説明

封止用部材およびそれを備える電子機器

【課題】 筺体内部へ挿入される挿入部材に装着可能であると共に、挿入部材に悪影響を与えにくい封止用部材を提供すること。
【解決手段】
開閉可能な装着用部材11,21と、筺体2,3の開口部に挿入される挿入部材5を外側から挟持するように第1の装着用部材11,21を閉じた状態にて挿入部材5を貫通させ、かつ、装着用部材11,21を囲むリングを構成する第1のシール部材12と、装着用部材11,21の開閉口内面に配置される第2のシール部材13,23と、を有する封止用部材10としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止用部材およびそれを備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、携帯情報端末(PDA)などの電子機器には、筺体に形成された開口部からフレキシブル基板等の挿入部材を挿通させる場合がある。かかる場合にその開口部から筺体内に異物が侵入しないように、その開口部と挿入部材との間に封止用部材を設ける場合がある。
【0003】
たとえば、封止用部材としては、開口部と挿入部材との間隙に液状のゴムを充填してなるものが知られている(特許文献1を参照)。また、封止用部材と挿入部材との密着性を向上させるために、挿入部材と封止用部材とを一体成型されたものも知られている(特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開公報WO2003/085793
【特許文献2】特開2005−348341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1あるいは特許文献2に記載の封止用部材では、挿入部材と封止用部材とを一体成型しているため、その一体成型の際に加えられる熱および圧力等により、挿入部材が破損あるいは変形等するという問題がある。たとえば、挿入部材としてフレキシブル基板等を用いる場合、一体成型の際に加えられる熱および圧力等により、フレキシブル基板に内包されている導線の断線を招く危険性がある。
【0006】
また、特許文献1あるいは特許文献2に記載の封止用部材では、挿入部材と封止用部材とが固着しているため、挿入部材に加えられた張力により、挿入部材と封止用部材との固着部分にストレスが生じ、破損等する危険性がある。
【0007】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたものであって、筺体内部へ挿入される挿入部材に装着可能であると共に、挿入部材に悪影響を与えにくい封止用部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の封止用部材は、開閉可能な装着用部材と、筺体の開口部に挿入される挿入部材を外側から挟持するように装着用部材を閉じた状態にて、挿入部材を貫通させ、かつ、装着用部材を囲むリングを構成する第1のシール部材と、装着用部材の開閉口内面に配置される第2のシール部材と、を有する。
【0009】
また、装着用部材は、第1の装着用部材および第2の装着用部材を有し、第1の装着用部材および第2の装着用部材は、接続部材により接続され、筺体の開口部に挿入される挿入部材を外側から挟持するように第1の装着用部材と第2の装着用部材とを閉じた状態にて、第1のシール部材は、挿入部材を貫通させ、かつ、第1の装着用部材と第2の装着用部材とを囲むリングを構成し、第2のシール部材は、挿入部材と第1の装着用部材もしくは第2の装着用部材との間、および、第1の装着用部材と第2の装着用部材との間に配置されてもよい。
【0010】
また、第1のシール部材は、装着用部材の開閉口内面が密着状態を保つように保持する保持手段を兼ねてもよい。
【0011】
また、接続部材は、第1の装着用部材および第2の装着用部材を閉じる方向に付勢するものであるのが好ましい。
【0012】
また、第1のシール部材のショアA硬度は、第2のシール部材のショアA硬度よりも高いのが好ましい場合もある。
【0013】
また、接続部分は、2本の板状部分とそれらをつなぐ湾曲部分とから連続形成され、その湾曲部分を支点に第1の装着用部材および第2の装着用部材とが開閉し得る。
【0014】
また、装着用部材の挿入部材と接する面のうち少なくとも1面は、挿入部材と接する領域が、それ以外の領域内方にへこむようにしてもよい。
【0015】
