説明

帯電部材、画像形成ユニットおよび画像形成装置

【課題】帯電部材への現像剤や外添剤などの異物の付着を防止すること。
【解決手段】帯電部材は、所定の方向に回転可能であり、その表面に、回転方向に沿う溝と、回転方向に垂直な方向に沿う溝とが形成されている。帯電部材の表面粗さの回転方向の最大高さRy1と、回転方向に垂直な方向の最大高さRy2とは、Ry1<Ry2の関係にある。また、帯電部材の表面粗さの回転方向の凹凸平均間隔Sm1と、回転方向に垂直な方向の凹凸平均間隔Sm2とは、Sm1>Sm2の関係にある。このように構成することで、帯電部材への異物の付着を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子写真プロセスで用いられる帯電部材、並びに、その帯電部材を用いた画像形成ユニットおよび画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、複写機、ファクシミリ装置および複合機等の電子写真プロセスを用いた画像形成装置では、潜像担持体としての感光体ドラムの表面に、帯電部材としての帯電ローラを接触させることにより、感光体ドラムの表面を一様に帯電させている。また、感光体ドラムの回転方向において、上述した帯電ローラの上流側には、感光体ドラムの表面に付着したトナー(転写残トナー)を掻き取るためのクリーニングブレードが配置されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−122915号公報(図2、段落0018)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、画像形成装置が長期間使用されると、クリーニングブレードの摩耗が進行し、トナーやその外添剤などの異物が、感光体ドラムとクリーニングブレードとの隙間をすり抜けやすくなる。感光体ドラムとクリーニングブレードとの隙間をすり抜けた異物は、帯電ローラの表面に付着する場合があり、帯電ローラの表面に付着した異物の量が多い場合には、感光体ドラムの表面を均一に帯電できなくなり、画像の濃度むらの原因となる。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、帯電部材への異物の付着を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る帯電部材は、所定の方向に回転可能な帯電部材であって、帯電部材の表面に、回転方向に沿う溝と、当該回転方向に垂直な方向に沿う溝とが形成されている。帯電部材の表面粗さの回転方向の最大高さRy1と、回転方向に垂直な方向の最大高さRy2とは、Ry1<Ry2の関係にあり、帯電部材の表面粗さの回転方向の凹凸平均間隔Sm1と、回転方向に垂直な方向の凹凸平均間隔Sm2とは、Sm1>Sm2の関係にある。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、帯電部材への異物の付着を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施の形態における画像形成装置の基本構成を示す側面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における帯電ローラの構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における帯電ローラの抵抗値の測定方向を説明するための正面図(A)および側面図(B)である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における帯電ローラの軸方向および周方向の表面形状を模式的に示す図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態における帯電ローラの表面を拡大して示す模式図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態におけるlog(R1)とRy2との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明の実施の形態における画像形成装置10の全体構成を示す図である。画像形成装置10は、筺体11内に、トナー(現像剤)を用いて記録媒体Pに画像を形成する着脱可能な画像形成ユニット20(プロセスカートリッジとも称する)を備えており、この画像形成ユニット20を通過するように、記録媒体Pを搬送する略S字状の媒体搬送路が設けられている。画像形成装置10は、複数の画像形成ユニット20を配列してカラー画像を形成するものであってもよいが、ここでは、説明の便宜上、単一の画像形成ユニット20を用いて単色(例えば黒色)の画像を形成するものとする。
【0010】
画像形成装置10の下部には、印刷用紙などの記録媒体Pを積載した状態で収容するカセット21が取り付けられている。カセット21の上側(図1における右上側)には、カセット21内に収容された記録媒体Pを一枚ずつ給紙する給紙ローラ22、記録媒体Pを画像形成ユニット20に向けて案内する搬送ガイド23、および、記録媒体Pを画像形成ユニット20まで搬送する搬送ローラ対24(送り機構)が配設されている。
【0011】
画像形成ユニット20の感光体ドラム1(後述)に媒体搬送路を挟んで対向するように、転写部材17(転写ローラ)が配設されている。この転写部材17は、画像形成ユニット20において形成されたトナー像(現像剤像)を記録媒体Pに転写するものであり、図示しない高圧電源により転写電圧が印加されている。
【0012】
媒体搬送路に沿って画像形成ユニット20の下流側(図中左側)には、定着ユニット25が配設されている。定着ユニット25は、熱源を備えたヒートローラ25aと、このヒートローラ25aとの間で記録媒体Pを挟み込むバックアップローラ25bとを備え、トナー像が転写された記録媒体Pを加熱および加圧して、トナー像を記録媒体Pに定着させる。
