説明

導電性弾性体の製造方法、及び、電子写真装置用ローラー

【課題】熱硬化性ポリウレタンを用いながらも生産効率に優れた導電性弾性体の製造方法を提供し、ひいては製造容易な電子写真装置用ローラーを提供すること。
【解決手段】熱硬化性ポリウレタンに導電剤を分散させた分散液を作製し、該分散液を硬化させて導電性弾性体を作製する導電性弾性体の製造方法であって、前記導電剤として、pH7.5以上、DBP吸収量50ml/100g以下、揮発分1.1質量%以下のカーボンブラックと樹脂被覆カーボンブラックとを用いることを特徴とする導電性弾性体の製造方法などを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性弾性体の製造方法、及び、電子写真装置用ローラーに関し、より詳しくは、熱硬化性ポリウレタンに導電剤を分散させた分散液を作製し、該分散液を硬化させて導電性弾性体を作製する導電性弾性体の製造方法、及び、芯金の外周に導電性弾性体からなる弾性体層を備えた電子写真装置用ローラーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機やプリンターなどの電子写真装置には、帯電ローラーや現像ローラーといった芯金の外周に導電性を有する弾性体層を備えたローラーが備えられている。
この種の電子写真装置用ローラーにおいては、前記弾性体層に単に導電性を発揮させるばかりでなく、前記弾性体層に所定の導電性を発揮させることが求められている。
即ち、弾性体層の導電性が所定範囲外のものになると電子写真装置の印刷品質を低下させるおそれを有するために弾性体層を形成する導電性の弾性体を所定の体積抵抗率に調整することが求められている。
【0003】
従来、このような導電性弾性体に含有させる導電剤としては、金属粉末やカーボンブラックなどが知られており、中でも粒子が細かく弾性体に均一分散が容易なカーボンブラックが広く用いられている。
このことに関し下記特許文献1には、ポリウレタン弾性体における分散性をさらに向上させるべくカーボンブラックに予め樹脂を被覆させることが記載されている。
また、下記特許文献1には、この樹脂被覆カーボンブラックを熱硬化性ポリウレタンに分散させて分散液を作製し、芯金を収容した金型内に前記分散液を注いで90℃、6時間の熱硬化を実施することによって芯金の外周に導電性弾性体からなる弾性体層を有するローラーを形成させることが記載されており、このことによって電気抵抗値のバラツキが小さいローラーを得られることが記載されている(特許文献1の段落〔0016〕、〔図3〕等参照)。
【0004】
ところで、電子写真装置用ローラーの弾性体層を導電性弾性体で形成する場合のみならず、他の用途の導電性弾性体においてもその製造に際しての生産効率を向上させることが求められている。
しかし、特許文献1に記載のごとく、カーボンブラックを熱硬化性ポリウレタンに分散させた分散液を硬化させるのに際しては長い加熱時間を必要としている。
即ち、従来、熱硬化性ポリウレタンを用いた導電性弾性体の製造方法においては生産効率に優れた方法が採用されておらず、製造容易な電子写真装置用ローラーを得ることが難しいという問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−293968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような問題を解決することを課題としており、熱硬化性ポリウレタンを用いながらも生産効率に優れた導電性弾性体の製造方法を提供し、ひいては製造容易な電子写真装置用ローラーを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一般にカーボンブラックをゴムや樹脂に含有させて導電性を発揮させようとした場合には、その含有量と導電性との間に直線的な関係を示さず、カーボンブラックがある含有量に達した時点で急激に抵抗値を低下させるパーコレーション領域と呼ばれる領域を示すことが知られており、導電性弾性体に所望の導電性を発揮させることが困難な状況になっている。
本発明者は、樹脂被覆カーボンブラックを用いることでこのパーコレーション領域における抵抗値の変化を緩やかなものにさせ得ることを見出すとともに、樹脂被覆カーボンブラックと所定のカーボンブラックとを併用することで熱硬化性ポリウレタンの硬化反応を促進させうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、導電性弾性体の製造方法に係る本発明は、熱硬化性ポリウレタンに導電剤を分散させた分散液を作製し、該分散液を硬化させて導電性弾性体を作製する導電性弾性体の製造方法であって、前記導電剤として、pH7.5以上、DBP吸収量50ml/100g以下、揮発分1.1質量%以下のカーボンブラックと樹脂被覆カーボンブラックとを用いることを特徴としている。
