパ搬入ホイール7o、キャッパ搬出ホイール9oは、基本的に共通する構成を有しているので、ここで、フィラー搬入ホイール7iを一例に挙げて説明を行う。もちろん、リンサー搬入ホイール5i、リンサー搬出ホイール5o、中継ホイール6、フィラー搬入ホイール7i、フィラー搬出・キャッパ搬入ホイール7o、キャッパ搬出ホイール9o等にも同様の構成が適用できる。
【0019】
図2,図3に示すように、本実施の形態において、フィラー搬入ホイール7iは、中空部を有する円筒状の固定軸10と、この固定軸10に回転可能に支持される回転体11とを備えている。
そして、回転体11は、固定軸10の中空部に挿入される回転軸12と、この回転軸12の上部側面に取り付けられた回転円板13とを備えている。この回転円板13の外周に周方向に等間隔に、容器100を把持する複数のグリッパ20が設けられている。
【0020】
図4、図5に示すように、各グリッパ20は、回転体11の回転円板13の外周部に固定されたブラケットプレート30と、ブラケットプレート30に取り付けられた基部側リンクプレート(第二のアーム部材、駆動アーム部)40A、40Bおよび先端部側リンクプレート(第一のアーム部材、グリッパアーム部)50A、50Bと、スライドブッシュ60と、ガイドローラ(ローラ部材)71およびガイドローラ(第二のローラ部材)72と、スプリング80と、を備えている。
【0021】
ブラケットプレート30は、回転円板13の外周部の下面に、内周側端部30aがボルト25、25により固定され、外周側端部30bが回転円板13から外周側にオーバーハングして設けられている。
ブラケットプレート30の外周側端部30bには、貫通孔31が形成されている。
また、ブラケットプレート30においては、内周側端部30aと外周側端部30bの中間部に、回転円板13の放射方向(内周側端部30aと外周側端部30bとを結ぶ方向)に一定長を有する長穴32が形成されている。この長穴32の内周面は、その上下方向中間部に周方向に連続する突条32aが形成されて、その上下に傾斜面32b、32cが形成されている。
【0022】
基部側リンクプレート40A、40Bは、一定長を有した長円形状で、それぞれ、その両端部に貫通孔41、42が形成されている。これら基部側リンクプレート40A、40Bは、上下に重ねた状態で、ブラケットプレート30の下側に配置されている。
【0023】
先端部側リンクプレート50A,50Bは、その一端部50cと中間部50dとに、貫通孔51、52が形成されている。また、先端部側リンクプレート50A,50Bの他端部50eには、容器100の首部の外径に合致する曲率を有した円弧状部53が形成されている。ここで、先端部側リンクプレート50A,50Bは、貫通孔51が形成された一端部50cから貫通孔52が形成された中間部50dまでの部分が、ブラケットプレート30の下側に配置され、円弧状部53が形成された他端部50eは、ブラケットプレート30から外周側に突出するよう設けられている。また、先端部側リンクプレート50A、50Bは、中間部50dにおいて屈曲しており、貫通孔51と貫通孔52の中心どうしを結ぶ方向に対し、他端部50eが傾斜した方向に延びるよう形成されている。
【0024】
スライドブッシュ60は、ブラケットプレート30の板厚と同等の厚さを有した円板状で、その外周部には、長穴32の突条32aに噛み合う断面形状の溝62が形成されている。
【0025】
このスライドブッシュ60は、厚さ方向に上下二分割構造とされ、下部ブッシュ部材(第二のブッシュ部材)63と、上部ブッシュ部材(第一のブッシュ部材)64とからなる。
下部ブッシュ部材63は、その外周部に、溝62の下半部を形成する傾斜面65が形成されている。この傾斜面65は、長穴32の突条32aを形成する傾斜面32cに平行に形成されている。また、下部ブッシュ部材63の中央部には貫通孔63aが形成され、その外周側の上面には、上方に突出する断面円形の凸部66が形成されている。
【0026】
上部ブッシュ部材64は、その外周部に、溝62の上半部を形成する傾斜面67が形成されている。この傾斜面67は、長穴32の突条32aを形成する傾斜面32bに平行に形成されている。また、上部ブッシュ部材64の中央部には貫通孔64aが形成され、その外周側の下面には、凸部66に噛み合う断面円形の凹部68が形成されている。