【0013】
媒体搬送路に沿って定着ユニット25の下流側には、記録媒体Pを排出口に向けて案内する搬送ガイド26と、記録媒体Pを画像形成装置10の外に排出する排出ローラ対27とが配設されている。なお、画像形成装置10の上部には、排出された記録媒体Pを積載するスタック部28が設けられている。
【0014】
画像形成ユニット20は、像担持体としての感光体ドラム1と、感光体ドラム1の表面を一様に帯電させる帯電ローラ2(帯電部材)と、感光体ドラム1の表面に形成された静電潜像をトナーにより現像する現像装置12と、感光体ドラム1に残留したトナーを除去するクリーニング部材19とを備えている。帯電ローラ2については、後述する。
【0015】
感光体ドラム1は、アルミニウム、ステンレス鋼などからなる導電性支持体の表面に、電荷発生物質とバインダ樹脂とを主成分とする電荷発生層と、電荷輸送物質とバインダ樹脂とを主成分とする電荷輸送層とを積層して構成される。
【0016】
電荷発生物質には、各種有機顔料や染料が使用できるが、特に、無金属フタロシアニン、銅塩化インジウム、塩化ガリウム、錫、オキシチタニウム、亜鉛、バナジウムなどの金属若しくはその酸化物・塩化物の配位したフタロシアニン類、モノアゾ、ビスアゾ、トリスアゾ、ポリアゾ類などのアゾ顔料などが使用できる。これらの物質の微粒子を、例えばポリエステル樹脂、ポリビニルアセテート、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルプロピオナール、ポリビニルブチラール、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、セルロースエステル、セルロースエーテルなどの各種バインダ樹脂で結着して用いることができる。
【0017】
電荷輸送物質には、例えば、カルバゾール、インドール、イミダゾール、オキサゾール、ピラゾール、オキサジアゾール、ピラゾリン、チアジアゾールなどの複素環化合物、アニリン誘電体、ヒドラゾン化合物、芳香族アミン誘電体、スチルベン誘電体、あるいはこれらの化合物からなる基を主鎖若しくは側鎖に有する重合体などの電子供与性物質を使用することができる。バインダ樹脂としては、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルなどのビニル重合体、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリスルホン、ポリイミド、フェノキシ、エポキシ、シリコーン樹脂、およびこれらの共重合体、また部分的架橋降下物などを単独あるいは組み合わせて使用することができ、特にポリカーボネートが適している。また、必要に応じて、酸化防止剤、増感剤等の各種添加材を含んでいてもよい。
【0018】
現像装置12は、現像ローラ13に供給するためのトナーTが保持されたトナー保持空間を有し、着脱可能なトナーカートリッジ16からトナーTが補給される。現像装置12は、表面にトナーTを担持する現像ローラ13(現像剤担持体)と、この現像ローラ13にトナーTを供給する供給ローラ14(現像剤供給部材)と、現像ローラ13の表面のトナー層の厚さを規制するブレード15(規制部材)とを備えている。
【0019】
現像ローラ13は、例えば金属製のシャフトの表面に導電性の弾性層を形成し、必要に応じて弾性層の表面にコーティングを施したものであり、感光体ドラム1の表面に接触して回転する。供給部材14は、例えば金属製のシャフトの表面に発泡性の弾性層を形成したものであり、現像ローラ13の表面に接触して回転する。ブレード15は、例えば金属製の板状部材を屈曲させたものであり、その屈曲部において、現像ローラ13の表面に一定の押圧力で押し当てられている。
【0020】
クリーニング部材19は、例えばゴム製のブレードであり、その先端が感光体ドラム1の表面に接触している。
【0021】
また、画像形成ユニット20の感光体ドラム1の上方には、感光体ドラム1の表面を露光して静電潜像を形成する露光装置18が配置されている。露光装置18は、例えばLED(Light Emitting Diode)ヘッドにより構成され、発光素子とレンズアレイとを有している。なお、露光装置18は、画像形成装置1の筺体11の上側に開閉可能に取り付けられた上部カバー(図1では筺体11と一体に示されている)に取り付けられている。
【0022】
次に、画像形成装置10の基本動作について説明する。
まず、画像形成装置10に印刷データが入力されると、図示しない印刷制御部により駆動源としてのモータが駆動され、給紙ローラ22および搬送ローラ対24が回転を開始する。給紙ローラ22および搬送ローラ対24の回転により、記録媒体Pは1枚ずつ搬送ガイド23に沿って案内され、画像形成ユニット20に達する。
【0023】
画像形成ユニット20の感光体ドラム1には、図示しない駆動源からの動力が伝達され、これにより、感光体ドラム1は図1に矢印で示す方向に一定速度で回転する。また、感光体ドラム1の表面に接触して設けられた帯電ローラ2は、感光体ドラム1の回転に従動して図1に矢印で示す方向に一定速度で回転する。
【0024】
帯電ローラ2には、図示しない電源装置により一定の直流電圧が印加されており、帯電ローラ2は、従動回転しながら感光体ドラム1の表面(外周面)を一様に帯電させる。さらに、感光体ドラム1に対向配置された露光装置18は、受信した印刷データの画像信号に応じて感光体ドラム1の表面に光を照射し、光照射部分の電位を光減衰させて静電潜像を形成する。
【0025】
現像装置12内の現像ローラ13の表面には、供給ローラ14から供給されたトナーTが付着し、トナー薄層が形成されている。このトナー薄層は、ブレード15によって一定の厚さに規制されている。現像ローラ13は、表面のトナーTを感光体ドラム1の表面に形成された静電潜像に付着させ、静電潜像を反転現像してトナー像を形成する。
