説明

希釈装置、多段希釈システム、及び希釈方法

【課題】希釈倍率のバラツキが生じにくい希釈装置、多段希釈システム、及び希釈方法を提供する。
【解決手段】試料原液Sと希釈液Rとが導入される希釈容器C1と、希釈容器C1に試料原液Sと希釈液Rを導入する導入手段と、希釈容器C1内に導入された試料原液Sと希釈液Rを撹拌混合して希釈試料液を調製する撹拌機M1と、希釈容器C1から調製した希釈試料液D1の一部を、該希釈試料液D1中に挿入される導出管L4eを用いて導出する導出手段を備え、前記導入手段は、希釈容器C1に、希釈液Rの一部を導入した後に試料原液Sを導入し、その後、希釈液Rの残部を導入するように構成されていることを特徴とする希釈装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、希釈装置、多段希釈システム、及び希釈方法に関する。さらに詳しくは、自動化学分析計等において、高倍率で試料液を希釈するのに適した希釈装置、多段希釈システム、及び希釈方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動化学分析計等によって高濃度の試料を測定する場合には、計量した試料を希釈して、測定に適した濃度にする必要がある。自動化学分析計に用いられる希釈装置としては、特許文献1の図4や、特許文献2の図1に記載された計量管方式のものが一般的である。
計量管方式では、計量管に充填した試料液を希釈容器に導入後、計量管内に希釈液を流し、残留した試料液を洗い流しながら希釈液を希釈容器に導入するようになっている。希釈容器内では、導入された試料液と希釈液が混合され、希釈試料液が得られる。
【0003】
希釈試料液は、希釈容器内でそのまま分析に供される場合もあるが(例えば、特許文献2の図1)、その一部のみが、分析計に送られる場合は、希釈容器内に挿入された導出管から吸い上げて導出されるのが一般的である。
また、特に大幅な希釈を行う場合には、希釈率の精度を高めるために希釈試料液を更に希釈するいわゆる多段希釈が行われている。その場合も、希釈容器内に挿入された導出管から希釈試料液を吸い上げ、次の希釈容器に送ることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−304248号公報
【特許文献2】特開2010−164465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、小容量の計量管方式の希釈装置では、希釈倍率にバラツキが生じ、測定精度に影響を与える場合があった。特に、高倍率で希釈する場合のバラツキが大きくなりやすい傾向があった。そのため、希釈精度を上げるためには、大容量の試料及び希釈液を計量する必要があり、希釈システム全体が大がかりになりやすかった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、希釈倍率のバラツキが生じにくい希釈装置、多段希釈システム、及び希釈方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
[1]希釈されるべき試料液と希釈液とが導入される希釈容器と、該希釈容器に試料液と希釈液を導入する導入手段と、該希釈容器内に導入された試料液と希釈液を撹拌混合して希釈試料液を調製する撹拌機と、前記希釈容器から調製した希釈試料液の一部を、該希釈試料液中に挿入される導出管を用いて導出する導出手段を備え、前記導入手段は、前記希釈容器に、希釈液の一部を導入した後に試料液を導入し、その後、希釈液の残部を導入するように構成されていることを特徴とする希釈装置。
[2]前記希釈容器の底部に、開閉弁が取り付けられた下方排出管が設けられている[1]に記載の希釈装置。
[3]前記導入手段は、主流路と該主流路に設けられた計量管を流路の一部として共用するサンプリング流路と流路切換手段を有し、前記主流路における前記計量管の上流側は希釈液導入管とされ、下流側は前記希釈容器への共通注入管とされ、前記サンプリング流路における前記計量管の上流側は試料液導入管とされ、下流側は試料液排出管とされ、前記流路切換手段によって、前記主流路と前記サンプリング流路の何れか一方が通液するように構成されている[1]または[2]に記載の希釈装置。
