説明

屋内廃棄物処分場のガス検知システム

【課題】 設置が容易なガス検知システムを提供する。
【解決手段】 屋内廃棄物処分場のガスを採取するガス採取手段20と、ガス採取手段20を、水平面内を移動可能に支持する水平移動手段2と、水平移動手段2に設けられ、ガス採取手段20を上下方向に移動させる上下移動手段8と、水平移動手段2に設けられ、ガス採取手段20が上方に移動することにより、ガス採取手段20と接続された状態でガス採取手段20が採取したガスを回収して検知し、該検知結果を示すデータを送信するガス検知手段15と、ガス検知手段15から送信されたデータを受信する管理手段35とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋内廃棄物処分場のガス検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、廃棄物処分場の廃棄物から発生するガスによって周辺の環境が汚染されるのを防止するため、建屋内に廃棄物を貯留する処分ピットを設けた閉鎖式廃棄物処分場(屋内廃棄物処分場)が建設されている。
【0003】
屋内廃棄物処分場は、建屋内に設けた処分ピット内に廃棄物を貯留しているため、廃棄物から発生するガスが周辺に拡散して周辺環境を汚染するおそれはない。しかし、建屋内で各種の作業を行う作業者が危険に晒されることがないようにするため、廃棄物から発生するガスの種類及びその濃度を検知し、その検知したデータに基づいて、適切な対策(警報を発する、換気装置を作動させる等の対策)を採り、作業者の安全を確保する必要がある。
【0004】
特許文献1には、屋内廃棄物処分場の廃棄物から発生するガスの種類及びその濃度を検知するガス検知システムの一例が記載されている。
このガス検知システムは、建屋内の天井部の中央部及び両側部に巻き取り装置を垂直方向及び水平方向に移動可能に設け、建屋内の天井部及び壁部に沿ってガスサンプリング管を設置し、このガスサンプリング管を巻き取り装置によって支持して垂直方向及び水平方向に移動可能とし、ガスサンプリング管の一端の吸引口を廃棄物に対向させ、他端を建屋外に引き出して、建屋と別棟のモニタリング室内に設置した吸引用ポンプに接続したものである。
【0005】
このような構成のガス検知システムにあっては、ポンプを作動させて、ガスサンプリング管の一端の吸引口を介してガスを吸引し、このガスをガスサンプリング管を介してモニタリング室内のガス検知器に導き、ガス検知器のセンサでガスの種類及びその濃度を検知し、この検知結果を示したデータをモニタリング室内の制御部に送り、取得したデータに基づいて制御部を通じて警報を発する等の対策を実行することにより、作業者の安全を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−186024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に記載のガス検知システムにあっては、ガスサンプリング管の全長が非常に長いため、発生するガスの種類及びその濃度を検知し、その検知結果に基づいて警報を発する等の対策を採るまでに時間がかかり、作業者の安全を確保することが困難になることがある。
【0008】
また、ガスサンプリング管の設置に非常に手間がかかる上、ガスサンプリング管の内部に粉塵等が溜り易く、その粉塵等を取り除くためのメンテナンスが必要になり、その作業に手間がかかる。
【0009】
しかも、巻き取り装置からガスサンプリング管を繰り出し、又は巻き取る際に、ガスサンプリング管が錯綜するおそれがあり、ガスサンプリング管が破損する等のトラブルが発生することがある。
【0010】
さらに、ガスサンプリング管の全長が長いため、ガスを吸い込む際に大きな負圧が生じてガスサンプリング管が変形し、ガスの吸い込みが困難になる。また、ガスサンプリング管が変形した状態で巻き取り装置に巻き取られるため、更にガスの吸引が困難になる。
【0011】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、ガスサンプリング管を用いることなく、発生するガスの種類及びその濃度の検知を行えるとともに、構造が簡単でメンテナンスが容易な屋内廃棄物処分場のガス検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記のような課題を解決するために、本発明は、以下のような手段を採用している。
