説明

導電性粒子、異方性導電材料及び接続構造体

【課題】電極間の接続に用いた場合に、電極間の接続抵抗を低くすることができる導電性粒子を提供する。
【解決手段】本発明に係る導電性粒子1は、基材粒子2と、基材粒子2の表面2aに配置された導電層3とを有する。基材粒子2を30%圧縮したときの圧縮回復率は50%以下であり、かつ基材粒子2の30%圧縮されたときの圧縮弾性率は960N/mm以上、8000N/mm以下である。導電性粒子1を圧縮した場合には、導電性粒子1が、圧縮方向における圧縮前の導電性粒子1の粒子径の2%以上、25%で圧縮変位したときに、導電層3に割れが生じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材粒子の表面上に導電層が配置されている導電性粒子に関し、より詳細には、例えば、電極間の電気的な接続に用いることができる導電性粒子、並びに該導電性粒子を用いた異方性導電材料及び接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
異方性導電ペースト及び異方性導電フィルム等の異方性導電材料が広く知られている。該異方性導電材料では、バインダー樹脂中に導電性粒子が分散されている。
【0003】
上記異方性導電材料は、ICチップとフレキシブルプリント回路基板との接続、及びICチップとITO電極を有する回路基板との接続等に用いられている。例えば、ICチップの電極と回路基板の電極との間に異方性導電材料を配置した後、加熱及び加圧することにより、これらの電極を電気的に接続できる。
【0004】
また、近年、大型の液晶表示装置が普及している。大型の液晶表示装置に用いられている導電性粒子には、比較的大きな電流が流れる。このため、大きな電流が流れても耐え得る導電性粒子が求められている。ニッケルを含む導電層を有する導電性粒子は、大きな電流が流れる用途に好適に用いられる。
【0005】
上記導電性粒子の一例として、下記の特許文献1には、平均粒径1〜20μmの球状の基材粒子の表面に、無電解めっき法によりニッケル導電層又はニッケル合金導電層が形成された導電性粒子が開示されている。この導電性粒子は、導電層の最表層に0.05〜4μmの微小な突起を有する。該導電層と該突起とは実質的に連続的に連なっている。
【0006】
また、下記の特許文献2には、基材粒子と、該基材粒子の表面に形成された導電層とを有する導電性粒子が開示されている。基材粒子を形成するために、ジビニルベンゼン−エチルビニルベンゼン混合物が単量体の一部として用いられている。この導電性粒子は、粒子直径の10%が変位したときの圧縮弾性率が2.5×10N/m以下、圧縮変形回復率が30%以上、かつ、破壊歪みが30%以上である。特許文献2には、上記導電性粒子を用いて基板の電極間を電気的に接続した場合に、接続抵抗が低くなり、接続信頼性が高くなることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−243132号公報
【特許文献2】特開2003−313304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1〜2に記載の導電性粒子を用いて電極間を接続した場合には、電極間の接続抵抗が高くなることがある。
【0009】
さらに、特許文献1の実施例では、ニッケルとリンとを含む導電層が形成されている。導電性粒子により接続される電極、及び導電性粒子の導電層の表面には、酸化被膜が形成されていることが多い。ニッケルとリンとを含む導電層を有する導電性粒子を用いて電極間を接続した場合には、ニッケルとリンとを含む導電層が比較的柔らかいので、電極及び導電性粒子の表面の酸化被膜を十分に排除できず、接続抵抗が高くなることがある。
【0010】
さらに、従来の導電性粒子では、電極間の接続時に導電性粒子を圧縮すると、導電性粒子により電極が損傷することがある。特に、従来の導電性粒子では、導電層の厚みが厚いと、導電性粒子の圧縮時に導電層が部分的に割れにくく、導電性粒子により電極が損傷することがある。
【0011】
本発明の目的は、電極間の接続に用いた場合に、電極間の接続抵抗を低くすることができる導電性粒子、並びに該導電性粒子を用いた異方性導電材料及び接続構造体を提供することである。
【0012】
本発明の限定的な目的は、導電性粒子を適度に圧縮したときに、導電層が部分的に割れるので、導電性粒子により接続された電極の損傷を抑制でき、従って電極間の接続抵抗を低くすることができる導電性粒子、並びに該導電性粒子を用いた異方性導電材料及び接続構造体を提供することである。
【0013】
本発明のさらに限定的な目的は、導電性粒子により接続された電極に適度な圧痕を形成できる導電性粒子、並びに該導電性粒子を用いた異方性導電材料及び接続構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の広い局面によれば、基材粒子と、該基材粒子の表面に配置された導電層とを有する導電性粒子であって、上記基材粒子を30%圧縮したときの圧縮回復率が50%以下であり、かつ上記基材粒子を30%圧縮したときの圧縮弾性率が960N/mm以上、8000N/mm以下であり、導電性粒子を圧縮した場合に、導電性粒子が、圧縮方向における圧縮前の導電性粒子の粒子径の2%以上、25%以下で圧縮変位したときに、上記導電層に割れが生じる、導電性粒子が提供される。
【0015】
本発明に係る導電性粒子のある特定の局面では、上記基材粒子が、少なくとも2つの環構造を有する脂環式化合物であるモノマーを重合させることにより得られた重合体粒子であるか、ベンゾグアナミン樹脂により形成された粒子であるか、又はメラミン樹脂により形成された粒子である。
【0016】
本発明に係る導電性粒子のある特定の局面では、前記基材粒子が、ベンゾグアナミン樹脂により形成された粒子であるか、又はメラミン樹脂により形成された粒子である。
【0017】
本発明に係る導電性粒子の別の特定の局面では、上記基材粒子は、少なくとも2つの環構造を有する脂環式化合物であるモノマーを重合させることにより得られた重合体粒子である。
【0018】
本発明に係る導電性粒子のさらに別の特定の局面では、上記少なくとも2つの環構造は、ビシクロ環構造又はトリシクロ環構造であることが好ましい。
【0019】
本発明に係る導電性粒子のさらに別の特定の局面では、上記モノマーは、アクリルモノマー又はビニルエーテル化合物である。
【0020】
本発明に係る導電性粒子のある特定の局面では、上記導電層がニッケルを含む。
【0021】
本発明に係る導電性粒子のさらに他の特定の局面では、上記導電層がニッケルとボロンとを含む。
【0022】
本発明に係る導電性粒子のさらに他の特定の局面では、上記導電層のニッケルの含有率が97重量%以上である。
【0023】
本発明に係る導電性粒子では、上記基材粒子の平均粒子径が、0.1μm以上、1000μm以下であり、上記導電層の厚みが、5nm以上、70000nm以下であることが好ましい。上記基材粒子の粒子径が、2μm以上、5μm以下であり、上記導電層の厚みが、50nm以上、300nm以下であることがより好ましい。
【0024】
本発明に係る導電性粒子の別の特定の局面では、該導電性粒子は、導電層の外表面に突起を有する。
【0025】
本発明に係る異方性導電材料は、本発明に従って構成された導電性粒子と、バインダー樹脂とを含む。
【0026】
本発明に係る接続構造体は、第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、該第1,第2の接続対象部材を接続している接続部とを備えており、上記接続部が、本発明に従って構成された導電性粒子により形成されているか、又は該導電性粒子とバインダー樹脂とを含む異方性導電材料により形成されている。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る導電性粒子では、基材粒子の表面上に導電層が配置されており、上記基材粒子を30%圧縮したときの圧縮回復率が50%以下であり、かつ上記基材粒子を30%圧縮したときの圧縮弾性率が960N/mm以上、8000N/mm以下であり、更に導電性粒子を圧縮した場合に、導電性粒子が、圧縮方向における圧縮前の導電性粒子の粒子径の2%以上、25%以下で圧縮変位したときに、上記導電層に割れが生じるので、導電性粒子を電極間の接続に用いると接続抵抗を低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る導電性粒子を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明の他の実施形態に係る導電性粒子を示す断面図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に係る導電性粒子を用いた接続構造体を模式的に示す正面断面図である。
【図4】図4は、導電性粒子を圧縮するときの状態を説明するための模式的な断面図である。
【図5】図5は、導電性粒子を圧縮させて導電層に割れを生じさせるときの圧縮荷重値と圧縮変位との関係の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0030】
