説明

巻回体収容箱及び巻回体入り収容箱

【課題】幅20cm以上の比較的広いフィルムのカット性を向上させる。
【解決手段】巻回体収容箱1は、軸線方向D長さが20cm以上の巻回体91rを収容する本体部10と、蓋板21と掩蓋片22とを有する蓋部20とを備える。掩蓋片22は、長尺物91fを前板12との間で幅全体にわたって挟むことができる大きさに形成されている。そして、蓋部20を閉じたときに蓋部20及び前板12の相互に対向する部分の少なくとも一方に、長尺物91fの実質的に幅全体に対応して引出方向Pの長尺物91fの移動を規制する全幅係止手段12sが形成されている。而して、長尺物91fを前板12と蓋部20とで挟んで切断刃23で切断する際に長尺物91fが滑ってたるんでしまうことを全幅にわたって防ぎ、長尺物91fのカット性を向上させる。巻回体入り収容箱100は、巻回体91rと、巻回体収容箱1とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は巻回体収容箱及び巻回体入り収容箱に関し、特に幅が比較的広いフィルムに対してカット性を向上させることができる巻回体収容箱及び巻回体入り収容箱に関する。
【背景技術】
【0002】
食材や料理あるいは皿などの食器を料理ごと包む食品用ラップフィルムが広く用いられている。食品用ラップフィルムは、典型的には、ロール状に巻かれた長尺のプラスチックフィルム(巻回体)が、長い直方体の容器(収容箱)に収容されており、使用する際には、先端のフィルムをロールから必要量引き出し、容器の蓋に取り付けられている切断刃で切断する。切断刃を用いてフィルムを切断する態様として、一方の手でフィルムの先端を摘んで必要量を引き出し、他方の手で蓋体を閉めると共に蓋体前面壁を容器本体側に押してフィルムを蓋体前面壁と容器本体とで挟み、引き出されたフィルムに切断刃を食い込ませるように容器をひねるのが、効率的な切断方法である(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−274534号公報(段落0019、図2等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の切断方法は、フィルムを蓋体前面壁と容器本体とで挟むのを片手で行うこととなるためフィルムを押さえることができる範囲が限られてしまい、巻回体の長さが20cm以上であるようなフィルムの幅が比較的広い場合は、押さえられている部分以外のフィルムを切断する際に、フィルムを切断しようとする力が、フィルムが巻回体から引き出される方向に作用してしまい、適切にフィルムを切断することができないことがあった。
【0005】
本発明は上述の課題に鑑み、幅が比較的広いフィルムに対してカット性を向上させることができる巻回体収容箱及び巻回体入り収容箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る巻回体収容箱は、例えば図1に示すように、薄膜状の長尺物91fが巻かれて形成された軸線方向Dの長さが20cm以上の巻回体91rを収容する直方体状に形成された本体部10であって、巻回体91rが収容されたときに巻回体91rの軸線91aと平行になる4つの長方形面のうちの1つが開口した開口面10hに形成されると共に、開口面10hに直交する2つの長方形面のうちの一方を構成する後板14と、後板14に対向する長方形面を構成する前板12と、を有する本体部10と;後板14の開口面10hと交わる端辺である後板端辺18に回動可能に連接された蓋部20であって、蓋部20を閉じたときに、開口面10hを覆う蓋板21と、蓋板21に連接されて前板12の一部を覆う掩蓋片22と、を有する蓋部20とを備え;掩蓋片22は、前板12の開口面10hと交わる端辺である前板端辺19に沿って、巻回体91rから引き出された長尺物91fを前板12との間で長尺物91fの幅全体にわたって挟むことができる大きさに形成されると共に、引き出された長尺物91fを切断する切断刃23が設けられ;蓋部20を閉じたときに蓋部20及び前板12の相互に対向する部分の少なくとも一方に、引き出された長尺物91fの実質的に幅全体に対応して、長尺物91fが引き出される方向である引出方向Pの長尺物91fの移動を規制する全幅係止手段12sが形成されている。
【0007】