また、別の発明の電子機器の実施の形態では、筺体に設けられた開口部から挿入される挿入部材と、挿入部材を挟持するように構成され、かつ、開口部を封止する封止用部材と、を有し、封止用部材は、開閉可能な装着用部材と、筺体の開口部に挿入される挿入部材を外側から挟持するように装着用部材を閉じた状態にて、挿入部材を貫通させ、かつ、装着用部材とを囲むリングを構成する第1のシール部材と、装着用部材の開閉口内面に配置される第2のシール部材と、を備えるものとしている。
【0016】
また、装着用部材が密着状態を保つように保持するために、装着用部材には、挿入部材へ向かう方向の挟圧力が装着用部材の開口端部とは逆側および筺体の内壁により付与されるのが好ましい場合もある。
【0017】
また、装着用部材は、第1の装着用部材および第2の装着用部材を有し、第1の装着用部材および第2の装着用部材は、接続部材により接続されていると共に、第1の装着用部材および第2の装着用部材には、接続部材および筺体の内壁により挿入部材へ挟圧力が付与されてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、筺体内部へ挿入される挿入部材に装着可能であると共に、挿入部材に悪影響を与えにくい封止用部材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係る封止用部材を備える電子機器としての携帯電話の斜視図である。
【図2】図1に示す携帯電話が折り畳まれた状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る封止用部材が装着された挿入部材を示す斜視図である。
【図4】図3の封止用部材および挿入部材について、Aで示す領域を拡大して示す斜視図である。
【図5】図4の封止用部材を挿入部材に装着するために開いた状態を示す斜視図である。
【図6】封止用部材の第1の装着用部材と第2の装着用部材とが開いた状態において、挿入部材の貫通方向に見た場合の正面図である。
【図7】封止用部材の第1の装着用部材と第2の装着用部材とが閉じた状態において、挿入部材の貫通方向に見た場合の正面図である。
【図8】図7の封止用部材の側面図である。
【図9】図7の封止用部材の底面図である。
【図10】図7の封止用部材をB−B線で切断した場合の断面図である。
【図11】挿入部材が挿入された封止用部材を、図8のC−C線で切断した場合の断面図である。
【図12】本実施の形態の変形例に係る封止用部材を挿入部材に装着した状態を示す分解斜視図である。
【図13】本実施の形態のさらなる別の変形例に係る封止用部材の第1の装着用部材を、挿入部材に装着した場合に挿入部材側から見た状態を示す斜視図である。
【図14】図13の封止用部材の第2の装着用部材を、挿入部材に装着した場合に挿入部材側から見た状態を示す斜視図である。
【図15】図13に示す第1の装着用部材と、図14に示す第2の装着用部材とを閉じた状態の接続部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施の形態に係る電子機器および封止用部材について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
1.電子機器の構成
図1は、本発明の実施の形態に係る封止用部材10を備える電子機器としての携帯電話1の斜視図である。図2は、図1に示す携帯電話1が折り畳まれた状態を示す斜視図である。なお、図1および図2においては、携帯電話1に備えられる挿入部材5および封止用部材10を点線にて示している。
【0022】
携帯電話1は、第1の筺体2および第2の筺体3を有している。携帯電話1は、第1の筺体2と第2の筺体3とが連結部4により回動可能に連結された、いわゆる折り畳みタイプの携帯電話として構成されている。挿入部材5は、一端側が第1の筺体2に設けられた開口部を通って、第1の筺体2の内部に挿入され、他端側が第2の筺体3に設けられた開口部を通って、第2の筺体3の内部に挿入されている。また、挿入部材5は、連結部4の内部を通って、第1の筺体2の内部に位置する基板と第2の筺体3に位置する基板とにそれぞれ接続されている。挿入部材5は、第1の筺体2側と第2の筺体3側とにそれぞれ封止用部材10を装着している。封止用部材10は、第1の筺体2に設けられた開口部および第2の筺体3に設けられた開口部を塞ぐように装着されている。
【0023】