[4]第1の希釈装置と第2の希釈装置を備え、前記第1の希釈装置は、[1]〜[3]の何れか一項に記載の希釈装置であり、前記導出手段によって導出される希釈試料液が、第2の希釈装置によって希釈されるべき試料液とされることを特徴とする多段希釈システム。
[5]希釈容器に、希釈液の一部を導入する第1ステップと、第1ステップの後に、試料液を希釈容器に導入する第2ステップと、第2ステップの後に、希釈液の残部を希釈容器に導入する第3ステップと、第3ステップの後に、希釈容器内に導入された試料液と希釈液を撹拌混合して希釈試料液を調製する第4ステップと、第4ステップの後に、調製された希釈試料液の一部を希釈容器から吸い上げて導出する第5ステップを備えることを特徴とする希釈方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の希釈装置、多段希釈システム、及び希釈方法によれば、高い希釈精度で試料液の希釈ができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係る多段希釈システムの概略構成図である。
【図2】本発明の希釈装置に適用可能な他の導入手段の概略構成図である。
【図3】本発明の希釈装置に適用可能な他の導入手段の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。図1は2段希釈システムで、希釈装置1と希釈装置2と、希釈装置1と希釈装置2の各々に一定量の希釈液Rを供給する希釈液供給ユニット3を備えている。
希釈装置1は、本発明に係る希釈装置で、試料原液Sと希釈液Rとを混合して希釈試料液D1を得るように構成されている。また、希釈装置2は、希釈装置1で得られた希釈試料液D1と希釈液Rとを混合して希釈試料液D2を得るように構成されている。
すなわち、希釈装置1で希釈されるべき試料液は試料原液Sであり、希釈装置2で希釈されるべき試料液は希釈試料液D1である。
【0010】
希釈装置1は、試料原液Sと希釈液Rが導入される希釈容器C1を備えている。希釈容器C1には、第1主流路L1の一端が挿入されている。第1主流路L1には、分岐点a、分岐点bによって区切られた、希釈液導入管L1a、計量管L1b、共通注入管L1cの3つの流路部分を有している。希釈液導入管L1aは分岐点aと希釈液供給ユニット3との間の流路部分である。計量管L1bは分岐点a、分岐点bで挟まれた流路部分である。共通注入管L1cは、分岐点bと希釈容器C1に挿入される第1主流路L1の先端cとの間の流路部分である。希釈液導入管L1aには、分岐点aの極近傍に常閉弁V1aが取り付けられている。また、共通注入管L1cには、分岐点bの極近傍に常閉弁V1bが取り付けられている。
【0011】
また、分岐点aには試料液排出管L2aが接続され、試料液排出管L2aは合流点kにおいて共通排出管L3に合流し、共通排出管L3の下流端は排出口P1となっている。
一方、分岐点bには試料液導入管L2bが接続され、試料液導入管L2bの上流端は、試料原液入口P2となっている。
試料液排出管L2aには、分岐点aの極近傍に常閉弁V2aが取り付けられ、その下流には、ポンプ4が取り付けられている。また、試料液導入管L2bには、分岐点bの極近傍に常閉弁V2bが取り付けられている。
試料液導入管L2bから、計量管L1bを経由して試料液排出管L2a迄の流路が、希釈装置1の第1サンプリング流路L2となっている。
【0012】
希釈容器C1には、導入された試料原液Sと希釈液Rを撹拌するため、撹拌機M1が、その撹拌羽根が得られる希釈試料液D1の液中に浸漬するように取り付けられている。また、得られた希釈試料液D1を導出するための導出管L4eが、得られる希釈試料液D1の液面より低い位置に浸漬するように挿入されている。この導出管L4eは、後述の希釈装置2における第2サンプリング流路L4の一部となっている。そして、第2サンプリング流路L4は、ポンプ4よりも上流側の合流点qにおいて、第1サンプリング流路L2と合流している。
【0013】
