説明

屋根構造

【課題】太陽電池モジュールと屋根構造を形成する他の部材が、一体感を有していて見栄えが良く、防水性が高い屋根構造を提供する。
【解決手段】屋根部材の一部が隣接する屋根部材と重なって、屋根部材の一部が露出する状態で屋根下地上に平面的な広がりをもって並べて載置され、断面構造に2枚の屋根部材が重なった2重部位と、3枚の屋根部材が重なった3重部位がある基礎屋根構造を有し、太陽電池モジュールは電力を取り出す端子ボックスを裏面側に備え、端子ボックスが2重部位の上に位置すると共に、太陽電池モジュールが基礎屋根構造上に平面的な広がりをもって並べて載置されることを特徴とする屋根構造を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールを載置する屋根構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールは、太陽電池パネルと端子その他の付属品を一体化したものであり、太陽光を受けて電気を発生させることができる。
近年、太陽電池モジュールを一般家庭の屋根に設置し、家庭で使用する電力を太陽電池モジュールが発生する電力で賄う太陽光発電システムを採用する家庭が増加しつつある。
ここで太陽電池モジュールを一般家庭の屋根に設置する方策として、太陽電池モジュール自体に瓦(屋根部材)の機能を持たせ、屋根下地に瓦に代わって太陽電池モジュールを敷設する構造と、スレート瓦等が敷設された屋根の上にさらに太陽電池モジュールを設置する構造がある。
【0003】
前者の構造は、例えば特許文献1に開示された屋根構造であり、瓦一体型太陽電池モジュールと称されている。
後者の構造は、例えば特許文献2に開示された屋根構造であり、公知のスレート屋根に取り付け金具を設け、当該取り付け金具を介して太陽電池モジュールを取り付けるものである。即ち木材その他の材料で屋根の傾斜形状を作り、その上に板張りをすると共に防水シートを設置する等によって屋根下地構造を作り、その上にスレートを平面的に並べる。より具体的には、スレート瓦は、鱗の如くに、一部が隣接する屋根部材と重なり、残部が露出する状態で屋根下地上に列状及び複数段状に並べられて平面的な広がりをもって載置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−299465号公報
【特許文献2】特許第3609298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記した2種類の屋根構造を比較すると、外観の点で前者が優れ、防水性の点では後者が優れている。
即ち瓦一体型太陽電池モジュールは、瓦に代わって太陽電池モジュールを敷設するものであるから、屋根の他の部分との一体感があり、屋根の仕上がりが美しい。
しかしその一方で、瓦一体型太陽電池モジュールは、開発されてからの歴史が浅く、加速試験等では十分な防水性能を維持できることは検証されているが、数十年に亘る長期間の間、十分な防水性能を維持できるかを実地には検証されているとはいえない。
【0006】
これに対して、後者のスレート瓦等の上に太陽電池モジュールを乗せる構造は、主たる防水をスレート瓦が果たす。スレート瓦は、開発されてから相当に長い歴史があり、長期間に渡って防水性能を発揮することが実証されている。
しかしながら、後者のスレート瓦等の上に太陽電池モジュールを乗せる構造は、屋根の上に別の屋根を乗せるものであるから一体感を欠き、見る者に違和感を与える。
【0007】
この様な違和感を与える理由の一つとして、太陽電池パネルの全厚が厚く、スレート瓦上に設置した場合に、スレート瓦の屋根からパネル部分が浮き上がった様に設置されてしまう点が上げられる。
ここで太陽電池モジュールは、前記した様に、太陽電池パネルと端子及びその他の付属品を一体化したものである。この内、太陽電池パネルは、大面積を占めるものの、その厚さは薄く、スレート瓦の厚さと同程度の厚さの太陽電池パネルを製造することもできる。
しかしながら、太陽電池モジュールは、太陽電池パネルが発生する電気を外部に取り出す必要があるから、ケーブルを接続する端子や、これを保護する端子ボックスが必須である。
そして太陽電池に対する受光面積を確保する観点から、前記した端子や端子ボックスは、太陽電池パネルの裏面側に配置せざるを得ない。そのため太陽電池モジュールの全厚さが厚くなってしまい、スレート屋根の上に載置したときに、スレート屋根から太陽電池モジュールが浮き上がっている様な印象を与えてしまう。
【0008】
そこで本発明は、スレート瓦等の上に太陽電池モジュールを乗せる構造を基本構成として防水性能を確保し、その上で一体感を有していて見栄えのよい屋根構造の開発を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記した様に、ケーブルを接続する端子や、これを保護する端子ボックスは、厚さが厚い。しかしながらその半面、専有する面積は小さい。
一方、スレート瓦等の屋根部材が配された屋根を見ると、その表面の高さは一様ではなく、高いところと低いところがある。
即ち一般にスレート等の屋根部材は、一部が隣接する屋根部材と重なり一部が露出する状態で屋根下地上に平面的な広がりをもって並べて載置されるから、重なる屋根部材の枚数が多い部位は、表面が高く、少ない部位は高さが低い。
そこで本発明は、重なる屋根部材の枚数が少なく、基礎屋根構造部分の高さが低い部位に端子ボックスを全部又は大部分を配置することとした。
【0010】
すなわち請求項1に記載の発明は、複数の屋根部材を有し、当該屋根部材は一部が隣接する屋根部材と重なり一部が露出する状態で屋根下地上に平面的な広がりをもって並べて載置され、当該基礎屋根構造上に、複数の太陽電池モジュールが平面的な広がりをもって並べて載置される屋根構造において、前記基礎屋根構造の断面構造は、位置によって屋根部材の重なり枚数が相違し、屋根部材の重なり枚数の少ない小重畳部と、屋根部材の重なり枚数が小重畳部よりも多い大重畳部があり、太陽電池モジュールは、裏面側に電力を取り出す端子ボックスが設けられており、前記端子ボックスの大部分が小重畳部上にあることを特徴とする屋根構造である。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、端子ボックスの体積の80パーセント以上が小重畳部上にあることを特徴とする請求項1に記載の屋根構造である。
【0012】
さらにまた請求項3に記載の発明は、太陽電池モジュールの下部における基礎屋根構造の断面構造の内、最も屋根部材の重なり枚数が多い最大重畳部の長さを最も軒側の領域と最も棟側の領域と両者の中間領域に三等分したとき、最も軒側の領域上にある端子ボックスの体積は、端子ボックスの全体積の5パーセント未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載の屋根構造である。
【0013】
本発明によると、端子ボックスが太陽電池パネルと屋根部材との間に収まり、太陽電池モジュールの表面の高さを低く抑えることができる。なお、端子ボックスの大部分とは端子ボックスの全ての部分を含むものとする。
【0014】
請求項4に記載の発明は、前記小重畳部は2枚の屋根部材が重なった2重部位であり、前記大重畳部は3枚の屋根部材が重なった3重部位であり、前記端子ボックスの位置は、いずれも2重部位の上にあることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の屋根構造である。
【0015】
即ち、複数の屋根部材を有し、当該屋根部材は一部が隣接する屋根部材と重なり一部が露出する状態で屋根下地上に平面的な広がりをもって並べて載置され、当該基礎屋根構造上に、複数の太陽電池モジュールが平面的な広がりをもって並べて載置される屋根構造において、前記基礎屋根構造の断面構造には、2枚の屋根部材が重なった2重部位と、3枚の屋根部材が重なった3重部位があり、太陽電池モジュールは、裏面側に電力を取り出す端子ボックスが設けられており、前記端子ボックスの位置は、いずれも2重部位の上にあることを特徴とする屋根構造である。
本発明によると、小重畳部たる2重部位に端子ボックスがないため、太陽電池モジュールの表面の高さを低く抑えることができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、基礎屋根構造を構成する屋根部材は、棟側の辺が棟側に隣接する他の屋根部材の下にあり、屋根部材の軒側の辺は開放されており、前記開放された辺のさらに軒側の位置に前記端子ボックスがあることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の屋根構造である。
【0017】
上記した位置は、基礎屋根構造の中で最も低い部位であり、端子ボックスを収納する位置として好適である。
【0018】
請求項6に記載の発明は、太陽電池モジュールは、その幅が屋根部材の幅よりも大きく、複数段の屋根部材に跨がって屋根部材の上に配され、太陽電池モジュールは、全体形状が長方形であって2つの長辺と2つの短辺を有し、前記太陽電池モジュールは、一方の長辺を棟側に他方の長辺を軒側にして配置され、前記端子ボックスは、棟側の長辺寄りの位置にあることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の屋根構造である。
【0019】
太陽電池モジュールは、一般にその幅が屋根部材の幅よりも大きく、太陽電池モジュールは複数段の屋根部材に跨がって屋根部材の上に配される。
この様な構造の場合は、太陽電池モジュールが屋根部材の辺(自由端)を跨ぐこととなる。そのため太陽電池モジュールの真下に3枚の屋根部材が重なった3重部位が存在することとなる。
そこで本発明は、前記端子ボックスを、棟側の長辺寄りの位置に設けた。この構成を採用することにより、太陽電池モジュールの真下の3重部位と、太陽電池モジュールの棟側の辺との間に端子ボックスが配置され、端子ボックスから導出されるケーブルが短くて足る。
【0020】
請求項7に記載の発明は、太陽電池モジュールは、複数の溝によって区切られた単体電池が電気的に直列接続されたものであり、各単体電池を横断する限定溝が設けられて面積の広い稼働領域と面積の狭い非稼働領域に区画され、稼働領域に属する単体電池が端子ボックスに接続されており、前記太陽電池モジュールは、列状及び複数段状に並べられて平面的な広がりをもって載置され、一部が隣接する段の太陽電池モジュールと重なると共に一部が露出する状態であり、前記非稼働領域が太陽電池モジュールの重なり部に配置されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の屋根構造である。
【0021】
太陽電池モジュールは、屋根の上で、列状及び複数段状に並べられて平面的な広がりをもって載置され、一部が隣接する段の太陽電池モジュールと重なると共に一部が露出する状態となる。この様なレイアウトを採用する場合には、太陽電池モジュールの重なり部分はそもそも発電に寄与しない。しかしながら、当該部分が他の部位と電気的に繋がっていると、ネズミがかじる等の思いがけない自体によってショートや漏電が生じるかもしれない。そこで本発明では、稼働領域に属する単体電池だけを端子ボックスに接続し、非稼働領域を遮断することとした。