図3は、封止用部材10が装着された挿入部材5を示す斜視図である。
【0024】
挿入部材5としては、たとえば、フレキシブルプリント回路基板(FPC)を用いることができる。FPCは、携帯電話1の折り畳み動作に追従できるような柔軟な配線資材となることから、第1の筺体2および第2の筺体3を連動させるために用いられる。本実施の形態では、挿入部材5は、帯状のFPCであって、その両端部に、コネクタ6をそれぞれ備える。封止用部材10が挿入部材5を挟むように装着されると、挿入部材5は、封止用部材10に挿通された状態となる。
【0025】
2.封止用部材の構成
図4は、図3の封止用部材10および挿入部材5について、Aで示す領域を拡大して示す斜視図である。図5は、図4の封止用部材10を挿入部材5に装着するために開いた状態を示す斜視図である。図6は、封止用部材10が開いた状態において、挿入部材5の貫通方向に見た場合の正面図である。図7は、図6の封止用部材10が閉じられた状態を示す正面図である。図8は、図7の封止用部材10の側面図である。図9は、図7の封止用部材10の底面図である。図10は、図7の封止用部材10をB−B線で切断した場合の断面図である。図11は、挿入部材5が挿入された封止用部材10を、図8のC−C線で切断した場合の断面図である。なお、背面図については、正面図と略左右対称となるため図示を省略する。左側面図と右側面図および底面図と平面図とは、略対称となるため、一方のみを図示している。
【0026】
封止用部材10は、挿入部材5を挿入するために、第1の筺体2および第2の筺体3に設けられた開口部を封止し、第1の筺体2あるいは第2の筺体3の内部に水、埃あるいはその他の異物の侵入を防ぐ部材である。封止用部材10は、第1の装着用部材11および第2の装着用部材21を有している。第1の装着用部材11および第2の装着用部材21は、互いに略同一の形態を有し、挿入部材5を挟むようにして挿入部材5に対して着脱可能な部材である。また、図11に示すように、第1の装着用部材11と第2の装着用部材21とは、接続部材22により接続されている。第1の装着用部材11と第2の装着用部材21とは、接続部材22を支点として開閉される。接続部材22は、第1の装着用部材11と第2の装着用部材21とを挿入部材5を挟む方向に付勢する。したがって、ユーザは、封止用部材10を開き、挿入部材5を所定の場所に配置し、封止用部材10への力を解放すると、封止用部材10は、その構成部材である第1の装着用部材11と第2の装着用部材21とを互いに閉じる方向に駆動し、その結果、挿入部材5を挟持できる。
【0027】
また、封止用部材10は、第1の筺体2または第2の筺体3に挿入した状態において、その内壁から第1の装着用部材11と第2の装着用部材21を互いに押し付ける方向への挟圧力が付与されている。そのため、第1の装着用部材11および第2の装着用部材21は、挿入部材5を挟持した状態で保持される。
【0028】
封止用部材10は、第1のシール部材としての弾性体12を有する。図10に示すように、第1の装着用部材11および第2の装着用部材21は、その外周に、弾性体12をそれぞれ嵌め入れる溝14および溝24をそれぞれ有する。当該溝14および溝24の深さは、弾性体12の各直径より小さい。このため、弾性体12をそれぞれ第1の装着用部材11および第2の装着用部材21に嵌め入れた状態において、弾性体12は、第1の筺体2および第2の筺体3側に突出する。第1の筺体2または第2の筺体3の内壁が封止用部材10を挟持している場合には、弾性体12は、第1の筺体2または第2の筺体3の内壁の凹凸に沿って変形し、密着できるため、封止効果を高めるのに寄与する。また、取り扱い性を向上させるために、弾性体12は、溝14において第1の装着用部材11と固着され、溝24において第2の装着用部材21と固着される。
【0029】
また、第1の装着用部材11および第2の装着用部材21は、第2のシール部材としてのシール部13およびシール部23をそれぞれ有する。シール部13およびシール部23は、第1の装着用部材11および第2の装着用部材21が開閉した場合の開閉口の内面に設けられている。具体的には、シール部13およびシール部23は、第1の装着用部材11および第2の装着用部材21が挿入部材5に装着された状態において、挿入部材5と接触する面およびその周囲を封止するように、第1の装着用部材11および第2の装着用部材21の互いに対向する面に配置される。
【0030】
