説明

巻上機

【課題】インバータを初め、モータ、回生抵抗器等の配置構成を考慮する他、強制的な冷却手段を用いて、好適に放熱することができ、高頻度運転が可能な巻上機を提供する。
【解決手段】インバータで駆動され強制冷却手段を具備する荷昇降用モータと、減速機構部と該減速機構部からの動力でチェーンを巻上げ下げするロードシーブとを含む機構部と、をケーシングに収容し、回生抵抗器を具備する巻上機において、荷昇降用モータと機構部とインバータと回生抵抗器とは、ケーシングに、巻上げ下げする際にかかる荷重の中心としての荷重芯を中心に、重量均衡が確保されるように分散させて配置する。また、インバータと回生抵抗器とは、ケーシングに、機構部を挟んで離隔した部位に密接固定する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷昇降電動機を内蔵するインバータで駆動する電動チェーンブロックや電動ホイスト等の巻上機に関し、特に発熱源であるインバータを初め、モータ、回生抵抗器等の配置構成を考慮する他、強制的な冷却手段を用いて、発熱源の好適な放熱を達成し得る、巻上機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
荷昇降用モータとしてインバータで駆動するインバータ駆動電動機を用いた電動チェーンブロックや電動ホイスト等の巻上機がある。このような巻上機においては、ケーシングに、インバータを初めとして、様々な発熱源(モータ、回生抵抗器等)が搭載され、運転時に生じる熱が課題となっている。例えばインバータは、特に高負荷運転時、発生熱量が増大し、この熱によってインバータを構成するパワートランジスタ等の素子が影響を受け、正常な動作に支障を来たすことがある。
【0003】
本出願人は、上述のような熱を効率よく放熱することができる、巻上機を提案している(特許文献1参照)。
かかる特許文献1では、荷昇降用モータ、減速機構、回生制動用抵抗器を具備し、荷昇降用モータを巻上機本体に内蔵するインバータで駆動すると共に、吊り荷の下降時荷昇降用モータで発電した電流を回生制動用抵抗器に流し、回生制動をかける巻上機において、インバータを減速機構ケーシングに面接触で密接させて取付け、該インバータで発生した熱を減速機構ケーシングに放熱するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−230751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
確かに、上述の巻上機によれば、簡単な構成で内蔵しているインバータが発する熱や回生制動用抵抗器が発する熱を効率良く外気に放熱でき、高頻度運転が可能となった。
しかしながら、上述の巻上機では、(1)高熱を発生する回生抵抗器とインバータとが近接していること、(2)回生抵抗器は、インバータを収容するケーシングの外表面に取付けられ、外気に晒すことで自然空冷を図っていることから、さらに、放熱効果を高めるために、インバータやモータ、回生抵抗器等の発熱源の配置構成を見直すことが課題となっている。
すなわち、本発明は、さらに放熱効果を高めるために、(1)、(2)を改善することで、放熱効果の高い、しかも機構自体の小型化も可能とした、巻上機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明では、インバータで駆動され強制冷却手段を具備する荷昇降用モータと、減速機構部と該減速機構部からの動力でチェーンを巻上げ下げするロードシーブとを含む機構部と、をケーシングに収容し、荷昇降用モータに生じる回生電力を回生抵抗器に流すようにされている巻上機において、荷昇降用モータと機構部とインバータと回生抵抗器とは、ケーシングに、巻上げ下げする際にかかる荷重の中心としての荷重芯を中心に、重量均衡が確保されるように分散させて配置する構成としたことを特徴とする。
【0007】
これにより、荷昇降用モータと機構部とインバータと回生抵抗器とを、ケーシングに重量配分を考慮して配置したため、巻上機としての、使い勝手が向上し、併せて、荷昇降用モータやインバータや回生抵抗器などの発熱要素も分散化するため、放熱上も有利である。
