説明

巻き込み防止装置

【課題】プーリのロープ巻き込み箇所周辺を包囲することで、手指の巻き込みを効果的に防止するとともに、滑車に容易に装着することができる巻き込み防止装置及びこれを備えた滑車を提供する。
【解決手段】ロープRを巻掛けるプーリ101、及びプーリの回転軸102を軸支する支持体110を備えた滑車100に装備される巻き込み防止装置1であって、プーリから繰り出されたロープを挿通する挿通部15を備えて滑車の両側面の少なくとも一部を覆うカバー10と、カバーを支持体に着脱する着脱機構20と、を備え、着脱機構は、支持体に設けた被掛止部111と、カバーに設けられて被掛止部を着脱自在に掛止する掛止爪(21、22)と、掛止爪(22)を動作させることにより被掛止部に着脱させる動作機構30と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工事資材や工具等をロープを用いて高所に引き上げる際に使用される滑車の改良に関し、特に滑車を構成するプーリ及びプーリを支持する支持体と、滑車によって引き取られるロープとの間に作業員の手や身体の一部が巻き込まれる事故を防止するための巻き込み防止装置及び滑車に関する。
【背景技術】
【0002】
架空電線を支持する鉄塔や電柱等にて行われる高所作業に必要な工事資材や工具等は、鉄塔等の適所から吊り下げられた滑車と、滑車を構成するプーリに巻き掛けられたロープを利用して地表から引き上げられる。
鉄塔等の上では、資材等が鉄塔等に衝突しないように作業者がロープの通過位置を調整しながら搬送されてくる資材等を受領する。このとき、誤って手や身体の一部等を滑車とロープとの間に巻き込んでしまうことがある。
このような巻き込み事故を防止するべく、特許文献1には、ロープを通過させるための切欠き部を両端中央部に備えた略H型の底板と、底板の側縁部の夫々から対向して立設され、回転軸に係合可能な側壁を備えた滑車用安全カバーが記載されている。特許文献1においては、滑車にカバーを取り付けることにより、指等がロープと滑車との間に入りにくい構造としたので、指等が挟まれる事故を効果的に予防でき、送電鉄塔上の作業をより安全かつ効率的に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−106517公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1記載の発明では、底板の切欠き部分が開放状態にあり、滑車とロープの接触する箇所が完全には包囲されていないため、切欠き部分或いはロープと滑車との間に誤って手指を巻き込む余地が残されており、災害防止の効果が十分ではないという問題がある。また、金車に安全カバーを取り付ける際、金車固定用ナットを外す必要があり、安全カバーの取り付け作業が繁雑であるという問題がある。
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、プーリのロープ巻き込み箇所周辺を包囲することで、手指の巻き込みを効果的に防止するとともに、滑車に容易に装着することができる巻き込み防止装置及びこれを備えた滑車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、ロープを巻掛けるプーリ、及び該プーリの回転軸を軸支する支持体を備えた滑車に装備される巻き込み防止装置であって、前記プーリから繰り出されたロープを挿通する挿通部を備えて前記滑車の両側面の少なくとも一部を覆うカバーと、該カバーを前記支持体に着脱する着脱機構と、を備え、前記着脱機構は、前記支持体に設けた被掛止部と、前記カバーに設けられて該被掛止部を着脱自在に掛止する掛止爪と、該掛止爪を動作させることにより前記被掛止部に着脱させる動作機構と、を備えた巻き込み防止装置を特徴とする。
請求項1の発明では、ロープが挿通部内を軸方向に移動する。また、巻き込み防止装置は、可動式の掛止爪にて支持体に掛止される。
請求項2に記載の発明は、前記挿通部を開閉する開閉片を備えた請求項1記載の巻き込み防止装置を特徴とする。
請求項2の発明では、挿通部が開閉するのでロープの脱着が容易である。
【0006】
請求項3に記載の発明は、前記掛止爪が前記支持体を掛止する方向に弾性付勢されている請求項1又は2記載の巻き込み防止装置を特徴とする。
請求項3の発明は、掛止爪が支持体を掛止する方向に弾性付勢されているので、掛止爪を支持体に合わせて調整する作業が簡便となり、巻き込み防止装置の滑車への脱着が容易となる。