【0009】
また、電子写真装置用ローラーに係る本発明は、芯金の外周に導電性弾性体からなる弾性体層を備えた電子写真装置用ローラーであって、前記導電性弾性体が、熱硬化性ポリウレタンに導電剤を分散させた分散液を硬化させてなり、前記導電剤として、pH7.5以上、DBP吸収量50ml/100g以下、揮発分1.1質量%以下のカーボンブラックと樹脂被覆カーボンブラックとが含有されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、熱硬化性ポリウレタンに導電剤を分散させた分散液を作製するのに際して、前記導電剤として、pH7.5以上、DBP吸収量50ml/100g以下、揮発分1.1質量%以下のカーボンブラックを樹脂被覆カーボンブラックと併用することから、該分散液の硬化時間を短縮させることができ、導電性弾性体を効率良く製造することができる。
従って、本発明によれば、製造容易な電子写真装置用ローラーを提供することができる。
【0011】
また、本発明によれば、樹脂被覆カーボンブラックを用いることで樹脂被覆されていないカーボンブラックを用いるような場合に比べてパーコレーション領域における抵抗値の変化を緩やかなものにさせ得る。
従って、カーボンブラックの配合量の僅かな違いで導電性弾性体の抵抗値が所望の範囲から外れて不良品となることを抑制させることができる。
即ち、本発明の導電性弾性体の製造方法は、歩留りの向上を図り得る点においても生産効率に優れたものであるといえる。
【0012】
なお、前記樹脂被覆カーボンブラックは、pH7.0未満の酸性カーボンブラックにエポキシ樹脂を被覆した樹脂被覆カーボンブラックであることが好ましく、この好ましい樹脂被覆カーボンブラックを用いることでパーコレーション領域における抵抗値の変化をより緩やかなものにさせ得る。
【0013】
また、導電剤として用いる前記カーボンブラックと前記樹脂被覆カーボンブラックとは、30:70〜50:50の質量比率で用い、且つ、合計量が6.0質量%以上7.0質量%以下となるように前記分散液に含有させることが好ましく、この好ましい態様を採用することにより、分散液の硬化反応を促進させる効果、及び、パーコレーション領域における抵抗値の変化を抑制させる効果をより確実に発揮させ得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】一態様の電子写真装置用ローラーを示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の好ましい実施の形態について電子写真装置用ローラーを例示して添付図面を参照しつつ説明する。
特に、本実施形態においては、従来、パーコレーション領域との関係から抵抗値を調整することが困難であった中抵抗の弾性体層を有する電子写真装置用ローラーを例示して本発明を説明する。
【0016】
図1は、本実施形態における電子写真装置用ローラーの斜視図であり、この図にも示されているように、本実施形態における電子写真装置用ローラーは、その回転中心軸となる丸棒状の芯金11と、該芯金11の外表面に接するようにして設けられた弾性体層12と、該弾性体層12の外表面を覆う表面被覆層13とを備えている。
【0017】
前記弾性体層12は、前記芯金11の外周において一定厚みとなるようにして設けられており、導電剤を含有する導電性弾性体からなり、体積抵抗率が1×104Ω・cm以上、1×106Ω・cm以下の導電性弾性体によって形成されている。
該導電性弾性体は、熱硬化性ポリウレタンに導電剤を分散させた分散液を硬化させて形成されたものであり、前記導電剤として、pH7.5以上、DBP吸収量50ml/100g以下、揮発分1.1質量%以下のカーボンブラックと樹脂被覆カーボンブラックとが含有されている。
【0018】
前記弾性体層12を形成させるための熱硬化性ポリウレタンとしては、特に限定されることなく、一般的なポリオールとイソシアネートとを組み合わせたものが用いることができる。
また、前記ポリオールとしても特に限定されるものではなく、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールなどの中から適宜選択して採用することが出来る。
【0019】
前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリオキシテトラメチレングリコール及びそれらの混合物等が挙げられ、前記ポリオキシアルキレンポリオールとしては、例えば、2個以上の活性水素含有基を有する化合物を出発原料とし、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、1,3−ブチレンオキシド、スチレンオキシド等のアルキレンオキシドの開環付加反応により得られるものを採用することができる。