【0008】
請求項2に記載の発明では、インバータと回生抵抗器とは、ケーシングに、機構部を挟んで離隔した部位に密接固定する構成としたことを特徴とする。
【0009】
これにより、インバータと回生抵抗器とは、機構部を挟んで離れた位置のケーシングに固定したことにより、インバータと回生抵抗器とは、互いの発熱の影響を受けることはない。
【0010】
請求項3に記載の発明では、荷昇降用モータと、インバータと、回生抵抗器とは、荷重芯から、それぞれ荷昇降用モータ、インバータ、回生抵抗器並びに荷昇降用モータの中心までの距離と、荷昇降用モータの中心軸からインバータにおける中心までの距離と、荷昇降用モータの中心軸から回生抵抗器における中心までの距離とに基づいて、互いの配置関係が設定されていることを特徴とする。
【0011】
これにより、巻上機の主たる構成要素である発熱源であり、且つ重量物としての荷昇降用モータとインバータと回生抵抗器とを、重量均衡の取れた配置関係とすることができる。
【0012】
請求項4に記載の発明では、インバータは、ギヤオイルを充填した減速機構部を部分的に包囲しているケーシングの部位に密接固定したことを特徴とする。
【0013】
これにより、インバータの発熱を好適にケーシングへ放熱することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明では、回生抵抗器は、荷昇降用モータに近接したケーシングの部位に密接固定され、荷昇降用モータの強制冷却手段により回生抵抗器を強制空冷する構成としたことを特徴とする。
【0015】
これにより、回生抵抗器を、荷昇降用モータの強制冷却手段により、強制冷却することができる。
【0016】
さらに請求項6に記載の発明では、荷昇降用モータのモータ軸の、インバータに近接する端部に、インバータを強制的に冷却する強制冷却手段を設けたことを特徴とする。
【0017】
これにより、インバータの発熱を強制冷却することによって、大いに放熱効果を高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、発熱源の配置構成を考慮した結果、効果的な放熱効果をもたらし、インバータの熱が効率よく放熱されることに合わせて回生抵抗器の熱も効率よく放熱されるから、更に巻上機の高頻度運転が可能となる。
しかも発熱源の配置構成と併せて、発熱源の重量配分を考慮した結果、巻上機としての、使い勝手が向上し、全体として小型化も達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る巻上機の第1実施形態を示す、外観斜視説明図である。
【図2】図1に示す巻上機の側面図である。
【図3】図2に示す巻上機のI−I線に沿う、縦断面説明図である。
【図4】図2に示す巻上機のII−II線に沿う、縦断面説明図である。
【図5a】本発明に係る巻上機の荷重芯を中心とする構成要素の配置関係を説明するための断面説明図である。
【図5b】本発明に係る巻上機の荷重芯を通る軸線に対する巻上機の位置関係を示した側面説明図である。
【図6】本発明に係る巻上機の第2実施形態を示す、縦断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
図1、図2に本発明に係る巻上機1の第1実施形態を示す。
この巻上機1は、インバータ駆動式の電気チェーンブロックであって、後述するがケーシング2に、インバータで駆動する荷昇降用モータと、減速機構部と減速機構部から動力が伝達されチェーンを巻上げ下げするロードシーブとを含む機構部とが内蔵されている。また、ケーシング2には、インバータおよび制御回路部等の電装品を収容する電装品収容部3が併設され、チェーンを収容するチェーンバケット4が一体的に取り付けられている。さらに、チェーンバケット4側方には、荷上げ下げするためのフック部5がチェーン(図示省略)により巻上げ巻下げ可能に支持されており、ケーシング2頂部には、建物梁部等(図省略)に巻上機1を吊下げるための吊手6が取り付けられている。
【0021】