希釈容器C1は、底面が、下方に行くに従い断面積が小さくなるように構成されており、その最下端に排出口C1aが設けられ、下方排出管L6aが取り付けられている。下方排出管L6aは、合流点nにおいて共通排出管L3に合流している。また、希釈容器C1の側面には、得られる希釈試料液D1の液面より高い位置にオーバーフロー口C1bが設けられ、オーバーフロー管L6bが取り付けられている。オーバーフロー管L6bは、合流点mにおいて共通排出管L3に合流している。下方排出管L6aには、常閉弁V3aが取り付けられている。また、オーバーフロー管L6bには、常開弁V3bが取り付けられている。なお、図示の都合上、常閉弁V3aは希釈容器C1と離間した位置に記載しているが、常閉弁V3aは、排出口C1aの極近傍に設けられる。
【0014】
本実施形態では、常閉弁V1a、常閉弁V1b、常閉弁V2a、常閉弁V2bによって、希釈装置1の流路切換手段が構成されている。そして、この流路切換手段、第1主流路L1、第1サンプリング流路L2、及びこれらの流路が共用する計量管L1b、第1サンプリング流路L2に設けられたポンプ4によって、希釈装置1の導入手段が構成されている。
また、導出管L4eを含む第2サンプリング流路L4、合流点qより下流側の第1サンプリング流路L2、第1サンプリング流路L2に設けられたポンプ4によって、希釈装置1の導出手段が構成されている。
【0015】
希釈装置2は、希釈試料液D1と希釈液Rが導入される希釈容器C2を備えている。希釈容器C2には、第2主流路L5の一端が挿入されている。第2主流路L5には、分岐点d、分岐点eによって区切られた、希釈液導入管L5d、計量管L5e、共通注入管L5fの3つの流路部分を有している。希釈液導入管L5dは分岐点dと希釈液供給ユニット3との間の流路部分である。計量管L5eは分岐点d、分岐点eで挟まれた流路部分である。共通注入管L5fは、分岐点eと希釈容器C2に挿入される第2主流路L5の先端fとの間の流路部分である。希釈液導入管L5dには、分岐点dの極近傍に常閉弁V1dが取り付けられている。また、共通注入管L5fには、分岐点eの極近傍に常閉弁V1eが取り付けられている。
【0016】
また、分岐点dには試料液排出管L4dが接続され、試料液排出管L4dは合流点qにおいて試料液排出管L2aに合流し、その下流の共通排出管L3へと接続されている。なお、合流点qは、試料液排出管L2aのポンプ4が取り付けられている箇所よりも上流側にある。
一方、分岐点eには、希釈装置1の導出管L4eが接続され、これが、希釈装置2の試料液導入管となっている。
試料液排出管L4dには、分岐点dの極近傍に常閉弁V2dが取り付けられている。また、導出管L4eには、分岐点eの極近傍に常閉弁V2eが取り付けられている。
導出管L4eから、計量管L5eを経由して試料液排出管L4d迄の流路が、希釈装置2の第2サンプリング流路L4となっている。
【0017】
希釈容器C2には、導入された希釈試料液D1と希釈液Rを撹拌するため、撹拌機M2が、その撹拌羽根が得られる希釈試料液D2の液中に浸漬するように取り付けられている。
希釈容器C2は、底面が、下方に行くに従い断面積が小さくなるように構成されており、その最下端に排出口C2aが設けられ、下方排出管L6dが取り付けられている。下方排出管L6dは、合流点pにおいて共通排出管L3に合流している。また、希釈容器C2の側面には、得られる希釈試料液D2の液面より高い位置にオーバーフロー口C2bが設けられ、オーバーフロー管L6eが取り付けられている。オーバーフロー管L6eは、合流点oにおいて共通排出管L3に合流している。下方排出管L6dには、三方弁V3dが取り付けられ、三方弁V3dの第3のポートには、図示しない分析計に希釈試料液D2を送液するための送出口P3に至る送液管L6cが接続されている。
なお、図示の都合上、三方弁V3dは希釈容器C2と離間した位置に記載しているが、三方弁V3dは、排出口C2aの極近傍に設けられる。三方弁V3dの排出口C2a側は常開ポート、合流点p側と送出口P3側は、常閉ポートとなっている。
【0018】
本実施形態では、常閉弁V1d、常閉弁V1e、常閉弁V2d、常閉弁V2eによって、希釈装置2の流路切換手段が構成されている。そして、この流路切換手段、第2主流路L5、第2サンプリング流路L4、及びこれらの流路が共用する計量管L5e、合流点qより下流側の第1サンプリング流路L2、第1サンプリング流路L2に設けられたポンプ4によって、希釈装置2の導入手段が構成されている。
【0019】
希釈液供給ユニット3は、分岐点g、分岐点hによって区切られた、気体導入管L7g、計量部L7h、希釈液注入管L7iの3つの流路部分からなる希釈液主流路L7を有している。
