説明

帯電防止剤を含有する粘着剤組成物、及び粘着フィルム

【課題】粘着性能を損なわずに帯電防止性に優れ、ガラス板に対する接着性に優れ、さらに被着体に対するリワーク性にも優れた、帯電防止剤を含有する粘着剤組成物、及びそれを用いた粘着フィルムを提供する。
【解決手段】帯電防止剤を含有する粘着剤組成物であって、(メタ)アクリル系ポリマーを主成分とし、前記帯電防止剤として、式1で示されるイオン性化合物を含有し、該イオン性化合物が、加水分解性のケイ素含有基を含む有機カチオンを有する。
[化1]


(ただし、式1において、Zはカチオンを示し、Xはアニオンを示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止剤を含有する粘着剤組成物、及び粘着フィルムに関する。さらに詳細には、帯電防止剤として、アルコキシシリル基含有イオン性化合物を含有する粘着剤組成物に関し、粘着性能を損なわずに帯電防止性に優れ、アルコキシシリル基を含有するためガラス板に対する接着性に優れ、さらに被着体に対するリワーク性にも優れた粘着剤組成物及びそれを用いた粘着フィルムを提供することに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子機器部品、光学機器部品、画像表示パネルなどの精密部品及び部材の製造加工・組み立て工程においては、これらの精密部品及び部材の表面を一時的に保護して、作業環境雰囲気からのパーティクル・気体状の汚染物質の付着や、すりキズ・打痕の発生を防止するために表面保護フィルムが、精密部品及び部材の表面に貼着されている。
例えば、液晶ディスプレイを構成する部材である偏光板、位相差板などの光学部材を製造する工程において使用される表面保護フィルムは、光学的に透明性を有するポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルムの片面に粘着剤層が形成されているが、光学部材に貼り合わせるまで、その粘着剤層を保護するための剥離処理された剥離フィルムが、粘着剤層の上に貼り合わされている。
【0003】
また、偏光板、位相差板などの光学部材は、表面保護フィルムを貼り合わされた状態で、液晶表示板の表示能力、色相、コントラスト、異物混入などの光学的評価を伴う製品検査を行うため、表面保護フィルムに対する要求性能としては、粘着剤層に気泡や異物が付着していないことが求められている。
また、近年では、偏光板、位相差板などの光学部材から表面保護フィルムを剥がすときに、粘着剤層を被着体が剥がす時に発生する静電気に伴って生じる剥離帯電が、液晶ディスプレイの電気制御回路の故障に影響することが懸念され、粘着剤層に対して優れた帯電防止性が求められている。
また、光学部材は、ガラス(無機ガラス、特に無アルカリガラス)からなる表面を有する場合が多く、ガラス板に対する接着性に優れることが求められている。
また、偏光板、位相差板などの光学部材に表面保護フィルムを貼り合わせるときに、各種の理由により、一旦、表面保護フィルムを剥がして、再度、表面保護フィルムを貼り直すことがあり、そのときに被着体の光学部材から剥がし易いこと(リワーク性)が求められている。
このように、近年においては、表面保護フィルムを構成する粘着剤層に対する要求性能として、ガラス板に対する接着性、優れた帯電防止性、及び被着体に対するリワーク性などが、表面保護フィルムを使用するに当たっての使い易さの点から求められている。
しかし、表面保護フィルムを構成する粘着剤層に対する要求性能である、これらの、ガラス板に対する接着性、優れた帯電防止性、及び被着体に対するリワーク性の、それぞれの要求性能を、別々に満たすことは出来ても、表面保護フィルムの粘着剤層に求められる要求性能を、同時に安価なコストで満たすことは困難な課題であった。
【0004】
優れた帯電防止性については、表面保護フィルムに帯電防止性を付与させための方法として、基材フィルムに帯電防止剤を練り込む方法などが示され、帯電防止剤としては、例えば、(a)第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、第1〜3級アミノ基などのカチオン性基を有する各種のカチオン性帯電防止剤、(b)スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基、リン酸エステル塩基、ホスホン酸塩基などのアニオン性基を有するアニオン性帯電防止剤、(c)アミノ酸系、アミノ硫酸エステル系などの両性帯電防止剤、(d)アミノアルコール系、グリセリン系、ポリエチレングリコール系などのノニオン性帯電防止剤、(e)上記の様な帯電防止剤を高分子量化した高分子型帯電防止剤、などが開示されている(特許文献1)。
【0005】
また、近年では、このような帯電防止剤を基材フィルムに含有させたり、あるいは基材フィルムの表面に塗布するのではなく、直接に粘着剤層に含有させたりすることが提案されている(特許文献2)。
特許文献2では、(1)(a)ウレタンアクリレートと、(b)ポリアルキレンオキサイド鎖を有する(メタ)アクリレートと、(c)接着力付与性モノマーと、を主成分として含む重合性混合物を放射線重合することにより得られた共重合体、および、(2)イオン性化合物、を含む、帯電防止性粘着剤組成、及びそれを用いた粘着シートが開示されている。具体的な、粘着剤組成物の製造方法として、ポリエステルウレタンアクリレートのようなウレタンアクリレートと、メトキシポリエチレングリコールアクリレートのようなポリオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレートモノマーと、ヒドロキシプロピルアクリレートのような接着力付与性モノマーと、必要に応じてイソオクチルアクリレートのようなさらなるコモノマーとを含む重合性混合物に、過塩素酸リチウムのようなイオン性化合物を混合し、必要ならば光重合開始剤を添加し、完全に溶解するまで攪拌した後、紫外線などを照射して硬化することにより粘着剤組成物が得られるとしている。
しかし、イオン性化合物として使用している過塩素酸リチウムは、金属腐食性を有するため、得られた帯電防止性粘着剤組成の使用する場所が限られてしまうという問題があった。
【0006】
また、液晶パネルの偏光板に対するリワーク性については、例えば、アクリル樹脂中に、イソシアネート系化合物の硬化剤と、特定のシリケートオリゴマーをアクリル系樹脂100重量部に対して0.0001〜10重量部で配合した粘着剤組成物が提案されている(特許文献3)。
特許文献3では、アルキル基の炭素数2〜12程度のアクリル酸アルキルエステルやアルキル基の炭素数4〜12程度のメタクリル酸アルキルエステル等を主モノマー成分とし、例えば、カルボキシル基含有モノマーなどの他の官能基含有モノマー成分を含むことができるとしている。一般的には上記主モノマーを50重量%以上含有させることが好ましい、又、官能基含有モノマー成分の含有量は0.001〜50重量%、好ましくは0.001〜25重量%、更に好ましくは0.01〜25重量%であることが望まれる、としている。このような特許文献3に記載の粘着剤組成物は、高温下又は高温高湿下でも凝集力及び接着力の経時変化が小さく、かつ、曲面接着力にも優れた効果を示すことから、リワーク性を有するとしている。
一般に、粘着剤層を柔らかい性状のものにすると、糊残りが発生し易くなり、リワーク性が低下しやすい。すなわち、誤って貼合したときに剥離がし難く、貼り直しが困難となりやすい。このことから、カルボキシル基などの官能基を有するモノマーを主剤に架橋させて、粘着剤層を一定の硬さにすることが、リワーク性を持たせるためには必要と考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−070629号公報
【特許文献2】特開2000−129235号公報
【特許文献3】特開平8−199130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
粘着剤シートとして帯電防止機能を求められることが多く、色々な種類の帯電防止剤が試みられてきた。しかし、特に光学フィルムの用途においては、帯電防止機能は持たせる事ができるが、透明性が悪いなどの欠点があり、さらには帯電防止剤の粘着剤への相溶性不足などから、被着体であるガラス板に対する接着力が悪かったり、耐久性が向上しないなどの問題が有り、更には帯電防止剤のブリードアウトや粘着シートを剥がした際に、被着体に対するリワーク性が悪いなどの欠点が多かった。これら、性能を満足できても、コストが高くなってしまうなどの問題もあり、低コストでこれら欠点を克服出来る帯電防止剤を含んだ粘着剤が必要とされて来た。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、粘着性能を損なわずに帯電防止性に優れ、ガラス板に対する接着性に優れ、さらに被着体に対するリワーク性にも優れた、帯電防止剤を含有する粘着剤組成物、及びそれを用いた粘着フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明は、帯電防止剤を含有する粘着剤組成物であって、(メタ)アクリル系ポリマーを主成分とし、前記帯電防止剤として、式1で示されるイオン性化合物を含有し、該イオン性化合物が、加水分解性のケイ素含有基を含む有機カチオンを有することを特徴とする粘着剤組成物を提供する。
【0011】
【化1】

【0012】
(ただし、式1において、Zはカチオンを示し、Xはアニオンを示す。)
前記イオン性化合物のカチオンZは、式2で示される1種または2種以上のアルコキシシリル基含有カチオンであることが好ましい。
【0013】
【化2】

【0014】
(ただし、式2において、RおよびRは、互いに同一または異なるアルキル基を表し、nは、1〜3の整数を表し、Qは、炭素数1から10のアルキレン基を表し、Eは、NHまたはSを表し、Qは、単結合または炭素数1から10のアルキレン基を表し、Qは、炭素数1から10のアルキレン基を表し、Vは、アンモニウム基、ピリジニウム基、ピロリジニウム基、イミダゾリウム基、グアニジニウム基、イソウロニウム基、チオウロニウム基、ピペリジニウム基、ピラゾリウム基、モルホリニウム基、ホスホニウム基、スルホニウム基から選択される1価のカチオン基を示し、該カチオン基は無換基でも置換基を有してもよい。)