このように構成すると、長尺物の実質的に幅全体に対応して全幅係止手段が形成されているので、長尺物を前板と蓋部とで挟んで切断刃で切断する際に長尺物が滑ってたるんでしまうことを全幅にわたって防ぐことができ、長尺物のカット性を向上させることができる。なお、全幅係止手段が長尺物の「実質的に」幅全体に対応して形成されているとは、長尺物がたるまずに適切に切断することができる範囲において、全幅係止手段が断続的にあるいは端部に未到達の状態で形成されることを含むことを意図している。
【0008】
また、本発明の第2の態様に係る巻回体収容箱は、例えば図1に示すように、上記本発明の第1の態様に係る巻回体収容箱1において、全幅係止手段12sが形成された蓋部20及び前板12の少なくとも一方の部分12fが、引き出された長尺物91fの側に隆起して構成されている。
【0009】
このように構成すると、前板と蓋部とで長尺物を挟んだ際の前板及び蓋部と長尺物との密着性が向上することとなり、切断時の長尺物の滑りをより確実に防ぐことができる。
【0010】
また、本発明の第3の態様に係る巻回体収容箱は、例えば図1に示すように、上記本発明の第2の態様に係る巻回体収容箱1において、隆起して構成された部分が、前板端辺19寄りの前板12の面に形成された、開口面10h側よりも底板13側の方が本体部10の外側に開いたフラップ12fで構成され;フラップ12fは、巻回体91rの軸線91aが延びる方向Dの長さが、引き出された長尺物91fの幅方向の長さと実質的に同じであり、輪郭が前板12の面内を通る切り線12cと前板端辺19とで形成されると共に、切り線12cの両端が前板端辺19に実質的に到達して形成され;全幅係止手段12sがフラップ12f上に形成されている。なお、軸線が延びる方向のフラップの長さが引き出された長尺物の幅方向の長さと実質的に同じとは、軸線が延びる方向におけるフラップ及び長尺物の長さが同じ場合のほか、長尺物がたるまずに適切に切断することができるようにフラップと掩蓋片とで挟むことができる範囲において、長尺物の幅方向におけるフラップの長さが長尺物の長さよりも短い場合や長い場合を含むことを意図している。また、切り線の両端が前板端辺に実質的に到達しているとは、フラップの全幅と掩蓋片とで引き出された長尺物を挟むことができる程度にフラップが本体部の外側に開く範囲において、切り線の端部が前板端辺に到達していない前板の面内で止まっている場合を含むことを意図している。
【0011】
このように構成すると、掩蓋片側からの押圧力に応じてフラップの突出量が加減されることとなり、前板と掩蓋片とが適切な力で長尺物を挟むことができる。また、量産に適した手段で簡便に隆起部を形成することができる。
【0012】
また、本発明の第4の態様に係る巻回体収容箱は、例えば図1に示すように、上記本発明の第1の態様乃至第3の態様のいずれか1つの態様に係る巻回体収容箱1において、掩蓋片22は、蓋板21に連接した折曲辺21fに対向する先端辺22tが、先端辺22tの中点から先端辺22tの端の側に移動するに連れて、折曲辺21fに直交する方向における折曲辺21fと先端辺22tとの距離が短くなるように構成されている。
【0013】
このように構成すると、長尺物の切断方法の選択の幅を増やすことができる。
【0014】
また、本発明の第5の態様に係る巻回体入り収容箱は、例えば図1に示すように、薄膜状の長尺物91fが巻かれた巻回体91rと;上記本発明の第1の態様乃至第4の態様のいずれか1つの態様に係る巻回体収容箱1とを備える。
【0015】
このように構成すると、長尺物を切断刃で切断する際に長尺物が滑ってたるんでしまうことを全幅にわたって防ぐことができる巻回体入り収容箱となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、長尺物を前板と蓋部とで挟んで切断刃で切断する際に長尺物が滑ってたるんでしまうことを全幅にわたって防ぐことができ、長尺物のカット性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(A)は本発明の実施の形態に係るラップカートンを含むラップ入りカートンの斜視図、(B)は本発明の実施の形態に係るラップカートンの部分側面断面図、(C)は本発明の実施の形態に係るラップカートンの部分斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るラップカートンの正面図である。
【図3】(A)は本発明の実施の形態に係るラップカートンにより切断されたラップフィルムの切り口を示す図、(B)は比較例に係るラップカートンにより切断されたラップフィルムの切り口を示す図である。