【発明の効果】
【0022】
本発明の屋根構造によると、信頼性の高い防水性能を確保しつつ、一体感があって美しい屋根構造を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態の屋根構造を外観した斜視図である。
【図2】本実施形態の屋根構造で採用するスレート瓦の斜視図である。
【図3】本実施形態の屋根構造で採用する太陽電池モジュールの説明図であり、(a)は太陽電池モジュールを正面側から観察した斜視図であり、(b)は第一ケーブルのコネクタ部分を拡大した断面図であり、(c)は第二ケーブルのコネクタ部分を拡大した断面図である。
【図4】図3の太陽電池モジュールを裏面側から観察した斜視図である。
【図5】図3の太陽電池モジュールを正面側から観察した斜視図であり、裏面構造を破線で示している。
【図6】図3の太陽電池モジュールのコネクタの断面図である。
【図7】本実施形態の屋根構造で採用する軒先取付け金具(軒先取付け具)の斜視図である。
【図8】図7の軒先取付け金具の分解斜視図である。
【図9】図7の軒先取付け金具の断面図である。
【図10】本実施形態の屋根構造で採用する中間取付け金具(取付け具)の斜視図である。
【図11】図10の中間取付け金具の分解斜視図である。
【図12】図11のD−D断面図である。
【図13】図11のE−E断面図である。
【図14】図10の中間取付け金具の断面図である。
【図15】本実施形態の屋根構造で採用する中間取付け金具(取付け具)の斜視図である。
【図16】本実施形態の屋根構造の施工手順を示す斜視図であり、屋根下地の軒先に軒先取付け金具を取り付けた状態を示す斜視図である。
【図17】図16の断面図である。
【図18】図16、図17の工程に続く工程を示し、第一段目のスレート瓦を装着した状態における屋根構造の斜視図である。
【図19】図18の断面図である。
【図20】図19の工程に続く工程を示し、第二段目のスレート瓦を装着した状態における屋根構造の断面図である。
【図21】図20の工程に続く工程を示し、第二段目のスレート瓦に第一段目の中間取付け金具の固定部構成部材を取り付ける状態を示す斜視図である。
【図22】図21の断面図である。
【図23】第二段目のスレート瓦に第一段目の中間取付け金具の固定部構成部材を取付ける際の固定部構成部材の拡大斜視図である。
【図24】図23の工程に続く工程を示し、第一段目の中間取付け金具の第一凹部に第三段目のスレート瓦を装着する状態を示す斜視図である。
【図25】図24の断面図である。
【図26】第三段目のスレート瓦に第一段目の中間取付け金具の固定部構成部材をネジ止めする状態を示す斜視図である。
【図27】図26の断面図である。
【図28】第三段目のスレート瓦に第一段目の中間取付け金具の固定部構成部材をネジ止めした状態を示す平面図である。
【図29】(a)は第四段目のスレート瓦を装着する状態を示す屋根構造の断面図であり、(b)はその円内の拡大図である。
【図30】(a)は第四段目のスレート瓦に第2段目の中間取付け金具の下板部材を取り付けた状態を示す屋根構造の断面図であり、(b)はその円内の拡大図である。
【図31】(a)第2段目の中間取付け金具の第一凹部に第五段目のスレート瓦を装着した状態を示す屋根構造の断面図であり、(b)はその円内の拡大図である。
【図32】各スレート瓦に軒先取付け金具と中間取付け金具の固定部構成部材を取り付けた状態を示す斜視図である。
【図33】太陽電池モジュールの接続方法を説明する概念図である。
【図34】太陽電池モジュールの接続構造を示す電気配線図である。
【図35】軒先金具に第一段目の太陽電池モジュールを装着する状態を示す屋根構造の断面図である。
【図36】図35に次ぐ工程を示す屋根構造の断面図である。
【図37】第一段目の固定部構成部材に中間板部材(押さえ部材込み)を装着し、太陽電池モジュールの棟側辺を押さえた状態を示す斜視図である。
【図38】図36の第一段目の固定部構成部材に中間板部材(押さえ部材込み)を装着した状態を示す断面図である。
【図39】第一段目の太陽電池モジュールを取り付けた状態を示す斜視図である。
【図40】第一段目の太陽電池モジュールを取り付けてケーブル配線を行った状態を示す斜視図である。
【図41】第一段目の太陽電池モジュールを取り付けてケーブル配線を行った状態を示す平面図である。
【図42】第二段目の太陽電池モジュールを載置しケーブル配線の上に第二段目の太陽電池モジュールを被せた状態を示す屋根構造の断面図である。
【図43】第二段目の固定部構成部材に第二段目の中間板部材(押さえ部材込み)を装着し、第二段目の太陽電池モジュールの棟側辺を押さえた状態を示す屋根構造の断面図である。
【図44】第二段目の太陽電池モジュールを取り付けてケーブル配線を行った状態を示す平面図である。
【図45】第三段目の太陽電池モジュールの軒側に雨仕舞い板を取り付けた状態を示す断面図である。
【図46】太陽電池モジュールを屋根構造に取り付けた状態を示す断面図である。
【図47】図1の状態から接続片を取り外す状態を示す斜視図である。
【図48】図45の状態から太陽電池モジュールを取り外す状態を示す断面図である。
【図49】図48に続く工程を示す断面図である。
【図50】固定部構成部材を既存の屋根構造に取り付ける状態を示す斜視図である。
【図51】図50に次ぐ工程を示す斜視図である。
【図52】図10とは別形態の中間取付け金具を示す断面図であり、(a)は下板部材が上板部材より長い形態の中間取付け金具を示す断面図であり、(b)下板部材と上板部材の長さが等しい形態の中間取付け金具を示す断面図である。
【図53】図10とは別形態の押さえ板部材を備えた中間取付け金具を示す斜視図である。
【図54】図5とは別形態の断熱補強材を備えた太陽電池モジュールを正面側から観察した斜視図であり、裏面構造を破線で示している。
【図55】図46とは別形態の端子ボックスを有する太陽電池モジュールを屋根構造に取り付けた状態を示す断面図である。
【図56】図46とは別形態の端子ボックスを有する太陽電池モジュールを屋根構造に取り付けた状態を示す断面図である。
【図57】図46とは別形態の端子ボックスを有する太陽電池モジュールを屋根構造に取り付けた状態を示す断面図である。
【図58】図46とは別形態の端子ボックスを有する太陽電池モジュールを屋根構造に取り付けた状態を示す断面図である。
【図59】本実施形態で採用する太陽電池パネルに構成される集積型太陽電池の層構成を概念的に説明する概念図である。
【図60】太陽電池モジュールの重なり具合を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下さらに本発明の実施形態について説明する。
本実施形態の屋根構造1は、図1の様にスレート瓦(屋根部材)2で葺かれた基礎屋根構造3の上に、軒先取付け金具(軒先取付け具)5及び中間取付け金具(取付け具)6を介して太陽電池モジュール10が取付けられたものである。また必要部分には、部分的に雨仕舞い板11が設置されている。
【0025】
スレート瓦2は公知のスレート瓦であって、図2の様に、セメント等で成形された略長方形の薄板である。スレート瓦2には、短手方向の中心近傍に、予め、取付け孔12が一列に4個設けられている。本実施形態では、取付け孔12の間隔は均等ではなく、中央の2個の孔12b,12cの間隔が他の孔同士の間隔よりも広い。
より詳細には、4個の孔を図面左から孔12a,孔12b,孔12c,孔12dとすると、両脇の孔の間隔たる孔12aと孔12bの間隔Waと孔12cと孔12dの間隔Wcは等しく、中央の孔12b,12cの間隔Wbは前記した間隔Wa,Wcよりも広い。
加えて、スレート瓦2の厚さは4mm〜7mmであることが望ましく、さらに好適には、5mm〜5.5mmであることが望ましい。
【0026】
次に太陽電池モジュール10の構造について説明する。後記する様に本実施形態では、太陽電池モジュール10を、ケーブル16,18側が棟側になる向きに敷設するので、説明の便宜上、ケーブル16,18が突出した側を上側として説明する。
本実施形態で採用する太陽電池モジュール10は、図3,図4,図5に示すように、2つの長辺と2つの短辺を有し、正面視が略長方形状である。そして、太陽電池パネル13と、太陽電池パネル13の裏面に取付けられる端子ボックス14(図4参照)と、端子ボックス14から延設される二本のケーブル16,18と、ケーブル16,18のそれぞれに接続されるコネクタ20,22及び断熱補強材23とを備えている。そして、太陽電池パネル13が発電した電力を端子ボックス14及びケーブル16,18を介して取り出すことが可能である
【0027】
太陽電池パネル13は、図3のようにほぼ長方形の面状に形成されている。太陽電池パネル13は長手方向の長さが900乃至1200[mm]であって短手方向の長さが230乃至650[mm]であることが望ましい。
なお太陽電池パネル13の長手方向の長さは、前記したスレート瓦2の2倍程度である。太陽電池パネル13の短手方向の長さAWがスレート瓦2の短手方向の長さawの約1.3倍〜1.6倍程度である。より具体的には太陽電池パネル13の短手方向の長さ(幅)AWは、スレート瓦2の短手方向の長さ(幅)awより長く、重ねられた状態におけるスレート瓦2の2枚分に相当する長さである。
【0028】
本実施形態で採用する太陽電池パネル13は、集積型太陽電池である。太陽電池パネル13には、例えばガラス基板に導電膜や半導体膜を積層し、これに複数の縦列の溝15を設けて所定数の単体電池(太陽電池セル)17を形成し、各太陽電池セル17を電気的に直列接続したものなどを採用することができる。本実施形態の太陽電池パネル13は、一枚で約100ボルトの電圧を得ることができる。
前記した様に太陽電池セル17は電気的に直列接続され、端子ボックス14に接続されている。
なお作図の関係上、溝15の数は実際よりも少なく描いている。また、端子ボックス14の最大厚さは5mm〜30mmであることが望ましく、より好適には10mm程度であることが望ましい。
【0029】
また本実施形態の太陽電池パネル13に特有の構成として、各太陽電池セル17を横断する限定溝21が設けられている。限定溝21の位置は、ケーブル16,18が導出される側の辺を上辺としたとき、当該上辺から30mm〜60mm程度内側に入った位置である。太陽電池パネル13では、限定溝21によって各太陽電池セル17が図面下側のA領域(稼働領域)と、図面上側のB領域(非稼働領域)に分断されている。B領域は、太陽電池モジュール10を屋根に敷設した際に、棟側の段の太陽電池モジュール10に覆われて陰になる部分(重なり部)である。そのため本実施形態では、図面下側にあって面積の広いA領域の太陽電池セル17だけが端子ボックス14に接続されており、日陰になって発電に寄与しないB領域は、端子ボックス14に接続されていない。
【0030】