すなわち、本発明は、屋内廃棄物処分場のガス検知システムであって、前記屋内廃棄物処分場内のガスを採取するガス採取手段と、該ガス採取手段を上下方向に移動させる上下移動手段と、前記上下移動手段を水平面内を移動可能に支持する水平移動手段と、前記水平移動手段に設けられ、上方に移動した前記ガス採取手段と接続された状態で前記ガス採取手段が採取したガスを回収して検知し、該検知結果を示すデータを送信するガス検知手段と、前記ガス検知手段から送信されたデータを受信する管理手段とを備えていることを特徴とする。
【0013】
本発明の屋内廃棄物処分場のガス検知システムによれば、水平移動手段及び上下移動手段によってガス採取手段を水平方向及び上下方向の任意の位置に移動させることができるので、屋内廃棄物処分場内の各部において、廃棄物から発生するガスを採取することができる。そして、上下移動手段により、ガス採取手段を上昇させて、ガス採取手段とガス検知手段とを接続された状態とし、ガス採取手段が採取したガスをガス検知手段で回収することにより、回収したガスの種類及びその濃度を検知することができ、この検知した検知結果を示すデータを管理手段に送信することができる。
このように、ガスサンプリング管を用いることなく、ガス採取手段が採取したガスをガス検知手段に導くことができるので、ガス採取手段が採取したガスをガス検知手段に導く時間を短くすることができ、ガス検知手段からの検知結果に基づいて管理手段によって警報を発する等の対策を速やかにとることができる。
また、ガスサンプリング管の全長が長いため、ガスを吸い込む際に大きな負圧が生じてガスサンプリング管が変形し、ガスの吸い込みが困難になるようなことはなく、さらに、ガスサンプリング管が変形した状態で巻き取り装置に巻き取られるため、更にガスの吸引が困難になるようなことはなく、発生するガスを確実に採取して、そのガスの種類および濃度を検知することができる。
【0014】
また、本発明は、屋内廃棄物処分場のガス検知システムであって、前記屋内廃棄物処分場内を遠隔操作により飛行可能な飛行体と、該飛行体に設けられるとともに、前記屋内廃棄物処分場内のガスを採取するガス採取手段と、前記屋内廃棄物処分場内又は前記屋内廃棄物処分場外に設けられるとともに、前記ガス採取手段と接続された状態で前記ガス採取手段が採取したガスを回収して検知し、該検知結果を示すデータを送信するガス検知手段と、前記ガス検知手段から送信されたデータを受信する管理手段とを備えていることを特徴とする。
【0015】
本発明の屋内廃棄物処分場のガス検知システムによれば、ガス検知手段を屋内廃棄物処分場内又は屋内廃棄物処分場外の任意の位置に設置することができるので、設計の自由度の幅を広げることができる。また、遠隔操作によって飛行体を飛行させることにより、ガス採取手段を任意の位置に位置決めすることができるので、ガス採取手段の任意の位置への位置決めに複雑な機構を要する必要がなく、設備費を大幅に削減することができる。
【0016】
さらに、本発明において、前記ガス採取手段は、内部にガスの貯留室を有するとともに、該貯留室の内外を連通するガスの流入口と流出口とを有する容器と、前記流入口及び前記流出口に設けられる弁とを備え、前記ガス検知手段は、前記ガス手段が採取したガスを回収し、該回収したガスの種類及びその濃度を検知するとともに、ガスの流入口と流出口とを有する検知部と、該検知部が検知した検知結果を示すデータを送信する送信部とを備え、前記ガス採取手段の前記流出口と前記ガス検知手段の前記流入口とが相互に接続、分離可能に構成されていることを特徴とする。
【0017】
本発明の屋内廃棄物処分場のガス検知システムによれば、ガス採取手段の流出口とガス検知手段の流入口とを相互に接続することにより、ガス採取手段が採取したガスをガス検知手段で回収し、検知することができる。従って、ガスサンプリング管を使用したものに比べて、ガスを採取してから検知するまでの時間を短くすることができるので、ガスの検知結果に基づいた適切な対策を速やかにとることができる。
【0018】
さらに、本発明において、前記ガス採取手段を前記ガス検知手段に向けて所定位置まで移動させることにより、前記ガス採取手段が前記ガス検知手段に接続され、前記ガス採取手段を前記ガス検知手段から離間する方向に移動させることにより、前記ガス採取手段が前記ガス検知手段から分離されることとしてもよい。
【0019】
