説明

導電性組成物およびそれを用いた導電性フィルム

【課題】ポットライフが長く、導電性及び透明性に優れた導電性膜を形成できる導電性組成物を提供する。
【解決手段】導電性粒子(ATO粒子など)とアクリルシリコーン系樹脂とで導電性組成物を構成する。このような導電性組成物は、通常、アクリルシリコーン系樹脂を含む分散媒に、導電性粒子が分散した分散液(特に水性分散液)であってもよい。前記導電性組成物において、導電性粒子とアクリルシリコーン系樹脂との割合は、前者/後者(重量比)=97/3〜40/60程度であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い透明性と導電性とを両立できる導電性膜を形成するのに有用な導電性組成物(導電性塗料、導電性分散液)およびこの導電性組成物で構成された導電性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
帯電防止などを目的として、基材表面に導電膜を形成することが知られている。このような導電膜は、例えば、導電性粒子を含む塗布液(分散液)を基材にコーティングすることにより得られる。
【0003】
例えば、特開平8−319370号公報(特許文献1)には、アンチモンドープ酸化スズ粉末を水系分散媒中に分散させてなる水系導電性分散液において、該液中にカチオン交換性層状粘土鉱物が該アンチモンドープ酸化スズ粉末に対し0.01〜2重量%の割合にて添加されている水系導電性分散液、およびこの分散液を含む水系導電性塗料が開示されている。この文献では、前記水系導電性塗料は、前記分散液を塗料形成用水溶性樹脂と混合することにより製造され、水溶性樹脂として、ゼラチン、ポリビニルアルコール、水溶性アクリル樹脂等を例示している。
【0004】
また、特開平11−11947号公報(特許文献2)には、4価錫と3価アンチモンの各水和酸化物を含有する微粒子スラリーを超臨界水で処理し、アンチモンドープ酸化錫(ATO)粉末分散液を製造する方法が開示されている。この文献には、水熱処理により生成したATO分散液に、水および/またはアルコールなどの水混和性有機溶媒を添加して固形分濃度を塗料に適した濃度(通常は10〜20重量%)に調整すると共に、必要に応じて適当な透明バインダー(例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール、水溶性アクリル樹脂等の水溶性バインダー、アクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系などの水分散性樹脂、エチルシリケートなどのアルコキシシランもしくはその部分加水分解物)を添加混合して、水系の透明導電性塗料とすることができること、およびバインダーの添加量はATO100重量部当たり10〜1000重量部、好ましくは10〜300重量部程度が適当であることが記載されている。
【0005】
さらに、特開平10−6443号公報(特許文献3)には、透明プラスチックフィルムの片面にシリコーン系離型層を、反対側の面に導電性金属酸化物またはカーボンを含有する目視透明性の帯電防止層を有するセラミックスグリーンシート成形用キャリアーフィルムが開示されている。この文献には、帯電防止層が、導電性金属酸化物の微粉末またはカーボン材料と適当なバインダー[有機樹脂系バインダー(アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、メラミン樹脂)、無機質皮膜を形成するゾルゲル型のバインダー(シランアルコキシド、チタンアルコキシド)など]とを含む塗布液を調製し、この液をフィルムに塗布することにより形成できることが記載されている。
【0006】
これらの文献に記載されているような導電膜(又は帯電防止層)には、導電性と透明性とが要求されるが、通常、これらは相反する特性であり、導電性の向上と透明性の向上とを高いレベルで両立することは困難である。すなわち、導電性を高めるために、バインダー樹脂に対する導電性粒子の割合を増大させると、透明性が低下し、一方、バインダー樹脂の割合を増大させると導電性が低下する。また、導電性粒子の割合を増大させると、塗膜の耐摩擦性(又は耐擦傷性)が低下しやすくなる。
【0007】
また、このような塗布液は、導電性粒子を含んでいるため、通常、安定性が低い(すなわち、ポットライフが短い)。このような塗布液の安定性は、導電性粒子の割合を増大させると、より一層顕著に低下する。
【0008】
一方、特開平8−102227号公報(特許文献4)には、導電性微粉末(ITO、ATOなど)、溶媒、および非ポリマー系膜形成剤(2−アルコキシエタノール、β−ジケトンなど)を含有し、ポリマー系バインダーを含まない透明導電膜形成用組成物を基体に塗布する第1工程、および第1工程で得られた塗膜に、ポリマー系バインダーを含有する粘度25cps以下の液体を含浸させ、塗膜を乾燥または硬化させる第2工程からなる透明導電膜の形成方法が開示されている。この文献には、前記ポリマー系バインダーとして、各種の有機又は無機ポリマー(例えば、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリウレタン、アクリルウレタン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、セルロース、テトラアルコキシシランの加水分解・縮合により生成するシリカゾルなど)、重合性の反応型モノマー又はオリゴマー(アクリレートおよびメタクリレート型のモノマー又はオリゴマー、モノ(2−メタクロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、ビニルトルエン、エポキシド化合物などの重合性の有機モノマーもしくはオリゴマー;Si、Ti、Zr、Al、Sn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Pb、Ag、In、Sb、Pt、Auなどの金属の鉱酸塩、有機酸塩、アルコキシド、錯体(キレート)、それらの部分加水分解物など)などを例示している。
【0009】
この文献の方法では、ポリマー系バインダーを含まない導電膜を形成するので、高い導電性を付与できるものの、さらにポリマー系バインダーで構成された塗膜を形成する必要があり、操作が煩雑である。また、導電膜はポリマー系バインダーを含んでいないため、基材に対する密着性が低下する虞がある。さらに、この文献の方法でも、透明導電膜形成用組成物の安定性が問題となる。
【特許文献1】特開平8−319370号公報(特許請求の範囲、段落番号[0022])
【特許文献2】特開平11−11947号公報(特許請求の範囲、段落番号[0033][0034])
【特許文献3】特開平10−6443号公報(特許請求の範囲、段落番号[0033][0034])
【特許文献4】特開平8−102227号公報(特許請求の範囲、段落番号[0043]〜[0051])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、導電性と透明性とを高いレベルで両立できる導電性組成物、この導電性組成物により形成された導電性膜、およびこの導電性膜が形成された導電性フィルムを提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、ポットライフ(又は液寿命)が長く、安定性が高い導電性組成物、この導電性組成物により形成された導電性膜、およびこの導電性膜が形成された導電性フィルムを提供することにある。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、導電性粒子を高い割合で含んでいても、透明性および基材フィルムに対する密着性に優れた導電性膜を形成できる導電性組成物、この導電性組成物により形成された導電性膜、およびこの導電性膜が形成された導電性フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、導電性粒子(アンチモンドープ酸化スズなど)とアクリルシリコーン系樹脂とを組み合わせることにより、導電性と透明性とを高いレベルで両立できる導電性膜(導電性フィルム)が得られること、導電性粒子を含んでいても(特に、高い割合で導電性粒子を含んでいても)、長期に亘って安定性を維持でき、ポットライフの長い導電性組成物(分散液)が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明の導電性組成物は、導電性粒子とアクリルシリコーン系樹脂とで構成されている。このような導電性組成物は、通常、アクリルシリコーン系樹脂を含む分散媒に、導電性粒子が分散した分散液の形態であってもよい。前記導電性粒子の平均粒子径は、150nm以下であってもよく、アンチモン含有酸化スズ、スズ含有酸化インジウム、酸化チタンおよび酸化亜鉛から選択された少なくとも一種であってもよい。
【0015】
前記アクリルシリコーン系樹脂は、親水性基を有する樹脂[例えば、カチオン性基を有する単量体及び/又は非カチオン性親水性基(例えば、ヒドロキシル基などのノニオン性基)を有する単量体を重合成分とする樹脂]であってもよい。特に、前記アクリルシリコーン系樹脂は、カチオン性基を有する単量体を重合成分とする樹脂であってもよく、例えば、疎水性アクリル系単量体と、重合性基を有する加水分解縮合性有機ケイ素化合物と、カチオン性基を有する単量体(および非カチオン性の親水性基を有する単量体)とを少なくとも重合成分とする重合体(アクリルシリコーン系樹脂)であってもよい。
【0016】
具体的な前記アクリルシリコーン系樹脂には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、重合性基を有するアルコキシシラン類と、N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート又はその塩と、(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとを重合成分とする重合体(アクリルシリコーン系樹脂)などが含まれる。
【0017】
本発明の導電性組成物において、導電性粒子とアクリルシリコーン系樹脂との割合は、例えば、前者/後者(重量比)=97/3〜40/60程度であってもよい。
【0018】
代表的な前記組成物には、アクリルシリコーン系樹脂および水性溶媒(例えば、水とC1−3アルカノールとで構成されている水性溶媒)で構成された分散媒に、導電性粒子が分散した水性分散液であって、(i)導電性粒子が、平均粒子径100nm以下であり、かつアンチモン含有酸化スズ及びスズ含有酸化インジウムから選択された少なくとも1種であり、(ii)アクリルシリコーン系樹脂が、疎水性アクリル系単量体と、重合性基を有するアルコキシシラン類と、カチオン性基を有する単量体で少なくとも構成された親水性基を有する単量体とを重合成分とし、かつ疎水性アクリル系単量体と親水性基を有する単量体との割合が、前者/後者(重量比)=90/10〜40/60である重合体であり、(iii)導電性粒子とアクリルシリコーン系樹脂との割合が、前者/後者(重量比)=95/5〜45/55(例えば、93/7〜80/20)である導電性組成物などが含まれる。
【0019】
本発明の導電性組成物(分散液)では、導電性粒子と特定のバインダーとしてのアクリルシリコーン系樹脂とを組み合わせることにより、導電性粒子の安定性(又は分散液のポットライフ)を向上できる。そのため、本発明には、分散媒に導電性粒子が分散した分散液の安定性を向上させる方法であって、前記分散媒をアクリルシリコーン系樹脂で構成することにより、分散液の安定性を向上させる方法も含まれる。
【0020】
本発明の導電性組成物は、導電性膜を形成するのに有用である。そのため、本発明には、前記導電性組成物で形成された導電性膜も含まれる。このような導電性膜は、基材、特に、プラスチックフィルムに形成できる。そのため、本発明には、プラスチックフィルムと、このプラスチックフィルムの少なくとも一方の面に形成された導電性膜とで構成された導電性フィルムであって、前記導電性膜が、前記導電性組成物で形成されている導電性フィルムも含まれる。前記プラスチックフィルムは、ポリエステル系樹脂、オレフィン系樹脂、又はポリカーボネート系樹脂で構成されていてもよい。代表的な導電性フィルムには、前記プラスチックフィルムが、ポリプロピレン系樹脂又はポリエチレンテレフタレート系樹脂で構成された厚み8〜30μmのフィルムであり、かつ導電性膜の厚みが0.05〜2μmの導電性フィルムなどが含まれる。
【0021】