【図4】(A)は本発明の実施の形態の第1の変形例に係るラップカートンを含むラップ入りカートンの斜視図、(B)は本発明の実施の形態の第2の変形例に係るラップカートンの部分側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0019】
まず図1を参照して、本発明の実施の形態に係る、巻回体収容箱としてのラップカートン1、及びラップカートン1に巻回体としてのラップロール91rが収容された巻回体入り収容箱としてのラップ入りカートン100を説明する。図1(A)は、ラップ入りカートン100の斜視図、図1(B)はラップカートン1の部分側面断面図、図1(C)はラップカートン1の部分斜視図である。図1(A)は、開蓋状態を示している。ラップロール91rは、薄膜状の長尺物としてのラップフィルム91fが円筒状の巻芯に軸線91aまわりに巻かれてロール状に形成されたものである。以下の説明において、ラップロール91rとラップフィルム91fとの外観形状の区別をしない場合は、「ラップ91」と総称する。ラップフィルム91fは、本実施の形態では、ポリ塩化ビニリデンを原料として厚さが5〜20μm、幅が30cmで、帯状に形成されている。ラップフィルム91fが巻かれて形成されるラップロール91rは、軸線91aが延びる方向(以下「軸線方向D」という。)の長さが、利便性の観点から50cm以下が好ましく、40cm以下がより好ましく、本実施の形態では30cmになっている。ラップカートン1は、ラップロール91rを収容する本体部10と、本体部10に連接された蓋部20とを備えている。
【0020】
本体部10は、未使用のラップロール91rを収容できる大きさの直方体に対して、細長い面の1つが開口面10hとなっている箱である。本体部10の大きさは、収容した未使用のラップロール91rを軸線91a回りに回転させるのを妨げない隙間が形成される一方で、できるだけ小さく形成されており、本実施の形態では幅44mm、高さ44mm、長さ310mmの大きさに形成されている。本体部10は、開口面10hと協働して直方体の側面を構成する前板12、底板13、後板14と、直方体の端面を構成する2つの脇板15とを有している。底板13は、開口面10hに対向している。前板12及び後板14は、開口面10h及び底板13に直交している。脇板15は、典型的には正方形に形成されているが、縦横の長さが異なる矩形であってもよい。以下の説明においては、水平な面に底板13が載置された状態を基準として、底板13側を下、開口面10h側を上として説明する場合もある。
【0021】
脇板15の上端の中央部分には、3mm程度上方に延びた小片が外側に折り返されて形成された突起15pが設けられている。突起15pは、2つあるそれぞれの脇板15の上端に設けられている。また、本体部10は、前板端辺19で前板12と連続する副板16(図1(B)参照)を有している。前板端辺19は、前板12と開口面10hとが交わる部分の前板12の端辺であり、本実施の形態では前板12と副板16との境界を兼ねている。副板16は、前板12と略同じ大きさであるが底板13とは接しておらず、前板12よりも本体部10の内側に設けられている。副板16は、底板13側の端辺が、長手方向に沿って前板12に接着されている。
【0022】
蓋部20は、本体部10の開口面10hを塞ぐ部材である。蓋部20は、蓋板21と、掩蓋片22と、切断刃23と、側蓋片25とを有している。蓋板21は、開口面10hと略同じ大きさの矩形平板状部材であり、蓋板21を開口面10hに合わせることで本体部10を閉塞した直方体とすることができるようになっている。蓋板21が開口面10hと略同じ大きさとは、蓋板21が、掩蓋片22の厚さ及び側蓋片25の厚さの分大きく、蓋部20の開閉を妨げない隙間が形成される程度大きい場合を含むことを意味している。蓋板21は、長手方向の一辺が、本体部10の後板端辺18で連接している。換言すれば、本体部10と蓋板21とは、後板端辺18を介して連接している。後板端辺18は、後板14と開口面10hとが交わる部分の後板14の端辺である。蓋板21は、後板端辺18を回転軸線として、本体部10に対して回動することができるように構成されている。
【0023】