本発明の屋内廃棄物処分場のガス検知システムによれば、ガス採取手段をガス検知手段に向けて所定位置まで移動させることにより、ガス採取手段がガス検知手段に接続されて、ガス採取手段で採取したガスがガス検知手段に回収されて検知され、ガス採取手段をガス検知手段から離間する方向に移動させることにより、ガス採取手段がガス検知手段から分離されることになる。
【0020】
さらに、本発明において、前記ガス採取手段は、前記流入口を介して前記容器の前記貯留室内にガスを吸引するポンプを備えていることとしてもよい。
【0021】
本発明の屋内廃棄物処分場のガス検知システムによれば、ポンプを作動させることにより、流入口を介して容器の貯留室内にガスを吸引することができるので、各種のガスを容器の貯留室内に確実に吸引して貯留させることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上、説明したように、本発明の屋内廃棄物処分場のガス検知システムによれば、屋内廃棄物処分場内の各部において、ガス採取手段によって廃棄物から発生するガスを採取し、このガス採取手段とガス検知手段とを接続することにより、ガス採取手段で採取したガスをガス検知手段で回収し、回収したガスの種類及びその濃度を検知することができ、この検知結果を示すデータを管理手段に送信することができる。従って、ガス採取手段が採取したガスをガス検知手段に導くまでの時間を短くすることができ、ガスの検知結果に基づいて、管理手段により警報を発する等の対策を速やかにとることができる。
また、ガスサンプリング管の全長が長いため、ガスを吸い込む際に大きな負圧が生じてガスサンプリング管が変形し、ガスの吸い込みが困難になるようなことはなく、さらに、ガスサンプリング管が変形した状態で巻き取り装置に巻き取られるため、更にガスの吸引が困難になるようなことはなく、発生するガスを確実に採取して、そのガスの種類および濃度を検知することができる。
さらに、ガス採取手段を飛行体に取り付けた場合には、ガス検知手段を屋内廃棄物処分場内又は屋内廃棄物処分場外の任意の位置に設置することができるので、設計の自由度の幅を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明による屋内廃棄物処分場のガス検知システムの第1の実施の形態を示した概略図である。
【図2】図1のガス採取手段とガス検知手段と接続手段との関係を示した説明図である。
【図3】本発明による屋内廃棄物処分場のガス検知システムの第2の実施の形態を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
図1及び図2には、本発明による屋内廃棄物処分場のガス検知システムの第1の実施の形態が示されている。本実施の形態の屋内廃棄物処分場のガス検知システム1は、地表面に開口する平面視矩形状の処分ピット42と、処分ピット42の上部開口を覆う建屋41とを備えた屋内廃棄物処分場40に適用したものである。
【0025】
すなわち、本実施の形態の屋内廃棄物処分場のガス検知システム1は、建屋41の内部における処分ピット42の上方に、水平方向の直交する2方向に移動可能に設けられる水平移動手段2と、水平移動手段2に設けられ、後述するガス採取手段20を上下方向に移動させることが可能な上下移動手段8と、水平移動手段2に設けられ、水平移動手段2と一体に移動可能なガス検知手段15と、上下移動手段8に取り付けられ、上下移動手段8によって上下方向に移動可能なガス採取手段20と、ガス検知手段15とガス採取手段20とを接続、分離する接続手段30と、処分ピット42外に設けられる管理手段35とを備えている。
【0026】
水平移動手段2は、例えば、天井クレーン3であって、建屋41の天井部の両側に設けられるレール4、4と、両レール4、4上に走行可能に架設されるガータ5と、ガータ5の上部に長手方向に移動可能に設けられるトロリ6とを備えている。
【0027】
トロリ6は、ガータ5の上部に長手方向に敷設されたレール(図示せず)上に移動可能に搭載される台車7と、台車7をレールに沿って移動させる駆動源(図示せず)とを備え、台車7の上部に上下移動手段8及びガス検知手段15が設けられている。ガータ5をレール4、4に沿って移動させるとともに、トロリ6をガータ5に沿って移動させることにより、トロリ6を処分ピット42の上方の水平面内を任意の方向に移動させることができる。
【0028】