次に、図3、図4に上述の巻上機1の断面図を示し、詳細に説明する。
巻上機1は、ケーシング2内に後述する位置関係で配設された、インバータで駆動する荷昇降用モータ7と、機構部9を構成する減速機構部8と、減速機構部8から動力が伝達されチェーンを巻上げ下げするロードシーブ10と、荷の巻下げ時に荷昇降用モータ7から生じる回生電力を熱エネルギーとして廃棄する回生抵抗器11とを具備する。そして、ケーシング2内の減速機構部8に隣接して併設した電装品収容部3に内蔵されたインバータ制御装置12と、その他図示は省略するが、電源ノイズフィルタを収容している。インバータ制御装置12は、直流電源回路とインバータ回路及び制御回路等を含むユニットで、交流電源及びペンダントスイッチ(操作指令ボタン)が接続され、ペンダントスイッチの指令に基づき昇降用モータを駆動制御する。これらインバータ制御装置12及び電源ノイズフィルタはケーシング2に蓋状のコントローラカバー13によって封止されている。
【0022】
ケーシング2は、内部が、実質的には、荷昇降用モータ7と減速機構部8とをそれぞれの位置に装着するためにモータ室2aと機構室2bとチェーン繰出部2cとに区画されている。チェーン繰出部2cには、チェーン繰出口2dが開口されている。
【0023】
荷昇降用モータ7は、モータ室2aに、ステータコイルを巻回した筒状のステータ7aとステータ7aの中心孔に装入されたロータ7bとを具備する。ロータ7bは長手中心軸方向に一体的に固定されたモータ軸7cを含む。
モータ軸7cは、図中、左端側寄りの部位をケーシング2内のモータ室2aと機構室2bとに区画する区画壁にベアリング14を介して回動自在に支承されている。そしてモータ軸7c左端側には、後述する減速機構部8に動力を伝達するためのピニオンギヤ15が取着されている。
またモータ軸7cの右端側寄りの部位にプルロータ式のブレーキ16が装填され、モータ軸7cの右端側寄りの部位をエンドカバー17にベアリング18を介して挿通し、モータ軸7cの右端側に強制冷却手段としてのファン19が取着されている。
【0024】
ブレーキ16は、モータ軸7cにスプライン係合された磁性材よりなるプルロータ16aと、プルロータ16aに隣接して配置した磁性材からなる可動コア16bと、可動コア16bに固定したブレーキドラム16cとを具備する。可動コア16bは、モータ軸7cに回転不能に、且つ軸長手方向に所定範囲で移動可能にスプライン結合される。そして、可動コア16bとプルロータ16a間には、可動コア16bを常時、エンドカバー17内周面に可動コア16bを介してブレーキドラム16cを圧接するようにコイルばね16dによって付勢されている。
【0025】
そしてケーシング2のモータ室2aから突出するファン19表面には、ファンカバー20が被せられる。かかるファンカバー20は、ファン19のみでなく、後述する回生抵抗器11の表面をカバーする構成である。ファンカバー20には、ファン19をカバーする箇所に通気口20a、回生抵抗器11の位置に開口部20b、さらには、排気口20cが設けられる。
【0026】
回生抵抗器11は、モータ7の側方にモータ軸7cに直交する方向に突出したケーシング2の板状の回生抵抗器取付け部2fに取り付けられている。回生抵抗器取付け部2fの回生抵抗器11を取り付けた反対の側面には、該側面から機構部2bに向かって延出するリブ2gが形成されている。回生抵抗器11の発熱は、板状の回生抵抗器取付け部2fと同じく板状のリブ2gに伝達され、ファン19により強制空冷されると共に、リブ2gによって自然空冷される構成となっている。リブ2gは図示されていないが上下に2段備えられている。 また、リブ2gをファン19により強制空冷できるように回生抵抗器取付け部2f等に通気口を設けるようにしてもよい。
【0027】
次に、機構部9のうち、機構室2bに配設される減速機構部8について説明する。