前記導電性フィルムでは、高い導電性と透明性とを両立できる。例えば、前記導電性フィルムは、導電性膜を平均厚み1μm以下(平均厚み0.1〜0.6μm程度、例えば、0.15μm)で形成したとき、表面固有抵抗率が5×10Ω以下であり、かつ導電性膜の形成前後において、全光線透過率の差が5%以下およびへーズの差が1.5%以下であってもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の導電性組成物は、導電性粒子とアクリルシリコーン系樹脂とを組み合わせることにより、導電性と透明性とを高いレベルで両立できる。また、本発明の導電性組成物は、導電性粒子を含んでいるにもかかわらず、ポットライフが長く、安定性が高い。特に、高割合で導電性粒子を含んでいても、安定性が高く長期保存可能であるので、著しく高い導電性を有する導電性膜(又は導電性フィルム)を得るのに好適である。さらに、本発明の導電性組成物は、導電性粒子を高い割合で含んでいても、透明性および基板に対する密着性に優れた導電性膜を形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
[導電性組成物]
本発明の導電性組成物は、導電性粒子と特定のバインダーとしてのアクリルシリコーン系樹脂とで構成されている。このような導電性組成物は、通常、アクリルシリコーン系樹脂(又はアクリルシリコーン系樹脂で構成されたバインダー)を含む分散媒に、前記導電性粒子が分散した分散液(導電性塗料)であってもよい。前記分散媒は、少なくとも前記通常、アクリルシリコーン系樹脂と溶媒とで構成してもよい。
【0024】
(導電性粒子)
導電性粒子としては、金属酸化物(酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化チタンなど)、異種の金属(例えば、アルミニウム、コバルト、鉄、インジウム、スズ、アンチモンおよびチタンから選択された少なくとも1種の金属など)及び/又は元素(フッ素原子など)を含有する金属酸化物[例えば、アンチモン含有酸化スズ(アンチモンドープ酸化スズ、ATO)、スズ含有酸化インジウム(スズドープ酸化インジウム、ITO)、フッ素含有酸化スズ(FTO)、アルミニウム含有酸化亜鉛(AZO)など]、金属単体又は金属合金(アルミニウム、銀など)、導電性カーボン粒子(カーボンナノチューブ、ケッチェンブラックなど)などが挙げられる。導電性粒子は、これらを単独で又は2種以上組み合わせて構成してもよい。
【0025】
なお、異種の金属を含有する金属酸化物(例えば、ATO)において、金属の含有量は、金属酸化物全体の原子換算で、0.2〜40モル%、好ましくは0.3〜30モル%(例えば、0.5〜25モル%)、さらに好ましくは1〜20モル(例えば、1〜15モル%)程度であってもよい。
【0026】
好ましい導電性粒子には、アンチモン含有酸化スズ、スズ含有酸化インジウム、酸化チタン、酸化亜鉛などが挙げられる。特に、導電性の観点からは、アンチモン含有酸化スズが好ましく、透明性の観点からはスズ含有酸化インジウムが好ましい。
【0027】
なお、導電性粒子の形状は、通常、球状であってもよい。
【0028】
導電性粒子の平均粒子径(平均一次粒子径)は、透明性の観点から、ナノメータサイズ、通常、500nm以下(例えば、0.1〜300nm程度)の範囲から選択でき、例えば、200nm以下(例えば、0.5〜180nm程度)、好ましくは150nm以下(例えば、1〜120nm程度)、さらに好ましくは100nm以下(例えば、3〜80nm程度)、特に50nm以下(例えば、5〜30nm程度)であってもよい。なお、導電性粒子は、平均粒子径において異なる2種以上の導電性粒子で構成してもよい。このような異なる平均粒子径を有する導電性粒子の組み合わせについては、特開2002−237214号公報などを参照できる。
【0029】
(バインダー)
バインダーは、アクリルシリコーン系樹脂で少なくとも構成されている。アクリルシリコーン系樹脂は、アクリル単位および加水分解縮合性シリル基(シリル単位)を有する樹脂(又は加水分解縮合性シリル基を有するアクリル樹脂)であれば特に限定されないが、通常、アクリル系単量体および重合性基を有する加水分解縮合性有機ケイ素化合物を少なくとも重合成分(又はポリマーの構成成分)とする樹脂(共重合体)であってもよい。
【0030】
(アクリル系単量体)
アクリル系単量体としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類などが挙げられる。なお、アクリル系単量体は、塩を形成していてもよい。塩としては、カチオン性、アニオン性などに応じて慣用の塩が挙げられる。例えば、カチオン性(又はカチオン性基)に対応する塩としては、ハロゲン化水素塩(塩酸塩、臭化水素酸塩など)、硫酸塩、アルキル硫酸塩(メチル硫酸塩、エチル硫酸塩など)、アルキルスルホン酸塩、アリールスルホン酸塩、カルボン酸塩(酢酸塩など)などが例示できる。また、塩は、第3級アミノ基にアルキル化剤(例えば、エピクロルヒドリン、塩化メチル、塩化ベンジルなどの有機ハロゲン化物など)を反応させることにより生成した第4級アンモニウム塩基であってもよい。
【0031】
(メタ)アクリル酸エステル類としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル[例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸トリフルオロプロピル、(メタ)アクリル酸ペンタフルオロプロピル、(メタ)アクリル酸パーフルオロブチルなどの(メタ)アクリル酸C1−20アルキルエステル、好ましくは(メタ)アクリル酸C1−8アルキルエステル、さらに好ましくは(メタ)アクリル酸C1−6アルキルエステル、特に(メタ)アクリル酸C1−4アルキルエステル)など]、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル[例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸パーフルオロシクロヘキシルなどの(メタ)アクリル酸C5−10シクロアルキルエステル;デカリニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートなどのビ乃至テトラシクロアルキル(メタ)アクリレートなど]、(メタ)アクリル酸アリールエステル[例えば、(メタ)アクリル酸フェニルなどの(メタ)アクリル酸C6−10アリールエステルなど]、(メタ)アクリル酸アラルキルエステル[例えば、(メタ)アクリル酸ベンジルなどの(メタ)アクリル酸C6−10アリール−C1−4アルキルエステルなど]、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル(例えば、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸3−メトキシブチルなどの(メタ)アクリル酸C1−4アルコキシC2−6アルキルエステルなど)、アジリジニル基を有する(メタ)アクリル酸エステル[例えば、(メタ)アクリル酸2−(1−アジリジニル)エチル、(メタ)アクリル酸2−(1−アジリジニル)プロピル、(メタ)アクリル酸3−(1−アジリジニル)プロピルなどの(メタ)アクリル酸アジリジニルC2−6アルキルエステルなど]、(メタ)アクリル酸グリシジルなどの疎水性(メタ)アクリル酸エステル;ヒドロキシル基を有するメタアクリル酸エステル[例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシC2−10アルキル(メタ)アクリレート、好ましくはヒドロキシC2−6アルキル(メタ)アクリレート、さらに好ましくはヒドロキシC2−4アルキル(メタ)アクリレートなど)、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート(例えば、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのポリC2−6アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、好ましくはポリC2−4アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートなど)などの(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートなど]などの非カチオン性の親水性基(特に、ノニオン性親水性基)を有する(メタ)アクリル酸エステル;置換されていてもよいアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル{例えば、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート[例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどのジC1−10アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、好ましくはジC1−6アルキルアミノC2−6アルキル(メタ)アクリレート、さらに好ましくはジC1−4アルキルアミノC2−4アルキル(メタ)アクリレートなど]など}又はその塩[例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムサルフェートなど]などのカチオン性基を有する(メタ)アクリル酸エステル(又はカチオン性の親水性基を有する(メタ)アクリル酸エステル)などが含まれる。
【0032】
(メタ)アクリルアミド類としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド(例えば、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドなどのN−モノ又はジアルキル(メタ)アクリルアミド、好ましくはN−モノ又はジC1−6アルキル(メタ)アクリルアミド、さらに好ましくはN−モノ又はジC1−4アルキル(メタ)アクリルアミドなど)、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド(例えば、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどのN−ヒドロキシC1−6アルキル(メタ)アクリルアミドなど)、N−アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド(例えば、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのN−C1−4アルコキシ−C1−4アルキル(メタ)アクリルアミドなど)、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などの非カチオン性(メタ)アクリルアミド(又は非カチオン性の親水性基(特に、ノニオン性の親水性基)を有する(メタ)アクリルアミド);N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド[例えば、N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル](メタ)アクリルアミド、N−[3−(ジエチルアミノ)プロピル](メタ)アクリルアミドなどのN−ジC1−6アルキルアミノC2−10アルキル(メタ)アクリルアミド、好ましくはN−ジC1−4アルキルアミノC2−6アルキル(メタ)アクリルアミド、さらに好ましくはN−ジC1−2アルキルアミノC2−4アルキル(メタ)アクリルアミドなど]又はその塩、(メタ)アクリロイルモルホリンなどのカチオン性基を有する(メタ)アクリルアミド(又はカチオン性の親水性基を有する(メタ)アクリルアミド)などが挙げられる。
【0033】
(メタ)アクリル系単量体は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0034】
