説明

巻筒体収納箱

【課題】巻筒体の収納室からの飛び出し防止性能と収納室からの取り出し易さという、二律背反な性能を調和させた巻筒体収納箱を提供する。
【解決手段】巻筒体収納箱を構成する収納室12内部に収納される巻筒体Rを支持するための支持部材14´において、支持部材14´の折り線gに巻筒体収納箱の前板1側を上端として後板3側を下端とした傾斜を付与し、底板2に平行な直線となす角度θが、4°以上12°以下の範囲とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品包装用のラップフィルムやアルミホイルなどを巻回した巻筒体の収納箱に関する。特に、フィルム引き出し時などの巻筒体の飛び出し防止性能と、消費者の使用中トラブルからの復旧や芯体の廃棄など何らかの理由で収納室から巻筒体を取り出す際の、巻筒体の箱からの取り出し易さを調和させた巻筒体の収納箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ラップフィルムやアルミホイルは芯体に巻回された巻筒体として箱に収納されており、必要量を引き出し収納箱に取り付けられた鋸刃により切断し使用されている。その際、巻筒体が収納箱内で滑らかに回転しなかったり、引き出す速度、ラップフィルム間の密着による抵抗などの要因で、巻筒体が箱外へ飛び出すことがあった。これらを防止する手段としては、例えば、特許文献1では、ロール状物のコア端部内側に挿入可能な抜け止め片を包装箱端板に設けて、巻径が小さくなり軽くなったとき、ロール状物が包装箱から抜け出し易くなり引き出し作業を困難にすることを防止する方法が開示されている。又、特許文献2では、支持部材の寸法等を規定して、巻筒体が収納室から飛び出すのを防止すると共に、特に巻筒体の筒体径を小さくして長尺巻としたラップフィルムやアルミホイルが、使用と共に消費されて巻筒体の外径が底板の奥行き幅より充分に小さくなった時に発生し易い引き出し時の遊回動を防止する方法が開示されている。
【0003】
又、特許文献3では、支持部材の折罫の長さと支持部材の最大幅の比率、窓部の底板からの高さ、収納室の奥行き幅と芯体の外径の比率、収納箱に収めた巻筒体長手幅方向の隙間等の寸法について明確に範囲を規定して、巻筒体の飛び出し防止性能と、巻筒体の収納箱からの取り出し易さを調和させる方法が開示されている。
【0004】
又、特許文献4では、側板の内側フラップに折罫で折り曲げられ紙管の内側に位置し、その折罫がカートンの水平方向に対して斜め向きに配置されている舌片を設け、カートン上方への軽い引っ張りに対して紙管が飛び出さないように保持し、かつ容易に紙管を出し入れ可能で、繰り返し取り出しても元通りに復元して機能を損なわない方法が開示されている。又、特許文献5では、本体内側板と本体側板に、折れ線で内側に屈曲できるように構成された内係止片と外係止片を設け、その折れ線を垂直あるいは傾斜(底板に垂直な垂直線との角度を0〜50度の範囲とする)を有する係止部とすることにより折り込まれた係止部を簡単に元に戻らないようにし、確実に飛び出しを防止する方法が開示されている。
【0005】
【特許文献1】実開昭60−57519号公報
【特許文献2】特開平10−338228号公報
【特許文献3】特開2004−142784号公報
【特許文献4】特開平10−324328号公報