本発明に係る導電性粒子は、基材粒子と、該基材粒子の表面に配置された導電層とを有する。上記基材粒子を30%圧縮したときの圧縮回復率は50%以下である。上記基材粒子を30%圧縮したときの圧縮弾性率は960N/mm以上、8000N/mm以下である。
【0031】
本発明に係る導電性粒子では、該導電性粒子が、圧縮方向における圧縮前の導電性粒子の粒子径の2%以上、25%以下で圧縮変位したときに、上記導電層に割れが生じる。このことによって、電極の損傷を抑制でき、従って電極間の接続抵抗を低くすることができる。例えば、導電性粒子を適度に圧縮したときに、導電層が適度に部分的に割れる。
【0032】
上記導電層はニッケルを含むことが好ましい。上記導電層のニッケルの含有率が97重量%以上であることが好ましい。上記導電層の全体100重量%中、ニッケルの含有量が97重量%以上であることが好ましい。ニッケルを含む導電層を有する導電性粒子により電極間を接続した場合には、電極間の接続抵抗をより一層低くすることができる。導電層におけるニッケルの含有量が97重量%以上である場合には、電極間の接続抵抗をさらに一層低くすることができる。
【0033】
上記導電層は、ニッケルとボロンとを含むことが好ましい。すなわち、上記導電層は、ニッケルとボロンとを含むニッケル−ボロン導電層であることが好ましい。該ニッケル−ボロン導電層のニッケルの含有率は97重量%以上であることが好ましい。該ニッケル−ボロン導電層の全体100重量%中、ニッケルの含有量は97重量%以上であることが好ましい。
【0034】
また、ボロンを含まないニッケル導電層を有する導電性粒子では、該ボロンを含まないニッケル導電層が柔らかすぎて、電極間の接続時に、電極及び導電性粒子の表面の酸化被膜を十分に排除できず、接続抵抗が高くなる傾向がある。例えば、ニッケルとリンとを含む導電層を有する導電性粒子では、電極及び導電性粒子の表面の酸化被膜を十分に排除できず、接続抵抗が高くなりやすい。
【0035】
一方で、接続抵抗を低くするために、又は大きな電流が流れる用途に適するように、ニッケルとリンとを含む導電層の厚みを厚くすると、導電性粒子により接続対象部材又は基板が傷つくことがある。
【0036】
これに対して、導電性粒子がニッケル−ボロン導電層を有し、更に導電性粒子を圧縮した場合に、導電性粒子が、圧縮方向における圧縮前の導電性粒子の粒子径の2%以上、25%以下で圧縮変位したときに、上記ニッケル−ボロン導電層に割れが生じると、電極の損傷をより一層抑制でき、従って電極間の接続抵抗をより一層低くすることができる。
【0037】
さらに、上記導電層がニッケル−ボロン導電層である場合には、該ニッケル−ボロン導電層は適度な硬さを有するので、導電性粒子を圧縮して電極間を接続したとき、電極に適度な圧痕を形成できる。なお、電極に形成される圧痕は、導電性粒子が電極を押してできた電極の凹部である。
【0038】
以下、導電性粒子、異方性導電材料及び接続構造体の詳細を説明する。
【0039】
(導電性粒子)
図1は、本発明の一実施形態に係る導電性粒子を示す断面図である。
【0040】
図1に示すように、導電性粒子1は、基材粒子2と、該基材粒子2の表面2aに配置された導電層3とを有する。ここでは、導電層3は、ニッケル−ボロン導電層であり、ニッケル−ボロン合金層である。該ニッケル−ボロン導電層は、ニッケルとボロンとを含む。導電性粒子1は、基材粒子2の表面2aが導電層3により被覆された被覆粒子である。
【0041】
導電性粒子1は、基材粒子2の表面2aに複数の芯物質4を有する。導電層3は、芯物質4を被覆している。芯物質4を導電層3が被覆していることにより、導電性粒子1は表面1aに複数の突起5を有する。導電性粒子1は、導電層3の外表面3aに複数の突起5を有する。芯物質4により導電層3の外表面3aが隆起されており、突起5が形成されている。
【0042】
導電性粒子1は、導電層3の外表面3aに付着された絶縁性樹脂6を有する。導電層3の外表面3aの少なくとも一部の領域が、絶縁性樹脂6により被覆されている。本実施形態では、絶縁性樹脂6は絶縁樹脂粒子である。このように、本発明に係る導電性粒子は、導電層の外表面に付着された絶縁性樹脂を有していてもよい。ただし、本発明に係る導電性粒子は、絶縁性樹脂を必ずしも有していなくてもよい。
【0043】
図2は、本発明の他の実施形態に係る導電性粒子を示す断面図である。
【0044】
図2に示す導電性粒子11は、基材粒子2と、該基材粒子2の表面2aに配置された導電層12とを有する。導電性粒子11は、芯物質4を有さない。導電性粒子11は表面11aに突起を有さない。導電性粒子11は、導電層12の外表面12aに突起を有さない。このように、本発明に係る導電性粒子は突起を有していなくてもよく、球状であってもよい。また、導電性粒子11は、絶縁性樹脂を有さない。
【0045】
導電性粒子1,11を圧縮した場合に、導電性粒子1,11が、圧縮方向における圧縮前の導電性粒子1,11の粒子径の2%以上、25%以下で圧縮変位したときに、導電層3,12に割れが生じる(以下、この導電層に割れが生じる導電性粒子の圧縮変位を、圧縮変位1と記載することがある)。すなわち、導電性粒子1,11では、圧縮方向における圧縮前の導電性粒子1,11の粒子径をXとしたときに、圧縮方向における導電性粒子1,11の粒子径が0.75X〜0.98Xとなったときに、導電層3,12に割れが生じる。例えば、圧縮方向における圧縮前の導電性粒子1,11の粒子径が5μmである場合には、導電性粒子1,11を圧縮させて、圧縮方向における導電性粒子1,11の粒子径が3.75〜4.9μmとなったときに、導電層3,12に割れが生じる。
【0046】
なお、上記「割れ」は、導電層における初め(第1回目)の割れを示す。従って、本実施形態に係る導電性粒子1,11では、割れがない導電層3,12を有する導電性粒子1,11を圧縮したときに、導電性粒子1,11が圧縮方向における圧縮前の導電性粒子1,11の粒子径の2%以上、25%以下で圧縮変位したときに、導電層3,12に割れが生じる。
【0047】
導電性粒子1,11を圧縮した場合に、導電性粒子1,11が、圧縮方向における圧縮前の導電性粒子1,11の粒子径の2%以上、10%以下で圧縮変位したときに、導電層3,12に割れが生じることが好ましい。すなわち、導電性粒子1,11では、圧縮方向における圧縮前の導電性粒子1,11の粒子径をXとしたときに、圧縮方向における導電性粒子1,11の粒子径が0.90X〜0.98Xとなったときに、導電層3,12に割れが生じることが好ましい。例えば、圧縮方向における圧縮前の導電性粒子1,11の粒子径が5μmである場合には、導電性粒子1,11を圧縮させて、圧縮方向における導電性粒子1,11の粒子径が4.5〜4.9μmとなったときに、導電層3,12に割れが生じることが好ましい。
【0048】
導電性粒子1,11を圧縮した場合に、導電性粒子1,11が、圧縮方向における圧縮前の導電性粒子1,11の粒子径の10%を超え、20%以下で圧縮変位したときに、導電層3,12に割れが生じてもよい。すなわち、導電性粒子1,11では、圧縮方向における圧縮前の導電性粒子1,11の粒子径をXとしたときに、圧縮方向における導電性粒子1,11の粒子径が0.80X以上、0.90X未満となったときに、導電層3,12に割れが生じてもよい。例えば、圧縮方向における圧縮前の導電性粒子1,11の粒子径が5μmである場合には、導電性粒子1,11を圧縮させて、圧縮方向における導電性粒子1,11の粒子径が4.0μm以上、4.5μm未満となったときに、導電層3,12に割れが生じてもよい。
【0049】
なお、上記「割れ」は、導電層における初め(第1回目)の割れを示す。従って、本実施形態に係る導電性粒子1,11では、割れがない導電層3,12を有する導電性粒子1,11を圧縮したときに、導電性粒子1,11が圧縮方向における圧縮前の導電性粒子1,11の粒子径の2%以上、25%以下で圧縮変位したときに、導電層3,12に割れが生じる。
【0050】
導電層3,12に割れが生じる圧縮変位の測定は、具体的には、以下のようにして行われる。なお、図4では、導電性粒子11を用いている。
【0051】
図4に示すように、台51の上に導電性粒子11を置く。微小圧縮試験機(フィッシャー社製「フィッシャースコープH−100」)を用いて、圧縮速度0.33mN/秒及び最大試験荷重10mNの条件で、ダイヤモンド製の直径50μmの円柱を圧縮部材52として、該圧縮部材52の平滑端面52aを導電性粒子11に向かって、矢印Aで示す方向に降下させる。平滑端面52aにより導電性粒子11を圧縮する。導電性粒子11の導電層12に部分的に割れ12bが生じるまで圧縮は継続される。導電性粒子1の場合にも、同様にして測定される。
【0052】
上記のようにして導電性粒子を圧縮したときに、導電性粒子が、圧縮方向における圧縮前の導電性粒子の粒子径の2%以上で圧縮変位したときに、上記導電層に割れが生じ、25%以下で圧縮変位したとき、上記導電層に割れが生じる。
【0053】