上下移動手段8は、トロリ6の台車7に設けられるウインチ9と、ウインチ9の駆動源(図示せず)と、ウインチ9に繰り出し、巻き取り可能に巻回されるワイヤ10とを備えている。上下移動手段8のワイヤ10の先端には、支持フレーム11が取り付けられ、支持フレーム11には、廃棄物搬入用のバケット12と、バケット12の開閉用の駆動源(図示せず)と、ガス採取手段20とが取り付けられている。
【0029】
上下移動手段8のウインチ9の駆動源を駆動させて、ウインチ9からワイヤ10を繰り出し、又は巻き取ることによりバケット12が上下方向に移動し、バケット12に追従してガス採取手段20が上下方向に移動する。
【0030】
ウインチ9の駆動源には、ウインチ9の回転位置を検知するロータリーエンコーダ等の位置検知手段(図示せず)が設けられ、この位置検知手段によって検知したウインチ9の回転位置に応じて、ウインチ9から繰り出され、又は巻き取られるワイヤ10の先端に支持フレーム11を介して取り付けられたガス採取手段20によるガスの採取位置が検知される。
【0031】
ガス検知手段15は、図2に示すように、ガスの種類及びその濃度を検知する複数のセンサ18を有する検知部17と、検知部17が検知した検知データを送信する送信部19とを備え、検知部17には、ガスの流入口17aと流出口17bとが設けられ、流入口17aに接続手段30が設けられている。
【0032】
ガス検知手段15による検知結果を示すデータ(以下、「ガス検知データ」という。)、及び位置検知手段により検知したガスの採取位置を示すデータ(以下、「ガス採取位置データ」という。)は、ガス検知手段15の送信部19から無線によって管理手段35に送信される。
【0033】
なお、本実施の形態においては、ガス検知手段15の検知部17に、7種類のガス(メタンガス、水素ガス、硫化水素ガス、酸素ガス、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス、アンモニアガス)及びその濃度を検知するセンサ18を設けている。
【0034】
ガス採取手段20は、図2に示すように、内部にガスを貯留させる貯留室22を有する容器21と、容器21内にガスを吸引するポンプ25とを備えている。容器21の下端には、貯留室22の内外を連通するガスの流入口23が設けられ、上端には、貯留室22の内外を連通するガスの流出口24が設けられている。ポンプ25は、容器21の流出口24側に設けられ、流入口23を介して容器21の貯留室22内にガスを吸引する。さらに、ガス採取手段20は、流入口23を開閉する第1開閉弁26と、流出口24を開閉する第2開閉弁27とを備え、容器21の流出口24に接続手段30が設けられている。
【0035】
ガス採取手段20は、流入口23及び流出口24が鉛直方向を向くように、容器21がボルト等の取付手段を介して支持フレーム11に取り付けられ、上下移動手段8のウインチ9の駆動により、支持フレーム11と一体に上下移動する。
【0036】
容器21の形状、材質は、特に、制限はなく、合成樹脂製、金属製等の各種の形状のものを用いることができる。また、容器21は、剛性を有するものに限らず、風船等のようにフレキシブルのものであってもよい。また、円筒状のものを容器21として用い、一方の開口を流入口とし、他方の開口を流出口とし、流入口及び流出口を蓋で開閉させるように構成してもよい。このような構成のものを容器21として用いることにより、上記の第1開閉弁26及び第2開閉弁27が不要となるので、容器21の構成を簡素化することができる。
【0037】
第1開閉弁26及び第2開閉弁27は、例えば、電磁弁であって、第1開閉弁26を「開」、第2開閉弁27を「閉」とした状態で、ポンプ25を作動させることにより、流入口23から容器21の貯留室22内にガスが吸引され、貯留室22内に所定量のガスが貯留される。なお、第1開閉弁26、及び第2開閉弁27は、遠隔操作によって作動が制御されている。
【0038】
また、第1開閉弁26を「閉」、第2開閉弁27を「開」とすることにより、容器21の貯留室22内のガスが流出口24から流出する。この場合、必要に応じて、ポンプ25を作動させることにより、容器21の貯留室22内からガスを強制的に流出させてもよい。
【0039】