第1の装着用部材11および第2の装着用部材21は、たとえば、ポリカーボネート、アクリル、ABS(アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン共重合樹脂)、ポリアミド、ウレタン等の樹脂あるいはそれらの混合物から構成される。第1の装着用部材11および第2の装着用部材21は、シール部13、シール部23、弾性体12の硬度よりも高く、剛性を有する材料から構成されるのが好ましい。かかる場合には、第1の装着用部材11および第2の装着用部材21は、第1の筺体2または第2の筺体3に組み込まれた際に加えられる圧力に耐えられると共に、所定の配置位置に確実に係止できる。また、第1の装着用部材11および第2の装着用部材21は、成型前と成型後との寸法差が小さく、寸法精度が高い部材であって、かつ、製造時あるいは使用時に形状等の変化が小さい部材から構成されるのが好ましい。
【0031】
第1のシール部材としての弾性体12は、第1の装着用部材11および第2の装着用部材21の各外周と、第1の筺体2および第2の筺体3の各内面との隙間を封止するための部材である。弾性体12は、第1の装着用部材11および第2の装着用部材21が開閉した場合の開口側から、各外周に沿って設けられている。第1の装着用部材11および第2の装着用部材21が挿入部材5に装着されると、弾性体12の両端部は、互いに連結し、それらを囲むような1つのリングを構成する。弾性体12により形成されるリングは、挿入部材5を軸とする封止用部材10の外周に設けられている。
【0032】
弾性体12は、好適には、柔軟な樹脂若しくはエラストマーから成る。弾性体12を柔軟な樹脂若しくはエラストマーから構成することにより、弾性体12は、第1の筺体2あるいは第2の筺体3の内面と第1の装着用部材11あるいは第2の装着用部材21との隙間を埋めるように容易に変形できる。このため、封止効果を高めることができる。弾性体12は、たとえば、ショアA硬度が40〜70度のウレタンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム等から主に形成されるのが好ましい。それらの中でも、耐久性が高いシリコーンゴムあるいはそれらの複合品を用いるのがより好ましい。弾性体12が第1の装着用部材11および第2の装着用部材21の外周から突出する長さは、使用する弾性体の硬度により変化させることができるが、例えば、1〜2mmとすることができる。弾性体12の突出長さが1mm以上の場合には、弾性体12が、第1の筺体2および第2の筺体3と接し、第1の筺体2あるいは第2の筺体3により圧縮および固定された際に、弾性体12は、容易に変形し、各筐体の寸法のばらつきを吸収できる。そのため、弾性体12と、第1の筺体2および第2の筺体3との間に隙間が生じにくい。一方、弾性体12の突出長さが2mm以下の場合には、長期間の使用においても、弾性体12の弾性力の低下によるシール性能の低下、あるいは弾性体12自体が変形することによるシール性能の低下の影響を小さくできる。さらに、弾性体12の突出長さを2mm以内とすることで、第1の筐体2および第2の筐体3により弾性体12が圧縮および固定された際に弾性体12に加えられた圧縮荷重が大きくなりすぎないため、第1の筐体2あるいは第2の筐体3が変形あるいは破損しにくくなる。
【0033】
第2のシール部材としてのシール部13およびシール部23は、第1の装着用部材11と挿入部材5との間、第2の装着用部材21と挿入部材5との間、および、第1の装着用部材11と第2の装着用部材21との間を封止し、挿入部材5の周囲に隙間を生じさせないようにするための部材である。シール部13およびシール部23は、封止用部材10を挿入部材5に装着した状態で、第1の装着用部材11と第2の装着用部材21との間に設けられている。したがって、シール部13およびシール部23と、挿入部材5とが接触する部分では、シール部13およびシール部23は、挿入部材5と十分に密着できる。また、シール部13とシール部23とが接触する部分でも、シール部13とシール部23とが互いに十分に密着できる。なお、シール部13およびシール部23のうち、挿入部材5と接触しない部分は、シール部13およびシール部23のいずれか一方のみが設けられていてもよい。また、シール部13およびシール部23のうち、挿入部材5と接触しない部分は、挿入部材5と接触する部分よりも、挿入部材5側に突出しているのが好ましい。このことは、シール部13およびシール部23のうち、挿入部材5と接する領域が、それ以外の領域よりも内側にへこんでいることを意味する。