【特許文献5】特開2006−56569号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した特許文献1のように抜け止め片が固定されていない技術のものは、ロール状物の取り出し時に抜け止め片が破損する問題はほとんど発生しないが、押し込んだ抜け止め片に強度がないため勢い良く引き出した場合、抜け止め片が側板に対して90度以上折れ曲がり、ロール状物の飛び出しを十分に防止できない問題がある。又、特許文献2の技術では、筒体内径と支持部材の最大幅がほとんど同じ寸法なため、巻筒体の飛び出し防止能力と遊回動防止能力は高いが、使用中のトラブル時等に巻筒体を取り出すのに大きな力を必要とする問題がある。又、特許文献3の技術では、取り出しを容易にするために巻筒体と収納箱、巻筒体と支持部材の間に隙間を設けたことにより、想定範囲外な過酷な使用方法において、たとえば収納箱の開口部に対して上部方向への引き出しや速い引き出し速度による引き出しには十分な飛び出し防止能力を維持できない問題がある。又、特許文献4の技術では、カートン上方への引っ張りに対して取り出し易さと飛び出し防止能力を有するが、実際に消費者が収納されたラップフィルムを引き出す際にはカートン上方ではなく、斜め上側に紙管が持ち上がり、その際には十分な飛び出し防止性能を発揮しない問題がある、さらに使い始めで巻筒体の重量が重い場合、紙管に対して折罫の長さおよび舌片の面積が不十分なため包装用ウェブ引き出しにおいて紙管の飛び出しを防止するほどの機能を充分に有していない。又、特許文献5のように前板側を上端、後板側を下端とした傾斜を付与した係止片では、底板の垂直線に対して0〜50度の傾斜を設けた内係止片であるため引き出し方向に対して、非常に有効な飛び出し防止性能を有するが、使用中のトラブル時等には巻筒体を取り出すのに大きな力を必要とし、その際、内係止部が破損してしまうという問題がある。
【0007】
従来の発明から、収納箱内から巻筒体の飛び出しを防止するために設けられる収納箱脇板に連接する支持部材において、その飛び出し防止性能を向上のため支持部材の形状を大きくしたり、固定したり、折り線に大きな傾斜をつけると、トラブル時等に巻筒体を取り出し難くなり、勢い余って収納箱蓋部に取り付けている切断用鋸刃に手先が接触したり、支持部材が取り出し時に掛かる負荷によって破損する可能性が高くなる。一方、巻筒体を取り出し易くするために支持部材を小さくしたりするとフィルム等の引き出し時の飛び出し防止性能が低下して飛び出し易くなる。このように取り出し易さと飛び出し防止能力は二律背反の関係にある。
【0008】
本発明は、フィルム等の引き出し性にも問題なくこのような巻筒体の飛び出しを防止する支持部材によって、消費者が使用するにあたり巻筒体の取り出し易さと飛び出し難さがバランス良く両立し、支持部材等の破損が無い巻筒体収納箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記課題を解決するため巻筒体収納箱の支持部材の折り線傾斜角度を検討することで、飛び出し防止性能と取り出し性という二つの相反する性能を両立し調和が取れることを見出し、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は前板1、底板2、後板3、脇板8、及び補助脇板9、9´の各面で形成される上部が開口した収納室12と、その収納室12の後板3の上端縁から開閉可能で収納室12を覆う方向に連接した蓋板4、その蓋板4の前端縁から前板1を覆う方向に延出した掩蓋片5、掩蓋片脇板10、及び掩蓋片補助脇板11の各面で形成される蓋体13とからなる直方体の箱体と、上記収納室12に収納される巻筒体Rからなり、補助脇板9には巻筒体Rの内部へ挿入可能で巻筒体Rを支持するための支持部材14´が切れ線と、折り線または半切れ線によって形成され、脇板8には折り線または半切れ線を介して収納室12内部へ押し込み可能で支持部材14´を巻筒体Rの内部へ挿入させるための窓14が形成された巻筒体収納箱において、上記支持部材14´を形成する上記折り線または半切れ線は、上記前板1側を上端とし上記後板3側を下端とする傾斜が付与されており、上記底板2に平行な直線となす角度θが、4°以上12°以下の範囲であることを特徴とする巻筒体収納箱である。