(メタ)アクリル系単量体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどの疎水性(メタ)アクリル系単量体で少なくとも構成するのが好ましい。特に、疎水性(メタ)アクリル系単量体は、単独重合体のガラス転移温度が比較的高い[例えば、単独重合体のガラス転移温度が80℃以上(例えば、80〜120℃、好ましくは90〜105℃程度)の]疎水性(メタ)アクリル系単量体(A)[例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸アルキルエステル(例えば、メタクリル酸C1−4アルキルエステルなど)などの疎水性メタクリル酸エステルなど]と、単独重合体のガラス転移温度が比較的低い[例えば、単独重合体のガラス転移温度が20℃以下(例えば、−90℃〜−10℃、好ましくは−85℃〜−20℃程度)の]疎水性(メタ)アクリル系単量体(B)[アクリル酸メチルを除くアクリル酸アルキルエステル(例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルなどのアクリル酸C2−10アルキルなど)などの疎水性アクリル酸エステルなど]とで構成してもよい。
【0035】
(メタ)アクリル系単量体を疎水性(メタ)アクリル系単量体(A)(又は第1の(メタ)アクリル系単量体)と、疎水性(メタ)アクリル系単量体(B)(又は第2の(メタ)アクリル系単量体)とで構成する場合、アクリルシリコーン系樹脂において、疎水性(メタ)アクリル系単量体(A)と疎水性(メタ)アクリル系単量体(B)との割合(重量比)は、例えば、99/1〜1/99(例えば、90/10〜10/90)、好ましくは85/15〜15/85(例えば、80/20〜20/80)、さらに好ましくは75/25〜25/75(例えば、70/30〜30/70)程度であってもよい。また、疎水性(メタ)アクリル系単量体(A)と疎水性(メタ)アクリル系単量体(B)との割合(モル比)は、例えば、99/1〜5/95(例えば、98/2〜10/90)、好ましくは95/5〜20/80(例えば、90/10〜30/70)、さらに好ましくは85/15〜40/60(例えば、80/20〜50/50)程度であってもよい。
【0036】
なお、後述するように、アクリルシリコーン系樹脂にカチオン性及び/又は親水性を付与する場合には、単量体として非カチオン性の親水性基やカチオン性基を有する(メタ)アクリル系単量体を用いることも好ましく、例えば、(メタ)アクリル系単量体は、疎水性(メタ)アクリル系単量体と、カチオン性基を有する(メタ)アクリル系単量体及び/又は親水性基を有する(メタ)アクリル系単量体とで構成してもよい。
【0037】
また、アクリル系単量体は、通常、単官能性のアクリル系単量体で構成でき、必要に応じて、多官能性のアクリル系単量体、例えば、多官能性(メタ)アクリレート[例えば、アルカンジオールジ(メタ)アクリレート(エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなど)、アルカントリオールジ乃至トリ(メタ)アクリレート(トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなど)、アルカンテトラオールジ乃至テトラ(メタ)アクリレート(ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなど)などのポリオールポリ(メタ)アクリレート、ポリオールのアルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシドなどのC2−4アルキレンオキシド)付加体のポリ(メタ)アクリレートなど]、多官能性(メタ)アクリルアミド(例えば、メチレンビス(メタ)アクリルアミド)などを併用してもよい。これらの多官能性(メタ)アクリレートは、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0038】
(重合性基を有する加水分解縮合性有機ケイ素化合物)
重合性基(重合性官能基、ラジカル重合性基)を有する加水分解縮合性有機ケイ素化合物(単に、有機ケイ素化合物、重合性有機ケイ素化合物、シラン化合物などということがある)は、重合性基(詳細には、アクリル系単量体と共重合可能な重合性基)を有し、かつケイ素原子に直接結合した加水分解縮合性基(例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基などの炭化水素基が結合したエーテル基;塩素原子などのハロゲン原子;アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基など)など)を少なくとも1つ有する化合物であれば特に限定されない。
【0039】
なお、有機ケイ素化合物は、重合性基を分子内に1つ有する単官能性であってもよく、複数の重合性基を有する多官能重合性の有機ケイ素化合物(例えば、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン、ジビニルジ(β−メトキシエトキシ)シランなど)であってもよい。
【0040】
代表的な有機ケイ素化合物としては、例えば、下記式(1)で表される化合物などが挙げられる。
【0041】
X−(A)−Si(OR(R3−a (1)
[式中、Xは、重合性基、Aは連結基を示し、Rは、炭化水素基又は基−[(RO)−R](式中、Rは、アルキレン基であり、Rは炭化水素基であり、bは1以上の整数を示す)であり、Rは、水素原子、ヒドロキシル基、ハロゲン原子又は炭化水素基を示す。aは1〜3の整数、cは0又は1を示す。]
上記式(1)において、重合性基(又は重合性基を含む基)としては、例えば、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基、メタリル基などのC2−6アルケニル基、好ましくはC2−4アルケニル基、さらに好ましくはC2−3アルケニル基)、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。重合性の観点から、特に、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0042】
前記重合性基は、連結基を介してケイ素原子に結合していてもよい。式(1)において、連結基Aとしては、二価の炭化水素基[例えば、アルキレン基(メチレン基などのアルキリデン基を含む、以下同じ)(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基などのC1−10アルキレン基、好ましくはC1−6アルキレン基、さらに好ましくはC2−4アルキレン基など)、シクロアルキレン基(例えば、シクロヘキシレン基などのC5−8シクロアルキレン基など)、アリーレン基(例えば、フェニレン基などのC6−10アリーレン基など)など]、オキシアルキレン基[例えば、オキシメチレン基、オキシエチレン基、オキシプロピレン基(オキシトリメチレン基)などのオキシC1−10アルキレン基、好ましくはオキシC1−6アルキレン基、さらに好ましくはオキシC2−4アルキレン基など]、イミノ基、イミノアルキレン基(イミノメチレン基、イミノエチレン基、イミノトリメチレン基などのイミノC1−10アルキレン基、好ましくはイミノC1−6アルキレン基、さらに好ましくはイミノC2−4アルキレン基など)、オキシアルキレンイミノアルキレン基(例えば、オキシトリメチレンイミノトリメチレン基などのオキシC2−6アルキレン−イミノ−C2−6アルキレン基、好ましくはオキシC2−4アルキレン−イミノ−C2−4アルキレン基など)などが挙げられる。これらの連結基は、ヒドロキシル基などの置換基を有していてもよい。連結基の数cは、0又は1であればよく、連結基の種類などに応じて適宜選択できる。重合性基が(メタ)アクリロイル基である場合、通常、cは1である場合が多い。
【0043】
前記式(1)において、代表的なユニット[X−(A)]−としては、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基など)、(メタ)アクリロイルオキシアルキル基、(メタ)アクリロイルオキシアルキルアミノアルキル基などが挙げられ、特に、(メタ)アクリロイルオキシアルキル基(例えば、(メタ)アクリロイルオキシプロピル基などの(メタ)アクリロイルオキシC2−4アルキル基)などの(メタ)アクリロイル基を含む基が好ましい。
【0044】
前記式(1)において、基R(及び基R)で表される炭化水素基としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのC1−6アルキル基、好ましくはC1−4アルキル基、さらに好ましくはC1−2アルキル基など)、アリール基(例えば、フェニル基、トリル基などのC6−10アリール基、好ましくはC6−8アリール基)などが例示できる。また、基−O−[(RO)−R]において、基Rで表されるアルキレン基としては、限定されないが、例えば、C2−4アルキレン基(エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、ブタン−1,2−ジイル基など)などが例示でき、特に、C2−3アルキレン基(特に、エチレン基、プロピレン基)が好ましい。アルキレンオキシ(RO)単位の付加数bは、1以上であればよく、例えば、1〜4、好ましくは1〜2、さらに好ましくは1であってもよい。また、好ましい基−O−[(RO)−R]には、2−メトキシエトキシ基、2−エトキシエトキシ基などのC1−4アルコキシC2−4アルコキシ基(特に、C1−2アルコキシエトキシ基)などが含まれる。
【0045】
また、好ましい置換数aは、2〜3、さらに好ましくは3である。なお、置換数aが複数である場合、複数の基Rは、同一又は異なっていてもよい。
【0046】
基Rで表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが例示できる。また、基Rで表される炭化水素基としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などのC1−8アルキル基、好ましくはC1−6アルキル基、さらに好ましくはC1−4アルキル基)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基などのC2−6アルケニル基、好ましくはC2−4アルケニル基、さらに好ましくはC2−3アルケニル基)、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基などのC5−8シクロアルキル基)、アリール基(例えば、フェニル基などのC6−15アリール基、好ましくはC6−10アリール基、さらに好ましくはC6−8アリール基)などが挙げられる。これらのうち、好ましい炭化水素基(置換基を有していてもよい炭化水素基)には、アルキル基(C1−6アルキル基など)、アリール基(C6−10アリール基など)などが含まれる。
【0047】
なお、基Rで表される炭化水素基は、置換基を有していてもよい。炭化水素基(上記例示の炭化水素基など)に置換する置換基としては、例えば、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子など、特に、塩素原子)、アミノ基又はN−置換アミノ基[例えば、アミノアルキルアミノ基(2−アミノエチルアミノ基などのアミノC2−4アルキルアミノ基など)、アルケニルアミノ基(アリルアミノ基などのC2−4アルケニルアミノ基など)、アルケニルアミノアルキル基(アリルアミノプロピル基など)など]、メルカプト基(又は置換メルカプト基)、エポキシ基含有基[エポキシシクロアルキル基(3,4−エポキシシクロヘキシル基などのエポキシC3−8シクロヘキシル基、好ましくはエポキシC5−8シクロアルキル基、さらに好ましくはエポキシC5−6シクロアルキル基)、グリシジルオキシ基など]、(メタ)アクリロイルオキシ基などが挙げられる。これらの置換基は、単独で又は2種以上組み合わせて炭化水素基に置換していてもよい。これらの置換基のうち、なお、置換数(3−a)が複数である場合、複数の基Rは、同一又は異なっていてもよい。
【0048】
