説明

導電性弾性ローラの製造方法

【課題】本発明は、導電性弾性ローラのクロスヘッドを用いた製造装置において、ウエルドラインに起因する電気抵抗値のムラを解消するための製造方法を提供することにある。
【解決手段】導電性の軸芯体と該軸芯体の周面を被覆する導電性ゴム層とを有する導電性弾性ローラの製造方法であって、クロスヘッドの貫通孔に該軸芯体を供給すると共に、該クロスヘッドに接続する押出機から、中空粒子と電子導電性フィラーとを含む未加硫のゴム混合物を該クロスヘッドに供給し、該軸芯体の周囲に該ゴム混合物の層を形成する工程と、該ゴム混合物の層の表面に加圧と除圧とを繰り返し行なう工程と、該ゴム混合物の層の表面に加圧と除圧とを繰り返し行なう工程を経た該ゴム混合物の層を加硫して導電性ゴムの層を形成する工程を有することを特徴とする導電性弾性ローラの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真装置に用いられる導電性弾性ローラの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置に用いられる導電性弾性ローラの製造方法として、クロスヘッドによる被覆押出成形を用いて導電性の軸芯体の周面を導電性ゴム組成物で被覆する方法が知られている。
【0003】
この方法は、図5に示したように、環状流路317に導入された導電性ゴム組成物341は、環状流路317内で2方向に分割され、約180°反対側の位置において合流して環状流路内を充填していく。そのため、得られる導電性ゴム円筒体203の、導電性ゴム組成物340の合流点に対応する位置には図2に示したようなウエルドライン204が生じる。そして、ウエルドライン204の部分は、電気抵抗値が他の領域と異なっていることが多いため、このようなウエルドラインを有する導電性ゴム円筒体203を用いて形成された導電性弾性ローラ201には、軸に沿う方向に、電気抵抗値が周囲とは異なる領域を有することとなる。このような導電性弾性ローラを例えば帯電ローラに用いた場合、感光体に帯電ムラを生じさせ、電子写真画像上に当該帯電ムラに起因するスジ状の画像欠陥を生じる場合がある。
【0004】
ウエルドラインがもたらす上記の課題に鑑み、特許文献1では、クロスヘッドの環状流路にて、前記環状流路に設置された羽根車で導電性ゴム組成物を攪拌して、ウエルドラインを拡散させる方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−311811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に係る方法は、押出成形装置の構成を複雑化させてしまう。また、ウエルドラインの部分が導電性ゴム組成物中に分散されてしまい、導電性ゴム円筒体の周方向で電気抵抗にムラが生じる可能性がある。
そこで、本発明は、電気抵抗値のムラの少ない導電性弾性ローラの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の一態様によれば、導電性の軸芯体と該軸芯体の周面を被覆する導電性ゴム層とを有する導電性弾性ローラの製造方法であって、(1)クロスヘッドの貫通孔に該軸芯体を供給すると共に、該クロスヘッドに接続する押出機から、中空粒子と電子導電性フィラーとを含む未加硫のゴム混合物を該クロスヘッドに供給し、該軸芯体の周囲に該ゴム混合物の層を形成する工程と、(2)該ゴム混合物の層の表面に加圧と除圧とを繰り返し行なう工程と、(3)該工程(2)を経た該ゴム混合物の層を加硫して導電性ゴムの層を形成する工程と、を有することを特徴とする導電性弾性ローラの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、導電性弾性ローラの周方向の電気抵抗値のムラを低減および抑制した導電性弾性ローラを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】導電性の軸芯体上に弾性体層を形成する、(a)単層クロスヘッド、(b)二層クロスヘッドを備える、押出工程の概略図である。
【図2】導電性弾性ローラを示す模式図である。
【図3】クロスヘッド押出成形装置の一つの実施の形態の断面模式図である。
【図4】本発明の加圧および除圧を繰り返す装置の一つの実施の形態の、(a)平面模式図、(b)断面模式図である。
【図5】クロスヘッドにおける導電性ゴム組成物の流れを示す断面模式図である。
【図6】導電性弾性ローラの周方向の電気抵抗値のムラを測定する装置の模式図である。
【図7】本発明の導電性弾性ローラを用いた電子写真装置の一例を示した概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の導電性弾性ローラの製造方法は、導電性の軸芯体と該軸芯体の周面を被覆する導電性ゴム層とを有する導電性弾性ローラの製造方法である。
クロスヘッドの貫通孔に該軸芯体を供給すると共に、該クロスヘッドに接続する押出機から、中空粒子と電子導電性フィラーとを含む未加硫のゴム混合物を該クロスヘッドに供給し、該軸芯体の周囲にゴム混合物からなる未加硫のゴム混合物の層を形成する工程と、該ゴム混合物の層の表面に加圧および除圧を繰り返し行なう工程と、該ゴム混合物の層の表面に加圧および除圧を繰り返し行なう工程を経た該ゴム混合物の層を加硫して導電性ゴムの層を形成する工程とを有することを特徴とする。
【0011】
本発明者らが鋭意検討した結果、クロスヘッドによる押出成形で発生するウエルドラインが、導電性ゴム円筒体において、非ウエルドライン領域と比較して電気抵抗値が異なる原因は次のように推察している。
【0012】
図3及び図5に示されるように、導電性ゴム組成物341は、押出機300から排出された後、メッシュ303を経由して、アダプター304とクロスヘッド310の導入口311を経由して、内側ダイ312の外周面と外側ダイ315の内周面とから構成される環状流路317にて分流される。その後、再び合流してウエルドラインを構成しながら導電性ゴム円筒体203を形成する。このとき、ウエルドラインを構成する導電性ゴム組成物は、アダプター304やクロスヘッド310の導入口311における流路の壁面および前記流路の壁面近傍を経由した導電性ゴム組成物である。
アダプターやクロスヘッドの導入口などの流路を流れる導電性ゴム組成物は、前記流路の壁面との間に摩擦を生じながら口金318に向かって流れる。前記流路壁面に接触している導電性ゴム組成物は、前記流路壁面との間に生じる摩擦によって、前記導電性ゴム組成物中の導電剤や充填剤のような物質の分散状態が変化する。このため、前記流路壁面と接触している部分の導電性ゴム組成物は、前記流路壁面と接触していない導電性ゴム組成物と導電剤や充填剤のような物質の分散状態が異なる。導電性ゴム組成物において、導電剤や充填剤のような物質の分散状態が変化すれば、前記導電性ゴム組成物の電気抵抗値は変化する。