【0026】
転写部材17には、図示しない電源装置により高圧電圧が印加されている。この転写部材17は、記録媒体Pが感光体ドラム1と転写部材17との間に到達するタイミングに合わせて、感光体ドラム1の表面に形成されているトナー像を記録媒体Pに転写する。また、記録媒体Pに転写されずに感光体ドラム1の表面上に残存しているトナーは、クリーニング部材19により除去される。
【0027】
トナー像が転写された記録媒体Pは、定着装置25に搬送される。定着装置25を構成するヒートローラ25a及び加圧ローラ25bは、記録媒体Pを挟持して熱及び圧力を付与する。記録媒体P上に転写されたトナー像は定着装置25から付与された熱及び圧力により溶融し、記録媒体Pに定着する。
【0028】
トナー像が定着した記録媒体Pは、搬送ガイド26に沿って案内されて排出ローラ対27に達し、この排出ローラ対27により、画像形成装置10の外部(ここでは上部カバー上)に設けられたスタッカ部28に排出される。
【0029】
次に、帯電ローラ2の構成について説明する。図2は、帯電ローラ2の外観形状を示す斜視図である。帯電ローラ2は、導電性を有する芯金2aと、芯金2aの軸方向両端を除く外周面に形成された導電性を有する弾性層2b(抵抗層)とを有している。
【0030】
帯電ローラ2の芯金2aとしては、例えば、無電解ニッケルメッキを施した快削鋼(SUM)やステンレス鋼などの金属製の軸体を用いる。帯電ローラ2の弾性層2bは、感光体ドラム1に押し当てられて(すなわち感光体ドラム1との間でニップを形成して)適正な放電を得るため、例えばゴムや熱可塑性エラストマー等の樹脂で形成されている。弾性層2bは、単層に限らず、必要に応じて、2層以上の多層構造とすることで、抵抗の調整や感光体ドラム1の汚染防止等を行ってもよい。
【0031】
帯電ローラ2の弾性層2bの構成材料としては、エピクロルヒドリンゴム(CO,ECO,GECO)、エチレンプロピレンゴム(EPM,EPDM)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ウレタンゴム、シリコーンゴムなどの一種または二種以上を混合したものを主成分とするゴム組成物を用いることができる。特に、エピクロルヒドリンゴム(ECO)を主成分としたものが望ましい。
【0032】
一般に、帯電ローラ2の弾性層2bの抵抗が大き過ぎると、感光体ドラム1の表面に帯電むらや帯電不良に起因する画像不良が発生し、逆に、抵抗が小さ過ぎると、感光体ドラム1の表面の傷などに起因してリークが発生して画像不良が発生する。そこで、弾性層2bには、イオン導電性の材料、イオン導電剤、カーボンブラック、金属性酸化物などを用いて、適正な抵抗範囲を得る。なお、弾性層2bに抵抗むら(場所による抵抗のばらつき)があると、感光体ドラム1の帯電むらにつながるため、電子導電性の抵抗層よりも、イオン導電性の抵抗層が望ましい。また、帯電ローラ2の弾性層2bの抵抗値は、10〜10Ωの範囲内であることが望ましい。
【0033】
ここで、帯電ローラ2の弾性層2bの抵抗値の測定方法について、図3を参照して説明する。図3に示すように、帯電ローラ2の弾性層2bの抵抗測定には、抵抗測定器30(アジレント・テクノロジー株式会社製の「4339Bハイレジスタンスメータ」)を用いる。抵抗測定器30の一方の端子31を、帯電ローラ2の芯金2aに取り付け、他方の端子として、幅が2.0mm、直径が6.0mmのSUS製のベアリング32を、弾性層2bの表面に10gfの力Fで押し当てて、帯電ローラ2を回転させながら抵抗を測定する。帯電ローラ2は、一般に温度・湿度あるいは電圧により抵抗値が変化するため、ここでは、温度20度、湿度50%RHの環境下で、芯金2a側に−500Vの直流電圧を印加する。帯電ローラ2を1周(360°)させ、100箇所で測定した抵抗を平均する。このようにして得られた抵抗値を、R1とする。
【0034】
感光体ドラム1を均一に帯電するためには、帯電ローラ2の弾性層2bと感光体ドラム1との間で適正なニップを形成する必要がある。弾性層2bの硬さは、マイクロゴム硬度計「MD−1capa」タイプA(高分子計器株式会社製)を用い、ピークホールド機能を利用して測定する。上記測定による弾性層2bの硬さは、35度から75度の範囲が望ましく、45度から65度の範囲が特に望ましい。また、弾性層2bの引っ張り特性としては、切断時伸び(JIS−K6251)は、50%以上が望ましく、100%以上が特に望ましい。
【0035】
弾性層2bの表面(外周面)には、切削または研磨により所定の研磨目が形成され、これにより所定の表面粗さが与えられる。図4(A)は、帯電ローラ2の弾性層2bの軸方向(図2の矢印A方向)に沿った表面形状を模式的に示す図である。図4(B)は、帯電ローラ2の弾性層2bの周方向の表面形状を模式的に示す図である。図5(A)は、帯電ローラ2の弾性層2bの表面形状を拡大して示す模式図であり、図5(B)は、帯電ローラ2の弾性層2bの表面の凸部を拡大して示す模式図である。なお、図4および図5では、弾性層2bの表面の凹凸を拡大して示している。
【0036】
図4(A)および(B)に示すように、帯電ローラ2の弾性層2bの表面には、帯電ローラ2の周方向(回転方向)に沿う溝201と、軸方向に沿う溝202とが形成されている。
【0037】
帯電ローラ2の表面は、例えば、図5(A)に示すように、周方向に長い微小なピラミッドを配列した形状となる。ここでは、周方向に沿う溝201が、軸方向に沿う溝202よりも深く形成されている。また、周方向に沿う溝201の配列間隔は、軸方向に沿う溝202の配列間隔よりも狭く形成されている。
【0038】
