説明

導電性分散液

【課題】基材との優れた密着性及び高い導電性を有する膜が成膜可能な導電性分散液を提供する。
【解決手段】ハロゲン含有量が6000ppm以下であるプロトネーションされた置換又は未置換のポリアニリン、炭素数3以上のアルコール性化合物、フェノール性化合物、および導電性高分子微粒子からなり、A/B≦0.4(Aは導電性分散液に含まれる前記プロトネーションされた置換又は未置換のポリアニリンの重量[g]であり、Bは導電性分散液に含まれる前記導電性高分子微粒子の重量[g])を満たす導電性分散液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリチオフェン系高分子、ポリピロール系高分子及びポリアニリン系高分子に代表される導電性高分子は、導電性及び加工性の観点から、注目されている機能性材料である。これら高分子は、帯電防止用コーティング剤、コンデンサ極材、有機ELディスプレイ部材等の市場を獲得し、さらに応用範囲を広げつつある。
【0003】
上記導電性高分子は、分子鎖同士の相互作用が強く、不溶且つ不融の材料であるため、これら導電性高分子からなる微粒子が分散した導電性分散液で市販されている。また、近年の環境問題への関心の高まりを受け、水又はアルコール系の分散液が主流となりつつある。
【0004】
このように導電性高分子からなる微粒子の分散系は注目を集めている材料であるが、同時に問題点も指摘されている。導電性高分子の主用途の1つに、帯電防止コーティングが挙げられるが、基材に導電性微粒子分散液をコーティングした場合、微粒子がただ単に基材上に付着しただけであるので、塗膜強度が弱い及び基材との密着性が悪いという問題がある。
【0005】
ポリチオフェン系高分子、ポリピロール系高分子及びポリアニリン系高分子に代表される導電性高分子からなる微粒子の分散系に共通するこの問題を解決する方策として、バインダー樹脂を添加する方法が挙げられる(特許文献1〜3)。
しかし、バインダー樹脂は絶縁体であるか、又は導電性が低いため、バインダーを用いて製造した導電膜は導電性を高くすることができなかった。
【0006】
一方で、溶剤可溶型の導電性高分子の開発も盛んである。
溶剤可溶型導電性高分子の長所としては、基材に塗布した際に、均一な導電膜の形成が可能で、基材との密着性が良好とすることができる、及び導電性高分子が可溶型なので、取り扱い時の高分子粒子の凝集の問題がない、という点が挙げられる。
【0007】
上記溶剤可溶型導電性高分子として、特許文献4は溶剤可溶型ポリアニリンを開示している。この高分子は、溶剤可溶で高い導電性を有する材料であるが、ポリアニリン中に塩素元素を含むために、基材周囲の金属部材を腐食させてしまうおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2006/082944号パンフレット
【特許文献2】特開2008−050607号公報
【特許文献3】特開2010−033881号公報
【特許文献4】WO2005/052058号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、基材との優れた密着性及び高い導電性を有する膜が成膜可能な導電性分散液を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、以下の導電性分散液等が提供される。
1.下記(a)〜(d)を含み、下記式(1)を満たす導電性分散液。
(a)ハロゲン含有量が6000ppm以下であるプロトネーションされた置換又は未置換のポリアニリン
(b)炭素数3以上のアルコール性化合物
(c)フェノール性化合物
(d)導電性高分子微粒子
A/B≦0.4 (1)
(式中、Aは導電性分散液に含まれる前記プロトネーションされた置換又は未置換のポリアニリンの重量[g]であり、Bは導電性分散液に含まれる前記導電性高分子微粒子の重量[g]である。)
2.下記(a’)〜(d)を含み、下記式(1)を満たすハロゲン含有量が6000ppm以下である導電性分散液。
(a’)プロトネーションされた置換又は未置換のポリアニリン
(b)炭素数3以上のアルコール性化合物
(c)フェノール性化合物
(d)導電性高分子微粒子
A/B≦0.4 (1)
(式中、Aは導電性分散液に含まれる前記プロトネーションされた置換又は未置換のポリアニリンの重量[g]であり、Bは導電性分散液に含まれる前記導電性高分子微粒子の重量[g]である。)
3.下記(a)〜(e)を含み、下記式(2)を満たす導電性分散液。
(a)ハロゲン含有量が6000ppm以下であるプロトネーションされた置換又は未置換のポリアニリン
(b)炭素数3以上のアルコール性化合物
(c)フェノール性化合物
(d)導電性高分子微粒子
(e)酸性物質
C/D≧0.5 (2)
(式中、Cは導電性分散液に含まれる前記酸性物質が有する酸性官能基の総物質量[mol]であり、Dは導電性分散液に含まれる前記プロトネーションされた置換又は未置換のポリアニリンが有する窒素原子の総物質量[mol]である。)
4.下記(a’)〜(e)を含み、下記式(2)を満たすハロゲン含有量が6000ppm以下である導電性分散液。
(a’)プロトネーションされた置換又は未置換のポリアニリン
(b)炭素数3以上のアルコール性化合物
(c)フェノール性化合物
(d)導電性高分子微粒子
(e)酸性物質
C/D≧0.5 (2)
(式中、Cは導電性分散液に含まれる前記酸性物質が有する酸性官能基の総物質量[mol]であり、Dは導電性分散液に含まれる前記プロトネーションされた置換又は未置換のポリアニリンが有する窒素原子の総物質量[mol]である。)