気体導入管L7gはエアー導入口P5と分岐点gとの間の流路部分で、エアー流量調整のためのニードル弁V4が設けられている。計量部L7hは分岐点g、分岐点hで挟まれた流路部分で、計量器5が設けられている。希釈液注入管L7iは、分岐点hと分岐点rとの間の流路部分である。分岐点rには、希釈装置1の希釈液導入管L1a、及び希釈装置2の希釈液導入管L5dの双方が接続されている。
気体導入管L7gには、分岐点gの極近傍に常閉弁V1gが取り付けられている。また、希釈液注入管L7iには、分岐点hの極近傍に常閉弁V1hが取り付けられている。
【0020】
また、分岐点gには希釈液排出管L8gが接続され、希釈液排出管L8gは合流点jにおいて、共通排出管L3へと接続されている。
一方、分岐点hには、希釈液入口管L8iが接続され、希釈液入口管L8iの上流端は、希釈液入口P4となっている。
希釈液排出管L8gには、分岐点gの極近傍に常閉弁V2gが取り付けられている。また、希釈液入口管L8iには、分岐点hの極近傍に常閉弁V2hが取り付けられている。
希釈液入口管L8iから、計量部L7hを経由して希釈液排出管L8g迄の流路が、希釈液供給ユニット3の希釈液計量流路L8となっている。
【0021】
以下、本実施形態の2段希釈システムの動作手順について説明する。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、常閉弁は閉じており、常開弁は開いているものとする。また、三方弁V3dは、常開ポートが開き、常閉ポートが閉じているものとする。また、ニードル弁V4は、エアーを適切な流量で送れるように調整されているものとする。
また、希釈液入口P4に導入される希釈液Rとしては、充分な元圧を有する水を用いるものとし、エアー導入口P5に導入されるエアーとしては、例えば計装空気のように、充分な元圧を有するエアーを用いるものとする。
本実施形態の2段希釈システムでは、まず希釈装置1で試料原液Sと希釈液Rとを混合して希釈試料液D1を得、その後、希釈装置2で、希釈装置1で得られた希釈試料液D1と希釈液Rとを混合して希釈試料液D2を得る。
【0022】
希釈装置1で試料原液Sと希釈液Rとを混合して希釈試料液D1を得る工程(以下「第1希釈工程」という。)は、順次行われる以下のs1からs5の5つのステップを有し、最初の第1希釈工程の前と各第1希釈工程の間には、洗浄工程(s0)が行われる。
s1:希釈容器C1に、希釈液Rの一部を導入するステップ。
s2:試料原液Sを希釈容器C1に導入するステップ。
s3:希釈液Rの残部を希釈容器C1に導入するステップ。
s4:希釈容器C1内に導入された試料原液Sと希釈液Rを撹拌混合して希釈試料液D1を調製するステップ。
s5:調製された希釈試料液D1の一部を希釈容器C1から吸い上げて導出するステップ。
【0023】
s0(洗浄工程)では、まず、常閉弁V1g、常閉弁V1h、常閉弁V1a、常閉弁V1b、及び常閉弁V3aを開くと共に、常開弁V3bを閉じる。これにより、エアーを、希釈液主流路L7及び第1主流路L1を経由して希釈容器C1に導入できる。その結果、希釈容器C1に残留する液体を排出することができる(s01)。
次に、常閉弁V2g及び常閉弁V2hを開き、計量流路L8に希釈液Rを流通させる。これにより、計量器5を含む計量部L7hに、希釈液Rを充填できる(s02)。
次に、常閉弁V2g及び常閉弁V2h、並びに常閉弁V3aの開放を中止し、常閉弁V1g、常閉弁V1h、常閉弁V1a、及び常閉弁V1bを開く。その結果、エアーにより、計量部L7hに充填された希釈液R(水)を、希釈容器C1に導入できる(s03)。
さらに、s02とs03を、少なくとも希釈液Rがオーバーフロー管L6bから流出するまで繰り返す。これにより、希釈容器C1全体が洗浄される。なお、s02とs03を繰り返す間、撹拌機M1を動作させてもよい。
次に、再び常閉弁V1g、常閉弁V1h、常閉弁V1a、常閉弁V1b、及び常閉弁V3aを開くと共に、常開弁V3bを閉じる。これにより、エアーの圧力により、希釈容器C1に残留する希釈液R(洗浄に用いた後の水)を排出し、洗浄が終了する(s04)。
このs0(洗浄工程)は、2回以上繰り返してもよい。
【0024】
s1(第1ステップ)では、まず、常閉弁V2g及び常閉弁V2hを開き、計量流路L8に希釈液Rを流通させる。これにより、計量器5を含む計量部L7hに、希釈液Rを充填できる(s11)。