以上の理由から、導電性ゴム円筒体において、ウエルドラインは非ウエルドライン領域と比較して電気抵抗値が異なると考えられる。
【0013】
本発明では、前記のウエルドラインに起因する電気抵抗値のムラを低減する方法として、軸芯体の周囲に中空粒子と電子導電性フィラーとを含む未加硫ゴム混合物の層の表面に加圧と除圧を繰り返し行なう工程が有効で有ることを見出した。この工程を経た該ゴム混合物の層を加硫して導電性ゴム層を形成することで、電気抵抗値のムラを低減した導電性弾性ローラを得ることができる。
例えば押圧部材を用いた場合、未加硫ゴム混合物の層に押圧部材による加圧と除圧の繰り返し行なう工程を経ることにより、未加硫ゴム混合物の層に含まれる中空粒子の形状が、変形および復元を繰り返すこととなる。中空粒子の形状が、変形および復元を繰り返すことで中空粒子周囲のポリマーや電子導電性フィラーに変位が生じやすくなり、中空粒子の周囲に存在する電子導電性フィラーの偏在の緩和や凝集塊の崩壊を促すことができる。結果として、ウエルドラインに起因する電気抵抗値のムラを低減することが可能となる。前記の押圧部材による加圧と除圧を繰り返し行なう工程においては、未加硫ゴム混合物の層の厚みや該層に含まれるポリマー材料、中空粒子、電子導電性フィラーの種類や量に応じて、押圧加重、施工時間、加熱温度のようなパラメーターが適宜選択され設定される。未加硫ゴム混合物の層に含まれる中空粒子の形状が変形および復元を繰り返す程度に加圧と除圧を繰り返されるように設定することが好ましい。
【0014】
以下、本発明について図面を用いて更に詳細に説明する。
【0015】
[軸芯体の周囲に該未加硫ゴム混合物の層を形成する工程]
ゴムと中空粒子、電子導電性フィラーのような添加剤を配合、混錬して未加硫ゴム混合物を製造する。得られた未加硫ゴム混合物は押出装置を用いて、未加硫ゴム混合物と導電性の軸芯体とを同時に押出し、弾性ローラ予備成形体を成形する。図1(a)および(b)は押出工程の概略図である。図1(a)に示されるように、押出機101は、単層クロスヘッド102を備える。単層クロスヘッド102に、送りロール103により単層クロスヘッド102の貫通孔に導電性の軸芯体202を供給し、導電性の軸芯体202と未加硫ゴム混合物とを同時に押出す。こうして、導電性の軸芯体の周囲を未加硫ゴム混合物で被覆した単層の弾性ローラ予備成形体104が得られる。また、図1(b)に示すように2台の押出機101と二層クロスヘッド105を用いることにより、二種類の未加硫ゴム混合物からなる二層の弾性ローラ予備成形体106を得ることもできる。
【0016】
[ゴム混合物の層の表面に加圧と除圧を繰り返し行なう工程]
次に、前記の弾性ローラ予備成形体の未加硫のゴム混合物の層の表面に加圧と除圧を繰り返し行なう工程について説明する。図4(a)および(b)はゴム混合物の層の表面に加圧と除圧を繰り返し行なう工程の概略図である。押圧部材401は、押圧部材保持具408で回転可能な状態に保持され、カップリング402によりモータ403と接続され回転駆動される。押圧部材保持具408は押圧部材取り付け台410に固定されている。押圧部材取り付け台410は装置台411に対して水平方向にスライド可能な状態に設置される。押圧部材401には加圧付加治具407が備えられ、加圧バネ405および偏心カム404により押圧部材401に加重を付加できる機構である。偏心カム404は偏心カム保持具406により回転可能に保持され、カップリング413によりモータ414と接続され回転駆動される。
弾性ローラ予備成形体412は、軸心体保持具409にて導電性の軸心体を回転可能な状態で保持される。
本発明では、ゴム混合物の層の表面に加圧と除圧を繰り返し行なう工程における押圧加重、施行時間、加熱温度のようなパラメーターを適宜選択し、設定することができる。
【0017】
ゴム混合物の層の表面に加圧と除圧を繰り返し行なう工程では、前記の構成を備える装置にて、導電性の軸心体を回転させながら、押圧部材により弾性ローラ予備成形体のゴム混合物の層の表面を押圧する。さらに偏心カムおよび加圧バネの作用にてゴム混合物の層の表面に作用する加圧力を変化させることが可能である。結果として、ゴム混合物の層は、加圧と除圧が繰り返されることとなる。
【0018】
ここで、押圧部材の押圧面形状は直線状でも曲線状でも良く、押圧時に弾性ローラ予備成形体のゴム混合物の層と隙間を生じにくい形状が好ましい。押圧部材の押圧面および弾性ローラ予備成形体のゴム混合物の層において隙間が生じると当該隙間部分は押圧されない。そのため当該隙間部分と隙間部分以外の領域とで電子導電性フィラーの分散状態が異なってしまい、結果として電気抵抗率が異なることがあり、画像不良のような現象などを生じる場合があるからである。
【0019】
また、図4(a)および(b)では、押圧部材401の押圧面長さは、弾性ローラ予備成形体412のゴム混合物の層の軸方向長さよりも長く設定してある。しかしながら、本発明において押圧部材401の押圧面長さは任意に設定できる。例えば押圧部材の押圧面長さが、ゴム混合物の層の軸方向長さよりも短い場合には、押圧部材を弾性ローラ予備成形体の軸方向に移動させながら押圧面を適宜変更し、弾性ローラ予備成形体のゴム混合物の層に加圧と除圧を繰り返し行なうことができる。
【0020】
押圧部材の材料は所望の押圧加重や加熱温度に耐えうる強度を有している材料を用いることができるが、熱伝導性の良さと強度の観点から、金属類が好ましい。また、押圧面にはクロムメッキや窒化処理、テフロン(登録商標)によるコーティングのような表面処理を施しても良い。さらに表面を粗面化したり凹凸を設けたりする表面加工を施しても良い。
【0021】
[押圧方法]
押圧部材の押圧面長さが弾性ローラ予備成形体のゴム混合物の層の軸方向長さよりも短い場合は、弾性ローラ予備成形体外周面上の任意の位置に任意の回数に分けて加圧と除圧を繰り返し行なうことができる。
【0022】
例えば、軸方向に押圧面を移動させながら弾性ローラ予備成形体のゴム混合物の層に加圧と除圧を繰り返し行なう方法や弾性ローラ予備成形体のゴム混合物の外周面上の同じ位置に複数回に分けて加圧と除圧を繰り返し行なう方法が許容される。
【0023】
なお、図4の例では、1つの押圧部材401を用いているが、押圧部材は複数用いても良い。例えば、押圧部材を弾性ローラ予備成形体の周囲に各々接触しないように周方向に複数固定配置し、それぞれの押圧加重、施行時間、或いは加熱温度のようなパラメーターを変えることで、ゴム混合物の層の表面に加圧と除圧を繰り返し行なう工程を実施しても良い。
【0024】
[導電性弾性ローラの電気抵抗率]
導電性弾性ローラの電気抵抗率としては、特に制限はなく所望の特性に応じて適宜設定されるが、例えば帯電ローラとして使用するには感光ドラム当接時における軸方向の電気抵抗率が1×10Ω・cmから1×1010Ω・cm程度とするのが望ましい。また、導電性弾性ローラの周方向の電気抵抗率は、最大値と最小値との比が1.0倍から5.0倍となるように設定することが好ましい。より好ましくは1.0倍から3.0倍程度である。
