説明

導電性スポンジゴムローラ及び転写ローラ

【課題】画像形成装置の転写ローラ等に適用できトナーの転写ムラ等の画像不良を低減できる高硬度でセル径の大きい導電性スポンジゴムローラを提供する。
【解決手段】導電性軸体の外周面上に2層の導電性発泡ゴム層を有する導電性スポンジゴムローラであり該2層の導電性発泡ゴム層のうちの表面側の層である外層断面の発泡セルの平均セル径が200μm以上500μm未満であり該2層の導電性発泡ゴム層のうちの導電性軸体側の層である内層断面の発泡セルの平均セル径が10μm以上200μm未満であり22℃55RH%での該ローラの電気抵抗値Rx[Ω]の対数log10Rxが7.0以上9.0以下外層の電気抵抗値Ry[Ω]の対数log10Ryが7.0以上10.0以下である導電性スポンジゴムローラ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真複写装置、プリンター及び静電記録装置等の画像形成装置において使用される転写ローラ等に適用できる導電性スポンジゴムローラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンターなど、電子写真方式の画像形成装置の多くに帯電ローラ、転写ローラ、現像ローラ等の導電性ゴムローラが用いられている。これらのゴムローラの電気抵抗値は中抵抗領域(105〜1010Ω・cm)であることが望まれており、ゴムローラに導電性を付与する方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。即ち、EPDMやウレタンゴムにカーボンブラックなどの導電性のカーボンを加える方法、およびアクリロニトリルブタジエンゴム、エピクロルヒドリンゴム等のイオン導電性のゴム材料を配合する方法が挙げられる。
【0003】
これらのローラは各々ドラム(感光体)に対して荷重が加えられた状態で接触しており、また、これらのゴムローラは用途の上で長時間通電されるため、電気抵抗値の変動が小さいローラが望まれている。そのため、ゴムローラには、電子導電性の材料や、イオン導電性の材料、電子とイオンのハイブリッド材料などが用いられる。また、異なる特性の材料を積層するなど、二層以上積層したローラも用いられるようになった。
【0004】
特許文献1では、二層構造の転写ローラとして、最表層に電子導電剤を含む電子導電性スポンジゴム層を有し、最表層以外の少なくとも1層に最表層よりも小さい体積抵抗率を有するイオン導電剤を含むイオン導電性スポンジゴム層を有するローラが提案されている。
【0005】
また、特許文献2では、同一配合材からなる単層でありながら、セル径が小さい外層とセル径の大きな内層を有する発泡ローラが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−241543号公報
【特許文献2】特開2004−322421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のローラを採用すると抵抗ムラが大きくなることがあり、転写ムラが発生することがあった。
【0008】
また、特許文献2の発泡ローラは、製造工程は単純であるが、外層のセル径を成長させ、内層のセル径を小さくコントロールして製造することが困難な場合があった。
【0009】
なお、転写ローラは、ドラムに対して確実にニップを確保するために、低硬度にすることが望まれており、発泡体を用いて形成されることが多い。通常、発泡体の硬度は発泡体を形成するセルの大きさに依存しており、低硬度の発泡体ではセル径が大きい傾向があり、高硬度の発泡体ではセル径が小さい傾向がある。しかし、モノクロ用の電子写真装置に用いられる転写ローラでは、転写効率を上げるために高硬度でセル径の大きい発泡体を用いることが望ましく、その相反する性能を満足することが困難であった。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、電子写真プロセスに使用される導電性スポンジゴムローラに関するものであり、特にモノクロ用画像形成装置の転写ローラに関するものである。
【0011】
