説明

尿路感染症予防改善剤

【課題】副作用が少なく入手が容易であるため、長期間あるいは予防的に使用可能な、尿路感染症予防改善剤を提供する。
【解決手段】本発明の尿路感染症予防改善剤は、有効成分としてD−(+)−マンノースとクランベリー果実成分を含有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、D−(+)−マンノースと、クランベリー果実成分を含有する尿路感染症予防改善剤、および該尿路感染症予防改善剤を含有する飲食品、経口摂取用医薬品および飼料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
尿路感染症は、尿道、膀胱、腎臓など尿の通り道(尿路)に細菌が感染して炎症を起こす病気であり、膀胱炎、尿道炎、腎盂炎などの総称である。尿路感染症の症状としては、頻尿、排尿痛、尿の混濁、残尿感、膀胱付近の不快感などが挙げられる。尿路感染症に罹患した場合は、平均6.1日の症状の持続期間、平均2.4日の日常活動の制限、平均1.2日の就業制限、平均0.4日の臥床などが発生し、日常生活に影響を受けることが知られている(非特許文献1)。
【0003】
尿路感染症は、最も頻繁に起こる細菌感染症の一つであり、特に女性での罹患率が高いものである。例えば、米国では、一生涯において、女性の尿路感染症の罹患率は60%であると報告されている。尿路感染症のなかでも、急性膀胱炎は約半数が1年以内に再発すると言われている(非特許文献2)。
【0004】
尿路感染症に対する治療法は、ニューキノロン系薬剤等の抗生物質の投与が一般的である(非特許文献1)。しかしながら、このような抗生物質を使用する際には、副作用、耐性菌の発現が問題となっていた。また、薬事法の改正により、このような抗生物質の使用には処方箋が必要となったため、予防的な摂取や、長期間の摂取といったような日常的な摂取が不可能である場合があった。また、尿路感染症は、本来は診察を受けるべき疾患であるが、泌尿器科を訪れるのをためらい自然治癒を選択する場合もあった。
【0005】
D−(+)−マンノースは、細胞表面の糖鎖の構成成分であり、細胞間のコミュニケーションに重要な役割を担うものである。さらに、D−(+)−マンノースが大腸菌やサルモネラ菌等の有害細菌の腸管への定着を阻害することが見出されている(例えば、特許文献1など)。また、本発明者らは、D−(+)−マンノースを摂取した場合に、尿路感染症を予防改善する効果があることを、特願2010−67106号で見出している。しかし、その効果を得るためには多量のD−(+)−マンノースを摂取する必要があり、継続的な摂取は容易と言い難く、費用的な面からもより摂取量を少なくすることが求められていた。
【0006】
一方、クランベリーは、ツツジ科に属する常緑低木の総称のことで、その果実がソース、ジャム、ジュースなどに利用される。クランベリーの果実には尿路感染症予防効果が報告されており、欧米では民間療法の一つとして利用されている(非特許文献3)。その作用機序ははっきりとは分かってはいないが、以下のようなものであると報告されている。果実中に含まれるキナ酸が体内で代謝され馬尿酸として尿中に排出され尿を酸性にし、膀胱炎の主要原因菌である大腸菌の増殖を阻害、あるいは殺菌するためとする報告がある(非特許文献2)。
【0007】
しかしながら、クランベリーの果実は独特の強い酸味を有するため、大量に摂取することや継続的に摂取することが難しいという問題点があり、摂取量を少なくすることが求められていた。また、クランベリー果実が尿を酸性にするという作用を有するために、既に炎症を起こしている尿管壁を刺激し、症状を悪化させるといった問題も報告されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−38064号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】日本感染症学会・日本化学療法学会編集、協和企画社出版、「抗菌薬使用の手引き」、2001年
【非特許文献2】土屋紀子、「クランベリージュースの効用」、Yamanashi nursing journal、4巻1号、2005年