請求項4に記載の発明は、前記開閉片は、前記挿通部を閉止する方向に弾性付勢されている請求項2又は3記載の巻き込み防止装置を特徴とする。
請求項4の発明は、開閉片が挿通部を閉止する方向に弾性付勢されているので、ロープの脱着が容易である。
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の何れか一項記載の巻き込み防止装置を備えた滑車を特徴とする。
請求項5の滑車は、請求項1乃至4の巻き込み防止装置の各効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、挿通部にロープを挿通するので、ロープと巻き込み防止装置との間に手指が挟まれる虞が減少する。また、滑車の両側面の少なくとも一部がカバーにより覆われているので、プーリのロープ巻き込み箇所に手指が挟まれる虞が減少する。また、動作機構により掛止爪を動作させて支持体の被掛止部に掛止するので、巻き込み防止装置の取り付けが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る巻き込み防止装置の使用状態を示す斜視図である。
【図2】(a)(b)は第一の実施形態に係る巻き込み防止装置の分解斜視図である。
【図3】第一の実施形態に係る巻き込み防止装置の断面図である。
【図4】開閉片の平面図であり、(a)乃至(c)は、切欠きにロープを取り付ける手順を示す図である。
【図5】開閉片の平面図であり、(a)乃至(c)は、切欠きからロープを取り外す手順を示す図である。
【図6】開閉片の回動軸部分の拡大断面図である。
【図7】第二の実施形態に係る巻き込み防止装置の断面図である。
【図8】動作機構のうち動作片部分を示した平面図である。
【図9】第三の実施形態に係る巻き込み防止装置の断面図である。
【図10】動作機構のうち動作片部分を示した平面図である。
【図11】第四の実施形態に係る巻き込み防止装置の断面図であり、(a)は全体図であり、(b)は可動掛止爪部分のみを示した図である。
【図12】第五の実施形態に係る巻き込み防止装置を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は断面図である。
【図13】開閉片の平面図であり、(a)乃至(c)は、切欠きにロープを取り付ける手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔第一の実施形態〕
以下、本発明の第一の実施形態を図1乃至図3に基づいて説明する。図1は、本発明の第一の実施形態に係る巻き込み防止装置の使用状態を示す斜視図である。図2は、本実施形態に係る巻き込み防止装置の分解斜視図である。図3は、本実施形態に係る巻き込み防止装置の断面図である。本実施形態に係る巻き込み防止装置は、ロープを挿通する挿通孔及び滑車に着脱する着脱機構を備えた点に特徴がある。
本発明に係る巻き込み防止装置1が装着される滑車100は、ロープ又はチェーン等の線状部材を巻き掛けるプーリ101と、プーリ101の回転軸102を軸支する支持体110と、支持体110の上方に備えられて、送電鉄塔の腕金等から滑車100を吊り下げ支持可能にする吊り具120と、を備える。
巻き込み防止装置1は、滑車100の両側面の少なくとも一部を覆うカバー10と、カバー10を支持体110に着脱する着脱機構20と、を備えている。着脱機構20は、支持体110の最下方に設けられた被掛止部111と、カバー10に設けられて被掛止部111を着脱自在に掛止する掛止爪(固定掛止爪21、可動掛止爪22)と、可動掛止爪22を動作させることにより被掛止部111に着脱させる動作機構30と、を備えている。
【0010】
カバー10は、滑車100の下方部分を覆う部材であり、滑車100に着脱自在に取り付けられる。カバー10は、プーリ101の円板面側における滑車100の両側面を覆う側板11と、滑車100の底面側を覆う底板12と、プーリ101のロープ溝103の一部を覆うとともにプーリ101から繰り出されたロープRが通過する切欠き14を備えた挿通板13と、から構成される。
底板12には、滑車100側に向けて突出するとともに、被掛止部111を着脱自在に掛止する固定掛止爪21、及び可動掛止爪22が配置されており、可動掛止爪22は動作機構30により動作する。
