説明

導電性フィルム

【課題】 表面反射を抑制することにより高い光線透過率を有する導電性高分子膜を備えた導電性フィルムを提供する。
【解決手段】 プラスチックフィルムの少なくとも片面に導電性高分子膜を備えた導電性フィルムであって、前記プラスチックフィルムの屈折率が1.60〜1.80であり、前記導電性高分子膜の屈折率が1.40〜1.48であり、前記導電性高分子膜の膜厚が50〜120nmであることを特徴とする導電性フィルムであり、これにより、表面反射が抑制され反射率が極めて小さく透明性に優れたものとなるとともに、高い透明性を維持しながら導電性に優れたものとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムに導電性高分子膜を形成した導電性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
透明導電性材料は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等のディスプレイデバイス、太陽電池、タッチパネルなどの透明電極、ならびに電磁波シールド材などの透明導電膜として極めて有用であるため、幅広く利用されている。
【0003】
従来、透明導電膜は、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛等の導電性材料を、スパッタリング法、または蒸着法によりガラス板や透明フィルムなど基材上に堆積させることにより形成していた。しかし、スパッタリング法、または蒸着法を用いた透明導電膜の製造は、高額な大型の生産設備を必要とし、少量多品種の生産には適さない。また、このスパッタリング法や蒸着法により形成したITOなどの金属酸化物の透明導電膜は、フィルムなどの基材の撓みによりクラックが入りやすく、そのため導電性の低下が起こりやすいという問題があった。
【0004】
一方、低温かつ低コストで成膜可能な透明導電膜の形成方法として、透明フィルムなどの基材にウェットプロセスにより導電性高分子膜を製膜する方法が提案されている。導電性高分子により形成される透明導電性高分子膜は、膜自体に柔軟性があるため、クラックなどの問題が生じにくい。また、導電性高分子膜を塗布形成する透明導電性フィルムの製造方法は、製造コストが比較的安く、生産性に優れるという利点もある。
【0005】
近年は、このような導電性高分子膜を形成した透明導電性フィルムは、透明タッチパネルなどの用途に使用するために、その光線透過率などの光学的特性のさらなる改善が望まれている。そして、表面反射を抑制して光線透過率を向上させた導電性フィルムとしては、例えば、特許文献1には、導電性高分子膜と基材フィルムとの間に屈折率が1.10〜1.35の低屈折率層を設けた導電性フィルムが開示され、また、特許文献2には、導電性高分子膜と基材フィルムとの間に屈折率が1.63〜1.93の中屈折率層を設けた導電性フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−294532号公報
【特許文献2】特開2006−302562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に開示のものは、全光線透過率が81〜83%程度で透明性が十分に高いとは言えないばかりでなく、導電性高分子膜と基材フィルムとの間に特定の屈折率の層を設けた導電性フィルムであり、特定の屈折率の層を設けるための工程が必要である。このため、製造コストが増加し、生産性が低下するという課題がある。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するもので、余分な工程が不要で、製造コストが比較的安く、生産性に優れるとともに、表面反射を抑制することにより高い光線透過率を有する導電性高分子膜を備えた導電性フィルムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の導電性フィルムは、プラスチックフィルムの少なくとも片面に導電性高分子膜を備えた導電性フィルムであって、前記プラスチックフィルムの屈折率が1.60〜1.80であり、前記導電性高分子膜の屈折率が1.40〜1.48であり、前記導電性高分子膜の膜厚が50〜120nmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の導電性フィルムによれば、プラスチックフィルムの屈折率が1.60〜1.80であり、導電性高分子膜の屈折率が1.40〜1.48であり、導電性高分子膜の膜厚が50〜120nmであるとしているので、反射率を2.5%以下に抑制することができ、全光線透過率が89〜91%で透明性に優れた導電性フィルムとなるとともに、高い透明性を維持しながら導電性に優れたものとなる。また、導電性高分子膜をプラスチックフィルムに直接形成しているので、特定の屈折率の層を設ける工程が不要で、製造コストが比較的安く、生産性に優れた導電性フィルムとなる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の導電性フィルムについて、以下に詳細に説明する。本発明の導電性フィルムは、プラスチックフィルムの少なくとも片面に導電性高分子膜を備えた導電性フィルムであって、前記プラスチックフィルムの屈折率が1.60〜1.80であり、前記導電性高分子膜の屈折率が1.40〜1.48であり、前記導電性高分子膜の膜厚が50〜120nmである構成としたものである。