また、本発明は、前記支持部材14´の最大横幅がL、折り線水平幅がS、最大縦幅がH、芯体R1の内径がDとした時に
0.5≦L/D≦0.7 1式
0.4≦S/D≦0.64 2式
0.4≦H/D≦0.7 3式
の各条件を満たすことを特徴とする巻筒体収納箱である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の巻筒体収納箱は、支持部材の折り線にある範囲の特定の傾斜角度を設けることで、従来傾斜を付与した支持部材において生じた巻筒体の取り出し易さの低下、すなわち取り出し力の増加を招かずに、巻筒体の飛び出し防止性能のみを向上させることができる効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1は本発明の巻筒体収納箱の支持部材が巻筒体内部に押込まれた状態の立体模式図であり、図2は図1の巻筒体収納箱の展開図であり、図3は巻筒体収納箱に巻筒体を入れてフィルムを引き出した状態を上から見た図であり、図4は支持部材と押込み窓と内部巻筒体の位置関係を示した側面図であり、図5は実用可能な支持部材形状の一例を示した図である。
【0012】
本発明の巻筒体収納箱の一例を示す図1において、収納箱は、直方体の箱体であり、上面が開口した収納室12と、当該上面を閉鎖可能な蓋体13を有している。収納室12は、図2に示すように前板1と、底板2と、後板3と、底板2の長手方向の両端に接続された脇板8と、後板3の両端に接続された補助脇板9と、前板1の両端に接続された補助脇板9´により各面が構成されている。蓋体13は、収納室12の後板3の上端縁から開閉可能で収納室12を覆う方向に連接した蓋板4と、その蓋板4の前端縁から前板1を覆う方向に延出した掩蓋片5と、蓋板4の両端に接続された掩蓋片脇板10と、掩蓋片5の両端に接続された掩蓋片補助脇板11により各面が構成されている。掩蓋片5の先端縁には、開封片6が接続されている。また、前板1の上端縁には、縁折片7が接続されている。尚、前板1の上端縁に縁折片7を設けなくてもよいし、或いは180°折り曲げて前板1の裏面と接着させてもよい。
【0013】
収納室12を構成する補助脇板9には、それぞれ巻筒体Rの芯体R1内部へ挿入可能で巻筒体Rを支持するための支持部材14´が切れ線iと折り線gによって形成されている。脇板8には、折り線hを介して収納室12内部へ押し込み可能で支持部材14´を巻筒体Rの内部へ挿入させるための窓14が設けられている。窓14は、折り線hと切れ線jにより形成されている。収納室12が組み立てられた際、補助脇板9は、脇板8の内側に重ねられ、支持部材14´は、窓14の内側に位置する。
【0014】
図1に示すように本発明の巻筒体収納箱には、フィルムFを切断するための切断具Kが配備され、収納室12に収納された巻筒体Rから必要量フィルムを引き出し切断して使用される。切断具Kの形状は、直線状、V状、アーチ状等、材質も金属、プラスチック、バルカナイズドファイバー等従来公知のものであれば特に制限はない。又、切断具Kが配備されている部位は、掩蓋片5の先端縁部、その他前板1の上端縁部、底板2と前板1の間の稜線部いずれでも構わない。
【0015】
本発明の巻筒体収納箱において、図4に示すように補助脇板9の中央に形成される支持部材14´の折り線gには傾斜を付与している。折り線gは、収納箱に組み立てた場合、前板1側の端部が上端、後板3側の端部が下端となる構造で、その傾きは底板2の底辺に平行な直線となす角度θが4°以上12°以下の範囲である。この範囲にある支持部材14´が巻筒体Rの内部に挿入された場合は、消費者がフィルムを引き出した時に巻筒体Rが箱外に飛び出す現象を防止する能力を傾斜がない支持部材と比較して飛躍的に向上させるとともに、消費者が何らかの理由で収納室12から巻筒体Rを取り出そうとする操作に必要な力は折り線に傾斜を有さない支持部材と同程度である。これは、特に巻筒体Rの飛び出し防止性能が支持部材14´の折り線g部位の傾斜に大きく依存するためである。θが4°以上12°以下の範囲にある場合、支持部材14´は巻筒体Rの取り出し易さを維持したまま十分な飛び出し防止性能を発揮することができる。