図4に示すように、端子ボックス14は太陽電池パネル13の裏面側に接着剤などを用いて固定されている。端子ボックス14は、太陽電池パネル13の長辺の略中央であって、一方の長辺150側の領域に取付けられている。より具体的には、端子ボックス14は、太陽電池パネル13の裏面であって上側の位置に取付けられている。したがって、端子ボックス14は太陽電池モジュール10の上側の長辺寄りに位置する。ただし、端子ボックス14の上部側の辺の位置は、太陽電池パネル13の上側の辺と一致しているのではなく、上側の辺よりも少し内側に入った位置に取付けられている。具体的には、30mmから60mm程度内側に入った位置に端子ボックス14の上部側の辺がある。
【0031】
端子ボックス14は、太陽電池パネル13の正極が接続されるプラス側電極接続端子(図示せず)と、太陽電池パネル13の負極が接続されるマイナス側電極接続端子(図示せず)とが内部に設けられている。端子ボックス14内において、プラス側電極接続端子には、黒色の被服導線であるプラス側の導線24が二本接続されており、白色の被服導線であるマイナス側電極接続端子には、マイナス側の導線26が二本接続されている。
【0032】
第一ケーブル16は、二本のプラス側導線24,24のうちの一方のプラス側導線24と、二本のマイナス側導線26,26のうちの一方のマイナス側導線26とを束ねて形成された二芯ケーブルである。また第二ケーブル18は、二本のプラス側導線24,24のうちの他方のプラス側導線24と、二本のマイナス側導線26,26のうちの他方のマイナス側導線26とを束ねて形成された二芯ケーブルである。
【0033】
図3,図4,図5に示すように、第一ケーブル16および第二ケーブル18は色彩が相違しており、第一ケーブル16は、白色の絶縁チューブ16a内にプラス側芯線24およびマイナス側芯線26が配されており、第二ケーブル18は、黒色の絶縁チューブ18a内にプラス側芯線24およびマイナス側芯線26が配されている。
【0034】
また第一ケーブル16および第二ケーブル18は、長さに長短があり、一方が長く、他方が短い。具体的には、第一ケーブル16が第二ケーブル18よりも短い。第一ケーブル16の全長は、長方形状の太陽電池パネル13の長辺の長さの50パーセント未満の長さであり、第二ケーブル18の全長は、太陽電池パネル13の長辺の長さの50パーセント以上である。
【0035】
ただし第一ケーブル16の長さと第二ケーブル18の長さの合計は、太陽電池パネル13の長辺の長さよりも長い。
【0036】
図3に示すように、第一ケーブル16および第二ケーブル18のそれぞれの端部には、第一コネクタ20および第二コネクタ22が設けられている。第一コネクタ20および第二コネクタ22の色彩は相違しているが、構造は同一である。本実施形態において、第一コネクタ20は白色であり、第二コネクタ22は黒色である。
【0037】
図3,図6に示すように、第一コネクタ20および第二コネクタ22は、ピン状端子28およびソケット状端子30を備えている。また第一コネクタ20および第二コネクタ22は、雌片32と雄片34とを有し、前記したピン状端子28は、雌片32内にあり、ソケット状端子30は、雄片34内にある。
【0038】
図3(b),(c)に示すように、本実施形態において、第一コネクタ20のピン状端子28にはプラス側芯線24が接合されており、第一コネクタ20のソケット状端子30にはマイナス側芯線26が接合されている。また第二コネクタ22のピン状端子28にはマイナス側芯線26が接合されており、第二コネクタ22のソケット状端子30にはプラス側芯線24が接合されている。即ち、第一コネクタ20では、ピン状端子28が正極であり、ソケット状端子30が負極である。これに対し、第二コネクタ22では、ピン状端子28が負極であり、ソケット状端子30が正極である。そのため、第一コネクタ20と第二コネクタ22とは、一方の雌片32と他方の雄片34とを嵌合させて一方のピン状端子28を他方のソケット状端子30に接続させることにより、同極同士を電気的に接続することが可能である。
【0039】
次に断熱補強材23について説明する。図4に示すように、断熱補強材23は、太陽電池モジュール10の強度や断熱性を確保するために太陽電池パネル13の裏面に取付けられる発泡樹脂製の部材である。断熱補強材23は図4のように太陽電池パネル13の裏面の中央部分にあり、図面下辺の近傍に沿う部分は断熱補強材23が欠落していて配線収納空間41が形成されている。
また前記した端子ボックス14が取付けられている部位は、端子ボックス用欠落部43がある。従って端子ボックス14はその三方が断熱補強材23によって囲まれている。さらに端子ボックス用欠落部43の両脇にも欠落部45が設けられている。
欠落部45の下方部分は、断熱補強材23の厚さが薄く、溝状部46となっている。
さらに太陽電池パネルの上部側の長辺150の近傍部分40についても断熱補強材23が欠落している。当該部分は、中間取付け金具6の前端エリアBの前部側に載置される部位である。なお、欠落部45と溝状部46は屋根上に太陽電池モジュール10を敷設した際に、軒側と棟側で連続する2つの太陽電池モジュール10の間でコネクタを接続するとき、第1ケーブル16や第2ケーブル18を通すことができる。
【0040】
太陽電池パネル13の左右の短辺には、サイドガスケット47が取付けられている。サイドガスケット47は、樹脂系材料で作られている。
【0041】
次に金具類について説明する。
図7,図8は、軒先取付け金具(軒先取付け具)5を図示している。軒先取付け金具5は、図7のように3個の固定片50とそれらを接続する接続片51によって構成されている。固定片50は、一枚の亜鉛引き鉄板をジグザグに折り曲げて作られたものであり、図8のように下板部52と、下板部52の端部から立ち上げられた第1正面立ち上げ部53と、第1正面立ち上げ部53に連続し下板部52と対向する上板部55と、上板部55の末端に連続し上板部55から立ち上げられた裏面立ち上げ部56と、裏面立ち上げ部56に連続し上板部55と対向する支持台部57と、支持台部57の末端に連続し支持台部57から立ち上げられた第2正面立ち上げ部58とを有する。各辺の折り曲げ角度はいずれも略垂直である。
【0042】
要するに固定片50は、対向且つ略平行に配された三枚の板部たる、下板部52と、上板部55と、支持台部57とを有し、これらを第1正面立ち上げ部53と裏面立ち上げ部56とによって連続させた形状をしている。
前記した三枚の板部たる、下板部52と、上板部55と、支持台部57は、最も下に位置する下板部52だけが他の板部よりも長い。そして下板部52には、取付け孔59が1個設けられている。
取付け孔59の位置は、上板部55及び支持台部57の下部を外れた位置である。
第1正面立ち上げ部53と第2正面立ち上げ部58とは同一平面上に並んでいる。
【0043】
一方、接続片51は1m程度の長尺物であり、断面形状が略「L」字状をしている。即ち接続片51は、図8の様に略長方形の正面部60と、正面部60の長辺を僅かに垂直方向に折り曲げて一方に突出させた覆い板構成部61を有している。
【0044】
そして3個の固定片50は、図7に示すように相当の間隔を開けて、等間隔に接続片51に取付けられている。固定片50が接続片51に取付けられた状態においては、固定片50の第1正面立ち上げ部53及び第2正面立ち上げ部58の外側の面に接続片51の正面部60の内面側が接している。そして固定片50の第1正面立ち上げ部53及び第2正面立ち上げ部58と接続片51の正面部60の内面側との間にネジ62,63が挿通され、当該ネジ62,63によって固定片50が接続片51に取付けられている。
【0045】
また固定片50が接続片51に取付けられた状態においては、接続片51の「L」字状の角が固定片50の第2正面立ち上げ部58の突端面と接している。そして覆い板構成部61は固定片50側に向く。そのため覆い板構成部61と固定片50の支持台部57は平行に対向する位置関係となる。
【0046】
本実施形態では、固定片50が一枚の亜鉛引き鉄板をジグザグに折り曲げて作られたものであり、図9のように下板部52と下板部52と第1正面立ち上げ部53と上板部55とによって屋根部材保持凹部64が形成されている。
また支持台部57と第2正面立ち上げ部58と覆い板構成部61によってモジュール保持凹部65が構成されている。
接続片51のモジュール保持凹部65を構成する部位にはゴム等の弾性体で作られたカバー66が設けられている。さらに固定片50のモジュール保持凹部65を構成する部位にもゴム等の弾性体で作られた保護部材67が設けられている。
【0047】
次に中間取付け金具(取付け具)6について図10乃至図13を参照しつつ説明する。
中間取付け金具6は、図11のように、固定部構成部材70と、中間板部材71と、押さえ板部材74によって構成されている。
固定部構成部材70は、一枚板を折り曲げて作られたものであり、下板部材72と上板部材73を有し、両者が立ち上げ部75で接続された形状をしている。
即ち下板部材72は平板形状であり、その長手方向の前方側端部が180度折り返されて上板部材73を形成している。
下板部材72と上板部材73との間には、数ミリの隙間がある。
下板部材72と上板部材73の長さを比較すると、上板部材73の長さは、下板部材72に比べて2倍以上長い。より正確には、2倍から3倍程度長い。
【0048】
上板部材73は、図11の様に低位置部と、高位置部とがある。即ち図の様に、上板部材73は、長手方向にA,B,Cの3エリアに区分される。そして前端側エリアAと、後端側エリアCが低位置部であり、中央エリアBが高位置部である。ただし高位置部(中央エリアB)の全長は、全体の3分の1から4分の1程度に過ぎない。
高位置部(中央エリアB)の大部分は、下板部材72に面した位置であると言える。
上板部材73の、低位置部(前端側エリアA,後端側エリアC)及び高位置部(中央エリアB)は共に下板部材72に対して平行である。
後端側エリアCの領域であって、中央エリアBに近い位置に、フック部77が2個設けられている。フック部77は、上板部材73に「U」字状の切り込みを入れ、この切り込みを立ち上げて形成したものであり、いずれも高位置部(中央エリアB)側に向いている。
【0049】
下板部材72には、2行2列に孔100,101が設けられている。即ち立ち上げ部75側には図12の様に2個の取付け孔100a,100bが設けられている。
またこの2個の取付け孔100a,100bと平行に、図13の様にさらに2個の取付け孔101a,101bが設けられている。即ち下板部材72には、合計4個の孔100a,100b,101a,101bが設けられている。
【0050】
一方、上板部材73に目を移すと、前記した下板部材72に相当する位置に、それぞれ孔102a,102b,103a,103bが設けられている。
ここで上板部材73に設けられた4個の孔102a,102b,103a,103bの内、立ち上げ部75側の2個の取付け102a,102bは、高位置部(エリアB)にあり、その直径が下の孔100a,100bよりも大きい。これに対して立ち上げ部75側から遠い方の孔103a,103bは、低位置部(後端側エリアC)にあり、その直径が下の孔101a,101bと略同一である。
また上板部材73の後端近傍(立ち上げ部75側から遠い位置)にも取付け孔80a,80bが設けられている。上板部材73の取付け孔80a,80bは、僅かに長孔になっている。
上板部材73の高位置部(中央エリアB)には、2個、雌ねじ孔84a,84bが形成されている。