掩蓋片22は、折曲辺21fを介して蓋板21と直交し、蓋部20を閉じたときに底板13に向かって延びるように設けられている。掩蓋片22は、軸線方向Dの両端における高さ(長方形の前板12の短辺方向の長さ)が、前板12の短辺方向の長さの約1/2で、軸線方向Dの中央部の高さが、前板12の短辺方向の長さの約3/4となっている。折曲辺21fに対向する先端辺22tは、軸線方向Dにおける中央からそれぞれの端部に移動するに連れて、軸線方向Dに直交する方向における折曲辺21fと先端辺22tとの距離が短くなるように形成されている。このような構成により、折曲辺21fに対向する先端辺22tがV字状に形成されることとなる。掩蓋片22は、蓋部20が閉じられたときに、前板12に沿って前板12の外側に重なり、前板12の上部を五角形状に覆うこととなる。掩蓋片22は、軸線方向Dの長さが前板12よりもわずかに長く構成されており、本体部10に収容されているラップ91の幅よりも長い。これにより、掩蓋片22は、本体部10の中から引き出されたラップフィルム91fを、その幅全体にわたって、前板12との間に挟むことができるように構成されている。掩蓋片22の先端辺22tには、ラップフィルム91fを切断するための切断刃23が取り付けられている。切断刃23は、刃先が先端辺22tから出るように、先端辺22tに沿ってV字状に設けられている。
【0024】
側蓋片25は、蓋板21及び掩蓋片22の双方に直交して設けられている。側蓋片25は、蓋板21(掩蓋片22)の両端に合計2つ設けられている。側蓋片25は、基本形状が、長辺が蓋板21の短辺と同じ長さで、短辺が掩蓋片22の中央部における高さ(V字状の先端から折曲辺21fまでの最短距離)と略同じ長さの長方形に形成されている。この基本形状を基に、側蓋片25は、底板13側の辺と後板14側の辺とが交わる角部が、除去されている。側蓋片25は、掩蓋片22に連接された接合片22jに接着剤で固定されている。側蓋片25の内側には、接合片22jと蓋板21との間に、凹部25dが形成されている。凹部25dには、蓋部20を閉じたときに、脇板15の上端に設けられた突起15pが嵌ることとなる。上述のように構成された蓋部20は、閉じたときに、本体部10の開口10hに覆い被さり、掩蓋片22が前板12の上部を覆うようになっている。
【0025】
本体部10及び蓋部20は、本実施の形態では、約0.45〜0.7mm厚のコートボール紙が加工されて形成されている。本実施の形態では、説明の便宜上、本体部10と蓋部20とを機能の観点から区別しているが、本体部10及び蓋部20は、1枚の原紙を切り出して組み立てられて一体に形成されている。本体部10及び蓋部20の表面は、消費者の購買意欲を惹起するようなデザインが印刷されたうえで、全体に表面処理が施されている。また、ラップカートン1は、前板12の上部に、前板12の面が切り込まれることにより、副板16から離れて本体部10の外側に浮くフラップ12fが形成されている。つまり、前板12は、フラップ12fを含んで構成されている。
【0026】
ここで、図2を図1と併せて参照して、フラップ12fの詳細を説明する。図2は、ラップカートン1の正面図であり、開蓋状態を示している。フラップ12fは、本実施の形態では、軸線方向Dの長さがラップフィルム91fの幅よりもやや短く、高さ方向の最大長さが前板12全体の高さの約1/2に形成されている。なお、軸線方向Dにおけるフラップ12fの長さは、ラップフィルム91fの幅よりも長くてもよく、ラップフィルム91fの切断時に許容できないほどラップフィルム91fが滑ってしまうことを回避できる程度にラップフィルム91fをフラップ12fと掩蓋片22とで挟むことができる範囲で、本実施の形態のようにラップフィルム91fの幅よりも短くてもよい(軸線方向Dにおける長さがフラップ12fとラップフィルム91fとで実質的に同じ)。フラップ12fの軸線方向Dにおける長さがラップフィルム91fの幅よりも長く形成されていると、フラップ12fによってラップフィルム91fの全幅を支えることができ、切断時のラップフィルム91fの滑りの発生をより低減することができる。他方、フラップ12fの軸線方向Dにおける長さがラップフィルム91fの幅よりも短く形成されていると、軸線方向Dにおける前板12の端部まわりの本体部10の強度の低下を抑制することができる。本実施の形態では、軸線方向Dにおいて、フラップ12fの両端がそれぞれ前板12の端よりも15mm中央寄りに形成されているが、10mmあるいは5mm中央寄りに形成されていてもよい。
【0027】