前記加水分解性のケイ素含有基が、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、エチルジメトキシシリル基、エチルジエトキシシリル基から選択されるアルコキシシリル基であることが好ましい。
【0015】
前記(メタ)アクリル系ポリマーが、(A)アルキル基の炭素数がC1〜C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種と、(B)水酸基および/またはカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種と、からなる共重合組成物であり、前記共重合組成物の100重量部に対して、前記帯電防止剤が、(C)前記の式1で示されるイオン性化合物を0.1〜20重量部、を必須成分として含有することが好ましい。
前記(メタ)アクリル系ポリマーが、(A)アルキル基の炭素数がC1〜C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種と、(B′)ビニル基を有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種と、からなる共重合組成物であり、前記共重合組成物の100重量部に対して、前記帯電防止剤が、(C)前記の式1で示されるイオン性化合物を0.1〜20重量部、を必須成分として含有することが好ましい。
前記(メタ)アクリル系ポリマーが、(A)アルキル基の炭素数がC1〜C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも2種以上からなる共重合組成物であり、
前記共重合組成物の100重量部に対して、前記帯電防止剤が、(C)前記の式1で示されるイオン性化合物を0.1〜20重量部、を必須成分として含有することが好ましい。
【0016】
前記粘着剤組成物からなる粘着剤層の表面抵抗率が1.0×10+12Ω/□以下であることが好ましい。
前記イオン性化合物のアニオンXは、六フッ化リン酸アニオン、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン、トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロフォスフェートアニオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン、チオシアン酸アニオン、アルキルベンゼンスルホン酸アニオン、過塩素酸アニオン塩、四フッ化ホウ素酸アニオンからなる無機もしくは有機のアニオン群から選択した1種または2種以上であることが好ましい。
【0017】
また、本発明は、基材の片面上に、前記粘着剤組成物が積層されたことを特徴とする粘着フィルムを提供する。
また、本発明は、基材の片面上に、前記粘着剤組成物からなる粘着剤層が積層されたことを特徴とする粘着フィルムを提供する。
また、本発明は、前記粘着フィルムが用いられた、表面保護フィルムを提供する。
また、本発明は、前記粘着フィルムが用いられた、偏光板用の表面保護フィルムを提供する。
また、本発明は、前記粘着フィルムが用いられた、光学用の表面保護フィルムを提供する。
また、本発明は、光学フィルムの少なくとも一方の面に、前記粘着剤組成物からなる粘着剤層が積層されている粘着剤付き光学フィルムを提供する。
前記粘着剤付き光学フィルムの光学フィルムが偏光板であることが好ましい。
また、本発明は、前記粘着剤付き光学フィルムが、前記粘着剤層を介して貼り合わされてなる画像表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、加水分解性のケイ素含有基、特にアルコキシシリル基を有する帯電防止剤を含有させた粘着剤を用いることで、ガラス板に対する接着性に優れ、かつ、帯電防止性や被着体に対するリワーク性などの欠点などの課題を改善することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、好適な実施の形態に基づいて本発明を説明する。
本発明の粘着剤組成物は、粘着剤の主剤となる粘着剤ポリマーと、帯電防止性を付与する帯電防止剤を有し、この帯電防止剤として、加水分解性のケイ素含有基、特にアルコキシシリル基を有するイオン性化合物を含有することを特徴とする。
これにより、ガラス板に対する接着性に優れ、帯電防止性や被着体に対するリワーク性などの欠点などの課題を改善することが可能となる。
【0020】
本発明に用いる粘着剤ポリマーとしては、アクリル系ポリマーが好ましく、特に、(A)アルキル基の炭素数がC1〜C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種を主成分とする共重合組成物が好ましい。
(A)アルキル基の炭素数がC1〜C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートモノマーのアルキル基は、直鎖、分枝状、環状のいずれでもよい。
【0021】
本発明に用いる粘着剤ポリマーとして、(A)アルキル基の炭素数がC1〜C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種と、他の共重合性モノマーの少なくとも1種とからなる共重合組成物を採用することもできる。この場合、他の共重合性モノマーとしては、(B′)ビニル基を有する共重合性ビニルモノマーや、(B)水酸基および/またはカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーが挙げられる。
水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類や、N−ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等の水酸基含有(メタ)アクリルアミド類などが挙げられ、これらの化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上であることが好ましい。
カルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレートからなどが挙げられ、これらの化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上であることが好ましい。
上記以外の共重合性ビニルモノマーとしては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族基含有(メタ)アクリル酸エステル類のほか、スチレン、アクリルアミド、アクリロニトリル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、酢酸ビニル、塩化ビニルなどの各種ビニルモノマーが挙げられる。
【0022】
また、本発明に用いる粘着剤ポリマーとして、(A)アルキル基の炭素数がC1〜C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも2種以上からなる共重合組成物を採用することもできる。この場合、(A)アルキル基の炭素数がC1〜C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマー以外の共重合性ビニルモノマーを用いなくても共重合組成物とすることができる。
【0023】
本発明で帯電防止剤として用いられるイオン性化合物は、式1で表され、そのカチオンZが、加水分解性のケイ素含有基を有する有機カチオンである。該イオン性化合物は、常温(例えば30℃)で液体となるイオン液体でもよく、常温で固体のものであってもよい。
【0024】
(式1)
【0025】
(ただし、式1において、Zはカチオンを示し、Xはアニオンを示す。)
【0026】
前記イオン性化合物のアニオンXは、六フッ化リン酸アニオン、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン、トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロフォスフェートアニオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン、チオシアン酸アニオン、アルキルベンゼンスルホン酸アニオン、過塩素酸アニオン塩、四フッ化ホウ素酸アニオンからなる無機もしくは有機のアニオン群から選択した1種または2種以上であることが好ましい。
【0027】
前記イオン性化合物のカチオンZは、ピリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、スルホニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、グアニジニウムカチオン、アンモニウムカチオン、イソウロニウムカチオン、チオウロニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、モルホリニウムカチオン等からなるカチオン群から選択した1種または2種以上であることが好ましい。
前記カチオンZは、加水分解性のケイ素含有基を有する有機カチオンである。
【0028】
前記加水分解性のケイ素含有基としては、アルコキシシリル基、アルケニルオキシシリル基、アシロキシシリル基、アミノシリル基、アミノオキシシリル基、オキシムシリル基、アミドシリル基等が好適に用いられる。なかでも、式1aで示されるアルコキシシリル基が好ましい。
【0029】
(RO)(R3−nSi− (式1a)
【0030】
ただし、式1bにおいて、RおよびRは、互いに同一または異なるアルキル基を表し、nは、1〜3の整数を表す。
【0031】
アルコキシシリル基としては、アルコキシジアルキルシリル基(n=1)、アルキルジアルコキシシリル基(n=2)、トリアルコキシシリル基(n=3)が挙げられる。アルキルジアルコキシシリル基(n=2)またはトリアルコキシシリル基(n=3)が好ましい。