代表的な有機ケイ素化合物としては、例えば、重合性基を有するモノアルコキシシラン類{例えば、アルケニル基を有するモノアルコキシシラン[例えば、アルケニルジアルキルアルコキシシラン(例えば、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルジメチルイソブトキシシランなどのC2−4アルケニル−ジC1−4アルキル−C1−4アルコキシシランなど)など]など}、重合性基を有するモノアリールオキシシラン類(例えば、ビニルジフェニルエトキシシランなど)、重合性基を有するジアルコキシシラン類{例えば、アルケニル基を有するジアルコキシシラン[例えば、アルケニルアルキルジアルコキシシラン(例えば、ビニルジメトキシメチルシラン、ビニルジエトキシメチルシランなどのC2−4アルケニルC1−4アルキルジC1−4アルコキシシラン)、ジアルケニルジアルコキシシラン(例えば、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジエトキシシランなどのジC2−4アルケニルジC1−4アルコキシシラン)など]、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するジアルコキシシラン[例えば、(メタ)アクリロイルオキシアルキルジアルコキシシラン(例えば、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシランなどの(メタ)アクリロイルオキシC2−4アルキルC1−4アルキルジC1−4アルコキシシランなど)など]など}、重合性基を有するトリアルコキシシラン類、重合性基を有するトリアリールオキシシラン類、これらに対応するモノ乃至トリハロシラン類(例えば、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルジメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルメチルフェニルクロロシラン、アリルメチルジクロロシラン、アリルジメチルクロロシラン、アリルトリクロロシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジクロロシランなど)などが挙げられる。
【0049】
重合性基を有するトリアルコキシシラン類としては、アルケニル基を有するトリアルコキシシラン{例えば、アルケニルトリアルコキシシラン[例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリ(t−ブトキシ)シラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシランなどのC2−4アルケニルトリC1−4アルコキシシラン]、アルケニルトリ(アルコキシアルコキシ)シラン[例えば、ビニルトリ(2−メトキシエトキシ)シランなどのC2−4アルケニルトリ(C1−4アルコキシC2−4アルコキシ)シラン]、3−アリルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(ビニルフェニルアミノプロピル)トリメトキシシラン、γ−(ビニルベンジルアミノプロピル)トリメトキシシラン、γ−(ビニルフェニルアミノプロピル)トリエトキシシラン、γ−(ビニルベンジルアミノプロピル)トリエトキシシランなど}、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するトリアルコキシシラン{例えば、(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリアルコキシシラン[例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリプロポキシシランなどの(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリC1−4アルコキシシラン、好ましくは(メタ)アクリロイルオキシC2−4アルキルトリC1−4アルコキシシラン、さらに好ましくは(メタ)アクリロイルオキシC2−4アルキルトリC1−2アルコキシシランなど]、(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリ(アルコキシアルコキシ)シラン[例えば、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリス(2−メトキシエトキシ)シランなどの、好ましくは(メタ)アクリロイルオキシC2−4アルキルトリ(C1−4アルコキシC2−4アルコキシ)シラン、さらに好ましくは(メタ)アクリロイルオキシC2−4アルキルトリ(C1−2アルコキシC2−4アルコキシ)シランなど]、(メタ)アクリロイルオキシアルキルアミノアルキルトリアルコキシシラン[例えば、N−(3−(メタ)アクリロイルオキシ2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシランなどの(メタ)アクリロイルオキシアルキルアミノアルキルトリC1−4アルコキシシラン、好ましくは[(メタ)アクリロイルオキシC2−4アルキル]アミノC2−4アルキルトリC1−4アルコキシシランなど]、さらに好ましくは[(メタ)アクリロイルオキシC2−4アルキル]アミノC2−4アルキルトリC1−2アルコキシシランなど]など}などが挙げられる。
【0050】
重合性基を有するトリアリールオキシシラン類としては、例えば、アルケニル基を有するトリアリールオキシシラン[例えば、アルケニルトリアリールオキシシラン(例えば、ビニルトリフェノキシシランなどのC2−4アルケニルトリC6−10アリールオキシシラン)など]、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するトリアリールオキシシラン{例えば、(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリアリールオキシシラン[例えば、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリフェノキシシシランなどの(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリC6−10アリールオキシシラン、好ましくは(メタ)アクリロイルオキシC2−4アルキルトリC6−8アリールオキシシランなど]など}などが挙げられる。
【0051】
これらの有機ケイ素化合物は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0052】
これらの有機ケイ素化合物のうち、重合性基を有するアルコキシシシラン類、特に、(メタ)アクリロイル基を有するアルコキシシラン類[例えば、(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリC1−4アルコキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリ(C1−4アルコキシC2−4アルコキシ)シラン、(メタ)アクリロイルオキシアルキルアミノアルキルトリC1−4アルコキシシランなどの(メタ)アクリロイル基を有するトリアルコキシシランなど]が好ましい。
【0053】
アクリルシリコーン系樹脂において、重合性有機ケイ素化合物の割合(共重合割合)は、例えば、アクリル系単量体100重量部に対して、例えば、0.1〜100重量部(例えば、0.2〜50重量部)、好ましくは0.3〜30重量部(例えば、0.5〜20重量部)、さらに好ましくは1〜15重量部(例えば、1.2〜10重量部)、特に1.5〜7重量部(例えば、1.8〜5重量部)程度であってもよい。
【0054】
また、重合性有機ケイ素化合物の割合(共重合割合)は、例えば、アクリル系単量体100モルに対して、例えば、0.05〜50モル(例えば、0.1〜30モル)、好ましくは0.2〜20モル(例えば、0.3〜15モル)、さらに好ましくは0.5〜10モル重量部(例えば、0.8〜7モル)、特に1〜5モル(例えば、1.2〜4モル)程度であってもよい。
【0055】
アクリルシリコーン系樹脂は、カチオン性基を有していてもよい。アクリルシリコーン系樹脂にカチオン性を付与する方法としては、例えば、カチオン性基を有する単量体をアクリルシリコーン系樹脂の重合成分(共重合成分)として重合する方法などが挙げられる。すなわち、カチオン性基を有するアクリルシリコーン系樹脂は、カチオン性基を有する単量体を重合成分(共重合成分)とするアクリルシリコーン系樹脂であってもよい。
【0056】
カチオン性基を有する単量体としては、前記アクリル系単量体のうちカチオン性基を有するアクリル系単量体(又はカチオン性アクリル系単量体、例えば、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、これらの塩など)の他、カチオン性ビニル系単量体{例えば、カチオン性芳香族ビニル系単量体[例えば、ジアルキルアミノアルキルスチレン(例えば、4−(2−ジメチルアミノエチル)スチレン、4−(2−ジメチルアミノプロピル)スチレンなどのジC1−6アルキルアミノ−C2−4アルキルスチレン、好ましくはジC1−4アルキルアミノ−C2−3アルキルスチレン)又はその塩など]、窒素含有複素環式単量体(例えば、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、ビニルピロリドン又はこれらの塩など)などが挙げられる。
【0057】
カチオン性基を有する単量体は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0058】
これらのカチオン性基を有する単量体のうち、カチオン性基を有するアクリル系単量体(特に、ジC1−4アルキルアミノC2−4アルキル(メタ)アクリレートなどのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート又はその塩など)が好ましい。
【0059】
カチオン性を有するアクリルシリコーン系樹脂において、カチオン性単量体の割合は、例えば、アクリルシリコーン系樹脂を形成する単量体全体の0.1〜60重量%(例えば、0.5〜50重量%)、好ましくは1〜45重量%(例えば、2〜40重量%)、さらに好ましくは3〜35重量%、通常5〜30重量%(例えば、10〜25重量%)程度であってもよい。
【0060】
また、カチオン性単量体の割合は、例えば、アクリルシリコーン系樹脂を形成する単量体全体の0.05〜50モル%(例えば、0.1〜45モル%)、好ましくは0.3〜40モル%(例えば、0.5〜35モル%)、さらに好ましくは1〜30モル%、通常2〜25モル%(例えば、5〜20モル%)程度であってもよい。
【0061】
なお、カチオン性基を有する単量体を、カチオン性基を有するアクリル系単量体で構成する場合、カチオン性アクリル系単量体の割合は、アクリル系単量体全体の0.1〜60モル%(例えば、0.2〜50モル%)、好ましくは0.5〜45モル%(例えば、1〜40モル%)、さらに好ましくは1.5〜35モル%、通常2〜30モル%(例えば、7〜25モル%)程度であってもよい。
【0062】
また、アクリルシリコーン系樹脂は、非カチオン性の親水性基を有する樹脂であってもよい。アクリルシリコーン系樹脂に親水性基を付与する方法としては、例えば、非カチオン性の親水性基を有する単量体をアクリルシリコーン系樹脂の重合成分(共重合成分)として重合する方法、アクリルシリコーン系樹脂の変性により親水性基を導入する方法(例えば、エステル基を加水分解してヒドロキシル基又はカルボキシル基を生成させる方法など)などが挙げられる。
【0063】
通常、後者の方法により親水性基が導入された樹脂であってもよい。すなわち、非カチオン性の親水性基を有するアクリルシリコーン系樹脂は、非カチオン性の親水性基を有する単量体(単に、非カチオン性親水性単量体、親水性単量体などということがある)を重合成分(共重合成分)とするアクリルシリコーン系樹脂であってもよい。
【0064】
非カチオン性の親水性基を有する単量体(ノニオン性又はアニオン性親水性基を有する単量体)としては、前記アクリル系単量体のうち非カチオン性の親水性基を有するアクリル系単量体[又は非カチオン性の親水性アクリル系単量体、例えば、(メタ)アクリル酸、非カチオン性の親水性基を有する(メタ)アクリル酸エステル(ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステルなど)、非カチオン性(メタ)アクリルアミドなど]の他、カルボキシル基を有する単量体{又はカルボキシル基を有する非アクリル系単量体、例えば、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などのカルボキシル基又はその誘導体[例えば、エステル(例えば、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノオクチル、マレイン酸モノ2−エチルヘキシルなどのジカルボン酸のモノエステル)、酸無水物(無水マレイン酸など)、塩(アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩など)など]など}、ヒドロキシル基を有する単量体[又はヒドロキシル基を有する非アクリル系単量体、例えば、アルケノール類(例えば、アリルアルコールなどのC3−6アルケノール)、アルケニルフェノール類(例えば、4−ヒドロキシスチレン、4−ヒドロキシ−α−メチルスチレンのなどのC2−6アルケニルフェノール、ジヒドロキシスチレン、ビニルナフトールなど)など]、スルホン酸を有する単量体(又はスルホン酸基を有する非アクリル系単量体、例えば、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸など)、エーテル基を有する単量体(又はエーテル基を有する非アクリル系単量体、例えば、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソプロピルエーテルなどのアルキルビニルエーテル類など)などが挙げられる。