本発明の目的は、画像形成装置の転写ローラ等に用いることができ、トナーの転写ムラなどの画像不良を低減できる高硬度でセル径の大きい導電性スポンジゴムローラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、導電性軸体を有し、該導電性軸体の外周面上に2層の導電性発泡ゴム層を有する導電性スポンジゴムローラであって、
該2層の導電性発泡ゴム層のうちの表面側の層である外層の断面における発泡セルの平均セル径が、200μm以上、500μm未満であり、
該2層の導電性発泡ゴム層のうちの導電性軸体側の層である内層の断面における発泡セルの平均セル径が、10μm以上、200μm未満であり、
22℃、相対湿度55%環境下における該導電性スポンジゴムローラの電気抵抗値をRx[Ω]で表したときに、log10Rxが7.0以上、9.0以下であり、
22℃、相対湿度55%環境下における外層の電気抵抗値をRy[Ω]で表したときに、log10Ryが7.0以上、10.0以下である
ことを特徴とする導電性スポンジゴムローラである。
【0013】
また、本発明は、画像形成装置に使用する転写ローラであって、
前記導電性スポンジゴムローラであることを特徴とする転写ローラである。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、画像形成装置の転写ローラ等に用いることができ、トナーの転写ムラなどの画像不良を低減できる高硬度でセル径の大きい導電性スポンジゴムローラが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る導電性スポンジゴムローラの概略構成図である。
【図2】押出し加硫装置の一例を示した図である。
【図3】画像形成装置の全体断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の導電性スポンジゴムローラは、導電性軸体の外周面上に2層の導電性発泡ゴム層を有する。この2層の導電性発泡ゴム層のうちの表面側の層を外層と称し、導電性軸体側の層を内層と称する。
また、外層断面の発泡セルの平均セル径は、200μm以上、500μm未満であり、
内層断面の発泡セルの平均セル径は、10μm以上、200μm未満である。
また、22℃、55RH(相対湿度)%環境下におけるローラの電気抵抗値をRx[Ω]で表したときに、log10Rxは、7.0以上、9.0以下である。さらに、同環境下における外層の電気抵抗値をRy[Ω]で表したときに、log10Ryは、7.0以上、10.0以下である。
【0017】
以下に、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0018】
(導電性スポンジゴムローラ)
本発明に係る導電性スポンジゴムローラは、導電性軸体と、導電性軸体の外周面に設けられた二層の導電性発泡ゴム層とを少なくとも有する。本発明に係る導電性スポンジローラの構成の一例を図1に示す。図1に示す導電性スポンジゴムローラ6は、導電性軸体61の外周面に二層の導電性発泡ゴム層(導電性スポンジゴム内層62および導電性スポンジゴム外層63)が形成されている。
【0019】
なお、本発明の導電性スポンジゴムローラは、複写機、プリンターなどの電子写真方式の画像形成装置に用いる帯電ローラ、転写ローラ、現像ローラ等の導電性ゴムローラとして使用することができる。
【0020】
(導電性軸体)
導電性軸体としては、少なくとも表面が導電性であれば、画像形成装置の分野で公知の導電性ゴムローラに用いる軸体を支障なく使用することができる。
【0021】
導電性軸体としては、例えば、鉄、銅、青銅、ステンレス、鋳鉄、黄銅、アルミニウム等の棒、パイプ等が使用可能であり、これらの棒やパイプ等の表面をニッケル等でメッキしたものも使用できる。また、カーボンブラック、金属粉、カーボン繊維、金属繊維、金属酸化物、樹脂或いは無機粉末の表面を金属化したもの等の導電性フィラーを含む樹脂組成物からなる棒、パイプを使用することができ、さらに、樹脂の棒、パイプの表面を金属メッキ等で導電化したものも使用可能である。
【0022】
導電性軸体の外径は、使用目的により適宜決定することができる。例えば、導電性ゴムローラを転写ローラとして用いる場合、その外径は、4mm以上、10mm以下であることが好ましい。