【0016】
本発明の巻筒体収納箱において、支持部材14´の折り線gに前板1側から後板3側に下がる傾斜を持たせることで、フィルム引き出し時に巻筒体Rが回転して支持部材14´に抵抗を与える場合、支持部材14´が巻筒体Rから受ける力の方向、すなわち、上方向、前方向、斜め上前方向に対して、傾斜を設けない底板と水平な折り線を有する支持部材よりも、支持部材14´の耐久性が高くなり飛び出しを防止する効果が大きくなる。その傾斜角度θが4°より小さい場合は、巻筒体Rから受ける力の大きさおよび方向に対してなす傾斜角度θが充分でないため傾斜を設けない支持部材との間に期待する巻筒体Rの飛び出し防止効果の差異は発現しない。又、θが12°より大きい場合は、なす角度が大きいため巻筒体Rの飛び出し防止効果は非常に大きくなる一方、消費者が何らかの理由で収納室12から巻筒体Rを取り出す時などに著しく取り出し難くなる問題がある。この飛び出し防止効果と取り出し易さをバランス良く発現する観点から、傾斜角度θは6°以上8°以下の範囲に設定することがより好ましい。
【0017】
本発明の巻筒体収納箱において、支持部材14´の最大横幅Lと芯体R1の内径Dの関係は、0.5≦L/D≦0.7(1式)であることが好ましい。L/D<0.5の場合、芯体R1と支持部材14´の間隙が大きく消費者がフィルムを引き出す際、支持部材14´と芯体R1内面が接触するまでの巻筒体Rの移動距離が長くなることで飛び出し方向への勢いが増し、飛び出し易くなる。また、L/D>0.7の場合は、芯体R1の内径Dに対して支持部材14´の最大横幅Lが大きいために巻筒体Rは飛び出し難いが、フィルム引き出しを困難にするとともに巻筒体Rが取り出し難くなる傾向にある。
【0018】
本発明の巻筒体収納箱において、支持部材14´の折り線水平幅Sと芯体R1の内径Dの関係は、0.4≦S/D≦0.64(2式)であることが好ましい。折り線水平幅Sの変位は、上記した最大横幅Lと同様に、支持部材14´の飛び出し、取り出し性能に大きな影響を与える。S/D<0.4の場合、巻筒体Rが取り出し易くなる反面、飛び出し防止性能が悪化する傾向にある。S/D>0.64の場合、巻筒体Rの飛び出し防止性能は十分に発揮されるが、取り出し易さは阻害される傾向にある。そのため飛び出し防止性能と取り出し易さの調和が取れるのは2式の範囲にあることが好ましい。
【0019】
本発明の巻筒体収納箱において、支持部材14´の最大横幅Lと直交する最大縦幅Hと芯体R1の内径Dの関係は、0.4≦H/D≦0.7(3式)であることが好ましい。H<0.4の時、支持部材14´と芯体R1内部との引っ掛かり具合が不十分で、飛び出し防止性能も不十分になる傾向にある。また、H>0.7の場合は支持部材14´の長さが長いために取り出し時に芯体R1内部と支持部材14´が接触する距離が長くなり完全に取り出すまでに負荷の掛かる時間が長くなることで消費者に扱いにくさを感じさせる傾向にある。
【0020】
本発明の巻筒体収納箱において、支持部材14´の折り線gの上下方向設置位置、つまり設置高さについては、支持部材14´を押し込んだ際に支持部材14´の端部と芯体R1の端が接触することがなく、芯体R1空間内への押し込みがスムーズとなる範囲にあることが好ましい。更に、収納室12に巻筒体Rを収納した際、その芯体R1の上部半円の領域に折り線gが存在するとフィルム引き出し時において、芯体R1に接触する支持部材14´の端部と折り線gとの距離が短くなり、支持部材14´全体が折り線gを中心に上方に折り返される力のモーメントが小さく、折りかえり難くなる点で好ましい。