【0012】
本発明で用いられるプラスチックフィルムは、後記の実施例で詳細に説明するように、光の反射を抑制する効果の観点から、その屈折率が1.60〜1.80のものである。屈折率(n)が1.60〜1.80のプラスチックフィルムの材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET、n=1.65)、ポリエチレンナフタレート(PEN、n=1.75)等のポリエステル、およびポリエーテルスルフォン(PES、n=1.65)等が用いられる。中でも、好ましくは、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等からなる2軸延伸ポリエステル樹脂フィルムである。特に、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、透明性、機械的特性に優れ、比較的安価な点等で好ましい。ポリカーボネート(PC、n=1.59)やポリメタクリル酸メチル(PMMA、n=1.49)のフィルムは、屈折率(n)が1.60未満であり好ましくない。また、プラスチックフィルムの厚さは、12〜300μmが好ましい。プラスチックフィルムの厚さが、12μmより薄い場合や300μmより厚い場合には、導電性フィルムの製造時および使用時における取り扱い性が低下するので好ましくない。
【0013】
そして、本発明の導電性高分子膜は、上記のプラスチックフィルムに直接形成しているものであり、後記の実施例で詳細に説明するように、光の反射を抑制する効果の観点および導電性の観点から、その屈折率を1.40〜1.48とし、膜厚を50〜120nmとしたものである。
【0014】
続いて、上記の本発明の導電性高分子膜の形成に用いられる塗料について、詳細に説明する。本発明の導電性高分子膜の形成に用いられる塗料は、高い透明性と高い導電性とがともに確保できるという観点から、導電性高分子がポリ(3,4−エチレンジオキシ)チオフェンであり、ドーパントがポリスチレンスルホン酸またはポリスチレンスルホン酸の共重合体である導電性高分子組成物を含有する。すなわち、導電性高分子とドーパントの組み合わせが、ポリ(3,4−エチレンジオキシ)チオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)構造の導電性高分子組成物である。
【0015】
そして、本発明の導電性高分子膜の形成に用いられる塗料は、導電性高分子膜の屈折率を調整するため、およびプラスチックフィルムとの密着性を高めるために、バインダー樹脂を含有する。バインダー樹脂の含有量は、導電性高分子膜の屈折率、導電性、密着性等の観点から、固形分重量として、導電性高分子組成物である導電性高分子とドーパントの固形分重量の0.03〜0.3倍とすることが好ましい。バインダー樹脂の量によって屈折率が異なり、樹脂成分が多くなれば層の屈折率が高くなるため好ましくない。密着性と屈折率の観点から樹脂成分の量を調整するのが好ましい。
【0016】
バインダー樹脂の成分としては、導電性高分子組成物であるPEDOT/PSSが水分散性の材料であるため、水分散体もしくは水溶性の樹脂が好ましい。具体的には、エステル基、グリシジル基を有する樹脂が好ましく、これらの樹脂のモノマー、オリゴマー、ポリマーを組み合わせることが出来る。より詳しくは、エステル基を有する樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート水分散体、ポリエチレンナフタレート水分散体、ポリブチレンテレフタレート水分散体、ポリブチレンナフタレート水分散体などが挙げられる。グリシジル基を有する樹脂としては、エピクロルヒドリンポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0017】
本発明の導電性高分子膜の形成に用いられる塗料の溶媒としては、特に、水または水とアルコールの混合液が好ましい。アルコールは、メタノールまたはエタノール、1−プロピルアルコール、2−プロピルアルコールが好ましい。これらは単独で用いても、併用してもよい。また、導電性高分子組成物とバインダー樹脂とを溶媒に分散させる方法としては、例えば、ディスクミル法、ボールミル法、超音波分散法などの公知の方法を適用することができる。
【0018】
本発明の導電性高分子膜の形成に用いられる塗料は、上記のほかに必要に応じて、二次ドーパント、安定な分散や基材への濡れ性を高めるための界面活性剤、レベリング剤、有機溶媒など、種々の添加剤を添加することも可能である。
【0019】