アルコキシ基(RO)としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基などが挙げられる。
アルキル基(R)としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基などが挙げられる。
【0032】
アルコキシシリル基の具体例としては、下記の式1a−1から式1a−6で表される、トリメトキシシリル基(式1a−1)、トリエトキシシリル基(式1a−2)、メチルジメトキシシリル基(式1a−3)、メチルジエトキシシリル基(式1a−4)、エチルジメトキシシリル基(式1a−5)、エチルジエトキシシリル基(式1a−6)などが挙げられる。
【0033】
(CHO)Si− (式1a−1)
(CO)Si− (式1a−2)
(CH)(CHO)Si− (式1a−3)
(CH)(CO)Si− (式1a−4)
(C)(CHO)Si− (式1a−5)
(C)(CO)Si− (式1a−6)
【0034】
他の加水分解性のケイ素含有基において、アルコキシ基(RO)の代わりに用いることができる加水分解性基としては、ビニルオキシ基、1−メチルビニルオキシ基、1−エチルビニルオキシ基等のアルケニルオキシ基;アセチルオキシ基、プロパノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシロキシ基;ジメチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のアミノ基;ジメチルアミノオキシ基、メチルエチルアミノオキシ基、ジエチルアミノオキシ基等のアミノオキシ基;(CHC=NO−や(CC=NO−等のオキシム基;CHCON(CH)−やCCON(CH)−等のアミド基が挙げられる。これらの加水分解性基Lは、シリル基のSi原子に結合した場合、加水分解性を有する。
【0035】
前記加水分解性のケイ素含有基におけるシリル基は、シロキサン基であってもよい。シロキサン基を有する前記加水分解性のケイ素含有基としては、例えば式1a’で表されるものや、アルコキシ基(RO)の代わりに、アルケニルオキシ基等の前記加水分解性基を有するものが挙げられる。
【0036】
(RSiO(RO)Si− (式1a’)
【0037】
前記イオン性化合物のカチオンZは、式1bで示される1種または2種以上のアルコキシシリル基含有カチオンであることが好ましい。
【0038】
(RO)(R3−nSi−Q−V (式1b)
【0039】
ただし、式1bにおいて、RおよびRは、互いに同一または異なるアルキル基を表し、nは、1〜3の整数を表す。
Qは、炭素数1から20のアルキレン基を表し、該アルキレン基は、直鎖でも分枝を有してもよく、無換基でも置換基を有してもよい。また該アルキレン基の主鎖に、エーテル結合(−O−)、スルフィド結合(−S−)、イミノ基(−NH−)、カルボニル基(−CO−)、エステル結合(−COO−または−OCO−)、アミド結合(−CONH−または−NHCO−)、カーボネート結合(−OCOO−)、ウレタン結合(−NHCOO−または−OCONH−)、ウレア結合(−NHCONH−)等の官能基を構成するヘテロ原子(O、S、Nなど、炭素及び水素以外の元素の原子)を1個または2個以上含んでもよい。
ただし、前記アルキレン基Qの主鎖にヘテロ原子を有する場合、当該ヘテロ原子の個数は、アルキレン基の炭素数には含めないものとする。また、前記アルキレン基Qにおいて、前記ケイ素含有基のSiに隣接する原子はヘテロ原子でなく、炭素原子とする。
は、アンモニウム基、ピリジニウム基、ピロリジニウム基、イミダゾリウム基、グアニジニウム基、イソウロニウム基、チオウロニウム基、ピペリジニウム基、ピラゾリウム基、モルホリニウム基、ホスホニウム基、スルホニウム基から選択される1価のカチオン基を示し、該カチオン基Vは、無換基でも置換基を有してもよい。
【0040】
前記アルキレン基Qに有していてもよい置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基;フェニル基、ナフチル基、4−メチルフェニル基及び4−メトキシフェニル基などの置換基を有していてもよいアリール基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、トリフルオロメトキシ基、ベンジルオキシ基などの置換基を有していてもよいアルコキシ基;フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、3−フェノキシフェノキシ基などの置換基を有していてもよいアリールオキシ基;フッ素原子、塩素原子などのハロゲン原子などが例示される。なお、前記アルキレン基に置換基がある場合、当該置換基の炭素数は、アルキレン基の炭素数には含めないものとする。
【0041】
前記アルキレン基Qとしては、加水分解性のケイ素含有基(アルコキシシリル基など)とカチオン基(V)とを連結する連結基であればよく、例えば、−C2i−、−C2iOC2j−、−C2iSC2j−、−C2iNHC2j−、−C2iCOC2j−、−C2iCOOC2j−、−C2iOCOC2j−、−C2iNHCOC2j−、−C2iCONHC2j−、−C2iOCOOC2j−、−C2iNHCOOC2j−、−C2iOCONHC2j−、−C2iNHCONHC2j−、−C2iOC2jOC2k−、−C2iOC2jCOOC2k−、−C2iNHC2jCOOC2k−、−C2iSC2jCOOC2k−、などが挙げられる(ただし、i,j,kは1以上の整数)。
前記C2i、C2j、C2kで表されるアルキレン基としては、例えば、−CH−、−CHCH−、−C(CH)−、−CHCHCH−、−CHC(CH)−、−C(CH)CH−、−CHCHCHCH−、などの直鎖または分枝を有する2価の脂肪族炭化水素基が挙げられる。
前記連結基Qがアルキレン基の主鎖にヘテロ原子を有するものである場合、それらのヘテロ原子が、加水分解等で切断されにくい化学結合を構成するものが好ましい。これにより、連結基Qが、加水分解性のケイ素含有基(アルコキシシリル基など)とカチオン基(V)とを連結する連結基としての機能を発揮することができる。
【0042】
前記イオン性化合物のカチオンZは、式2で示される1種または2種以上のアルコキシシリル基含有カチオンであることが好ましい。
【0043】
(RO)(R3−nSi−Q−E−Q−COO−Q−V (式2)
【0044】
(ただし、式2において、RおよびRは、互いに同一または異なるアルキル基を表し、nは、1〜3の整数を表し、Qは、炭素数1から10のアルキレン基を表し、Eは、NHまたはSを表し、Qは、単結合または炭素数1から10のアルキレン基を表し、Qは、炭素数1から10のアルキレン基を表し、Vは、アンモニウム基、ピリジニウム基、ピロリジニウム基、イミダゾリウム基、グアニジニウム基、イソウロニウム基、チオウロニウム基、ピペリジニウム基、ピラゾリウム基、モルホリニウム基、ホスホニウム基、スルホニウム基から選択される1価のカチオン基を示し、該カチオン基は無換基でも置換基を有してもよい。)
【0045】
アンモニウム基としては、トリアルキルアンモニウム基(−N)やジアルキルアンモニウム基(−NHR)等が挙げられる。ホスホニウム基としては、トリアルキルホスホニウム基(−P)やジアルキルホスホニウム基(−PHR)等が挙げられる。スルホニウム基としては、ジアルキルスルホニウム基(−S)等が挙げられる。これらの式におけるRは、互いに同一または異なるアルキル基を表す。
【0046】
ピリジニウム基、ピロリジニウム基、イミダゾリウム基、グアニジニウム基、イソウロニウム基、チオウロニウム基、ピペリジニウム基、ピラゾリウム基、モルホリニウム基としては、それぞれ、ピリジニウム、ピロリジニウム、イミダゾリウム、グアニジニウム、イソウロニウム、チオウロニウム、ピペリジニウム、ピラゾリウム、モルホリニウムに含まれる窒素原子もしくは炭素原子、またはイソウロニウムの酸素原子もしくはチオウロニウムの硫黄原子において、Qと結合できる基が挙げられる。
【0047】
前記カチオン基(V)に有していてもよい置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基;フェニル基、ナフチル基、4−メチルフェニル基及び4−メトキシフェニル基などの置換基を有していてもよいアリール基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、トリフルオロメトキシ基、ベンジルオキシ基などの置換基を有していてもよいアルコキシ基;フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、3−フェノキシフェノキシ基などの置換基を有していてもよいアリールオキシ基;フッ素原子、塩素原子などのハロゲン原子などが例示される。
【0048】
本発明で用いられるカチオンZとしては、例えば、トリアルキル(アルコキシシリルアルキル)アンモニウム、トリアルキル([({[(アルコキシシリル)アルキル]カルバモイル}オキシ)アルキル])アンモニウム、トリアルキル([({[(アルコキシシリル)アルキル]アミノ}アシル)オキシ]アルキル})アンモニウム、トリアルキル([({[(アルコキシシリル)アルキル]スルファニル}アシル)オキシ]アルキル})アンモニウム等の、加水分解性のケイ素含有基を有するアンモニウムカチオン;
1−[(アルコキシシリル)アルキル]ピリジニウム、1−[({[(アルコキシシリル)アルキル]カルバモイル}オキシ)アルキル]ピリジニウム、1−[({[(アルコキシシリル)アルキル]アミノ}アシル)オキシ]アルキル}ピリジニウム、1−[({[(アルコキシシリル)アルキル]スルファニル}アシル)オキシ]アルキル}ピリジニウム等の、加水分解性のケイ素含有基を有するピリジニウムカチオン;
【0049】