なお、この2個以上の活性水素含有基を有する化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の2価のアルコール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、デキストロース、ソルビトール、ショ糖等の3価以上の多価アルコール;レゾルシノール、ハイドロキノン、ビスフェノールA等の多価フェノール;エチレンジアミン、トリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、イソホロンジアミン等の多価アミン;ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン、それらの変性物等が挙げられ、これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0020】
また、前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、ジカルボン酸と多価アルコールの縮合反応により得られるものを採用することができる。
なお、このジカルボン酸としては、例えば、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸;テトラブロモフタル酸等のハロゲン含有ジカルボン酸;これらのエステル形成性誘導体、これらの酸無水物等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0021】
このジカルボン酸とともにポリエステルポリオールを構成する多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、デキストロース、ソルビトール等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0022】
前記イソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4'−MDI)、2,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4'−MDI)、1,4−フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)などの芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアナートメチル(NBDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)などの脂肪族ポリイソシアネート;トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、H6XDI(水添XDI)、H12MDI(水添MDI)などの脂環式ポリイソシアネート;上記の各ポリイソシアネートのカルボジイミド変性ポリイソシアネート、または、これらのイソシアヌレート変性ポリイソシアネートなどが挙げられ、これらは、1種が単独で、又は2種以上が組み合わされて用いられ得る。
【0023】
このような熱硬化性ポリウレタンに導電剤として分散させる前記カーボンブラック、及び、前記樹脂被覆カーボンブラックの内、前者のカーボンブラックは、前記のようにpH7.5以上、DBP吸収量50ml/100g以下、揮発分1.1質量%以下であることが重要である。
このような特性を有することが重要であるのは、このような特性を有しないカーボンブラックでは、熱硬化性ポリウレタンの硬化を促進させる効果が十分に発揮されないおそれを有するためである。
なお、熱硬化性ポリウレタンの硬化をより確実に促進させる上において、前記pHは、9.0以下であることが好ましく、8.5以下であることが特に好ましい。
即ち、pH7.5〜8.5のいわゆる中性カーボンブラックを樹脂被覆カーボンブラックとともに導電剤として採用することが好ましい。
【0024】
上記の特性の内、揮発分は、950℃で7分間加熱を行った際に生じる減量の割合を示すもので、通常、カーボンブラックの表面官能基の多寡を示す指標として扱われているものである。
また、カーボンブラックは、この表面官能基が多い方がpHが小さくなる傾向にあり、一般にファーネスブラックは、製法上、チャンネルブラックなどに比べて酸性を示す官能基が少なく中性からアルカリ性を示すものが多い。
しかし、ファーネスブラックはアグリゲートが発達してハイストラクチャーになっているものが多いため一般工業用として市販のものでDBP吸収量が50ml/100g以下となるものを得ることは難しい。