減速機構部8は、モータ軸7c左端側のピニオンギヤ15と噛合う第1の減速ギヤ8aを有する。第1減速ギヤ8aは、機構室2bのケーシング内壁にベアリング21a、21bを介して支承したギヤ軸8bに、ばね部材22(皿ばね)のばね力により圧接力を生ずる摩擦クラッチ8c、8cを介して取り付けられている。また、減速機構部8は、ギヤ軸8bに設けられた、第1減速ギヤ8aに比較して歯数の少ない第2減速ギヤ8dを有する。インバータ制御装置12は、機構室2bと電装品収容部3とを区画するケーシングカバー2eに取り付けられている。
なお、機構室2bには、周知のギヤオイルが充填される。
【0028】
また、機構部9は、機構室2b内からチェーン繰出部2cにかけて、機構室2bを区画する区画壁およびチェーン繰出部2cにベアリング23a、23bを介して回動自在に支承したロードシーブ10と、ロードシーブ10の機構室2b内端部に取り付けて、減速機構部8の第2減速ギヤ8dと噛合わせてなるロードギヤ25とを具備する。
【0029】
以上のような巻上機1における荷昇降用モータ7、機構部9と、インバータ制御装置12と回生抵抗器11とは、ケーシング2において以下の配置関係にある。
かかる配置関係について説明すると、ケーシング2には、先ず、荷を巻上げ下げする際にかかる荷重の中心としての荷重芯Oが決定される(図5a参照)。この荷重芯Oを通過する荷上下軸線Zは、図5bに示すように、ケーシング2を貫き、荷上げ下げするためのフック部5並びにケーシング2頂部の吊手6の中心部を貫くような設定である。
【0030】
かかる荷重芯Oを中心として、
A:荷重芯Oからインバータ制御装置12底面(減速機構部8を収容するケーシング2のケーシングカバー2e外側面に密接される、インバータ制御装置12筐体の一端面)までの長手方向距離(荷上下軸線Zと直交するX方向の距離)、
B:荷重芯Oから回生抵抗器11の底面(回生抵抗器11のケーシング2との密接端面)までの長手方向距離(荷上下軸線Zと直交するX方向の距離)、
C:荷重芯Oからモータ中心までの長手方向距離(荷上下軸線Zと直交するX方向の距離)、
D:荷重芯Oから荷昇降用モータ7の中心軸までの水平方向距離(荷上下軸線Zに直交するY方向の距離)、
E:荷昇降用モータ7の中心軸から回生抵抗器11の中心(荷昇降用モータ7の中心軸に平行な方向の中心軸)までの水平方向距離(荷上下軸線Zに直交するY方向の距離)、
F:荷昇降用モータ7の中心軸からインバータ制御装置12中心(荷昇降用モータ7の中心軸に平行な方向の中心軸)までの水平方向距離(荷上下軸線Zに直交するY方向の距離)
とした場合、以下の関係が成り立つような配置関係としている。
A>B≧C,E>D,F>D
すなわち、この配置関係は、ケーシング2にて荷昇降用モータ7から、減速機構部8、ロードシーブ10に至るまで、動力伝達中心軸がY方向に互いにずれて、それぞれX方向に平行な位置関係にあり、動力が荷昇降用モータ7からロードシーブ10に動力が伝達される構造となっている。
【0031】
そして、インバータ制御装置12と回生抵抗器11とは、以上のような荷昇降用モータ7、減速機構部8等の機構部9を収容するケーシング2の荷上下軸線Zに直交するX方向外側に、機構部9を挟んで対向するようにケーシング2に密接固定している。
インバータ制御装置12はパワートランジスタを初めとして、ヒートシンクや種々の電子部品等を実装した制御基板や、その他の電装部品を筺体内に収容した構成のものである。従って、インバータ制御装置12は筺体を含めてそれ相当の重量を有する。
【0032】
一方、回生抵抗器11は、複数の抵抗素子を用いて構成された回路を実装する構造のものであり、図示しないがインバータ制御装置12と電気的に接続されている。荷昇降用モータ7が、荷下げ時に、荷の重さによって、荷昇降用モータ7が回生運転となり、荷昇降用モータ7から生じる回生電力をインバータ制御装置12を経由して回生抵抗器11に流すことで、熱エネルギーとして廃棄するようにしている。
【0033】
第1実施形態にかかる巻上機1は、以上のように構成されるものであり、以下にその運転操作および作用を説明する。