なお、本実施の形態においては、第1開閉弁26及び第2開閉弁27に、流入口23及び流出口24を開閉する電磁弁を用いているが、電磁弁の代わりに逆止弁を用い、流入口23及び流出口24にそれぞれ逆止弁を設け、流入口23側の逆止弁で外部から貯留室22内へのガスの流入のみを許容し、流出口24側の逆止弁で貯留室22から流出口24を介して外部へのガスの流出のみを許容するように構成してもよい。
【0040】
接続手段30は、例えば、雄継手32と、雄継手32と相互に接続、分離可能な雌継手33とからなる管継手31であって、本実施の形態においては、ガス採取手段20の容器21の流出口24に雄継手32を設け、ガス検知手段15の検知部17の流入口17aに雌継手33を設けている。接続手段30の雄継手32と雌継手33とを相互に接続することにより、ガス採取手段20の容器21の流出口24とガス検知手段15の検知部17の流入口17aとが連通し、容器21の貯留室22内に貯留されたガスが検知部17に供給される。
【0041】
なお、ガス採取手段20の容器21の流出口24に雌継手33を設け、ガス検知手段15の検知部17の流入口17aに雄継手32を設けてもよい。また、管継手31の雄継手32と雌継手33とは、手動によって相互に接続、分離させるように構成してもよいし、ガス採取手段20を上昇させたときに、管継手31の雄継手32と雌継手33とが自動的に接続され、下降させたときに自動的に分離されるように構成してもよい。
【0042】
管理手段35は、処分ピット42の外部に設けられ、ガス検知手段15の送信部19から無線によって送信されたガス検知データ及びガス採取手段20のガス採取位置データを受信する受信部36と、受信部36が受信したガス検知データ及びガス採取位置データを出力する制御部37とを備えている。
【0043】
管理手段35は、受信部36を建屋41の壁面に設け、制御部37を建屋41の外部に設置した管理室(図示せず)内に設けるように構成してもよいし、受信部36及び制御部37を共に管理室内に設けるように構成してもよい。
【0044】
管理手段35の受信部36で受信したガス検知データ及びガス採取位置データは、制御部37によって管理室内に設置されているモニター等の表示手段に出力される。また、制御部37によって出力されたガス検知データ及びガス採取位置データに基づいて、適切な対策(警報器の作動、換気装置の作動等)が採られる。
【0045】
上記のような構成の本実施の形態の屋内廃棄物処分場のガス検知システム1によって処分ピット42の各部のガスの種類及びその濃度を検知するには、水平移動手段2のガータ5をレール4、4に沿って水平方向に移動させるとともに、トロリ6をガータ5に沿ってガータ5の移動方向と直交する水平方向に移動させ、上下移動手段8のウインチ9を駆動させて、ウインチ9からワイヤ10を繰り出し、又は巻き取ることにより、支持フレーム11及びバケット12と一体にガス採取手段20を水平方向及び上下方向の任意の位置に移動させる。
【0046】
そして、その位置において、ガス採取手段20の第1開閉弁26を開き、第2開閉弁27を閉じ、この状態でポンプ25を作動させることにより、第1開閉弁26及び流入口23を介して容器21の貯留室22内にガスを吸引した後、ポンプ25の作動を停止させて第1開閉弁26を閉じることにより、容器21の貯留室22内に所定量のガスを貯留させる。
【0047】
そして、この状態でウインチ9を駆動させてワイヤ10を巻き上げることにより、バケット12と一体にガス採取手段20を上昇させ、ガス採取手段20の雄継手32を、ガス検知手段15の雌継手33に接続し、第2開閉弁27を開くことにより、ガス採取手段20の容器21の貯留室22内に貯留されているガスを流出口24及び第2開閉弁27を介してガス検知手段15の検知部17に導き、検知部17に回収する。
【0048】
そして、検知部17に回収したガスの種類及びその濃度を検知部17内のセンサ18によって検知し、その検知データ及びガス採取位置データを送信部19から無線によって管理手段35の受信部36に送信し、受信部36で受信したガス検知データ及びガス採取位置データを制御部37を介して管理室内のモニター等の表示手段に出力する。また、制御部37によって出力されたガス検知データ及びガス採取位置データに基づいて、適切な対策(警報器の作動、換気装置の作動等)を採る。
【0049】
上記のように構成した本実施の形態の屋内廃棄物処分場のガス検知システム1にあっては、処分ピット42の各部のガスを採取する場合に、ガス採取手段20を、水平移動手段2及び上下移動手段8によって水平方向及び上下方向の任意の位置に移動させることにより、処分ピット42内の各部において、廃棄物から発生するガスの種類及びその濃度を検知することができるとともに、ガスの採取位置データも同時に取得することができる。