【非特許文献3】Avorn,P.N.,Monane,M.et al.:Reduction of bacteriuria and pyuria after ingestion of cranberry juice.J.Am.Med.associ.271:751−754,1994.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、こうした背景から、副作用や耐性菌の発現を抑制し、長期間において予防的に使用可能であり、さらには少量の摂取量であっても効果を十分に発揮する尿路感染症予防改善剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、このような課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、D−(+)−マンノースと、クランベリー果実成分とを組み合わせることで、尿路感染症予防改善効果が相乗的に増すことを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)D−(+)−マンノースと、クランベリー果実成分とを含有することを特徴とする尿路感染症予防改善剤。
(2)D−(+)−マンノースが、植物のヘミセルロース由来であることを特徴とする(1)の尿路感染症予防改善剤。
(3)植物のヘミセルロースが、マンナン、グルコマンナン、ガラクトマンナンから選ばれる少なくとも一つを構成成分とすることを特徴とする(1)または(2)の尿路感染症予防改善剤。
(4)ヘミセルロースを含有する植物が、パーム、ココヤシ、コンニャクイモから選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする(2)または(3)の尿路感染症予防改善剤。
(5)D−(+)−マンノースが、植物のヘミセルロースを加水分解することにより得られたものであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかの尿路感染症予防改善剤。
(6)(1)〜(5)のいずれかの尿路感染症予防改善剤を含有することを特徴とする飲食品。
(7)(1)〜(5)のいずれかの尿路感染症予防改善剤を含有することを特徴とする経口摂取用医薬品。
(8)(1)〜(5)のいずれかの尿路感染症予防改善剤を含有することを特徴とする飼料。
【発明の効果】
【0012】
本発明の尿路感染症予防改善剤は、副作用や耐性菌の発現を防止または抑制することができる。また、本発明の尿路感染症予防改善剤においては、有効成分(D−(+)−マンノースと、クランベリー果実成分)の入手が容易であり、かつ摂取量が各々の有効成分を単独で摂取する場合より少量であっても、尿路感染症予防改善効果を顕著に発揮するため、長期間において予防的に使用可能である。さらに、本発明の尿路感染症予防改善剤を含有する飲食品、経口摂取用医薬品、飼料を摂取することにより、ヒトや動物の尿路感染症を予防改善しうるという顕著な効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の尿路感染症予防改善剤は、D−(+)−マンノースと、クランベリー果実成分とを含有するものである。
【0014】
D−(+)−マンノースは六単糖の一種である。D−(+)−マンノースは、多糖の形で自然界に広く存在し、なかでも、植物のヘミセルロースに多く存在する。本発明において植物のヘミセルロースとは、植物細胞壁に含まれるセルロースを除いた水不溶の多糖類をいう。
【0015】
本発明で用いられるD−(+)−マンノースを得る方法は特に制限されず、植物ヘミセルロースや微生物多糖を加水分解して得る方法、グルコースまたはフルクトースを酵素あるいは化学的に異性化して得る方法、マンニトールを酸化して得る方法などが挙げられる。なかでも、植物ヘミセルロースを加水分解して得られるD−(+)−マンノースを用いることが、安全性およびコストの観点から、最も好ましい。植物ヘミセルロースを加水分解する場合には、酸、アルカリ、酵素を用いて加水分解したり、高温高圧の環境下で加水分解したりすることができる。このうち、副産物が少ない点、加水分解工程における設備の制限が少ない点、および環境への負荷が少ない点で、酵素を用いて加水分解し、D−(+)−マンノースを得ることが最も好ましい。
【0016】
植物のヘミセルロースとしては、特に限定されず、マンナン、グルコマンナン、ガラクトマンナン等を構成成分としたものが挙げられる。このうち、D−(+)−マンノースを容易に精製しうる観点から、マンナン、グルコマンナンがより好ましい。さらに、D−(+)−マンノースを多く含有する観点から、マンナンが最も好ましい。
【0017】
植物のヘミセルロースを加水分解するためには、例えば、パーム核ミール、ココヤシ、コーヒー豆、グアー豆(グアーガム)、コンニャクイモなどの植物のヘミセルロースに、マンナナーゼ、ガラクトマンナナーゼなどの酵素を作用させ、例えば、20〜70℃で、2〜72時間処理することが挙げられる。