動作機構30は、底板12に開口されて可動掛止爪22を被掛止部111に対して接近又は離間させる方向(矢印A方向)に案内する案内孔31と、側面にスライド溝33を有し、案内孔31に沿って摺動するスライド部材32と、一端部に可動掛止爪22を備え、他端部側にネジ部34が形成されてスライド部材32を貫通することによりスライド部材32内を軸方向(矢印B方向)に移動する軸部35と、外周部にローレット加工が施されてネジ部34に螺合する丸ナット36と、丸ナット36とスライド部材32との間に配置されたワッシャー37と、軸部35の他端部に配置され、丸ナット36がネジ部34から脱落することを防止する割りピン38と、を備えている。
動作機構30のうち案内孔31及びスライド部材32は、可動掛止爪22が固定掛止爪21に対して接近又は離間するように、可動掛止爪22を底板12の板面に沿った方向に移動させる。この移動により、固定掛止爪21と可動掛止爪22との離間距離を、被掛止部111の幅に合致させることができる。また、ネジ部34及び丸ナット36は、可動掛止爪22を軸部35の軸方向に、すなわち底板12の板面と交差する方向(矢印B方向)に移動させる。この移動により、可動掛止爪22の底板12からの距離を被掛止部111の厚さに合致させることができる。
【0011】
本実施形態においては、ネジ部34及び丸ナット36により可動掛止爪22の底板12からの高さ位置を調整しつつ、被掛止部111を可動掛止爪22と底板12とにより挟圧して巻き込み防止装置1を滑車100に固定する。
なお、可動掛止爪22を固定掛止爪21に接近する方向に弾性付勢するコイルバネや板バネ等の付勢部材を備えてもよい。付勢部材を備えることで、可動掛止爪22と固定掛止爪21との離間距離を被掛止部111の幅に調整する必要がなくなり、装着が容易になるとともに、巻き込み防止装置1が滑車100から脱落しにくくなる。
【0012】
ここで、切欠き14を開閉する開閉片40について、図4乃至図6に基づいて説明する。図4は、開閉片の平面図であり、(a)乃至(c)は、切欠きにロープを取り付ける手順を示す図である。図5は、開閉片の平面図であり、(a)乃至(c)は、切欠きからロープを取り外す手順を示す図である。図6は、開閉片の回動軸部分の拡大断面図である。
図示するように、挿通板13は切欠き14を開閉する一対の開閉片40を備えている。開閉片40は、切欠き14の最奥部14b側から順に、ロープRの外形形状に沿って湾曲した凹状部41と、閉止時に互いに他の開閉片40と当接する当接部42と、切欠き14の長手方向に対して所定の角度傾斜を有し、ロープRの挿入時にロープRに押圧される斜辺部43と、開閉片40を回動自在に軸支する回動軸44と、回動軸44に備えられて、開閉片40を閉止方向(矢印C1方向)に弾性付勢するコイルスプリング45(図6参照)と、切欠き14を開放させる際に操作する操作爪46と、を備える。
【0013】
開閉片40は、挿通板13の板面に沿って回動するように、回動軸41によって挿通板13に軸支されている。夫々の開閉片40はコイルスプリング45の付勢力により、切欠き14の幅方向中間部に位置する当接部42において当接している。開閉片40の閉止時において、2つの開閉片40の凹状部41と、切欠き14の最奥部14bとは、ロープRが挿通される挿通孔15(挿通部)となる。巻き込み防止装置1の使用時には、ロープRが挿通孔15内を摺動する。
回動軸44は、斜辺部43よりも切欠き14の開口部14a側に位置しているため、挿通孔15にロープRが挿通された状態においては、ロープRを切欠き14の開口部14a側に向けて押圧したとしても、開閉片40の開放が阻止される構成である。
操作爪46は、切欠き14の開口部14a側に配置され、操作爪46を互いに近接する方向(矢印D方向、図5(a)参照)に押圧することで、コイルスプリング45の力に抗して回動し、切欠き14が開放され、ロープRを取り外すことができる。
【0014】
上述のように構成された巻き込み防止装置の使用法について説明する。
巻き込み防止装置1を滑車100に装着するには、可動掛止爪22を固定掛止爪21及び底板12から離間させた状態とする。巻き込み防止装置1を滑車100の下方から接近させ、固定掛止爪21を被掛止部111に掛止した状態で被掛止部111の下面と底板12の上面とを当接させる。続いて、可動掛止爪22を案内孔31に沿って固定掛止爪21側に移動させ、可動掛止爪22と固定掛止爪21との距離を被掛止部111の幅に調整する。そして、丸ナット36を回転させて被掛止部111を可動掛止爪22と底板12とで挟圧するように固定する。