【0021】
本発明の巻筒体収納箱において、支持部材14´の前後方向設置位置については、上下方向位置と同様に支持部材14´を押し込んだ際に支持部材14´の端部と芯体R1の端が接触することがないことが好ましい。更に、巻筒体Rの巻体であるフィルム等が未使用時において、巻筒体Rが収納室12の前板1もしくは後板3の内面と接触した際、支持部材14´と芯体R1内面が接触しないことが好ましい。更に、巻筒体Rのラップフィルムやアルミホイルが使用と共に消費されて巻筒体Rの外径が小さくなった場合には未使用時等の外径が大きかった場合とは逆に、巻筒体Rが前板1または後板3内面と接触しないように芯体R1内面と支持部材14´が接触するような配置が好ましい。これはラップフィルムの使用初期では、巻筒体Rと収納室12の前板1または後板3内面との接触が支持部材14´との接触より抵抗が小さく、引き出しがスムーズであり、両方が接触した場合、引き出しは重くなり消費者の使い心地を低下させてしまうためである。又、ラップフィルム使用末期では、前板1または後板3内面と巻筒体Rとの接触で発生する転がり摩擦抵抗、滑り摩擦抵抗が巻筒体Rの自重減少により小さくなるため収納箱内で巻筒体Rが回遊することになり消費者の使い心地を低下させてしまう。巻筒体R内面と支持部材14´とが接触する場合は巻筒体Rのラップフィルム等の引き出しをスムーズに行うことができる。尚、上述の条件を満たす限り、支持部材14´の形状は図5(a)〜(e)のような曲線の組み合わせ型、半円型、台形型、矢印型、鉤型等の任意の形状で構わない。
【0022】
本発明の巻筒体収納箱において、窓14の最大高さH1と後板3の幅Wbと芯体R1の幅Wcの関係は(Wb−Wc)≦H1≦2(Wb−Wc)が好ましい。これは図3で示したように、収納室12に巻筒体Rを収納した場合の幅方向の隙間と図4に示した窓14の最大高さH1の関係を示している。H1がこの範囲にあるものは、収納箱の外観と巻筒体Rの取り出し易さが調和している。
【0023】
本発明の巻筒体収納箱において、H1<(Wb−Wc)の場合は、巻筒体Rを収納室12から取り出す時に窓14が芯体R1内部に引っ掛かからないので巻筒体Rの取り出し易さを阻害することはないが、H1が小さいため生産時にピン等で窓14を綺麗に押し込むことが困難で、窓14自体がちぎれたり脇板8の窓周辺に破れ等を発生して収納箱の外観が著しく低下する可能性がある。また、H1>2(Wb−Wc)の場合は、生産時にピン等で窓14を押し込んでも押込みに問題はないが穴が大きいため外観に問題があり、またH1が大きいため巻筒体Rを取り出す時に窓14自体が芯体R1内部に引っ掛かって巻筒体Rの取り出し易さが阻害される可能性がある。尚、窓14の最大幅L1と窓14自体の配置位置と形状については、図4に示したようにL1については生産時にピン等で押し込んだ場合に外観悪化を生じない程度に大きく、収納箱を組み立てた時に窓14全体が支持部材14´の範囲内に収まる程度に小さい長さとすれば良い。配置位置についても図4に示したように、収納箱を組み立てた時に底板2端部から窓14の折り線hまでの長さと底板2端部から支持部材14´の折り線gまでの長さがほぼ同じとなるように配置させることが好ましい。形状については上述した条件を満たせば任意の形状で構わないが、四角形型が好ましい。また、図1や図2では窓14の折り線hを収納室12の開口側に設けている例を示しているが、この折り線hを底板2側に設けてもよい。また、支持部材14´の折り線gに代えて半切れ線g1を用いてもよく、窓14の折り線hに代えて半切れ線h1を用いてもよい。
【0024】