【0025】
[押圧加重]
前記の加圧と除圧を繰り返し行なう工程において、押圧部材による押圧加重は、未加硫ゴム混合物の層の厚みや該層に含まれるポリマー材料、中空粒子、電子導電性フィラーの種類や量に応じて、適宜設定される。未加硫ゴム混合物の層に含まれる中空粒子の形状が変形および復元を繰り返す程度に加圧と除圧を繰り返す押圧加重が付与されるように設定することが好ましい。
押圧部材による加圧と除圧の繰り返し作用によって未加硫ゴム混合物の層に含まれる中空粒子の形状が、変形および復元を繰り返す。中空粒子の形状が、変形および復元を繰り返すことで中空粒子周囲のポリマーや電子導電性フィラーに変位が生じやすく、中空粒子の周囲に存在する電子導電性フィラーの偏在の緩和や凝集塊の崩壊を促すことができる。
【0026】
例えば、未加硫ゴム混合物の層の厚みが1mmから4mm程度の範囲では、押圧面に0.2kg〜4kg程度の加圧をすることが好ましく、加圧が高い方が中空粒子を十分に変形させることができるためより好ましい。押圧加重が低すぎる場合には、中空粒子の形状が十分に変形しないため本発明の効果が弱くなってしまうことがある。押圧加重が高すぎる場合には、加圧により中空粒子が変形してしまい、除圧した場合に中空粒子の形状が回復しないことがあり、本発明の効果が弱くなってしまうことがある。
また加圧と除圧を繰り返し行なう工程は、未加硫ゴム混合物の層を押圧部材により加圧に振幅を与えると共に、未加硫ゴム混合物の層に対する該押圧部材の押し当て場所を変化させる工程であることが好ましい。押圧部材による加圧の振幅は、該工程中は常時正圧であり、除圧時において負圧とはならない構成であり、その振幅は押圧部材の加重に対して除圧時に負圧とならない程度にする必要がある。すなわち、押圧部材による加重>加圧の振幅である。押圧部材により加圧の振幅を与える機構としては、例えば図4に示すように偏心カムを用いることができる。図4の機構により偏心カムの変位振幅による加圧バネで発生する加重に振幅を発生させることができ、加圧付加治具を通して押圧部材へ振幅の加重が伝達される。これにより押圧部材と当接された弾性ローラ予備成形体は、未加硫ゴム混合物の層へ加圧と除圧を繰り返されることとなる。また加圧の振幅を与える手法としては上記手法に限定されず、押圧部材に対し公知の振動子のような部材を当接させる機構としても良い。
【0027】
上記のような理由により、前記の加圧と除圧を繰り返し行なう工程において、押圧部材による押圧加重や加圧の振幅は、未加硫ゴム混合物の層の厚みや該層に含まれるポリマー材料、中空粒子、電子導電性フィラーの種類や量に応じて、適宜設定する必要がある。
【0028】
[施行時間]
加圧と除圧を繰り返し行なう工程の施行時間としては、設定した押圧加重の条件下において中空粒子の周囲に存在する電子導電性フィラーの偏在の緩和や凝集塊の崩壊を促すことができるのに十分な加圧と除圧が繰り返されるように適宜設定される。本発明においては弾性ローラ予備成形の未加硫ゴム混合物の層の全周面に対して少なくとも1回以上押圧部材による加圧と除圧を繰り返し行なうことが必要である。
弾性ローラ予備成形体は、軸心体保持具により回転可能な状態に保持されているため、回転する押圧部材の当接により押圧部材に従動回転する。この弾性ローラ予備成形体の回転数をf2[Hz]、押圧部材による加圧と除圧の振幅の周期をf1[Hz]としたとき、f1>f2であることが好ましい。すなわち、弾性ローラ予備成形体の未加硫ゴム混合物の層の外周面が全周にわたり押圧部材に当接処理される間に、押圧部材の加圧と除圧を繰り返すことになる。押圧部材による加圧と除圧の振幅の周期f1を大きくすることで、弾性ローラ予備成形体の未加硫ゴム混合物の層の外周面を1周処理する間に複数回の加圧と除圧を繰り返すことが可能である。押圧部材によるゴム混合物の層への加圧と除圧の振幅としては、サイン波のような周期的な加重の振幅でも、三角波や矩形波のような加重の振幅でも良い。またf1/f2の比が整数倍とならないことが好ましい。該比が整数倍と成る条件においては、加圧および除圧の繰り返しのタイミングとゴム混合物の層の周方向の位置が一致し、常に加圧される部位および常に除圧される部位が発生してしまうためである。
【0029】
[加熱方法および加熱温度]
弾性ローラへの加熱は、電気炉内のような所望の雰囲気中でゴム混合物の層の表面に加圧と除圧を繰り返し行なう工程の他に、押圧部材内部にヒータを設置する、弾性ローラ予備成形体外周面の一部に温風を吹き付けるといった方法を用いることができる。
押圧部材による加圧と除圧を繰り返す工程時の加熱温度としては、加硫温度よりも低い温度で実施することが好ましい。具体的には、ポリマー材料のガラス転移点温度以上であって、加硫温度より20℃以上低い温度で行なうことが望ましい。
【0030】
[ゴム混合物の層を加硫して導電性ゴム層を形成する工程]
このようにして得られた弾性ローラ予備成形体を加熱して加硫する方法に関しては、熱風炉、加硫缶、熱盤、遠・近赤外線加熱炉、UHF炉、誘導加熱のような従来公知のいずれの方法でも良い。140℃以上220℃以下の範囲の温度で10分以上120分以下の時間で加熱して、弾性ローラ予備成形体を加硫する事が好ましい。このようにして端部未切断弾性ローラが得られる。また、材料によっては、活性エネルギー線を照射することにより加硫することもでき、この場合は、短時間での加硫が可能となる。また、加硫加熱後に活性エネルギー線を照射して、加硫密度を高めるようにしても良い。
【0031】
[弾性体層の両端部を切断する工程]
次に、得られた端部未切断弾性ローラは切断装置を用いて端部を切断する。切断装置は、弾性ローラ保持手段にて端部未切断弾性ローラを保持し、所定の回転速度にて回転させる。これに切断用丸刃を押し付けて切断する。なお、二つの切断用丸刃の間隔は弾性ローラの弾性体層の長さに相当するものである。切断した破片を取り外すと、端部切断後弾性ローラを得ることができる。
【0032】
[弾性体層を研磨する工程]
次に、所定の外径寸法とするために、弾性体層の外周面を円筒研磨機で研磨して仕上げる。一般に弾性ローラは、導電性の軸芯体の端部をバネで他部材に均一に当接させるため、弾性ローラの当接による撓みを考慮し、一般にクラウン形状と呼ばれる中央部の外径を端部の外径より太くする形状に仕上げる。このような形状は、円筒金型で製造するのは脱型することが困難であるため、研磨機で仕上げるのが好ましい。円筒研磨機としては、トラバース方式のNC研磨機や、プランジカット方式のNC円筒研磨機を用いることができる。プランジカット方式のNC研磨機はトラバース方式に比べて幅広な研削砥石を用いており、弾性体層の長手方向全域を同時に研磨できるため、加工時間の短縮を図ることができるため好ましく用いられる。
【0033】
[弾性体層上に表面層を設ける工程]