ここでは、帯電ローラ2の表面粗さを表すため、次の指標を用いる。すなわち、周方向(B方向)の最大高さRyをRy1とし、周方向の凹凸の平均間隔SmをSm1とする。また、軸方向(A方向)の最大高さRyをRy2とし、軸方向の凹凸の平均間隔SmをSm2とする。
【0039】
上述したように、周方向に沿う溝201が軸方向に沿う溝202よりも深く、また、狭い配列間隔で形成されているため、図5(B)に示すように、Ry1<Ry2、および、Sm1>Sm2の関係が成立する。
【0040】
ここで、帯電ローラ2の弾性層2bの表面の加工方法について説明する。
まず、帯電ローラ2の弾性層2bを、軸方向に溝202が形成されるように研磨(ここでは乾式研磨)する。すなわち、例えば、帯電ローラ2を回転させた状態で、その弾性層2bの表面に回転砥石を接触させて研磨することにより、弾性層2bの表面に軸方向に溝201を形成する。この研磨によって帯電ローラ2の外径が決定されるため、外径研磨とも呼ぶ。
【0041】
次に、弾性層2bの表面を、周方向(回転方向)に沿う溝201が生じるように研磨(ここでは湿式研磨)する。より詳細には、帯電ローラ2を回転させた状態で、研磨液を供給しながら、弾性層2bの表面に耐水研磨ペーパ(テープ)を接触させて研磨する。このとき、軸方向に延在する山(溝202の間の山)を切るように、周方向に沿う溝201を形成することにより、外径研磨により形成された軸方向の溝202による凹凸ができるだけ失われないようにする。
【0042】
ここでは、表面粗さの測定には、表面粗さ測定器「SE−3500」および検出器「PU−DJ2S」を用いた(何れも株式会社小坂研究所製)。測定条件は、JISB0601(1994)に準拠し、カットオフ値(λc)を2.5mm、基準長さ(L)を2.5mm、測定長さを12.5mm、送り速度を0.5mmとした。
【0043】
帯電ローラ2の弾性層2bの表面粗さは、乾式研磨に使用する回転砥石の種類および研磨速度、湿式研磨に使用するテープ(耐水研磨ペーパ)の種類および研磨速度、並びに、テープに加える圧力などの研磨条件を変えることで調整することができる。
【0044】
すなわち、周方向の最大高さRy1を大きくするためには、乾式研磨の回転砥石の砥粒を粗くするか、あるいは、回転砥石の回転速度を速くする。軸方向の最大高さRy2を大きくするためには、湿式研磨の耐水ペーパの粒度を粗くするか、あるいは、研磨圧力を大きくする。また、周方向の凹凸の平均間隔Sm1を大きくするためには、乾式研磨の回転砥石の回転速度を速くするか、あるいは、帯電ローラ2の回転速度を速くする。周方向の凹凸の平均間隔Sm2を大きくするためには、湿式研磨の耐水ペーパの粒度を粗くする。
【0045】
帯電ローラ2の表面粗さを表す各指標(Ry1,Ry2,Sm1,Sm2)は、上記の各工程により決定されるが、弾性層2bの硬度や引っ張り強度にも影響されるため、これらの条件を組み合わせて所望の表面粗さを得る。
【0046】
帯電ローラ2の弾性層2bに一定の表面粗さを付与することで、帯電ローラ2の弾性層2bの表面と感光体ドラム1の表面との間に微小のギャップを形成し、パッシェンの法則に基づく放電に寄与する領域を確保することができる。帯電ローラ2の弾性層2bの表面粗さ(最大高さRy1,Ry2)は、帯電ローラ2に印加する電圧や感光体ドラム1の表面状態にもよるが、一般に、4〜40μmの範囲が望ましい。
【0047】
帯電ローラ2の弾性層2bの表面に、表面処理やコーティングを施すことにより、感光体ドラム1の汚染防止や抵抗調整を行うことができる。例えば、イソシアネート化合物やポリオールなどを表面に含浸し、被覆することもできる。ここでいうイソシアネート化合物やポリオールには、例えば、トルエンジイソシアネート(TDI)、メチレンジジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ポリエステル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール、シリコーン系ジオール、アクリルフッ素ポリマー、アクリルシリコーン系ポリマー、およびこれらの多重体、変性体などが挙げられる。イソシアネート化合物やポリオールは、分子量Mwが600〜12000が望ましく、700〜3000のものが特に望ましい。また、イソシアネート化合物やポリオールに限らず、ポリエステル、ウレタン、アクリルウレタン、エポキシ、ナイロン、フッ素含有物およびシリコーンなどにより、帯電ローラ2の表面を被覆することもできる。但し、表面処理やコーティングなどを行った後も、帯電ローラ2の弾性層2bの表面の研磨目などの凹凸が失われないよう注意する必要がある。
【0048】
次に、本実施の形態における実施例と、これに対する比較例の実験結果を説明する。
【0049】
ここでは、帯電ローラ2の芯金2aは、外径が6mm、軸方向の長さが252mmのSUM材料に、無電解メッキを施した金属シャフトとした。また、帯電ローラ2の弾性層2bの厚さは3mmとし、外径は12mmとした。弾性層2bの軸方向長さは、224mmとした。弾性層2bとしては、硬さが54度、切断時伸びが150%のエピクロルヒドリンゴム(ECO)を使用した。また、抵抗調整のため、弾性層2bにはイオン導電剤を添加した。
【0050】
この弾性層2bの表面を乾式研磨して外径を12mmとし、弾性層2bの表面に軸方向の溝202を形成した。次いで、テープを用いた湿式研磨を行い、弾性層2bの表面に周方向の溝201を形成した。さらに、酢酸エチル100重量部に対してヘキサメチレンジイソシアネート化合物(HDI)を20重量部混合した表面処理液に、帯電ローラ2を浸漬し、その後、オーブンで加熱することにより、帯電ローラ2の弾性層2bに表面処理を施した。
【0051】
このようにして作成した実施例1の帯電ローラ2の表面粗さ(Ry1,Sm2,Ry2,Sm2)は、以下のとおりであった。
(1)周方向の最大高さRy1 : 15.74μm
(2)周方向の凹凸平均間隔Sm1: 175μm
