説明

射出成形用金型

【目的】 本考案は一部に貫通孔を有する射出成形品を貫通孔にバリを発生させずに射出成形するための射出成形用金型の提供を目的とするものである。
【構成】 本考案の射出成形用金型は、金型の一部に貫通孔形状に対応したピンまたは凸形状体を設けてなる、成形品の一部に貫通孔を形成するための射出成形用金型において、金型を閉じたときにこのピンまたは凸形状体が接触する部位にゴムまたはプラスチックなどの弾性体を配置してなることを特徴とするものである。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は射出成形用金型、特には成形品の一部に貫通孔を有する射出成形品を製造するための射出成形用金型に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性樹脂材料または熱硬化性樹脂材料を原料とした成形品についてはその一部分に貫通孔を有するものも知られており、これらはつぎの方法で製造される。
この一つの方法は、金型成形の段階では貫通孔を形成せず、半割金型の合せ目に生ずるバリを必要に応じて除去したのち、後工程で手加工または打ち抜き装置などを用いて所定の場所に貫通孔を打ち抜くという方法である。
【0003】
また、この他の方法は図5に示したように、一方の固定型11に貫通孔形状に対応したピンまたは凸形状体13を設け、他方の可動型12に金型を閉じたときにそのピンまたは凸形状体13に対応する穴14を設け、そのピンまたは凸形状体13と孔14とのクリアランス15を1〜50ミクロン程度としてここに樹脂材料16を射出するものものであるが、この場合には成形品の貫通孔の部分にバリは殆ど発生しない。
【0004】
【考案が解決しようとする課題】
しかし、これらの公知の方法では第1の方法においてはバリの分離、除去が必要なために工程が煩雑となるし、バリがきれいに除去できないケースも多いという不利があり、第2の方法においては金型が極めて精密に加工されなければならないのでコストが高くなるし、現実には加工のバラツキが避けられず、ピンまたは凸形状体が壊れ易く、ピンまたは凸形状体と孔のすきまに材料がまわり込み易く、バリの発生を防ぐことができにくいという欠点がある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本考案はこのような不利、欠点を解決した射出成形用金型に関するものであり、これは金型の一部に貫通孔形状に対応したピンまたは凸形状体を設けてなる、成形品の一部分に貫通孔を形成するための射出成形用金型において、金型を閉じたときにこのピンまたは凸形状体が接触する部分にゴムまたはプラスチックなどの弾性体を配置してなることを特徴とするものである。
【0006】
すなわち、本考案者は樹脂材料の射出成形によってその一部に貫通孔を有する成形品を貫通部の部分にバリを発生させないようにした射出成形用金型を開発すべく種々検討した結果、金型の一部に貫通孔形状に対応したピンまたは凸形状体を設けてなる公知の射出成形用金型において、この金型を閉じたときにこのピンまたは凸形状体と接触する部位にゴム、プラスチックなどからなる弾性体を配置すると、ここにバリが発生しなくなることを見出し、この弾性体の種類、形状、硬度などについての研究を進めて本考案を完成させた。
以下にこれをさらに詳述する。
【0007】
【作用】
本考案はその一部に貫通孔を有する成形品を成形するための射出成形用金型に関するものであり、これは金型の一部に貫通孔形状に対応したピンまたは凸形状体を設けてなる公知の射出成形用金型において、金型を閉じたときにこのピンまたは凸形状体が接触する部位にゴムまたはプラスチックなどの弾性体を配置してなることを特徴とするものであるが、これによればこの貫通孔部位にバリの発生がなくなるので一部に貫通孔を有する射出成形品を容易に、かつ効率よく生産することができるという有利性が与えられる。
【0008】
本考案は樹脂材料の射出成形によりその一部に貫通孔を有する成形品を得るための射出成形用金型に関するものである。