5.前記酸性物質がスルホン酸化合物である3又は4に記載の導電性分散液。
6.下記式(6)を満たす1〜5のいずれかに記載の導電性分散液。
G/H≦0.5 (6)
(式中、Gは導電性分散液に含まれる水の重量[g]であり、Hは導電性分散液の総重量[g]である。)
7.下記式(3)を満たす1〜6のいずれかに記載の導電性分散液。
E:F=99:1〜60:40 (3)
(式中、Eは導電性分散液に含まれる前記炭素数3以上のアルコール性化合物の重量[g]であり、Fは導電性分散液に含まれる前記フェノール性化合物の重量[g]である。)
8.前記プロトネーションされた置換又は未置換のポリアニリンが、有機スルホン酸によってプロトネーションされた置換又は未置換のポリアニリンである1〜7のいずれかに記載の導電性分散液。
9.前記プロトネーションされた置換又は未置換のポリアニリンが、コハクスルホン酸誘導体によってプロトネーションされた置換又は未置換のポリアニリンである1〜8のいずれかに記載の導電性分散液。
10.前記フェノール性化合物が、1核1価フェノール性化合物である1〜9のいずれかに記載の導電性分散液。
11.前記導電性高分子微粒子がポリチオフェン系微粒子である1〜10のいずれかに記載の導電性分散液。
12.前記導電性高分子微粒子がポリ3,4−エチレンジオキシチオフェン及びポリスチレンスルホン酸からなる1〜11のいずれかに記載の導電性分散液。
13.1〜12のいずれかに記載の導電性分散液を用いて製造された導電性物品。
14.1〜12のいずれかに記載の導電性分散液を用いて製造されたコンデンサ。
15.13に記載の導電性物品及び/又は14に記載のコンデンサを含む物品。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基材との優れた密着性及び高い導電性を有する膜が成膜可能な導電性分散液を提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第1の導電性分散液は、下記成分(a)、(b)、(c)及び(d)成分を含む。
(a)ハロゲン含有量が6000ppm以下であるプロトネーションされた置換又は未置換のポリアニリン
(b)炭素数3以上のアルコール性化合物
(c)フェノール性化合物
(d)導電性高分子微粒子
【0013】
(a)プロトネーションされた置換又は未置換のポリアニリン
プロトネーションされたポリアニリンとは、プロトネーションされることによって導電性を示すポリアニリンである。即ち、プロトネーションされたポリアニリンとは、ポリアニリンとプロトン酸との複合体(エメラルディン塩)である。
【0014】
置換又は未置換のポリアニリンの置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、ヘキシル基、オクチル基等の直鎖又は分岐の炭化水素基、メトキシ基等のアルコキシ基、及び、フェノキシ基等のアリーロキシ基が挙げられる。
ポリアニリンは、上記置換基を2種以上含んでもよい。
【0015】
ポリアニリンのプロトネーションに用いるドーパントとしては、下記式(I)で表される有機プロトン酸又はその塩が挙げられる。
A−R (I)
(式中、Aは、スルホン酸(SOH)、セレン酸(SeOH)、ホスホン酸(POH)、カルボン酸(COH)、硫酸水素塩(SONa等)、セレン酸水素塩(SeONa等)、又はリン酸水素塩(PONa等)である。
はアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルカノイル基、アルキルチオ基、アルキルチオアルキル基、アルキルアリール基、アルキルスルフィニル基、アルコキシアルキル基、アルキルスルホニル基、アルコキシカルボニル基、カルボン酸、アルキルコハク酸である。尚、上記アルキル基及びアルコキシ基はそれぞれ炭素数1〜20である。)
【0016】
式(I)で表されるA−Rは、好ましくは有機スルホン酸であり、より好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸又はコハクスルホン酸誘導体である。
アルキルベンゼンスルホン酸又はコハクスルホン酸誘導体でプロトネーションした場合、ポリアニリンの溶剤への溶解性を向上させることができる。
【0017】
プロトネーションされた置換又は未置換のポリアニリンのハロゲン含有量は6000ppm以下である。好ましくは、塩素含有量が6000ppmである。ポリアニリンのハロゲン含有量は、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは100ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下である。ポリアニリンは、ハロゲンを含有しないことが最も好ましい。
ポリアニリンのハロゲン含有量を6000ppm以下とすることにより、本発明の導電性分散液を基材に塗布した際に、金属を腐食させるおそれがない。
【0018】
ポリアニリンの重量平均分子量は、好ましくは20,000以上であり、より好ましくは50,000以上である。ポリアニリンの重量分子量が20,000未満であると、組成物から得られる導電性物品の強度や延伸性が低下するおそれがある。
また、分子量分布は、例えば1.5〜10.0である。導電率の観点から、分子量分布は小さい方が好ましいが、溶剤への溶解性及び成形性の観点では、分子量分布が広い方が好ましい場合もある。