下板部材72に設けられた立ち上げ部75側の2個の取付け102a,102bと、上板部材73の後端近傍に設けられた取付け孔80a,80bとの距離Lbは、スレート瓦2の短手方向の長さをawとし、スレート瓦2の重なりしろをOWとしたとき、図28の様に、「Lb=aw−OW」の関係がある。
即ち下板部材72と上板部材73の孔同士の間隔は、屋根部材の露出している部分の幅の寸法である。なお、ここで露出している部分とは、対象となる屋根部材から棟側の屋根部材が重なっている部分を除いた部分である。
【0051】
固定部構成部材70の細部について説明すると、上板部材73の中央部から立ち上げ部75に至る位置には、長手方向に2条のビード部81が設けられている。本実施形態では、ビード部81は、後端側エリアCの中間部から、高位置部(中央エリアB)を抜け、さらに前端側エリアAに入って立ち上げ部75にまで回り込んでいる。
また固定部構成部材70の幅方向の両端部分であって、前記したビード部81に相当する位置には、折り返し部82(図12,図13)が設けられている。
【0052】
前記したビード部81及び折り返し部82は、いずれも固定部構成部材70の剛性を向上させるために設けられたものである。
【0053】
中間板部材71は、図11,図14,図15の様に、一枚の板を階段状に折り曲げて作られたものである。
即ち中間板部材71は、第一平板部85と、第一段部86と、第二平板部87と、第二段部88が順次設けられたものである。
そして第一平板部85には長孔89が2個形成されている。長孔89は、第一段部86の壁面に至り、第一段部86にも長孔延長部90がある。長孔延長部90の形状は、長方形であり、その幅は、前記長孔89の本体部分の幅よりも広い。より具体的には、ネジ91の頭部が通過可能な大きさである。一方、長孔89の本体部分の幅は、ネジ91の首部分は通過可能であるけれども頭部の通過は不能である寸法に設計されている。
第二段部88には、2個の雌ねじ孔92a,92bが設けられている。
中間板部材71には、その全長に渡って3条のビード部が形成されている。また中間板部材71の両端は、その全長に渡って図示しない折り返し部が設けられている。
【0054】
押さえ板部材74は、断面形状が「L」字状の部材であり、正面板部94と折り返し部95が形成されている。
また正面板部94には、孔96a,96bが2個設けられている。
【0055】
中間取付け金具(取付け具)6の組み立て形状は、図10,図14の通りであり、中間板部材71が固定部構成部材70に載置され、さらに中間板部材71に押さえ板部材74が装着されたものである。
即ち固定部構成部材70の高位置部(エリアB)に、中間板部材71の第一平板部85が接した状態で載置され、第一平板部85の長孔89と固定部構成部材70の雌ねじ孔84a,84bが合致されてネジ91a,91bが挿通され、ネジ91a,91bを締結することによって固定部構成部材70の高位置部(エリアB)に、中間板部材71が固定されている。
ただし、本実施形態では、図15で示されるように、第一平板部85に設けられた長孔89は、第一段部86の壁面にまで延長されており、且つ長孔延長部90の形状の幅は、前記長孔89の本体部分の幅よりも広く、ネジ91の頭部が通過可能である。そのためネジ91を緩めた状態にしてネジの頭部と第一平板部85の間に隙間を形成することにより、ネジ91を固定部構成部材70の雌ねじ孔84に係合させた状態のままで、中間板部材71をスライド移動させることにより、中間板部材71を着脱することができる。
【0056】
押さえ板部材74は、2個のネジ97a,97bが孔96a,96bを貫通して中間板部材71の雌ねじ孔92a,92bと係合し、第二段部88に取付けられている。
即ち第二段部88の表面に押さえ板部材74の正面板部94の裏面側が当接し、押さえ板部材74の孔96a,96bと、第二段部88の雌ねじ孔92a,92bとを合致させて、ネジ97a,97bを挿通する。
【0057】
固定部構成部材70と、中間板部材71及び押さえ板部材74が取付けられた状態における中間取付け金具6は、図10,図14の通りであり、下板部材72と上板部材73によって構成され中間取付け金具6の一方の方向に開口する第一凹部105と、上板部材73の一部と上板部材73の上に設けられた中間板部材71によって構成され前記第一凹部105に対して反対方向に開口する第二凹部106と、中間板部材71の一部と中間板部材71の上に設けられた押さえ板部材74によって構成され前記第一凹部105と同方向に開口する第三凹部107とを有している。
そして第二凹部106に、発泡弾性体108と、シール部材109とが配されている。当該シール部材は、ゴム等の弾性体で作られており、第二凹部106の立壁面と、天井面を覆う。
同様に第三凹部107にもシール部材110が配されている。シール部材110は、ゴム等の弾性体で作られており、第三凹部107の立壁面と、天井面を覆う。なお、シール部材110はシール片111,112から形成されている。シール片111は、断面が略コ字状であり、折り返し部95の突出方向先端に取付けられている。シール片112は断面がL字状であり、第二平板部87と第二段部88に取付けられている。
【0058】
次に本実施形態の屋根構造1の施工方法について説明する。本実施形態の屋根構造1を施工するには、最初の屋根下地を形成し、その上にスレート瓦2を列状及び複数段状に並べ平面的な広がりをもって載置する。そしてこのスレート瓦2を設置する際に、軒先取付け金具(軒先取付け具)5と、中間取付け金具(取付け具)6を取付ける。
すなわち本実施形態では、太陽電池モジュール10の設置に先立って、基礎屋根構造3を構築する。
【0059】
具体的な手順は次の通りである。
すなわち、図16で示されるように、屋根下地の軒先に、通常スレート瓦2の軒先水切68を設置し、軒先取付け金具(軒先取付け具)5を設置する。軒先取付け金具5の接続片51の正面部60の位置は、スレート瓦2の軒先からの出寸法(図19におけるtl)より、軒先取付け金具5の板厚(図19におけるml)分だけ軒先側に出た位置となる。
軒先取付け金具5は、下板部52の取付け孔59に木ねじ又はクギ等の締結要素115を挿入し、屋根下地に締結要素115を係合させることによって取付ける。
軒先取付け金具5は、正面部60側から見たときに軒先に隙間が出来ない様に、間隔を詰めて取付けられる。
【0060】
図17で示すように、軒先取付け金具5が軒先に取付けられた状態においては、下板部52と第1正面立ち上げ部53と上板部55とによって構成される屋根部材保持凹部64が棟側に向かって開口する。
【0061】
そして次の工程として、軒側第1段目の列のスレート瓦2−1を設置する。スレート瓦は、前記した軒先取付け金具5の屋根部材保持凹部64に嵌め込まれることによって軒側の辺が保持される。(図18)
またスレート瓦は、軒先取付け金具5の下板部52の上部全域を覆うから、軒先取付け金具5の取付け孔59には軒側第1段目の列のスレート瓦2−1が被さる。そのため軒先取付け金具5の取付け孔59に雨水が侵入することはない。
【0062】
また前記した様にスレート瓦2には、4個の取付け孔12が設けられているので、当該取付け孔にクギ等116を挿通して屋根下地に係合し、スレート瓦2−1の中間部分を固定する。その結果、図19のように軒側第1段目の列のスレート瓦2−1は、先端側が軒先取付け金具5に保持され、中間部がクギ等116で固定されることとなり、全体として安定する。
【0063】
続いて、軒側から第2段目の列のスレート瓦2−2を設置する。
第2段目の列のスレート瓦2−2の設置方法は、公知の屋根工事と同一であり、先に敷設した軒側第1段目の列のスレート瓦2−1の棟側の一部に、第2段目の列のスレート瓦2−2の軒側の一部を重ねる(図20)。
ここで1段目の列のスレート瓦2−1と、第2段目の列のスレート瓦2−2の重ねしろの大小は経験則によるが、少なくとも、1段目の列のスレート瓦2−1の取付け孔12に、第2段目の列のスレート瓦2−2が被さる様に重ねる。前記した様にスレート瓦2の取付け孔12は、スレート瓦2の短手方向の中心近傍に一列に並んでいるから、1段目の列のスレート瓦2−1と第2段目の列のスレート瓦2−2の重ねしろ(OW)は、スレート瓦2の短手方向の長さの50パーセントを超える。
【0064】
第2段目の列のスレート瓦2−2の設置を終えると、第2段目の列のスレート瓦2−2の4個の取付け孔12にクギ等117を挿通してクギ等117を屋根下地に係合させることとなるが、本実施形態では、この工程と平行して中間取付け金具(取付け具)6を取付ける。
推奨される手順としては、図21,図22のように、組み立て状態の中間取付け金具6から中間板部材71を外して固定部構成部材70だけを取付ける。
【0065】
より具体的には、先に敷設した第2段目の列のスレート瓦2−2に、中間取付け金具6の固定部構成部材70だけを載せる。
ここで中間取付け金具6の固定部構成部材70は、下板部材72と上板部材73を有し、両者が立ち上げ部75で接続された形状をしているから、下板部材72を第2段目の列のスレート瓦2−2に載置することとなる。そして固定部構成部材70の下板部材72に設けられた2行2列で合計4個の孔100a,100b,101a,101bの内、前方側列(立ち上げ部75側)の2個の孔100a,100bであって、さらにそのいずれか一方の孔を利用して固定部構成部材70を取付ける。即ち第2段目の列のスレート瓦2−2の孔12a,12b,12c,12dの内のいずれか一つと、固定部構成部材70の前列の孔100a,100bのいずれかを目視で合致させ、両者にネジを挿通して固定部構成部材70を固定する。ここで第2段目の列のスレート瓦2−2は、その全体が露出した状態であり、スレート瓦の孔12a,12b,12c,12dは直接目視することができるので、スレート瓦の孔12a,12b,12c,12dと固定部構成部材70の孔100a,100bを合致させるのは容易である。
【0066】
また下板部材72の上には上板部材73が存在するが、下板部材72の孔100a,100bの上部に相当する位置には102a,102bが設けられているから、当該孔102a,102bを通じてネジを下板部材72の100a,100bに挿通することができる。さらに上板部材73の孔102a,102bは、下板部材72の100a,100bよりも大きいので、ドライバーの回動作業も容易である。
固定部構成部材70が固定された状態においては、下板部材72と立ち上げ部75と上板部材73で構成される第一凹部105は、屋根の棟側に向かって開口する。
また第2段目の列のスレート瓦の孔12a,12b,12c,12dであって、固定部構成部材70の固定に利用されなかった孔には、ネジやクギが挿通されて屋根下地に固定される。
【0067】
こうして図23のように第2段目の列のスレート瓦2−2の固定が完了すると、次に図24のように、第3段目の列のスレート瓦2−3を取付ける。3段目の列のスレート瓦2−3は、その軒側の先端部分を中間取付け金具6の第一凹部105に挿入する。前記した様に第一凹部105は、屋根の棟側に向かって開口するから、3段目の列のスレート瓦2−3の挿入は容易である。