1−アルキル−1−[(アルコキシシリル)アルキル]ピロリジニウム、1−アルキル−1−[({[(アルコキシシリル)アルキル]カルバモイル}オキシ)アルキル]ピロリジニウム、1−アルキル−1−[({[(アルコキシシリル)アルキル]アミノ}アシル)オキシ]アルキル}ピロリジニウム、1−アルキル−1−[({[(アルコキシシリル)アルキル]スルファニル}アシル)オキシ]アルキル}ピロリジニウム等の、加水分解性のケイ素含有基を有するピロリジニウムカチオン;
1−アルキル−3−[(アルコキシシリル)アルキル]イミダゾリウム、1,2−ジアルキル−3−[(アルコキシシリル)アルキル]イミダゾリウム、1−アルキル−3−[({[(アルコキシシリル)アルキル]カルバモイル}オキシ)アルキル]イミダゾリウム、1−アルキル−3−[({[(アルコキシシリル)アルキル]アミノ}アシル)オキシ]アルキル}イミダゾリウム、1−アルキル−3−[({[(アルコキシシリル)アルキル]スルファニル}アシル)オキシ]アルキル}イミダゾリウム等の、加水分解性のケイ素含有基を有するイミダゾリウムカチオン;
【0050】
1−[(アルコキシシリル)アルキル]グアニジニウム、2−[(アルコキシシリル)アルキル]グアニジニウム、1,1,3,3−テトラアルキル−2−[(アルコキシシリル)アルキル]グアニジニウム等の、加水分解性のケイ素含有基を有するグアニジニウムカチオン;
2−アルキル−1−[(アルコキシシリル)アルキル]イソウロニウム、2−[(アルコキシシリル)アルキル]イソウロニウム、1,1,3,3−テトラアルキル−2−[(アルコキシシリル)アルキル]イソウロニウム等の、加水分解性のケイ素含有基を有するイソウロニウムカチオン;
2−アルキル−1−[(アルコキシシリル)アルキル]チオウロニウム、1−アルキル−2−[(アルコキシシリル)アルキル]チオウロニウム、1,1,3,3−テトラアルキル−2−[(アルコキシシリル)アルキル]チオウロニウム等の、加水分解性のケイ素含有基を有するチオウロニウムカチオン;
【0051】
1−アルキル−1−[(アルコキシシリル)アルキル]ピペリジニウム、1−アルキル−1−[({[(アルコキシシリル)アルキル]カルバモイル}オキシ)アルキル]ピペリジニウム、1−アルキル−1−[({[(アルコキシシリル)アルキル]アミノ}アシル)オキシ]アルキル}ピペリジニウム、1−アルキル−1−[({[(アルコキシシリル)アルキル]スルファニル}アシル)オキシ]アルキル}ピペリジニウム等の、加水分解性のケイ素含有基を有するピペリジニウムカチオン;
1−アルキル−2−[(アルコキシシリル)アルキル]ピラゾリウム、1−アルキル−2−[({[(アルコキシシリル)アルキル]カルバモイル}オキシ)アルキル]ピラゾリウム、1−アルキル−2−[({[(アルコキシシリル)アルキル]アミノ}アシル)オキシ]アルキル}ピラゾリウム、1−アルキル−2−[({[(アルコキシシリル)アルキル]スルファニル}アシル)オキシ]アルキル}ピラゾリウム等の、加水分解性のケイ素含有基を有するピラゾリウムカチオン;
4−アルキル−4−[(アルコキシシリル)アルキル]モルホリニウム、4−アルキル−4−[({[(アルコキシシリル)アルキル]カルバモイル}オキシ)アルキル]モルホリニウム、4−アルキル−4−[({[(アルコキシシリル)アルキル]アミノ}アシル)オキシ]アルキル}モルホリニウム、4−アルキル−4−[({[(アルコキシシリル)アルキル]スルファニル}アシル)オキシ]アルキル}モルホリニウム等の、加水分解性のケイ素含有基を有するモルホリニウムカチオン;
【0052】
トリアルキル[(アルコキシシリル)アルキル]ホスホニウム、トリアルキル([({[(アルコキシシリル)アルキル]カルバモイル}オキシ)アルキル])ホスホニウム、トリアルキル([({[(アルコキシシリル)アルキル]アミノ}アシル)オキシ]アルキル})ホスホニウム、トリアルキル([({[(アルコキシシリル)アルキル]スルファニル}アシル)オキシ]アルキル})ホスホニウム等の、加水分解性のケイ素含有基を有するホスホニウムカチオン;
ジアルキル[(アルコキシシリル)アルキル]スルホニウム、ジアルキル([({[(アルコキシシリル)アルキル]カルバモイル}オキシ)アルキル])スルホニウム、ジアルキル([({[(アルコキシシリル)アルキル]アミノ}アシル)オキシ]アルキル})スルホニウム、ジアルキル([({[(アルコキシシリル)アルキル]スルファニル}アシル)オキシ]アルキル})スルホニウム等の、加水分解性のケイ素含有基を有するスルホニウムカチオン;
などが挙げられる。
【0053】
本発明で用いられるカチオンZの具体例としては、例えば、
トリメチル([2−({[3−(トリメトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル])アンモニウム、トリメチル([2−({[3−(トリエトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル])アンモニウム、トリメチル([2−({[3−(メチルジメトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル])アンモニウム、トリメチル([2−({[3−(メチルジエトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル])アンモニウム、トリメチル([2−({[3−(エチルジメトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル])アンモニウム、トリメチル([2−({[3−(エチルジエトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル])アンモニウム、
1−[2−({[3−(トリメトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル]ピリジニウム、1−[2−({[3−(トリエトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル]ピリジニウム、1−[2−({[3−(メチルジメトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル]ピリジニウム、1−[2−({[3−(メチルジエトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル]ピリジニウム、1−[2−({[3−(エチルジメトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル]ピリジニウム、1−[2−({[3−(エチルジエトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル]ピリジニウム、
トリメチル({2−[(3−{[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アミノ}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウム、トリメチル({2−[(3−{[3−(トリエトキシシリル)プロピル]アミノ}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウム、トリメチル({2−[(3−{[3−(メチルジメトキシシリル)プロピル]アミノ}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウム、トリメチル({2−[(3−{[3−(メチルジエトキシシリル)プロピル]アミノ}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウム、トリメチル({2−[(3−{[3−(エチルジメトキシシリル)プロピル]アミノ}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウム、トリメチル({2−[(3−{[3−(エチルジエトキシシリル)プロピル]アミノ}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウム、
トリメチル({2−[(2−メチル−3−{[3−(トリメトキシシリル)プロピル]スルファニル}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウム、トリメチル({2−[(2−メチル−3−{[3−(トリエトキシシリル)プロピル]スルファニル}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウム、トリメチル({2−[(2−メチル−3−{[3−(メチルジメトキシシリル)プロピル]スルファニル}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウム、トリメチル({2−[(2−メチル−3−{[3−(メチルジエトキシシリル)プロピル]スルファニル}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウム、トリメチル({2−[(2−メチル−3−{[3−(エチルジメトキシシリル)プロピル]スルファニル}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウム、トリメチル({2−[(2−メチル−3−{[3−(エチルジエトキシシリル)プロピル]スルファニル}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウム、
等が挙げられる。
【0054】
上記の式2で示される化合物は、公知の合成方法を利用して合成することができる。
例えば、(RO)(R3−nSi−Q−Vで表される化合物は、(RO)(R3−nSi−Q−Hal(ただし、Halは、Cl,Br,Iなどのハロゲンを表す。)で表される化合物を、アミンやイミダゾール等と反応させることによって合成することができる。
また、(RO)(R3−nSi−Q−NH−COO−Q−Vで表される化合物は、(RO)(R3−nSi−Q−NCOで表される化合物と、HO−Q−Vで表される化合物とを反応させることによっても合成することが可能である。
【0055】