【0027】
これら下部ブッシュ部材63と上部ブッシュ部材64は、ブラケットプレート30の長穴32の上下から、凸部66と凹部68を嵌め合わせることで、スライドブッシュ60を形成する。
また、貫通孔63a、64aには、円筒状のスリーブ69が圧入されている。
このようなスライドブッシュ60は、長穴32内に配置され、両側の突条32aと溝62とが噛み合うことによって、長穴32の長手方向に沿ってスライド移動可能とされている。
【0028】
ガイドローラ71、72は、それぞれ一定の厚さを有した円板状で、その中央部に貫通孔73、74が形成されている。
【0029】
これら基部側リンクプレート40A、40B、先端部側リンクプレート50A、50B、スライドブッシュ60、ガイドローラ71、72は、ブラケットプレート30に対し、シャフト部材(第二の支持軸)90およびシャフト部材(第一の支持軸)91を介して取り付けられている。
より詳しくは、スライドブッシュ60の貫通孔63a、64a、基部側リンクプレート40A、40Bの貫通孔41、ガイドローラ71の貫通孔73、ガイドローラ72の貫通孔74に、シャフト部材90が挿入され、その先端部に形成されたネジ溝にナット93をねじ込むことで、これらが回動自在に連結されている。
また、ブラケットプレート30の貫通孔31、先端部側リンクプレート50A、50Bの貫通孔52にシャフト部材91が挿入され、その先端部に形成されたネジ溝にナット94をねじ込むことで、ブラケットプレート30に対し、先端部側リンクプレート50A、50Bが回動自在に連結されている。
さらに、基部側リンクプレート40A、40Bの貫通孔42と、先端部側リンクプレート50A,50Bの貫通孔51には、それぞれ連結ピン95が挿入され、これらが回動自在に連結されている。
【0030】
また、基部側リンクプレート40A、40Bにおいて、貫通孔41が形成された側の端部には、連結プレート81が挟み込まれている。この連結プレート81には貫通孔81aが形成され、この貫通孔81aに前記のシャフト部材90が挿入されている。そして、スプリング80の一端が連結プレート81に連結されている。図4に示すように、このスプリング80の他端は、ブラケットプレート30に取付ボルト83を介して固定されている。
スプリング80は、取付ボルト83と連結プレート81とを互いに接近させる方向の引張力を発揮するよう設けられている。これにより、グリッパ20を容器保持部分を閉じる方向に付勢する。
【0031】
図3に示したように、このようなグリッパ20を開閉させるため、回転円板13の下方には、カム15が設けられている。カム15は、プレート状で、その外周面がガイドローラ71に対向するよう、固定軸10に固定して設けられている。カム15は、グリッパ20を開いたままとする領域(角度範囲)に設けられている。図6(a)に示すように、グリッパ20を閉じる領域では、ガイドローラ71よりも回転円板13の内周側に位置し、図6(b)に示すようにグリッパ20を開く領域では、ガイドローラ71を回転円板13の外周側に押圧して移動させることで、グリッパ20の容器保持部を開く形状に形成されている。
【0032】
また、カム15の下方には、図6(c)に示すように、カム15による開閉時よりもグリッパ20の開度を大きくするための開度増大装置が設けられている。図7に示すように、この開度増大装置(グリッパ開度増大機構)17は、円弧状に形成されたカム部201と、このカム部201を回転円板13の径方向に進退自在に支持するガイドレール202と、ガイドレール202を回転円板13の径方向に進退駆動させる駆動機構203と、を備えている。
駆動機構203は、いかなる構成とすることもできるが、例えば、上下方向に伸縮可能に設けられた駆動シリンダ204と、駆動シリンダ204のロッド204aに一端が連結され、他端がガイドレール202に連結された連結アーム205とを備えた構成とすることができる。ここで、連結アーム205は、中間部205aが固定軸10にブラケット206を介して鉛直面内で回動自在に支持されている。