図24,図25で示されるように、3段目の列のスレート瓦2−3の軒側の辺は、第一凹部105に奥深く入る。ここで先の作業でネジが挿通された下板部材72の孔100a,100bは、前記した第一凹部105内にあるから、3段目の列のスレート瓦2−3の軒側の辺を第一凹部105に挿入することにより、3段目の列のスレート瓦2−3が、下板部材72の100a,100bに被さる。より具体的には、下板部材72の100a,100bの上部に上側のスレート瓦の取付け孔以外の部位が重なる。そのため下板部材72の孔100a,100bに雨水が侵入することはない。
【0068】
またこの状態においては、中間取付け金具6の上板部材73の下部には、その全域に3段目の列のスレート瓦2−3が存在する。そして次の工程として、図26,図27に示されるように、中間取付け金具6の上板部材73の後端寄りに設けられた取付け孔80a,80bのいずれかと、3段目の列のスレート瓦2−3の孔12a,12b,12c,12dのいずれかを合致させ、両者にクギ等118(クギ又はネジ)を挿通して中間取付け金具6を固定する。
ここで、中間取付け金具6の取付けに使用する孔は、先に第2段目の列のスレート瓦2−2との間でネジ等117を挿通する際に選択した孔(スレート瓦2−2の12a,12b,12c,12dのいずれか)に対して列方向にずれた位置に孔(スレート瓦2−3の12a,12b,12c,12dのいずれか)を選択することが望ましい。
より具体的には、図28で示されるように、下板部材72に設けられた4個の取付け孔の内、最も前列の2個の取付け孔100a,100bと、後端側の列の孔80a,80bの内、仮に先に取付け孔100aを使用して下板部材72を固定しているのであれば、後端側の列の孔は、孔80bを選択する。逆に先に取付け孔100bを使用して下板部材72を固定しているのであれば、後端側の列の孔は、孔80aを選択する。
言い換えると、前側でネジ等117を挿通した孔と、後ろ側でネジ等118を挿通した孔とを結ぶ直線は、屋根の傾斜方向に対して傾斜した線となる様に孔を選択する。
本実施形態では、このようにずれた位置に設けられたネジで中間取付け金具6が固定されているので、中間取付け金具6の取付強度が強固である。
【0069】
上記した中間取付け金具6の取付け孔80a,80bのいずれかと、3段目の列のスレート瓦2−3の孔12a,12b,12c,12dのいずれかを合致させる作業は、作業の際に、上板部材73が3段目の列のスレート瓦2−3の上に露出状態で載置されている状態であるため、孔を直接目視することができるので容易である。
また上板部材73の全長は、下板部材72の全長よりも長く、下板部材72の後端寄りに設けられた取付け孔80a,80bの下には下板部材72が存在しないので、ネジ等118は、単に上板部材73の取付け孔80a,80bとスレート瓦2−3の孔12a,12b,12c,12dのいずれかを貫通させるだけであり、目視可能な状態で作業を行うことができるので、作業性が良い。
【0070】
続いて4段目の列のスレート瓦2−4の敷設作業を行う。4段目の列のスレート瓦の敷設作業は、前述した2段目の列のスレート瓦2−2の敷設作業と略同様であり、先に敷設した軒側第3段目の列のスレート瓦2−3の棟側の一部に、第4段目の列のスレート瓦2−4の軒側の一部を重ねる(図29)。3段目の列のスレート瓦2−3と、第4段目の列のスレート瓦2−4の重ねしろの大小は経験則によるが、少なくとも、3段目の列のスレート瓦2−3の取付け孔12(12a,12b,12c,12dのいずれか)に、第4段目の列のスレート瓦2−4が被さる様に重ねる。
そのため中間取付け金具6の取付け孔80a,80bや、くぎ等118の締結要素の上に、第4段目の列のスレート瓦2−4が被さる。より具体的には、上板部材73の取付け孔80a,80bの上部に上側のスレート瓦2−4の取付け孔12(12a,12b,12c,12dのいずれか)以外の部位が重なる。そのため上板部材73の取付け孔80a,80bに雨水が侵入することはない。
【0071】
そして図30に示されるように、2段目の列の敷設作業と同様、第4段目の列のスレート瓦2−4の設置を終えると、第4段目の列のスレート瓦2−4の4個の取付け孔12にクギ等119を挿通してクギ等119を屋根下地に係合させることとなるが、この工程と平行して中間取付け金具6を取付ける。中間取付け金具6を取付ける作業は、2段目の列の作業と同一である。そして、図31で示される様にスレート瓦2−5を前述したスレート瓦2−3と同様の方法で取付ける。
【0072】
こうして、順次、5段目、6段目を工事し、棟に至るまでスレート瓦2を取付ける。すると図32で示されるように、屋根下地上にスレート瓦2の敷設が完了し、基礎屋根構造3が完成する。
その結果、屋根の最も軒先側には、軒先取付け金具5が固定され、スレート瓦2の一段置きに、中間取付け金具6の固定部構成部材70だけが取付けられた状態となる。
上記のように、本実施形態では中間取付け具6(固定部構成部材70)の取付けは、スレート瓦2の4個の取付け孔12を用いる。そのため、スレート瓦2に新たな取付用の孔を設ける等の加工を行う必要はなく、スレート瓦2が新たに設けた孔により強度が落ちるということがない。加えて、スレート瓦2の加工無しで取り付けられるため、取付け作業が容易である。
【0073】
そして続いて基礎屋根構造3上に、太陽電池モジュール10を設置する。
また本実施形態では、太陽電池モジュール10の敷設の際に、太陽電池モジュール10の配線を行う。
【0074】
太陽電池モジュール10は、基礎屋根構造3上に、列状及び複数段状に並べられて平面的な広がりをもって載置されるが、配線は簡単であり、同列上で隣接する太陽電池モジュール10のケーブルを接続するたけで足る。
本実施形態では、図33に示すように、隣接する太陽電池モジュール10,10において、一方の太陽電池モジュール10の第一コネクタ20と、隣接する他方の太陽電池モジュール10の第二コネクタ22とを接続させると、隣接する二つの太陽電池モジュール10,10を図34の様に電気的に並列に接続させることができる。即ち、白色の第一ケーブル16に取付けられた白色の第一コネクタ20と、黒色の第一ケーブル18に取付けられた黒色の第二コネクタ22とを接続させることで、隣接する太陽電池モジュール10,10の並列接続が可能になる。したがって本実施形態の太陽電池モジュール10は、左右の隣接する太陽電池モジュール10,10を、ケーブル16,18を用いて接続させることにより、モジュール段36に含まれる全ての太陽電池モジュール10を順次並列に接続させることができる。
【0075】
以下、太陽電池モジュール10を基礎屋根構造3上に取付ける工程と、これと平行して行われるケーブル配線工事について説明する。
【0076】
太陽電池モジュール10の敷設は、軒側の列から順に行われる。
先に説明した基礎屋根構造3を構築する作業により、軒先に軒先取付け金具5が取付けられているので、当該軒先取付け金具5のモジュール保持凹部65に第1列目の太陽電池モジュール10−1の軒側辺(ケーブルが突出していない側)を係合させる。
すなわち図35で示されるように、軒先取付け金具5には、支持台部57と第2正面立ち上げ部58と覆い板構成部61によってモジュール保持凹部65が構成され、当該モジュール保持凹部65は建屋の棟側に向かって開口している。そのため太陽電池モジュール10−1の軒側辺を棟側からモジュール保持凹部65に滑り込ませる。
【0077】
一方、図36で示すように、太陽電池モジュール10−1の棟側辺(ケーブルが突出している側)は、2段目のスレート瓦2−2に取付けられた固定部構成部材70の中央エリアBの前側に載置する。
そして太陽電池モジュール10−1の棟側辺を中央エリアBの前端部分に載置したままの状態で、当該固定部構成部材70に中間板部材71と押さえ板部材74を取付ける。実際上は、予め中間板部材71と押さえ板部材74とを一体化しておき、この状態で、固定部構成部材70に取付ける(図37)。
【0078】
より実際的には、固定部構成部材70の雌ねじ孔84a,84bにネジ91a,91bを緩めた状態で係合させておき、中間板部材71の第一平板部85を固定部構成部材70のエリアBに押し当てた状態で中間板部材71を軒側にスライドさせ、ネジ91a,91bの頭部を第一段部86の壁面に設けられた長孔延長部90に通過させ、ネジ91a,91bを長孔89に至らせる。
その後に、ネジ91a,91bを締め込む。その結果、太陽電池モジュール10−1の表面側が中間板部材71の裏面側で押さえられる。言い換えると、固定部構成部材70に中間板部材71と押さえ板部材74を取付けることによって、中間取付け金具6の上板部材73のエリアAと上板部材73の上に設けられた中間板部材71によって第二凹部106が形成され、当該第二凹部106に太陽電池モジュール10−1の棟側の辺が係合する。
【0079】
この状態において太陽電池モジュール10−1は、図38のように、軒側の辺が軒先取付け金具5のモジュール保持凹部65と係合し、棟側の辺が中間取付け金具6の第二凹部106に係合するので、対向する両辺が保持され、基礎屋根構造3から離脱できない状態となる。
また軒側と係合するモジュール保持凹部65内にはカバー66、保護部材67が設けられているので、太陽電池モジュール10−1の軒側が傷つくことがなく、且つがたつくこともない。
同様に、中間取付け金具6の第二凹部106にも同様に発泡弾性体108とシール部材109が設けられているので、太陽電池モジュール10−1の棟側が傷つくことがなく、且つがたつくこともない。
【0080】
こうして第一列目の太陽電池モジュール10−1を取付けると、続いて隣り合う太陽電池モジュール間でケーブルの配線を行う。
即ち、隣接する太陽電池モジュール10−1,10−1の第一ケーブル16と第二ケーブル18とを接続する。
【0081】
ここで本実施形態の太陽電池モジュール10は、上記したように、第一ケーブル16が第二ケーブル18よりも短く形成されている。そのため太陽電池モジュール10は、作業者がケーブル16,18の長さを確認することによって、そのケーブル16,18に取付けられたコネクタ20,22が第一コネクタ20であるのか、あるいは第二コネクタ22であるのかを瞬時に判断することができる。
【0082】
また本実施形態においては、ケーブル16,18は、太陽電池モジュール10の棟側の長辺150から突出しているから、コネクタ20,22同士の接続作業は、太陽電池モジュール10の外側上部で行うことができる。そして上部側の列の太陽電池モジュール10を設置すると、上部側の列の太陽電池モジュール10の配線収納空間41に配線されたケーブル16,18(コネクタ20,22を含む)が収容されることとなる。
ここで本実施形態では、中間取付け金具6にフック部77が設けられているから、配線し終えたケーブルをフック部77に係合させておくことにより、ケーブルの処理が容易となる。
【0083】
即ち、図39で示されるように、第一段の太陽電池モジュール10−1が敷設し終わった段階では、その上段部は、いまだスレート瓦2が露出した状態であり、中間取付け金具6の上板部材73に設けられたフック部77は、外部に露出した状態である。
そのため図40,41のように接続したケーブルを容易にフック部77に係合させることができる。ケーブルは、フック部77に係合されることにより、位置決めがなされ、フック部77よりも棟側にケーブルが行くことが防がれる。