本発明で用いられるアニオンXの具体例としては、4フッ化ホウ酸[BF]、6フッ化リン酸[PF]、トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロフォスフェート[PF(C]、ビス(フルオロスルホニル)イミド[(FSO]、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド[(CFSO]、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド[(CSO]、ビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミド[(CSO]、(トリフルオロメタンスルホニル)(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド[(CFSO)(CSO)N]、(トリフルオロメタンスルホニル)(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミド[(CFSO)(CSO)N]、(トリフルオロメタンスルホニル)(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド[(CFSO)(CSO)N]などが挙げられる。
このうち、BF、PF、PF(C、(FSO、(CFSOが好ましい。
【0056】
本発明で用いられるイオン性化合物(Z・X)の具体例としては、上述の好ましいカチオンZと好ましいアニオンXとの組み合わせなどであり、例えば、
トリメチル([2−({[3−(トリメトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル])アンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド塩、トリメチル([2−({[3−(トリメトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル])アンモニウム6フッ化リン酸塩、トリメチル([2−({[3−(トリメトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル])アンモニウム4フッ化ホウ酸塩、トリメチル([2−({[3−(トリメトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル])アンモニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロフォスフェート塩、
トリメチル([2−({[3−(トリエトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル])アンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド塩、トリメチル([2−({[3−(トリエトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル])アンモニウム6フッ化リン酸塩、トリメチル([2−({[3−(トリエトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル])アンモニウム4フッ化ホウ酸塩、トリメチル([2−({[3−(トリエトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル])アンモニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロフォスフェート塩、
トリメチル([2−({[3−(メチルジメトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル])アンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド塩、トリメチル([2−({[3−(メチルジメトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル])アンモニウム6フッ化リン酸塩、トリメチル([2−({[3−(メチルジメトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル])アンモニウム4フッ化ホウ酸塩、トリメチル([2−({[3−(メチルジメトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル])アンモニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロフォスフェート塩、
トリメチル([2−({[3−(メチルジエトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル])アンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド塩、トリメチル([2−({[3−(メチルジエトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル])アンモニウム6フッ化リン酸塩、トリメチル([2−({[3−(メチルジエトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル])アンモニウム4フッ化ホウ酸塩、トリメチル([2−({[3−(メチルジエトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル])アンモニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロフォスフェート塩、
トリメチル([2−({[3−(エチルジメトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル])アンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド塩、トリメチル([2−({[3−(エチルジメトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル])アンモニウム6フッ化リン酸塩、トリメチル([2−({[3−(エチルジメトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル])アンモニウム4フッ化ホウ酸塩、トリメチル([2−({[3−(エチルジメトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル])アンモニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロフォスフェート塩、
トリメチル([2−({[3−(エチルジエトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル])アンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド塩、トリメチル([2−({[3−(エチルジエトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル])アンモニウム6フッ化リン酸塩、トリメチル([2−({[3−(エチルジエトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル])アンモニウム4フッ化ホウ酸塩、トリメチル([2−({[3−(エチルジエトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル])アンモニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロフォスフェート塩、
【0057】
1−[2−({[3−(トリメトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル]ピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド塩、1−[2−({[3−(トリメトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル]ピリジニウム6フッ化リン酸塩、1−[2−({[3−(トリメトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル]ピリジニウム4フッ化ホウ酸塩、1−[2−({[3−(トリメトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル]ピリジニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロフォスフェート塩、
1−[2−({[3−(トリエトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル]ピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド塩、1−[2−({[3−(トリエトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル]ピリジニウム6フッ化リン酸塩、1−[2−({[3−(トリエトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル]ピリジニウム4フッ化ホウ酸塩、1−[2−({[3−(トリエトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル]ピリジニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロフォスフェート塩、