駆動シリンダ204を伸縮させると、連結アーム205が中間部205aを中心として揺動し、これによってガイドレール202が回転円板13の径方向に進退駆動される。これにより、カム部201が回転円板13の径方向に進退する。
ここで、カム部201は、通常状態においては、ガイドローラ72よりも回転円板13の内周側に位置し、グリッパ20の開度を増大させるときには、カム部201を、図6(c)に示すように、グリッパ20を開く領域におけるカム15よりも外周側に移動させる。すると、カム部201によりガイドローラ72が外周側に押圧され、カム15により開いたときよりも、グリッパ20の開度を増大させることができる。
【0033】
上述したようなグリッパ20においては、グリッパ20を開閉するためにカム15や開度増大装置17のカム部201、スプリング80から押圧力や引張力が作用してグリッパ20の容器保持部分が開くときには、その押圧力や引張力によるモーメントは、シャフト部材90を介してスライドブッシュ60に主に作用し、シャフト部材91や他の部分にはほとんど作用しない。したがって、スライドブッシュ60以外の各部の摩耗等を抑えることができる。また、スライドブッシュ60もグリッパ20の幅方向中心線上に配置されているため、偏荷重が作用しにくく、摩耗しにくい。このようにして、メンテナンスの手間とコストを抑えることが可能となっている。
さらに、スライドブッシュ60は、容器100を保持するグリッパ20の外周側端部20aから最も離れた、内周側端部20bに位置している。したがって、万が一スライドブッシュ60から摩耗粉が発生しても、容器100内に混入しにくいレイアウトとなっている。
【0034】
また、スライドブッシュ60の外周面には溝62が形成され、長穴32の突条32aに噛み合う構成となっている。これにより、カム15やカム部201でガイドローラ71、72を外周側に押圧したときには、スライドブッシュ60には、グリッパ20の外周側端部20aが上方に持ち上がる方向のモーメント力が作用する。すると、その力は、スライドブッシュ60の下部ブッシュ部材63の傾斜面65で受け止めることになる。一方、スプリング80でシャフト部材90を内周側に引張るときには、スライドブッシュ60には、グリッパ20の外周側端部20aが下方に下がる方向のモーメント力が作用する。すると、その力は、スライドブッシュ60の上部ブッシュ部材64の傾斜面67で受けることになる。したがって、グリッパ20が開いたり閉じたりするときには、スライドブッシュ60により作用力を確実にブラケットプレート30に伝達することができる。これにより、グリッパ20の動作部分を確実に保持することができ、開閉時の動作を安定したものとすることができる。また、傾斜面65、67と、長穴32の突条32aの傾斜面32b、32cとの面接触(線接触)により作用力を受けることができるので、スライドブッシュ60も摩耗しにくく、耐久性に優れる。
【0035】
さらに、このようなスライドブッシュ60は、下部ブッシュ部材63と上部ブッシュ部材64の上下2分割構造とされており、突条32aを有した長穴32に対して組み付けるときには、ブラケットプレート30の上下から下部ブッシュ部材63と上部ブッシュ部材64を互いに接近させ、これらを組み合わせれば良いので、組み立て性に優れる。
しかも、下部ブッシュ部材63と上部ブッシュ部材64には、凸部66と凹部68が形成されているため、これらを嵌め合わせることで、スライドブッシュ60を精度良く確実に組み付けることができる。
【0036】
加えて、グリッパ20の開度を大きくするための開度増大装置17が設けられているため、カム部201でガイドローラ72を外周側に押圧することで、カム15によりグリッパ20を開いたときよりも、グリッパ20の開度を増大させることができる。したがって、例えば、このフィラー搬入ホイール7iと、その前後に位置する他の容器搬送装置との回転動作に位相ずれが生じてしまった場合等には、開度増大装置17を作動させることによってグリッパ20の開度を増大させ、容器100の受け渡しを確実に行うことが可能となる。
このような開度増大装置17は、付加的に設ければ良いので、既存の設備に対しても追加して装備することもできる。
【0037】
[その他の実施形態]