【0084】
続いて、第二段の太陽電池モジュール10−2を敷設する。
図42,43に示されるように、第二段目の太陽電池モジュール10−2は、中間取付け金具6同士の間に設置される。即ち中間取付け金具6は、前記した様に2枚ごとのスレート瓦2に取付けられている。
そして第二段目の太陽電池モジュール10−2は、先に第一段の太陽電池モジュール10−1の棟側を保持した中間取付け金具6(以下 下部側中間取付け金具6)と、その上部側に設けられた中間取付け金具6(以下 上部側中間取付け金具6)に固定される。
具体的には、第二段目の太陽電池モジュール10−2は軒側の辺を、下部側中間取付け金具6の第三凹部107(モジュール載置部)に係合させる。
即ち下部側中間取付け金具6には、中間板部材71の一部と押さえ板部材74によって構成された第三凹部107がある。この第三凹部107は、第一凹部105と同方向に開口するものであり、棟側に向かって開口している。
そのため太陽電池モジュール10−2の軒側辺を棟側から下部側中間取付け金具6の第三凹部107に滑り込ませることができ、この操作によって太陽電池モジュール10−2の軒側辺を下部側中間取付け金具6の第三凹部107に係合させることができる。
【0085】
また下部側中間取付け金具6の第三凹部107は、上板部材73の中央エリアBにあり、高位置部である。そのため第二段目の太陽電池モジュール10−2の軒側辺は、第一段目の太陽電池モジュール10−1の棟側辺に重なる。
【0086】
一方、太陽電池モジュール10−2の棟側辺(ケーブルが突出している側)は、一段目の太陽電池モジュール10−1と同様に、4段目のスレート瓦2−4に取付けられた上部側の固定部構成部材70の中央エリアBの前端側に載置する(図42)。
そして太陽電池モジュール10−2の棟側辺を中央エリアBに載置したままの状態で、当該固定部構成部材70に中間板部材71と押さえ板部材74を取付け、中間板部材71の裏面側で押さえる。その結果、上部側中間取付け金具6の上板部材73の前端側エリアA及び中央エリアBと上板部材73の上に設けられた中間板部材71によって第二凹部106が形成され、当該第二凹部106に太陽電池モジュール10−2の棟側の辺が係合し、太陽電池モジュール10−2は対向する両辺が保持され、基礎屋根構造部から離脱できない状態となる。
【0087】
また太陽電池モジュール10−2の軒側と係合する第三凹部107にはシール部材110(作図の都合上図42,43では省略 図10,14等参照)が設けられているので、太陽電池モジュール10−2の軒側が傷つくことがなく、且つがたつくこともない。
同様に、上部側中間取付け金具6の第二凹部106にも同様に発泡弾性体108とシール部材109が設けられているので、太陽電池モジュール10−2の棟側が傷つくことがなく、且つがたつくこともない。
【0088】
図44に示されるように、また先に配線された第一段目の太陽電池モジュール10−1,10−1の各ケーブル16,18は、下部側中間取付け金具6の上板部材73に設けられたフック部77と係合しているので、ケーブルは、太陽電池モジュールの裏面側の配線収納空間41に納まる。
すなわち前記した様に、太陽電池モジュール10の裏面側に断熱補強材23が設けられているが、軒側の辺の近傍においては、断熱補強材23が欠落し、所定の空隙が設けられている。本実施形態においては、ケーブルは基礎屋根構造部側から突出したフック部77と係合しているので、ケーブルは過度に棟側に入り込まない。そのため第2段目の太陽電池モジュール10−2を設置しても、第二段目の太陽電池モジュール10−2の断熱補強材23が第一段目の太陽電池モジュール10−1のケーブルを踏むことがない。
【0089】
こうして、第2段目の太陽電池モジュール10−2の全てを設置し終えると、先と同様にケーブルを配線し、当該ケーブルをフック部77に係合する。そしてさらに第3段目の太陽電池モジュール10−3を設置する。こうして、順次、太陽電池モジュール10を設置し、所望の段数の設置を終えると、最も上段部の太陽電池モジュール10の棟側に雨仕舞い板11を設置し、工事を完了する(図45)。
【0090】
本実施形態の屋根構造1が雨天にさらされた場合、雨水の大半は、太陽電池モジュール10の上を流れて軒先に至り、軒先から落下する。
ただし多少の雨水は、太陽電池モジュール10下に回り込むが、太陽電池モジュール10の下には、スレート瓦2が葺かれているので、建屋内に雨水が入ることはない。また中間取付け金具6の取付け孔には、いずれも上部側のスレート瓦2が重なっており、取付け孔に雨水が侵入することはない。
【0091】
図29を参照しつつ、中間取付け金具6の第一凹部105に軒先側の辺が挿入される屋根部材(スレート瓦2−3)を「特定の屋根部材」とし、中間取付け金具6の下板部材72の下側に位置し、「特定の屋根部材」の下に重なる屋根部材(スレート瓦2−2)を「下側屋根部材」とし、「特定の屋根部材」の上に軒側の自由端があって「特定の屋根部材」の上に重なる屋根部材(スレート瓦2−4)を「上側屋根部材」として説明する。
中間取付け金具6は「特定の屋根部材」の端部に装着されてその下板部材72が「特定の屋根部材」と「下側屋根部材」との間に配される。そして下板部材72の孔100(孔100a,100bのいずれか)にネジ等117(締結要素)が挿入され、「下側屋根部材」の取付け孔12に当該ネジ等117(締結要素)が挿通されることで中間取付け金具6の下板部材72が屋根に固定されている。
前記した様に屋根部材(スレート瓦2)は、あたかも魚の鱗の様に一部が隣接する屋根部材(スレート瓦2)と重なり一部が露出する状態で列状及び複数段状に並べられて平面的な広がりをもって載置され(図32参照)、ネジ等117(締結要素)が挿通された「下側屋根部材」の上に「特定の屋根部材」が載置されている。そのため「下側屋根部材」の取付け孔12には、「特定の屋根部材」が被さり、当該取付け孔12に雨水が侵入することはない。
また上板部材73は、「特定の屋根部材」の上に重なり、上板部材73の取付け孔80(取付け孔80a,80bのいずれか)にネジ等118(締結要素)が挿入されて「特定の屋根部材」の屋根部材の取付け孔12に当該ネジ等118(締結要素)が挿通され、このネジ等118(締結要素)によって中間取付け金具6の上板部材73が基礎屋根構造に固定される。
またネジ等118が挿通された「特定の屋根部材」の上に「上側屋根部材」が載置されているので、「特定の屋根部材」の取付け孔には、「上側屋根部材」が被さり、取付け孔に雨水が侵入することはない。
【0092】
軒先取付け金具5の取付け孔59についても同様であり、第一段目のスレート瓦2−1が重なっており、取付け孔59に雨水が侵入することはない(図19)。
そのため太陽電池モジュール10の下に回り込んだ雨水は、スレート瓦2の上を流れ、軒先に至る。ここで軒先取付け金具5は、各固定片50が相当の間隔を開けて取付けられているので、固定片50同士の間に大きな空隙がある。そのため雨水は、この空隙部を抜けて軒下に落下する(図47)。
そのため雨水が屋根にたまることはない。
【0093】
また本実施形態におけるスレート瓦2の重なり具合に注目すると、太陽電池モジュール10の裏面側の端子ボックス14の位置についても理想的であると言える。
即ち前記した様に、各段におけるスレート瓦2の重ねしろは、スレート瓦2の短手方向の長さの50パーセントを超えるから、図46に示されるように、基礎屋根構造3の断面構造において、屋根下地上に2枚のスレート瓦2が重なっている部分X1(小重畳部であって2重部位である部分)と、3枚のスレート瓦が重なっている部分X2(大重畳部であって3重部位である部分)がある。
そして、最も棟側のスレート瓦2を除いて、各スレート瓦2(例えば2−3)の棟側の辺は、棟側に隣接する他のスレート瓦(例えば2−4)の下に位置する。そして、各スレート瓦2はいずれも軒側先端部分128が露出し、軒側の辺が開放された状態で取付けられている。
ここで、軒側先端部分128は必ずX2の位置にある(例えば、スレート瓦2−4の軒側先端部分128はX2aの位置にある)。これに対して、各スレート瓦2の軒側先端部128よりも先(軒側)の位置は、X1となる。
そのため、屋根下地から天側に突出する高さを考慮すると、3枚のスレート瓦2が重なっている部位(X2)の突出量は大きく、2枚のスレート瓦2が重なっている部位(X1)の突出量は小さい。言い換えると基礎屋根構造3の表面には、凹凸があり、各スレート瓦2の軒側先端部分128は最も飛び出しており、その先の位置は、最も凹んでいる。
【0094】
これに対して上に重ねられる太陽電池モジュール10は、一枚の平板状であり、略長方形状である。そして、太陽電池モジュール10は一方の長辺を棟側に他方の長辺を軒側にして配置されている。また、太陽電池モジュール10の短手方向の長さは、スレート瓦2のそれよりも長く、2枚のスレート瓦2(スレート瓦2−3,2−4)の露出部分に跨がって配列されている。
そのため、太陽電池モジュール10とスレート瓦2の表面との間隙は、位置によって異なることとなり、2枚のスレート瓦2が重なっている部位(X1)は間隙が大きく、3枚のスレート瓦2が重なっている部位(X2)の間隙は小さい。
なお、太陽電池モジュール10とスレート瓦2の表面との間隙は位置によって5mm〜30mmであることが望ましく、より好適には2枚のスレート瓦2が重なっている部位(X1)の間隙は20mmであって、3枚のスレート瓦2が重なっている部位(X2)の間隙は9mmであることが望ましい。
【0095】
ここで本実施形態では、端子ボックス14は、太陽電池モジュール10の裏面側に接着剤などを用いて固定されており、その位置は、太陽電池モジュール10の長辺の略中央であって、上側寄りの位置に取付けられている(図5)。
【0096】
そして太陽電池モジュール10はその上側の辺が、スレート瓦2−4の突端部分に取付けられた中間取付け金具6によって保持されており、太陽電池モジュール10はその上側の辺の位置は、3枚のスレート瓦が重なっている部位(X2c)である。そのため太陽電池モジュール10の上辺は、スレート瓦の表面との間隙が最も小さい位置である。
また太陽電池モジュール10の下側の辺についても中間取付け金具6によって保持されているから、太陽電池モジュール10はその下側の辺の位置についても、3枚のスレート瓦が重なっている部位(X2a)である。そのため太陽電池モジュール10の下辺は、スレート瓦の表面との間隙が最も小さい位置である。
さらに本実施形態では、太陽電池モジュール10は2枚のスレート瓦2−3,2−4の露出部分に跨がって配列されているから、太陽電池モジュール10の真下の位置にもスレート瓦2−4の突端部がある。従って太陽電池モジュールの短手方向の中心部についても、3枚のスレート瓦が重なっている部位(X2b)である。そのため太陽電池モジュール10の中心部についても、スレート瓦の表面との間隙が最も小さい位置である。
【0097】
逆に、上下の辺の近傍と中心近傍を除いた位置は、2枚のスレート瓦が重なっている部位(X1)であって、太陽電池モジュール10の裏面側と、スレート瓦の表面との間の隙間が大きい。
そして本実施形態では、この隙間の大きい領域(2重部位)に端子ボックス14がある。