フラップ12fは、前板12の面内に形成された切り線12cと、前板端辺19とが輪郭となる。切り線12cは、前板12の一部を切断する線である。切り線12cは、一方の脇板15に近い前板端辺19から、底板13側かつ他方の脇板15側に進みつつ、他方の脇板15に近い前板端辺19に至るように、前板12の面内が切断されることで形成されている。フラップ12fの輪郭を構成する切り線12cの両端が前板端辺19に到達していることで、フラップ12fの副板16からの浮きを良好に保つことができる。また、フラップ12fが副板16から過度に浮き上がる場合には、切り線12cの両端を前板端辺19に対して離すことによってフラップ12fの浮き具合を調節することができる。切り線12cの端部と前板端辺19との距離が長くなるほどフラップ12fの浮き量が小さくなり、例えば3mm離れているよりも5mm離れている方が浮き量は小さくなる。切り線12cの端部と前板端辺19との距離の上限は、引き出された長尺物91fを、フラップ12fの全幅と掩蓋片22とで挟むことができる程度にフラップ12fが本体部10の外側に開く範囲で決定することが好ましく、この範囲を切り線12cの両端が前板端辺19に実質的に到達しているということとする。フラップ12fは、前板端辺19で副板16と連接していることにより、切り線12cで切断されていても本体部10から脱落しないように構成されている。また、フラップ12fは、前板端辺19で副板16と連接していることにより、前板端辺19を回転軸線として回動することができるように構成されている。フラップ12fの下側の辺は、軸線方向Dの中央部において、前板端辺19側に凹んだ窪みが中心の両脇に形成されることで、明確な凸部12pが形成されている。本実施の形態では、凸部12p両側の前板端辺19側に凹んだ窪みに対向する前板12が、楕円状に刳り貫かれており、正面から副板16の一部が見えている。フラップ12fは、蓋部20を閉じたときに掩蓋片22に覆われて外面に表れない大きさに形成されている。
【0028】
フラップ12fの表面には、全幅係止手段としての前面ストッパー12sが形成されている。前面ストッパー12sは、本実施の形態では、UVニスが塗布されることで形成されている。前面ストッパー12sを形成するUVニスは、ラップフィルム91fに対して付着するが、紙や埃等は付着しない特性を有している。また、前面ストッパー12sに付着したラップフィルム91fは、付着面に平行な方向(せん断方向)には強く付着するが、付着面から引き離す方向には弱く付着する。つまり、前面ストッパー12sは、ラップフィルム91fが本体部10から引き出される方向である引出方向Pに引かれたときにはラップフィルム91fを引出方向Pに移動させないようにラップフィルム91fに付着し、ラップフィルム91fが付着面から離れる方向に引かれたときにはラップフィルム91fが容易に剥がれるように構成されている。前面ストッパー12sは、本体部10から引き出されたラップフィルム91fがフラップ12fと掩蓋片22とに挟まれたときに、実質的にラップフィルム91fの幅全体に接するように、フラップ12fの表面に形成されている。ここで「実質的にラップフィルム91fの幅全体に接する」とは、厳密に連続して接することを求める意図ではなく、ラップフィルム91fの切断時に、適切な切断を妨げるほどにラップフィルム91fが移動してしまうことを回避できる程度にラップフィルム91fを係止させることができる範囲で、断続的に接しない部分があったり、両端に接しない部分があることを許容することを意味している。本実施の形態では、前面ストッパー12sが、フラップ12fよりも外側の前板12の面にも形成されている(図1(C)参照)。さらに、本実施の形態では、前面ストッパー12sを形成しているのと同様のUVニスが前板端辺19にも塗布されて、引出方向Pのラップフィルム91fの移動を規制する端辺ストッパー19sが形成されている(図1(C)参照)。本実施の形態では、端辺ストッパー19sが、フラップ12fと脇板15との間(軸線方向Dにおけるフラップ12fよりも外側)で、前板端辺19の両端部に形成されている。このような構成により、ラップフィルム91fの切断時の滑りが比較的生じやすいラップフィルム91fの幅方向の端部において、ラップフィルム91fの滑りの発生をより抑制することができる。
【0029】