従って、上記特性を満足するカーボンブラックとして市販品を採用する場合であれば、顔料用途などとして市販されているものの中から選択することが好ましい。
なお、このpH及び揮発分については旧JIS K6221:1987に規定の方法によって測定することができ、DBP吸収量はJIS K6217−4:2008に記載の方法によって測定することができる。
【0025】
また、前記樹脂被覆カーボンブラックとしては、pH7.0未満の酸性カーボンブラックに樹脂を被覆した樹脂被覆カーボンブラックであることが好ましい。
この樹脂被覆カーボンブラックとして、pH7.0未満の酸性カーボンブラックに樹脂を被覆した樹脂被覆カーボンブラックが好ましいのは、pHが低く酸性化されたものの方が表面官能基の作用によってカーボンブラックの結晶を構成しているポリベンゼンのπ電子の動きを緩慢なものとすることができパーコレーション領域における導電性弾性体の抵抗値の変化を緩やかなものとすることができるためである。
【0026】
この酸性カーボンブラックに被覆する樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂などを採用することができるが、中でも樹脂被覆カーボンブラックの粉体状態での抵抗値を前記酸性カーボンブラックに比べて2〜3倍に向上させることができ、パーコレーション領域における導電性弾性体の抵抗値の変化をより一層緩やかなものとすることができる点においてエポキシ樹脂を用いることが好ましい。
また、エポキシ樹脂の中でも、アミノフェノール型多官能エポキシ樹脂を用いることが好ましく、このようなエポキシ樹脂を酸性カーボンブラック100質量部に対して5〜20質量部となる割合で用いることが好ましい。
【0027】
この樹脂被覆カーボンブラックとpHが7.5以上の前記カーボンブラックとの内、熱硬化性ポリウレタンの硬化促進には、後者のカーボンブラックの方が寄与率が高いことから、導電性弾性体を形成させるための前記分散液には、当該カーボンブラックをある程度以上含有させることが好ましく、前記カーボンブラックと前記樹脂被覆カーボンブラックとは、30:70〜50:50の質量比率で用いることが好ましい。
また、これらのカーボンブラックは、その合計量が6質量%以上7質量%以下となるように前記分散液に含有させることが好ましく、この好ましい態様を採用することにより、分散液の硬化反応をより促進させることができ、パーコレーション領域における抵抗値の変化をより一層抑制させることができる。
【0028】
なお、本実施形態の電子写真装置用ローラー1の弾性体層12を形成させる導電性弾性体には、他の導電剤や添加剤等を本発明の効果が著しく損なわれない範囲において含有させることができる。
【0029】
また、この弾性体層12の表面を覆う表面被覆層13は、例えば、熱可塑性ポリウレタン、熱硬化性ポリウレタン、アクリル系樹脂などをベースポリマーとしカーボンブラックや黒鉛などの導電剤を含有させたポリマー組成物によって形成させることができる。
さらに、前記芯金21は、例えば、銅、鉄、アルミニウム、ニッケル等の金属及びその合金からなるものや、これらに、溶融めっき、電解めっき、無電解めっきなどの手段によるめっきを施したものを用いることができる。
【0030】
次いで、このような電子写真装置用ローラー1を製造する製造方法について説明する。
本実施形態に係る電子写真装置用ローラー1は、所謂注型成形によって芯金11の外周に導電性弾性体を所定厚みで形成させた後、この導電性弾性体の外径を調整して前記弾性体層12を形成させ、該弾性体層12の表面に前記表面被覆層13を設けることによって製造することが可能である。
より具体的には、例えば、製造する弾性体層12の外径よりも僅かに大径な円柱状のキャビティを有する金型の中心部に芯金11をセットするとともに前記熱硬化性ポリウレタンに導電剤を分散させた分散液を作製し、前記金型に該分散液を注入して、金型ごと加熱して前記分散液を熱硬化させた後に脱型し、芯金周りに円筒状に硬化した導電性弾性体の外周面を研磨して弾性体層12として求められる寸法に調整した後で前記表面被覆層13を設けることによって製造することが可能である。
【0031】
なお、前記分散液の製造には、一般的な混練装置を利用することができ、例えば、前記カーボンブラックと前記樹脂被覆カーボンブラックとをロール混練機等で前記ポリオールに分散させた後、このカーボンブラックを分散させたポリオールとイソシアネートとをプロペラ式攪拌機等で混合して分散液を作製することができる。
また、前記分散液には、必要に応じて触媒等を含有させてもよい。
このとき作製する分散液は、注型作業の作業性の観点から、例えば、温度を調整するなどして粘度が500mPs・s程度となるように調整して注型成形に用いることが好ましい。