本発明の弾性ローラは、弾性体層上に表面層を形成することもできる。表面層は、弾性ローラの更なる高機能化、高耐久化を目的として形成する。例えば、表面層を抵抗調整層として機能させることで、帯電ローラとして用いた場合に、帯電均一性や耐リーク性を向上することができる。
弾性体層上に表面層を形成する工程としては、静電スプレー塗布やディッピング塗布のような塗布法により形成できる。または、予め所定の膜厚に成膜されたシート形状またはチューブ形状の層を接着または被覆することにより形成できる。あるいは、型内で所定の形状に材料を硬化、成形する方法も用いることができる。この中でも、塗布法によって塗料を塗工し、表面層を形成することが好ましい。
塗布法によって表面層を形成する場合、塗布液に用いられる溶剤としては、バインダー樹脂を溶解することができる溶剤であればよい。具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノールのようなアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンのようなケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドのようなアミド類、ジメチルスルホキシドのようなスルホキシド類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテルのようなエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチルのようなエステル類、キシレン、リグロイン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンのような芳香族化合物が挙げられる。これらの溶剤は、使用するバインダー樹脂に応じて適宜選択される。
塗布液に、バインダー樹脂や粒子のような物質を分散する方法としては、ボールミル、サンドミル、ペイントシェーカー、ダイノミル、パールミルのような公知の溶液分散手段を用いることができる。
【0034】
また、弾性体層上に表面層を形成する工程としては、紫外線、電子線のような公知のエネルギー線の照射によるゴム表面を改質する方法も例として挙げられる。
例えば紫外線の照射には、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、低圧水銀ランプ、エキシマUVランプのような光源を用いることができ、これらのうち、紫外線の波長が150nm以上480nm以下の光を豊富に含む紫外線源が好適に用いられる。
【0035】
なお、紫外線の積算光量は、以下のように定義される。
紫外線積算光量[mJ/cm]=紫外線強度[mW/cm]×照射時間[s]
【0036】
紫外線の積算光量の調節は、照射時間や、ランプ出力や、ランプと被照射体との距離のようなパラメーターで行なうことが可能である。また、照射時間内で積算光量に勾配をつけてもよい。
低圧水銀ランプを用いる場合、紫外線の積算光量は、ウシオ電機(株)製の紫外線積算光量計UIT−150−AやUVD−S254を用いて測定することができる。エキシマUVランプを用いる場合、紫外線の積算光量は、ウシオ電機(株)製の紫外線積算光量計UIT−150−AやVUV−S172を用いて測定することができる。
例えば電子線照射装置は、弾性ローラを回転させながら弾性体層表面に電子線を照射するものであり、電子線発生部と照射室と照射口とを備えるものである。
電子線発生部は、電子線を発生するターミナルと、ターミナルで発生した電子線を真空空間(加速空間)で加速する加速管とを有するものである。また電子線発生部の内部は、電子が気体分子と衝突してエネルギーを失うことを防ぐため、真空ポンプのような機器により10−3[Pa]〜10−4[Pa]程度の真空に保たれている。
電源によりフィラメントに電流を通じて加熱するとフィラメントは熱電子を放出し、この熱電子のうち、ターミナルを通過したものだけが電子線として有効に取り出される。そして、電子線は加速電圧により加速管内の加速空間で加速された後、照射口箔を突き抜け、照射口の下方の照射室内を搬送される弾性ローラに照射される。
弾性ローラに電子線を照射する場合には、照射室の内部は窒素雰囲気または空気雰囲気としている。また、弾性ローラはローラ回転用部材で回転させて照射室内を搬送手段により、移動および通過可能な状態である。尚、電子線発生部および照射室の周囲は電子線照射時に二次的に発生するX線が外部へ漏出しないように、鉛遮蔽が施されている。
照射口箔は金属箔からなり、電子線発生部内の真空雰囲気と照射室内の空気雰囲気とを仕切るものであり、また照射口箔を介して照射室内に電子線を取り出すものである。弾性ローラの照射に電子線を応用する場合には、弾性ローラが電子線を照射される照射室の内部は窒素雰囲気または空気雰囲気である。そのため、電子線発生部と照射室との境界に設ける照射口箔には、ピンホールがなく、電子線発生部内の真空雰囲気を十分維持できる機械的強度があり、しかも、電子線が透過しやすいように比重が小さく肉厚の薄い金属が望ましい。例えば、照射口箔に使用される金属として厚さ約5μm〜15μm程度のTiがよく使用される。
例えば、最大加速電圧150kV・最大電子電流40mAの電子線照射装置(岩崎電気株式会社製)が用いられる。また、照射時には窒素雰囲気または空気雰囲気で行なうが、窒素雰囲気下での照射が好ましく、酸素濃度500ppm以下の環境が好ましい。
【0037】
尚、電子線の線量は、下記で定義される。
線量(kGy)=[装置定数K×電子電流(mA)]/処理スピード(m/min)
【0038】
ここで、装置定数Kは、装置個々の効率を表す定数であって、装置の性能の指標となる。例えば本来、電子線照射装置では、K=18以上とする必要がある。したがって、一定の電子電流と処理スピードに対して、加速電圧を変えて線量を測定し、これから得られる装置定数Kが所定の値以上になるような加速電圧を求めることより、加速電圧についての制限が得られる。
電子線の線量については、表面処理の効果に応じて適宜選択すれば良い。その調節は、電子電流、処理スピードのいずれでも行なう事が可能であり、所望の線量が得られるように決めればよい。
【0039】
本発明の導電性弾性ローラの製造方法に用いる材料について説明する。
【0040】
[導電性の軸芯体]
本発明の導電性弾性ローラに用いられる導電性の軸芯体は、導電性を有し、その上に設けられる弾性体層を支持する機能を有するものである。材料としては、例えば、鉄、銅、ステンレス、アルミニウム、ニッケルのような金属やその合金を挙げることができる。
【0041】
[弾性体層]
(弾性体層の材料)