本発明の巻筒体収納箱に使用される材質としては、板紙、各種ダンボール、プラスチック等特に制限はないが、一般的には厚さ0.35mm〜1.5mmの板紙が使用される。本発明の巻筒体収納箱に収納される芯体に巻き回されるフィルムは、各種樹脂製のラップフィルム、アルミホイル、クッキングペーパー等特に制限はないが、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン等のラップフィルムが特に好ましい。
【0025】
次に、本発明で用いる評価の方法と尺度について以下に示す。
《飛び出し防止性》図1のような収納箱へ芯体R1に塩化ビニリデンフィルム(商品名:サランラップ、旭化成ホームプロダクツ(株)製)が50m巻かれた巻筒体Rを収納し、脇板8に設けた窓14を介して補助脇板9に設けた支持部材14´を巻筒体R内部まで押し込んだ。支持部材14´の形状が表1又は表2で示したような巻筒体収納箱をそれぞれ10箱ずつ用意して、1箱ずつ1回につき約30cmのフィルムを勢い良く引き出す作業をフィルムを使い切るまで繰り返し(引き出し速度はおよそ36m/min)収納箱から巻筒体Rが途中で飛び出すか否かを検証した。一回も飛び出さなかった場合を◎(優れた飛び出し防止性能)とし、10箱中飛び出したものが3箱以下の場合を○(実用性あり)、10箱中4箱以上飛び出した場合×(実用性無し)とした。
《取り出し性》飛び出し防止性の評価と同様な巻筒体収納箱を10箱用意し、芯体R1端部にデジタルフォースゲージをかけてもう一方の巻筒体R端部を支点に円弧を描くように巻筒体Rを収納箱から取り出す作業を行った時、10箱すべての支持部材14´が破損することなく取出し力が10N未満であり、使用者がストレスを感じずに容易に巻筒体Rを取り出せた場合を◎(優れた取り出し性)とし、取出し力が10N以上15N未満の場合を○(実用性あり)、支持部材14´が破損したり大きな抵抗が生じた(取出し力が15N以上)場合は×(実用不可能)とした。
【実施例】
【0026】
以下、実施例に基づいて更に詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
実施例に供する収納箱の基本構造(飛び出し防止用の支持部材14´と押し込み用の窓14は除く)は、図1に示すものと同じ、つまり厚み約0.72mm、坪量約550g/m2のコートボール紙(商品名:サンコート(11号)、王子板紙(株)製)を用いて前板1、底板2、後板3、脇板8と補助脇板9、9´の各面で形成される上部が開口した高さ約47mm、底板の奥行き幅Waが約47mm、後板3の幅Wbが約311mmの収納室12と、その収納室12の後板の上端縁から開閉可能で収納室12を覆う方向に連接した掩蓋片5、掩蓋片脇板10と掩蓋片補助脇板11の各面で形成された蓋体13からなる直方体の箱体であり、収納室に収納した巻筒体(芯体の幅Wcが307mm、内径Dが30mmのもの)からラップフィルムを必要量引き出し、切断して用いる巻筒体収納箱である。
【0027】
この収納箱を基本として飛び出し防止用の支持部材14´の形状は巾着型とし、サイズ、折り線部位の傾斜角度θ、を表1に示したように変更したもの(実験番号1〜6)を各々20箱ずつ機械で作成して飛び出し防止性能と取り出し性評価を実施した。窓14は、図2に示したような四角形となるように形成して(支点は半切れ線)、収納箱を組み立てた時に、図4に示したように窓14全体が支持部材14´の領域内部で重なる位置に配置した。
【0028】
【表1】

【0029】
(比較例)
実施例と同じ条件で飛び出し防止用の支持部材14´のサイズ、折り線部位の傾斜角度θを表2に示したように変更したもの(実験番号7〜10)を各々20箱ずつ機械で作成して各評価を実施した。
【0030】
【表2】

【0031】
各評価項目による評価結果と総合評価結果を表3に示す。
【表3】

【0032】