荷上げ運転時、操作指令ボタンの操作によって、インバータ制御装置12から電力が荷昇降用モータ7に供給され、ステータ7aのステータコイルに通電して回転磁界を発生させると、その一部磁界によってブレーキ16におけるプルロータ16aが磁化され、プルロータ16a側に可動コア16bはコイルばね16dの付勢力に抗して吸引される。これにより、可動コア16bに固定したブレーキドラム16cが、エンドカバー17内周面から離脱してブレーキが解放される。荷昇降用モータ7のロータ7bは回転し、モータ軸7c左端側のピニオンギヤ15から減速機構部8の第1減速ギヤ8a、第2減速ギヤ8dを介してロードギヤ25を通じてロードシーブ10に伝達され、フック部5に吊り下げた荷を巻上げていくことができる。同様に、操作指令ボタンの操作によって巻下げ運転が行われる。
この巻下げ運転の際、荷昇降用モータ7は回生運転となり、この回生電力によるインバータ制御装置12への過電圧を防止するため、回生抵抗器11に回生電力を流すことによって熱エネルギーに変換することで、回生電力の廃棄を行うことができる。
【0034】
チェーンバケット4からチェーンを繰出して荷物の位置までフック部5を巻下げると、チェーンバケット4はチェーンが繰出されて軽量化していくが、巻上機1は、ケーシング2に、荷を巻上げ下げする荷上下軸線Zに沿う荷重芯Oが、フック部5並びにケーシング2頂部の吊手6の中心部を貫くような設定となっており、且つ荷重芯Oを通過する荷上下軸線Zを挟んで、重量物である荷昇降用モータ7に対し、機構部9を配置し、さらには、電装部品である、インバータ制御装置12と回生抵抗器11をも、重量均衡がとれるように荷上下軸線Zに直交するX方向、あるいはY方向に対向させるように分散させて配置させたので、重量均衡を逸することなく荷上げ運転が可能であり、使い勝手を大いに向上させることができる。
従って、これまでのように重量均衡をとるための専用部材を、ケーシング等に例えばカウンターウエイト等を設ける必要はないか、その量を大幅に低減することができる。
また、ケーシング2において、荷昇降用モータ7から、機構部9における減速機構部8、ロードシーブ10に至るまで、一直線上に配置されるのではなく、荷昇降用モータ7、減速機構部8およびロードシーブ10は、それぞれの中心軸が荷上下軸線Zに直交するY方向にずれ、それぞれX方向に平行な位置関係になるように配設されるので、ケーシング2の全体寸法、特にX方向の寸法を短縮化することができ、ケーシング2の小型化を図ることができる。
【0035】
荷上げ運転操作指令により、インバータ制御装置12から電力が荷昇降用モータ7に供給され、荷昇降用モータ7が駆動されると、ステータ7aの回転磁界により、ブレーキ16におけるプルロータ16aが磁化され、プルロータ16a側に可動コア16bはコイルばね16dの付勢力に抗して吸引され、可動コア16bに固定したブレーキドラム16cが、エンドカバー17内周面から離脱してブレーキが解放される。ロータ7bが回転し、ロータ7bの右端側のファン19が回転する。これにより、ファンカバー20の通気口20aを介し、荷昇降用モータ7および回生抵抗器11に向かって送風され、荷昇降用モータ7を収容するケーシング2外側のフィンfを通過し、荷昇降用モータ7を強制的に空冷する一方、回生抵抗器11を空冷することができる。回生抵抗器11には、開口部20bからも外気が流入し、排気口20cを介して排出される。又、開口部20bはモータ停止時にも外気が流出入して回生抵抗器11の自然空冷を促進する。
【0036】
荷上げ運転操作指令でロータ7bを回転させると、回転力は、モータ軸7c左端側のピニオンギヤ15を介して、減速機構部8の第1減速ギヤ8a、ギヤ軸8bを通じて第2減速ギヤ8dへと伝達され、第2減速ギヤ8dからロードシーブ10のロードギヤ25に伝わり、所定の減速比で減速された回転動力となってロードシーブ10に伝達される。
【0037】
このような運転動作時には、インバータ制御装置12を構成するパワートランジスタが発熱し、インバータ制御装置12の筺体が高熱化する。
しかしながら、インバータ制御装置12を収容する筐体の一端面が、減速機構部8を収容するケーシング2外側面に密接されており、しかも、減速機構部8を収容する機構室2bには、周知のギヤオイルが充填されているので、上述の熱を効果的に放出することができ、インバータ制御装置12を収容する筐体に熱が滞留して異常に高熱化するのを防止することができる。