1−[2−({[3−(メチルジメトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル]ピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド塩、1−[2−({[3−(メチルジメトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル]ピリジニウム6フッ化リン酸塩、1−[2−({[3−(メチルジメトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル]ピリジニウム4フッ化ホウ酸塩、1−[2−({[3−(メチルジメトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル]ピリジニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロフォスフェート塩、
1−[2−({[3−(メチルジエトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル]ピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド塩、1−[2−({[3−(メチルジエトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル]ピリジニウム6フッ化リン酸塩、1−[2−({[3−(メチルジエトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル]ピリジニウム4フッ化ホウ酸塩、1−[2−({[3−(メチルジエトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル]ピリジニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロフォスフェート塩、
1−[2−({[3−(エチルジメトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル]ピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド塩、1−[2−({[3−(エチルジメトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル]ピリジニウム6フッ化リン酸塩、1−[2−({[3−(エチルジメトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル]ピリジニウム4フッ化ホウ酸塩、1−[2−({[3−(エチルジメトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル]ピリジニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロフォスフェート塩、
1−[2−({[3−(エチルジエトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル]ピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド塩、1−[2−({[3−(エチルジエトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル]ピリジニウム6フッ化リン酸塩、1−[2−({[3−(エチルジエトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル]ピリジニウム4フッ化ホウ酸塩、1−[2−({[3−(エチルジエトキシシリル)プロピル]カルバモイル}オキシ)エチル]ピリジニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロフォスフェート塩、
【0058】
トリメチル({2−[(3−{[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アミノ}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド塩、トリメチル({2−[(3−{[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アミノ}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウム6フッ化リン酸塩、トリメチル({2−[(3−{[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アミノ}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウム4フッ化ホウ酸塩、トリメチル({2−[(3−{[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アミノ}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロフォスフェート塩、
トリメチル({2−[(3−{[3−(トリエトキシシリル)プロピル]アミノ}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド塩、トリメチル({2−[(3−{[3−(トリエトキシシリル)プロピル]アミノ}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウム6フッ化リン酸塩、トリメチル({2−[(3−{[3−(トリエトキシシリル)プロピル]アミノ}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウム4フッ化ホウ酸塩、トリメチル({2−[(3−{[3−(トリエトキシシリル)プロピル]アミノ}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロフォスフェート塩、
トリメチル({2−[(3−{[3−(メチルジメトキシシリル)プロピル]アミノ}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド塩、トリメチル({2−[(3−{[3−(メチルジメトキシシリル)プロピル]アミノ}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウム6フッ化リン酸塩、トリメチル({2−[(3−{[3−(メチルジメトキシシリル)プロピル]アミノ}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウム4フッ化ホウ酸塩、トリメチル({2−[(3−{[3−(メチルジメトキシシリル)プロピル]アミノ}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロフォスフェート塩、
トリメチル({2−[(3−{[3−(メチルジエトキシシリル)プロピル]アミノ}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド塩、トリメチル({2−[(3−{[3−(メチルジエトキシシリル)プロピル]アミノ}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウム6フッ化リン酸塩、トリメチル({2−[(3−{[3−(メチルジエトキシシリル)プロピル]アミノ}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウム4フッ化ホウ酸塩、トリメチル({2−[(3−{[3−(メチルジエトキシシリル)プロピル]アミノ}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロフォスフェート塩、
トリメチル({2−[(3−{[3−(エチルジメトキシシリル)プロピル]アミノ}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド塩、トリメチル({2−[(3−{[3−(エチルジメトキシシリル)プロピル]アミノ}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウム6フッ化リン酸塩、トリメチル({2−[(3−{[3−(エチルジメトキシシリル)プロピル]アミノ}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウム4フッ化ホウ酸塩、トリメチル({2−[(3−{[3−(エチルジメトキシシリル)プロピル]アミノ}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロフォスフェート塩、
トリメチル({2−[(3−{[3−(エチルジエトキシシリル)プロピル]アミノ}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド塩、トリメチル({2−[(3−{[3−(エチルジエトキシシリル)プロピル]アミノ}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウム6フッ化リン酸塩、トリメチル({2−[(3−{[3−(エチルジエトキシシリル)プロピル]アミノ}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウム4フッ化ホウ酸塩、トリメチル({2−[(3−{[3−(エチルジエトキシシリル)プロピル]アミノ}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロフォスフェート塩、
【0059】
トリメチル({2−[(2−メチル−3−{[3−(トリメトキシシリル)プロピル]スルファニル}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド塩、トリメチル({2−[(2−メチル−3−{[3−(トリメトキシシリル)プロピル]スルファニル}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウム6フッ化リン酸塩、トリメチル({2−[(2−メチル−3−{[3−(トリメトキシシリル)プロピル]スルファニル}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウム4フッ化ホウ酸塩、トリメチル({2−[(2−メチル−3−{[3−(トリメトキシシリル)プロピル]スルファニル}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロフォスフェート塩、