本考案の射出成形用金型において射出成形される樹脂材料としては、天然ゴム、シリコーンゴム、SBR、IR、クロロプレン、フッ素ゴム、EPDM、IIR、NBR、アクリルゴム、ウレタンゴムなどの熱硬化性樹脂材料、またはナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ABS、ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂材料が例示される。
【0009】
このような樹脂材料を使用する射出成形はプランジャー式、スクリューインライン式、プリプラプランジャー式などの射出機構とトグル式または直圧式などの型締め機構を有する射出成形機を用いて行なえばよいが、この射出成形用の金型については成形品の一部に円、長円、三角、四角その他任意の形状の貫通孔を形成するために、その固定型または可動型の一方に、貫通孔形状に対応したピンまたは凸形状体が設けられたものとされる。
【0010】
本考案の射出成形用金型はこの貫通孔形状に対応したピンまたは凸形状体の設けられた公知の射出成形用金型において、この金型を閉じたときにこのピンまたは凸形状体と接触する部位にゴムまたはプラスチックなどで作られた弾性体を配置してなるものとされるが、この弾性体は天然ゴム、シリコーンゴム、SBR、IR、クロロプレン、EPDM、IIR、NBR、フッ素ゴムなどや、ウレタン樹脂、テフロン樹脂などのゴム、プラスチック(熱可塑性エラストマーを含む)
から成形されたものとすればよい。
【0011】
この本考案の射出成形用金型による射出成形は図1、図2に示した方法で行なわれる。
図1(a)、図2(a)はいずれも本考案の射出成形用金型を用いた射出成形法を示した縦断面図、図1(b)、図2(b)はいずれも凸状形体付近の部分拡大図を示したものであるが、この射出成形は図1(a)、図2(a)に示したように射出成形用金型の固定型1と可動型2とのキャビティ部に樹脂材料が密に射出されてここに成形品3が成形されるものであるが、この成形品3には貫通孔を設けることが必要とされることから、固定型1には貫通孔の形状に対応したピンまたは凸形状体4が設けられており、このピンまたは凸形状体の長さが成形品の貫通孔の長さと同じものが図1に、これがそれより長いものが図2に示されている。
【0012】
そして、本考案の射出成形用金型ではこの金型を閉じたときにこのピンまたは凸形状体4が接触する部位にゴムまたはプラスチックなどで作られた弾性体5が配置されるのであるが、図1(b)、図2(b)はこのピンまたは凸形状体4と弾性体5の配置を示した拡大図である。
【0013】
したがって、これによればこの閉じられた金型のキャビティ部に樹脂材料が射出されると、キャビティで成形品3が成形されると共に樹脂材料がこのピンまたは凸形状体の近傍にも到達し、金型を開いたときにここに貫通孔ができるのであるが、ここにはピンまたは凸形状体4が存在するので樹脂材料はここには侵入できず、バリが発生しない。また、このピンまたは凸形状体4の上部には弾性体5が配置されているので、金型を閉じた際にもピンまたは凸状形態が損傷しないという有利性が与えられる。
【0014】
なお、この弾性体5については射出工程前または工程中にこれが金型から脱落するおそれがあるときには、この弾性体5を挿入する孔に図3に示したようにアンダーカット加工を施すか、あるいは図4に示したようにこれに接着剤を塗布し、この接着剤層6で金型に接着しておいてもよい。
【0015】
また、この弾性体5については硬度が低すぎると繰り返して射出成形を行なっているうちにバリが徐々に発生するようになるし、硬度が高すぎるとピンまたは凸形状体を破損する可能性もあるので、これはゴム硬度が60〜80度相当のものとすることがよいが、この材料の選択は目的とする成形品によって異なるけれども、なるべくは成形温度以上の耐熱性をもつものとすることがよく、これはまたその表面粗度もできるだけ低いものとすることがよい。
【0016】
【実施例】
つぎに本考案の実施例をあげる。
実施例1 固定型に貫通孔を形成するための円柱状のピンを設けると共に、このピンに対抗する可動型の位置に孔を設け、金型が閉じたときにピンが接触する位置にシリコーンゴム・KE−1915A/B[信越化学工業(株)製商品名]を詰め込み、150 ℃に加熱してこれを硬化させて弾性体とした。