【0050】
従って、得られたガス検知データ及びガス採取位置データに基づいて、各位置に存在するガスの種類とその濃度を把握できるので、得られたデータが、屋内廃棄物処分場40内で各種の作業を行う作業者に影響を与えるような場合に、適切な対策(警報器の作動、換気装置の作動等)を早急に採ることができ、屋内廃棄物処分場40内で各種の作業を行う作業者の安全を確保することができる。
【0051】
また、ガス採取手段20をガス検知手段15から独立させ、ガス採取手段20でガスを採取した後に、ガス採取手段20の容器21とガス検知手段15の検知部17とを管継手31の雄継手32と雌継手33とを介して接続することにより、採取したガスをガス検知手段15の検知部17に回収することができる。このため、採取してからガス検知手段15の検知部17に導くまでの時間を短くすることができるので、警報等を速やかに発して作業者の安全を確保することができる。
【0052】
また、ガスサンプリング管を用いたガス検知システムのように、ガスサンプリング管を建屋41内の天井部及び壁部に沿うように這わせる必要はなく、また、取り回しが複雑になるようなこともないので、設置に要する時間、手間、及び費用を大幅に削減することができる。
【0053】
さらに、ガスサンプリング管を用いたガス検知システムのように、ガスサンプリング管の内部に溜った粉塵等を取り除く等のメンテナンスが不要であるため、メンテナンスが容易となる。
【0054】
さらに、液体を使用するタイプのガス検知器16の場合には、振動によって検知精度が影響を受けることになるが、本実施の形態のガス検知システム1は、ガス検知手段15をトロリ6の台車7に固定しているので、振動による影響を受けるようなことはなく、所期の検知精度が得られることになる。
【0055】
さらに、ガスの採取にガスサンプリング管を使用していないので、ガスの採取時にガスサンプリング管が錯綜して破損等するトラブルが発生することはなく、処分ピット42内の任意の位置のガス確実に採取し、検知することができる。
さらに、ガスサンプリング管の全長が長いため、ガスを吸い込む際に大きな負圧が生じてガスサンプリング管が変形し、ガスの吸い込みが困難になるようなことはなく、さらに、ガスサンプリング管が変形した状態で巻き取り装置に巻き取られるため、更にガスの吸引が困難になるようなことはなく、発生するガスを確実に採取して、そのガスの種類および濃度を検知することができる。
【0056】
なお、上記の説明においては、本発明による屋内廃棄物処分場の検知システム1を、水平面上で直交する2方向に移動可能な天井クレーン3が設置された矩形状の処分ピットを備えた屋内廃棄物処分場40に適用したが、図示はしないが、旋回式クレーンが設置された円筒状の処分ピットを備えた廃棄物処分場に本発明を適用してもよい。
【0057】
図3には、本発明による屋内廃棄物処分場のガス検知システムの第2の実施の形態が示されている。
本実施の形態の屋内廃棄物処分場のガス検知システム1は、空中を移動可能な飛行体13にガス採取手段20を取り付け、遠隔操作によって飛行体13を屋内廃棄物処分場40内を任意の位置に移動させ、その位置において、ガス採取手段20のポンプ25を作動させて容器21内にガスを採取し、ガスの採取後に、遠隔操作により飛行体13をガス検知手段15の位置に移動させ、ガス採取手段20の雄継手32とガス検知手段15の雌継33手とを接続させることにより、採取したガスをガス検知手段15の検知部17に導くように構成したものであって、その他の構成は前記第1の実施の形態に示すものと同様である。
【0058】
飛行体13は、空中を飛行可能なものであれば特に制限はなく、例えば、無人飛行船、気球(有限会社メイクス製)、無人飛行体(特許4397261号)、各種の無人ヘリコプター等を用いることができる。但し、可燃性ガスが発生する屋内廃棄物処分場40においては、飛行体13に、防爆型の飛行船、気球、ヘリコプター等を用いる必要がある。
【0059】
そして、本実施の形態の屋内廃棄物処分場のガス検知システム1にあっても、前記第1の実施の形態に示すものと同様の作用効果を奏する他、水平移動手段2や上下移動手段8が不要になり、ガス検知手段15を建屋41の内部の任意の位置や、建屋41の外部の任意の位置に設置することができるので、設計の自由度の幅を広げることができる。