トリメチル({2−[(2−メチル−3−{[3−(トリエトキシシリル)プロピル]スルファニル}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド塩、トリメチル({2−[(2−メチル−3−{[3−(トリエトキシシリル)プロピル]スルファニル}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウム6フッ化リン酸塩、トリメチル({2−[(2−メチル−3−{[3−(トリエトキシシリル)プロピル]スルファニル}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウム4フッ化ホウ酸塩、トリメチル({2−[(2−メチル−3−{[3−(トリエトキシシリル)プロピル]スルファニル}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロフォスフェート塩、
トリメチル({2−[(2−メチル−3−{[3−(メチルジメトキシシリル)プロピル]スルファニル}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド塩、トリメチル({2−[(2−メチル−3−{[3−(メチルジメトキシシリル)プロピル]スルファニル}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウム6フッ化リン酸塩、トリメチル({2−[(2−メチル−3−{[3−(メチルジメトキシシリル)プロピル]スルファニル}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウム4フッ化ホウ酸塩、トリメチル({2−[(2−メチル−3−{[3−(メチルジメトキシシリル)プロピル]スルファニル}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロフォスフェート塩、
トリメチル({2−[(2−メチル−3−{[3−(メチルジエトキシシリル)プロピル]スルファニル}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド塩、トリメチル({2−[(2−メチル−3−{[3−(メチルジエトキシシリル)プロピル]スルファニル}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウム6フッ化リン酸塩、トリメチル({2−[(2−メチル−3−{[3−(メチルジエトキシシリル)プロピル]スルファニル}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウム4フッ化ホウ酸塩、トリメチル({2−[(2−メチル−3−{[3−(メチルジエトキシシリル)プロピル]スルファニル}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロフォスフェート塩、
トリメチル({2−[(2−メチル−3−{[3−(エチルジメトキシシリル)プロピル]スルファニル}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド塩、トリメチル({2−[(2−メチル−3−{[3−(エチルジメトキシシリル)プロピル]スルファニル}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウム6フッ化リン酸塩、トリメチル({2−[(2−メチル−3−{[3−(エチルジメトキシシリル)プロピル]スルファニル}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウム4フッ化ホウ酸塩、トリメチル({2−[(2−メチル−3−{[3−(エチルジメトキシシリル)プロピル]スルファニル}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロフォスフェート塩、
トリメチル({2−[(2−メチル−3−{[3−(エチルジエトキシシリル)プロピル]スルファニル}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド塩、トリメチル({2−[(2−メチル−3−{[3−(エチルジエトキシシリル)プロピル]スルファニル}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウム6フッ化リン酸塩、トリメチル({2−[(2−メチル−3−{[3−(エチルジエトキシシリル)プロピル]スルファニル}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウム4フッ化ホウ酸塩、トリメチル({2−[(2−メチル−3−{[3−(エチルジエトキシシリル)プロピル]スルファニル}プロパノイル)オキシ]エチル})アンモニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロフォスフェート塩、
などが挙げられる。
【0060】
本発明に用いる粘着剤ポリマーの共重合組成物の100重量部に対して、帯電防止剤が、(C)前記の式1で表されるイオン性化合物を0.1〜20重量部、さらに好ましくは0.1〜10重量部、含有することが好ましい。
【0061】
前記粘着剤組成物からなる粘着剤層の表面抵抗率が1.0×10+12Ω/□以下であることが好ましい。表面抵抗率が大きいと剥離時に帯電で発生した静電気を逃がす性能に劣るため、表面抵抗率を十分に小さくすることにより、粘着剤層を被着体が剥がす時に発生する静電気に伴って生じる剥離帯電圧が低減され、被着体の電気制御回路等に影響することを抑制することができる。
【0062】
本発明の粘着剤組成物は、粘着剤層を形成する際に粘着剤ポリマーを架橋することが好ましい。架橋をするため、粘着剤組成物が既知の架橋剤を含んでも良く、紫外線(UV)など光架橋で架橋しても良い。架橋剤としては、2官能以上のイソシアネート化合物、2官能以上のエポキシ化合物、2官能以上のアクリレート化合物、金属キレート化合物などが挙げられる。
さらにその他成分としてシランカップリング剤、酸化防止剤、界面活性剤、硬化促進剤、可塑剤、充填剤、硬化遅延剤、加工助剤、老化防止剤などの公知の添加剤を適宜に配合することができる。これらは、単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0063】
本発明の粘着フィルムは、基材フィルムの片面上に、本発明の粘着剤組成物からなる粘着剤層が積層されたものである。本発明の粘着フィルムは、表面保護フィルム、偏光板用の表面保護フィルム、光学用の表面保護フィルム、粘着剤付き光学フィルム、粘着剤付き偏光板などに好適に用いることができる。
粘着剤層の基材フィルムや、粘着面を保護する剥離フィルム(セパレーター)としては、ポリエステルフィルムなどの樹脂フィルム等を用いることができる。
基材フィルムには、樹脂フィルムの粘着剤層が形成された側とは反対面に、シリコーン系、フッ素系の離型剤やコート剤、シリカ微粒子等による防汚処理、帯電防止剤の塗布や練り込み等による帯電防止処理を施すことができる。
剥離フィルムには、粘着剤層の粘着面と合わされる側の面に、シリコーン系、フッ素系の離型剤などにより離型処理が施される。
偏光板用の表面保護フィルムなどの光学用の表面保護フィルムの場合は、基材フィルム及び粘着剤層は、十分な透明性を有することが好ましい。
【0064】
粘着剤付き光学フィルムにおいては、基材フィルムとして、偏光板フィルム、位相差板フィルム、レンズフィルム、位相差板兼用の偏光板フィルム、レンズフィルム兼用の偏光板フィルム等の光学フィルムを用いることができる。
粘着剤付き光学フィルムは、光学フィルムの片面または両面に粘着剤層を積層してなるものであって、画像表示装置のガラス板等との貼り合わせに用いることができる。これらの粘着剤付き光学フィルムは、粘着剤層を介してガラス基板等と貼り合わされて、画像表示装置等に組み込むことができる。粘着剤付き偏光板などの粘着剤付き光学フィルムに用いられる粘着剤層は、十分な透明性を有することが好ましい。
また、基材フィルムとして使用する偏光板は、一般的に、ポリビニルアルコール系偏光子の両面に、トリアセチルセルロース系保護フィルムで挟まれた3層構造を有している。
保護フィルムの表面に、ディスコティック液晶がコートされている偏光板、もしくは、トリアセチルセルロース系フィルムの替わりに、延伸トリアセチルセルロース系フィルム、延伸ポリシクロオレフィン系フィルム、または延伸セルロースアセテートプロピオネートフィルム等で貼り合わされた構造となっている。更に、これらの偏光板フィルムは、液晶表示用パネルの表面基材であるガラス基板に、粘着剤層を介して貼り合わされる。
【0065】
本発明は、式1で表されるイオン性化合物である帯電防止剤を粘着剤に用いることで、帯電防止機能を持たせてさらにガラス板に対する接着力も向上させることが可能になり、接着力や耐久性を向上することができ、従来帯電防止剤とシランカップリング剤を両方併用していた時に比べ低コストで両者の長所を生かすことが可能になり、上記の課題を改善することができる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
【0067】
<アクリル共重合体の製造>
[実施例1]
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを導入して、反応装置内の空気を窒素ガスで置換した。その後、反応装置に2−エチルヘキシルアクリレート100重量部、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート1.5重量部とともに溶剤(酢酸エチル)を100部加えた。その後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を2時間かけて滴下させ、65℃で8時間反応させ、重量平均分子量50万の、実施例1のアクリル共重合体溶液1を得た。