(3)軸方向の最大高さRy2 : 17.20μm
(4)軸方向の凹凸平均間隔Sm2: 89μm
また、実施例1の帯電ローラ2の抵抗値R1は、1.48×10Ωであった。
【0052】
実施例2,3の帯電ローラは、実施例1の帯電ローラに対して、表面粗さが小さくなるように研磨条件を変更して作成した。
【0053】
実施例4の帯電ローラは、実施例1の帯電ローラに対して、表面粗さが大きくなるように研磨条件を変更して作成した。
【0054】
比較例2,5の帯電ローラは、実施例1の帯電ローラに対して、表面粗さがさらに(実施例4よりも)大きくなるように研磨条件を変更して作成した。
【0055】
なお、これら実施例2〜4および比較例2,5の帯電ローラの弾性層2bの材質は、実施例1と同様であるが、表面粗さが変化することにより、抵抗値R1(図3の方法で測定された値)も変化している。
【0056】
実施例5の帯電ローラは、実施例1の帯電ローラに対して、弾性層2bの抵抗が小さくなるようにイオン導電剤の添加量を変更して作成した。なお、実施例5では、研磨条件は実施例1と同様であるが、弾性層2bの材質が変化することにより、表面粗さも変化している。
【0057】
実施例6の帯電ローラは、実施例5の帯電ローラに対して、表面粗さが小さくなるように研磨条件を変更して作成した。
【0058】
実施例7,8の帯電ローラは、実施例5の帯電ローラに対して、表面粗さが大きくなるように研磨条件を変更して作成した。
【0059】
比較例3,6の帯電ローラは、実施例5の帯電ローラに対して、表面粗さがさらに(実施例7,8よりも)大きくなるように研磨条件を変更して作成した。
【0060】
実施例9の帯電ローラは、実施例2の帯電ローラに対して、弾性層2bの抵抗が大きくなるようにイオン導電剤の添加量を変更して作成した。
【0061】
実施例10の帯電ローラは、実施例9の帯電ローラに対して、表面粗さが小さくなるように研磨条件を変更して作成した。
【0062】
比較例4,7の帯電ローラは、実施例9の帯電ローラに対して、表面粗さが大きくなるように研磨条件を変更して作成した。
【0063】
これら実施例1〜10および比較例2〜7では、周方向の最大高さRy1が軸方向の最大高さRy2よりも小さく、周方向の凹凸平均間隔Sm1が軸方向の凹凸平均間隔Sm2よりも大きい(Ry1>Ry2、Sm1<Sm2)。
【0064】
一方、比較例1の帯電ローラは、周方向の溝を形成するテープ研磨を行わずに作成した。この比較例1では、周方向の最大高さRy1が軸方向の最大高さRy2よりも大きく、周方向の凹凸平均間隔Sm1が軸方向の凹凸平均間隔Sm2よりも小さい(Ry1>Ry2、Sm1<Sm2)。
【0065】
表1に、実施例1〜10および比較例1〜7の帯電ローラの表面粗さおよび抵抗値の測定結果を示す。なお、表1において、表面粗さRy1,Sm1,Ry2,Sm2の単位はμmであり、抵抗値R1の単位はΩである。
【0066】
また、表面粗さ(軸方向の最大高さ)Ry2と抵抗値R1とを下記の式(1)により演算した値を、表1に併せて示す。
Ry2+20×log(R1)・・・(1)
なお、式(1)は、図6のグラフに基づいて得られたものであるが、これについては後述する。
【0067】
【表1】

【0068】
これら実施例1〜10および比較例1〜7の帯電ローラを画像形成装置10に装着し、以下のような条件で印刷試験を行った。
【0069】
感光体ドラム1の外径は30mmとし、軸方向長さは、帯電ローラ2の弾性層2bよりも十分長いものとした。また、感光体ドラム1の回転速度は、150rpmとした。
【0070】
帯電ローラ2は、上述したように感光体ドラム1に接触して従動回転するが、帯電ローラ2の芯金2aの両端にそれぞれ350gfの力を加えることにより、帯電ローラ2の弾性層2bを感光体ドラム1の表面に押し付けた。
【0071】
現像装置12の現像方式としては、非磁性1成分接触現像を用い、トナー(現像剤)としては、ポリエステル樹脂を含有する平均粒径が約6.5μmの負帯電性の粉砕トナーを用いた。
【0072】
印刷試験では、室温環境で、40000枚の記録媒体に、5000枚ずつ連続して画像を印刷した。記録媒体としては、A4版の「P紙」(富士ゼロックス株式会社製)を用いた。記録媒体の搬送方向は「縦送り」とし、カバレッジ(単位面積中で画像部分が占める割合)を5%とした。また、帯電ローラ2に付与する直流電圧(帯電電圧)は、−1000Vとした。
【0073】
5000枚の連続印刷を行う毎に(すなわち0枚、5000枚、10000枚、15000枚、・・・、40000枚)、画像評価のための印刷を行った。画像評価のための印刷は、温度8℃、相対湿度20%の低温低湿環境(LL環境)において、帯電電圧を−850V、−1000Vおよび−1200Vの3通りに変え、白紙画像(カバレッジ0%)とハーフトーン画像(カバレッジ30%)を1枚ずつ(合計6枚)形成した。また、温度28℃、相対湿度85%の高温高湿環境(HH環境)においても、帯電電圧を−850V、−1000Vおよび−1200Vの3通りに変え、白紙画像とハーフトーン画像を1枚ずつ(合計6枚)形成した。記録媒体としては、A4版の「エクセレントホワイト」(株式会社沖データ製)を用いた。
【0074】
なお、印刷試験に用いた画像形成装置10の各部材は、予め試験温度(8℃または28℃)±3℃および湿度(20%または85%)±10%の範囲で40時間以上保管することで、LL環境またはHH環境に十分馴染ませて使用した。また、感光体ドラム1の表面電位測定も、同じ環境で行った。
【0075】
このようにして形成した白紙画像(カバレッジ0%)とハーフトーン画像(カバレッジ30%)を観察し、感光体ドラム1の電位低下に起因する「画像汚れ」の有無を判断した。具体的には、白紙画像とハーフトーン画像とを目視観察し、何れか一方にでも、色の濃い部分(斑点等)が見られた場合には「画像汚れあり」と判断した。
【0076】