【0023】
(導電性発泡ゴム層)
・外層について
2層の導電性発泡ゴム層(導電性スポンジゴム層)のうちの外層は、ローラの抵抗ムラや転写ムラを抑制する観点から、イオン導電性を有することが好ましく、例えば、下記イオン導電性ゴム成分を用いて形成することができる。また、必要に応じて後述する充填材等の各種配合剤を外層に含むことができる。
【0024】
・イオン導電性ゴム成分
イオン導電性ゴム成分としては、例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム、エピクロロヒドリンゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴムなど極性基をもつゴムが挙げられる。この中でも、硫黄加硫で共架橋できることから、アクリロニトリルブタジエンゴムや、エピクロロヒドリンゴムや、これらのブレンドゴムを、イオン導電性ゴムとして用いることが好ましい。
【0025】
なお、エピクロロヒドリンゴムの製造に用いる単量体には、エピクロロヒドリン(以下ECHと称する)、エチレンオキシド(以下EOと称する)、アリルグリシジルエーテル(以下AGEと称する)の三種類がある。これら単量体から得られる重合体(エピクロロヒドリンゴム)として、ECH単独重合体、ECH−EO共重合体、ECH−AGE共重合体、ECH−EO−AGE三元共重合体がある。
【0026】
ECH単独重合体、ECH−EO共重合体は塩素の引き抜きによる架橋が一般的で、遊離塩素が多く存在する傾向がある。このため、本発明においては、ECH−AGE共重合体、ECH−EO−AGE三元共重合体の二重結合を側鎖に有するエピクロロヒドリンゴムを使用し、遊離塩素の発生を抑えることが好ましい。この中でもECH−EO−AGE三元共重合体が好ましい。
【0027】
さらに、本発明では、導電性発泡ゴム層のゴム成分が少なくともエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル3元共重合体(A)を含有し、(A)がアリルグリシジルエーテル単位を3mol%以上10mol%以下含有することが好ましい。
【0028】
・配合剤
充填材としては、例えば、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、クレー、カーボンブラック等が挙げられ、このうち、カーボンブラックを用いることが好ましい。また、外層には、加硫剤、各種加硫促進剤、加工助剤、各種老化防止剤、ステアリン酸亜鉛等の加硫助剤、発泡剤を適宜配合することもできる。
【0029】
・導電性軸体と外層からなる導電性スポンジゴムローラのL/L環境下電気抵抗値
また、本発明では、導電性軸体の外周面に外層のみを形成した導電性スポンジゴムローラのL/L環境下電気抵抗値差(Rv−Rw)が0.3〔Ω〕以下となる外層を用いることが好ましい。0.3以下であれば、転写ムラ等の画像不良を低減できる高硬度でセル径の大きい導電性スポンジゴムローラを容易に得ることができる。なお、Rv−Rwは以下の方法で算出できる。
【0030】
まず、導電性軸体の外周面に外層のみを形成した導電性スポンジゴムローラを作製する。そして、この導電性スポンジゴムローラの軸体に片側4.9Nの荷重が両方に掛かるようにし、外径30mmのアルミニウム製のドラムに接触させて、アルミニウム製ドラムを回転させ、導電性スポンジゴムローラが30rpmで回転するように調整する。次いで、回転が安定した状態で、軸体とアルミニウム製ドラムとの間に100Vの電圧を印加し、直列につながれた内部抵抗1kΩにかかる電圧値を15℃/10%RH(相対湿度)(L/L)環境下で測定する。得られた電圧値からオームの法則により、導電性スポンジゴムローラの電気抵抗値を算出し、その値をRv〔Ω〕とする。また別途、導電性スポンジゴムローラの軸体とアルミニウム製ドラムとの間に4kVの電圧を印加し、同様に導電性スポンジゴムローラの電気抵抗値を算出し、その値をRw〔Ω〕とする。このRvおよびRwより、L/L環境下電気抵抗値差(Rv−Rw)〔Ω〕を算出することができる。
【0031】