上記分子量及び分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により測定できる。
【0019】
尚、上記のプロトネーションされた置換又は未置換のポリアニリンは、本発明の導電性分散液に溶解している。
【0020】
プロトネーションされた置換又は未置換のポリアニリンは、例えば化学酸化重合法を用いて製造することができる。
化学酸化重合に用いる溶媒としては、一般に、酸性水溶液、又は親水性有機溶剤と酸性水溶液の混合溶媒が用いられる。ポリアニリン複合体の製造においては、水不混和性有機溶剤と酸性水溶液との混合溶媒系を好適に利用することができる。
【0021】
水不混和性有機溶剤と水との混合溶媒を使用する場合において、アニリンを重合させる際に混合溶媒中に上記有機プロトン酸(I)又はその塩を存在させておけば、重合反応によって生成したポリアニリン複合体は、水不混和性有機溶剤相に溶解した状態で得られる。水相を分離することで、速やかに水不混和性有機溶剤に溶解しているポリアニリン複合体を得ることができる。
【0022】
尚、水不混和性有機溶剤と水との混合溶媒を使用し、有機プロトン酸(I)又はその塩の存在下にポリアニリン複合体を製造する場合、有機プロトン酸(I)又はその塩は界面活性剤としても機能する。
【0023】
有機プロトン酸(I)又はその塩、及び重合するアニリン又は置換アニリンの仕込みモル比率は、通常0.05〜1であり、好ましくは0.1〜0.5の範囲である。
有機プロトン酸(I)又はその塩のモル比率が0.05より小さい場合は、重合の進行が遅くなり、結果的に電気伝導率の高い成形体が得られない。また、このモル比率が1より大きい場合は、重合後に水相との分離が困難になり、結果的に電気伝導率の高い成形体が得られない。
【0024】
化学酸化重合の開始剤としては、特に制限はないが、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過酸化物塩;二クロム酸アンモニウム、過塩素酸アンモニウム、硫酸カリウム鉄(III)、三塩化鉄(III)、二酸化マンガン、ヨウ素酸、過マンガン酸カリウム等の無機化合物が利用でき、室温以下の温度で酸化能を有する化合物が好ましい。
また、水不混和性有機溶剤と水との混合溶媒を使用した場合には、未反応の開始剤が有機相に混入するのを防止するため、水溶性の開始剤を使用することが好ましい。好ましい開始剤の具体例としては、例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過塩素酸アンモニウム等が挙げられ、過硫酸アンモニウムが特に好ましい。
【0025】
アニリン重合時に上記有機プロトン酸の他に、無機酸を重合系に添加する場合多い。これは反応系の酸性度を高めることで、高い導電率のポリアニリンが得られるためである。
無機酸の例としては、塩酸、リン酸、硫酸、硝酸等が挙げられるが、塩酸を用いた場合では得られたポリアニリンにハロゲン元素である塩素が混入してしまう問題がある。従って、本発明に用いるポリアニリンの製造においては、ハロゲン元素を含有しない無機酸(1族〜16族及び18族のいずれかに属する元素のみからなる無機酸)、即ち、リン酸、硫酸、硝酸等が好ましく用いられる。ハロゲン元素を含有しないこれら無機酸を用いることで、ポリアニリン自体及び導電性分散液全体のハロゲン含有量を6000ppm以下とすることができる。
【0026】
(b)炭素数3以上のアルコール性化合物
炭素数3以上のアルコール性化合物は、直鎖構造を有するアルコールであっても、分岐構造を有するアルコールでもよい。炭素数2以下のアルコール性化合物ではポリマーが不溶となるおそれがある。
炭素数3以上のアルコール性化合物は、好ましくは炭素数3〜6のアルコールである。アルコール性化合物が、炭素数3〜6のアルコールの場合、得られる導電性分散液は優れた溶解性及び導電性を得ることができる。
【0027】
炭素数3以上のアルコール性化合物の具体例としては、n―プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−メチルプロパノール、2−ブタノール、tert―ブタノール、1−ペンタノール、2−メチルブタノール、3−メチルブタノール、4−メチルブタノール、2−メチル−2−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、2,2‘−ジメチルプロパノール、シクロペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、3−メチルペンタノール、3−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、4−メチルペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、シクロヘキサノール等が挙げられる。
【0028】
(c)フェノール性化合物
フェノール性化合物は、フェノール性水酸基を有する化合物であり、好ましくは1核1価フェノール性化合物である。ここで1核とは、化合物中に芳香環を1つだけ有することを意味する。1価とは、化合物中にフェノール性水酸基を1つだけ有することを意味する。
【0029】
フェノール性化合物の具体例としては、エチルフェノール、プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、tert−ブチルフェノール、ペンチルフェノール、ヘキシルフェノール、オクチルフェノール、クレゾール等が挙げられる。