【0065】
これらの非カチオン性親水性基を有する単量体は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0066】
好ましい非カチオン性親水性基を有する単量体には、非カチオン性親水性基を有するアクリル系単量体、特に、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル[例えば、ポリC2−4アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート]などが挙げられる。
【0067】
非カチオン性の親水性基を有するアクリルシリコーン系樹脂において、非カチオン性の親水性基を有する単量体の割合は、例えば、アクリルシリコーン系樹脂を形成する単量体全体の0.1〜50重量%(例えば、0.5〜50重量%)、好ましくは1〜45重量%(例えば、2〜40重量%)、さらに好ましくは3〜35重量%、通常5〜30重量%(例えば、10〜25重量%)程度であってもよい。
【0068】
また、非カチオン性の親水性基を有する単量体の割合は、例えば、アクリルシリコーン系樹脂を形成する単量体全体の0.05〜50モル%(例えば、0.1〜45モル%)、好ましくは0.3〜40モル%(例えば、0.5〜35モル%)、さらに好ましくは1〜30モル%、通常2〜25モル%(例えば、5〜20モル%)程度であってもよい。
【0069】
なお、非カチオン性の親水性基を有する単量体を、非カチオン性基の親水性基を有するアクリル系単量体(例えば、ポリアルキレングリコール(モノ)メタアクリレートなどのヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル)で構成する場合、非カチオン性の親水性基を有するカチオン性アクリル系単量体の割合は、アクリル系単量体全体の0.1〜60モル%(例えば、0.2〜50モル%)、好ましくは0.5〜45モル%(例えば、1〜40モル%)、さらに好ましくは1.5〜35モル%、通常2〜30モル%(例えば、7〜25モル%)程度であってもよい。
【0070】
なお、アクリルシリコーン系樹脂は、アクリル系単量体および重合性基を有する加水分解縮合性有機ケイ素化合物を少なくとも重合成分とする樹脂であればよく、さらに他の共重合性単量体を重合成分とする樹脂であってもよい。
【0071】
他の共重合性単量体としては、前記例示の単量体(アクリル系単量体、カチオン性基を有する単量体、非カチオン性親水性基を有する単量体)以外の単量体、例えば、オレフィン(例えば、エチレン、プロピレンなどのC2−10オレフィンなど)、スチレン系単量体[例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなど]、ビニルエステル類(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニルなど)、アリルエステル類(例えば、酢酸アリルなど)、ハロゲン含有単量体(例えば、塩化ビニリデン、塩化ビニルなど)、シアン化ビニル系単量体(例えば、(メタ)アクリロニトリルなど)、非アクリル系の架橋性単量体(例えば、(メタ)アリルグリシジルエーテル、1−アリルオキシ−3,4−エポキシブタン、1−(3−ブテニルオキシ)−2,3−エポキシプロパン、4−ビニル−1−シクロヘキセンオキシドなどのエポキシ基を有する単量体など)などの疎水性非アクリル系単量体などが挙げられる。これらの他の共重合性単量体は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0072】
他の共重合性単量体を使用する場合、他の共重合性単量体(スチレン系単量体などの疎水性非アクリル系単量体)の割合は、アクリル系単量体100重量部に対して、0.1〜20重量部、好ましくは0.2〜10重量部、さらに好ましくは0.5〜5重量部程度であってもよい。
【0073】
また、アクリルシリコーン系樹脂は、部分的に縮合した部分縮合物であってもよい。このような部分縮合物は、前記重合性有機ケイ素化合物の加水分解縮合性基が部分的に縮合した部分縮合物であってもよく、前記重合性有機ケイ素化合物(又はその加水分解縮合性基)と重合性基を有しない加水分解縮合性有機ケイ素化合物[例えば、重合性基を有しないアルコキシシラン類(例えば、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのトリアルコキシシラン類、これらに対応するモノ、ジ又はテトラアルコキシシラン)、これらのアルコキシシラン類に対応する重合性基を有しないハロシラン類など]とが部分縮合した部分縮合物であってもよい。
【0074】
好ましいアクリルシリコーン系樹脂には、少なくとも親水性基を有する単量体(カチオン性基を有する単量体及び/又は非カチオン性の親水性基を有する単量体)を重合成分とするアクリルシリコーン系樹脂、特に、カチオン性基を有するアクリルシリコーン系樹脂[例えば、疎水性アクリル系単量体(例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル)と、重合性基を有する加水分解縮合性有機ケイ素化合物(例えば、重合性基を有するアルコキシシシラン類)と、カチオン性基を有する単量体(例えば、カチオン性基を有するアクリル系単量体)とを重合成分とするアクリルシリコーン系樹脂]が含まれ、特に、カチオン性基および非カチオン性親水性基を有するアクリルシリコーン系樹脂[例えば、疎水性アクリル系単量体と、重合性基を有する加水分解縮合性有機ケイ素化合物と、カチオン性基を有する単量体と、非カチオン性親水性基を有する単量体(例えば、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステルなど)とを重合成分とするアクリルシリコーン系樹脂など]などの少なくともカチオン性基を有するアクリルシリコーン系樹脂(又はカチオン性基を有する単量体を重合成分とするアクリルシリコーン系樹脂)が好ましい。
【0075】
カチオン性基および非カチオン性親水性基を有するアクリルシリコーン系樹脂において、カチオン性を有する単量体と非カチオン性の親水性基を有する単量体との割合は、例えば、前者/後者(重量比)=99/1〜1/99(例えば、95/5〜5/95)、好ましくは90/10〜10/90(例えば、85/15〜15/85)、さらに好ましくは80/20〜20/80(例えば、75/25〜25/75)、特に70/30〜30/70(例えば、65/35〜35/65)程度であってもよい。
【0076】
また、少なくともカチオン性基を有するアクリルシリコーン系樹脂において、疎水性アクリル系単量体と、カチオン性基を有する単量体で少なくとも構成された親水性基を有する単量体(特に、カチオン性基を有する単量体および非カチオン性親水性基を有する単量体)との割合は、前者/後者(重量比)=99/1〜10/90(例えば、97/3〜20/80)、好ましくは95/5〜30/70(例えば、92/8〜35/65)、さらに好ましくは90/10〜40/60(例えば、88/12〜45/55)、特に85/15〜50/50(例えば、83/37〜55/45)程度であってもよい。
【0077】
アクリルシリコーン系樹脂の重量平均分子量は、例えば、2000〜1000000、好ましくは5000〜500000、さらに好ましくは10000〜300000程度であってもよい。
【0078】
なお、本発明の組成物の調製に用いるアクリルシリコーン系樹脂の形態は、溶液又はエマルジョン(分散液)の形態であってもよい。分散液(特に、水性エマルジョン)において、アクリルシリコーン系樹脂粒子の平均粒子径は、例えば、0.01〜2μm、好ましくは0.01〜1μm、より好ましくは0.01〜0.5μm、さらにより好ましくは0.01〜0.3μm程度の範囲から選択できる。
【0079】
アクリルシリコーン系樹脂は、市販品を用いてもよく、合成したものを用いてもよい。アクリルシリコーン系樹脂は、例えば、アクリルシリコーン系樹脂の重合成分(例えば、アクリル系単量体および重合性基を有する加水分解縮合性有機ケイ素化合物)を、慣用の重合方法(例えば、溶液重合、乳化重合法など)により重合して得ることができる。
【0080】
特に、アクリルシリコーン系樹脂は、前記重合成分を溶液重合し、得られた樹脂溶液に水性溶媒(特に水)を添加することによりエマルジョン化(又は乳化)して水系樹脂組成物を得てもよい。例えば、各重合成分を混合し、適当な有機溶媒(エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類;トルエンなどの芳香族炭化水素類;メチルエチルケトンなどのケトン類など)中で重合させ、重合後の混合物に水性溶媒を添加してエマルジョンを得てもよい。
【0081】
なお、重合後の混合物に、塩基(例えば、トリエチルアミンなどのアルキルアミン、モルホリンなどの環状アミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン、ピリジン、アンモニアなど)や酸[例えば、無機酸(例えば、塩酸、硫酸など)、有機酸(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸などのカルボン酸、スルホン酸など)など]などを添加すると、水性溶媒に溶解又は分散させやすくなる場合が多い。
【0082】
エマルジョンは、前記有機溶媒を含んでいてもよく、蒸発などにより一部又は全部の有機溶媒が除去されていてもよい。有機溶媒の除去は、有機溶媒の沸点などに応じて、重合後、水性溶媒の添加前に行ってもよく、水性溶媒の添加後に行ってもよい。
【0083】
アクリルシリコーン系樹脂の溶液又は分散液(特に、水溶液又は水エマルジョン)において、アクリルシリコーン系樹脂の濃度(固形分濃度)は、例えば、3〜70重量%、好ましくは5〜60重量%(例えば、10〜50重量%)、さらに好ましくは15〜45重量%(例えば、20〜40重量%)程度であってもよい。
【0084】
また、アクリルシリコーン系樹脂の溶液又は分散液(特に、水溶液又は水エマルジョン)の粘度は、25℃において、1〜500mPa・s、好ましくは5〜300mPa・s、さらに好ましくは10〜200mPa・s程度であってもよい。
【0085】
なお、導電性組成物は、バインダーとして、アクリルシリコーン系樹脂に加えて、他のバインダーを含んでいてもよい。他のバインダー(アクリルシリコーン系樹脂でないバインダー)としては、特に限定されず、合成高分子[酢酸ビニル系樹脂(ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体など)、ビニルアルコール系樹脂(ポリビニルアルコールなど)、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂など]、天然高分子又はその誘導体[セルロース系樹脂(メチルセルロースなどのセルロースエーテル類など)、デンプン、カードラン、ゼラチンなど]、加水分解縮合性有機金属化合物(アルコキシシラン、チタンアルコキシドなどの金属アルコキシドなど)などが挙げられる。
【0086】
これらの他のバインダーは、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。他のバインダーを含んでいる場合、バインダー全体に対するアクリルシリコーン系樹脂の割合は、例えば、70重量%以上(例えば、75〜99.5重量%程度)、好ましくは80重量%以上(例えば、85〜99重量%程度)、さらに好ましくは90重量%以上(例えば、95〜98重量%程度)であってもよい。
【0087】
導電性組成物(又は分散液)において、導電性粒子とアクリルシリコーン系樹脂との割合は、前者/後者(重量比)=99/1〜5/95、好ましくは95/5〜10/90、さらに好ましくは93/7〜20/80程度であってもよい。
【0088】