【0034】
シール部13およびシール部23は、好適には、柔軟な樹脂若しくはエラストマーから成る。シール部13およびシール部23を柔軟な樹脂若しくはエラストマーから構成することにより、シール部13およびシール部23は、挿入部材5の表面上の凹凸に合わせて容易に変形し、その凹凸を有する表面と密着できる。シール部13およびシール部23は、たとえば、ショアA硬度が20〜50度のウレタンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム等から構成されるのが好ましい。また、シール部13およびシール部23のショアA硬度は、弾性体12のショアA硬度よりも小さいのが好ましい。このように、弾性体12とシール部13,23の硬度を調節すると、シール部13およびシール部23と、挿入部材5との密着性を高め、かつ、弾性体12の寸法精度を確保できる。また、シール部13およびシール部21がシリコーン樹脂から主に成る場合、第1の装着用部材11および第2の装着用部材21とシール部13およびシール部21とを固着するために、第1の装着用部材11および第2の装着用部材21は、ポリカーボネート、アクリル、ポリアミド、あるいはウレタン樹脂から構成されるのが好ましい。
【0035】
図11に示すように、接続部材22は、好適に、第1の装着用部材11および第2の装着用部材21に埋設され、第1の装着用部材11および第2の装着用部材21を接続する。接続部材22は、たとえば、2枚の略平行に伸びる板状部分とそれらをつなぐ湾曲部分とから連続形成される、いわゆるU字状のクリップである。接続部材22の2枚の板状部分は、挿入部材5を挟むような方向で、第1の装着用部材11および第2の装着用部材21に埋設されている。接続部材22の湾曲部分は、第1の装着用部材11と第2の装着用部材21の接触面の端部に位置する。したがって、第1の装着用部材11と第2の装着用部材21とは、接続部材22の湾曲部分を支点に回動することで、接続部材22の湾曲部分と反対側の端部にて、第1の装着用部材11と第2の装着用部材21とを開閉可能である。
【0036】
挿入部材5は、第1の装着用部材11と第2の装着用部材21とを開状態にすることで、第1の装着用部材11と第2の装着用部材21との間に配置可能である。また、ユーザが、第1の装着用部材11と第2の装着用部材21とを開状態にするための力を封止用部材10に与えるのを止めると、接続部材22の復元力により、第1の装着用部材11および第2の装着用部材21は、挿入部材5を挟む方向へ付勢される。第1の装着用部材11および第2の装着用部材21は、接続部材22により挟持力が付与されることから、第1の装着用部材11と第2の装着用部材21との間、または挿入部材5と第1の装着用部材11もしくは第2の装着用部材21との間の密着状態を維持できる。
【0037】
上述のような構成の封止用部材10では、封止用部材10を挿入部材5に装着する際に熱や必要以上の圧力を加える必要がない。このため、挿入部材5の破損あるいは変形を防ぐことができる。また、上述のような封止用部材10では、挿入部材5と封止用部材10とが固着していないため、挿入部材5への張力により、挿入部材5と封止用部材10との固着部分にストレスが生じにくく、挿入部材5の破損等を防ぐことができる。
【0038】
また、上述のような封止用部材10を備える携帯電話1では、携帯電話1の内部に水や埃等の異物が侵入するのを防ぐことができる。なぜなら、携帯電話1の第1の筺体2あるいは第2の筺体3の内壁と挿入部材5との隙間を封止用部材10が封止しているからである。特に、封止用部材10の弾性体12は、携帯電話1の第1の筺体2あるいは第2の筺体3の内壁と封止用部材10との隙間を封止できる。また、シール部13およびシール部23は、封止部材10と挿入部材5との隙間を封止できる。また、封止用部材10すべてを弾性体により形成した場合と比較して、弾性体が長期間同じ形状に保持されていることにより生じる寸法変化の絶対量が小さくなるので、弾性力の低下も生じにくい。
【0039】