電極の損傷を抑制し、更に電極に適度な圧痕を形成して、接続抵抗をより一層低くする観点からは、導電性粒子を圧縮して導電層に割れを生じさせたときに、上記導電層の割れに伴って、導電性粒子が、圧縮方向における導電性粒子の粒子径の30%以上、70%以下圧縮変位することが好ましい(以下、この導電層の割れに伴う導電性粒子の圧縮変位を、圧縮変位2と記載することがある)。すなわち、導電性粒子を圧縮して導電層に割れを生じさせたときに、圧縮方向における圧縮前の導電性粒子1,11の粒子径をXとしたときに、導電層の割れに伴って、圧縮方向における導電性粒子1,11の粒子径が0.3X〜0.7X小さくなることが好ましい。例えば、圧縮方向における圧縮前の導電性粒子1,11の粒子径が5μmである場合には、導電層の割れに伴って、圧縮方向における導電性粒子1,11の粒子径が1.5〜3.5μm小さくなることが好ましい。上記圧縮変位2は、より好ましくは60%以下、更に好ましくは50%以下である。
【0054】
導電性粒子を圧縮しながら、圧縮荷重値及び圧縮変位を測定すると、圧縮荷重値と圧縮変位との関係は、例えば、図5に示すようになる。図5では、A0点から圧縮が開始されており、A1点において導電層に割れが生じている。導電層の割れに伴って、圧縮方向における導電性粒子の圧縮変位(粒子径)が変化し、圧縮変位がA1点からA2点に移動する。圧縮時には導電性粒子に圧縮荷重がかけられおり、導電層の割れが生じると比較的小さな圧縮荷重で導電性粒子が圧縮されるので、導電性粒子に圧縮荷重をかけている圧縮部材が移動し、圧縮方向における導電性粒子の圧縮変位(粒子径)が変化する。
【0055】
A1点とA2点との圧縮変位の変化量Dが、圧縮方向における圧縮前の導電性粒子の粒子径の2%以上、25%以下であり、導電性粒子の圧縮変位(粒子径)の変化量である。導電性粒子の圧縮変位(粒子径)の変化量は、圧縮部材の移動量である。
【0056】
上記基材粒子としては、樹脂粒子、金属粒子を除く無機粒子及び有機無機ハイブリッド粒子等が存在する。上記基材粒子は、圧縮回復率が50%以下であるように適宜選択して用いられる。
【0057】
上記基材粒子は、樹脂により形成された樹脂粒子であることが好ましい。導電性粒子を用いて電極間を接続する際には、導電性粒子を電極間に配置した後、圧着することにより導電性粒子を圧縮させる。基材粒子が樹脂粒子であると、上記圧着の際に導電性粒子がより一層変形しやすく、導電性粒子と電極の接触面積を大きくすることができる。このため、電極間の導通信頼性を高めることができる。上記樹脂粒子も、圧縮回復率が50%以下であるように適宜選択して用いられる。
【0058】
上記樹脂粒子を形成するための樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン及びポリエーテルスルホン等が挙げられる。
【0059】
基材粒子の圧縮回復率を低くして、接続信頼性により一層優れた接続構造体を得る観点からは、上記基材粒子は、少なくとも2つの環構造を有する脂環式化合物であるモノマーを重合させることにより得られた重合体粒子であるか、ベンゾグアナミン樹脂により形成された粒子であるか、又はメラミン樹脂により形成された粒子であることが好ましい。基材粒子の圧縮回復率を低くして、接続信頼性により一層優れた接続構造体を得る観点からは、上記基材粒子は、ベンゾグアナミン樹脂により形成された粒子であるか、又はメラミン樹脂により形成された粒子であることが好ましい。上記基材粒子は、ベンゾグアナミン樹脂により形成された粒子であることが好ましく、メラミン樹脂により形成された粒子であることも好ましい。上記基材粒子を形成するための樹脂は、ベンゾグアナミン樹脂又はメラミン樹脂であることが好ましく、ベンゾグアナミン樹脂であることが好ましく、メラミン樹脂であることも好ましい。さらに、基材粒子の圧縮回復率を低くして、接続信頼性により一層優れた接続構造体を得る観点からは、上記基材粒子は、少なくとも2つの環構造を有する脂環式化合物であるモノマーを重合させることにより得られた重合体粒子であることが好ましい。上記少なくとも2つの環構造を有する脂環式化合物は、多環式化合物であることが好ましい。このような特定の樹脂により形成された粒子や重合体粒子の使用により、上記基材粒子の圧縮回復率を50%以下にすることが容易である。また、このような重合体粒子の使用により、導電性粒子の圧縮回復率もかなり低くなる。
【0060】
上記少なくとも2つの環構造としては、ビシクロ環構造、トリシクロ環構造、スピロ環構造、及びジスピロ環構造が挙げられる。中でも、上記少なくとも2つの環構造は、ビシクロ環構造又はトリシクロ環構造であることが好ましい。上記少なくとも2つの環構造は、ビシクロ環構造であることが好ましく、トリシクロ環構造であることも好ましい。上記少なくとも2つの環構造が、ビシクロ環構造又はトリシクロ環構造であると、重合体粒子の圧縮回復率を充分に低くすることができる。このため、上記重合体粒子を用いた導電性粒子を含む異方性導電材料により、2層フレキシブルプリント基板等のプリント基板とガラス基板との電極間を接続すると、導電性粒子の反発力を抑制でき、異方性導電材料の硬化物が剥離しにくくなる。さらに、導電性粒子が接触した電極に圧痕が形成されやすく、更に導電性粒子の周辺に空隙が生じ難くなる。なお、電極に形成される圧痕は、導電性粒子が電極を押してできた電極の凹部である。上記空隙は、例えば、基板又は電極等の接続対象部材から硬化物層等が界面剥離することにより生じる。上記空隙は発生していないことが好ましい。ただし、導電信頼性に影響を与えない程度に、上記空隙が発生していてもよい。
【0061】
上記モノマーは、少なくとも2つの環構造を有する脂環式化合物であれば特に限定されない。上記モノマーとしては、アクリルモノマー、ビニルエーテル化合物、エポキシ化合物及びイソシアネート化合物等が挙げられる。中でも、上記重合体粒子の圧縮回復率を低くすることができるため、アクリルモノマー又はビニルエーテル化合物が好ましい。
【0062】
上記アクリルモノマーとしては、具体的には、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、1,3−アダマンタンジオールジ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート及び3−ヒドロキシ−1−アダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、(メタ)アクリレートとは、メタクリレートとアクリレートとを意味する。
【0063】
上記ビニルエーテル化合物として、具体的には、トリシクロデカンビニルエーテル及びトリシクロデカンモノメチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0064】
上記重合体粒子を得るためのモノマー成分100重量%中、少なくとも2つの環構造を有する脂環式化合物であるモノマーの含有量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは20重量%以上である。
【0065】
少なくとも2つの環構造を有する脂環式化合物である単官能のアクリルモノマーを用いる場合、モノマー成分100重量%中、該単官能のアクリルモノマーの含有量は40〜60重量%の範囲内であることが好ましい。単官能のアクリルモノマーとして、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート又は3−ヒドロキシ−1−アダマンチル(メタ)アクリレートが好適に用いられる。
【0066】
少なくとも2つの環構造を有する脂環式化合物である多官能のアクリルモノマーを用いる場合、モノマー成分100重量%中、該多官能のアクリルモノマーの含有量は20〜80重量%の範囲内であることが好ましい。多官能のアクリルモノマーとして、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート又は1,3−アダマンタンジオールジ(メタ)アクリレートが好適に用いられる。
【0067】
上記重合体粒子を得るためのモノマー成分として、上記少なくとも2つの環構造を有する脂環式化合物であるモノマーとともに、該モノマー以外の他のモノマーを用いてもよい。上記他のモノマーとしては、例えば、スチレン及びジビニルベンゼン等が挙げられる。さらに、上記他のモノマーとしては、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート及びシクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0068】
上記重合体粒子は、少なくとも2つの環構造を有する脂環式化合物である単官能モノマー(以下、単官能モノマーAと略記することがある)と、多官能モノマーとを重合させることにより得られた重合体粒子であることが好ましい。上記モノマー成分は、上記単官能モノマーAと、多官能モノマーとを含むことが好ましい。上記多官能モノマーとしては、少なくとも2つのビニル基を有する芳香族化合物及び多官能アクリルモノマー等が挙げられる。上記芳香族化合物としては、1,2−ジビニルベンゼン、1,3−ジビニルベンゼン及び1,4−ジビニルベンゼン等が挙げられる。上記芳香族化合物の市販品としては、新日鐵化学社製の「DVB960」等が挙げられる。上記多官能アクリルモノマーは−(R−O)n−単位を有する多官能アクリルモノマーであることが好ましく、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート又はジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、上記Rは炭素数1〜9のアルキレン基であり、上記nは1以上の整数である。