弾性体層は、例えば、ゴムに中空粒子や導電剤を分散したゴム混合物を用いて製造する。ゴムとしては、以下のものが挙げられる。エピクロルヒドリンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴムのような合成ゴムが挙げられる。または、スチレン・ブタジエン・スチレン−ブロックコポリマー、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレン−ブロックコポリマーのような熱可塑性エラストマーが挙げられる。また、これらのゴムを単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0042】
(中空粒子)
本発明に使用する導電性弾性ローラの弾性体層は、中空粒子が含有されている。中空粒子としては、粒子の内部が気泡となっている粒子を用いても良いし、粒子の内部に内包物質を含み、熱を加えることにより内包物質が膨張し、中空粒子となるいわゆる熱膨張性マイクロカプセルを用いても良い。熱膨張性マイクロカプセルを本発明に用いる場合、あらかじめ熱膨張マイクロカプセルを加熱し、既膨張としたマイクロカプセルを用いることができる。また弾性体層に加圧と除圧を繰り返し行なう工程において、弾性体層を加熱することで、シェルとなる熱可塑性樹脂を膨張させつつ、加圧と除圧を繰り返し行なってもよい。成形時の温度条件によって、カプセルが溶融したり、破裂したりすることなくシェル構造を維持した状態で成形することができる。
中空粒子のシェルに用いる熱可塑性樹脂としては、公知の熱可塑性樹脂が挙げられる。例えば、アクリロニトリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、メタクリル酸樹脂、スチレン樹脂、ウレタン樹脂、アミド樹脂、メタクリロニトリル樹脂、アクリル酸樹脂、アクリル酸エステル樹脂類、メタクリル酸エステル樹脂類が挙げられる。この中でも、ガス透過性が低く、高い反発弾性を示すアクリロニトリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、メタクリロニトリル樹脂から選ばれる少なくとも1種からなる熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。これら熱可塑性樹脂は、単独で、または2種以上用いることができる。更に、これら熱可塑性樹脂の単量体を共重合させ、共重合体として用いても良い。
熱膨張性マイクロカプセルを用いる場合、カプセルに内包させる物質としては、中空粒子のシェルの軟化点以下の温度でガスになって膨張するもので、例えばプロパン、プロピレン、ブテン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタンのような低沸点液体、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、ノルマルヘプタン、ノルマルオクタン、イソヘプタン、イソオクタン、ノルマルデカン、イソデカンのような高沸点液体が多く用いられる。
【0043】
これら熱膨張性マイクロカプセルは、懸濁重合法、界面重合法、界面沈殿法、液中乾燥法といった公知の製法により製造することができる。
中空粒子の体積平均粒径については、特に限定はないが、好ましくは5μm〜1000μm、特に好ましくは10μm〜500μmである。
【0044】
中空粒子としては、例えば、ペンタン、ヘキサンをカプセルに内包させる物質とし、気体透過性の低い塩化ビニリデン樹脂やアクリロニトリル樹脂をシェルとする熱膨張性マイクロカプセルが挙げられる。本発明においては、前述したとおり、加圧と除圧を繰り返し行なう工程により弾性体層中に含まれる中空粒子の形状が変形および復元を繰り返す必要がある。こうしたことから、弾性体層中に含まれる気体を膨張させるため、単泡を含む弾性体層を製造するに有効である熱膨張性マイクロカプセルを用いることが好ましい。
【0045】
(導電剤)
導電剤を適宜使用することによって、弾性ローラの導電性を所定の値にすることができる。導電剤として電子導電性フィラーの種類および使用量を適宜選択することによって弾性ローラの電気抵抗値を調整することができる。
また、天然グラファイトおよび人造グラファイトのようなグラファイト、酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛のような金属酸化物系導電性粒子、アルミニウム、鉄、銅、銀のような金属系導電性粒子を挙げることができる。また、これら電子導電性フィラーは、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0046】
また導電性ポリマー、イオン導電剤のような導電物質を前記の電子導電性フィラーと併用して弾性ローラに導電性を付与しても良い。
【0047】
(添加剤)
またゴム混合物には、無機または有機の充填剤や架橋剤のような添加剤を添加してもよい。
【0048】
[表面層]
(表面層の材料)
表面層に用いるバインダー樹脂としては、公知のバインダーを採用することができる。例えば、樹脂、天然ゴムやこれを加硫処理したもの、合成ゴムのようなゴムを挙げることができる。
樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のような樹脂が使用できる。中でも、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ブチラール樹脂がより好ましい。
合成ゴムとしては、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルゴムおよびエピクロルヒドリンゴムが使用できる。
表面層に導電性が必要な場合、弾性体層と同様にイオン導電剤、電子導電性フィラーのような導電剤を加え、調整することができる。
【0049】
[電子写真装置]
本発明に従い製造した導電性弾性ローラを帯電ローラとして備えた電子写真装置の一例の概略構成図を図7に示す。
電子写真装置は、感光体や、感光体を帯電する帯電装置、露光を行なう潜像形成装置、トナー像に現像する現像装置、転写材に転写する転写装置、感光体上の転写トナーを回収するクリーニング装置、トナー像を定着する定着装置のような装置から構成されている。
電子写真感光体(感光体)701は、導電性の軸芯体上に感光層を有する回転ドラム型である。感光体は矢示の方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動される。
帯電装置は、感光体701に所定の押圧力で当接されることにより接触配置される接触式の帯電ローラ702を有する。帯電ローラ702は、感光体の回転に従い回転する従動回転であり、帯電用の電源712から所定の電圧を印加することにより、感光体を所定の電位に帯電する。感光体701に静電潜像を形成する潜像形成装置708は、例えばレーザービームスキャナーのような露光装置が用いられる。一様に帯電された感光体に画像情報に対応した露光を行なうことにより、静電潜像が形成される。