さらに、上述のような封止用部材10では、接続部材22により、第1の装着用部材11と第2の装着用部材21とが密着した状態を保つことができる。したがって、第1の装着用部材11と第2の装着用部材21との間、または、挿入部材5と第1の装着用部材11もしくは第2の装着用部材21との間から、携帯電話1の内部に水や埃等の異物が侵入するのを防ぐことができる。また、上述のような封止用部材10では、接続部材22により、挿入部材5から封止用部材10が脱落しにくい。特に、第1の筺体2あるいは第2の筺体3が変形あるいは分解された場合にも、封止用部材10は、単独で挿入部材5に装着された状態を保つことができる。
【0040】
3.その他の実施の形態
以上、本発明の封止用部材10、および封止用部材10を備える携帯電話1について説明したが、本発明は、上述の実施の形態に限定されることなく、種々変形を施して実施可能である。
【0041】
上述の実施の形態では、電子機器として携帯電話1を例示したが、携帯電話以外の電子機器に封止用部材10を採用してもよい。たとえば、PDA、ポータブルコンピュータあるいはその他の精密機器に封止用部材10を採用してもよい。
【0042】
また、上述の実施の形態では、携帯電話1は、第1の筺体2および第2の筺体3を有するものとしたが、このような形態に限らない。1つの筺体しか有さない電子機器であって、その筺体に何らかの部材を挿入するための開口部が設けられている場合には、本発明を用いることができる。また、本発明の電子機器は、折り畳み式の携帯電話1ではなく、スライド式(第1の筺体2が第2の筺体3に対してスライド移動するもの)の携帯電話であってもよい。
【0043】
また、上述の実施の形態では、挿入部材5は、FPCであるが、このような形態に限らない。FPC以外の挿入部材5に封止用部材10を適用することもできる。かかる場合には、第1の装着用部材11および第2の装着用部材21のうち、挿入部材5と接触する各部分には、挿入部材5の表面に沿った形状の凹部が設けられていてもよい。
【0044】
上述の実施の形態では、挿入部材5は、第1の装着用部材11および第2の装着用部材21により挟持されているが、このような形態に限らない。たとえば、挿入部材5は、3つ以上の装着用部材により挟持されていてもよい。
【0045】
また、上述の実施の形態では、封止用部材10は、接続部材22を備えるものとしているが、接続部材22は必須ではない。たとえば、第1の装着用部材11と第2の装着用部材21とが別体ではなく、開閉可能な1つの装着用部材として形成され、その装着用部材に、開閉口として切り込みを設ける。開閉口が装着用部材を分割しない程度に設けられている場合には、接続部材22を備えなくても開閉口が設けられていない部分を支点として装着用部材が開閉できる。さらに、ユーザが装着用部材を開くための力を加えるのを止めると、装着用部材の復元力により、装着用部材は、挿入部材5を挟む方向へ付勢される。なお、かかる場合にも、付勢力をより大きくする目的で、装着用部材に接続部材22が埋設されてもよい。
【0046】
また、上述の実施の形態では、封止用部材10は、挿入部材5に対し、着脱可能に装着されるものとしているが、そのような形態に限らない。たとえば、封止用部材10は、一旦、挿入部材5に装着されると、封止用部材10を破壊しない限り取り外しができないような形態であってもよい。
【0047】
また、上述の実施の形態に係る封止用部材10では、第1の装着用部材11と第2の装着用部材21とを、同程度の大きさおよび形状としたが、このような形状に限られない。第1の装着用部材11と第2の装着用部材21とは、異なる大きさあるいは形状であってもよい。しかし、異物を侵入させにくくするために、第1の装着用部材11と第2の装着用部材21とを接合した際に、その弾性体12が配置される外周部分の凹凸が少ないのが好ましい。さらに、封止用部材10は、挿入部材5を中心軸として、左右および上下が対称の形状であるのが好ましい。かかる場合には、封止用部材10は、弾性体12のどの部分であっても筺体の内面に均一に密着することができるため、弾性体12のどの部分からでも均一に異物の侵入を防ぐことができる。
【0048】
また、上述の実施の形態では、弾性体12は、溝14にて第1の装着用部材11に固着され、さらに、溝24にて第2の装着用部材21に固着されるが、そのような形態に限らない。弾性体12は、第1の装着用部材11および第2の装着用部材21に嵌め込み可能に構成されてもよい。しかし、挿入部材5への取り付けを容易にする観点では、第1の装着用部材11および第2の装着用部材21と弾性体12とを一体化するのが好ましい。
【0049】