【0069】
上記単官能モノマーAと多官能モノマーとを重合させると、上記単官能モノマーAのみを重合させた場合に比べて、30%K値を比較的高くし、30%K値を好適な範囲に制御でき、かつ圧縮回復率を高くすることができる。すなわち、上記単官能モノマーAとともに、架橋剤として多官能モノマーを用いることにより、30%K値及び圧縮回復率を制御できる。
【0070】
上記モノマー成分は、上記単官能モノマーA20〜90重量%と、多官能モノマー80〜10重量%とを含むことが好ましい。この場合には、30%K値及び圧縮回復率が好適な値を示す重合体粒子を容易に得ることができる。上記モノマー成分は、上記単官能モノマーA20〜80重量%と、多官能モノマー80〜20重量%とを含むことが好ましく、さらに上記単官能モノマーA40〜60重量%と、多官能モノマー60〜40重量%とを含むことがより好ましい。
【0071】
上記重合体粒子は、少なくとも2つの環構造を有する脂環式化合物である多官能モノマー(以下、多官能モノマーBと略記することがある)により得られた重合体粒子であることが好ましい。上記モノマー成分は、上記多官能モノマーBを含むことが好ましい。上記多官能モノマーBのみを重合させても、30%K値を比較的高くし、30%K値を好適な範囲に制御でき、かつ圧縮回復率を比較的高くすることができる。ただし、上記多官能モノマーBとともに、他のモノマーを用いてもよい。
【0072】
上記モノマー成分は、上記多官能モノマーBを20重量%以上含むことが好ましい。上記多官能モノマーBの含有量が20重量%以上であると、重合体粒子が柔軟になりすぎることなく、30%K値を高くし、30%K値を好適な範囲に制御できる。また、上記多官能モノマーBと、2つの官能基を有するポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアクリルモノマーとを併用した場合には、30%K値を好適な範囲に制御できる。また、上記多官能モノマーBと、芳香族環及び少なくとも2つの官能基を有するジビニルベンゼン等のビニルモノマーとを併用した場合には、30%K値と圧縮回復率とを高くすることができる。上記モノマー成分100重量%中の上記多官能モノマーBの含有量は、より好ましくは20重量%以上、好ましくは80重量%以下、より好ましくは60重量%以下である。上記モノマー成分100重量%中の上記多官能モノマーBの含有量は、100重量%であってもよい。
【0073】
上記多官能モノマーBと併用される他のモノマーは、少なくとも2つの環構造を有する脂環式化合物である単官能モノマーAであってもよい。上記単官能モノマーAと上記多官能モノマーBとの併用により、30%K値及び圧縮回復率を好適な範囲に制御できる。
【0074】
上記重合体粒子を得るための重合方法は特に限定されない。重合方法としては、具体的には、懸濁重合法、乳化重合法、シード重合法及び分散重合法等の従来公知の重合方法が挙げられる。
【0075】
粒度分布が比較的広く、多分散の重合体粒子を得ることができるので、上記懸濁重合法及び乳化重合法は、多品種の粒子径の微粒子を製造する目的に好適である。懸濁重合法及び乳化重合法を用いる場合には、重合により得られた重合体粒子を分級し、所望の粒子径又は粒度分布を有する重合体粒子を選別することが好ましい。
【0076】
また、分級が不要であり、単分散の重合体粒子を得ることができるので、シード重合法は、特定の粒子経の重合体粒子を大量に製造する目的に好適である。上記シード重合法とは、スチレンポリマー粒子等のシード粒子を、少なくとも2つの環構造を有する脂環式化合物であるモノマーで膨潤させ、重合させる方法である。従って、上記重合体粒子を、シード重合法を用いて製造する場合、上記重合体粒子はシード粒子を構成する成分を含んでいてもよい。例えば、シード粒子としてスチレンポリマー粒子を用いると、得られる重合体粒子にスチレンポリマーが含まれることがある。
【0077】
上記重合に用いられる溶媒は特に限定されない。溶媒は、上記モノマー成分に応じて適宜選択される。上記溶媒としては、例えば、水、アルコール、セロソルブ、ケトン及び酢酸エステル等が挙げられる。これらの溶媒以外の他の溶媒を用いてもよい。上記アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール及びプロパノール等が挙げられる。上記セロソルブの具体例としては、メチルセロソルブ及びエチルセロソルブ等が挙げられる。上記ケトンの具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン及び2−ブタノン等が挙げられる。上記酢酸エステルの具体例としては、酢酸エチル及び酢酸ブチル等が挙げられる。上記他の溶媒の具体例としては、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド及びジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらの溶媒は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0078】
上記基材粒子の平均粒子径は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上、更に好ましくは1.5μm以上、特に好ましくは2μm以上、好ましくは1000μm以下、より好ましくは500μm以下、より一層好ましくは300μm以下、更に好ましくは50μm以下、特に好ましくは30μm以下、最も好ましくは5μm以下である。平均粒子径が上記下限以上であると、導電性粒子と電極との接触面積が大きくなるため、電極間の導通信頼性がより一層高くなり、導電性粒子を介して接続された電極間の接続抵抗がより一層低くなる。さらに基材粒子の表面に導電層を無電解めっきにより形成する際に凝集し難くなり、凝集した導電性粒子が形成されにくくなる。平均粒子径が上記上限以下であると、導電性粒子が充分に圧縮されやすく、電極間の接続抵抗がより一層低くなり、更に電極間の間隔を小さくすることができる。基材粒子の粒子径は、基材粒子が真球状である場合には、直径を示し、基材粒子が真球状ではない場合には、最大径を示す。
【0079】
上記基材粒子の粒子径は、2μm以上、5μm以下であることが特に好ましい。上記基材粒子の粒子径が2〜5μmの範囲内であると、電極間の間隔を小さくすることができ、かつ導電層の厚みを厚くすることができる。
【0080】
上記基材粒子の圧縮回復率は、好ましくは50%以下、より好ましくは45%以下、更に好ましくは40%以下、特に好ましくは15%以下である。圧縮回復率が上記上限以下であると、硬化物及び接続部の導電性粒子を除く部分と導電性粒子及び接続対象部材との界面で剥離がより一層生じ難くなる。さらに、電極間の接続に用いられた導電性粒子の反発力を抑制できる結果、異方性導電材料が基板等から剥離し難くなる。この結果、電極間の接続抵抗がより一層低くなる。基材粒子の圧縮回復率は、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上である。
【0081】
上記圧縮回復率は、以下のようにして測定できる。
【0082】
試料台上に基材粒子を散布する。散布された基材粒子1個について、微小圧縮試験機を用いて、基材粒子の中心方向に、導電性粒子が30%圧縮変形するまで負荷(反転荷重値)を与える。その後、原点用荷重値(0.40mN)まで除荷を行う。この間の荷重−圧縮変位を測定し、下記式から圧縮回復率を求めることができる。なお、負荷速度は0.33mN/秒とする。上記微小圧縮試験機として、例えば、フィッシャー社製「フィッシャースコープH−100」等が用いられる。
【0083】
圧縮回復率(%)=[(L1−L2)/L1]×100
L1:負荷を与えるときの原点用荷重値から反転荷重値に至るまでのまでの圧縮変位
L2:負荷を解放するときの反転荷重値から原点用荷重値に至るまでの除荷変位
【0084】
上記基材粒子の直径が30%変位したときの圧縮弾性率(30%K値)は960N/mm以上、8000N/mm以下である。30%K値は好ましくは6860N/mm以下、より好ましくは4900N/mm以下である。
【0085】
基材粒子の圧縮弾性率(30%K値)が上記下限以上であると、圧縮された際に基材粒子が破壊され難くなる。圧縮弾性率(30%K値)が上記上限以下であると、電極間の接続抵抗がより一層低くなる。
【0086】
上記圧縮弾性率(30%K値)は、以下のようにして測定できる。
【0087】