【0018】
植物のヘミセルロースを加水分解してD−(+)−マンノースを得る際に、マンナンを用いる場合において、マンナンの原料としては、特に限定されないが、パーム(アブラヤシ)、ココヤシ、ゾウゲヤシ、コーヒー、サイハイラン、コンニャクイモ等が挙げられる。なかでも、マンナンを多く含有する観点から、パーム核が最も好ましい。
【0019】
上記のような手段で得られたD−(+)−マンノースは、液状組成物であり、通常多くの不純物が含まれている。本発明においては、該液状組成物をそのまま用いても良いが、摂取量をより少なくする観点から、精製して純度を高めたもの、あるいは固形状としたものを使用してもよい。D−(+)−マンノースを精製したり、固形状としたりするためには、固液分離、樹脂精製、膜精製、濃縮、噴霧乾燥、凍結乾燥、晶析等の公知の技術を用いることができる。
【0020】
本発明に用いられるクランベリー果実成分とは、ヨーロッパ、北アメリカ両大陸を原産とする小果樹であるクランベリーの果実成分である。具体的には、アメリカのウィンスコンシン州の原産でツツジ科スノキ属マクロカルポン種(Vaccinium macrocarpon)、あるいはオキソコカス種(Vaccinium oxycoccus)の樹高約20cm程度の果樹で、品種名はクラウリー(Crowley)、スティーブンス(Stevens)、ベンレアー(Benlear)、ピルグリム(Pilgrim)、アーリーブラック(Early black)、バークマン(Bergman)などのクランベリー果実から得られる成分を意味する。
【0021】
本発明において、クランベリー果実成分を得る方法は特に限定されるものでない。つまり、公知の技術、すなわち、前記クランベリー果実を、粉砕、破砕、摩砕、細断、抽出、固液分離、濃縮、滅菌、蒸発乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥等の技術を単独あるいは2つ以上を組み合わせて、クランベリーの果実成分を得ればよい。
【0022】
本発明に用いられるクランベリー果実成分の形態は特に限定されるものではないが、液状組成物は水分を含む分摂取量が多くなってしまうため、凍結乾燥や噴霧乾燥を経て得られた固形状の果実成分が好ましい。
【0023】
本発明の尿路感染症予防改善剤におけるD−(+)−マンノースの含有量は、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましい。D−(+)−マンノース含有量が10質量%未満であれば、尿路感染症予防改善効果に乏しい場合がある。つまり、本発明においては、D−(+)−マンノース含有量を10質量%以上とすることにより、有効成分であるD−(+)−マンノースおよびクランベリー果実成分を摂取した場合における、尿路感染症予防改善効果を相乗的に向上させることが可能となる。
【0024】
上記のD−(+)−マンノースの含有量の根拠は、1日に摂取するD−(+)−マンノースの量に存する。すなわち、1日に摂取するD−(+)−マンノースの含有量が、50mg〜5gとなるように、さらには250mg〜3gとなるように、本発明の尿路感染症予防改善剤を調製することが好ましい。
【0025】
本発明の尿路感染症予防改善剤におけるクランベリー果実成分の含有量は、乾燥重量換算で2質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。クランベリーから得られる組成物の含有量が2質量%未満であれば、尿路感染症予防改善効果に乏しい場合がある。
【0026】
上記のクランベリー果実成分の含有量の根拠は、1日に摂取するクランベリー果実成分の量に存する。すなわち、1日に摂取するクランベリー果実成分の含有量が、10mg〜2gとなるように、さらには100mg〜1gとなるように、本発明の尿路感染症予防改善剤を調製することが好ましい。
【0027】
本発明の尿路感染症予防改善剤は、本発明の効果を損なわない限り、薬学分野において公知慣用な担体を用いることにより、製剤化し、種々の剤形とすることができる。剤形としては、錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、カプセル剤、丸剤等の固形製剤;溶液剤、懸濁剤、乳剤などの液体製剤が挙げられる。なかでも、服用しやすさの観点から、細粒剤、散剤とすることが好ましい。
【0028】