現像装置は、感光体701に近接または接触して配設される現像ローラ703を有する。感光体帯電極性と同極性に静電的処理されたトナーを反転現像により、静電潜像をトナー像に可視化現像する。
転写装置は、接触式の転写ローラ705を有する。感光体からトナー像を普通紙のような印刷メディア704(印刷メディアは、搬送部材を有する給紙システムにより搬送される。)に転写する。
クリーニング装置は、ブレード型のクリーニング部材707、回収容器を有し、転写した後、感光体上に残留する転写残トナーを機械的に掻き落とし回収する。
ここで、現像装置にて転写残トナーを回収する現像同時クリーニング方式を採用することにより、クリーニング装置を省くことも可能である。
定着装置706は、加熱されたローラのような部材で構成され、転写されたトナー像を印刷メディア704に定着し、機外に排出する。
【0050】
上記で説明した本発明の導電性弾性ローラの製造方法を、具体的な実施例と比較例とによりさらに更に詳細に説明するが、これらは、本発明の技術的範囲を何ら限定するものではない。
【実施例】
【0051】
以下に、上記で説明した本発明の導電性弾性ローラの製造方法を具体的に説明する。
【0052】
<製造例1〜4>
本発明に係る中空粒子1〜4を以下のように調製した。
【0053】
<製造例1>[中空粒子1の作製]
重合反応容器に、イオン交換水8000質量部と、分散安定剤としてコロイダルシリカ9質量部およびポリビニルピロリドン0.3質量部とを添加し、水溶性分散媒体を調製した。
次いで、原料モノマーとしてアクリロニトリル樹脂200質量部と、内包物質としてノルマルヘキサン25質量部と、重合開始剤としてジクミルパーオキシド1.5質量部と、架橋物質としてメチルメタアクリレート1.0質量部とからなる油性混合液を水溶性分散媒体に添加し、更に水酸化ナトリウム0.8質量部を添加することにより、分散液を調製した。
得られた分散液を、ホモジナイザーを用いて攪拌混合し、窒素置換した重合反応容器内へ仕込み、加圧し、60℃で20時間反応させることにより、反応生成物を調製した。得られた反応生成物について、ろ過および洗浄を繰り返した後、乾燥して製造例1の熱膨張性マイクロカプセルとして中空粒子1を得た。得られた中空粒子1の体積平均粒径は、分級することにより12μmとした。
【0054】
<製造例2>[中空粒子2の作製]
製造例1において、原料モノマーをメタクリロニトリル樹脂とした以外は、製造例1と同様の方法で中空粒子2を作製した。得られた中空粒子2の体積平均粒径は、分級することにより15μmとした。
【0055】
<製造例3>[中空粒子3の作製]
製造例1において、原料モノマーを塩化ビニリデン樹脂とした以外は、製造例1と同様の方法で中空粒子3を作製した。得られた中空粒子3の体積平均粒径は、分級することにより18μmとした。
【0056】
<製造例4>[中空粒子4の作製]
製造例1において、原料モノマーをスチレン樹脂とした以外は、製造例1と同様の方法で熱中空粒子4を作製した。得られた中空粒子4の体積平均粒径は、分級することにより20μmとした。
【0057】
<製造例5〜35>
導電性ローラ5〜35を以下のように製造した。
【0058】
<製造例5>[導電性弾性ローラ5の作製]
(弾性体層の作製)
下記に示す成分を80℃に調節した密閉型ミキサーにて15分間混練した。
NBR 100質量部
(結合アクリロニトリル量 35% ムーニー粘度 32)
酸化亜鉛 5質量部
ステアリン酸亜鉛 1質量部
炭酸カルシウム 25質量部
セバシン酸ポリエステル 10質量部
カーボンブラック1 40質量部
(平均粒子径:28nm、DBP吸油量87cm/100g)
これに、下記に示す成分を、25℃に冷却した二本ロール機にて20分間混錬し、未加硫ゴム混合物を得た。
粉末硫黄 1.2質量部
ジベンゾチアジルジスルフィド(DM) 1質量部
テトラメチルチウラムモノスルフィド(TS) 1質量部
中空粒子1(製造例1) 12質量部
直径6mm、長さ258mmのステンレス製棒に、熱硬化性接着剤(商品名:「メタロックU−20」、東洋化学研究所製)をあらかじめ両端部12mmを除いた領域に塗布し、180℃に調節した熱風炉内にて30分間静置して導電性の軸芯体を得た。
続いて、図1(a)および図3に示すクロスヘッドを具備する押出成形装置を用いた。汎用のゴム用押出機(商品名:「ベント付き押出機」、三葉製作所製;スクリュー直径が45mm、L/D=20押出機、Lはスクリュー長さ、Dはスクリュー直径)を使用した。スクリューのフライト形状は、ベントゾーンを除く箇所についてフルフライト形状とした。押出時の温調はヘッドの温度を90℃、シリンダ301の温度を90℃、スクリュー302の温度を90℃とした。
クロスヘッドの環状流路の形状は、押出流れ方向に垂直な断面を円環状とした。環状流路は、図3に示すように、押出機側の入口側は内径Aがφ68mm、外径aがφ102mmであり、口金側は内径Bがφ18mm、外径bがφ50mmである、一様に円環の断面積が減少するテーパ型とした。環状流路の長さは130mmとした。
内側ダイ312の貫通孔314の一端には、導電性の軸芯体202を連続的に供給するための送りロール321を設置した。前記送りロールは図示しないモータに接続されて回転力を付与されている。
クロスヘッドの先端には、内径がφ9.8mmの口金318を装着した。押出機101(図1(a))による未加硫ゴム組成物の吐出速度(単位時間あたりの押出量)を所定の弾性ローラ予備成形体の外径となるように押出機のスクリュー回転数を10.5rpmとした。
導電性の軸芯体を中心軸として同軸上に円筒状のゴム混合物を被覆して、ゴム混合物層の外径がφ9.4mmである弾性ローラ予備成形体を得た。
図4に示す加圧装置を用いて、前記の弾性ローラ予備成形体に加圧および除圧を繰り返す工程を行なった。このとき加圧力を4.9N、振幅を2.9Nとした。
【0059】
この弾性ローラ予備成形体を、160℃に調節した熱風炉内にて60分間加熱し、加硫を行ない、端部未切断弾性ローラを得た。
【0060】
本実施例ではこの端部未切断弾性ローラの弾性体層の両端部を切断し、端部切断後未研磨弾性ローラを得た。弾性体層の長さは228mmであった。円筒研磨機を用いて、端部切断後の未研磨弾性ローラの外周面を研磨して、外径8.5mmに調整した。
【0061】
(クラウン量の測定方法)
外径測定機としては、(商品名:「LS−7500(コントローラ)」および「LS−7030M(測定部)」、キーエンス社製)を用いた。弾性体層の長手方向の中央部(114mm)と、中央部より両端方向に各90mm部(24mm、204mm)の3箇所の外径を測定した。中央部の外径をD2、両端方向に各90mm部の外径をそれぞれD1、D3とし、クラウン量Dは、D=(D2 −(D1 +D3 )/2)として算出した。その結果、クラウン量は100μmであった。
【0062】
(表面層の作製)
表面層である表層1を次のように作製した。