微小圧縮試験機を用いて、直径50μmのダイヤモンド製円柱の平滑圧子端面で、圧縮速度2.6mN/秒、及び最大試験荷重10gfの条件下で基材粒子を圧縮する。このときの荷重値(N)及び圧縮変位(mm)を測定する。得られた測定値から、上記圧縮弾性率を下記式により求めることができる。上記微小圧縮試験機として、例えば、フィッシャー社製「フィッシャースコープH−100」等が用いられる。
【0088】
K値(N/mm)=(3/21/2)・F・S−3/2・R−1/2
F:基材粒子が30%圧縮変形したときの荷重値(N)
S:基材粒子が30%圧縮変形したときの圧縮変位(mm)
R:基材粒子の半径(mm)
【0089】
上記圧縮弾性率は、基材粒子の硬さを普遍的かつ定量的に表す。上記圧縮弾性率の使用により、基材粒子の硬さを定量的かつ一義的に表すことができる。
【0090】
上記導電層を形成するための金属は特に限定されない。該金属としては、例えば、ニッケル、金、銀、パラジウム、銅、白金、亜鉛、鉄、鉛、錫、アルミニウム、コバルト、インジウム、クロム、チタン、アンチモン、ゲルマニウム、カドミウム、パラジウム、ビスマス、タリウム、錫−鉛合金、錫−銅合金、錫−銀合金、錫−鉛−銀合金、錫ドープ酸化インジウム(ITO)及びはんだ等が挙げられる。なかでも、電極間の接続抵抗をより一層低くすることができるので、上記導電層を構成する金属は、ニッケル、銅、パラジウム又は金であることが好ましい。
【0091】
上記ニッケル−ボロン導電層の外表面から厚み方向に内側に向かって1/2の厚みの領域において、上記ニッケル−ボロン導電層中のボロンの含有量の最大値と最小値との差(以下、差Dと記載することがある)は、2重量%以下であることが好ましい。すなわち、上記ニッケル−ボロン導電層の厚みをTとしたときに、上記ニッケル−ボロン導電層の外表面から厚み方向に内側に向かって0〜0.5Tの領域において、上記ニッケル−ボロン導電層中のボロンの含有量の最大値と最小値との差Dは、2重量%以下であることが好ましい。差Dは、1.5重量%以下であることがより好ましく、1重量%以下であることが更に好ましい。
【0092】
上記ニッケル−ボロン導電層の外表面から厚み方向に内側に向かって1/5の厚みの領域において、上記ニッケル−ボロン導電層中のボロンの含有量の最大値(以下、最大値Mと記載することがある)は3重量%以下であることが好ましい。すなわち、上記ニッケル−ボロン導電層の厚みをTとしたときに、上記ニッケル−ボロン導電層の外表面から厚み方向に内側に向かって0〜0.2Tの領域において、上記ニッケル−ボロン導電層中のボロンの含有量の最大値Mは、3重量%以下であることが好ましい。最大値Mは、2.5重量%以下であることがより好ましく、2重量%以下であることが更に好ましい。
【0093】
上記ニッケル−ボロン導電層におけるニッケルの含有量及びボロンの含有量の測定方法は、既知の種々の分析法を用いることができ特に限定されない。この測定方法として、原子吸光分析法又は原子スペクトル分析法等が挙げられる。上記原子吸光分析法では、フレーム原子吸光光度計及び電気加熱炉原子吸光光度計等を用いることができる。上記原子スペクトル分析法としては、プラズマ発光分析法及びプラズマイオン源質量分析法等が挙げられる。
【0094】
導電層の全体100重量%中、ニッケルの含有量が97重量%以上であることが好ましい。導電層がニッケル−ボロン導電層であり、該ニッケル−ボロン導電層の全体100重量%中、ニッケルの含有量が97重量%以上であることが特に好ましい。ニッケルの含有量が97重量%以上であると、導電性粒子を電極間の接続に用いた場合に、電極間の接続抵抗を低くすることができる。電極間の接続抵抗をより一層低くする観点からは、上記導電層の全体100重量%中、ニッケルの含有量は97.5重量%以上であることが好ましく、98重量%以上であることがより好ましい。上記ニッケルの含有量は、上記導電層の全体100重量%に占めるニッケルの全体の含有量を示す。
【0095】
上記ニッケル−ボロン導電層の全体100重量%中、ボロンの含有量は3重量%以下であることが好ましい。ボロンの含有量が3重量%以下であると、ニッケルの含有量が相対的に多くなるので、導電性粒子を電極間の接続に用いた場合に、電極間の接続抵抗を低くすることができる。電極間の接続抵抗をより一層低くする観点からは、上記ニッケル−ボロン導電層の全体100重量%中、ボロンの含有量は2.5重量%以下であることが好ましく、2重量%以下であることがより好ましい。上記ボロンの含有量は、上記ニッケル−ボロン導電層の全体100重量%に占めるボロンの全体の含有量を示す。
【0096】
上記ニッケル−ボロン導電層の全体100重量%中のニッケルの含有量及びボロンの含有量を測定する際には、ICP発光分析装置を用いることが好ましい。ICP発光分析装置の市販品としては、HORIBA社製のICP発光分析装置等が挙げられる。また、上記ニッケルの含有量及びボロンの含有量を測定する際には、ICP−MS分析器を用いてもよい。
【0097】
上記ニッケル−ボロン導電層の厚み方向におけるボロンの含有量の分布を測定する際には、FE−TEM装置を用いることが好ましい。FE−TEM装置の市販品としては、日本電子社製のJEM−2010等が挙げられる。
【0098】
上記基材粒子の表面上に上記導電層を形成する方法は特に限定されない。上記導電層を形成する方法としては、例えば、無電解めっきによる方法、電気めっきによる方法、物理的蒸着による方法、並びに金属粉末もしくは金属粉末とバインダーとを含むペーストを基材粒子の表面にコーティングする方法等が挙げられる。なかでも、上記導電層の形成が簡便であるので、無電解めっきによる方法が好ましい。上記物理的蒸着による方法としては、真空蒸着、イオンプレーティング及びイオンスパッタリング等の方法が挙げられる。
【0099】
上記導電層におけるニッケルの含有量を97重量%以上にする方法としては、例えば、無電解ニッケルめっきにより上記導電層を形成する際に、ニッケルめっき液のpHを制御する方法、無電解ニッケルめっきにより上記導電層を形成する際に、ボロン含有還元剤などの還元剤の濃度を調整する方法、並びにニッケル塩濃度を調整する方法等が挙げられる。
【0100】
無電解めっきにより形成する方法では、一般的に、触媒化工程と、無電解めっき工程とが行われる。以下、無電解めっきにより、樹脂粒子の表面に、ニッケルとボロンとを含む合金めっき層を形成する方法の一例を説明する。
【0101】
上記触媒化工程では、無電解めっきによりめっき層を形成するための起点となる触媒を、樹脂粒子の表面に形成させる。
【0102】
上記触媒を樹脂粒子の表面に形成させる方法としては、例えば、塩化パラジウムと塩化スズとを含む溶液に、樹脂粒子を添加した後、酸溶液又はアルカリ溶液により樹脂粒子の表面を活性化させて、樹脂粒子の表面にパラジウムを析出させる方法、並びに硫酸パラジウムとアミノピリジンとを含有する溶液に、樹脂粒子を添加した後、還元剤を含む溶液により樹脂粒子の表面を活性化させて、樹脂粒子の表面にパラジウムを析出させる方法等が挙げられる。上記還元剤として、ボロン含有還元剤が好適に用いられる。ただし、上記還元剤として、次亜リン酸ナトリウム等のリン含有還元剤を併用してもよい。
【0103】
上記無電解めっき工程では、ニッケル塩及び上記ボロン含有還元剤を含むニッケルめっき浴が用いられる。ニッケルめっき浴中に樹脂粒子を浸漬することにより、触媒が表面に形成された樹脂粒子の表面に、ニッケルを析出させることができ、ニッケルとボロンとを含む導電層を形成できる。
【0104】
上記ボロン含有還元剤としては、ジメチルアミンボラン、水素化ホウ素ナトリウム及び水素化ホウ素カリウム等が挙げられる。
【0105】
導電性粒子1のように、本発明に係る導電性粒子は表面に突起を有することが好ましい。導電性粒子は、ニッケル−ボロン導電層の表面に突起を有することが好ましい。導電性粒子は表面に複数の突起を有することが好ましい。導電性粒子は、導電層の表面に複数の突起を有することが好ましい。導電性粒子により接続される電極の表面には、酸化被膜が形成されていることが多い。さらに、導電性粒子の導電層の表面には、酸化被膜が形成されていることが多い。突起を有する導電性粒子の使用により、電極間に導電性粒子を配置した後、圧着させることにより、突起により酸化被膜が効果的に排除される。このため、電極と導電性粒子とをより一層確実に接触させることができ、電極間の接続抵抗を低くすることができる。さらに、導電性粒子が表面に絶縁性樹脂を有する場合、又は導電性粒子が樹脂中に分散されて異方性導電材料として用いられる場合に、導電性粒子の突起によって、導電性粒子と電極との間の樹脂を効果的に排除できる。このため、電極間の導通信頼性を高めることができる。
【0106】
導電性粒子の表面に突起を形成する方法としては、基材粒子の表面に芯物質を付着させた後、無電解めっきにより導電層を形成する方法、並びに基材粒子の表面に無電解めっきにより導電層を形成した後、芯物質を付着させ、更に無電解めっきにより導電層を形成する方法等が挙げられる。
【0107】