【0060】
なお、本実施の形態においては、飛行体12の下部にガス採取手段20を設けているが、飛行体12の上部、斜め上部、前部、後部、又は斜め下部にガス検知手段20を設け、建屋41の内部の任意の位置に設置したガス検知手段15に対して、飛行体12を上下方向、水平方向、又は斜め上下方向に移動させることにより、飛行体12側のガス採取手段20をガス検知手段15に接続し、又は分離するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 屋内廃棄物処分場のガス検知システム
2 水平移動手段
3 天井クレーン
4 レール
5 ガータ
6 トロリ
7 台車
8 上下移動手段
9 ウインチ
10 ワイヤ
11 支持フレーム
12 バケット
13 飛行体
15 ガス検知手段
17 検知部
17a 流入口
17b 流出口
18 センサ
19 送信部
20 ガス採取手段
21 容器
22 貯留室
23 流入口
24 流出口
25 ポンプ
26 第1開閉弁
27 第2開閉弁
30 接続手段
31 管継手
32 雄継手
33 雌継手
35 管理手段
36 受信部
37 制御部
40 屋内廃棄物処分場
41 建屋
42 処分ピット
43 廃棄物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋内廃棄物処分場のガス検知システムであって、
前記屋内廃棄物処分場内のガスを採取するガス採取手段と、
該ガス採取手段を上下方向に移動させる上下移動手段と、
前記上下移動手段を水平面内を移動可能に支持する水平移動手段と、
前記水平移動手段に設けられ、上方に移動した前記ガス採取手段と接続された状態で前記ガス採取手段が採取したガスを回収して検知し、該検知結果を示すデータを送信するガス検知手段と、
前記ガス検知手段から送信されたデータを受信する管理手段とを備えていることを特徴とする屋内廃棄物処分場のガス検知システム。
【請求項2】
屋内廃棄物処分場のガス検知システムであって、
前記屋内廃棄物処分場内を遠隔操作により飛行可能な飛行体と、
該飛行体に設けられるとともに、前記屋内廃棄物処分場内のガスを採取するガス採取手段と、
前記屋内廃棄物処分場内又は前記屋内廃棄物処分場外に設けられるとともに、前記ガス採取手段と接続された状態で前記ガス採取手段が採取したガスを回収して検知し、該検知結果を示すデータを送信するガス検知手段と、
前記ガス検知手段から送信されたデータを受信する管理手段とを備えていることを特徴とする屋内廃棄物処分場のガス検知システム。
【請求項3】
前記ガス採取手段は、内部にガスの貯留室を有するとともに、該貯留室の内外を連通するガスの流入口と流出口とを有する容器と、前記流入口及び前記流出口に設けられる弁とを備え、
前記ガス検知手段は、前記ガス手段が採取したガスを回収し、該回収したガスの種類及びその濃度を検知するとともに、ガスの流入口と流出口とを有する検知部と、該検知部が検知した検知結果を示すデータを送信する送信部とを備え、
前記ガス採取手段の前記流出口と前記ガス検知手段の前記流入口とが相互に接続、分離可能に構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の屋内廃棄物処分場のガス検知システム。
【請求項4】
前記ガス採取手段を前記ガス検知手段に向けて所定位置まで移動させることにより、前記ガス採取手段が前記ガス検知手段に接続され、前記ガス採取手段を前記ガス検知手段から離間する方向に移動させることにより、前記ガス採取手段が前記ガス検知手段から分離されることを特徴とする請求項3に記載の屋内廃棄物処分場のガス検知システム。
【請求項5】
前記ガス採取手段は、前記流入口を介して前記容器の前記貯留室内にガスを吸引するポンプを備えていることを特徴とする請求項3に記載の屋内廃棄物処分場のガス検知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−232091(P2011−232091A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101048(P2010−101048)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(000250421)理研計器株式会社 (216)
【Fターム(参考)】