また、ハーフトーン画像(カバレッジ30%)を目視観察し、濃度の濃い(または薄い)微細な横筋模様(すなわち帯電ローラ2の軸方向の筋模様)の有無を判断した。
【0077】
また、感光体ドラム1の回転速度が150rpmと75rpmの場合に、帯電ローラ2に−1000Vの直流電圧を印加した状態で、感光体ドラム1の露光部での表面電位を測定した。
【0078】
表2に、画像評価の結果を示す。表2には、画像評価結果として、画像汚れと横筋模様の発生の有無(発生した場合には、発生し始めたときの印刷枚数)を示す。
【0079】
【表2】

【0080】
実施例1〜10および比較例1〜7のうち、横筋模様の発生が見られたのは比較例1のみであった。この比較例1では、連続印刷開始時(連続印刷0枚)から、HH環境の帯電電圧−850Vおよび−1000Vにおいて、横筋模様が発生した。また、10000枚連続印刷後のLL環境、帯電電圧−850Vにて画像汚れが発生し、印刷枚数が増加するにつれて画像汚れが悪化した。
【0081】
これに対し、実施例1〜10および比較例2〜4では、画像汚れも横筋模様も見られなかった。すなわち、比較例1と比較して、良好な結果が得られた。
【0082】
また、比較例5〜7では、連続印刷開始時から、LL環境の帯電電圧−850Vにて画像汚れが発生したが、同環境の帯電電圧−1000V、−1200Vでは画像汚れは見られず、また、帯電電圧−850V、−1000Vおよび−1200Vのいずれにおいても横筋模様の発生は見られなかった。すなわち、比較例1と比較して、良好な結果(特に、横筋模様の改善)が得られた。これは、帯電ローラ2の表面に周方向の溝201が、横筋模様の発生の抑制に寄与したためと考えられる。
【0083】
このことから、帯電ローラ2の表面に軸方向の溝と周方向の溝を形成し、Ry1<Ry2、Sm1>Sm2を満足するようにすることにより(実施例1〜10、比較例2〜7)、帯電ローラ2の表面への異物の付着を抑制する効果が得られることが分かる。
【0084】
なお、比較例5〜7のLL環境の帯電電圧−850Vにて画像汚れが発生したのは、帯電ローラ2の表面粗さ、または高抵抗に起因して、感光体ドラム1の表面電位が低下して画像汚れが生じたためと考えられる。
【0085】
上述した実施例1〜10および比較例2〜4では、上記の式(1)の値、すなわち、Ry2+20×log(R1)の値は、190.6以下であった。比較例5〜7では、Ry2+20×log(R1)の値は、195.3〜195.6であった。
【0086】
表3に、上述した感光体ドラム1の表面電位(ドラム電位とも称する)の測定結果を示す。感光体ドラム1の表面電位(単位:V)は、連続印刷開始時および40000枚印刷後のそれぞれについて測定したものである。
【0087】
【表3】

【0088】
さらに、表3に示した結果から、LL環境における、感光体ドラム1の回転速度が75rpmのドラム電位と150rpmのときのドラム電位との差(LL速度差とする。)を求めた。また、感光体ドラム1の回転速度が75rpmの場合と150rpmの場合のそれぞれについて、HH環境でのドラム電位とLL環境でのドラム電位(HH−LL差とする。)を求めた。LL速度差およびHH−LL差は、連続印刷開始時および40000枚印刷後のそれぞれについて求めた。表4に、それぞれの結果を示す。
【0089】
【表4】

【0090】
表4に示した判定結果は、次のようにして決定した。すなわち、連続印刷開始時および40000枚印刷後の何れにおいても、LL速度差(LL環境における、ドラム回転速度75rpm/150rpmでのドラム電位の差)が20V未満で、なお且つ、LL−HH差(HH環境とLL環境でのドラム電位の差)が100V未満であった場合には、判定結果を「○」とした。
【0091】
これに対し、連続印刷開始時および40000枚印刷後の何れか一方でも、LL速度差が20Vを超えたか、あるいは、LL−HH差が100Vを超えた場合には、判定結果を「△」とした。
【0092】
また、「△」に該当する場合において、さらに、LL−HH差(HH環境とLL環境でのドラム電位の差)が120Vを超えた場合には、判定結果を「×」とした。
【0093】
このような判定を行ったのは、使用環境によってドラム電位が大きく変化すると使用が難しくなることから、ドラム電位の変動は小さいほど望ましいためである。
【0094】
なお、ここでは、HH環境とLL環境のうち、LL環境におけるドラム回転速度75rpm/150rpmでのドラム電位の差(LL速度差)を検討しているが、これは、次のような理由による。すなわち、一般に、感光体ドラム1と帯電ローラ2との間にはパッシェンの法則に基づく放電が生じ、この放電を利用して感光体ドラム1の表面を帯電しているが、HH環境よりもLL環境の方が放電開始電圧が大きく、帯電ローラ2の抵抗、表面形状および表面状態(汚れ等)の影響を受けやすい。そのため、ここでは、LL環境におけるドラム回転速度75rpm/150rpmでのドラム電位の差(LL速度差)を検討している。
【0095】
比較例1では、連続印刷開始時にはLL−HH差、LL速度差ともに小さかったが、40000枚の連続印刷後には、LL−HH差が100Vを超え(ドラム回転速度150rpmの場合)、また、LL速度差も20Vを超えた。
【0096】
これは、比較例1では、帯電ローラ2に周方向の溝を形成していないため、感光体ドラム1との接触面積が大きくなり、感光体ドラム1から帯電ローラ2に付着する外添剤の量が増加したことによると考えられる。すなわち、帯電ローラ2の表面の付着物により、帯電ローラ2が感光体ドラム1の表面を均一に帯電できなくなり、画像汚れを生じたと考えられる。
【0097】
比較例2〜4では、連続印刷開始時時からLL−HH差が100を超え、LL速度差も20Vを超えていた。これは、帯電ローラ2の表面粗さが比較的大きい(粗い)こと、および、帯電ローラ2の抵抗が低湿度(LL環境)によってさらに大きくなったことによるものと考えられる。