カプロラクトン変性アクリルポリオール溶液にメチルイソブチルケトンを加え、固形分が18質量%となるよう調整した。
この溶液555.6質量部(アクリルポリオール固形分100質量部)に対して、下記成分を加え、ウレタン樹脂の混合溶液を調整した。
カーボンブラック 20質量部
(一次粒子径22nm、DBP吸油量100ml/g)
酸化チタン粒子 20質量部
変性ジメチルシリコーンオイル(*1) 0.08質量部
ブロックイソシアネート混合物(*2) 80.14質量部
このとき、ブロックイソシアネート混合物は、イソシアネート量としては「NCO/OH=1.0」となる量であった。
(*1)変性ジメチルシリコーンオイル「SH28PA」(商品名、東レ・ダウコーニングシリコーン株式会社製)
(*2)ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)とイソホロンジイソシアネート(IPDI)の各ブタノンオキシムブロック体の7:3混合物
内容積450mLのガラス瓶に上記混合溶液200gを、メディアとしての平均粒径0.8mmのガラスビーズ200gと共に入れ、ペイントシェーカー分散機を用いて12時間分散した。
分散した後、ガラスビーズを除去して表面層用塗布溶液を得た。
上記表面層用塗布溶液を用いて、図示しない塗布装置を用いて、弾性ローラに1回ディッピング塗布を行った。ここで、ディッピング塗布は以下の通りである。浸漬時間9秒、ディッピング塗布引き上げ速度は、初期速度20mm/s、最終速度2mm/s、その間は時間に対して直線的に速度を変化させて行った。塗布後に常温で30分間以上風乾し、熱風循環乾燥機にて80℃で1時間、更に160℃で1時間乾燥し、弾性体層上に表面層を形成した導電性弾性ローラ5を得た。
【0063】
<製造例6〜15>[導電性弾性ローラ6〜15の作製]
加圧と除圧の処理条件を表1に示す通りにした以外は、製造例5と同様に導電性弾性ローラ6〜15を製造した。
【0064】
<製造例16〜30>[導電性弾性ローラ16〜30の作製]
製造例5において、加圧と除圧の処理条件を表1に示すとおりにし、表2に示すゴム組成物を用いた以外は、製造例5と同様にして導電性弾性ローラ16〜30を得た。
表2において下記材料をそれぞれ使用した。
エピクロルヒドリンゴム(ヒドリン)(商品名:エピオンON301、ダイソー社製)
EPDM(商品名:エスプレンEPDM505A、住友化学工業社製)
SBR(商品名:SBR1500、JSR社製)
中空粒子2(製造例2)
中空粒子3(製造例3)
中空粒子4(製造例4)
カーボンブラック2(商品名:シーストS、東海カーボン社製)
カーボンブラック3(商品名:シーストGSO、東海カーボン社製)
四級アンモニウム塩(商品名:アデカサイザーLV70、旭電化工業社製)
【0065】
<製造例31>[導電性弾性ローラ31の作製]
製造例5において、表層1を下記の表層2と変更した以外は、製造例5と同様に導電性弾性ローラ31を製造した。
表層2は次のように作製した。
波長250nm近傍の紫外線ランプを当該弾性ローラ軸方向と平行に設置して、当該弾性ローラを円周方向に回転させながら254nmの波長の紫外線の積算光量が9000mJ/cmになるように2分間照射して、表面に紫外線処理層を形成した。このようにして導電性弾性ローラ31を得た。なお、紫外線照射には低圧水銀ランプ(商品名:「QLC500」、ハリソン東芝ライティング(株)社製)を用いた。
【0066】
<製造例32>[導電性弾性ローラ32の作製]
製造例5において、表層1を下記の表層3と変更した以外は、製造例5と同様に導電性弾性ローラ32を製造した。
表層3は次のように作製した。
最大加速電圧150kV・最大電子電流40mAの電子線照射装置(岩崎電気株式会社製)の照射口を当該弾性ローラ軸方向と平行に設置して、当該弾性ローラを円周方向に回転させながら弾性体層上に直接電子線を照射して表面に電子線処理層を形成した。このようにして導電性弾性ローラ32を得た。電子線の照射条件としては加速電圧150KV、電子電流15mA、照射時間1secとした。照射時には窒素雰囲気(酸素濃度約300ppm)で行った。弾性ローラを500rpmの回転数で回転させながら、上記照射時間になるように搬送して電子線を照射した。
【0067】
<製造例33>[導電性弾性ローラ33の作製]
弾性体層の表面に上層を設けた弾性体層を有する導電性弾性ローラを、以下のとおり製造した。
弾性体層となるゴム組成物としては、下記に示す成分を用いて製造例5と同様の方法でゴム組成物を得た。
ヒドリンゴム 100質量部
(エピクロルヒドリン:エチレンオキサイド:アリルグリシジルエーテル=23モル%:73モル%:4モル% ムーニー粘度 60)
酸化亜鉛 5質量部
ステアリン酸亜鉛 1質量部
炭酸カルシウム 45質量部
セバシン酸ポリエステル 10質量部
四級アンモニウム塩 2質量部
(テトラブチルアンモニウムパークロレート)
粉末硫黄 1.2質量部
ジベンゾチアジルジスルフィド(DM) 1質量部
テトラメチルチウラムモノスルフィド(TS) 1質量部
中空粒子1(製造例1) 12質量部
上層となるゴム組成物としては、下記に示す成分を用いて製造例5と同様の方法でゴム組成物を得た。
NBR(結合アクリロニトリル量 35% ムーニー粘度 32)100質量部
酸化亜鉛 5質量部
ステアリン酸亜鉛 1質量部
炭酸カルシウム 25質量部
セバシン酸ポリエステル 10質量部
カーボンブラック1 48質量部
(平均粒子径:28nm、DBP吸油量87cm/100g)
粉末硫黄 0.8質量部
ジベンゾチアジルジスルフィド(DM) 1質量部
テトラメチルチウラムモノスルフィド(TS) 1質量部
製造例5と同様にして導電性の軸芯体を得た。
続いて、図1(b)に示す二層クロスヘッドを具備する二層押出成形装置を用いて、導電性の軸芯体を中心軸として同軸上に円筒状のゴム組成物を被覆して、ゴム組成物層の外径がφ10.0mmである弾性ローラ予備成形体を得た。
これを、160℃に調節した熱風炉内にて60分間加熱し、発泡および加硫を行ない、外径がφ13.0mmである端部未切断弾性ローラを得た。製造例5と同様に円筒研磨機を用いて、端部切断後の未研磨弾性ローラの外周面を研磨して、外径12.0mmに調整した。上層の厚さは0.5mmであった。
その後は、製造例5と同様にして、導電性弾性ローラ33を得た。
【0068】
<製造例34>[導電性弾性ローラ34の作製]
表1に示すように製造例5において、中空粒子1を発泡剤1としてOBSH(4,4'−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジッド)4質量部に変更したこと以外は、製造例5と同様にして導電性弾性ローラ34を得た。
【0069】
<製造例35>[導電性弾性ローラ35の作製]