【0032】
前記注型成形における加熱温度は、特に限定されるものではないが、90℃〜150℃程度の温度とすることができる。
また、必要に応じて脱型後、得られた成形物をさらに加熱してアフターキュアを実施しても良い。
なお、芯金11の外周において硬化させた導電性弾性体は、その表面を研磨テープなどで研磨して弾性体層12へと仕上げることができる。
【0033】
本実施形態においては、分散液に含有させる導電剤として、pH7.5以上、DBP吸収量50ml/100g以下、揮発分1.1質量%以下のカーボンブラックと樹脂被覆カーボンブラックとが用いられることから、脱型可能な硬化状態となるまでの時間を従来の方法に比べて短縮させることができる。
従って、タクトタイムの短縮を図ることができ、電子写真装置用ローラーの生産効率を従来に比べて向上させることができる。
しかも、樹脂被覆カーボンブラックが用いられることでパーコレーション領域における導電性弾性体の抵抗値の変化を抑制させることができるため、従来安定して良品を作製することが困難であった中抵抗の弾性体層を有する電子写真装置用ローラーの歩留りを大幅に向上させ得る。
【0034】
また、この弾性体層12の表面に前記表面被覆層13を形成させる際には、例えば、前記ベースポリマーを可溶な有機溶剤に当該ベースポリマーを溶解させるとともに導電剤を分散させてコーティング液を作製し、該コーティング液を弾性体層12の表面にコーティングした後に乾燥させるような方法を採用することができる。
【0035】
なお、本実施形態においては、表面被覆層を備えた電子写真装置用ローラーを例示しているが、導電性弾性体からなる弾性体層のみが芯金の外周に備えられている電子写真装置用ローラーも本発明の意図する範囲のものである。
また、芯金との間や表面被覆層との間に他の層を備えた電子写真装置用ローラーも本発明が意図する範囲である。
さらに、本発明の導電性弾性体の製造方法は、電子写真装置用ローラーの弾性体層を形成させる場合にのみ利用されるものではなく、各種の導電性弾性体の製造において利用されるものである。
【実施例】
【0036】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
(分散液の調整)
まず、三菱化学製の酸性カーボンブラック(商品名「MA8」、pH3、DBP吸収量57ml/100g、揮発分3質量%)をエポキシ樹脂で被覆して樹脂被覆カーボンブラックを作製した。
次いで、この樹脂被覆カーボンブラックとpH8、DBP吸収量45ml/100g、揮発分1.1質量%の三菱化学製の中性カーボンブラック(商品名「45L」)とを質量比率で45:55(中性カーボンブラック「45L」:樹脂被覆カーボンブラック)の割合となるように旭硝子製のポリエーテルポリオール(商品名「プレミノールS3003」、水酸基価:56mgKOH/g、分子量3000)にロール分散させた。
このカーボンブラックを分散させたポリオールに、得られる導電性弾性体の硬さ(アスカーC硬度)を76±3度に調整するためにポリオキシアルキレンポリオール(住化バイエルウレタン製、商品名「スミフェンTM」、水酸基価:363mgKOH/g、分子量400)をさらに加え、反応触媒(ジメチル脂肪酸モノカルボン酸塩、活材ケミカル製、商品名「UL28」)とメタ−キシレンジイソシアネート(三井化学社製、商品名「タケネート500」)とを加えて導電性弾性体を形成させるための分散液を作製した。
なお、樹脂被覆カーボンブラックと中性カーボンブラックとを含有させたポリエーテルポリオールと、ポリオキシアルキレンポリオールと、メタ−キシレンジイソシアネートとの配合割合は、10:5:13とし、この分散液に含有するカーボンブラックの合計量が、6.5質量%となるように調整した。
また、前記反応触媒は、熱硬化性ポリウレタンに占める割合が150ppmとなるように調整した。
【0037】
(ローラーの作製)
芯金(φ10mm)を収容させた金型に分散液を注入し、125℃の温度で8分間熱硬化を行い、脱型後室温で8h熟成させた後、番手C#600の研磨テープを用いて外径寸法及び表面粗さを調整して厚み約3mmで長さ237mmの弾性体層を有するローラーを作製した。
なお、分散液の粘度は、約60℃において520mPa・sで注型作業を良好に行いうるものであった。
また、脱型直後の弾性体層の硬さは78度であり十分に硬化が完了している状態であった。
【0038】
(ローラーの評価)
SUSドラム(φ30mm)の外周面に弾性体層が全長にわたって接するようにローラーをセットし、芯金の両端にそれぞれSUSドラムの中心軸方向に向けて500gfの荷重を加えた。
この状態で前記SUSドラムを30rpmの回転数で回転させてローラーを共回りさせ、芯金とSUSドラムとの間に300Vの直流電圧を加えて流れた電流値から弾性体層の抵抗値を算出した。