【0098】
これら比較例2〜4では、上記のRy2+20×log(R1)の値は、何れも185.2より大きく、190.6以下の値であった。
【0099】
比較例5〜7では、連続印刷開始時からLL−HH差が120を超えており、LL速度差も20Vを超えていた。これは、帯電ローラ2の表面粗さがさらに大きい(粗い)こと、および、帯電ローラ2の抵抗が低湿度(LL環境)によってさらに大きくなったことによるものと考えられる。
【0100】
これら比較例5〜7では、上記のRy2+20×log(R1)は、何れも190.6より大きい値であった。
【0101】
ここで、帯電ローラ2の軸方向の最大高さRy2と、帯電ローラ2の抵抗値R1(500V印加時)とが、感光体ドラム1の表面電位の安定性に対して与える影響について検討する。
【0102】
まず、帯電ローラ2の表面粗さを表すRy1,Ry2,Sm1,Sm2のうち、軸方向の最大高さRy2を選んだ理由について説明する。本実施の形態の帯電ローラ2は、周方向に沿う溝201と軸方向に沿う溝202とを有しており、周方向の最大高さRy1は、帯電ローラ2の軸方向に沿う溝202の大きさに対応し、軸方向の最大高さRy2は、帯電ローラ2の周方向に沿う溝201の大きさに対応する。本実施の形態では、上述したようにRy1<Ry2の関係があるため、Ry2の方が、帯電ローラ2と感光体ドラム1との接触状態に対する影響が大きい。また、凹凸の平均間隔Sm1,Sm2は、表面に形成された凹凸に対応する長さの平均値であるため、異物の付着のしやすさには影響するが、帯電ローラ2と感光体ドラム1との接触状態への影響は、最大高さRy2に比べて小さい。以上の理由から、帯電ローラ2の表面粗さを表すRy1,Ry2,Sm1,Sm2のうち、帯電ローラ2と感光体ドラム1との接触状態への影響が最も大きいRy2を選んだ。
【0103】
図6は、横軸にlog(R1)をとり、縦軸にRy2をとり、表4に示した判定結果を○、△およびXで示したグラフである。図6において、Ry2+20×log(R1)≦190.6の領域(一点鎖線とその下側の領域)では、○または△の判定結果が得られていることが分かる。さらに、Ry2+20×log(R1)≦185.2の領域(破線とその下側の領域)では、○の判定結果が得られていることが分かる。
【0104】
このことから、Ry2+20×log(R1)≦190.6が満足される範囲では、感光体ドラム1の回転速度の変化(75rpm/150rpm)に対して、感光体ドラム1の表面電位の変動が少なく、また、環境変化(LL/HH)に対しても、感光体ドラム1の表面電位の変動が少ないことが分かる。
【0105】
また、Ry2+20×log(R1)≦185.2が満足される範囲では、感光体ドラム1の回転速度の変化や環境変化に対し、感光体ドラム1の表面電位の変動がさらに少ないことが分かる。
【0106】
このことから、Ry2+20×log(R1)≦190.6を満足する場合には、感光体ドラム1の回転速度や環境(LL/HH)の変化に対して、安定した感光体ドラム1の表面電位が得られることが分かる。さらに、Ry2+20×log(R1)≦185.2を満足する場合には、より安定した感光体ドラム1の表面電位が得られることが分かる。
【0107】
以上説明したように、本発明の第1の実施の形態では、帯電ローラ2の表面に、回転方向(周方向)に沿う溝201と、回転方向に垂直な方向に沿う溝202とを設け、Ry1<Ry2およびSm1>Sm2を満足するように構成することにより、帯電ローラ2の表面への異物の付着を抑制し、画像汚れや横筋模様などの画像不良を低減することができる。
【0108】
特に、Ry2+20×log(R1)≦190.6(より好ましくは185.2)を満足することにより、感光体ドラム1の回転速度や環境(LL/HH)の変化に対して、感光体ドラム1の表面電位を安定させることができる。
【0109】
ここで、本実施の形態による効果について、さらに説明する。
従来の帯電ローラには、表面のコート層に特定の大きさの粒子を添加することで凹凸を形成し、その凸部を感光体ドラムに接触させることで、帯電ローラと感光体ドラムとの接触面積を減少させるようにしたものがある(特開平9−258523号公報)。
【0110】
しかしながら、このような構成の帯電ローラでは、例えば出荷時などにおいて、長時間に亘って帯電ローラの同じ部分が感光体ドラムに押圧されていると、その押圧力により粒子が帯電ローラの内部に沈み込み、ニップ痕が発生して画像不良につながる可能性がある。また、表面に粒子を添加して凹凸を形成しているため、軸方向と周方向の表面粗さが略同じになり、周方向と軸方向とで粗さを別々に制御することができない。
【0111】
これに対し、上述した実施の形態によれば、帯電ローラの軸方向と周方向の表面粗さをそれぞれ制御し、Ry1<Ry2、およびSm1>Sm2を満足するようにしているため、(粒子の沈み込みに起因する)帯電ローラの表面におけるニップ痕を発生させずに、帯電ローラの表面への異物の付着を抑制することができる。
【0112】
また、従来より、帯電ローラの表面の付着物を除去するクリーニングローラを設けることも提案されている(特開平8−44158号)。しかしながら、この場合、クリーニングローラの設置スペースが必要になるため、画像形成ユニットを大きくしなければならず、また、クリーニングローラの軸受等の周辺部材が必要になるため、部品点数が増加し、製造コストや組立工数が増加する。
【0113】
これに対し、上述した実施の形態によれば、クリーニングローラ等を設けることなく、帯電ローラの表面への異物の付着を抑制することができ、部品点数の増加や、それに伴う製造コストおよび組立工数の増加を低減することができる。また、クリーニングローラでは解消できない横筋模様を解消することもできる。
【0114】
第2の実施の形態.