【0030】
(d)導電性高分子微粒子
導電性高分子微粒子はπ共役系導電性高分子及びドーパントからなる。
π共役系導電性高分子の種類及びドーパントの種類に特に制限はない。工業的な観点からは、ポリチオフェン系高分子、ポリピロール系高分子、ポリアニリン系高分子等のπ共役系導電性高分子及び有機スルホン酸等のドーパントからなる微粒子が好ましく使用される。π共役系導電性高分子がポリチオフェン系高分子であるとき、導電性高分子微粒子はポリチオフェン系微粒子である。
π共役系導電性高分子は、特にポリチオフェン系高分子、その中でもポリ3,4−エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)が、高い導電性及び高い透明性を備えるという観点で好ましい。ドーパントは、上記π共役系導電性高分子がPEDOTであるときには、ポリスチレンスルホン酸が好ましい。
即ち、導電性高分子微粒子は、好ましくはポリ3,4−エチレンジオキシチオフェン及びポリスチレンスルホン酸からなる。
【0031】
導電性高分子微粒子の粒径は、好ましくは1nm〜1μmであり、より好ましくは10nm〜100nmである。
尚、上記の導電性高分子微粒子は、本発明の導電性分散液には溶解せず、微粒子のまま分散している。
【0032】
プロトネーションされた置換又は未置換のポリアニリン及び導電性高分子微粒子の含有量は、下記式(1)を満たす。導電性高分子微粒子に対するプロトネーションされた置換又は未置換のポリアニリンの含有量を一定以下にすることで、導電性高分子微粒子の凝集を抑制することができる。
A/B≦0.4 (1)
(式中、Aは導電性分散液に含まれる前記プロトネーションされた置換又は未置換のポリアニリンの重量[g]であり、Bは導電性分散液に含まれる前記導電性高分子微粒子の重量[g]である。)
【0033】
式(1)において、Bは、導電性分散液に含まれる、π共役系導電性高分子及びドーパントとからなる導電性高分子微粒子の重量[g]を意味する。
【0034】
本発明の導電性分散液の製法として、ポリアニリン複合体を溶解した導電液と導電性高分子微粒子の分散液を混合する方法がある。
上記導電性高分子微粒子の分散液だけを用いて製膜した際に、上記導電性高分子微粒子以外の成分が全て揮発する、または上記導電性高分子微粒子以外の成分がほとんど全て揮発することがある。
このとき、π共役系導電性高分子及びドーパントからなる導電性高分子微粒子の重量[g]は、上記導電性高分子微粒子の分散液だけを用いて製膜した際に揮発せず残留する固形分の重量と実質的に同一となる。
【0035】
A/Bの範囲については、製膜した際の導電塗膜の導電性、膜強度、基材への密着性が確保できれば0.4以下の任意の組成が適用できるが、これら物性バランスを高いレベルで発現するには、0.1〜0.4の範囲が好ましい。
A/Bの下限は特に制限されないが、例えば0.01である。A/B<0.01の場合では、所望の膜物性が発現しないおそれがある。
【0036】
本発明の導電性分散液の分散媒としては、水、アルコール、アルコール以外の水溶性有機溶剤等を用いることができる。
アルコール以外の水溶性有機の例としては、アセトン、テトラヒドロフランのような含酸素溶剤;ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドのような非プロトン性極性溶剤等が挙げられる。尚、アルコールも含めこれら有機溶剤は分散安定化剤としても機能できる。
分散媒の含有量は、分散液の安定性が確保できれば何ら制限はないが、通常、90〜99.9重量%の範囲が好適に用いられる。
【0037】
本発明の第2の導電性分散液は、下記成分(a’)、(b)、(c)及び(d)成分を含み、ハロゲン含有量が6000ppm以下である。
(a’)プロトネーションされた置換又は未置換のポリアニリン
(b)炭素数3以上のアルコール性化合物
(c)フェノール性化合物
(d)導電性高分子微粒子
【0038】
本発明の第1の導電性分散液が含むプロトネーションされた置換又は未置換のポリアニリンは、ハロゲン含有量が6000ppm以下であるに対し、第2の導電性分散液が含むプロトネーションされた置換又は未置換のポリアニリンはハロゲン含有量は限定されない。一方、本発明の第2の導電性分散液は、導電性分散液全体のハロゲン含有量が6000ppm以下であり、この点で第1の導電性分散液と異なる。好ましくは、導電性分散液全体の塩素含有量が6000ppmである。導電性分散液全体のハロゲン含有量は、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは100ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下である。導電性分散液は、ハロゲンを含有しないことが最も好ましい。
本発明の第1の導電性分散液と第2の導電性分散液は、上記以外の構成は同一である。
【0039】
本発明の第3の導電性分散液は、下記成分下記成分(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)成分を含む。
(a)ハロゲン含有量が6000ppm以下であるプロトネーションされた置換又は未置換のポリアニリン
(b)炭素数3以上のアルコール性化合物
(c)フェノール性化合物
(d)導電性高分子微粒子
(e)酸性物質
【0040】