次に、常閉弁V2g及び常閉弁V2hの開放を中止し、常閉弁V1g、常閉弁V1h、常閉弁V1a、及び常閉弁V1bを開く。その結果、エアーにより、計量部L7hに充填された一定量の希釈液R(水)を、希釈容器C1に導入できる(s12)。
このs1(第1ステップ)は、所望の希釈倍率に応じて、2回以上繰り返してもよい。
【0025】
s2(第2ステップ)では、まず、常閉弁V2a及び常閉弁V2bを開くと共に、ポンプ4を動作させ、第1サンプリング流路L2に試料原液Sを流通させる。これにより、計量管L1bに、試料原液Sを充填できる(s21)。
次に、常閉弁V2a及び常閉弁V2bの開放を中止し、常閉弁V1g、常閉弁V1h、常閉弁V1a、及び常閉弁V1bを開く。その結果、エアーにより、計量管L1bに充填された一定量の試料原液Sを、希釈容器C1に導入できる(s22)。
このs2の間、撹拌機M1を動作させてもよい。
【0026】
s3(第3ステップ)では、s1(第1ステップ)と同様の操作を行う。すなわち、まず、常閉弁V2g及び常閉弁V2hを開き、計量流路L8に希釈液Rを流通させる。これにより、計量器5を含む計量部L7hに、希釈液Rを充填できる(s31)。
次に、常閉弁V2g及び常閉弁V2hの開放を中止し、常閉弁V1g、常閉弁V1h、常閉弁V1a、及び常閉弁V1bを開く。その結果、エアーにより、計量部L7hに充填された第1ステップと同じ一定量の希釈液R(水)を、希釈容器C1に導入できる(s32)。
このs3(第3ステップ)は、所望の希釈倍率に応じて、2回以上繰り返してもよい。また、s3の間、撹拌機M1を動作させてもよい。
【0027】
s4(第4ステップ)では、常閉弁V1g、常閉弁V1h、常閉弁V1a、及び常閉弁V1bの開放を中止し、撹拌機M1を動作させ、希釈容器C1内に導入された試料原液Sと希釈液Rを撹拌混合して希釈試料液D1を調製する。
【0028】
s5(第5ステップ)では、まず、常閉弁V2d及び常閉弁V2eを開くと共に、ポンプ4を動作させ、第1サンプリング流路L2に希釈試料液D1を流通させる。これにより、導出管L4eから希釈試料液D1を吸い上げ、希釈装置2の第2サンプリング流路L4における計量管L5eに、希釈試料液D1を充填できる(s5)。
なお、このs5は、後述の第2希釈工程におけるt21に該当する。
s5の終了後は、次の第1希釈工程に備えて、s0(洗浄工程)を1回以上行う。
【0029】
希釈装置2で希釈試料液D1と希釈液Rとを混合して希釈試料液D2を得る工程(以下「第2希釈工程」という。)は、順次行われる以下のt1からt5の5つのステップを有し、最初の第2希釈工程の前と各第2希釈工程の間には、洗浄工程(t0)が行われる。
t1:希釈容器C2に、希釈液Rの一部を導入するステップ。
t2:希釈試料液D1を希釈容器C2に導入するステップ。
t3:希釈液Rの残部を希釈容器C2に導入するステップ。
t4:希釈容器C2内に導入された希釈試料液D1と希釈液Rを撹拌混合して希釈試料液D2を調製するステップ。
t5:調製された希釈試料液D2を送出口P3から分析計に送出するステップ。
【0030】
t0(洗浄工程)では、まず、常閉弁V1g、常閉弁V1h、常閉弁V1d、及び常閉弁V1eを開くと共に、常開弁V3eを閉じる。また、三方弁V3dの合流点p側を開く。これにより、エアーを、希釈液主流路L7及び第2主流路L5を経由して希釈容器C2に導入できる。その結果、希釈容器C2に残留する液体を排出することができる(t01)。
次に、常閉弁V2g及び常閉弁V2hを開き、計量流路L8に希釈液Rを流通させる。これにより、計量器5を含む計量部L7hに、希釈液Rを充填できる(t02)。
次に、常閉弁V2g及び常閉弁V2h、並びに三方弁V3dの合流点p側の開放を中止し、常閉弁V1g、常閉弁V1h、常閉弁V1d、及び常閉弁V1eを開く。その結果、エアーにより、計量部L7hに充填された希釈液R(水)を、希釈容器C2に導入できる(t03)。
さらに、t02とt03を、少なくとも希釈液Rがオーバーフロー管L6eから流出するまで繰り返す。これにより、希釈容器C2全体が洗浄される。なお、t02とt03を繰り返す間、撹拌機M2を動作させてもよい。