また、巻き込み防止装置1にロープRを装着するには、図4(a)に示すように、ロープRを切欠き14に挿入し、そのまま最奥部14bに向けて押圧する。すると、(b)に示すようにロープRが斜辺部43を押圧することにより開閉片40が開放方向(矢印C2方向)に回動し、(c)に示すように、ロープRが挿通孔15内にセットされる。
巻き込み防止装置1からロープRを取り外すには、図5(a)に示すように、操作爪46を互いに近接する方向へ押圧する。すると、(b)に示すように開閉片40が開放し、(c)に示すようにロープRを取り外すことができる。
巻き込み防止装置1を滑車100から取り外すには、取り付けと逆の手順を踏めばよいので、その説明を省略する。
【0015】
以上のように、本実施形態によれば、ロープが挿通部に挿通されているので、ロープとプーリとの間に手等が挟まれる虞が減少する。また、プーリのロープ巻き込み箇所周辺をカバーにより一体的に包囲するので、手等の巻き込みを効果的に防止することができる。また、装着の際に工具を必要とせず、支持体の被掛止部を掛止爪にて掛止するだけなので、着脱が容易である。また、ロープを切欠きに押し込むだけでロープを装着でき、操作爪を互いに近接させる方向に押圧するだけで切欠きが開放してロープを取り外すことができるので、ロープの脱着が容易である。また、装着されたロープを切欠きの開口部側に移動させてもロープが挿通孔から抜けないので、安全性が高い。
【0016】
〔第二の実施形態〕
本発明の第二の実施形態について図7及び図8に基づいて説明する。本実施形態に係る巻き込み防止装置は、可動掛止爪を動作させる動作片を備えた点に特徴がある。図7は、第二の実施形態に係る巻き込み防止装置の断面図である。図8は、動作機構のうち動作片部分を示した平面図である。以下、第一の実施形態と同一の部材には同一の符号を付してその説明を省略する。
本実施形態に係る巻き込み防止装置2は、第一の実施形態に係る動作機構30のワッシャー37の代わりに、可動掛止爪22を固定掛止爪21に対して接離移動させる動作片51を備えている。動作機構50は、動作片51と、動作片51を底板12に回動自在に軸支する回動軸52と、軸部35を案内する案内孔53と、動作片51を操作する操作爪54と、を備える。
動作片51を操作爪54によって回動軸52回りに回動させると、案内孔53と案内孔31とが連通する位置に軸部35が移動する。その結果、可動掛止爪22が固定掛止爪21に対して接離移動する。
【0017】
図8においては、動作片51を矢印E1方向に回動させることにより、可動掛止爪22が固定掛止爪21に接近し、動作片51を矢印E2方向に回動させることにより、可動掛止爪22が固定掛止爪21から離間する。
また、回動軸52には、動作片51を矢印E方向に弾性付勢するコイルスプリング(不図示)を備えてもよい。コイルスプリングの付勢力により、可動掛止爪22が常に固定掛止爪21に接近する方向に付勢されるので、可動掛止爪22と固定掛止爪21との離間距離を被掛止部111の幅に調整する必要がなくなり、装着が容易になるとともに、巻き込み防止装置2が滑車100から脱落しにくくなる。なお、コイルスプリングではなく、第一の実施形態と同様に、可動掛止爪22を固定掛止爪21に接近する方向に弾性付勢するコイルバネや板バネ等の付勢部材を備えてもよい。
以上のように本実施形態においては、可動掛止爪を動作させる動作片を備えたので、巻き込み防止装置の滑車への脱着が容易となる。
【0018】
〔第三の実施形態〕
本発明の第三の実施形態について図9及び図10に基づいて説明する。本実施形態に係る巻き込み防止装置は、被掛止部を掛止する一対の掛止爪を何れも可動式にするとともに、2つの掛止爪を一度に動作させる動作片を備えた点に特徴がある。図9は、第三の実施形態に係る巻き込み防止装置の断面図である。図10は、動作機構のうち動作片部分を示した平面図である。以下、第一及び第二の実施形態と同一の部材には同一の符号を付してその説明を省略する。
本実施形態に係る巻き込み防止装置3は、一対の可動掛止爪22と、可動掛止爪22を互いに接近又は離間させる方向に移動させる動作機構60と、備える。なお、可動掛止爪22を底板12に沿って、或いは軸部35の軸方向に沿って移動可能にするスライド部材等のその他の機構は、第一及び第二の実施形態と同様である。