すなわち、本発明では、L/L環境下電気抵抗値差(Rv−Rw)が0.3以下のイオン導電性を有する発泡ゴム層(イオン導電性発泡ゴム層)を外層に用いることが好ましい。
【0032】
・内層について
2層の導電性スポンジゴム層のうちの内層は、本発明の要件(平均セル径や電気抵抗値)を満たせば、画像形成装置の分野で公知の導電性スポンジゴム層から選択して用いることができる。例えば、イオン導電性ゴム成分を用いたイオン導電性発泡ゴム層や、電子導電剤を用いた電子導電性発泡ゴム層や、イオン導電性と電子導電性の両方の性質を有する混合発泡ゴム層を用いることができる。また、必要に応じて上述した各種配合剤を内層に含むことができる。
【0033】
導電性を付与する導電性粉体(電子導電剤)としては、例えば、カーボンブラック、黒鉛化カーボンブラック、カーボンナノチューブ、金属、導電性の各種金属酸化物(酸化チタン等)等が挙げられる。本発明において、カーボンブラックは、充填材の他に、導電性を付与する目的でも使用することができる。
【0034】
(発泡セルの平均セル径)
外層断面の発泡セルの平均セル径は、200μm以上、500μm未満である。200μm以上であると、転写効率が良好で、優れた画像形成が可能である。500μm未満であると、ローラの硬度を維持できるため、転写効率が良好である。
【0035】
また、外層断面の発泡セルの平均セル径は、転写効率の観点から、300μm以上であることが好ましく、ローラ硬度の観点から、400μm未満であることが好ましい。
【0036】
また、内層断面の発泡セルの平均セル径は、10μm以上、200μm未満である。10μm以上であると、ローラの硬度が高くなりすぎず、転写効率が良好である。200μm未満であると、ローラの硬度が低くなりすぎず、転写効率が良好である。
【0037】
また、内層断面の発泡セルの平均セル径は、感光体などの対向物との接触幅(ニップ)の確保の観点から、30μm以上であることが好ましく、ローラの低硬度化の観点から、120μm未満であることが好ましい。
【0038】
(電気抵抗値)
22℃、相対湿度55%環境下における、導電性スポンジゴムローラ、外層および内層の電気抵抗値〔Ω〕をそれぞれRx、Ry、Rzで表す。
【0039】
log10Rxは、7.0以上、9.0以下である。log10Rxが7.0以上であれば、画像形成に必要な電荷の移動がスムーズである。9.0以下であれば、画像形成装置印加電圧を低く抑えられる。また、log10Rxは、電荷の移動の観点から、7.5以上であることが好ましく、画像形成装置の印加電圧低減の観点から、8.5以下であることが好ましい。
【0040】
log10Ryは、7.0以上、10.0以下である。log10Ryが7.0以上であれば、画像形成に必要な電荷の移動がスムーズである。10.0以下であれば、画像形成装置印加電圧を低く抑えられる。また、log10Ryは、電荷の移動の観点から、7.5以上であることが好ましく、画像形成装置の印加電圧低減の観点から、9.0以下であることが好ましい。
【0041】
さらに、log10Rzは、3.0以上、9.0以下であることが好ましい。log10Rzが3.0以上であれば、画像形成に必要な電荷の移動を容易にスムーズにすることができる。9.0以下であれば、画像形成装置印加電圧を容易に低く抑えることができる。また、log10Rzは、電荷の移動の観点から、4.0以上であることがより好ましく、画像形成装置の印加電圧低減の観点から、8.0以下であることがより好ましい。
【0042】
(アスカーC硬度)
本発明の導電性スポンジゴムローラのアスカーC硬度(JIS K 6253)は、20度以上、50度以下が好ましい。20度以上であれば、感光体などの対向物との接触幅(ニップ)が大きくなることを容易に防ぐことができ、良好な転写効率を容易に得ることができる。50度以下であれば、感光体などの対向物との接触幅(ニップ)が小さくなることを容易に防ぐことができ、良好な転写効率を容易に得ることができる。また、ニップ過剰の観点から、30度以上であることがより好ましく、ニップ確保の観点から、40度以下であることがより好ましい。
【0043】
(導電性スポンジゴムローラの製造方法)