上記導電層の厚みは好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上、更に好ましくは20nm以上、特に好ましくは50nm以上、好ましくは70000nm以下、より好ましくは40000nm以下、より一層好ましくは1000nm以下、更に好ましくは500nm以下、特に好ましくは300nm以下、最も好ましくは200nm以下である。上記導電層の厚みが上記下限以上であると、導電性粒子の導電性が十分に高くなる。上記導電層の厚みが上記上限以下であると、基材粒子と導電層との熱膨張率の差による界面の応力が緩和され、基材粒子から導電層が剥離し難くなる。
【0108】
上記導電層の厚みは50nm以上、300nm以下であることが特に好ましい。さらに、基材粒子の粒子径が2μm以上、5μm以下であり、かつ、上記導電層の厚みが50nm以上、300nm以下であることが特に好ましい。この場合には、導電性粒子を大きな電流が流れる用途により好適に用いることができる。さらに、導電性粒子を圧縮して電極間を接続した場合に、電極が損傷するのをより一層抑制できる。
【0109】
導電性粒子1のように、本発明に係る導電性粒子は、上記導電層の外表面に付着された絶縁性樹脂を有することが好ましい。この場合には、導電性粒子を電極間の接続に用いると、隣接する電極間の短絡を防止できる。具体的には、複数の導電性粒子が接触したときに、複数の電極間に絶縁性樹脂が存在するので、上下の電極間ではなく横方向に隣り合う電極間の短絡を防止することができる。なお、電極間の接続の際に、2つの電極で導電性粒子を加圧することにより、上記導電層と電極との間の絶縁性樹脂を容易に排除できる。導電性粒子が上記導電層の表面に突起を有する場合には、上記導電層と電極との間の絶縁性樹脂をより一層容易に排除できる。
【0110】
上記絶縁性樹脂は、絶縁樹脂粒子であることが好ましい。この場合には、導電性粒子を電極間の接続に用いると、横方向に隣接する電極間の短絡を防止できるだけでなく、接続された上下の電極間の接続抵抗を低くすることができる。
【0111】
(異方性導電材料)
本発明に係る異方性導電材料は、上述した導電性粒子と、バインダー樹脂とを含む。上記導電性粒子はバインダー樹脂中に添加され、導電材料として用いられることが好ましい。上記導電性粒子はバインダー樹脂中に添加され、異方性導電材料として用いられることがより好ましい。
【0112】
上記バインダー樹脂は特に限定されない。上記バインダー樹脂として、公知の絶縁性の樹脂が用いられる。
【0113】
上記異方性導電材料は、上記導電性粒子及び上記バインダー樹脂の他に、例えば、充填剤、増量剤、軟化剤、可塑剤、重合触媒、硬化触媒、着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤及び難燃剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0114】
上記バインダー樹脂中に上記導電性粒子を分散させる方法は、従来公知の分散方法を用いることができ特に限定されない。上記バインダー樹脂中に上記導電性粒子を分散させる方法としては、例えば、上記バインダー樹脂中に上記導電性粒子を添加した後、プラネタリーミキサー等で混練して分散させる方法、上記導電性粒子を水又は有機溶剤中にホモジナイザー等を用いて均一に分散させた後、上記バインダー樹脂中に添加し、プラネタリーミキサー等で混練して分散させる方法、並びに上記バインダー樹脂を水又は有機溶剤等で希釈した後、上記導電性粒子を添加し、プラネタリーミキサー等で混練して分散させる方法等が挙げられる。
【0115】
本発明に係る異方性導電材料は、異方性導電ペースト及び異方性導電フィルム等として使用され得る。本発明に係る異方性導電材料が、異方性導電フィルムである場合には、導電性粒子を含む該異方性導電フィルムに、導電性粒子を含まないフィルムが積層されていてもよい。
【0116】
異方性導電材料100重量%中、上記バインダー樹脂の含有量は好ましくは10重量%以上、より好ましくは30重量%以上、更に好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上、好ましくは99.99重量%以下、より好ましくは99.9重量%以下である。上記バインダー樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間に導電性粒子が効率的に配置され、異方性導電材料により接続された接続対象部材の接続信頼性がより一層高くなる。
【0117】
異方性導電材料100重量%中、上記導電性粒子の含有量は好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下、更に好ましくは20重量%以下、特に好ましくは10重量%以下である。上記導電性粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間の導通信頼性がより一層高くなる。
【0118】
(接続構造体)
本発明の導電性粒子を用いて又は該導電性粒子とバインダー樹脂とを含む異方性導電材料を用いて、接続対象部材を接続することにより、接続構造体を得ることができる。
【0119】
上記接続構造体は、第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、第1,第2の接続対象部材を電気的に接続している接続部とを備え、該接続部が本発明の導電性粒子により形成されているか、又は該導電性粒子とバインダー樹脂とを含む異方性導電材料により形成されている接続構造体であることが好ましい。導電性粒子が用いられた場合には、接続部自体が導電性粒子である。すなわち、第1,第2の接続対象部材が導電性粒子により接続される。
【0120】
図3に、本発明の一実施形態に係る導電性粒子を用いた接続構造体を模式的に正面断面図で示す。
【0121】
図3に示す接続構造体21は、第1の接続対象部材22と、第2の接続対象部材23と、第1,第2の接続対象部材22,23を接続している接続部24とを備える。接続部24は、導電性粒子1を含む異方性導電材料を硬化させることにより形成されている。なお、図3では、導電性粒子1は、図示の便宜上、略図的に示されている。
【0122】
第1の接続対象部材22は上面22a(表面)に、複数の電極22bを有する。第2の接続対象部材23は下面23a(表面)に、複数の電極23bを有する。電極22bと電極23bとが、1つ又は複数の導電性粒子1により電気的に接続されている。従って、第1,第2の接続対象部材22,23が導電性粒子1により電気的に接続されている。
【0123】
上記接続構造体の製造方法は特に限定されない。接続構造体の製造方法の一例としては、第1の接続対象部材と第2の接続対象部材との間に上記異方性導電材料を配置し、積層体を得た後、該積層体を加熱及び加圧する方法等が挙げられる。
【0124】
上記加圧の圧力は9.8×10〜4.9×10Pa程度である。上記加熱の温度は、120〜220℃程度である。
【0125】
上記接続対象部材としては、具体的には、半導体チップ、コンデンサ及びダイオード等の電子部品、並びにプリント基板、フレキシブルプリント基板及びガラス基板等の回路基板などの電子部品等が挙げられる。上記導電材料は、電子部品を接続するための導電材料であることが好ましい。上記導電材料はペースト状の導電ペーストであり、ペースト状の状態で接続対象部材上に塗工されることが好ましい。
【0126】
上記接続対象部材に設けられている電極としては、金電極、ニッケル電極、錫電極、アルミニウム電極、銅電極、モリブデン電極及びタングステン電極等の金属電極が挙げられる。上記接続対象部材がフレキシブルプリント基板である場合には、上記電極は金電極、ニッケル電極、錫電極又は銅電極であることが好ましい。上記接続対象部材がガラス基板である場合には、上記電極はアルミニウム電極、銅電極、モリブデン電極又はタングステン電極であることが好ましい。なお、上記電極がアルミニウム電極である場合には、アルミニウムのみで形成された電極であってもよく、金属酸化物層の表面にアルミニウム層が積層された電極であってもよい。上記金属酸化物層の材料としては、3価の金属元素がドープされた酸化インジウム及び3価の金属元素がドープされた酸化亜鉛等が挙げられる。上記3価の金属元素としては、Sn、Al及びGa等が挙げられる。
【0127】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0128】
(実施例1)
(重合体シード粒子分散液の作製)
セパラブルフラスコにイオン交換水2500g、スチレン250g、オクチルメルカプタン50g、及び塩化ナトリウム0.5gを入れ、窒素雰囲気下で攪拌した。その後、70℃に加熱し、過硫酸カリウム2.5gを添加し、24時間反応を行うことにより、重合体シード粒子を得た。
【0129】
得られた重合体シード粒子5gと、イオン交換水500gと、ポリビニルアルコール5重量%水溶液100gとを混合し、超音波により分散させた後、セパラブルフラスコに入れて攪拌し、重合体シード粒子分散液を得た。
【0130】
(重合体粒子の作製)
ジメチロール−トリシクロデカンジメタクリレート100gと、メチルメタクリレート90gと、過酸化ベンゾイル2.6gと、ラウリル硫酸トリエタノールアミン10gと、エタノール130gとをイオン交換水1000gに加え、攪拌し、乳化液を得た。得られた乳化液を数回に分けて重合体シード粒子分散液に加え、12時間攪拌した。その後、ポリビニルアルコール5重量%水溶液500gを加え、85℃の窒素雰囲気下で、9時間反応を行い、重合体粒子(平均粒子径3μm)を得た。