ところで、上記実施形態においては、スライドブッシュ60が長穴32に沿ってスライドする際、シャフト部材90とともにスライドブッシュ60が回転するとは限らない。すると、スライドブッシュ60の傾斜面65、67の周方向の特定部分のみが、長穴32の突条32aの傾斜面32b、32cと接触することも考えられる。その結果、その接触部分のみが摩耗してしまう可能性もあるため、例えば、以下に示すような構成を採用するのが好ましい。
【0038】
まず、図5(a)に示すように、長穴32において、スライドブッシュ60を挟んで対向する一方の側S1と他方の側S2とで、傾斜面32b、32cの摩擦係数を、互いに異ならせることができる。これには、例えば、長穴32の一方の側S1と他方の側S2とで、傾斜面32b、32c表面粗さを異ならせることができる。具体的に一例をあげると、一方の側S1の表面粗さを1.6S、他方の側S2の表面粗さを0.8Sとする。すると、スライドブッシュ60においては、一方の側S1の傾斜面32b、32cでの摩擦力の方が、他方の側S2での摩擦力も大きいため、これによってスライドブッシュ60が長穴32に沿って進退するときに、スライドブッシュ60が回転する。
【0039】
このようにして、スライドブッシュ60において、より広い角度範囲が長穴32の突条32aと接触することになり、特定部分の摩耗を抑えることができる。これにより、上記実施形態の効果は一層顕著なものとなる。
【0040】
さらには、上記構成に加えて、図8に示すように、スライドブッシュ60に、一方向のみの回転を許容し、反対方向への回転を規制する、いわゆるラチェット機構(回転方向規制部材)210を備えることもできる。これには、スライドブッシュ60の下面に周方向に連続するギヤ歯211を形成する。スライドブッシュ60に対向する基部側リンクプレート40Aの上面には、上方に突出する噛み合い部材212と、噛み合い部材212を上方に付勢するバネ部材213と、を備える。ここで、ギヤ歯211および噛み合い部材212は、一方向にスライドブッシュ60が回転したときには互いに噛み合わず、反対方向に回転したときには互いに噛み合うよう、傾斜して設けられている。
【0041】
このような構成を備えると、上記したように、長穴32において、スライドブッシュ60を挟んで対向する一方の側S1と他方の側S2との摩擦係数の差により、スライドブッシュ60が長穴32に沿って一方向に移動してスライドブッシュ60が一方向に回転したときにはその回転を許容し、長穴32に沿って反対方向に移動して反対方向に回転しようとしたときにはその回転を規制する。したがって、グリッパ20が開閉するたびにスライドブッシュ60が一定角度ずつ一方向に回転することになる。その結果、スライドブッシュ60が全周にわたって均一に接触し、特定部分の摩耗を抑えることができる。これにより、上記実施形態の効果は一層顕著なものとなる。
【0042】
なお、上記実施の形態では、グリッパ20の各部構成を説明したが、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0043】
5i リンサー搬入ホイール
5o リンサー搬出ホイール
6 中継ホイール
7i フィラー搬入ホイール
7o フィラー搬出・キャッパ搬入ホイール
9o キャッパ搬出ホイール
10 固定軸
11 回転体
12 回転軸
13 回転円板
15 カム
17 開度増大装置(グリッパ開度増大機構)
20 グリッパ
25 ボルト
30 ブラケットプレート
31 貫通孔
32 長穴
32a 突条
32b 傾斜面
32c 傾斜面
40A、40B 基部側リンクプレート(第二のアーム部材、駆動アーム部)
50A,50B 先端部側リンクプレート(第一のアーム部材、グリッパアーム部)
50c 一端部
50d 中間部
50e 他端部
60 スライドブッシュ
62 溝
63 下部ブッシュ部材(第二のブッシュ部材)
64 上部ブッシュ部材(第一のブッシュ部材)
65、67 傾斜面
66 凸部
68 凹部
69 スリーブ
71 ガイドローラ(ローラ部材)
72 ガイドローラ(第二のローラ部材)
80 スプリング
81 連結プレート
83 取付ボルト
90 シャフト部材(第二の支持軸)
91 シャフト部材(第一の支持軸)
100 容器
201 カム部
202 ガイドレール
203 駆動機構