本発明では、理由は定かではないが、導電性粒子とアクリルシリコーン系樹脂とを組み合わせることにより、安定性が高く、ポットライフの長い導電性組成物が得られる。特に、本発明の組成物は、導電性粒子の割合を多くしても、安定性を損なうことなく、長いポットライフを維持できるため、著しく高い導電性(例えば、表面固有抵抗率10〜10Ω程度のオーダー)を有する導電膜を形成するのに有用である。そのため、本発明の導電性組成物では、導電性粒子とアクリルシリコーン系樹脂との割合を、例えば、前者/後者(重量比)=99/1〜30/70(例えば、98/2〜35/65)、好ましくは97/3〜40/60、さらに好ましくは95/5〜45/55(例えば、94/6〜65/35)、特に93/7〜80/20(例えば、92/8〜85/15)程度にすることもできる。
【0089】
(溶媒)
前記のように、本発明の導電性組成物は、通常、アクリルシリコーン系樹脂を含む分散媒に、導電性粒子が分散した分散液の形態であってもよい。分散媒は、通常、アクリルシリコーン系樹脂で構成されたバインダーと、溶媒とで構成できる。溶媒としては、前記導電性粒子を分散(およびアクリルシリコーン系樹脂を分散又は溶解)可能な溶媒であればよく、例えば、水、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの脂肪族アルコール類、シクロヘキサノールなどの脂環族アルコール類など)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブなど)、カルビトール類(メチルカルビトール、エチルカルビトールなど)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどのジアルキルケトン、シクロヘキサノンなど)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、エーテル類(ジエチルエーテルなどの鎖状エーテル類、ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類など)、炭化水素類[例えば、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、オクタンなど)、脂環族炭化水素類(シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレンなど)、アミド類(ジメチルホルムアミドなど)などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で使用してもよく、2種以上組みあわせた混合溶媒として使用してもよい。
【0090】
これらの溶媒のうち、特に水性溶媒が好ましい。すなわち、前記分散液は、水性分散液であるのが好ましい。このような水性溶媒は、水単独であってもよく、水と水溶性有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、メチルセロソルブなどのセロソルブ類、カルビトール類、アセトンなどのケトン類など)とで構成してもよい。特に、水と低級アルカノール類(メタノール、エタノールなどのC1−3アルカノール、特にメタノール)とで溶媒を構成してもよい。水と水溶性有機溶媒との割合は、例えば、99/1〜1/99、好ましくは95/5〜5/95、さらに好ましくは90/10〜10/90(例えば、80/20〜20/80)程度であってもよい。
【0091】
なお、導電性組成物(分散液)において、導電性粒子の割合は、溶媒100重量部に対して、例えば、0.05〜30重量部、好ましくは0.1〜20重量部、さらに好ましくは0.3〜10重量部(例えば、0.5〜5重量部)程度であってもよい。また、分散液において、導電性粒子およびアクリルシリコーン系樹脂の総量の割合(固形分)は、溶媒100重量部に対して、例えば、0.1〜50重量部、好ましくは0.3〜40重量部、さらに好ましくは0.5〜30重量部(例えば、1〜10重量部)程度であってもよい。
【0092】
なお、導電性組成物(又はアクリルシリコーン系樹脂)は、必要に応じて、さらに他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、安定化剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、熱安定化剤など)、可塑剤、着色剤、充填剤、分散剤、帯電防止剤、抗菌剤又は防腐剤、粘度調整剤、消泡剤、架橋剤(例えば、ウレタン系架橋剤、イソシアネート架橋剤、メラミン系架橋剤、エポキシ系架橋剤など)、アミン系化合物(例えば、ポリエチレンイミンなどのポリアルキレンイミン)などを含有していてもよい。これらの他の成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0093】
このような本発明の導電性組成物(分散液)は、安定性が高く、ポットライフが長い。具体的には、後述するように、調製後の分散液を長期間(例えば、6ヶ月間)放置しても、形成する導電膜の特性を調製直後とほぼ同様にプラスチックフィルムに付与することができる。特に、前記のような高い割合で導電性粒子を含有させても、高い安定性を保持できるので、著しく高い導電性を有する導電性膜を形成するのに極めて実用的である。
【0094】
そのため、本発明には、導電性組成物(分散媒に導電性粒子が分散した分散液)の安定性を向上させる(又は分散液のポットライフを長くする)方法であって、前記分散媒をアクリルシリコーン系樹脂で構成することにより、分散液の安定性を向上させる方法も含まれる。
【0095】
(導電性組成物の製造方法)
本発明の導電性組成物は、慣用の方法を用いて調製(製造)でき、その調製方法は特に限定されない。例えば、分散液の形態の導電性組成物(導電性分散液)は、アクリルシリコーン系樹脂(又はアクリルシリコーン系樹脂で構成されたバインダー)を含む分散媒に、導電性粒子を分散させることにより調製できる。このような分散液の形態の導電性組成物は、例えば、(i)予め導電性粒子が分散した分散液を調製し、この分散液とアクリルシリコーン系樹脂とを混合することにより調製してもよく、(ii)アクリルシリコーン系樹脂、導電性粒子および溶媒を含む混合液を分散処理することにより調製してもよい。なお、導電性組成物の調製に用いるアクリルシリコーン系樹脂は、前記のように、水性溶媒を含む水性溶液又は水性エマルジョンなどの形態であってもよい。
【0096】
代表的には、導電性粒子の凝集を高いレベルで抑制するため、アクリルシリコーン系樹脂および溶媒を含む溶液又は分散液と、導電性粒子が溶媒に分散した分散液とを混合することにより導電性分散液を調製してもよい。なお、溶媒との混合や分散処理などにおいて、アクリルシリコーン系樹脂は、溶液、エマルジョン(分散液)などとして使用してもよい。
【0097】
また、導電性粒子が溶媒に分散した分散液は、市販品を使用してもよく、調製したものを使用してもよい。このような導電性粒子が溶媒に分散した分散液において、導電性粒子の濃度は、分散液全体の0.1〜40重量%(例えば、0.5〜35重量%)、好ましくは1〜30重量%、さらに好ましくは5〜25重量%(例えば、10〜20重量%)程度であってもよく、また、分散液のpHは、室温(例えば、25℃)において、4.5〜9、好ましくは5〜8.5、さらに好ましくは5.5〜8程度であってもよい。
【0098】
なお、アクリルシリコーン系樹脂を含む溶液(又は分散液)と導電性粒子が分散した分散液との混合は、室温又は加温下(例えば、40〜80℃程度)で行ってもよい。
【0099】
本発明の導電性組成物は、種々の基材に導電性膜を形成するのに有用である。このような導電性膜は、通常、基材又は基板に形成できる。特に、プラスチックフィルム(透明プラスチックフィルム)に前記導電性組成物で構成された導電性膜を形成すると、高い透明性および導電性を有する導電性フィルムを得ることができる。
【0100】
[導電性フィルム]
導電性フィルムは、プラスチックフィルム(又はプラスチックシート)と、このプラスチックフィルムに前記導電性組成物で形成された導電性膜とで構成されている。導電性膜は、プラスチックの少なくとも一方の面に形成すればよく、片面又は両面に形成してもよい。
【0101】
プラスチックフィルムを構成する樹脂としては、成膜可能な種々の樹脂、例えば、オレフィン系樹脂[例えば、ポリエチレン系樹脂(ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、アイオノマーなど)、ポリプロピレン系樹脂(例えば、ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体などのプロピレン含有80重量%以上のプロピレン系樹脂など)、ポリ−4−メチルペンテン−1などのポリオレフィンなど]、ポリエステル系樹脂[例えば、ポリアルキレンテレフタレート(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど)、ポリアルキレンナフタレート(ポリエチレン−2,6−ナフタレートなど)などのホモ又はコポリアルキレンアリレート、液晶性ポリエステルなど]、ポリアミド系樹脂(ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド6/66、ポリアミド66/610、ポリアミドMXD6など)、塩化ビニル系樹脂(ポリ塩化ビニルなど)、塩化ビニリデン系樹脂(塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニリデン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体など)、スチレン系樹脂(ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体など)、ポリビニルアルコール系樹脂(ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体など)、ポリイミド系樹脂(ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミドなど)、ポリカーボネート系樹脂(ビスフェノールA型ポリカーボネートなど)、ポリスルホン系樹脂(ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなど)、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂(ポリフェニレンスルフィドなど)、セルロース系樹脂(セルロースエステル系樹脂、セロハンなど)、ポリエーテルエーテルケトン、ポリパラキシレン、ポリアクリロニトリル、これらの種々の樹脂(ポリマー)の構成成分を含む共重合体などが例示される。これらのポリマーは、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。
【0102】
プラスチックフィルムは単一のフィルムであってもよく、複数の層で構成された複合フィルム(例えば、異種又は同種のプラスチックフィルム同士の積層体など)であってもよい。これらの基材フィルムのうち、例えば、オレフィン系樹脂(ポリプロピレンなどのポリプロピレン系樹脂など)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリC2−4アルキレンアリレート又はコポリエステルなどの芳香族ポリエステル系樹脂)、ポリカーボネート系樹脂が好ましく、特に、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂(特に、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエチレンテレフタレート系樹脂)で構成されたプラスチックフィルムが好ましい。
【0103】
プラスチックフィルムには、必要に応じて、安定化剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、熱安定化剤など)、結晶核剤、難燃剤、難燃助剤、充填剤、可塑剤、耐衝撃改良剤、補強剤、着色剤、分散剤、帯電防止剤、発泡剤、抗菌剤、滑剤(例えば、シリカ系微粉末、アルミナ系微粉末などの無機滑剤、ポリエチレン系微粉末、アクリル系微粉末などの有機滑剤など)、炭化水素系重合体(スチレン系樹脂、テルペン系樹脂、石油樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、クマロンインデン樹脂などのクマロン樹脂、フェノール樹脂、ロジン又はその誘導体やそれらの水添樹脂など)、ワックス類(高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸又はその塩、高級脂肪酸エステル、鉱物系、植物系などの天然ワックス、ポリエチレンなどの合成ワックスなど)などを添加してもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0104】