固形製剤を調製する場合に用いられる担体としては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味矯臭剤、着色剤等が挙げられる。賦形剤としては、乳糖、白糖、ブドウ糖、マンニット、ソルビット、デキストリン、デンプン、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デキストラン、プルラン、無水ケイ酸、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム等が挙げられる。結合剤としては結晶セルロース、白糖、マンニトール、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム、デキストラン、プルラン、水、エタノール等が挙げられる。崩壊剤としてはデンプン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デキストリン、結晶セルロース等が挙げられる。滑沢剤としてはステアリン酸およびその金属塩、タルク、ホウ酸、脂肪酸ナトリウム塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、無水ケイ酸等が挙げられる。矯味矯臭剤としては白糖、橙皮、クエン酸、酒石酸等が挙げられる。
【0029】
液体製剤を調製する場合に用いられる担体としては、緩衝剤、安定化剤、矯味矯臭剤等が挙げられる。緩衝剤としてはクエン酸塩、コハク酸塩等が挙げられる。安定化剤としてはレシチン、アラビアゴム、ゼラチン、メチルセルロースが挙げられる。矯味矯臭剤としては、上記の経口用固形製剤を調製する際に用いられる矯味矯臭剤と同様のものが挙げられる。
【0030】
また、本発明の尿路感染症予防改善剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、乳酸菌製剤などの、他の薬効を有する薬剤を含有していてもよい。それにより、尿路感染症予防効果以外の効果を併存させたり、尿路感染症予防改善効果をより向上させたりすることができる。
【0031】
本発明の尿路感染症予防改善剤には、味質の改善を目的として、本発明の効果を損なわない範囲で糖類、糖アルコール類、塩類、油脂類、アミノ酸類、有機酸類、果汁、野菜汁、香料、アルコール類、グリセリン等を含有することができる。
【0032】
本発明の尿路感染症予防改善剤を摂取する方法は、特に限定されないが、経口投与により摂取することが好ましい。経口投与することにより、簡便に摂取できるという効果を奏する。経口投与するためには、例えば、上記した担体等を尿路感染症予防改善剤に添加した後、公知慣用の方法により、顆粒状、粒状、錠剤、カプセル、ゲル状、ペースト状、乳状、懸濁状、液状等の経口投与に適した形態に成形すればよい。例えば、該尿路感染症予防改善剤を含有する経口摂取用医薬品の形態として、経口投与に付することが好ましい。
【0033】
また、本発明の尿路感染症予防改善剤を、既存の飲料又は食品に含有させることにより飲食品とし、経口投与に付してもよい。既存の飲料又は食品としては、例えば、うどんやパスタ等の加工麺;ハム・ソーセージ等の食肉加工食品;かまぼこ・ちくわ等の水産加工食品;バター・粉乳・醗酵乳等の乳加工品;ゼリー・アイスクリーム等のデザート類;パン類、菓子類、調味料類等の加工食品;および、清涼飲料水、アルコール飲料類、果汁飲料、野菜汁飲料、乳飲料、炭酸飲料、コーヒー飲料等の飲料などが挙げられる。
【0034】
本発明の尿路感染症予防改善剤を既存の飲料又は食品に含有させることにより飲食品とする場合は、尿路感染症予防改善剤の形態は特に限定されない。例えば、飲料、グミ、キャンデーなどにおいては液体状の尿路感染症予防改善剤を、錠剤、顆粒、カプセルなどにおいては粉末状の尿路感染症予防改善剤を用いることができる。
【0035】
本発明の尿路感染症予防改善剤は、ヒトに対してだけではなく、動物に対しても、高い尿路感染症予防改善効果を発現しうるものである。従って、本発明の尿路感染症予防改善剤は動物の飼料に含有され、経口投与に付されてもよい。
【0036】
本発明の飲食品における尿路感染・予防改善剤の含有量は、特に限定されないが、一日の摂取量として、D−(+)−マンノースとして50mg〜5gとなるように、さらには250mg〜3gとなるように調製することが好ましい。かつ、クランベリーから得られる組成物の含有量が、10mg〜2gとなるように、さらには100mg〜1gとなるように調製することが好ましい。D−(+)−マンノースおよびクランベリー果実成分の含量がこの範囲を下回れば尿路感染症予防改善効果は期待できない場合がある。一方、この範囲を上回るとさらなる効果は望めず、摂取量が多すぎて服用困難になる等の問題が生じる恐れがある。
【0037】