本発明の導電性高分子膜の形成に用いられる塗料の粘度は、導電性高分子膜を形成する際の塗布方法、および形成すべき膜厚に応じて調製することが、好ましい。なお、塗布方法としては、例えば、グラビアコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法などの公知の塗布方法を採用することができる。
【実施例】
【0020】
以下に、本発明の導電性フィルムについて、実施例に基づき詳細に説明する。ただし、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0021】
本実施例においては、本発明の範囲外の比較例も含めて、試料No.1〜15の15種類の導電性フィルムを作製して、これらを評価した。
【0022】
試料No.1〜15の15種類の導電性フィルムの具体的内容は、(表1)に示すように、用いたプラスチックフィルムが、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、およびポリメタクリル酸メチル(PMMA)フィルムの3種類である。また、これらのプラスチックフィルムに形成した導電性高分子膜は、その屈折率を1.44〜1.52の範囲の5水準、その膜厚を30nm〜160nmの範囲の5水準で変化させた。そして、これらの導電性高分子膜を、上記の3種類のプラスチックフィルムと組み合わせて、(表1)に示すように、試料No.1〜15の15種類の導電性フィルムを作製した。
【0023】
なお、プラスチックフィルムの屈折率は、プラスチックフィルムを試料として、反射分光膜厚計FE−3000(大塚電子製)を用いて波長300nm〜800nmの範囲における分光スペクトルを測定し、スペクトルとプラスチックフィルムの実測厚さとから算出して屈折率を求めた。プラスチックフィルムの実測厚さは、ダイヤルゲージ(シチズン社製、最小目盛り0.5μm)を用い、JISK5600−1−7に準じて測定した。
【0024】
上記により得られた、本実施例で用いたプラスチックフィルムの屈折率の測定値は、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが1.65、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムが1.75、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)フィルムが1.49であった。
【0025】
また、導電性高分子膜の屈折率は、導電性高分子膜を形成したプラスチックフィルムを試料として、反射分光膜厚計FE−3000(大塚電子製)を用いて波長300nm〜800nmの範囲における分光スペクトルを測定し、スペクトル、プラスチックフィルムの屈折率、および導電性高分子膜の膜厚とから算出して屈折率を求めた。導電性高分子膜の膜厚は、触針式段差膜厚計(Tencor P−6)を用いて測定した。具体的には、プラスチックフィルム上に塗工された導電性高分子膜をエタノールで一部分を除去し、導電性高分子膜が除去された部分と除去されていない部分との段差を測定し、その差を膜厚とした。
【0026】
次に、試料No.1〜15の15種類の導電性フィルムの作製方法について、具体的に説明する。はじめに、試料No.1の導電性フィルムは、以下のようにして作製した。
【0027】
まず、試料No.1の導電性フィルムの導電性高分子膜を形成するための塗料を作製した。ポリ(3,4−エチレンジオキシ)チオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)構造の導電性高分子組成物CleviosPH500(ヘレウス社製、固形分量1.2%)10部、イオン交換水3部、2−プロパノール7部、ジメチルスルフォキシド0.5部、レベリング剤としてノニオン系界面活性剤(ノニオンE−210、日油株式会社製)0.1部、および、バインダー樹脂としてポリエステル水分散体(高松油脂株式会社製、ペスレジンA−645GH、固形分量30%)0.05部を秤量して配合し、ディスパーミルで良く攪拌混合して導電性高分子膜を形成するための塗料を得た。なお、この塗料のバインダー樹脂の含有量は、固形分重量として、導電性高分子とドーパントとの固形分重量の0.125倍とした。
【0028】
この塗料を、プラスチックフィルムとして準備した厚さ125μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、屈折率=1.65)上にワイヤーバーで塗工し、120℃、10分間加熱乾燥して、導電性高分子膜の膜厚が30nmの試料No.1の導電性フィルムを得た。この導電性高分子膜の屈折率の測定結果は1.46であった。
【0029】
試料No.2の導電性フィルムの作製は、導電性高分子膜の膜厚を50nmとした以外は試料No.1の導電性フィルムの作製と同様にして行った。
【0030】
試料No.3の導電性フィルムの作製は、導電性高分子膜の膜厚を100nmとした以外は試料No.1の導電性フィルムの作製と同様にして行った。
【0031】
試料No.4の導電性フィルムの作製は、導電性高分子膜の膜厚を120nmとした以外は試料No.1の導電性フィルムの作製と同様にして行った。
【0032】