【0131】
(導電性粒子の作製)
(1)パラジウム付着工程
得られた重合体粒子をエッチングし、水洗した。次に、パラジウム触媒を8重量%含むパラジウム触媒化液100mL中に樹脂粒子を添加し、攪拌した。その後、ろ過し、洗浄した。pH6の0.5重量%ジメチルアミンボラン液に樹脂粒子を添加し、パラジウムが付着された樹脂粒子を得た。
【0132】
(2)芯物質付着工程
パラジウムが付着された樹脂粒子をイオン交換水300mL中で3分間攪拌し、分散させ、分散液を得た。次に、金属ニッケル粒子スラリー(平均粒子径100nm)1gを3分間かけて上記分散液に添加し、芯物質が付着された樹脂粒子を得た。
【0133】
(3)無電解ニッケルめっき工程
硫酸ニッケル0.23mol/L、ジメチルアミンボラン0.92mol/L、及びクエン酸ナトリウム0.5mol/Lを含むニッケルめっき液(pH8.5)を用意した。芯物質が付着された樹脂粒子にイオン交換水500mLを加え、得られた懸濁液を60℃にて攪拌しながら、上記ニッケルめっき液を懸濁液に徐々に滴下し、無電解ニッケルめっきを行った。樹脂粒子の表面に、厚み0.1μm程度の導電層(ニッケルとボロンとを含むニッケル−ボロン導電層)が形成されたときに、無電解めっき液の滴下を終了した。その後、懸濁液をろ過することにより、粒子を取り出し、水洗し、乾燥することにより、樹脂粒子の表面にニッケル−ボロン導電層(厚み96.4nm)が設けられており、ニッケル−ボロン導電層の表面に突起を有する導電性粒子を得た。
【0134】
(実施例2)
重合体粒子を作製する際に、用いたモノマー成分を、ジメチロール−トリシクロデカンジメタクリレート180gとメチルメタクリレート10gとに変更したこと以外は実施例1と同様にして、重合体粒子を得た。得られた導電性粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、導電性粒子を作製した。
【0135】
(実施例3)
重合体粒子を作製する際に、用いたモノマー成分を、アクリロニトリル20gとジビニルベンゼン40gとイソボルニルメタクリレート40gとに変更したこと以外は実施例1と同様にして、重合体粒子を得た。得られた導電性粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、導電性粒子を作製した。
【0136】
(実施例4)
重合体粒子を作製する際に、用いたモノマー成分を、アクリロニトリル20gとジビニルベンゼン60gとイソボルニルメタクリレート20gとに変更したこと以外は実施例1と同様にして、重合体粒子を得た。得られた導電性粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、導電性粒子を作製した。
【0137】
(実施例5)
(1)絶縁樹脂粒子の作製
4ツ口セパラブルカバー、攪拌翼、三方コック、冷却管及び温度プローブが取り付けられた1000mLのセパラブルフラスコに、メタクリル酸メチル100mmolと、N,N,N−トリメチル−N−2−メタクリロイルオキシエチルアンモニウムクロライド1mmolと、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩1mmolとを含むモノマー組成物を固形分率が5重量%となるようにイオン交換水に秤取した後、200rpmで攪拌し、窒素雰囲気下70℃で24時間重合を行った。反応終了後、凍結乾燥して、表面にアンモニウム基を有し、平均粒子径220nm及びCV値10%の絶縁樹脂粒子を得た。
【0138】
絶縁樹脂粒子を超音波照射下でイオン交換水に分散させ、絶縁樹脂粒子の10重量%水分散液を得た。
【0139】
実施例1で得られた導電性粒子10gをイオン交換水500mLに分散させ、絶縁樹脂粒子の水分散液4gを添加し、室温で6時間攪拌した。3μmのメッシュフィルターでろ過した後、更にメタノールで洗浄し、乾燥し、絶縁樹脂粒子が付着した導電性粒子を得た。
【0140】
走査型電子顕微鏡(SEM)により粒子断面を観察したところ、導電性粒子の表面に絶縁樹脂粒子による被覆層が1層のみ形成されていた。粒子表面の画像解析により導電性粒子の中心より半径2.5μmの面積に対する絶縁樹脂粒子の被覆面積(即ち絶縁樹脂粒子の粒子径の投影面積)を算出したところ、被覆率は30%であった。
【0141】
(比較例1)
重合体粒子を作製する際に、用いたモノマー成分を、ジビニルベンゼン100gに変更したこと以外は実施例1と同様にして、重合体粒子を得た。得られた導電性粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、導電性粒子を作製した。
【0142】
(比較例2)
重合体粒子を作製する際に、用いたモノマー成分を、オクチルアクリレート100gとポリテトラメチレングリコールジアクリレート90gとに変更したこと以外は実施例1と同様にして、重合体粒子を得た。得られた導電性粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、導電性粒子を作製した。
【0143】
(実施例1〜5及び比較例1,2の評価)
(1)重合体粒子の圧縮弾性率(30%K値)
得られた重合体粒子の圧縮弾性率(30%K値)を、微小圧縮試験機(フィッシャー社製「フィッシャースコープH−100」)を用いて測定した。
【0144】
(2)重合体粒子及び導電性粒子の圧縮回復率
得られた重合体粒子及び導電性粒子を30%圧縮したときの圧縮回復率を、微小圧縮試験機(フィッシャー社製「フィッシャースコープH−100」)を用いて測定した。
【0145】
(3)導電層の全体100重量%中のニッケル及びボロンの含有量
60%硝酸5mLと37%塩酸10mLとの混合液に、導電性粒子5gを加え、導電層を完全に溶解させ、溶液を得た。得られた溶液を用いて、ニッケル及びボロンの含有量をICP−MS分析器(日立製作所社製)により分析した。
【0146】
(4)ニッケル−ボロン導電層の厚み方向におけるボロンの含有量
ニッケル−ボロン導電層の外表面から厚み方向におけるボロンの含有量の分布を測定した。ニッケル−ボロン導電層の外表面から厚み方向に内側に向かって1/2の厚みの領域において、ニッケル−ボロン導電層中のボロンの含有量の最大値と最小値との差を「差D」として、結果を下記の表1に示した。ニッケル−ボロン導電層の外表面から厚み方向に内側に向かって1/5の厚みの領域において、ニッケル−ボロン導電層中のボロンの含有量の最大値を「最大値M」として、結果を下記の表1に示した。
【0147】
(5)導電層の割れ発生試験
台の上に導電性粒子を置いた。微小圧縮試験機(フィッシャー社製「フィッシャースコープH−100」)を用いて、圧縮速度0.33mN/秒及び最大試験荷重10mNの条件で、ダイヤモンド製の直径50μmの円柱を圧縮部材として、該圧縮部材の平滑端面を導電性粒子に向かって降下させた。平滑端面により導電性粒子を圧縮した。導電性粒子の導電層に割れが生じるまで圧縮を行った。圧縮方向における圧縮前の導電性粒子の粒子径に対して、導電層に割れが生じた導電性粒子の上記圧縮変位1を下記の表1に示した。さらに、圧縮方向における圧縮前の導電性粒子の粒子径に対して、導電層の割れに伴う導電性粒子の上記圧縮変位2を下記の表1に示した。上記圧縮変位1,2の評価結果については、3つの導電性粒子の測定値の平均値を下記の表1に示した。
【0148】
(6)接続構造体の作製
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製「エピコート1009」)10重量部と、アクリルゴム(重量平均分子量約80万)40重量部と、メチルエチルケトン200重量部と、マイクロカプセル型硬化剤(旭化成ケミカルズ社製「HX3941HP」)50重量部と、シランカップリング剤(東レダウコーニングシリコーン社製「SH6040」)2重量部とを混合し、導電性粒子を含有量が3体積%となるように添加し、分散させ、樹脂組成物を得た。
【0149】
得られた樹脂組成物を、片面が離型処理された厚さ50μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムに塗布し、70℃の熱風で5分間乾燥し、異方性導電フィルムを作製した。得られた異方性導電フィルムの厚さは12μmであった。
【0150】
得られた異方性導電フィルムを5mm×5mmの大きさに切断した。切断された異方性導電フィルムを、一方に抵抗測定用の引き回し線を有するアルミニウム電極(高さ0.2μm、L/S=20μm/20μm)が設けられたガラス基板(幅3cm、長さ3cm)のアルミニウム電極側のほぼ中央に貼り付けた。次いで、同じアルミニウム電極が設けられた2層フレキシブルプリント基板(幅2cm、長さ1cm)を、電極同士が重なるように位置合わせをしてから貼り合わせた。このガラス基板と2層フレキシブルプリント基板との積層体を、10N、180℃、及び20秒間の圧着条件で熱圧着し、接続構造体を得た。なお、ポリイミドフィルムにアルミニウム電極が直接形成されている、2層フレキシブルプリント基板を用いた。