本発明の第3の導電性分散液は、さらに酸性物質を含む点で第1の導電性分散液と異なる。また、本発明の第3の導電性分散液は、プロトネーションされた置換又は未置換のポリアニリンと導電性高分子微粒子の含有量が式(1)に限定されない点で第1の導電性分散液と異なる。
本発明の第1の導電性分散液と第3の導電性分散液は、上記以外の構成は同一である。
【0041】
(e)酸性物質
本発明の第3の導電性分散液は酸性物質を含むことにより、凝集体の生成を効果的に抑制することができる。
可溶性ポリアニリンと導電性高分子微粒子分散液を混合した際の凝集体の生成は、ポリアニリンの未ドープの窒素の影響であることが考えられる。この窒素は塩基性であり、当該塩基性を中和することで、安定な導電分散液が得られる。
【0042】
酸性物質は、ポリアニリン未ドープの窒素を中和できれば特に制限はなく、リン酸等の無機酸;及びカルボン酸、スルホン酸等の有機酸を製品の使用目的に応じて使い分けることができる。
酸性物質は、好ましくはブレンステット酸であり、より好ましくは有機スルホン酸である。但し、塩酸等のハロゲンを含む強酸は金属の腐食を招く懸念があることから、ハロゲンを含まない酸(1族〜16族及び18族のいずれかに属する元素のみからなる酸)がより好ましい。
【0043】
酸性物質の具体例としては、水溶性を有する酸であれば特に何ら制限はないが、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸等の有機スルホン酸化合物、あるいはポリスチレンスルホン酸のようなポリスルホン酸等が好適に用いられ、これらのうちパラトルエンスルホン酸が好ましい。
【0044】
酸性物質の含有量は、下記式(2)を満たす。未ドープの窒素量はポリアニリンの全窒素量のおよそ半分であることから、そのモル数以上の酸性物質を添加することで分散液に含まれる導電性高分子微粒子の分散性を高めることができる。
C/D≧0.5 (2)
(式中、Cは導電性分散液に含まれる酸性物質が有する酸性官能基の総物質量[mol]であり、Dは導電性分散液に含まれるプロトネーションされた置換又は未置換のポリアニリンが有する窒素原子の総物質量[mol]である。)
【0045】
C/Dの範囲については、0.5以上であれば何ら制限はなく、0.5〜1.0の範囲が好ましい。
C/Dの上限は特に制限されないが、例えば10である。酸性物質の添加量が非常に多い場合(つまりC/Dの値が10超の場合)では、添加した酸性物質が導電塗膜強度を低下させたり、あるいは基材を腐食する等の悪影響を与えるおそれがある。
【0046】
Cの「酸性官能基の総物質量(mol)」について、酸性物質の1分子に複数の酸性官能基を有する場合には、それら複数の酸性官能基の物質量の総和となる。例えば、導電性分散液中に含まれる全ての酸性物質が1分子中に酸性官能基を2つ有する場合には、Cは導電性分散液中の全酸性物質の物質量の2倍の値となる。
Dについても同様である。置換又は未置換ポリアニリンは、1分子に複数の窒素原子を含有する。Dの「プロトネーションされた置換又は未置換のポリアニリンが有する窒素原子の総物質量(mol)」は、ポリアニリン1分子が有する複数の窒素原子の物質量の総和となる。例えば、導電性分散液中に含まれる全てのポリアニリンが1分子中に窒素原子を1000有する場合には、Dは導電性分散液中の全ポリアニリンの物質量の1000倍の値となる。
【0047】
Cの酸性官能基とは、例えばリン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基、カルボン酸基等を指す。
【0048】
本発明の第4の導電性分散液は、下記成分下記成分(a’)、(b)、(c)、(d)及び(e)成分を含み、ハロゲン含有量が6000ppm以下である。
(a’)プロトネーションされた置換又は未置換のポリアニリン
(b)炭素数3以上のアルコール性化合物
(c)フェノール性化合物
(d)導電性高分子微粒子
(e)酸性物質
【0049】
本発明の第3の導電性分散液が含むプロトネーションされた置換又は未置換のポリアニリンは、ハロゲン含有量が6000ppm以下であるに対し、第4の導電性分散液が含むプロトネーションされた置換又は未置換のポリアニリンはハロゲン含有量は限定されない。一方、本発明の第4の導電性分散液は、導電性分散液全体のハロゲン含有量が6000ppm以下であり、この点で第3の導電性分散液と異なる。
本発明の第3の導電性分散液と第4の導電性分散液は、上記以外の構成は同一である。
【0050】
また、本発明の第1、第2、第3及び第4の導電性分散液は、水を含んでいても、水を含んでいなくてもよい。本発明の第1、第2、第3及び第4の導電性分散液は、好ましくは下記式(6)を満たす。本発明の第1、第2、第3及び第4の導電性分散液は、より好ましくは下記式(7)を満たす。本発明の第1、第2、第3及び第4の導電性分散液は、さらに好ましくは下記式(8)を満たす。本発明の第1、第2、第3及び第4の導電性分散液が水を含んでいる場合、G/Hの値が0.5以下であれば、分散液の有機相/水相がより均一に相溶する。
G/H≦0.5 (6)
G/H≦0.4 (7)
G/H≦0.3 (8)
(式中、Gは導電性分散液に含まれる水の重量[g]であり、Hは導電性分散液の総重量[g]である。)
【0051】
本発明の第1、第2、第3及び第4の導電性分散液が水を含んでいるとき、G/Hの値の下限については、特に制限はないが、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.1以上である。
【0052】