【0038】
フック部5に掛けた荷物を降ろすときは、チェーンバケット4からチェーンを繰出してフック部5を巻下げるように荷昇降用モータ7を駆動する。操作指令ボタンの操作によって、インバータ制御装置12から電力が荷昇降用モータ7に供給され、ブレーキ16が作動して、プルロータ16a側に可動コア16bはコイルばね16dの付勢力に抗して吸引され、可動コア16bに固定したブレーキドラム16cが、エンドカバー17内周面から離脱してブレーキが解放される。荷昇降用モータ7のロータ7bは回転し、モータ軸7c左端側のピニオンギヤ15から減速機構部8の第1減速ギヤ8a、第2減速ギヤ8dを介してロードギヤ25を通じてロードシーブ10に伝達され、フック部5に掛けた荷物を降ろすことができる。
巻下げ時の荷昇降用モータ7は、荷の重さによって回生運転となり、この回生電力を回生抵抗器11に流すことによって熱エネルギーに変換され、回生電力の廃棄を行うことができる。
従って、回生抵抗器11は高熱化するが、荷昇降用モータ7のロータ7bの右端側のファン19が回転し、ファンカバー20の通気口20aを介し、回生抵抗器11に向かって送風されるので、回生抵抗器11を強制的に空冷することができる。
【0039】
以上のように、本実施形態における巻上機1では、一連の巻上げ下げ運転を行うと、発熱要素である、荷昇降用モータ7を初めとして、インバータ制御装置12並びに回生抵抗器11は発熱するが、上述のように荷昇降用モータ7および回生抵抗器11はロータ7bの右端側のファン19によって強制的に空冷され、インバータ制御装置12にあっては、インバータ制御装置12を収容する筐体の一端面が、減速機構部8を収容するケーシング2外側面に密接、しかも、減速機構部8を収容する機構室2bに充填されたギヤオイルによって、好適に熱を放出することができる。
さらには、インバータ制御装置12と回生抵抗器11とは、ケーシング2に、荷昇降用モータ7、減速機構部8等の機構部9を収容するケーシング2の荷上下軸線Zに直交するX方向外側に、機構部9を挟んで対向するようにケーシング2に密接固定しているので、互いの発熱の影響を受けることなく、好適な熱放出効果を発揮させることができる。
このため、本実施形態における巻上機1は、高頻度運転が可能なものとなり、現場汎用性の高い巻上機として提供することができる。
【0040】
(第2実施形態)
本発明に係る巻上機は、図6に示す巻上機1によっても実施することができる。
この巻上機1は、基本的な構成要素、すなわち、ケーシング2に配設される荷昇降用モータ7、減速機構部8、ロードシーブ10の配置関係、並びにインバータ制御装置12と回生抵抗器11との配置関係は第1実施形態にかかる巻上機1と同じであるので、それらの配置構成の説明は省略する。
【0041】
第2実施形態にかかる巻上機1では、図6に示すように、荷昇降用モータ7のモータ軸7cの、インバータ制御装置12に近接する端部に、インバータ制御装置12を直接空冷するファン30が設けられている。
この場合、荷昇降用モータ7のモータ軸7cは、減速機構部8を収容する機構室2bを仕切るケーシングカバー2eから、電装品収容部3内に臨入している。
また、電装品収容部3を構成するコントローラカバー13には、ファン30に近接した箇所に通気口13aが開口され、さらには、インバータ制御装置12の筐体他端面近傍の箇所には、通気口13bが開口される。
【0042】
なお、図示は省略するが、コントローラカバー13内のファン30に近接した箇所に通気口13aからインバータ制御装置12へ効率的に送風がなされるようにガイド部材を設けることも可能で、好ましい。
【0043】
以上、本発明にかかる巻上機について、実施形態を挙げ、説明したが、巻上機の重量構成物の配置関係を考慮することで、従来のような専用のバランスウエイトは不要であり、しかもインバータと回生抵抗器とを機構部を挟んで離隔して配置したことから、発熱の問題も克服することができる。
さらには、回生抵抗器やインバータを強制的に空冷する手段を採用したことから、一層、効果的に放熱効果を奏することができ、高頻度の高負荷運転にも耐えうる、汎用性の高い巻上機を提供することができる。