次に、再び常閉弁V1g、常閉弁V1h、常閉弁V1d、及び常閉弁V1eを開くと共に、常開弁V3eを閉じる。また、三方弁V3dの合流点p側を開く。これにより、エアーの圧力により、希釈容器C2に残留する希釈液R(洗浄に用いた後の水)を排出し、洗浄が終了する(t04)。
このt0(洗浄工程)は、2回以上繰り返してもよい。
【0031】
t1(第1ステップ)では、まず、常閉弁V2g及び常閉弁V2hを開き、計量流路L8に希釈液Rを流通させる。これにより、計量器5を含む計量部L7hに、希釈液Rを充填できる(t11)。
次に、常閉弁V2g及び常閉弁V2hの開放を中止し、常閉弁V1g、常閉弁V1h、常閉弁V1d、及び常閉弁V1eを開く。その結果、エアーにより、計量部L7hに充填された一定量の希釈液R(水)を、希釈容器C2に導入できる(t12)。
このt1(第1ステップ)は、所望の希釈倍率に応じて、2回以上繰り返してもよい。
【0032】
t2(第2ステップ)では、まず、常閉弁V2d及び常閉弁V2eを開くと共に、ポンプ4を動作させ、第2サンプリング流路L4に希釈試料液D1を流通させる。これにより、導出管L4eから希釈試料液D1を吸い上げ、第2サンプリング流路L4における計量管L5eに、希釈試料液D1を充填できる(t21)。
このt21は、第1希釈工程のs5(第5ステップ)に該当する。すなわち、第2希釈工程のタイミングは、第1希釈工程のs5(第5ステップ)開始時にt2(第2ステップ)を開始できるように調整する。
次に、常閉弁V2d及び常閉弁V2eの開放を中止し、常閉弁V1g、常閉弁V1h、常閉弁V1d、及び常閉弁V1eを開く。その結果、エアーにより、計量管L1bに充填された一定量の希釈試料液D1を、希釈容器C2に導入できる(t22)。
このt2の間、撹拌機M2を動作させてもよい。
【0033】
t3(第3ステップ)では、t1(第1ステップ)と同様の操作を行う。すなわち、まず、常閉弁V2g及び常閉弁V2hを開き、計量流路L8に希釈液Rを流通させる。これにより、計量器5を含む計量部L7hに、希釈液Rを充填できる(t31)。
次に、常閉弁V2g及び常閉弁V2hの開放を中止し、常閉弁V1g、常閉弁V1h、常閉弁V1d、及び常閉弁V1eを開く。その結果、エアーにより、計量部L7hに充填された第1ステップと同じ一定量の希釈液R(水)を、希釈容器C2に導入できる(t32)。
このt3(第3ステップ)は、所望の希釈倍率に応じて、2回以上繰り返してもよい。また、t3の間、撹拌機M2を動作させてもよい。
【0034】
t4(第4ステップ)では、常閉弁V1g、常閉弁V1h、常閉弁V1d、及び常閉弁V1eの開放を中止し、撹拌機M2を動作させ、希釈容器C2内に導入された希釈試料液D1と希釈液Rを撹拌混合して希釈試料液D2を調製する。
【0035】
t5(第5ステップ)では、まず、常開弁V3eを閉じ、三方弁V3dの送出口P3側、常閉弁V1g、常閉弁V1h、常閉弁V1d、及び常閉弁V1eを開く。その結果、エアーにより、下方排出管L6d、送液管L6cを経由して、図示しない分析計側に、希釈容器C2内の希釈試料液D2を圧送することができる。
t5の終了後は、次の第1希釈工程に備えてt0(洗浄工程)を1回以上行う。
【0036】
本実施形態の2段希釈システムによれば、希釈装置1と希釈装置2の何れもが、まず、希釈容器内に希釈液を導入してから、試料液を導入し、その後残りの希釈液を導入するようになっている。そのため、高い希釈精度で試料液の希釈ができる。
すなわち、本発明者らは、計量管に残留した試料液を希釈液で洗い流す従来の希釈装置で充分な希釈精度が得られない要因を検討したところ、試料液が最初に希釈容器内に導入されるため、その後導入される希釈液と共に撹拌しても、極少量である試料液は、希釈容器底部に滞留して充分に拡散せず、その状態で、分析計や次の希釈装置に送るために希釈試料液の一部のみを吸い上げて採取すると、採取した希釈試料液は、本来の濃度よりも薄くなっている場合のあることが判明した。
そして、特に、希釈容器の底部に、開閉弁が取り付けられた下方排出管が接続されている場合、当該弁までの僅かな空間に試料液が入り込み誤差を大きくする要因となっていることが判明した。
そこで、試料液の前に、まず希釈液の一部を希釈容器に導入することにより、試料液が希釈容器の底部や希釈容器の下部排出管の開閉弁までの隙間に滞留することを解消した。また、希釈液の全部ではなく、一部のみを試料液より先に希釈容器に導入することとしたため、残りの希釈液を用いて、計量管に残留した試料液を希釈液で洗い流す方式を、従来通り採用することも可能となった。