本発明の第1、第2、第3及び第4の導電性分散液に含まれる、炭素数3以上のアルコール性化合物及びフェノール性化合物の含有量は、好ましくは下記式(3)を満たす。より好ましくは(4)を満たし、さらに好ましくは式(5)を満たす。本発明の導電性分散液が式(3)、(4)又は(5)を満たすことにより、ポリアニリンに対する高い溶解性を示すことができる。
E:F=99:1〜60:40 (3)
E:F=95:5〜70:30 (4)
E:F=95:5〜80:20 (5)
(式中、Eは導電性分散液に含まれる前記炭素数3以上のアルコール性化合物の重量[g]であり、Fは導電性分散液に含まれる前記フェノール性化合物の重量[g]である。)
【0053】
例えば、本発明の導電性分散液の製法として、ポリアニリン複合体を溶解した導電液と導電性高分子微粒子の分散液を混合する方法がある。
上記分散液が炭素数3以上のアルコール性化合物及びフェノール性化合物を含まない場合には、或いは、上記分散液が炭素数3以上のアルコール性化合物及びフェノール性化合物をほとんど含まない場合には、式(3)、(4)及び(5)のEは上記導電液に含まれる炭素数3以上のアルコール性化合物の重量[g]を意味し、式(3)、(4)及び(5)のFは上記導電液に含まれるフェノール性化合物の重量[g]を意味する。
【0054】
本発明の第1及び第2の導電性分散液は、(a)ハロゲン含有量が6000ppm以下であるプロトネーションされた置換又は未置換のポリアニリン(又は(a’)プロトネーションされた置換又は未置換のポリアニリン)、(b)炭素数3以上のアルコール性化合物、(c)フェノール性化合物、(d)導電性高分子微粒子及び分散媒から実質的になっていてもよく、また、これら成分のみからなっていてもよい。
同様に、本発明の第3及び第4の導電性分散液は、(a)ハロゲン含有量が6000ppm以下であるプロトネーションされた置換又は未置換のポリアニリン(又は(a’)プロトネーションされた置換又は未置換のポリアニリン)、(b)炭素数3以上のアルコール性化合物、(c)フェノール性化合物、(d)導電性高分子微粒子、(e)酸性物質及び分散媒から実質的になっていてもよく、また、これら成分のみからなっていてもよい。
【0055】
本発明の第1、第2、第3及び第4の導電性分散液は、これら成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、目的に応じて他の樹脂、無機材料、硬化剤等を添加してもよい。
他の樹脂の例としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリエツレングリコール、ポリビニルアルコール、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
無機材料としては、強度、表面硬度、寸法安定性その他の特性向上の目的で添加され、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア等の金属酸化物等が挙げられる。
硬化剤は、強度、表面硬度、寸法安定性その他の特性向上の目的で添加され、熱硬化剤、光硬化剤等が用いられる。
【0056】
本発明の導電性物品は、本発明の第1、第2、第3及び第4の導電性分散液を含む、又は本発明の第1、第2、第3及び第4の導電性分散液から得られる物品である。例えば、他の成分(樹脂、添加剤等)を添加したり、硬化(塗布後乾燥等)により製造する。
導電性物品としては、静帯電防止塗料、導電ペースト、防錆塗料、アクチュエータ、導電性繊維、透明導電膜、めっきの下地剤等を例示できる。
【0057】
本発明の物品は、上記の導電性組成物を含む、又は上記の導電性物品を含む物品である。例えば、電子部品、光学部品の運搬・包装部材、電気回路及び回路部材、静帯電防止フィルム、TABテープ、キャリアテープ、保護フィルム、タッチパネル用透明電極材、ディスプレイ向け各種フィルムの帯電防止剤、液晶・有機EL向け透明電極、コンデンサ用電解質、タッチパネル用透明電極材、有機エレクトロルミネッセンス素子の正孔注入層、燃料電池用電極材、二次電池用電極材・導電助剤、半導体材料、電磁波シールド材等である。
【実施例】
【0058】
製造例1
[ポリアニリン複合体1の製造]
エーロゾルOT(ジイソオクチルスルホコハク酸ナトリウム)1.8gをトルエン50mLに溶解し、窒素気流下においた500mLのセパラブルフラスコに溶液を入れ、さらにこの溶液に、1.8mLのアニリンを加えた。その後、1mol/lリン酸150mLを溶液に添加し、溶液温度を5℃に冷却した。溶液内温が5℃に到達した時点で、3.6gの過硫酸アンモニウムを1mol/lリン酸50mLに溶解した溶液を、滴下ロートを用いて2時間かけて滴下した。滴下開始から18時間、溶液内温を5℃に保ったまま反応を実施した。その後、トルエン125mLを追加し、反応温度を25℃まで上昇させ4時間、反応を継続した。その後、静置により二相に分離した水相側を分液し、トルエン相側をイオン交換水50mLで2回、1mol/lリン酸50mLで1回洗浄を行うことでポリアニリン複合体(プロトネーションされたポリアニリン)トルエン溶液を得た。
【0059】
得られた複合体溶液に含まれる若干の不溶物を#5Cの濾紙により除去し、ポリアニリン複合体のトルエン溶液を回収した。この溶液をエバポレーターに移し、60℃の湯浴で加温し、減圧することにより、揮発分を蒸発留去し、1.25gのポリアニリン複合体1を得た。