さらに、本発明の尿路感染症予防改善剤においては、上記範囲において、D−(+)−マンノースとクランベリー果実成分の含有量比(質量比)が、0.5/1〜15/1であることが好ましく、1/1〜12/1であることがより好ましく、1.5/1〜10/1であることがいっそう好ましい。D−(+)−マンノースとクランベリー果実成分の含有量比(質量比)を上記割合とすることにより、よりいっそうの相乗効果が奏される。その理由は明らかではないが、D−(+)−マンノースが細菌の接着を阻害することで、クランベリー果実成分が尿路感染症に対する予防改善作用がしやすくなることによるものと推測される。
【0038】
本発明の尿路感染症予防改善剤、飲食品、経口摂取用医薬品または飼料を、ヒトや動物に摂取させることにより、高い尿路感染症予防改善効果を発現させることができる。
【実施例】
【0039】
(実施例1)
パーム核を粉砕、圧搾することにより得られたパーム核ミール1kgに、マンナナーゼ(新日本化学社製、商品名「スミチームAC」)5g、水5Lおよびシュウ酸20gを加え、60℃で48時間反応させ、酵素失活させた。その後、珪藻土50gを添加して、濾紙を用いて吸引濾過を行い、清澄な濾液を得た。得られた濾液を強酸性陽イオン交換樹脂(三菱化学社製、樹脂名「ダイヤイオンSK1B」)に通液させ、次いで、弱塩基性陰イオン交換樹脂(三菱化学社製、樹脂名「ダイヤイオンWA10」)に通液させてイオン性物質を除去した後、エバポレーターで減圧濃縮を行い、D−(+)−マンノースを46質量%含有する組成物Aを得た。
【0040】
次に、100gの組成物Aに、クランベリー果実成分含有組成物(Ocean Spray Cranberries社製、商品名「50MX Cranberry Powder」、クランベリー果実成分50%含有)を50g加え、さらに水50gを加えて、D−マンノースとクランベリー果実成分含有組成物を含む尿路感染症予防改善剤(組成物B:D−マンノースの含有割合:23質量%、クランベリー果実成分の含有割合:12.5質量%)を得た。
【0041】
(尿路感染症改善試験1)
30人の膀胱炎再発頻度の高い女性被験者を10人1群とし、A群、B群およびC群の3群にわけた。A群10人には、実施例1で得られた組成物Aを1.1g[D−(+)−マンノースの摂取量:0.5g]を、B群10人には、クランベリー果汁粉末を560mg[クランベリー果汁(乾燥重量換算)の摂取量:280mg]を、C群10人には、実施例1で得られた組成物Bを2.2g[D−(+)−マンノースの摂取量:0.5g、クランベリー果汁(乾燥重量換算)の摂取量:280mg]朝晩の1日2回、100gの水に溶解した後経口によりそれぞれ摂取させた。3か月間摂取を継続し、膀胱炎の再発頻度変化を調べた。
【0042】
評価は、摂取開始以前と摂取開始以後とを比較することにより、以下の5段階で行った。
+2:膀胱炎がほとんど発症しなくなった
+1:膀胱炎がやや発症しにくくなった
0:変化が無かった
−1:膀胱炎がやや発症しやすくなった
−2:膀胱炎が発症しやすくなった
評価結果を表1に示す。本試験中、A群を比較例1、B群を比較例2、C群を実施例1とする。なお、本試験中A群で1名、B群で3名、C群で1名試験を途中で中止した。B群、C群の脱落者はすべてクランベリーの味が合わなかったためであった。
【0043】
【表1】

【0044】
表1から明らかなように、D−(+)−マンノースとクランベリーから得られる組成物とを含有する組成物を摂取することで、各々を単独で摂取する場合よりも尿路感染症予防改善効果が相乗的に増すことがわかった。
【0045】
(実施例2)
クランベリー果実成分含有組成物(Ocean Spray Cranberries社製、商品名「50MX Cranberry Powder」、クランベリー果実成分50%含有)10gを、150gの実施例1で得られた組成物Aに加え、さらに水40gを加えて、D−マンノースとクランベリー果汁を含む尿路感染症予防改善剤(組成物C:D−マンノースの含有量:31質量%、クランベリー果汁の含有量:2.5質量%)を得た。
【0046】
(尿路感染症改善試験2)
30人の膀胱炎再発頻度の高い女性被験者を10人1群とし、A群、B群およびC群の3群にわけた。A群10人には、実施例1で得られた組成物Aを1.7g[D−(+)−マンノースの摂取量:0.8g]を、B群10人には、クランベリー果実成分含有組成物125mg[クランベリー果実成分(乾燥重量換算)の摂取量:63mg]を、C群10人には、実施例2で得られた組成物Cを2.5g[D−(+)−マンノースの摂取量:0.8g、クランベリー果実成分(乾燥重量換算)の摂取量:63mg]朝晩の1日2回、100gの水に溶解した後経口により摂取させた。3か月間摂取を継続し、膀胱炎の再発頻度変化を調べた。