動作機構60は、円板状の動作片61と、軸部35を案内する案内孔63と、動作片61を操作する操作片64と、を備える。動作片61を操作片64によって回動させると、案内孔63及び案内孔31とが連通する位置に軸部35が移動する。その結果、可動掛止爪22が互いに接近又は離間する。
【0019】
図10においては、動作片61を矢印F1方向に回動させることにより、可動掛止爪22が互いに接近し、動作片61を矢印F2方向に回動させることにより、可動掛止爪22が互いに離間する。
なお、第一の実施形態と同様に、可動掛止爪22を互いに接近する方向に弾性付勢するコイルバネや板バネ等の付勢部材を備えてもよい。
以上のように本実施形態においては、2つの掛止爪を可動式にするとともに、これらを一度に動作させる動作片を備えたので、滑車への脱着が容易となる。
【0020】
〔第四の実施形態〕
本発明の第四の実施形態について図11に基づいて説明する。本実施形態に係る巻き込み防止装置は、可動掛止爪を有する軸部に回動軸を設け、この回動軸回りに可動掛止爪を回動させることにより掛止爪を動作させる点に特徴がある。図11は、第四の実施形態に係る巻き込み防止装置の断面図であり、(a)は全体図であり、(b)は可動掛止爪部分のみを示した図である。以下、第一乃至第三の実施形態と同一の部材には同一の符号を付してその説明を省略する。
本実施形態に係る巻き込み防止装置4における動作機構70は、軸部35の適所に2つの可動掛止爪22が互いに接近又は離間するように動作させる回動軸71と、底板12に設けられて回動軸71を軸支する軸受72と、軸部35の端部のうち、可動掛止爪22とは反対側の端部に配置されて、可動掛止爪22が所定角度以上回動することを阻止するストッパ73及びストッパ74と、を備える。また、可動掛止爪22は動作片61によって動作する。
【0021】
可動掛止爪22が回動軸71回りに回動することにより、2つの可動掛止爪22は互いに接近又は離間する。軸部35は、底板12を貫通しており、底板12の下方から突出した部分にストッパ73及びストッパ74が配置されている。ストッパ73は、可動掛止爪22が閉止方向(矢印G1方向)に所定角度以上回動することを阻止する。また、ストッパ74は、可動掛止爪22が開放方向(矢印G2方向)に所定角度以上回動することを阻止する。
ストッパ73と底板12との間には、案内孔63及び操作片64を備えた円板状の動作片61が配置されている。動作片61を回動させると、軸部35が案内孔63に案内されて、回動軸71を中心に回動し、可動掛止爪22が開閉する。
なお、回動軸71に、可動係止片22を互いに近接する方向(閉止する方向)に弾性付勢するコイルスプリングを備えてもよい。
以上のように本実施形態においては、双方の掛止爪を可動式にするとともに、これらを一度に動作させる動作片を備えたので、滑車への脱着が容易となる。
【0022】
〔第五の実施形態〕
本発明の第五の実施形態について図12に基づいて説明する。本実施形態に係る巻き込み防止装置は、掛止爪を板バネから構成した点に特徴がある。図12は、本実施形態に係る巻き込み防止装置を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は断面図である。以下、第一乃至第四の実施形態と同一の部材には同一の符号を付してその説明を省略する。
本実施形態に係る巻き込み防止装置5における着脱機構80は、底板12の滑車100側に突出する掛止爪81と、底板12の他の面に設けられた引手85と、を備える。
掛止爪81は板バネから構成され、一端部側に底板12に固定される固定部82と、他端部側に断面視略くの字状に屈曲形成された掛止部83を有し、固定部82と掛止部83との間がバネ部84(動作機構)となっている。掛止部83は掛止爪81の自由端に配置されており、バネ部84の弾性変形により動作する。底板12には2つの掛止爪81が対向配置され、掛止部83の屈曲部分が他の掛止爪81に向けて突出する構成である。固定部82は、底板12にカシメ固定されている。
【0023】
巻き込み防止装置5の滑車100への装着時に、掛止部83と被掛止部111とが当接すると、バネ部84の弾性変形により、夫々の掛止部83が互いに離間する方向へ動作し、さらに滑車100を底板12に向けて押圧すると、夫々の掛止部83が互いに近接する方向へ動作して、被掛止部111が掛止部83によって掛止される。