調製したポリアニリン複合体1を有機物塩素分−電量滴定法により塩素含有量を測定した結果、塩素含有量が10重量ppm定量下限以下であることを確認した。従って、ポリアニリン複合体1中の塩素含有量は、10重量ppm以下である。
【0060】
製造例2
[ポリアニリン複合体2の製造]
エーロゾルOT(ジイソオクチルスルホコハク酸ナトリウム)1.8gをトルエン50mLに溶解し、窒素気流下においた500mLのセパラブルフラスコに溶液を入れ、さらにこの溶液に、1.8mLのアニリンを加えた。その後、1N塩酸150mLを溶液に添加し、溶液温度を5℃に冷却した。
溶液内温が5℃に到達した時点で、3.6gの過硫酸アンモニウムを1N塩酸50mLに溶解した溶液を、滴下ロートを用いて2時間かけて滴下した。滴下開始から18時間、溶液内温を5℃に保ったまま反応を実施した。その後、トルエン125mLを追加し、反応温度を25℃まで上昇させ4時間、反応を継続した。その後、静置により二相に分離した水相側を分液し、トルエン相側をイオン交換水50mLで2回、1N塩酸50mLで1回洗浄を行うことでポリアニリン複合体(プロトネーションされたポリアニリン)トルエン溶液を得た。
【0061】
得られた複合体溶液に含まれる若干の不溶物を#5Cの濾紙により除去し、ポリアニリン複合体のトルエン溶液を回収した。この溶液をエバポレーターに移し、60℃の湯浴で加温し、減圧することにより、揮発分を蒸発留去し、1.25gのポリアニリン複合体2を得た。
調製したポリアニリン複合体2を有機物塩素分−電量滴定法により塩素含有量を測定した結果、塩素含有量が6200重量ppmであることを確認した。製造例1で得られたポリアニリン複合体1と比較して、塩素を多量に含むことがわかった。
【0062】
実施例1
イソプロピルアルコール(IPA)及びメタクレゾール(m−クレゾール)の70:30の混合溶剤にポリアニリン複合体1を溶解させ、ポリアニリン複合体1の濃度1重量%の均一溶液である導電液を調製した。この導電液5gに、PEDOT微粒子分散液(固形分濃度0.5%)を50g添加した。ここで固形分濃度とは、上記PEDOT微粒子分散液のみを用いて製膜した際に、揮発せず残留する成分の濃度を示す。得られた導電液は安定であり、沈殿等は確認されなかった。
この導電液を有機物塩素分−電量滴定法により塩素含有量を測定した結果、塩素含有量が10重量ppm定量下限以下であることを確認した。
尚、上記PEDOT微粒子分散液は、STARCK社製のCLEVIOSTMPをイソプロピルアルコールにて固形分濃度0.5重量%に希釈して用いた。CLEVIOSTMPの分散液は、固形分濃度が1.3%であり、分散媒は、99.6%以上が水である。従って、上記したように、式(3)、(4)及び(5)のEは上記導電液に含まれるイソプロピルアルコールの重量[g]を意味し、式(3)、(4)及び(5)のFは上記導電液に含まれるクレゾールの重量[g]を意味する。
【0063】
この導電性分散液を用い、ガラスプレパラート上にバーコーダーにて塗工したところ、無色透明な均一膜が得られた。得られた塗膜の表面抵抗を、SIMCO社製「WORKSURFACE TESTER」にて測定したところ、104.3Ω/□であった。
【0064】
実施例2
PEDOT微粒子分散液の添加量を25gとした他は実施例1と同様にして導電液を調製した。その結果、得られた導電液は安定であり、沈殿等は確認されなかった。また、ガラス上に無色透明な均一膜が得られ、得られた塗膜の表面抵抗は、104.6Ω/□であった。
【0065】
比較例1
実施例1で用いたPEDOT微粒子分散液を、ガラスプレパラート上にバーコーダーにて塗工したが、塗膜にムラが生じ、均一な導電膜は得られなかった。また、得られた塗膜は極めて脆く、簡単にガラス上から剥離した。
【0066】
比較例2
PEDOT微粒子分散液の添加量を10gとした他は実施例1と同様にして導電液を調製した。しかし、PEDOT微粒子分散液を添加してすぐに凝集体が生じ、塗布ができなかった。
【0067】
比較例3
実施例1で用いたPEDOT微粒子分散液(固形分濃度0.5%)10g、及びアクリル系バインダー液(固形分濃度1・0%)10gを混合して導電液を調製した。得られた導電液は安定であり、沈殿等は確認されなかった。
尚、上記アクリル系バインダー液は、綜研化学株式会社製のエレコンドをイソプロパノールにて固形分濃度1.0%に希釈したものを用いた。
【0068】
この導電液を実施例1と同様にしてガラスプレパラート上に塗工し、無色透明な均一膜を得た。得られた塗膜の表面抵抗は106.7Ω/□であり、実施例1及び2の導電膜と比較して高抵抗であることが分かった。
【0069】
実施例3
イソプロピルアルコール(IPA)及びクレゾールの70:30の混合溶剤にポリアニリン複合体1を溶解させ、ポリアニリン複合体1の濃度1重量%の均一溶液である導電液を調製した。CHN元素分析計にて元素分析の結果、導電液中の窒素原子の総物質量は、0.16mmolであった。調製した導電液5gに、パラトルエンスルホン酸(Aldrich社製)を0.014g(0.08mmol)添加し、よく混合した。
この混合液にさらに実施例1で用いたPEDOT微粒子分散液を10g添加した。得られた導電液は安定であり、沈殿等は確認されなかった。この導電液を有機物塩素分−電量滴定法により塩素含有量を測定した結果、塩素含有量が10重量ppm定量下限以下であることを確認した。
この導電性分散液を用い、ガラスプレパラート上にバーコーダーにて塗工し、得られた塗膜の表面抵抗を実施例1と同様にして評価したところ、105.5Ω/□であった。
【0070】