以下に、本発明に係る導電性スポンジゴムローラの製造方法の一例を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0044】
まず、オープンロールあるいは、バンバリーミキサー又はニーダー等の密閉式混練機等を用いて、各層のゴム成分や充填材を、それぞれ混練した後、加硫剤、加硫促進剤、発泡剤を添加し混合して、各層の未加硫ゴム組成物を得る。
【0045】
次に、得られた各未加硫ゴム組成物を二層同時押出が可能な押出機を使用して成型する。上記二層同時押出が可能な押出機としては、例えば、二台の押出機をクロスヘッドでつなげた装置を用いることができる。このクロスヘッドは内層の未加硫スポンジゴム層と外層の未加硫スポンジゴム層を二層構造に成型するものである。押出機のスクリュー径に制限はなく、上記クロスヘッドを用いれば、どのような層の組み合わせでも成型可能である。
【0046】
上記二台の押出機を使用し二層構造の未加硫ゴムをチューブ状に押し出す際、例えば、内層と外層の厚みが外層1:内層1〜外層1:内層2の範囲に収まるように、押出機の回転数によって厚みを調整することができる。
【0047】
続いて、成型した二層構造の未加硫ゴムチューブを、加硫缶やマイクロ波加硫装置(UHF)と連続加硫炉で加熱することによって加硫して、チューブ状の導電性スポンジゴム成形物を作製することができる。その後、この成形物を研磨することにより所定の外径とすることもできる。
【0048】
次いで、導電性軸体を前記チューブ状の導電性スポンジゴム成形物の内径部に圧入することで、ローラ状の成形体が得られる。この際、導電性軸体と前記チューブ状のゴム加硫物を導電性の接着剤で接着しても良い。また、このローラ状の成形体を所定の外径になるまで研磨することもできる。これにより、導電性スポンジゴムローラを得ることができる。
【0049】
なお、図2は、本発明に用いることのできる押出し加硫装置の一例を示した図である。
この押出し加硫装置は、二台の押出機11(一台のみ図示)、マイクロ波加硫装置(UHF)12、熱風加硫装置(HAV)13、引取機14、定尺切断機15から構成される。
【0050】
前記二層構造の未加硫ゴムチューブをマイクロ波発生装置(UHF)と熱風加硫装置(HAV)によって連続的に加硫することで、低コストでばらつきの少ない二層の導電性発泡ゴム層を有する導電性スポンジゴムローラを容易に得ることができる。
【0051】
この押出し加硫装置では、UHF12内において、上記未加硫ゴムチューブにマイクロ波を照射して、未加硫ゴムチューブを加熱して加硫、もしくは、加硫および発泡させる。続いて、HAV13に搬送し、加硫を完了させる。
【0052】
この際、前記UHF12内で照射するマイクロ波は、2450±50MHzとすることが好ましい。この範囲内とすることにより前記未加硫ゴムチューブに対して、容易に、照射ムラが少なく、かつ効率良く照射することができる。UHF12内での熱風の温度は、150℃以上250℃以下が好ましく、180℃以上230℃以下がより好ましい。150℃以上であれば、導電性スポンジゴムの加硫が効率良くできる。250℃以下であれば、導電性スポンジゴムの熱劣化を容易に防ぐことができる。
【0053】
また、UHF12は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)樹脂でコーティングされたメッシュのベルト、又はPTFE樹脂を被覆したコロで押出機11より押出された未加硫ゴムチューブを搬送することができる。
【0054】
また、HAV13はPTFE樹脂を被覆したコロで搬送を行うことができ、UHF12とHAV13の間を、PTFE樹脂を被覆したコロで連結することができる。
【0055】
加硫後、引取機14によりゴムチューブを引き取り、排出した直後に、定尺切断機15により所望の寸法に切断することで、導電性スポンジゴム(弾性体)チューブを作製することができる。
【0056】
なお、UHF12、HAV13、引取機14のそれぞれの長さ、UHF12とHAV13の間隔、及びHAV13と引取機14の間隔は、条件等により適宜設定することができる。
【0057】
(画像形成装置)
次に、本発明に係る導電性スポンジゴムローラを転写ローラとして用いた画像形成装置の一例を、図面を用いて説明する。
【0058】