引き続き図1及び図2を参照して、ラップ入りカートン100の作用を説明する。ラップカートン1の作用は、ラップ入りカートン100の作用の一環として説明する。未開封のラップ入りカートン100は、掩蓋片22の先端に、先端辺22t上のミシン目(不図示)を介して切取片(不図示)が接続されており、切取片(不図示)は前板12に複数の点で接着されている。ラップフィルム91fを初めて使用する際は、切取片(不図示)を、前板12から剥がしつつミシン目(不図示)で切断して掩蓋片22から分離する。このようにラップカートン1を開封することで、蓋部20が本体部10に対して後板端辺18まわりに回動可能な状態となる。
【0030】
開封されたラップ入りカートン100は、本体部10の中にラップロール91rが入っている。ラップロール91rには、ラップフィルム91fの先端に引出シール(不図示)が貼り付けられており、引出シール(不図示)を摘んで引き出すことでラップフィルム91fの先端がラップロール91rから剥離し、容易にラップフィルム91fを引き出すことができる。ラップフィルム91fを使用する際は、ラップロール91rからラップフィルム91fを必要な長さ分引き出して切断刃23で切断する。このとき、ラップフィルム91fを必要な長さ分引き出した状態で蓋部20を閉じ、ラップフィルム91fを前板12と掩蓋片22とで挟み、掩蓋片22の図心を親指で押さえ、切断刃23の中央を引き出されたラップフィルム91fに食い込ませるようにラップ入りカートン100を軸線91aまわりにひねると、ラッピングする食器等にラップフィルム91fを付けた状態でも切断しやすく、好適である。
【0031】
ラップフィルム91fは、切断される際、引出方向Pに張力が掛けられた状態で切断刃23が入れられる。このため、仮に前面ストッパー12sが実質的にラップフィルム91fの幅全体に対応して形成されていないとすると、前面ストッパー12sのない部分に対応するラップフィルム91fは、引出方向Pの張力に応じてラップカートン1に対して滑りながら(引き出されながら)切断されることとなり、ラップフィルム91fの切断線が切断刃23に対応した切り口にならなくなる。例えば、UVニス(ラップフィルム係止手段)が前板12の中央部(蓋部20を閉じたときに掩蓋片22の図心に対向する点の周辺部分)にのみ塗布されている場合、前板12と掩蓋片22とで挟む力がラップフィルム91fに作用しなくなった位置からラップフィルム91fの滑りが生じ、ラップフィルム91fの切り口のV字の角度が、切断刃23のV字の角度よりも鋭角になってしまい(図3(B)参照)、切り口が粗くなってしまうことがある。この現象は、ラップロール91rの軸線方向Dの長さ(ラップフィルム91fの幅)が20cm未満の場合は、前板12と掩蓋片22とに挟まれて押さえられる部分以外の、ラップフィルム91fの滑る範囲が限定的であるため、滑りに伴う悪影響は軽微であるが、ラップロール91rの軸線方向Dの長さが20cm以上の比較的長い(幅広の)場合は顕著である。
【0032】
本実施の形態に係るラップカートン1では、前面ストッパー12sが、ラップフィルム91fの実質的に軸線方向Dの長さ全体に接するように、フラップ12fの表面に形成されているので、前板12と掩蓋片22とで挟む力が弱くなる部分においてもラップフィルム91fの引出方向Pへの移動(滑り)を止めることができる。さらにラップカートン1では、フラップ12fと脇板15との間の前板12の面及び前板端辺19にも前面ストッパー12s及び端辺ストッパー19sが形成されているので、軸線方向D端部におけるラップフィルム91fの引出方向Pへの移動(滑り)をより確実に止めることができる。これらの作用によって、ラップカートン1で切断されたラップフィルム91fの切り口は、切断刃23の形態に対応した適切なものとなる(図3(A)参照)。
【0033】
切断された後に前板12と掩蓋片22との間に挟まれているラップフィルム91fは、前面ストッパー12sに付着しているため、ラップロール91rへの巻き戻りが防止される。また、次回ラップフィルム91fを使用する際に、蓋部20を開けると、フラップ12fが本体部10の外側に浮いているので、フラップ12fに形成された前面ストッパー12sに付着しているラップフィルム91fの先端もフラップ12fの外側の前板12から浮くこととなり、摘みやすい。
【0034】
上述のように、ラップ入りカートン100によれば、ラップフィルム91fを切断する際に、前面ストッパー12sによってラップフィルム91fの幅全体にわたってラップフィルム91fの引出方向Pへの移動(滑り)を止めることができ、ラップフィルム91fを適切に切断することができる。
【0035】
以上の説明では、ラップフィルム91fがポリ塩化ビニリデンを原料として薄膜状に形成されているとしたが、ポリ塩化ビニリデン以外の、例えば、ポリエチレンやポリ塩化ビニル等の通常家庭用ラップで使用される合成樹脂で形成されていてもよい。