比較例5
パラトルエンスルホン酸の添加量を0.007g(0.04mmol)とした他は実施例3と同様にして導電液を調製した。しかしながら、この導電液を放置したところ、凝集体の生成が確認された。
【0071】
以下に、実施例1〜3の分散媒組成を示す。
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の導電性分散液は、パワーエレクトロニクス、オプトエレクトロニクス分野において、静電及び帯電防止材料、透明電極及び導電性フィルム材料、エレクトロルミネッセンス素子の材料、回路材料、電磁波遮蔽材料、コンデンサの誘電体及び電解質、太陽電池及び二次電池の極材料、燃料電池セパレータ材料等に、又はメッキ下地、防錆剤等に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)〜(d)を含み、下記式(1)を満たす導電性分散液。
(a)ハロゲン含有量が6000ppm以下であるプロトネーションされた置換又は未置換のポリアニリン
(b)炭素数3以上のアルコール性化合物
(c)フェノール性化合物
(d)導電性高分子微粒子
A/B≦0.4 (1)
(式中、Aは導電性分散液に含まれる前記プロトネーションされた置換又は未置換のポリアニリンの重量[g]であり、Bは導電性分散液に含まれる前記導電性高分子微粒子の重量[g]である。)
【請求項2】
下記(a’)〜(d)を含み、下記式(1)を満たすハロゲン含有量が6000ppm以下である導電性分散液。
(a’)プロトネーションされた置換又は未置換のポリアニリン
(b)炭素数3以上のアルコール性化合物
(c)フェノール性化合物
(d)導電性高分子微粒子
A/B≦0.4 (1)
(式中、Aは導電性分散液に含まれる前記プロトネーションされた置換又は未置換のポリアニリンの重量[g]であり、Bは導電性分散液に含まれる前記導電性高分子微粒子の重量[g]である。)
【請求項3】
下記(a)〜(e)を含み、下記式(2)を満たす導電性分散液。
(a)ハロゲン含有量が6000ppm以下であるプロトネーションされた置換又は未置換のポリアニリン
(b)炭素数3以上のアルコール性化合物
(c)フェノール性化合物
(d)導電性高分子微粒子
(e)酸性物質
C/D≧0.5 (2)
(式中、Cは導電性分散液に含まれる前記酸性物質が有する酸性官能基の総物質量[mol]であり、Dは導電性分散液に含まれる前記プロトネーションされた置換又は未置換のポリアニリンが有する窒素原子の総物質量[mol]である。)
【請求項4】
下記(a’)〜(e)を含み、下記式(2)を満たすハロゲン含有量が6000ppm以下である導電性分散液。
(a’)プロトネーションされた置換又は未置換のポリアニリン
(b)炭素数3以上のアルコール性化合物
(c)フェノール性化合物
(d)導電性高分子微粒子
(e)酸性物質
C/D≧0.5 (2)
(式中、Cは導電性分散液に含まれる前記酸性物質が有する酸性官能基の総物質量[mol]であり、Dは導電性分散液に含まれる前記プロトネーションされた置換又は未置換のポリアニリンが有する窒素原子の総物質量[mol]である。)
【請求項5】
前記酸性物質がスルホン酸化合物である請求項3又は4に記載の導電性分散液。
【請求項6】
下記式(6)を満たす請求項1〜5のいずれかに記載の導電性分散液。
G/H≦0.5 (6)
(式中、Gは導電性分散液に含まれる水の重量[g]であり、Hは導電性分散液の総重量[g]である。)
【請求項7】
下記式(3)を満たす請求項1〜6のいずれかに記載の導電性分散液。
E:F=99:1〜60:40 (3)
(式中、Eは導電性分散液に含まれる前記炭素数3以上のアルコール性化合物の重量[g]であり、Fは導電性分散液に含まれる前記フェノール性化合物の重量[g]である。)
【請求項8】
前記プロトネーションされた置換又は未置換のポリアニリンが、有機スルホン酸によってプロトネーションされた置換又は未置換のポリアニリンである請求項1〜7のいずれかに記載の導電性分散液。
【請求項9】
前記プロトネーションされた置換又は未置換のポリアニリンが、コハクスルホン酸誘導体によってプロトネーションされた置換又は未置換のポリアニリンである請求項1〜8のいずれかに記載の導電性分散液。
【請求項10】
前記フェノール性化合物が、1核1価フェノール性化合物である請求項1〜9のいずれかに記載の導電性分散液。
【請求項11】
前記導電性高分子微粒子がポリチオフェン系微粒子である請求項1〜10のいずれかに記載の導電性分散液。
【請求項12】
前記導電性高分子微粒子がポリ3,4−エチレンジオキシチオフェン及びポリスチレンスルホン酸からなる請求項1〜11のいずれかに記載の導電性分散液。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の導電性分散液を用いて製造された導電性物品。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれかに記載の導電性分散液を用いて製造されたコンデンサ。
【請求項15】
請求項13に記載の導電性物品及び/又は請求項14に記載のコンデンサを含む物品。

【公開番号】特開2011−195764(P2011−195764A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66495(P2010−66495)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】