図3に示す画像形成装置は、電子写真方式のプロセスカートリッジを使用した画像形成装置であり、図3はその概略構成を示す断面図である。また、図3に示す画像形成装置には、本発明に係る導電性ローラを転写ローラとして具備する転写手段が装着されている。
【0059】
図3に示す画像形成装置は、像担持体として、ドラム型の電子写真感光体1(以下「感光ドラム」という)を備えている。感光ドラム1は、接地された円筒アルミニウム基体の外周面に、有機光導電体(OPC)からなる感光層を設けたものである。この感光ドラム1は、駆動手段(不図示)により、矢印R1方向に所定のプロセススピード(周速度)、例えば50mm/secで回転駆動される。
【0060】
感光ドラム1表面は、接触帯電部材としての帯電ローラ2によって均一に帯電される。帯電ローラ2は、感光ドラム1表面に接触配置されており、感光ドラム1の矢印R1方向の回転に伴って矢印R2方向に従動回転する。帯電ローラ2には、帯電バイアス印加電源(高圧電源)により振動電圧(交流電圧VAC+直流電圧VDC)が印加され、これにより感光ドラム1表面は、−600V(暗部電位Vd)に一様に帯電処理される。帯電後の感光ドラム1表面は、レーザースキャナから出力されてミラーによって反射されたレーザー光3、すなわち、目的の画像情報の時系列電気デジタル画像信号に対応して変調されたレーザー光により走査露光を受ける。これにより、感光ドラム1表面には、目的の画像情報に対応した静電潜像(明電部位Vl=−150V)が形成される。
【0061】
前記静電潜像は、現像装置4の現像スリーブに印加された現像バイアスによって、負に帯電されたトナー5が付着され、トナー像として反転現像される。
【0062】
一方、給紙部(不図示)から給紙ローラ16を経て給搬送された紙等の転写材7が、転写ガイドにガイドされて、感光ドラム1と転写ローラ6との間の転写部(転写ニップ部)Tに、感光ドラム1上のトナー像とタイミングを合わせるようにして供給される。転写部Tに供給された転写材7は、転写バイアスの印加電源により転写ローラ6に印加された転写バイアスによって、表面に感光ドラム1上のトナー像が転写される。このとき、転写材7に転写されないで感光ドラム1表面に残ったトナー(残留トナー)は、クリーニング装置9のクリーニングブレード8によって除去される。
【0063】
転写部Tを通過した転写材7は、感光ドラム1から分離されて定着装置10へ導入され、ここでトナー像の定着処理を受け、画像形成物(プリント)として画像形成装置本体(不図示)外部に排出される。
【実施例】
【0064】
以下に実施例及び比較例を用いて、本発明を詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。なお、実施例1〜4及び比較例1〜3は二層の導電性発泡ゴム層を有する導電性スポンジゴムローラの例であり、表1に記載した配合番号1〜11は導電性発泡ゴム層を形成するための未加硫ゴム組成物の処方例である。各未加硫ゴム組成物に使用した材料は、以下の通りである。
・アクリロニトリルブタジエンゴム
NBR[結合アクリロニトリル量18質量%、商品名:「NipolDN401LL」、日本ゼオン(株)社製]。
・エピクロロヒドリンゴム
ECO1[エチレンオキサイド含量73モル%、商品名:EPION 301、ダイソー株式会社製]、
ECO2[エチレンオキサイド含量64モル%、商品名:Hydrin T3108、日本ゼオン株式会社製]。
・加硫剤
[硫黄(S)、商品名:「サルファックスPMC」、鶴見化学工業(株)社製]。
・加硫促進剤
[ジベンゾチアジルジスルフィド(DM)、商品名:「ノクセラーDM」、大内新興化学工業(株)社製]、
[テトラエチルチウラムジスルフィド(TET)、商品名:「ノクセラーTET」、大内新興化学工業(株)社製]。
・加硫促進助剤
[酸化亜鉛、商品名:「亜鉛華2種」、ハクスイテック(株)社製]。
・加硫促進助剤
[ステアリン酸、商品名:「ステアリン酸つばき」、日油(株)社製]。
・充填材
[カーボンブラック(CB1)、商品名:「旭#15」、ヨウ素吸着量11(mg/g)旭カーボン株式会社製]。
・電子導電剤
[カーボンブラック(CB2)、商品名:「旭#70」、ヨウ素吸着量80(mg/g)旭カーボン株式会社製]。