なお、実施形態に示した配置関係はあくまで一例であり、それぞれの構成要素の重量の大きさによって、配置関係は適宜、設定し得るものである。
また、インバータに関しては、強制的に冷却する手段にファンを用いた実施形態を挙げたが、勿論、ファンに限らず、他の強制冷却手段も可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 巻上機
2 ケーシング
2a モータ室
2b 機構室
2c チェーン繰出部
2d チェーン繰出口
2e ケーシングカバー
2f 回生抵抗器取付け部
2g リブ
3 電装品収容部
4 チェーンバケット
5 フック部
6 吊手
7 荷昇降用モータ
7a ステータ
7b ロータ
7c モータ軸
8 減速機構部
8a 第1減速ギヤ
8b ギヤ軸
8c 摩擦クラッチ
8d 第2減速ギヤ
9 機構部
10 ロードシーブ
11 回生抵抗器
12 インバータ制御装置
13 コントローラカバー
13a 通気口
13b 通気口
14 ベアリング
15 ピニオンギヤ
16 ブレーキ
16a プルロータ
16b 可動コア
16c ブレーキドラム
16d コイルばね
17 エンドカバー
18 ベアリング
19 ファン
20 ファンカバー
20a 通気口
20b 開口部
20c 排気口
21a、21b ベアリング
22 ばね部材
23a、23b ベアリング
25 ロードギヤ
30 ファン
f フィン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インバータで駆動され強制冷却手段を具備する荷昇降用モータと、減速機構部と該減速機構部からの動力でチェーンを巻上げ下げするロードシーブとを含む機構部と、をケーシングに収容し、前記荷昇降用モータに生じる回生電力を回生抵抗器に流すようにされている巻上機において、
前記荷昇降用モータと前記機構部と前記インバータと前記回生抵抗器とは、前記ケーシングに、巻上げ下げする際にかかる荷重の中心としての荷重芯を中心に、重量均衡が確保されるように分散させて配置する構成としたことを特徴とする巻上機。
【請求項2】
前記インバータと前記回生抵抗器とは、前記ケーシングに、前記機構部を挟んで離隔した部位に密接固定する構成としたことを特徴とする請求項1に記載の巻上機。
【請求項3】
前記荷昇降用モータと、前記インバータと、前記回生抵抗器とは、前記荷重芯から、それぞれ前記荷昇降用モータ、前記インバータ、前記回生抵抗器並びに前記荷昇降用モータの中心までの距離と、前記荷昇降用モータの中心軸から前記インバータにおける中心までの距離と、前記荷昇降用モータの中心軸から前記回生抵抗器における中心までの距離とに基づいて、互いの配置関係が設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の巻上機。
【請求項4】
前記インバータは、ギヤオイルを充填した前記減速機構部を部分的に包囲している前記ケーシングの部位に密接固定したことを特徴とする請求項1から3記載のうち、いずれか1に記載の巻上機。
【請求項5】
前記回生抵抗器は、前記荷昇降用モータに近接したケーシングの部位に密接固定され、前記荷昇降用モータの強制冷却手段により前記回生抵抗器を強制空冷する構成としたことを特徴とする請求項1から3記載のうち、いずれか1に記載の巻上機。
【請求項6】
前記荷昇降用モータのモータ軸の、前記インバータに近接する端部に、前記インバータを強制的に冷却する強制冷却手段を設けたことを特徴とする請求項1から5記載のうち、いずれか1に記載の巻上機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−111610(P2012−111610A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262814(P2010−262814)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000129367)株式会社キトー (101)