【0151】
(7)接続抵抗
上記(6)接続構造体の作製で得られた接続構造体の対向する電極間の接続抵抗を4端子法により測定した。また、接続抵抗を下記の評価基準で評価した。
【0152】
〔接続抵抗の評価基準〕
○○:接続抵抗が2.0Ω以下
○:接続抵抗が2.0Ωを超え、3.0Ω以下
△:接続抵抗が3.0Ωを超え、5.0Ω以下
×:接続抵抗が5.0Ωを超える
【0153】
(8)圧痕の形成の有無
微分干渉顕微鏡を用いて、上記(6)接続構造体の作製で得られた接続構造体のガラス基板側から、ガラス基板に設けられた電極を観察し、導電性粒子が接触した電極の圧痕の形成の有無を下記の判定基準で評価した。なお、電極の圧痕の形成の有無について、電極面積が0.02mmとなるように、微分干渉顕微鏡にて観察し、電極0.02mmあたりの圧痕の個数を算出した。任意の10箇所を微分干渉顕微鏡にて観察し、電極0.02mmあたりの圧痕の個数の平均値を算出した。
【0154】
〔圧痕の形成の有無の判定基準〕
○○:電極0.02mmあたりの圧痕が25個以上
○:電極0.02mmあたりの圧痕が20個以上、25個未満
△:電極0.02mmあたりの圧痕が5個以上、20個未満
×:電極0.02mmあたりの圧痕が5個未満
【0155】
(9)空隙の観察
金属顕微鏡を用いて、上記(6)接続構造体の作製で得られた接続構造体のガラス基板側から、ガラス基板に設けられた電極を観察し、導電性粒子が接触した電極部分における空隙の発生の有無を観察した。空隙が発生してない場合を「○」、空隙が発生している場合を「×」と判定した。
【0156】
結果を下記の表1に示す。
【0157】
【表1】

【0158】
(実施例6)
実施例2で得られた重合体粒子を用意した。この重合体粒子を用いて、実施例1の導電性粒子の作製の無電解ニッケルめっき工程において、ニッケルめっき液を、硫酸ニッケル0.077mol/L、ジメチルアミンボラン0.31mol/L、及びクエン酸ナトリウム0.17mol/Lを含むニッケルめっき液(pH8.5)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、導電性粒子を作製した。得られた導電性粒子におけるニッケル−ボロン導電層の厚みは、33.6nmであった。
【0159】
(実施例7)
実施例2で得られた重合体粒子を用意した。この重合体粒子を用いて、実施例1の導電性粒子の作製の無電解ニッケルめっき工程において、ニッケルめっき液のpHを8.5から8.0に変更したこと、並びに懸濁液の撹拌温度を60℃から55℃に変更したこと以外は実施例1と同様にして、導電性粒子を作製した。得られた導電性粒子におけるニッケル−ボロン導電層の厚みは、95.4nmであった。
【0160】
(実施例8)
撹拌機、還流コンデンサー及び温度計を装備した2Lのフラスコに、ベンゾグアナミン110.0g、37重量%ホルマリン160.0g及び水620gを入れ、25重量%アンモニア水にてpHを8.8に調整して、混合物を得た。得られた混合物を撹拌しながら昇温し、温度を70℃に保ち、30分反応させてベンゾグアナミンの初期縮合物の水溶液を調製した。次に、温度を70℃に保持したままで、得られた初期縮合物の水溶液にパラトルエンスルホン酸・一水和物の10重量%水溶液を添加して、pHを6.0に調整した。その後、温度を90℃まで昇温して3時間硬化反応を続けた。冷却後、得られた反応液をろ過、乾燥し、白色のベンゾグアナミン樹脂粒子(平均粒子径3μm)を得た。
【0161】
得られたベンゾグアナミン樹脂粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、導電性粒子を得た。得られた導電性粒子におけるニッケル−ボロン導電層の厚みは、96.0nmであった。
【0162】
(実施例9)
撹拌機、還流コンデンサー及び温度計を装備した2Lのフラスコに、メラミン100.0g、37重量%ホルマリン160.0g及び水620gを入れ、25重量%アンモニア水にてpHを8.8に調整して、混合物を得た。得られた混合物を撹拌しながら昇温し、温度を70℃に保ち、30分反応させてメラミンの初期縮合物の水溶液を調製した。次に、温度を70℃に保持したままで、得られた初期縮合物の水溶液にパラトルエンスルホン酸・一水和物の10重量%水溶液を添加してpHを6.0に調整した。その後、温度を90℃まで昇温して3時間硬化反応を続けた。冷却後、得られた反応液をろ過、乾燥し、白色のメラミン樹脂粒子(平均粒子径3μm)を得た。
【0163】
得られたメラミン樹脂粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、導電性粒子を得た。得られた導電性粒子におけるニッケル−ボロン導電層の厚みは、95.4nmであった。
【0164】
(実施例6〜9の評価)
実施例1〜5及び比較例1,2の評価と同様にして、評価を実施した。結果を下記の表2に示す。
【0165】
【表2】

【符号の説明】
【0166】
1…導電性粒子
1a…表面
2…基材粒子
2a…表面
3…導電層
3a…外表面
4…芯物質
5…突起
6…絶縁性樹脂
11…導電性粒子
11a…表面
12…導電層
12a…外表面
12b…割れ
21…接続構造体
22…第1の接続対象部材
22a…上面
22b…電極
23…第2の接続対象部材
23a…下面
23b…電極
24…接続部
51…台
52…圧縮部材
52a…平滑端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材粒子と、該基材粒子の表面に配置された導電層とを有する導電性粒子であって、
前記基材粒子を30%圧縮したときの圧縮回復率が50%以下であり、かつ前記基材粒子を30%圧縮したときの圧縮弾性率が960N/mm以上、8000N/mm以下であり、
導電性粒子を圧縮した場合に、導電性粒子が、圧縮方向における圧縮前の導電性粒子の粒子径の2%以上、25%以下で圧縮変位したときに、前記導電層に割れが生じる、導電性粒子。
【請求項2】
前記基材粒子が、少なくとも2つの環構造を有する脂環式化合物であるモノマーを重合させることにより得られた重合体粒子であるか、ベンゾグアナミン樹脂により形成された粒子であるか、又はメラミン樹脂により形成された粒子である、請求項1に記載の導電性粒子。
【請求項3】
前記基材粒子が、ベンゾグアナミン樹脂により形成された粒子であるか、又はメラミン樹脂により形成された粒子である、請求項2に記載の導電性粒子。
【請求項4】
前記基材粒子が、少なくとも2つの環構造を有する脂環式化合物であるモノマーを重合させることにより得られた重合体粒子である、請求項2に記載の導電性粒子。
【請求項5】
前記少なくとも2つの環構造が、ビシクロ環構造又はトリシクロ環構造である、請求項2又は4に記載の導電性粒子。
【請求項6】
前記モノマーがアクリルモノマー又はビニルエーテル化合物である、請求項2、4又は5に記載の導電性粒子。
【請求項7】
前記導電層がニッケルを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の導電性粒子。
【請求項8】
前記導電層がニッケルとボロンとを含む、請求項7に記載の導電性粒子。
【請求項9】
前記導電層のニッケルの含有率が97重量%以上である、請求項7又は8に記載の導電性粒子。
【請求項10】
前記基材粒子の平均粒子径が、0.1μm以上、1000μm以下であり、
前記導電層の厚みが、5nm以上、70000nm以下である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の導電性粒子。
【請求項11】
前記基材粒子の粒子径が、2μm以上、5μm以下であり、
前記導電層の厚みが、50nm以上、300nm以下である、請求項10に記載の導電性粒子。
【請求項12】
前記導電層の外表面に突起を有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の導電性粒子。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の導電性粒子と、バインダー樹脂とを含む、異方性導電材料。
【請求項14】
第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、該第1,第2の接続対象部材を接続している接続部とを備え、
前記接続部が、請求項1〜12のいずれか1項に記載の導電性粒子により形成されているか、又は該導電性粒子とバインダー樹脂とを含む異方性導電材料により形成されている、接続構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−55047(P2013−55047A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−174933(P2012−174933)
【出願日】平成24年8月7日(2012.8.7)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】