【0037】
なお、本実施形態では、2段希釈システムとしたが、本発明の多段希釈システムは3段以上の希釈システムでもよい。また、多段希釈システムとせず、本発明の希釈装置単独で用いてもよい。
また、2段目以降の希釈装置にも、本発明の希釈装置を採用できる。例えば、本実施形態では、希釈装置2の底部から希釈試料液D2の全量を排出して、分析装置に送る態様としたが、希釈試料液D2の一部を分析装置に送りたい場合は、希釈装置1と同様に、希釈試料液D2に導出管を挿入して吸い上げることによって、送出してもよい。ただし、この場合は、希釈試料液D2を吸い上げて分析計送るためのポンプが、別途必要である。
また、本実施形態では、希釈液供給ユニット3により、一定量の希釈液を予め計量する方式としたが、例えば、希釈容器に取り付けたレベルセンサーにより、希釈容器に一定量の希釈液が導入されたことを検知して、希釈液の導入を停止する方式としてもよい。
【0038】
また、本実施形態では、希釈容器1、2に試料液と希釈液を導入する導入手段として、主流路と該主流路に設けられた計量管を流路の一部として共用するサンプリング流路と流路切換手段を有し、前記主流路における前記計量管の上流側は希釈液導入管とされ、下流側は前記希釈容器への共通注入管とされ、前記サンプリング流路における前記計量管の上流側は試料液導入管とされ、下流側は試料液排出管とされ、前記流路切換手段によって、前記主流路と前記サンプリング流路の何れか一方が通液するように構成され、希釈液により、計量管に残留した試料液が洗い流される計量管方式を採用したが、例えば、マイクロシリンジなどを用いて、試料液を希釈液と別途に注入してもよい。
【0039】
また、計量管方式の導入手段における流路切換手段も、本実施形態のものに限られず、例えば、図2、3に示す導入手段を採用できる。
図2は、2つの三方弁V7a、V7bを流路切り換え手段とした導入手段である。この導入手段では、希釈液入口P14から三方弁V7a迄の流路21、三方弁V7aと三方弁V7bとの間に設けられた計量管22、三方弁V7bから導入先端P10までの流路23によって、主流路が構成されている。希釈液入口P14からは、予め計量された希釈液が、エアーによる圧送によって導入されるようになっている。また、エアーのみを希釈液入口P14から導入することもできるようになっている。導入先端P10は、図示を省略する希釈容器内に挿入されている。
また、試料原液入口P12から三方弁V7b迄の流路24、計量管22、三方弁V7aから排出口P11までの流路25によって、サンプリング流路が構成されている。流路25には、ポンプ14が設けられている。
【0040】
図2の導入手段において、試料原液Sの導入に前後して希釈容器に希釈液Rを導入するためには、三方弁V7aの希釈液入口P14側と計量管22側のポートを開き、三方弁V7bの計量管22側と導入先端P10側のポートを開き、エアーにより、予め計量された一定量の希釈液R(水)を、希釈容器に導入する。
また、一定量の試料原液Sを希釈容器に導入するためには、三方弁V7aの排出口P11側と計量管22側のポートを開き、三方弁V7bの計量管22側と試料原液入口P12側のポートを開き、ポンプ14を動作させて計量管22内に試料原液Sを充填する。その後、三方弁V7aの希釈液入口P14側と計量管22側のポートを開き、三方弁V7bの計量管22側と導入先端P10側のポートを開き、エアーにより、計量管22内に充填した試料原液Sを、希釈容器に導入する。
【0041】
また、図3は、六方バルブ30を流路切り換え手段とした導入手段である。六方バルブ30は、u、v、w、x、y、zの6個のポートを有している。図3(a)は、ポートuとポートv、ポートwとポートx、ポートyとポートzが各々連絡した状態を示す図である。この図における希釈液入口P24から導入先端P20までの流路が主流路となっている。また、図3(b)は、ポートvとポートw、ポートxとポートy、ポートzとポートuが各々連絡した状態を示す図である。この図における試料原液入口P22から排出口P21までの流路がサンプリング流路となっている。そして、ポートvとポートyとをつなぐ図示太線部分が、主流路とサンプリング流路の共用部分、すなわち、計量管31となっている。