図12は、本実施の形態の変形例に係る封止用部材30を挿入部材5に装着した状態を示す分解斜視図である。なお、上述の実施の形態と同じ要素には、同じ符号を付して説明する。
【0050】
上述の実施の形態では、弾性体12は、第1の装着用部材11と第2の装着用部材21とが閉じた状態においてこれらを囲む1つのリングを構成する。しかし、第1のシール部材は、このような形態に限られない。たとえば、図12に示すように、第1の装着用部材11と第2の装着用部材21とを挿入部材5に装着した後で、環状の弾性体32を第1の装着用部材11と第2の装着用部材21の外周に嵌めるような形態であってもよい。かかる形態の場合、弾性体32が第1の装着用部材11と第2の装着用部材21との密着状態を保持するための保持手段として機能する。
【0051】
また、上述の実施の形態では、接続部材22は、第1の装着用部材11および第2の装着用部材21が閉じる方向に付勢するものとしたが、このようなものに限らない。たとえば、封止用部材10,30は、第1の装着用部材11と第2の装着用部材21とが挿入部材5を挟持した状態に保つための保持手段を備える場合には、接続部材22により付勢しなくてもよい。保持手段としては、封止用部材30のように、第1のシール部材32が保持手段を兼ねてもよいし、封止用部材10がさらに別の保持手段を有していてもよい。たとえば、保持手段としての1組のフック機構等により、第1の装着用部材11と第2の装着用部材21とが離れないように保持されてもよい。また、そのフック機構により、第1の装着用部材11と第2の装着用部材21との位置が合わせられてもよい。
【0052】
また、第2の装着用部材21は、第1の装着用部材11と対向する面に凸部を有し、当該凸部と対向する第1の装着用部材11の面に凹部を設けてもよい。かかる場合には、第1の装着用部材11と第2の装着用部材21との位置合わせを容易に行うことができる。
【0053】
上述の実施の形態では、接続部材22は、U字状の部材としているが、このような形態にかぎらない。たとえば、接続部材22,44は、弾性変形できる板状あるいは棒状の部材を1以上折り曲げたもの、渦巻き状にしたもの、あるいはコイルばね形状のものであってもよい。
【0054】
また、上述の実施の形態では、接続部材22は、全体が第1の装着用部材11および第2の装着用部材21に埋設されているものとしたが、そのような形態に限らない。たとえば、接続部材22の一部のみが、第1の装着用部材11および第2の装着用部材21に埋設されていてもよい。接続部材22,44がコイルばね形状の場合、コイルばね形状の部分は、第1の装着用部材11および第2の装着用部材21に埋設されず、コイルばねの端部のみが第1の装着用部材11および第2の装着用部材21にそれぞれ埋設されているのが好ましい。
【0055】
図13は、本実施の形態の変形例に係る封止用部材の第1の装着用部材41側を挿入部材5と触れる面側から見た場合の斜視図である。図14は、図13の封止用部材の第2の装着用部材42側を挿入部材5と触れる面側から見た場合の斜視図である。図15は、図13の第1の装着用部材41と図14の第2の装着用部材42とを挿入部材5に装着した場合の接続部材22の状態を示す斜視図である。
【0056】
図13〜15に示すように、U字状の接続部材44は、端部にフック部45を有していてもよい。かかる場合には、接続部材44は、図13に示すように、フック部45が第1の装着用部材41のシール部13から突出すると共に、図14に示すように、第2の装着用部材42に設けられた凹部から他端側が露出するように埋設される。そして、第1の装着用部材41と第2の装着用部材42とを閉じる際には、図15に示すように、接続部材44のフック部45を他端側に引っ掛けることにより、第1の装着用部材41と第2の装着用部材42とが開いた状態になるのを防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、たとえば、防水用あるいは防塵用の電子機器に利用できる。
【符号の説明】
【0058】
1 携帯電話(電子機器)
2 第1の筺体(筺体)
3 第2の筺体(筺体)
5 挿入部材
10,30 封止用部材
11,41 第1の装着用部材
12 弾性体(第1のシール部材)
13,23 シール部(第2のシール部材)
21,42 第2の装着用部材
22,44 接続部材