試料No.5の導電性フィルムの作製は、導電性高分子膜の膜厚を160nmとした以外は試料No.1の導電性フィルムの作製と同様にして行った。
【0033】
試料No.6の導電性フィルムの作製は、プラスチックフィルムとして、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに代えて、厚さ125μmの2軸延伸ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、屈折率=1.75)を用いた以外は試料No.3の導電性フィルムの作製と同様にして行った。
【0034】
試料No.7の導電性フィルムの作製は、プラスチックフィルムとして、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに代えて、厚さ125μmのポリメタクリル酸メチル(PMMA)フィルム(住友化学株式会社製、屈折率=1.49)を用いた以外は試料No.3の導電性フィルムの作製と同様にして行った。
【0035】
試料No.8の導電性フィルムの作製は、導電性高分子膜を形成するための塗料として、バインダー樹脂であるポリエステル水分散体の量を0.1部とした塗料を用いた以外は試料No.1の導電性フィルムの作製と同様にして行った。なお、用いた塗料のバインダー樹脂の含有量は、固形分重量として、導電性高分子とドーパントとの固形分重量の0.25倍とした。この試料No.8の導電性フィルムの導電性高分子膜の屈折率の測定結果は1.48であった。
【0036】
試料No.9の導電性フィルムの作製は、導電性高分子膜の膜厚を50nmとした以外は試料No.8の導電性フィルムの作製と同様にして行った。
【0037】
試料No.10の導電性フィルムの作製は、導電性高分子膜の膜厚を100nmとした以外は試料No.8の導電性フィルムの作製と同様にして行った。
【0038】
試料No.11の導電性フィルムの作製は、導電性高分子膜の膜厚を120nmとした以外は試料No.8の導電性フィルムの作製と同様にして行った。
【0039】
試料No.12の導電性フィルムの作製は、導電性高分子膜の膜厚を160nmとした以外は試料No.8の導電性フィルムの作製と同様にして行った。
【0040】
試料No.13の導電性フィルムの作製は、導電性高分子膜を形成するための塗料として、バインダー樹脂であるポリエステル水分散体の量を0.02部とした塗料を用いた以外は試料No.3の導電性フィルムの作製と同様にして行った。なお、用いた塗料のバインダー樹脂の含有量は、固形分重量として、導電性高分子とドーパントとの固形分重量の0.05倍とした。この試料No.8の導電性フィルムの導電性高分子膜の屈折率の測定結果は1.44であった。
【0041】
試料No.14の導電性フィルムの作製は、導電性高分子膜を形成するための塗料として、バインダー樹脂であるポリエステル水分散体の量を0.2部とした塗料を用いた以外は試料No.3の導電性フィルムの作製と同様にして行った。なお、用いた塗料のバインダー樹脂の含有量は、固形分重量として、導電性高分子とドーパントとの固形分重量の0.5倍とした。この試料No.8の導電性フィルムの導電性高分子膜の屈折率の測定結果は1.50であった。
【0042】
試料No.15の導電性フィルムの作製は、導電性高分子膜を形成するための塗料として、バインダー樹脂であるポリエステル水分散体の量を0.5部とした塗料を用いた以外は試料No.3の導電性フィルムの作製と同様にして行った。なお、用いた塗料のバインダー樹脂の含有量は、固形分重量として、導電性高分子とドーパントとの固形分重量の1.25倍とした。この試料No.8の導電性フィルムの導電性高分子膜の屈折率の測定結果は1.52であった。
【0043】
以上により得られた試料No.1〜15の15種類の導電性フィルムについて、シート抵抗値(Ω/□)、全光線透過率(%)、および反射率(%)を評価した。これらの評価結果を、導電性フィルムの構成の具体的内容とともに、(表1)に示す。なお、それぞれの評価は、次のようにして行った。
【0044】
シート抵抗値は、(株)三菱化学アナリテック製表面抵抗測定器MCP−T610を用いて、JIS K7194に準じて、四端子法により測定した。電圧端子間距離は5mmとした。
【0045】
全光線透過率は、日本電色工業(株)製NDH2000を用い、JIS K7105に準じて、入射光強度に対する透過光強度の割合を全光線透過率として測定した。全光線透過率の測定は、導電性高分子膜側を入射光側として測定した。
【0046】
反射率は、分光光度計(島津製作所製、UV−3100PC)を用い、導電性高分子膜側の測定面から5度の入射角で波長300〜800nmの範囲で反射率を測定し、その中の波長550nmにおける反射率で評価した。
【0047】
【表1】

【0048】
(表1)の評価結果に示したように、試料No.2〜4、試料No.6、試料No.9〜11、および試料No.13の導電性フィルムは、いずれも、反射率が2.5%以下であり極めて小さく全光線透過率が89〜91%で、透明性の高いものとなった。また、高い透明性を確保しながら、シート抵抗値は2000Ω/□以下であり、導電性に優れた導電性フィルムが得られた。