プラスチックフィルム(基材フィルム)は、未延伸フィルムであってもよいが、樹脂の種類などに応じて、延伸(一軸又は二軸)されていてもよい。例えば、オレフィン系樹脂(特に、ポリプロピレン系樹脂)やポリエステル系樹脂(特に、ポリエチレンテレフタレート系樹脂)で構成されたフィルムは、延伸処理された延伸フィルムであってもよい。延伸フィルムとしては、通常、二軸延伸フィルムを用いる場合が多い。延伸法としては、例えば、ロール延伸、圧延延伸、ベルト延伸、テンター延伸、チューブ延伸や、これらを組み合わせた延伸などの慣用の延伸法が適用できる。延伸倍率は、所望するフィルムの特性に応じて適宜設定でき、例えば、少なくとも一方の方向に1.5〜20倍、好ましくは2〜15倍程度である。
【0105】
プラスチックフィルムの厚み(平均厚み)は、用途に応じて適宜選択でき、通常、3〜200μm、好ましくは5〜100μm、さらに好ましくは7〜50μm、特に8〜30μm(例えば、10〜25μm)程度であってもよい。
【0106】
また、プラスチックフィルム(又はベースフィルム)は、用途にもよるが、通常透明フィルムであるのが好ましく、例えば、プラスチックフィルムの白色光線での全光線透過率は、厚みにもよるが、通常、70%以上(例えば、75〜99%程度)、好ましくは80%以上(例えば、85〜98%程度)、さらに好ましくは88%以上(例えば、89〜95%程度)であってもよい。
【0107】
なお、プラスチックフィルムの表面には、コロナ放電やグロー放電などの放電処理、クロム酸処理などの酸処理、焔処理などの表面処理を施してもよい。また、プラスチックフィルムの表面には、表面処理に代えて、又は表面処理とともに、下塗層、接着剤層、無機質層(例えば、金属又は金属酸化物層)などが形成されていてもよい。
【0108】
導電性フィルムにおいて、導電性膜の厚み(平均厚み、塗布厚み)は、用途に応じて適宜選択できるが、薄膜を形成する場合には、10μm以下の範囲から選択でき、例えば、5μm以下(例えば、0.01〜4μm)、好ましくは3μm以下(例えば、0.05〜2μm程度)、さらに好ましくは1μm以下(例えば、0.1〜0.8μm程度)であってもよい。
【0109】
導電性膜は、通常、前記導電性組成物(導電性分散液)をプラスチックフィルムに塗布(コーティング、コート)することにより形成できる。プラスチックフィルムに対する塗布は、慣用の方法、例えば、グラビアコーティング、リバースコーティング、ドクターコーティング、バーコーティング、ディップコーティングなどを利用できる。
【0110】
なお、プラスチックフィルムに前記導電性分散液を塗布した後、塗布面を、適当な温度(例えば、60〜130℃程度)で適当な時間(例えば、10秒〜3分程度)乾燥させてもよい。また、必要に応じて、塗布(および乾燥)後のフィルムをエージング処理してもよい。
【0111】
本発明の導電性フィルムは、高い導電性と透明性とを高いレベルで両立できる。例えば、前記導電性フィルムの表面固有抵抗率は、導電性膜の平均厚みが1μm以下(平均厚み0.05〜1μm、好ましくは0.1〜0.8μm、さらに好ましくは0.1〜0.6μm程度、例えば、0.15μm)である場合、1×10Ω以下(例えば、1×10〜7×10Ω程度)、好ましくは5×10Ω以下(例えば、5×10〜2×10Ω程度)、さらに好ましくは1×10Ω以下(例えば、1×10〜8×10Ω程度)、特に5×10Ω以下(例えば、5×10〜2×10Ω程度)であり、1×10Ω以下(例えば、2×10〜5×10Ω程度)にすることも可能である。
【0112】
なお、導電性フィルムの表面固有抵抗率は、前記導電性組成物における導電性粒子の割合を調整することにより調整できる。特に、本発明では、導電性粒子の割合を高めても、透明性や導電性組成物(導電性分散液)の安定性を損なうことがなく、著しく高い導電性を有する導電性フィルムを得ることができる。
【0113】
また、導電性フィルムの全光線透過率は、プラスチックフィルムの種類にもよるが、導電性膜の平均厚みが1μm以下(平均厚み0.05〜1μm、好ましくは0.1〜0.8μm、さらに好ましくは0.1〜0.6μm程度、例えば、0.15μm)である場合、例えば、80%以上(例えば、83〜99%程度)、好ましくは85%以上(例えば、86〜96%程度)、さらに好ましくは87%以上(例えば、88〜95%程度)である。特に、本発明では、導電性膜を形成しても透明性を損なうことがなく、導電性膜の形成前後における導電性フィルムの全光線透過率の差[すなわち、(プラスチックフィルムの全光線透過率)−(導電性膜が形成されたプラスチックフィルム(導電性フィルム)の全光線透過率)]は、例えば、5%以下(例えば、0〜4.5%程度)、好ましくは4%以下(例えば、0.1〜3.5%程度)、さらに好ましくは0.2〜3%(例えば、0.5〜2.8%)程度である。
【0114】
さらに、導電性フィルムのヘーズは、導電性膜の平均厚みが1μm以下(平均厚み0.05〜1μm、好ましくは0.1〜0.8μm、さらに好ましくは0.1〜0.6μm程度、例えば、0.15μm)である場合、例えば、7%以下(例えば、0.1〜6.5%程度)、好ましくは6%以下(例えば、0.2〜5.5%程度)、さらに好ましくは5%以下(例えば、0.5〜4.5%程度)である。また、導電性膜の形成前後における導電性フィルムのヘーズの差[すなわち、(プラスチックフィルムのヘーズ)−(導電性膜が形成されたプラスチックフィルム(導電性フィルム)のヘーズ)]は、例えば、3%以下(例えば、0〜2.5%)、好ましくは2%以下(例えば、0.01〜1.6%程度)、さらに好ましくは1.5%以下(例えば、0.03〜1.4%程度)、特に0.05〜1%(例えば、0.1〜0.8%)程度である。
【0115】
より具体的には、基材フィルムがポリエステル系樹脂(特に、ポリエチレンテレフタレート系樹脂)で構成されている導電性フィルムでは、導電性膜の平均厚みが1μm以下(平均厚み0.05〜1μm、好ましくは0.1〜0.8μm、さらに好ましくは0.1〜0.6μm程度、例えば、0.15μm)である場合、(i)表面固有抵抗率が、5×10Ω以下(例えば、1×10〜3×10Ω、好ましくは5×10〜1×10Ω、さらに好ましくは1×10〜5×10Ω、特に5×10〜1×10Ω程度)であり、かつ(ii)全光線透過率が、85%以上(例えば、86〜98%、好ましくは88〜96%、さら好ましくは89〜94%程度)であり、(iii)ヘーズが、5%以下(例えば、0.1〜4.5%、好ましくは0.5〜3.5%、さらに好ましくは1〜3%程度)であってもよい。
【0116】
また、基材フィルムがオレフィン系樹脂(特に、ポリプロピレンなどのポリプロピレン系樹脂など)で構成されている導電性フィルムでは、導電性膜の平均厚みが1μm以下(平均厚み0.05〜1μm、好ましくは0.1〜0.8μm、さらに好ましくは0.1〜0.6μm程度、例えば、0.15μm)である場合、(i)表面固有抵抗率が、5×10Ω以下(例えば、1×10〜3×10Ω、好ましくは5×10〜1×10Ω、さらに好ましくは1×10〜5×10Ω、特に5×10〜1×10Ω程度)であり、かつ(ii)全光線透過率が、85%以上(例えば、86〜96%、好ましくは87〜94%、さら好ましくは88〜92%程度)であり、(iii)ヘーズが、6%以下(例えば、0.5〜5.5%、好ましくは1〜5%、さらに好ましくは2〜4.5%程度)であってもよい。
【0117】
また、本発明の導電性組成物は、ポットライフが長く安定性が高いため、調製した後、長期に亘って放置した導電性組成物であっても、上記のような特性(導電性、透過率)を有する導電性膜を形成可能である。例えば、調製直後の前記導電性組成物で形成された導電性フィルムの表面固有抵抗率をA(Ω)、調製後6ヶ月経過後の前記導電性組成物で形成された導電性フィルムの表面固有抵抗率をB(Ω)とするとき、(B/A)×100(%)の値は、60%以上(例えば、65〜100%程度)、好ましくは70%以上(例えば、75〜99%程度)、さらに好ましくは80%以上(例えば、84〜98%程度)であり、本発明の導電性組成物の安定性は極めて高い。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明の導電性組成物(導電性塗料)は、導電性および透明性に優れた導電性膜を形成するのに有用である。また、ポットライフが長いため、長期に亘って保存でき、極めて実用性が高い。しかも、高い割合で導電性粒子を含有させても、安定性や透明性、さらには基板に対する密着性[又は耐摩擦性(又は耐擦傷性)]を損なうことがないため、非常に高い透明性と低い表面固有抵抗率とを両立できるとともに、基板に対する密着性を発揮して導電性膜を形成できる。
【0119】
そのため、本発明の導電性組成物(および導電性フィルム)は、非常に実用性が高く、導電性や帯電防止性が要求される種々の用途、例えば、帯電防止膜、電磁波シールド膜、透明電極、透明面発熱体などに好適に適用できる。
【実施例】
【0120】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0121】
(成分)
導電性分散液の調製において使用した成分を下記に示す。
【0122】
ATO水分散液:三菱マテリアル(株)製 TDL−1 固形分18%
アクリルシリコーン樹脂水溶液(AQ108):ダイセル化学工業(株)製 「アクアブリッド908」 固形分23%
ポリビニルアルコール樹脂(PVA):クラレ(株)製 「PVA208」
ゼラチン:一般試薬用ゼラチン
水:イオン交換水
メタノール:工業用メタノール。
【0123】
[物性評価]
また、実施例で得られたコーティングフィルムの物性(表面固有抵抗率、全光線透過率、ヘーズ)の測定は下記のようにして行った。
【0124】
(表面固有抵抗率)
得られたコーティングフィルムの表面固有抵抗率(Ω)を以下の条件で測定した。
【0125】
装置:測定装置、ADVANTEST社製、「R8340」
解析装置、ADVANTEST社製、「R12702A」
サンプルサイズ:100mm×100mm角
N数:N=3
測定環境:23℃、50%RH。
【0126】
(全光線透過率およびヘーズ)
得られたコーティングフィルムの全光線透過率(%)、ヘーズ(%)を以下の条件で測定した。
【0127】
装置:日本分光(株)製、「A−300」
N数:N=5
測定環境:23℃、50%RH。
【0128】
さらに、実施例で得られたコーティングフィルムの耐摩擦性、および実施例で得られた塗料組成物の安定性(塗料性能保持性)を下記のようにして評価した。
【0129】
(耐摩擦性)
コーティングフィルムの表面を人差し指の腹で擦り、擦った後の表面状態を以下の3段階で外観評価した。
【0130】
○:外観上変化無し
△:僅かに擦れによる跡が見られる
×:擦れにより明らかな跡・傷が見られる。
【0131】
(塗料性能保持性)
調製直後の塗料組成物をコーティングして得られた導電性フィルム(コーティングフィルム)の表面固有抵抗率をA(Ω)、調製後6ヶ月経過後の塗料組成物をコーティングして得られた導電性フィルムの表面固有抵抗率をB(Ω)とし、塗料性能保持率を以下のように算出した。
【0132】
塗料性能保持率(%)=B×100/A。
【0133】
(実施例1)
水/メタノール混合溶媒(重量比=1/1.11)とアクリルシリコーン樹脂水溶液とを、アクリルシリコーン系樹脂の固形分が1.49重量%となるように混合して十分に攪拌し、バインダー溶液を得た。そして、得られたバインダー溶液に、攪拌しながらATO粒子水分散液を、ATO粒子とアクリルシリコーン樹脂との重量比が90:10になるまで滴下し、その後十分に攪拌し、塗料組成物を得た。
【0134】
調製(又は調液)した塗料組成物を、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(フタムラ化学(株)製、通常透明グレード、厚み約12μm、全光線透過率92.8%)表面に、下記の条件で薄膜コーティングを行い、導電性フィルム(コーティングフィルム)を得た。そして、得られた導電性フィルムの表面固有抵抗率、全光線透過率、およびヘーズを測定するとともに、耐摩擦性および塗料性能保持性を評価した。
【0135】
(コーティング条件)
方法:卓上コート
バーコーター(番手):3番
塗布厚み:0.5μm
乾燥温度:100℃
乾燥時間:60秒。
【0136】
(実施例2)
ATO粒子とアクリルシリコーン樹脂との重量比を、90:10に代えて70:30とした以外は実施例1と同様にして導電性フィルムを作製し、表面固有抵抗率、全光線透過率、およびヘーズを測定するとともに、耐摩擦性および塗料性能保持性を評価した。