32 弾性体(第1のシール部材、保持手段の一例)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉可能な装着用部材と、
筺体の開口部に挿入される挿入部材を外側から挟持するように上記装着用部材を閉じた状態にて、上記挿入部材を貫通させ、かつ、上記装着用部材を囲むリングを構成する第1のシール部材と、
上記装着用部材の開閉口内面に配置される第2のシール部材と、
を有することを特徴とする封止用部材。
【請求項2】
請求項1に記載の封止用部材であって、
前記装着用部材は、第1の装着用部材および第2の装着用部材を有し、
上記第1の装着用部材および上記第2の装着用部材は、接続部材により接続され、
筺体の開口部に挿入される前記挿入部材を外側から挟持するように上記第1の装着用部材と上記第2の装着用部材とを閉じた状態にて、
前記第1のシール部材は、前記挿入部材を貫通させ、かつ、上記第1の装着用部材と上記第2の装着用部材とを囲むリングを構成し、
前記第2のシール部材は、前記挿入部材と上記第1の装着用部材もしくは上記第2の装着用部材との間、および、上記第1の装着用部材と上記第2の装着用部材との間に配置されることを特徴とする封止用部材。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の封止用部材であって、
前記第1のシール部材は、前記装着用部材の開閉口内面が密着状態を保つように保持する保持手段を兼ねることを特徴とする封止用部材。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の封止用部材であって、
前記接続部材は、前記第1の装着用部材および前記第2の装着用部材を閉じる方向に付勢することを特徴とする封止用部材。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の封止用部材であって、
前記第1のシール部材のショアA硬度は、前記第2のシール部材のショアA硬度よりも高いことを特徴とする封止用部材。
【請求項6】
請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の封止用部材であって、
前記接続部分は、2本の板状部分とそれらをつなぐ湾曲部分とから連続形成され、
上記湾曲部分を支点に前記第1の装着用部材および前記第2の装着用部材が開閉することを特徴とする封止用部材。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の封止用部材であって、
前記装着用部材の前記挿入部材と接する面のうち少なくとも1面は、前記挿入部材と接する領域が、それ以外の領域内方にへこんでいることを特徴とする封止用部材。
【請求項8】
筺体に設けられた開口部から挿入される挿入部材と、
上記挿入部材を挟持するように構成され、かつ、上記開口部を封止する封止用部材と、を有し、
上記封止用部材は、
開閉可能な装着用部材と、
筺体の開口部に挿入される挿入部材を外側から挟持するように上記装着用部材を閉じた状態にて、上記挿入部材を貫通させ、かつ、上記装着用部材を囲むリングを構成する第1のシール部材と、
上記装着用部材の開閉口内面に配置される第2のシール部材と、
を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項9】
請求項8に記載の電子機器であって、
前記装着用部材が密着状態を保つように保持するために、前記装着用部材には、前記挿入部材へ向かう方向の挟圧力が前記装着用部材の開口端部とは逆側および前記筺体の内壁により付与されていることを特徴とする電子機器。
【請求項10】
請求項9に記載の電子機器であって、
前記装着用部材は、第1の装着用部材および第2の装着用部材を有し、
上記第1の装着用部材および上記第2の装着用部材は、接続部材により接続されていると共に、
上記第1の装着用部材および第2の装着用部材には、前記挿入部材へ挟圧力が上記接続部材および前記筺体の内壁により付与されていることを特徴とする電子機器。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−149701(P2012−149701A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8843(P2011−8843)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】