巻き込み防止装置5を滑車100から取り外す場合には、引手85を持って巻き込み防止装置5を滑車100から離間させることで、掛止部83が互いに離間して掛止状態が解除され、容易に取り外すことができる。
以上のように本実施形態によれば、掛止爪を板バネから構成したので、巻き込み防止装置の脱着が容易となる。
【0024】
〔第六の実施形態〕
本発明の第六の実施形態について図13に基づいて説明する。本実施形態に係る巻き込み防止装置は、切欠きを開閉する開閉片を1枚の板状部材から構成した点に特徴がある。図13は、開閉片の平面図であり、(a)乃至(c)は、切欠きにロープを取り付ける手順を示す図である。以下、第一乃至第五の実施形態と同一の部材には同一の符号を付してその説明を省略する。
開閉片90は、切欠き14の幅方向に進退移動して切欠き14を開閉する1枚の板状部材である。開閉片90の最奥部14b側はロープRの外形形状に沿って湾曲した凹状部91であり、最奥部14bと凹状部91とでロープRが通過する挿通孔16を構成する。挿通板13は開閉片90を案内する案内孔17を備え、開閉片90は、案内孔17に案内されるとともに開閉片90を挿通板13に固定するネジ92を備える。
(a)乃至(c)に示すように、開閉片90を切欠き14から退避させて、ロープRを切欠き14内に挿入し、開閉片90にて切欠き14を閉止し、ネジ92を締めることにより、開閉片90を挿通板13に固定する。なお、切欠き14を閉止する方向に開閉片90を弾性付勢するコイルバネや板バネ等の付勢部材を備えてもよい。
以上のように、本実施形態によれば、開閉片をネジにて固定するので、巻き込み防止装置の使用時に、ロープが外れる虞が減少する。
【符号の説明】
【0025】
1、2、3、4、5…巻き込み防止装置、10…カバー、11…側板、12…底板、13…挿通板、14…切欠き、14a…開口部、14b…最奥部、15…挿通孔、16…挿通孔、17…案内孔、20…着脱機構、21…固定掛止爪、22…可動掛止爪、30…動作機構、31…案内孔、32…スライド部材、33…スライド溝、34…ネジ部、35…軸部、36…丸ナット、37…ワッシャー、38…ピン、40…開閉片、41…凹状部、41…回動軸、42…当接部、43…斜辺部、44…回動軸、45…コイルスプリング、46…操作爪、50…動作機構、51…動作片、52…回動軸、53…案内孔、54…操作爪、60…動作機構、61…動作片、63…案内孔、64…操作片、70…動作機構、71…回動軸、72…軸受、73、74…ストッパ、80…着脱機構、81…掛止爪、82…固定部、83…掛止部、84…バネ部、85…引手、90…開閉片、91…凹状部、92…ネジ、100…滑車、101…プーリ、102…回転軸、103…ロープ溝、110…支持体、111…被掛止部、120…吊り具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロープを巻掛けるプーリ、及び該プーリの回転軸を軸支する支持体を備えた滑車に装備される巻き込み防止装置であって、
前記プーリから繰り出されたロープを挿通する挿通部を備えて前記滑車の両側面の少なくとも一部を覆うカバーと、該カバーを前記支持体に着脱する着脱機構と、を備え、
前記着脱機構は、前記支持体に設けた被掛止部と、前記カバーに設けられて該被掛止部を着脱自在に掛止する掛止爪と、該掛止爪を動作させることにより前記被掛止部に着脱させる動作機構と、を備えたことを特徴とする巻き込み防止装置。
【請求項2】
前記挿通部を開閉する開閉片を備えたことを特徴とする請求項1記載の巻き込み防止装置。
【請求項3】
前記掛止爪が前記支持体を掛止する方向に弾性付勢されていることを特徴とする請求項1又は2記載の巻き込み防止装置。
【請求項4】
前記開閉片は、前記挿通部を閉止する方向に弾性付勢されていることを特徴とする請求項2又は3記載の巻き込み防止装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項記載の巻き込み防止装置を備えたことを特徴とする滑車。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2011−225318(P2011−225318A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96083(P2010−96083)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)