【0049】
上記の、試料No.2〜4、試料No.6、試料No.9〜11、および試料No.13の導電性フィルムは、いずれも、用いたプラスチックフィルムが、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムまたはポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムであり、その屈折率が1.60〜1.80範囲内であり、導電性高分子膜の屈折率が1.40〜1.48範囲内であり、導電性高分子膜の膜厚が50〜120nmである。プラスチックフィルムの屈折率、および導電性高分子膜の屈折率と膜厚をこの範囲内とすることにより、得られた導電性フィルムは、反射率を2.5%以下に抑制することができ、全光線透過率が89〜91%で透明性に優れた導電性フィルムとなるとともに、高い透明性を維持しながら導電性に優れたものとなることが、確認できた。
【0050】
上記の試料以外の、※を付した、試料No.1、試料No.5、試料No.7、試料No.8、試料No.12、試料No.14、および試料No.15の導電性フィルムは、いずれも、本発明の範囲外の比較例であり、いずれも、反射率が3%以上で全光線透過率が89未満であり透明性に劣っていた。また、導電性高分子膜の膜厚が30nmである試料No.1および試料No.8の導電性フィルムは、シート抵抗値も大きく、導電性にも劣っていた。
【0051】
以上説明したように、本発明の導電性フィルムは、プラスチックフィルムの少なくとも片面に導電性高分子膜を備えた導電性フィルムであって、前記プラスチックフィルムの屈折率が1.60〜1.80であり、前記導電性高分子膜の屈折率が1.40〜1.48であり、前記導電性高分子膜の膜厚が50〜120nmである構成としたものである。
【0052】
そして、本発明の導電性フィルムによれば、表面反射が抑制され反射率が極めて小さく透明性に優れたものとなるとともに、高い透明性を維持しながら導電性に優れたものとなる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明に係る導電性フィルムは、反射率が極めて小さく透明性に優れたものとなるとともに、高い透明性を維持しながら導電性に優れたものとなるので、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等のディスプレイデバイス、太陽電池、タッチパネルなどの透明電極として、特に有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフィルムの少なくとも片面に導電性高分子膜を備えた導電性フィルムであって、前記プラスチックフィルムの屈折率が1.60〜1.80であり、前記導電性高分子膜の屈折率が1.40〜1.48であり、前記導電性高分子膜の膜厚が50〜120nmであることを特徴とする導電性フィルム。
【請求項2】
プラスチックフィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルムまたはポリエチレンナフタレートフィルムであることを特徴とする請求項1に記載の導電性フィルム。
【請求項3】
導電性高分子膜は、導電性高分子がポリ(3,4−エチレンジオキシ)チオフェンでありドーパントがポリスチレンスルホン酸またはポリスチレンスルホン酸の共重合体である導電性高分子組成物と、バインダー樹脂とを含む膜であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の導電性フィルム。
【請求項4】
バインダー樹脂は、エステル基、グリシジル基を有するモノマー、オリゴマー、ポリマーの中から選ばれる一種または二種以上であることを特徴とする請求項3に記載の導電性フィルム。
【請求項5】
プラスチックフィルムの少なくとも片面に導電性高分子膜を備えた導電性フィルムであって、前記プラスチックフィルムはポリエチレンテレフタレートフィルムまたはポリエチレンナフタレートフィルムであり、前記導電性高分子膜は、導電性高分子がポリ(3,4−エチレンジオキシ)チオフェンでありドーパントがポリスチレンスルホン酸またはポリスチレンスルホン酸の共重合体である導電性高分子組成物と、バインダー樹脂として前記導電性高分子組成物の固形分重量に対して0.03〜0.3倍の固形分重量のポリエステル系樹脂とを含む膜であり、前記導電性高分子膜の膜厚が50〜120nmであることを特徴とする導電性フィルム。



【公開番号】特開2013−105520(P2013−105520A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246290(P2011−246290)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【特許番号】特許第4977796号(P4977796)
【特許公報発行日】平成24年7月18日(2012.7.18)
【出願人】(000235783)尾池工業株式会社 (97)
【Fターム(参考)】