即ち太陽電池モジュールの端子ボックス14は、図5の様に太陽電池パネル13の長辺の略中央であって、上側の辺側の領域寄りであり、且つ上側の辺よりも少し内側に入った位置に取付けられている。
【0098】
そしてこの位置は、2枚のスレート瓦が重なっている部位(X1)である。より具体的には、図45,46に示される様にこの位置はスレート瓦2−5の軒側の辺180のさらに軒側の位置である。つまり、上記した様に、スレート瓦2(2―5)は、棟側の辺が棟側に隣接する他のスレート瓦2(2―6)の下にあり、軒側の辺180が開放されている。そして、開放されている軒側の辺180のさらに軒側の位置はX1となるから、この位置は太陽電池モジュール10の裏面側と、スレート瓦の表面との間の隙間が大きい領域である。
そのため本実施形態によると、太陽電池モジュール10の表面の高さが、下地たるスレート瓦の表面の高さに近いものとすることができ。太陽電池モジュール10と下地たるスレート屋根との間に一体感がある。
そのため本実施形態の屋根構造は、見た目が美しい。
また言い換えると、本実施形態で採用する太陽電池モジュール10は、その厚さが薄く、屋根に載置した場合に屋根の他の部位との一体感を出しやすく、美しい。
【0099】
次に、本実施形態の屋根構造1をメンテナンスする場合の手順について説明する。
太陽電池モジュール10の一つが何らかの理由で故障した場合は、当該太陽電池モジュール10を取り替える必要があるが、本実施形態の屋根構造1では、任意の位置の太陽電池モジュール10を無理なく取り出すことができる。
例えば第1段目の太陽電池モジュール10が故障した場合は、図47のように軒先取付け金具5の接続片51を取り外す。前記した様に接続片51は、ネジ62,63によって固定片50に取付けられているから、当該ネジ62,63を外すと、図47のように固定片50が基礎屋根構造3上に残り、接続片51だけが外れる。
そして接続片51が外れることによってモジュール保持凹部65(図9等参照)の上部が外れ、太陽電池モジュールを抜き取ることができる。
【0100】
また第2段目以降の太陽電池モジュール10が故障した場合は、図48,49のように中間取付け金具6の押さえ板部材74を取り外す。前記した様に押さえ板部材74は、ネジ97a,97bによって中間板部材71に取付けられているから、当該ネジ97a,97bを外すと、図48の様に中間板部材71が基礎屋根構造3上に残り、押さえ板部材74だけが外れる。
そして押さえ板部材74が外れることによって第三凹部107の上部が外れ、図49の様に太陽電池モジュール10を上側に抜き取ることができる。
【0101】
本実施形態で採用する中間取付け金具6は、前記した様に、基礎屋根構造3を構築する際に屋根に取付けることを目的として設計されたものであるが、既設の屋根にも取付けが可能な設計となっている。
即ち本実施形態で採用する中間取付け金具6では、前記した様に下板部材72には、2行2列に孔100,101が設けられている(図11,12,13参照)。そして先に説明した様に、2行2列で合計4個の孔100a,100b,101a,101bの内、前方側列(立ち上げ部75側)の2個の孔100a,100bと、上板部材73の後端近傍(立ち上げ部75側から遠い位置)に設けられた取付け孔80a,80bを利用して中間取付け金具6が取付けられる。
【0102】
これに対して、既設の屋根に中間取付け金具6を取付ける場合には、後端近傍の取付け孔80a,80bを使用せず、下板部材72に設けられた2行2列で合計4個の孔100a,100b,101a,101bの内、後方側列の2個の孔101a,101bを利用する。
【0103】
以下、既設の屋根に中間取付け金具6を取付ける方法について説明する。
既設の屋根は、スレート瓦2等が鱗の如くに、一部が隣接する屋根部材と重なり、残部が露出する状態で屋根下地上に列状及び複数段状に並べられて平面的な広がりをもって載置されている。
この様な完成された屋根に中間取付け金具6を取付ける場合には、図50の様にスレート瓦2の重なり部分の間に、中間取付け金具6の下板部材72を挿入する。
その結果、図51の様に、中間取付け金具6の下板部材72が特定のスレート瓦2の下に滑り込んで外からは見えない状態となる。一方、上板部材73は、前半部分が特定のスレート瓦2の上に露出し、後半部分は、特定のスレート瓦2の上に重なる瓦の下にもぐり込む。
従って上板部材73に設けられた6個の孔102a,102b,103a,103b,80a,80bの内、後端近傍の取付け孔80a,80bはスレート瓦の下に隠れるが、前半部分に設けられた2行2列の102a,102b,103a,103bは、外部に露出する。
【0104】
そして既設の屋根に中間取付け金具6を取付ける場合には、外部に露出した2行2列の102a,102b,103a,103bの孔の内、後側の孔103a,103bを利用する。即ち当該孔103a,103bに直接ネジ釘やくぎ等の締結部材を挿入する。もちろん必要に応じて、ドリルで下孔を設けてもよい。
当該孔103a,103bにネジ釘やくぎ等を打ち込むと、くぎ等の先端は、スレート瓦2を貫通して中間取付け金具6の下板部材72に至る。
ここで本実施形態で採用する中間取付け金具6では、上板部材73に設けられた孔103a,103bの真下部分の下板部材72に、孔101a,101bが設けられている(図13参照)。そのため上板部材73側からくぎ等を打ち込むと、くぎ等の先端は、下板部材72の孔101a,101bに入り、さらに下側に抜けて屋根下地と係合する。そのため中間取付け金具6は強固に取付けられる。
【0105】
以上説明した実施形態では、中間取付け金具6は上板部材73の長さが下板部材72の長さよりも長いものを例示したが、図52(a)のように両者の長さが同じであってもよい。ただし、この様な構成を採用する場合には、上板部材73の後端近傍の取付け孔80a,80bに真下部分の下板部材72に、孔121を設ける必要がある。
また、図52(b)のように下板部材72の長さの方が長いものであってもよい。なお、この様な構成を採用する場合には、下板部材72の後端近傍に孔121を設ける必要がある。
【0106】
以上説明した実施形態では、太陽電池モジュール10の大きさが、2枚のスレート瓦2の露出部分に跨がって配列される大きさとした。しかしながら、太陽電池モジュール10の大きさは、任意であり、スレート瓦2と同じ大きさであってもよく、3枚のスレート瓦2の露出部分に跨がって配列される大きさであってもよい。
しかしながら、本実施形態は、スレート瓦2の軒側突端に取付けた中間取付け金具6に太陽電池モジュール10を取付けることを基本構成とするから、太陽電池モジュール10の短手方向の長さは、複数枚のスレート瓦2の露出部分の長さに太陽電池モジュール10の重なりしろの長さを足したものとなる。
【0107】
また上記した実施形態の太陽電池モジュール10は、特有の構成として、各太陽電池セル17を横断する限定溝21が設けられている(図3参照)。そして限定溝21よりも上側の領域(B領域)は、端子ボックス14に接続されていない。
この構成は、太陽電池モジュール10を長持ちさせる上で推奨される構成である。即ち、前記したB領域は、そもそも棟側の段の太陽電池モジュール10に覆われて陰になる部分であり、発電に寄与しない。そのため太陽電池モジュール10に限定溝21を設け、限定溝21よりも上側の領域(B領域)は、端子ボックス14に接続しない構成を採用しても、何らの不都合もない。
【0108】
一方、当該部分は、図1等に示されるように、太陽電池モジュール10同士の隙間部分であり、昆虫やクモ、鳥等の侵入によって予期しない故障を発生させる懸念のある部分である。
即ち本実施形態では、各太陽電池モジュール10が、中間取付け金具6を介して取付けられる。そして中間取付け金具6は、ある程度の厚さを有するから、各太陽電池モジュール10の軒側自由端と、その下の太陽電池モジュール10との間には、必然的に隙間があり、昆虫等が侵入する。例えば蜂が侵入して巣を作ったり、蟻が侵入して巣を作ることが懸念される。
ここで昆虫やクモ等が分泌する分泌物には、長年の内に思わぬ弊害をもたらすものもある。例えば蟻が分泌する蟻酸は、強い酸であり、この蟻酸に長期に渡ってふれることによって、太陽電池モジュール10の一部が腐食する可能性もある。
【0109】
またB領域は、太陽電池モジュール10に覆われて陰になる部分であるから、外からは様子が判らない。そのため、たとえば雨仕舞い板11の隙間からねずみが侵入し、太陽電池モジュール10をかじることがあるかも知れない。
そのため限定溝21よりも上側の領域(B領域)は、予期しないショートや断線、漏電を生じさせる懸念を有している。また当該領域は、外から見えないので、故障が生じた場合に故障の原因を発見しにくく、結局すべての太陽電池モジュール10を入れ換えることとなる懸念がある。
【0110】
そこで本実施形態では、棟側の段の太陽電池モジュール10に覆われて陰になる部分を限定溝21で電気的に切り離し、事故の懸念を払拭している。
この様に、各太陽電池セル17を横断する限定溝21が設ける構成は、推奨される構成であるが、本発明に必須のものではなく、採用は任意である。
【0111】
また上記した実施形態では、取付け孔12を有するスレート瓦2を用いたが、本発明の屋根部材はこれに限るものではない。例えば、取付け孔の無い屋根部材を用いて敷設時に締結部材等によって孔をあけて取付けてもよい。使用する屋根部材は任意に選択してよい。
【0112】
以上説明した実施形態では、中間取付け金具6の押さえ板部材74は断面形状が「L」字状の部材を採用したが、押さえ板部材の形状はこれに限るものではない。例えば、図53に示されるように、断面「コ」字状の押さえ板部材114を用いてもよい。押さえ板部材の形状は適宜変更してよい。
【0113】
また、以上説明した実施形態では、太陽電池モジュール10に溝状部46を有する断熱補強材23を取付けたが、断熱補強材の形状及び数はこれに限るものではない。例えば図54に示されるように、太陽電池モジュール10の中央部分に正面視が「凹」字状の断熱補強材135aを取付け、長手方向両端部に正面視が略正方形状の135b,135cを取付けてもよい。断熱補強材の形状及び数は適宜変更してよい。
【0114】
さらにまた、以上説明した実施形態では、端子ボックス14が直方体であって、X1(小重畳部)にのみ配置される場合を例に挙げて説明したが、端子ボックス14の形状及び配置方法はこれに限るものではない。以下図55乃至図58を参照しつつ具体的に説明する。
【0115】
本発明の屋根構造における端子ボックスは直方体の端子ボックス14に限るものではない。例えば、端部が丸みを帯びた形状の端子ボックス170(図55)であってもよいし、端子ボックスの厚さが先端側に近づくにつれて薄くなる形状の端子ボックス171(図57)であってもよい。また、厚さの不均一な2つの部分からなる端子ボックス173(図58)であってもよい。端子ボックスの厚さは均一でなくてもよく、形状は任意に設計可能である。
【0116】
また、図55乃至58に示されるように、端子ボックスの一部分がX2に位置するように設けてもよい。つまり、端子ボックスの端部及び、端子ボックスの厚さが薄くなっている部分が一部だけX2に及んでもよい。また、図58のようにX2(X2b)を跨いで2つのX1(X1aとX2b)に端子ボックス14が位置するように配置してもよい。