【0137】
(実施例3)
ATO粒子とアクリルシリコーン樹脂との重量比を、90:10に代えて50:50とした以外は実施例1と同様にして導電性フィルムを作製し、表面固有抵抗率、全光線透過率、およびヘーズを測定するとともに、耐摩擦性および塗料性能保持性を評価した。
【0138】
(比較例1)
アクリルシリコーン樹脂水溶液に代えて、ポリビニルアルコール樹脂を固形分30重量%の割合で溶解させた水溶液(PVA水溶液)を使用した以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを作製し、表面固有抵抗率、全光線透過率、およびヘーズを測定するとともに、耐摩擦性および塗料性能保持性を評価した。
【0139】
(比較例2)
アクリルシリコーン樹脂水溶液に代えて、ポリビニルアルコール樹脂を固形分30重量%の割合で溶解させた水溶液(PVA水溶液)を使用した以外は、実施例2と同様にして導電性フィルムを作製し、表面固有抵抗率、全光線透過率、およびヘーズを測定するとともに、耐摩擦性および塗料性能保持性を評価した。
【0140】
(比較例3)
アクリルシリコーン樹脂水溶液に代えて、ポリビニルアルコール樹脂を固形分30重量%の割合で溶解させた水溶液(PVA水溶液)を使用した以外は、実施例3と同様にして導電性フィルムを作製し、表面固有抵抗率、全光線透過率、およびヘーズを測定するとともに、耐摩擦性および塗料性能保持性を評価した。
【0141】
(比較例4)
アクリルシリコーン樹脂水溶液に代えて、ゼラチンを固形分30重量%の割合で溶解させた水溶液(ゼラチン水溶液)を使用した以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを作製し、表面固有抵抗率、全光線透過率、およびヘーズを測定するとともに、耐摩擦性および塗料性能保持性を評価した。
【0142】
(比較例5)
アクリルシリコーン樹脂水溶液に代えて、ゼラチンを固形分30重量%の割合で溶解させた水溶液(ゼラチン水溶液)を使用した以外は、実施例3と同様にして導電性フィルムを作製し、表面固有抵抗率、全光線透過率、およびヘーズを測定するとともに、耐摩擦性および塗料性能保持性を評価した。
【0143】
(実施例4)
実施例1において、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムに代えて、二軸延伸ポリプロピレン樹脂フィルム(東洋紡(株)製 通常グレード P3107 厚み約20μm、全光線透過率90.6%)を使用し、コーティングにおける乾燥温度を100℃から80℃に代えたこと以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを作製し、表面固有抵抗率、全光線透過率、およびヘーズを測定するとともに、耐摩擦性および塗料性能保持性を評価した。
【0144】
(実施例5)
実施例2において、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムに代えて、二軸延伸ポリプロピレン樹脂フィルム(東洋紡(株)製 通常グレード P3107 厚み約20μm、全光線透過率90.6%)を使用し、コーティングにおける乾燥温度を100℃から80℃に代えたこと以外は、実施例2と同様にして導電性フィルムを作製し、表面固有抵抗率、全光線透過率、およびヘーズを測定するとともに、耐摩擦性および塗料性能保持性を評価した。
【0145】
(実施例6)
実施例3において、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムに代えて、二軸延伸ポリプロピレン樹脂フィルム(東洋紡(株)製 通常グレード P3107 厚み約20μm、全光線透過率90.6%)を使用し、コーティングにおける乾燥温度を100℃から80℃に代えたこと以外は、実施例3と同様にして導電性フィルムを作製し、表面固有抵抗率、全光線透過率、およびヘーズを測定するとともに、耐摩擦性および塗料性能保持性を評価した。
【0146】
(比較例6)
比較例1において、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムに代えて、二軸延伸ポリプロピレン樹脂フィルム(東洋紡(株)製 通常グレード P3107 厚み約20μm、全光線透過率90.6%)を使用し、コーティングにおける乾燥温度を100℃から80℃に代えたこと以外は、比較例1と同様にして導電性フィルムを作製し、表面固有抵抗率、全光線透過率、およびヘーズを測定するとともに、耐摩擦性および塗料性能保持性を評価した。
【0147】
(比較例7)
比較例2において、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムに代えて、二軸延伸ポリプロピレン樹脂フィルム(東洋紡(株)製 通常グレード P3107 厚み約20μm、全光線透過率90.6%)を使用し、コーティングにおける乾燥温度を100℃から80℃に代えたこと以外は、比較例2と同様にして導電性フィルムを作製し、表面固有抵抗率、全光線透過率、およびヘーズを測定するとともに、耐摩擦性および塗料性能保持性を評価した。
【0148】
(比較例8)
比較例3において、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムに代えて、二軸延伸ポリプロピレン樹脂フィルム(東洋紡(株)製 通常グレード P3107 厚み約20μm、全光線透過率90.6%)を使用し、コーティングにおける乾燥温度を100℃から80℃に代えたこと以外は、比較例3と同様にして導電性フィルムを作製し、表面固有抵抗率、全光線透過率、およびヘーズを測定するとともに、耐摩擦性および塗料性能保持性を評価した。
【0149】
(比較例9)
比較例4において、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムに代えて、二軸延伸ポリプロピレン樹脂フィルム(東洋紡(株)製 通常グレード P3107 厚み約20μm、全光線透過率90.6%)を使用し、コーティングにおける乾燥温度を100℃から80℃に代えたこと以外は、比較例4と同様にして導電性フィルムを作製し、表面固有抵抗率、全光線透過率、およびヘーズを測定するとともに、耐摩擦性および塗料性能保持性を評価した。
【0150】
(比較例10)
比較例5において、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムに代えて、二軸延伸ポリプロピレン樹脂フィルム(東洋紡(株)製 通常グレード P3107 厚み約20μm、全光線透過率90.6%)を使用し、コーティングにおける乾燥温度を100℃から80℃に代えたこと以外は、比較例5と同様にして導電性フィルムを作製し、表面固有抵抗率、全光線透過率、およびヘーズを測定するとともに、耐摩擦性および塗料性能保持性を評価した。
【0151】
実施例及び比較例で得られた結果を表1及び表2に示す。
【0152】
【表1】

【0153】
【表2】

【0154】
表1および表2の結果から明らかなように、バインダーとしてアクリルシリコーン樹脂を使用すると、PVA又はゼラチンを使用した場合に比べて、非常に低い表面固有抵抗率で、かつ透明性に優れたコーティング膜が得られた。また、導電性粒子/バインダーの比率を変化させた場合、表面固有抵抗率はやや変化するものの、他のバインダーを用いた場合と比べてもその性能の低下は低く抑えられている。特に基材としてPETフィルムを用いることで、透明性がさらに向上していることも確認できる。
【0155】
また、バインダーにアクリルシリコーン樹脂を使用すると、コーティング膜を形成した際の実用的な密着性も他のバインダー使用時と比較して飛躍的に向上しており、より広範なプラスチックフィルムに対して使用可能となることが予想される。
【0156】
さらに、塗料組成物自体の液寿命(ポットライフ)も塗料性能保持率の比較からその効果は明白であった。すなわち、PVAやゼラチンを使用した場合、6ヶ月後には導電性塗料としての性能を全く示さなくなったが、アクリルシリコーンを使用した場合、6ヶ月後でも概ね導電性塗料としての性能を保持していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性粒子とアクリルシリコーン系樹脂とで構成された導電性組成物。
【請求項2】
アクリルシリコーン系樹脂を含む分散媒に、導電性粒子が分散した分散液である請求項1記載の導電性組成物。
【請求項3】
導電性粒子が、平均粒子径150nm以下であり、かつアンチモン含有酸化スズ、スズ含有酸化インジウム、酸化チタンおよび酸化亜鉛から選択された少なくとも一種である請求項1記載の導電性組成物。
【請求項4】
アクリルシリコーン系樹脂が、疎水性アクリル系単量体と、重合性基を有する加水分解縮合性有機ケイ素化合物と、カチオン性基を有する単量体とを少なくとも重合成分とする重合体である請求項1記載の導電性組成物。
【請求項5】
アクリルシリコーン系樹脂が、さらに、非カチオン性の親水性基を有する単量体を重合成分とする重合体である請求項4記載の導電性組成物。
【請求項6】
アクリルシリコーン系樹脂が、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、重合性基を有するアルコキシシラン類と、N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート又はその塩と、(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとを重合成分とする重合体である請求項1記載の導電性組成物。
【請求項7】
導電性粒子とアクリルシリコーン系樹脂との割合が、前者/後者(重量比)=97/3〜40/60である請求項1記載の導電性組成物。
【請求項8】
アクリルシリコーン系樹脂および水性溶媒で構成された分散媒に、導電性粒子が分散した水性分散液であって、(i)導電性粒子が、平均粒子径100nm以下であり、かつアンチモン含有酸化スズ及びスズ含有酸化インジウムから選択された少なくとも1種であり、(ii)アクリルシリコーン系樹脂が、疎水性アクリル系単量体と、重合性基を有するアルコキシシラン類と、カチオン性基を有する単量体で少なくとも構成された親水性基を有する単量体とを重合成分とし、かつ疎水性アクリル系単量体と親水性基を有する単量体との割合が、前者/後者(重量比)=90/10〜40/60である重合体であり、(iii)導電性粒子とアクリルシリコーン系樹脂との割合が、前者/後者(重量比)=95/5〜45/55である請求項1記載の導電性組成物。
【請求項9】
導電性粒子とアクリルシリコーン系樹脂との割合が、前者/後者(重量比)=93/7〜80/20である請求項8記載の導電性組成物。
【請求項10】
水性溶媒が、水とC1−3アルカノールとで構成されている請求項8記載の導電性組成物。
【請求項11】
分散媒に導電性粒子が分散した分散液の安定性を向上させる方法であって、前記分散媒をアクリルシリコーン系樹脂で構成することにより、分散液の安定性を向上させる方法。
【請求項12】
請求項1記載の導電性組成物で形成された導電性膜。
【請求項13】
プラスチックフィルムと、このプラスチックフィルムの少なくとも一方の面に形成された導電性膜とで構成された導電性フィルムであって、前記導電性膜が、請求項1記載の導電性組成物で形成されている導電性フィルム。
【請求項14】
プラスチックフィルムが、ポリエステル系樹脂、オレフィン系樹脂、又はポリカーボネート系樹脂で構成されている請求項13記載の導電性フィルム。
【請求項15】
プラスチックフィルムが、ポリプロピレン系樹脂又はポリエチレンテレフタレート系樹脂で構成された厚み8〜30μmのフィルムであり、導電性膜の厚みが0.05〜2μmである請求項13記載の導電性フィルム。
【請求項16】
導電性膜を平均厚み0.1〜0.6μmで形成したとき、表面固有抵抗率が5×10Ω以下であり、かつ導電性膜の形成前後において、全光線透過率の差が5%以下およびへーズの差が1.5%以下である請求項13記載の導電性フィルム。

【公開番号】特開2007−141521(P2007−141521A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−330456(P2005−330456)
【出願日】平成17年11月15日(2005.11.15)
【出願人】(505339058)ダイセルバリューコーティング株式会社 (13)
【Fターム(参考)】