【0017】
ついで、この金型にシリコーンゴム・KE−1915A/B(前出)を射出成形機・LS−28A[日清樹脂(株)製商品名]を用いて 100ショット射出成形したところ、この成形品はその貫通孔にバリが全く形成されておらず、金型の損傷もないことが確認された。
【0018】
実施例2 固定型に貫通孔を形成するための四角柱状のピンを設けると共に、このピンに対応する可動型の位置に孔を設け、ここに金型が閉じたときにピンが接触する位置までフッ素ゴム・バイトン[米国デュポン社製商品名]を詰め込み、170 ℃に加熱し、これを硬化させて弾性体とした。
【0019】
ついで、この金型にシリコーンゴム・KE−951 [信越化学工業(株)製商品名]100 重量部に硬化剤・C−8[同社製商品名]2重量部を配合したシリコーンゴムコンパウンドを成形品材料として射出成形機・LS−28A(前出)を用いて 100ショット射出成形したところ、この成形品はその貫通孔にバリが全く形成されておらず、金型の損傷もないことが確認された。
【0020】
実施例3 固定型に貫通孔を形成するための円柱状のピンを設けると共に、このピンに対応する可動型の位置に孔を設け、ここに金型が閉じたときにピンが接触する位置までフッ素ゴム・バイトン(前出)を詰め込み、170 ℃に加熱し、これを硬化させて弾性体とした。
【0021】
ついで、この金型にABS樹脂・AX−IP187 [旭化成(株)製商品名]を成形品材料として射出成形機・LS−28A(前出)を用いて 100ショット射出成形したところ、この成形品はその貫通孔にバリが全く形成されておらず、金型の損傷もないことが確認された。
【0022】
【考案の効果】
本考案は射出成形用金型に関するものであり、これは前記したように金型の一部に貫通孔形状に対応したピンまたは凸形状体を設けてなる、成形品の一部に貫通孔を成形するための射出成形用金型において、金型を閉じたときにこのピンまたは凸形状体と接触する位置にゴムまたはプラスチックなどの弾性体を配置してなることを特徴とするものであるが、これによれば成形品の貫通孔におけるバリの発生を防止することができるので、目的とする貫通孔を有する成形品を容易に、かつ効率よく製造することができるという有利性が与えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本考案の射出成形用金型により射出成形法の縦断面図、(b)はその部分拡大図を示したのである。
【図2】(a)は本考案の他の射出成形用金型による射出成形法の縦断面図、(b)はその部分拡大図を示したのである。
【図3】本考案の射出成形用金型でアンダカット加工を施した弾性体を用いたものの部分拡大図を示したものである。。
【図4】本考案の射出成形用金型で接着剤層で弾性体を接着したものの部分拡大図を示したものである。
【図5】従来公知の射出成形用金型による射出成形法の縦断面図を示したものである。
【符号の説明】
1,11…固定型、 2,12…可動型
3,13…成形体、 4,14…ピンまたは凸形状体、5…弾性体、 6…接着剤層、15…クリアランス。

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】金型の一部に貫通孔形状に対応したピンまたは凸形状物を設けてなる、成形品の一部分に貫通孔を形成するための射出成形用金型において、金型を閉じたときにこのピンまたは凸形状体が接触する部位にゴムまたはプラスチックなどの弾性体を配置してなることを特徴とする射出成形用金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】実開平6−21915
【公開日】平成6年(1994)3月22日
【考案の名称】射出成形用金型
【国際特許分類】
【出願番号】実願平4−61784
【出願日】平成4年(1992)8月10日
【出願人】(391028498)しなのポリマー株式会社 (1)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)