製造例33において、中空粒子1を発泡剤1としてOBSH(4,4'−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジッド)4質量部に変更したこと以外は、製造例33と同様にして導電性弾性ローラ35を得た。
【0070】
【表1】

【0071】
【表2】

【0072】
〔実施例1〕
製造例5にて製造した導電性弾性ローラ5を帯電ローラとして、以下の評価を行った。
【0073】
[電気抵抗値の周方向におけるムラの評価]
導電性弾性ローラ5の周方向における電気抵抗値のムラを以下に示す方法で算出した。すなわち、図6に示すように導電性の軸芯体202の両端を、荷重のかかった軸受け602により感光体と同じ曲率の円柱形金属601に、平行になるように当接させる。この状態で、モータ(不図示)により円柱形金属601を矢印の方向に沿って回転させ、当接した導電性弾性ローラ201を従動回転させながら安定化電源603から直流電圧−200Vを印加し、このときに流れる電流を電流計604で測定した。電流計604で計測した電流値の最大値と最小値から、その比(最大値/最小値)を求めて電気抵抗値の周方向におけるムラとした。荷重は各4.9Nとし、円柱形金属は直径φ30mm、円柱形金属の回転は周速45mm/secとした。
導電性弾性ローラ5の電気抵抗値の周方向におけるムラは2.21であった。
【0074】
[画像評価試験]
図7に示す構成を有する電子写真装置であるカラーレーザープリンタ(商品名:HP Colar LaserJet 4700dn、ヒューレット・パッカード社製)を用いた。上記プリンタを200mm/sec(A4縦出力)で記録メディアを出力できるよう改造して使用した。1次帯電の出力は、直流電圧(Vdc)が−1100Vである。画像の解像度は、600dpiである。感光体701は感光層を含む全膜厚が40μmである有機感光体ドラムを用いた。上記電子写真装置から帯電ローラを取り外し、作製した導電性弾性ローラ5をセットした。導電性弾性ローラ5は感光体に対し、一端で4.9N、両端で合計9.8Nのバネによる押し圧力で当接させた。この電子写真装置を高温高湿環境30℃80%RH環境に6時間置いた後、通紙耐久評価を行った。評価方法は、50000枚通紙後に、ハーフトーン画像(感光体の回転方向と長手方向に幅1ドット、間隔2ドットの直線を描いた画像)を1枚出力し、出力した画像についてスジ状の画像の評価を行った。ここで、評価の基準は以下の通りである。
ランクA;スジ状の画像の発生はない。
ランクB;ごく軽微なスジ状の画像が認められる。
ランクC;一部にスジ状の画像が帯電ローラのピッチで確認できるが、実用上問題の無い画質である。
ランクD;スジ状の画像が目立ち、画質の低下が認められる。
画像評価試験の結果、本実施例の導電性弾性ローラ5については、スジ状の画像は発生せず良好な画像が得られた。画像ランクは、ランクAであった。
【0075】
〔実施例2、4〜29〕
製造例6、8〜33にて製造した導電性弾性ローラを帯電ローラとして、実施例1と同様に評価を行った。結果を表3に示す。実施例2、4〜29においては、周方向におけるムラも実施例1と同程度であり、画像評価試験においても、スジ状の画像は発生せず良好な画像が得られた。画像ランクは、ランクAであった。
【0076】
〔実施例3〕
製造例7にて製造した導電性弾性ローラを帯電ローラとして、実施例1と同様に評価を行った。結果を表3に示す。実施例3においては、周方向におけるムラは実施例1と比較するとわずかに大きく、画像評価試験においても、ハーフトーンの一部にごく軽微なスジ状の画像がわずかに認められたが、実使用上問題のない画像である。画像ランクは、ランクBであった。
【0077】
〔比較例1、2〕
製造例34、35にて製造した導電性弾性ローラを帯電ローラとして、実施例1と同様に評価を行った。結果を表3に示す。比較例1、2においては、周方向におけるムラは実施例1と比較するとかなり大きく、画像評価試験においても、ハーフトーン画像上にスジ状の画像が目立ち、画質の低下が認められる画像であった。画像ランクは、ランクDであった。
【0078】
【表3】

【符号の説明】
【0079】
101‥‥押出機
102‥‥単層クロスヘッド
103‥‥送りロール
104‥‥単層の弾性ローラ予備成形体
105‥‥二層クロスヘッド
106‥‥二層の弾性ローラ予備成形体
201‥‥導電性弾性ローラ
202‥‥導電性の軸芯体
203‥‥導電性ゴム円筒体
204‥‥ウエルドライン
300‥‥押出機
301‥‥シリンダ
302‥‥スクリュー
303‥‥メッシュ
304‥‥アダプター
310‥‥クロスヘッド
311‥‥導入口
312‥‥内側ダイ
314‥‥貫通孔
315‥‥外側ダイ
317‥‥環状流路
318‥‥口金
321‥‥送りロール
341‥‥導電性ゴム組成物
401‥‥押圧部材
402‥‥カップリング
403‥‥モータ
404‥‥偏心カム
405‥‥加圧バネ
406‥‥偏心カム保持具
407‥‥加圧付加治具
408‥‥押圧部材保持具
409‥‥軸芯体保持具
410‥‥押圧部材取り付け台
411‥‥装置台
412‥‥弾性ローラ予備成形体
413‥‥カップリング
414‥‥モータ
601‥‥円柱形金属
602‥‥軸受け
603‥‥安定化電源
604‥‥電流計
701‥‥電子写真感光体
702‥‥帯電ローラ
703‥‥現像ローラ
704‥‥印刷メディア
705‥‥転写ローラ
706‥‥定着装置
707‥‥クリーニング部材
708‥‥潜像形成装置
712‥‥電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の軸芯体と該軸芯体の周面を被覆する導電性ゴム層とを有する導電性弾性ローラの製造方法であって、
(1)クロスヘッドの貫通孔に該軸芯体を供給すると共に、該クロスヘッドに接続する押出機から、中空粒子と電子導電性フィラーとを含む未加硫のゴム混合物を該クロスヘッドに供給し、該軸芯体の周囲に該ゴム混合物の層を形成する工程と、
(2)該ゴム混合物の層の表面に加圧と除圧とを繰り返し行なう工程と、
(3)該工程(2)を経た該ゴム混合物の層を加硫して導電性ゴムの層を形成する工程と、を有することを特徴とする導電性弾性ローラの製造方法。
【請求項2】
前記工程(2)は、前記ゴム混合物の層に含まれる前記中空粒子の形状が変形および復元を繰り返す工程である請求項1に記載の導電性弾性ローラの製造方法。
【請求項3】
前記工程(2)が、押圧部材により前記加圧に振幅を与えると共に、該押圧部材の押し当て場所を変化させる工程である請求項1または2に記載の導電性弾性ローラの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−173529(P2012−173529A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35840(P2011−35840)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】