204 駆動シリンダ
205 連結アーム
206 ブラケット
210 ラチェット機構(回転方向規制部材)
211 ギヤ歯
212 噛み合い部材
213 バネ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板状の回転体と、
前記回転体を水平面内で回転可能に支持する回転軸と、
前記回転体の外周部に周方向に間隔を隔てて複数設けられ、容器を保持可能なグリッパと、
前記回転軸に固定され、前記グリッパを開閉させるカムと、を備え、
前記グリッパは、
前記回転体に固定的に設けられた第一の支持軸と、
一対の第一のアーム部材が前記第一の支持軸に回動自在に設けられることで開閉可能とされ、前記第一のアーム部材の一端部に前記容器を保持する保持部を有したグリッパアーム部と、
前記第一の支持軸に対し前記回転体の内周側に設けられ、前記回転体の内周側と外周側を結ぶ放射方向に長手方向を有した長穴と、
前記長穴内に収容され、前記長手方向にスライド自在とされたスライドブッシュと、
前記スライドブッシュに支持された第二の支持軸と、
一対の第二のアーム部材の一端が前記第二の支持軸に回動自在に設けられ、他端が前記第一のアーム部材の他端部に回動自在に連結された駆動アーム部と、
前記第二の支持軸に設けられ、前記カムの外周面に対向するローラ部材と、
を備えることを特徴とする容器搬送装置。
【請求項2】
前記第二の支持軸は、前記グリッパにおいて、前記回転体の最も内周側に位置するよう設けられていることを特徴とする請求項1に記載の容器搬送装置。
【請求項3】
前記第二の支持軸は、前記グリッパの幅方向中心に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の容器搬送装置。
【請求項4】
前記長穴の内周面に、前記長穴の周方向に連続する突条または溝が形成されるとともに、前記スライドブッシュの外周面が、前記突条または溝に噛み合う断面形状を有していることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の容器搬送装置。
【請求項5】
前記突条または溝は、前記第二の支持軸の軸線方向に対して傾斜した傾斜面を有し、当該傾斜面に前記スライドブッシュが噛み合うことを特徴とする請求項4に記載の容器搬送装置。
【請求項6】
前記スライドブッシュは、上下二分割構造とされ、前記長穴の上方から組み付ける第一のブッシュ部材と、前記長穴の下方から組み付ける第二のブッシュ部材とを組み合わせることで形成されていることを特徴とする請求項4または5に記載の容器搬送装置。
【請求項7】
前記突条または溝の表面の摩擦抵抗が、前記スライドブッシュを挟んで一方の側と他方の側とで互いに異なることを特徴とする請求項4から6のいずれか一項に記載の容器搬送装置。
【請求項8】
前記スライドブッシュが前記第二の支持軸周りに一方向のみに回転し、反対方向への回転を阻止する回転方向規制部材が備えられていることを特徴とする請求項7に記載の容器搬送装置。
【請求項9】
前記カムによる前記グリッパの最大開度よりも大きな開度で前記グリッパを開くグリッパ開度増大機構をさらに備えることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の容器搬送装置。
【請求項10】
前記第二の支持部材に第二のローラ部材が設けられ、
前記グリッパ開度増大機構は、前記第二のローラ部材に対し、前記回転体の径方向に進退する押圧部材を備えることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の容器搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−39943(P2013−39943A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177915(P2011−177915)
【出願日】平成23年8月16日(2011.8.16)
【出願人】(505193313)三菱重工食品包装機械株式会社 (146)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】