上述した第1の実施の形態では、図3に示した測定方法において、帯電ローラ2に500Vを印加して抵抗値R1を測定していた。一方、帯電ローラ2の弾性層2bは、印加電圧によって抵抗値が変化し、同じ材質でも表面粗さRyが大きいほど電圧の影響を受けやすい。そこで、この実施の形態2では、帯電ローラ2に500Vを印加したときの上記抵抗値R1に加えて、帯電ローラ2に300Vを印加したときの抵抗値R2に着目した。抵抗値R1,R2の測定方法は、図3に示したとおりである。
【0115】
なお、この第2の実施の形態では、帯電ローラ2の構成は、第1の実施の形態と同様である。また、画像形成装置10の構成および動作も、第1の実施の形態と同様である。
【0116】
表5に、第1の実施の形態で説明した実施例1〜10および比較例1〜7の帯電ローラ2のそれぞれについて、帯電ローラ2の500V印加時の抵抗値R1、300V印加時の抵抗値R2、およびlog(R2)−log(R1)の演算値を示す。また、第1の実施の形態で説明した各画像評価(画像汚れ、横筋模様)およびドラム電位の判定結果も、併せて示す。
【0117】
【表5】

【0118】
表5から、実施例1〜10では、(実施の形態1で説明したように)画像汚れや横筋模様がなく、またドラム電位の判定結果も良好(○)であるが、さらに、log(R2)−log(R1)の値が0.298〜1.222の範囲にあることが分かる。
【0119】
一方、比較例1〜7の結果では、画像汚れまたは横筋模様が見られ、あるいはドラム電位の判定結果が△または×であるが、さらに、log(R2)−log(R1)の値が0.192よりも小さいか、または1.213よりも大きいことが分かる。
【0120】
この結果から、帯電ローラ2の表面に、回転方向(周方向)に沿う溝201と、回転方向に垂直な方向に沿う溝202とを設け、Ry1<Ry2およびSm1>Sm2を満足し、さらに、0.298≦log(R2)−log(R1)≦1.2を満足するように構成することにより、画像汚れや横筋模様を抑制し、また、感光体ドラム1の回転速度や環境(LL/HH)の変化に対して、感光体ドラム1の表面電位を安定させることができることが分かる。
【0121】
上述した各実施の形態は、研磨等により表面に溝を形成した回転可能な帯電部材、この帯電部材を有する画像形成ユニットおよび画像形成装置に適用することができる。帯電部材としては、単層構造を有する帯電ローラに限らず、複層構造を有する帯電ローラの表面に溝を形成したものでもよい。また、回転可能な帯電部材であれば、帯電ローラに限らず、例えばベルト式の回転部材などであってもよい。
【0122】
なお、本発明の各実施の形態の構成に、さらに帯電ローラの表面の異物を除去するクリーニング部材(例えばクリーニングローラ)を付加してもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0123】
1 感光体ドラム(像担持体)
2 帯電ローラ(帯電部材)
2a 芯金
2b 弾性層
10 画像形成装置
12 現像装置
13 現像ローラ
16 トナーカートリッジ
17 転写部材
18 露光装置
19 クリーニング部材
20 画像形成ユニット
21 カセット
22 給紙ローラ
25 定着ユニット
30 抵抗測定器
31 端子
32 ベアリング
201 周方向(回転方向)に沿う溝
202 軸方向(回転方向に垂直な方向)に沿う溝


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の方向に回転可能な帯電部材であって、
前記帯電部材の表面に、回転方向に沿う溝と、前記回転方向に垂直な方向に沿う溝とが形成され、
前記帯電部材の表面粗さの前記回転方向の最大高さRy1と、前記回転方向に垂直な方向の最大高さRy2とが、Ry1<Ry2の関係にあり、
前記帯電部材の表面粗さの前記回転方向の凹凸平均間隔Sm1と、前記回転方向に垂直な方向の凹凸平均間隔Sm2とが、Sm1>Sm2の関係にあること
を特徴とする帯電部材。
【請求項2】
前記回転方向に沿う前記溝と、前記回転方向に垂直な方向の前記溝とが、研磨により形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の帯電部材。
【請求項3】
前記帯電部材に500Vを印加したときの抵抗値をR1とすると、
前記表面粗さの前記最大高さRy2と、前記抵抗値R1とが、
Ry2+20log(R1)≦190.6
を満足することを特徴とする請求項1または2に記載の帯電部材。
【請求項4】
前記帯電部材に500Vを印加したときの抵抗値をR1とすると、
前記表面粗さの前記最大高さRy2と、前記抵抗値R1とが、
Ry2+20log(R1)≦185.2
を満足することを特徴とする請求項3に記載の帯電部材。
【請求項5】
前記帯電部材に500Vを印加したときの抵抗値R1と、前記帯電部材に300Vを印加したときの抵抗値R2とが、
0.298≦log(R2)−log(R1)≦1.2
を満足することを特徴とする請求項1から4までの何れか1項に記載の帯電部材。
【請求項6】
前記帯電部材は、ローラ形状を有し、その表面に弾性層を有することを特徴とする請求項1から5までの何れか1項に記載の帯電部材。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか1項に記載の前記帯電部材を備えたことを特徴とする画像形成ユニット。
【請求項8】
請求項7に記載の画像形成ユニットを備えたことを特徴とする画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−232433(P2011−232433A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100765(P2010−100765)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】