ただし、前述のようにX2はスレート瓦2から太陽電池パネル13の裏面までの隙間が狭くなっている位置であるので、端子ボックスの体積の大部分が位置すると、太陽電池モジュール10を屋根の他の部位との一体感を出して設置することができない。したがって、X2に位置する端子ボックスの体積はできるだけ少ないことが望ましい。具体的には端子ボックスの体積の80パーセント以上がX1に位置することが望ましく、X2に位置する端子ボックスの体積が全体の5パーセント未満になることが望ましい。
【0117】
さらにまた、作図の都合上図示していないが、上記したX2を軒側から棟側に向かって3等分した場合、軒側の部分が棟側の部分に比べて、太陽電池パネル13の裏面までの隙間が狭くなる。したがって、図55に示されるように、例えばX2bをX2b−1、X2b−2、X2b−3に3等分した場合、X2b−1、X2b−2、X2b−3の順に太陽電池パネル13の裏面までの隙間が狭い。
このことから、X2に端子ボックスの一部が位置してもよいが、最も隙間の狭いX2b−1には端子ボックスが配置されないことが望ましいといえる。
【0118】
なお、以上説明した実施形態では、小重畳部は2枚のスレート瓦が重なっている部分として説明したが、本発明の屋根構造における小重畳部はこれに限るものではない。屋根部材の敷設方法によって2枚以上の瓦が重なっている部分としてもよい。また、本発明の大重畳部も3枚のスレート瓦2が重なっている部分に限るものではない。大重畳部は小重畳部より多くの瓦が重なっている部分であればよい。
【0119】
以下、上記した実施形態で採用した太陽電池パネル13の太陽電池セル17の断面構造について付言する。図59は、太陽電池パネル13の層構成を簡単に説明する太陽電池の概念図の一例である。太陽電池パネル13は、図59に示すように、ガラス基板141に透明導電膜142と半導体層143及び裏面側電極膜144が順次積層されたものであり、透明導電膜142と裏面側電極膜144の間に電位差が生じる。即ち透明導電膜142と半導体層143及び裏面側電極膜144とによって太陽電池140を構成している。
しかしながら、一個の太陽電池140が発生させる電圧は極めて低いものであり、一つの太陽電池140だけでは実用的な電圧に達しない。そこで太陽電池140の薄膜に複数の溝15を設けて多数の単体電池(太陽電池セル17)に分割し、この多数の太陽電池セル17を電気的に直列接続し、実用的な電圧にまで高める工夫がなされている。なおこの様な太陽電池は集積型太陽電池と称されている。
【0120】
図60は、本実施形態で採用する太陽電池パネル13に構成される集積型太陽電池の層構成を概念的に説明する概念図である。
太陽電池パネル13の集積型太陽電池155の層構成は、ガラス基板141に透明導電膜142と半導体層143及び裏面側電極膜144が順次積層されたものであるが、各層に溝156,157,158が形成されている。
【0121】
すなわち透明導電膜142に第一溝156が形成され、透明導電膜142が複数に分割されている。また半導体層143には第二溝(電気接続溝)157が形成され、半導体層143が複数に分割され、さらに当該第二溝157の中に裏面側電極膜144の一部が進入して溝底部で透明導電膜142と接している。
さらに裏面側電極膜144と半導体層143を切除して透明導電膜142の表面に至る第三溝158が設けられている。
【0122】
また集積型太陽電池155の端部近傍には、裏面側電極膜144と半導体層143を切除して透明導電膜142に至る3列の電極接続溝159が設けられている。電極接続溝159には半田160が流し込まれ、積層体の上部に配されたリード161が接続されている。リード161は半田160を介して透明導電膜142と連通している。図示していないが、裏面側電極膜144も別のリード161と半田160を介して電気的に連通している。
【0123】
また電極接続溝159の外側には、分離溝162が形成されている。分離溝162は、図60の様に、透明導電膜142と半導体層143及び裏面側電極膜144の三者が共に除去されて形成された溝である。
【0124】
そして、各太陽電池セル17を横断する限定溝21が設けられている。限定溝21についても、図60の様に、透明導電膜142と半導体層143及び裏面側電極膜144の三者が共に除去されて形成された溝である。
【0125】
さらにガラス基板141の最も外側の部位は、積層体が除去された裸地部165となっている。
また前記した裏面側電極膜144のさらに裏面側は図示しない被覆フィルムによって覆われている。
【0126】
太陽電池パネル13に構成される集積型太陽電池155は、透明導電膜142に設けられた第一溝156と、半導体層143(具体的にはp層、i層、n層を持つ)及び裏面側電極膜144に設けられた第三溝158によって各薄膜が区画され、独立したセルが形成されている。そして前記した様に、第二溝157の中に裏面側電極膜144の一部が進入し、裏面側電極膜144の一部が透明導電膜142と接しており、一つのセルは隣接するセルと電気的に直列に接続されている。
すなわち半導体層(太陽電池膜)143で発生した電流は、透明導電膜142側から裏面側電極膜144側に向かって流れるが、裏面側電極膜144の一部が第二溝157を介して透明導電膜142と接しており、最初のセルで発生した電流が隣のセルの透明導電膜142に流れる。そのため電圧が順次加算されてゆく。
【0127】
なお、前記した様に各太陽電池セル17を横断する限定溝21が設けられているから、大小二つの集積型太陽電池163,164が構成される。前記した様に限定溝21は、透明導電膜142と半導体層143及び裏面側電極膜144の三者が共に除去されて形成されたものであるから、大小二つの集積型太陽電池163,164は電気的に絶縁されている。
そして、図面下側のA領域(稼働領域)の集積型太陽電池163のみが端子ボックス14に接続されている。B領域(非稼働領域)の集積型太陽電池164は、端子ボックス14に接続されていない。
即ち端部に設けられたリード161のA領域(稼働領域)161aが端子ボックス14に接続され、B領域(非稼働領域)のリード161bは、端子ボックス14に接続されていない。
【0128】
なお上記した各溝の形成は、レーザ加工機を使用したレーザスクライブによって形成されている。また裸地部165の形成には、サンドブラスト等が採用されている。
【0129】
本発明の太陽電池モジュール10に上記したような集積型太陽電池や、所謂薄膜型太陽電池と呼ばれる太陽電池を用いると、太陽電池モジュール10の厚さを薄く設計可能であるので好ましい。
しかしながら、本発明の太陽電池モジュール10で使用される太陽電池は、このような薄膜型太陽電池や集積型太陽電池に限るものではない。これらは任意の太陽電池と置換してよい。
【符号の説明】
【0130】
1 屋根構造
2 スレート瓦(屋根部材)
3 基礎屋根構造
5 軒先取付け金具(軒先取付け具)
6 中間取付け金具(取付け具)
10 太陽電池モジュール
50 固定片
51 接続部
52 下板部
53 第1正面立ち上げ部
55 上板部
56 裏面立ち上げ部
57 支持台部
58 第2正面立ち上げ部
60 正面部
61 覆い板構成部
64 屋根部材保持凹部
65 モジュール保持凹部
70 固定部構成部材
71 中間板部材
72 下板部材
73 上板部材
74 押さえ板部材
75 立ち上げ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の屋根部材を有し、当該屋根部材は一部が隣接する屋根部材と重なり一部が露出する状態で屋根下地上に平面的な広がりをもって並べて載置され、当該基礎屋根構造上に、複数の太陽電池モジュールが平面的な広がりをもって並べて載置される屋根構造において、前記基礎屋根構造の断面構造は、位置によって屋根部材の重なり枚数が相違し、屋根部材の重なり枚数の少ない小重畳部と、屋根部材の重なり枚数が小重畳部よりも多い大重畳部があり、太陽電池モジュールは、裏面側に電力を取り出す端子ボックスが設けられており、前記端子ボックスの大部分が小重畳部上にあることを特徴とする屋根構造。
【請求項2】
端子ボックスの体積の80パーセント以上が小重畳部上にあることを特徴とする請求項1に記載の屋根構造。
【請求項3】
太陽電池モジュールの下部における基礎屋根構造の断面構造の内、最も屋根部材の重なり枚数が多い最大重畳部の長さを最も軒側の領域と最も棟側の領域と両者の中間領域に三等分したとき、最も軒側の領域上にある端子ボックスの体積は、端子ボックスの全体積の5パーセント未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載の屋根構造。
【請求項4】
前記小重畳部は2枚の屋根部材が重なった2重部位であり、前記大重畳部は3枚の屋根部材が重なった3重部位であり、前記端子ボックスの位置は、いずれも2重部位の上にあることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の屋根構造。
【請求項5】
基礎屋根構造を構成する屋根部材は、棟側の辺が棟側に隣接する他の屋根部材の下にあり、屋根部材の軒側の辺は開放されており、前記開放された辺のさらに軒側の位置に前記端子ボックスがあることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の屋根構造。
【請求項6】
太陽電池モジュールは、その幅が屋根部材の幅よりも大きく、複数段の屋根部材に跨がって屋根部材の上に配され、太陽電池モジュールは、全体形状が長方形であって2つの長辺と2つの短辺を有し、前記太陽電池モジュールは、一方の長辺を棟側に他方の長辺を軒側にして配置され、前記端子ボックスは、棟側の長辺寄りの位置にあることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の屋根構造。
【請求項7】
太陽電池モジュールは、複数の溝によって区切られた単体電池が電気的に直列接続されたものであり、各単体電池を横断する限定溝が設けられて面積の広い稼働領域と面積の狭い非稼働領域に区画され、稼働領域に属する単体電池が端子ボックスに接続されており、前記太陽電池モジュールは、列状及び複数段状に並べられて平面的な広がりをもって載置され、一部が隣接する段の太陽電池モジュールと重なると共に一部が露出する状態であり、前記非稼働領域が太陽電池モジュールの重なり部に配置されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の屋根構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【公開番号】特開2011−163061(P2011−163061A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29582(P2010−29582)
【出願日】平成22年2月13日(2010.2.13)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】