・発泡剤
[p,p’−オキシビススルホニルヒドラジド(OBSH)、商品名:「ネオセルボンN#1000S」、永和化成(株)社製]。
【0065】
【表1】

【0066】
〔実施例1〕
まず、配合番号1に示すゴム成分および充填材を、密閉式混練機(インターナルミキサー(三菱重工製))を用いて混練した後、加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤および発泡剤を加えて、オープンロールで混合し、外層の未加硫ゴム組成物を得た。同様にして、配合番号9に組成を示す内層の未加硫ゴム組成物を得た。
【0067】
次に、各層の未加硫ゴム組成物をリボン状に成形し、図2に示す二台の押出機11に内層材、外層材と分けて投入した。そして、二台の押出機11より、チューブ状に成形して内層と外層の厚みが1:1になるように調整して押出し、二層構造の未加硫ゴムチューブとし、押出機11より押し出された直後に熱風により加熱されたUHF12内に搬送した。なお、押出した際の内層および外層の厚みは、それぞれ2.0mmであった。
【0068】
ついで、UHF12内において、この未加硫ゴムチューブに、2450MHzのマイクロ波を照射して、未加硫ゴムチューブを加熱して加硫および発泡した。その際、UHF12内での熱風の温度は、200℃とした。続いて、HAV13に搬送し、加硫を完了させた。
【0069】
その後、引取機14によりゴムチューブを引き取り、排出した直後に、定尺切断機15によりゴムチューブの長手方向の長さを220mmに切断して、導電性発泡ゴムチューブを作製した。次いで、φ(直径)6mmの導電性軸体(ニッケルメッキした鉄芯)を前記導電性発泡ゴムチューブの内径部に圧入した。なお、その際、軸体とゴムチューブとの間には接着剤は使用しなかった。その後、このローラ状の成形体を外径がφ12.5mmになるように研磨し、導電性スポンジゴムローラを得た。なお、このとき、外層のスポンジゴム層が最低でも1.0mm以上の厚みが残るようにした。
【0070】
(セル径の測定)
導電性軸体が挿入される前の導電性発泡ゴムチューブを、長手方向(導電性軸体の軸方向と同じ方向)の3点で5mm幅に、長手方向に対して垂直に切断し、それぞれの断面を電子顕微鏡にて観測し、最大の発泡セルの径から小さいセル径へと順に30個のセル径を測定した。そして、内層、外層それぞれについて測定した30個の発泡セル径の相加平均値を求めて、内層断面および外層断面の発泡セルの平均セル径とした。
【0071】
(導電性スポンジゴムローラの電気抵抗値)
作製した導電性スポンジゴムローラの軸体に片側4.9Nの荷重が両方に掛かるようにし、外径30mmのアルミニウム製のドラムに接触させて、アルミニウム製ドラムを回転させ、導電性スポンジゴムローラが30rpmで回転するように調整した。次いで、回転が安定した状態で、軸体とアルミニウム製ドラムとの間に2kVの電圧を印加し、直列につながれた内部抵抗1kΩにかかる電圧値を22℃/55%RH(N/N)環境下で測定した。得られた電圧値からオームの法則により、導電性スポンジゴムローラの電気抵抗値Rx〔Ω〕を算出し、さらにlog10Rxを算出した。
【0072】
(外層の電気抵抗値)
外層の未加硫ゴム組成物を用いて、導電性軸体の外周面上に外層のみが形成された導電性スポンジゴムローラを作製し、前記導電性スポンジゴムローラの電気抵抗値と同様にして、外層の電気抵抗値Ry〔Ω〕求め、さらにlog10Ryを算出した。なお、導電性軸体の電気抵抗値は、導電性発泡ゴム層の電気抵抗値と比較して非常に小さいため、導電性軸体による影響は無視することができる。
【0073】
(内層の電気抵抗値)
内層の未加硫ゴム組成物を用いて、導電性軸体の外周面上に内層のみが形成された導電性スポンジゴムローラを作製し、前記導電性スポンジゴムローラの電気抵抗値と同様にして、内層の電気抵抗値Rz〔Ω〕求め、さらにlog10Rzを算出した。
【0074】
(導電性スポンジゴムローラの硬さ測定)
作製した導電性スポンジゴムローラの導電性発泡ゴム層部分にアスカーC硬度計を4.9N荷重でゆっくり押し当て、5秒後の数値を測定した。なお、測定方法はJIS K 6253に準じた。