【0036】
以上の説明では、端辺ストッパー19sが、軸線方向Dにおけるフラップ12fよりも外側の前板端辺19の両端部に形成されているとしたが、実質的にラップフィルム91fの幅全体に対応して形成されていてもよく、この場合は端辺ストッパー19sも全幅係止手段を構成することとなる。なお、全幅係止手段として、前面ストッパー12sと端辺ストッパー19sとを重畳して設けてもよいが、ラップフィルム91fを切断する際にラップフィルム91fの引出方向Pへの滑りを止めることができれば、前面ストッパー12s及び端辺ストッパー19sのどちらか一方を省略してもよい。端辺ストッパー19sを省略した場合は、蓋部20を完全に開けなくてもラップフィルム91fを引出方向Pに引き出すことができる。前面ストッパー12sを省略した場合は、小さい面積の全幅係止手段の形成でラップフィルム91fの引出方向Pへの滑りを止めることができる。
【0037】
以上の説明では、先端辺22t及び切断刃23がV字状に形成されているとしたが、軸線方向Dに平行に延びる直線状に形成されていてもよい。先端辺22t及び切断刃23がV字状に形成されていると、ラップフィルム91fは、軸線方向Dの中央から両端に向かって切断される場合が多いが、一端から他端に向かって切断される場合もある。他方、先端辺22t及び切断刃23が軸線方向Dに平行に延びる直線状に形成されている場合は、ラップフィルム91fは、一端から他端に向かって切断されるのが一般的である。ラップカートン1のように全幅係止手段(12s)が形成されている場合は、ラップフィルム91fが、軸線方向Dの中央から両端に向かって切断される場合も、一端から他端に向かって切断される場合も、ラップフィルム91fの引出方向Pへの滑りを止めて適切に切断することができる。
【0038】
以上の説明では、前板12のフラップ12fの軸線方向Dにおける長さがラップフィルム91fの幅と実質的に同じに形成されているとしたが、フラップ12fの軸線方向Dの長さがラップフィルム91fの幅よりも短く(例えば、ラップフィルム91fの幅の約1/3の長さ)形成されていてもよく、あるいはフラップ12fが設けられていなくてもよい。しかしながら、フラップ12fが設けられているとラップフィルム91fを使おうとしたときに先端が前板12から浮いて摘みやすいため好ましく、フラップ12fの軸線方向Dの長さが実質的にラップフィルム91fの幅と同じに形成されているとラップフィルム91fを実質的に幅全体にわたってフラップ12fによって掩蓋片22側に近づけることができるためより好ましい。なお、フラップ12fの軸線方向Dの長さがラップフィルム91fの幅よりも短い場合も、フラップ12fが設けられていない場合も、全幅係止手段として前面ストッパー12sを設ける場合は、実質的にラップフィルム91fの幅全体に接するように前板12の表面(蓋部20を閉じたときに掩蓋片22に覆われる部分)に形成されることとなる(図4(A)に一例を示す)。
【0039】
以上の説明では、前面ストッパー12sが形成された部分を引き出されたラップフィルム91fの側に隆起させる手段が、前板端辺19を回動軸線として回動することができるフラップ12fであるとしたが、エンボス加工によって外側に凸になるように形成されたエンボス部(不図示)を形成する等、フラップ12f以外の構成であってもよい。
【0040】
以上の説明では、前面ストッパー12s(全幅係止手段)が、フラップ12f(前板12)に形成されているとしたが、図4(B)に示すように、蓋部20を閉じたときに前板12に対向する掩蓋片22の部分に全幅係止手段としてのストッパー22sが形成された構成としてもよい。このとき、ストッパー22sが形成された掩蓋片22の部分に、内側に凸となるエンボス加工を施す等により、ストッパー22sが形成された掩蓋片22の部分が、引き出されたラップフィルム91fの側に隆起した構成としてもよい。あるいは、全幅係止手段が、前板12側と掩蓋片22側の双方に形成されていてもよく、前板12側と掩蓋片22側とに交互に形成されて蓋部20を閉じたときに協働して実質的にラップフィルム91fの幅全体に接するように構成されていてもよい。
【0041】