本発明の範囲内である実施例で示した各設計では比較例に比べ、飛び出し防止性能と取り出し性のバランスがよく、折り線傾斜角度θが6°≦θ≦8°、0.5≦L/D≦0.7(式1)0.4≦S/D≦0.64(式2)0.4≦H/D≦0.7(式3)を同時に満たす実験番号1、2は特によいことが判る。これらの結果から支持部材14´に適度な傾斜を付与することが取り出し性を損なわずに飛び出し防止性能の性能向上にのみ大きく寄与することが判る。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の巻筒体収納箱の支持部材が巻筒体内部に押込まれた状態を示す立体模式図である。
【図2】図1に示した巻筒体収納箱の展開図である。
【図3】巻筒体収納箱に巻筒体を入れてフィルムを引き出した状態の上面図である。
【図4】支持部材と押込み窓と内部巻筒体の位置関係を示した巻筒体収納箱の側面の説明図である。
【図5】実用可能な支持部材形状の一例を示した図である。
【符号の説明】
【0034】
1:前板、2:底板、3:後板、4:蓋板、5:掩蓋片、6:開封片、7:縁折片、8:脇板、9:補助脇板、9´:補助脇板、10:掩蓋片脇板、11:掩蓋片補助脇板、12:収納室、13:蓋体、14:窓、14´:支持部材、D:芯体の内径、F:フィルム、g:支持部材の折り線、g1:支持部材の半切れ線、H:支持部材の最大高さ、H1:窓の高さ、h:窓の折り線、h1:窓の半切れ線、K:切断具、L:支持部材の最大横幅、L1:窓の最大幅、R:巻筒体、R1:芯体、S:支持部材の折り線水平方向の幅、Wa:底板の奥行き幅、Wb:後板の幅、Wc:芯体の幅、θ:支持部材の折り線の傾斜角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前板(1)、底板(2)、後板(3)、脇板(8)、及び補助脇板(9)、(9´)の各面で形成される上部が開口した収納室(12)と、その収納室(12)の後板(3)の上端縁から開閉可能で収納室(12)を覆う方向に連接した蓋板(4)、その蓋板(4)の前端縁から前板(1)を覆う方向に延出した掩蓋片(5)、掩蓋片脇板(10)、及び掩蓋片補助脇板(11)の各面で形成される蓋体(13)とからなる直方体の箱体と、上記収納室(12)に収納される巻筒体(R)からなり、補助脇板(9)には巻筒体(R)の内部へ挿入可能で巻筒体(R)を支持するための支持部材(14´)が切れ線と、折り線または半切れ線によって形成され、脇板(8)には折り線または半切れ線を介して収納室(12)内部へ押し込み可能で支持部材(14´)を巻筒体(R)の内部へ挿入させるための窓(14)が形成された巻筒体収納箱において、
上記支持部材(14´)を形成する上記折り線または半切れ線は、上記前板(1)側を上端とし上記後板(3)側を下端とする傾斜が付与されており、上記底板(2)に平行な直線となす角度θが、4°以上12°以下の範囲であることを特徴とする、巻筒体収納箱。
【請求項2】
前記支持部材(14´)の最大横幅が(L)、折り線水平幅が(S)、最大縦幅が(H)、前記巻筒体(R)の芯体(R1)の内径が(D)とした時に、次の1〜3式の条件を満たすことを特徴とする、請求項1に記載の巻筒体収納箱。
0.5≦L/D≦0.7 1式
0.4≦S/D≦0.64 2式
0.4≦H/D≦0.7 3式

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−100293(P2010−100293A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−271361(P2008−271361)
【出願日】平成20年10月21日(2008.10.21)
【出願人】(390017949)旭化成ホームプロダクツ株式会社 (56)
【Fターム(参考)】