希釈液入口P24からは、予め計量された希釈液が、エアーによる圧送によって導入されるようになっている。また、エアーのみを希釈液入口P24から導入することもできるようになっている。導入先端P20は、図示を省略する希釈容器内に挿入されている。
【0042】
図3の導入手段において、試料原液Sの導入に前後して希釈容器に希釈液Rを導入するためには、図3(a)の状態で、エアーにより、予め計量された一定量の希釈液R(水)を、希釈容器に導入する。
また、一定量の試料原液Sを希釈容器に導入するためには、図3(b)の状態で、計量管31内に試料原液Sを充填する。その後、図3(a)の状態で、エアーにより、計量管22内に充填した試料原液Sを、希釈容器に導入する。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の希釈装置及び希釈装置とすれば、例えば、2〜100倍の希釈を精度良く行うことができる。また、本発明の多段希釈システムによれば、2段希釈システムの場合で、例えば、200〜10,000倍の希釈を精度良く行うことができる。
したがって、高倍率の希釈が必要な自動分析装置の希釈試料液調整に、好適に使用できる。
【符号の説明】
【0044】
1,2 希釈装置
3 希釈液供給ユニット
4 ポンプ
5 計量器
C1,C2 希釈容器
M1,M2 撹拌機
S 試料原液
R 希釈液
D1.D2 希釈試料
P1 排出口
P2 試料原液入口
P3 送出口
P4 希釈液入口
P5 エアー導入口
L1 第1主流路
L2 第1サンプリング流路
L3 共通排出管
L4 第2サンプリング流路
L4e 導出管
L5 第2主流路
L6a,L6d 下方排出管
L7 希釈液主流路
L8 希釈液計量流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
希釈されるべき試料液と希釈液とが導入される希釈容器と、該希釈容器に試料液と希釈液を導入する導入手段と、該希釈容器内に導入された試料液と希釈液を撹拌混合して希釈試料液を調製する撹拌機と、前記希釈容器から調製した希釈試料液の一部を、該希釈試料液中に挿入される導出管を用いて導出する導出手段を備え、
前記導入手段は、前記希釈容器に、希釈液の一部を導入した後に試料液を導入し、その後、希釈液の残部を導入するように構成されていることを特徴とする希釈装置。
【請求項2】
前記希釈容器の底部に、開閉弁が取り付けられた下方排出管が設けられている請求項1に記載の希釈装置。
【請求項3】
前記導入手段は、主流路と該主流路に設けられた計量管を流路の一部として共用するサンプリング流路と流路切換手段を有し、
前記主流路における前記計量管の上流側は希釈液導入管とされ、下流側は前記希釈容器への共通注入管とされ、
前記サンプリング流路における前記計量管の上流側は試料液導入管とされ、下流側は試料液排出管とされ、
前記流路切換手段によって、前記主流路と前記サンプリング流路の何れか一方が通液するように構成されている請求項1または2に記載の希釈装置。
【請求項4】
第1の希釈装置と第2の希釈装置を備え、前記第1の希釈装置は、請求項1〜3の何れか一項に記載の希釈装置であり、前記導出手段によって導出される希釈試料液が、第2の希釈装置によって希釈されるべき試料液とされることを特徴とする多段希釈システム。
【請求項5】
希釈容器に、希釈液の一部を導入する第1ステップと、
第1ステップの後に、試料液を希釈容器に導入する第2ステップと、
第2ステップの後に、希釈液の残部を希釈容器に導入する第3ステップと、
第3ステップの後に、希釈容器内に導入された試料液と希釈液を撹拌混合して希釈試料液を調製する第4ステップと、
第4ステップの後に、調製された希釈試料液の一部を希釈容器から吸い上げて導出する第5ステップを備えることを特徴とする希釈方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−220246(P2012−220246A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83617(P2011−83617)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(000219451)東亜ディーケーケー株式会社 (204)
【Fターム(参考)】