【0047】
評価は、摂取開始以前と摂取開始以後とを比較することにより、以下の5段階で行った。
+2:膀胱炎がほとんど発症しなくなった
+1:膀胱炎がやや発症しにくくなった
0:変化が無かった
−1:膀胱炎がやや発症しやすくなった
−2:膀胱炎が発症しやすくなった
評価結果を表2に示す。本試験中、A群を比較例3、B群を比較例4、C群を実施例2とする。なお、本試験中A群で1名、B群で0名、C群で1名試験を途中で中止した。C群の脱落者はクランベリーの味が合わなかったためではなかった。
【0048】
【表2】

【0049】
表2から明らかなように、D−(+)−マンノースとクランベリーを含有する尿路感染症予防改善剤を摂取することで、各々を単独で摂取する場合よりも尿路感染症予防改善効果が相乗的に増すことがわかった。
【0050】
(実施例3)
クランベリー果実成分含有組成物(Ocean Spray Cranberries社製、商品名「50MX Cranberry Powder」、クランベリー果実成分50%含有)50gを、25gの実施例1で得られた組成物Aに加え、さらに水125gを加えて、D−マンノースとクランベリー果汁を含む組成物D(D−マンノースの含有量:5.8質量%、クランベリー果汁の含有量:12.5質量%)を得た。
【0051】
(尿路感染症改善試験3)
30人の膀胱炎再発頻度の高い女性被験者を5人1群とし、A群、B群およびC群の3群にわけた。A群5人には、実施例1で得られた組成物Aを250mg[D−(+)−マンノースの摂取量:115mg]を、B群5人には、クランベリー果実成分含有組成物を、500mg[クランベリー果実成分(乾燥重量換算)の摂取量:250mg]を、C群5人には、実施例3で得られた組成物Dを2g[D−(+)−マンノースの摂取量:115mg、クランベリー果実成分(乾燥重量換算)の摂取量:250mg]朝晩の1日2回、100gの水に溶解した後経口により摂取させた。3か月間摂取を継続し、膀胱炎の再発頻度変化を調べた。
【0052】
評価は、摂取開始以前と摂取開始以後とを比較することにより、以下の5段階で行った。
+2:膀胱炎がほとんど発症しなくなった
+1:膀胱炎がやや発症しにくくなった
0:変化が無かった
−1:膀胱炎がやや発症しやすくなった
−2:膀胱炎が発症しやすくなった
評価結果を表3に示す。本試験中、A群を比較例5、B群を比較例6、C群を実施例3とする。
【0053】
【表3】

【0054】
表3から明らかなように、D−(+)−マンノースとクランベリーから得られる組成物とを含有する組成物を摂取することで、各々を単独で摂取する場合よりも尿路感染症予防改善効果が相乗的に増すことがわかった。
【0055】
(実施例4)
クランベリー果実成分含有組成物(Ocean Spray Cranberries社製、商品名「50MX Cranberry Powder」、クランベリー果実成分50%含有)20gを、110gの実施例1で得られた組成物Aに加え、さらに水70gを加えて、D−マンノースとクランベリー果汁を含む組成物E(D−マンノースの含有量:25質量%、クランベリー果汁の含有量:5質量%)を得た。
【0056】
(尿路感染症改善試験4)
30人の膀胱炎再発頻度の高い女性被験者を5人1群とし、A群、B群およびC群の3群にわけた。A群5人には、実施例1で得られた組成物Aを1.1g[D−(+)−マンノースの摂取量:0.5g]を、B群5人には、クランベリー果実成分含有組成物を、200mg[クランベリー果実成分(乾燥重量換算)の摂取量:100mg]を、C群5人には、実施例4で得られた組成物Eを2g[D−(+)−マンノースの摂取量:0.5g、クランベリー果実成分(乾燥重量換算)の摂取量:100mg]朝晩の1日2回、100gの水に溶解した後経口により摂取させた。3か月間摂取を継続し、膀胱炎の再発頻度変化を調べた。
【0057】
評価は、摂取開始以前と摂取開始以後とを比較することにより、以下の5段階で行った。
+2:膀胱炎がほとんど発症しなくなった
+1:膀胱炎がやや発症しにくくなった
0:変化が無かった
−1:膀胱炎がやや発症しやすくなった
−2:膀胱炎が発症しやすくなった
評価結果を表4に示す。本試験中、A群を比較例7、B群を比較例8、C群を実施例4とする。
【0058】
【表4】

【0059】
表4から明らかなように、D−(+)−マンノースとクランベリーから得られる組成物とを含有する組成物を摂取することで、各々を単独で摂取する場合よりも尿路感染症予防改善効果が相乗的に増すことがわかった。