その結果、実施例1のローラーの弾性体層は、3×105Ωの抵抗値であることがわかった。
【0039】
(実施例2〜13)
樹脂被覆カーボンブラック(樹脂被覆CB)と中性カーボンブラック(中性CB)との割合、ならびに、これらの導電剤の含有量を下記表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にローラーを作製し、実施例1と同様に評価した。
この評価結果を併せて下記表1に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
(比較例1)
樹脂被覆カーボンブラック、及び、中性カーボンブラックの何れも用いずに樹脂被覆カーボンブラックのもとになっている酸性カーボンブラック(商品名「MA8」)のみを導電剤として用い、この酸性カーボンブラックの割合が6質量%となるように分散液を作製し、実施例と同様に注型、125℃での熱硬化を実施した。
その結果、8分では脱型に適した状態になっておらず、20分かけて硬化を実施した。
しかし、脱型直後の弾性体層の硬さは67度で、加熱時間20分でも未だ十分に硬化が完了していないことがわかった。
なお、この比較例1における分散液の粘度は520mPa・sで弾性体層の抵抗値は5×105Ωであった。
【0042】
(比較例2)
中性カーボンブラックを用いずに樹脂被覆カーボンブラックのみ用いたこと以外は実施例と同様にローラーを作製した。
その結果、加熱時間8分で脱型することができたが脱型直後の弾性体層の硬さが57度しかなく十分に硬化が完了していない状態であった。
なお、この比較例2における分散液の粘度は460mPa・sで弾性体層の抵抗値は5×107Ωであった。
【0043】
(比較例3)
樹脂被覆カーボンブラックの量を6.5質量%に代えて10質量部としたこと以外は比較例2と同様にローラーを作製した。
その結果、13分掛けて熱硬化を行ったが脱型直後の弾性体層の硬さは、60度しかなく十分に硬化が完了していない状態であった。
なお、この比較例3における分散液の粘度は530mPa・sで弾性体層の抵抗値は7.1×106Ωであった。
【0044】
【表2】

【0045】
以上のことからも、pH7.5以上、DBP吸収量50ml/100g以下、揮発分1.1質量%以下のカーボンブラックと樹脂被覆カーボンブラックとを併用することで熱硬化性ポリウレタンの硬化を促進させることができ導電性弾性体を効率よく製造しうることがわかる。
また、本発明によれば、製造容易な電子写真装置用ローラーが提供され得ることが上記の結果からもわかる。
【符号の説明】
【0046】
1:電子写真装置用ローラー、11:芯金、12:弾性体層(導電性弾性体)、13:表面被覆層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性ポリウレタンに導電剤を分散させた分散液を作製し、該分散液を硬化させて導電性弾性体を作製する導電性弾性体の製造方法であって、
前記導電剤として、pH7.5以上、DBP吸収量50ml/100g以下、揮発分1.1質量%以下のカーボンブラックと樹脂被覆カーボンブラックとを用いることを特徴とする導電性弾性体の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂被覆カーボンブラックが、pH7.0未満の酸性カーボンブラックにエポキシ樹脂を被覆した樹脂被覆カーボンブラックである請求項1記載の導電性弾性体の製造方法。
【請求項3】
前記カーボンブラックと前記樹脂被覆カーボンブラックとを30:70〜50:50の質量比率で用い、且つ、合計量が6.0質量%以上7.0質量%以下となるように前記分散液に含有させる請求項1又は2記載の導電性弾性体の製造方法。
【請求項4】
芯金の外周に導電性弾性体からなる弾性体層を備えた電子写真装置用ローラーであって、
前記導電性弾性体が、熱硬化性ポリウレタンに導電剤を分散させた分散液を硬化させてなり、前記導電剤として、pH7.5以上、DBP吸収量50ml/100g以下、揮発分1.1質量%以下のカーボンブラックと樹脂被覆カーボンブラックとが含有されていることを特徴とする電子写真装置用ローラー。

【図1】
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【公開番号】特開2012−252145(P2012−252145A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124406(P2011−124406)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000005061)バンドー化学株式会社 (429)
【Fターム(参考)】