【0075】
(画像評価)
作製した導電性スポンジゴムローラを、モノクロレーザープリンター(レーザージェットP1006(商品名))の転写ローラとしてセットし、N/N環境下(22.0℃/55%RH)で単色ベタ画像を印刷した。得られた単色ベタ画像を目視により観察し、色ムラおよび色抜けのレベルを以下により評価した。
○:色ムラ、色抜け共に観察されない。
×:色ムラおよび色抜けの少なくとも一方が観察される。
【0076】
【表2】

【0077】
〔実施例2〜6、比較例1〜3〕
導電性発泡ゴム層の外層および内層に用いる未加硫ゴム組成物を表2示す配合に変更した以外は、実施例1と同様にして導電性スポンジゴムローラを作製し、評価を行った。
【0078】
表2より、導電性スポンジゴムローラが本発明の範囲内のもの(実施例1から6)であると、良好な画像が得られることが分かる。
【0079】
一方、比較例1では、外層のセル径が0μmであり、転写効率が低下し、画像不良が発生した。比較例2では、外層の電気抵抗値が7.0未満であり、トナーの転写抜けが発生した。比較例3では、ローラの電気抵抗値が9.0を超えており、トナーの転写抜けが発生した。
【符号の説明】
【0080】
1 感光ドラム
2 帯電ローラ
3 レーザー光
4 現像装置
5 トナー
6 導電性スポンジゴムローラ(転写ローラ)
7 転写材
8 クリーニングブレード
9 クリーニング装置
10 定着装置
11 押出機
12 マイクロ波加硫装置(UHF)
13 熱風加硫装置(HAV)
14 引取機
15 定尺切断機
16 給紙ローラ
61 導電性軸体
62 導電性スポンジゴム内層
63 導電性スポンジゴム外層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性軸体を有し、該導電性軸体の外周面上に2層の導電性発泡ゴム層を有する導電性スポンジゴムローラであって、
該2層の導電性発泡ゴム層のうちの表面側の層である外層の断面における発泡セルの平均セル径が、200μm以上、500μm未満であり、
該2層の導電性発泡ゴム層のうちの導電性軸体側の層である内層の断面における発泡セルの平均セル径が、10μm以上、200μm未満であり、
22℃、相対湿度55%環境下における該導電性スポンジゴムローラの電気抵抗値をRx[Ω]で表したときに、log10Rxが7.0以上、9.0以下であり、
22℃、相対湿度55%環境下における外層の電気抵抗値をRy[Ω]で表したときに、log10Ryが7.0以上、10.0以下である
ことを特徴とする導電性スポンジゴムローラ。
【請求項2】
導電性発泡ゴム層のゴム成分が少なくともエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル3元共重合体(A)を含有し、(A)がアリルグリシジルエーテル単位を3mol%以上10mol%以下含有することを特徴とする請求項1に記載の導電性スポンジゴムローラ。
【請求項3】
22℃、相対湿度55%環境下における内層の電気抵抗値をRz[Ω]で表したときに、log10Rzが3.0以上、9.0以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の導電性スポンジゴムローラ。
【請求項4】
前記導電性スポンジゴムローラのアスカーC硬度(JIS K 6253)が、20度以上、50度以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性スポンジゴムローラ。
【請求項5】
画像形成装置に使用する転写ローラであって、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性スポンジゴムローラであることを特徴とする転写ローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−155263(P2012−155263A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16372(P2011−16372)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】