以上の説明では、前面ストッパー12sが、UVニスが塗布されて形成されているとしたが、粘着剤を塗布する等、UVニス以外の物質で形成されていてもよい。また、前面ストッパー12sは、塗布によって形成されるもののほか、ラップフィルム91fが付着する材質であらかじめ形成されたシート状のラベルを貼付することによって形成されていてもよい。ラップフィルム91fが付着する材質として、ラップフィルム91f自体(ラップフィルム91fと同じ材料で形成されたラベル)、あるいは、ポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂のうち、ラップカートン1に収容されるラップ91に付着するものが挙げられる。つまり、前面ストッパー12sは、用いられるラップフィルム91f等の長尺物の材質に応じて、当該長尺物には付着しつつ容易に剥がせることができるが埃等の異物は付着しない特性を有している物質で形成されていると好適である。端辺ストッパー19sについても同様である。
【符号の説明】
【0042】
1 ラップカートン
10 本体部
10h 開口面
12 前板
12c 切り線
12f フラップ
12s 前面ストッパー
13 底板
14 後板
15 脇板
18 後板端辺
19 前板端辺
19s 端辺ストッパー
20 蓋部
21 蓋板
21f 折曲辺
22 掩蓋片
22t 先端辺
23 切断刃
25 側蓋片
91a 軸線
91f ラップフィルム
91r ラップロール
100 ラップ入りカートン
P 引出方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜状の長尺物が巻かれて形成された軸線方向の長さが20cm以上の巻回体を収容する直方体状に形成された本体部であって、前記巻回体が収容されたときに前記巻回体の軸線と平行になる4つの長方形面のうちの1つが開口した開口面に形成されると共に、前記開口面に直交する2つの前記長方形面のうちの一方を構成する後板と、前記後板に対向する前記長方形面を構成する前板と、を有する本体部と;
前記後板の前記開口面と交わる端辺である後板端辺に回動可能に連接された蓋部であって、前記蓋部を閉じたときに、前記開口面を覆う蓋板と、前記蓋板に連接されて前記前板の一部を覆う掩蓋片と、を有する蓋部とを備え;
前記掩蓋片は、前記前板の前記開口面と交わる端辺である前板端辺に沿って、前記巻回体から引き出された前記長尺物を前記前板との間で前記長尺物の幅全体にわたって挟むことができる大きさに形成されると共に、引き出された前記長尺物を切断する切断刃が設けられ;
前記蓋部を閉じたときに前記蓋部及び前記前板の相互に対向する部分の少なくとも一方に、引き出された前記長尺物の実質的に幅全体に対応して、前記長尺物が引き出される方向である引出方向の前記長尺物の移動を規制する全幅係止手段が形成された;
巻回体収容箱。
【請求項2】
前記全幅係止手段が形成された前記蓋部及び前記前板の少なくとも一方の部分が、引き出された前記長尺物の側に隆起して構成された;
請求項1に記載の巻回体収容箱。
【請求項3】
前記隆起して構成された部分が、前記前板端辺寄りの前記前板の面に形成された、前記開口面側よりも前記底板側の方が前記本体部の外側に開いたフラップで構成され;
前記フラップは、前記巻回体の軸線が延びる方向の長さが、引き出された前記長尺物の幅方向の長さと実質的に同じであり、輪郭が前記前板の面内を通る切り線と前記前板端辺とで形成されると共に、前記切り線の両端が前記前板端辺に実質的に到達して形成され;
前記全幅係止手段が前記フラップ上に形成された;
請求項2に記載の巻回体収容箱。
【請求項4】
前記掩蓋片は、前記蓋板に連接した折曲辺に対向する先端辺が、前記先端辺の中点から前記先端辺の端の側に移動するに連れて、前記折曲辺に直交する方向における前記折曲辺と前記先端辺との距離が短くなるように構成された;
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の巻回体収容箱。
【請求項5】
薄膜状の長尺物が巻かれた巻回体と;
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の巻回体収容箱とを備える;
巻回体入り収容箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−86813(P2013−86813A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227177(P2011−227177)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】