【0060】
(実施例5)
ドリンク剤の調製
実施例2で得られた組成物C 1500mg
アスコルビン酸(BASF武田ビタミン社製、商品名「L−アスコルビン酸」(ビタミンC)) 500mg
L−システイン塩酸塩(協和発酵バイオ社製、商品名「L−システイン塩酸塩協和」) 50mg
塩酸ピリドキシン(BASF武田ビタミン社製、商品名「ビタミンB6」) 40mg
リボフラビン(BASF武田ビタミン社製、商品名「リボフラビンFP」) 10mg
ビオチン(DSMニュートリション社製、商品名「ビオチン(結晶)」) 0.05mg
アスパルテーム(味の素ヘルシーサプライ社製、商品名「PAL SWEET DIET」) 5mg
クエン酸(磐田化学工業社製、商品名「クエン酸(結晶)」) 100mg
レモンフレーバー(パイオニア企画社製、商品名「レモンエッセンス」) 0.2ml
上記の成分を精製水に溶解して、200mlのドリンク剤を調製することができた。
【0061】
(実施例6)
ソフトカプセルの調製
実施例2で得られた組成物C 200mg
オリーブオイル(サミット製油社製、商品名「エクストラバージンオリーブオイル」) 250mg
グリセリン脂肪酸エステル(理研ビタミン社製、「商品名ポエムS」) 25mg
ミツロウ(三木化学工業社製、商品名「ビースワックス」) 25mg
上記の成分とゼラチン50mgとを混合して、全体として500mgのソフトカプセルを得ることができた。
【0062】
(実施例7)
キャンデーの調製
砂糖300g、水飴250g、実施例2で得られた100gの組成物Cに水を加えて加熱溶解し、150℃にて平鍋で煮詰めた。その後、冷却盤に移して冷却させ、さらに混練した。この混練物を、スタンピング成型機(ミハマ製作所社製、商品名「スタンピングマシンMPM30」)を用いて成型して、質量4gのキャンデーを120個得ることができた。
【0063】
(実施例8)
飼料の調製
実施例2で得られた組成物C 10g
黄色トウモロコシ(カーギル社製) 690g
大豆粕(兼松社製) 160g
魚粉(兼松社製) 27g
アルファルファミール(兼松社製) 20g
炭酸カルシウム(関東化学社製) 65g
リン酸カルシウム(東洋電化社製、商品名「エイティーン」) 20g
食塩(赤穂化成社製、商品名「赤穂の天塩」) 3g
ビタミン・ミネラル・アミノ酸プレミックス(コーキン化学社製、商品名「アミノスター」) 5g
上記の成分をブレンダーにてよく混合して、鶏用の飼料1kgを調製することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
D−(+)−マンノースと、クランベリー果実成分とを含有することを特徴とする尿路感染症予防改善剤。
【請求項2】
D−(+)−マンノースが、植物のヘミセルロース由来であることを特徴とする請求項1記載の尿路感染症予防改善剤。
【請求項3】
植物のヘミセルロースが、マンナン、グルコマンナン、ガラクトマンナンから選ばれる少なくとも一つを構成成分とすることを特徴とする請求項1または請求項2記載の尿路感染症予防改善剤。
【請求項4】
ヘミセルロースを含有する植物が、パーム、ココヤシ、コンニャクイモから選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする請求項2または3に記載の尿路感染症予防改善剤。
【請求項5】
D−(+)−マンノースが、植物のヘミセルロースを加水分解することにより得られたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の尿路感染症予防改善剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の尿路感染症予防改善剤を含有することを特徴とする飲食品。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の尿路感染症予防改善剤を含有することを特徴とする経口摂取用医薬品。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかに記載の尿路感染症予防改善剤を含有することを特徴とする飼料。

【公開番号】特開2012−171899(P2012−171899A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34068(P2011−34068)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】