[実施例2〜7及び比較例1〜2]
単量体の組成を各々、表1の記載のようにする以外は、上記の実施例1に用いるアクリル共重合体溶液1と同様にして、実施例2〜7及び比較例1〜2に用いるアクリル共重合体溶液を得た。
【0068】
<粘着剤組成物、表面保護フィルム、及び偏光板フィルムの製造>
[実施例1]
上記のとおり製造したアクリル共重合体溶液1(そのうちアクリル共重合体が100重量部)に対して、帯電防止剤C−1(表3および表4参照)1.0重量部、コロネートHX(ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)化合物のイソシアヌレート体)1.5重量部を加えて撹拌混合して実施例1の粘着剤組成物を得た。この粘着剤組成物をシリコーン樹脂コートされたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる剥離フィルムの上に塗布後、90℃で乾燥することによって溶剤を除去し、粘着剤層の厚さが25μmである粘着シートを得た。
その後、一方の面に帯電防止及び防汚処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの帯電防止及び防汚処理された面とは反対の面に粘着シートを転写させ、「帯電防止及び防汚処理されたPETフィルム/粘着剤層/剥離フィルム(シリコーン樹脂コートされたPETフィルム)」の積層構成を有する実施例1の表面保護フィルムを得た。
[実施例2〜4及び比較例1〜2]
添加剤の組成を各々、表1の記載のようにする以外は、上記の実施例1の表面保護フィルムと同様にして、実施例2〜4及び比較例1〜2の表面保護フィルムを得た。
[実施例5〜7]
添加剤の組成を各々、表1の記載のようにし、転写する基材を偏光板にした以外は、上記の実施例1と同様にして、「偏光板/粘着剤層/剥離フィルム(シリコーン樹脂コートされたPETフィルム)」の積層構成を有する、実施例5〜7の偏光板フィルムを得た。
【0069】
表1において、各成分の配合比は、アルキルアクリレートモノマーの合計(共重合性ビニルモノマーを用いた場合は、アルキルアクリレートモノマーと共重合性ビニルモノマーの合計)を100重量部として求めた重量部の数値を括弧で囲んで示す。また、表1に用いた各成分の略記号の化合物名を、表2に示す。また、表1に用いた帯電防止剤の化学式を、表3に示す。
なお、コロネート(登録商標)HX、同HL及び同L−45は日本ポリウレタン工業株式会社の商品名であり、TETRAD(登録商標)−Xは三菱ガス化学株式会社の商品名であり、デュラネート(登録商標)24A―100は旭化成ケミカルズ株式会社の商品名である。
【0070】
【表1】

【0071】
【表2】

【0072】
【表3】

【0073】
<試験方法及び評価>
実施例1〜4及び比較例1〜2の表面保護フィルム、及び実施例5〜7の偏光板フィルムを、23℃、50%RHの雰囲気下で7日間エージングした後、剥離フィルム(シリコーン樹脂コートされたPETフィルム)を剥がして、粘着剤層を表出させたものを、表面抵抗率の測定試料とした。
さらに、この粘着剤層を表出させた表面保護フィルム、及び偏光板フィルムを、粘着剤層を介して無アルカリガラス板の表面に貼り合わせ、1日放置した後、50℃、5気圧、20分間オートクレーブ処理し、室温でさらに12時間放置したものを、粘着力の測定試料とした。
また、この粘着剤層を表出させた表面保護フィルム、及び偏光板フィルムを、粘着剤層を介して無アルカリガラス板の表面に貼り合わせ、耐久性及びリワーク性の測定試料とした。
【0074】
<表面抵抗率>
エージングした後、無アルカリガラス板に貼り合わせる前に、剥離フィルム(シリコーン樹脂コートされたPETフィルム)を剥がして粘着剤層を表出し、抵抗率計ハイレスタUP−HT450(三菱化学アナリテック製)を用いて、粘着剤層の表面抵抗率を測定した。
【0075】
<耐久性>
上記で得られた耐久性の測定試料を、60℃、90%RHの雰囲気下に250時間放置後、室温に取り出し、被着体からの剥がれ、発泡等を目視にて確認した。評価基準は、剥がれ・発泡が全く確認されない場合を「○」、剥がれ・発泡が僅かに確認された場合を「△」、剥がれ・発泡が明確に確認された場合を「×」と評価した。
【0076】
<リワーク性>
上記で得られたリワーク性の測定試料を、70℃、DRYの雰囲気下に24時間放置後、室温に取り出し、表面保護フィルム及び偏光板フィルムを無アルカリガラス板から剥がした際の、被着体表面の糊残りを目視にて確認した。評価基準は、糊残りが全く確認されない場合を「○」、糊残りが僅かに確認された場合を「△」、糊残りが明確に確認された場合を「×」と評価した。
【0077】
<ガラス板に対する粘着力>
上記で得られた粘着力の測定試料(25mm幅の表面保護フィルム、及び偏光板フィルムを、無アルカリガラス板の表面に貼り合わせたもの)を、180°方向に引張試験機を用いて0.3m/minの引張速度において剥がして測定した剥離強度を粘着力とした。
【0078】
表4に、評価結果を示す。なお、表面抵抗率は、「m×10+n」を「mE+n」とする方式(ただし、mは任意の実数値、nは正の整数)により表記した。
【0079】
【表4】

【0080】
実施例1〜4の表面保護フィルム、及び実施例5〜7の偏光板フィルムは、表面抵抗率が1.0×10+12Ω/□以下であり、適度な粘着力を備えていた。すなわち、帯電防止性や被着体に対するリワーク性などの欠点などの課題を改善することができるものとなった。
比較例1〜2の表面保護フィルムは、表面抵抗率が1.0×10+12Ω/□を超えており、帯電防止性に問題があるものとなった。さらに比較例1,2の表面保護フィルムは、耐久性や被着体に対するリワーク性にも問題があるものとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電防止剤を含有する粘着剤組成物であって、(メタ)アクリル系ポリマーを主成分とし、前記帯電防止剤として、式1で示されるイオン性化合物を含有し、該イオン性化合物が、加水分解性のケイ素含有基を含む有機カチオンを有することを特徴とする粘着剤組成物。
【化1】

(ただし、式1において、Zはカチオンを示し、Xはアニオンを示す。)
【請求項2】
前記イオン性化合物のカチオンZは、式2で示される1種または2種以上のアルコキシシリル基含有カチオンであることを特徴とする請求項1に記載の粘着剤組成物。
【化2】

(ただし、式2において、
およびRは、互いに同一または異なるアルキル基を表し、
nは、1〜3の整数を表し、
は、炭素数1から10のアルキレン基を表し、
Eは、NHまたはSを表し、
は、単結合または炭素数1から10のアルキレン基を表し、
は、炭素数1から10のアルキレン基を表し、
は、アンモニウム基、ピリジニウム基、ピロリジニウム基、イミダゾリウム基、グアニジニウム基、イソウロニウム基、チオウロニウム基、ピペリジニウム基、ピラゾリウム基、モルホリニウム基、ホスホニウム基、スルホニウム基から選択される1価のカチオン基を示し、該カチオン基は無換基でも置換基を有してもよい。)
【請求項3】
前記加水分解性のケイ素含有基が、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、エチルジメトキシシリル基、エチルジエトキシシリル基から選択されるアルコキシシリル基であることを特徴とする請求項1または2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル系ポリマーが、(A)アルキル基の炭素数がC1〜C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種と、(B)水酸基および/またはカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種と、からなる共重合組成物であり、
前記共重合組成物の100重量部に対して、前記帯電防止剤が、(C)前記の式1で示されるイオン性化合物を0.1〜20重量部、を必須成分として含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
前記(メタ)アクリル系ポリマーが、(A)アルキル基の炭素数がC1〜C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種と、(B′)ビニル基を有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種と、からなる共重合組成物であり、
前記共重合組成物の100重量部に対して、前記帯電防止剤が、(C)前記の式1で示されるイオン性化合物を0.1〜20重量部、を必須成分として含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
前記粘着剤組成物からなる粘着剤層の表面抵抗率が1.0×10+12Ω/□以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
前記イオン性化合物のアニオンXは、六フッ化リン酸アニオン、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン、トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロフォスフェートアニオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン、チオシアン酸アニオン、アルキルベンゼンスルホン酸アニオン、過塩素酸アニオン塩、四フッ化ホウ素酸アニオンからなる無機もしくは有機のアニオン群から選択した1種または2種以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項8】
基材の片面上に、請求項1〜7のいずれかに記載の粘着剤組成物が積層されたことを特徴とする粘着フィルム。
【請求項9】
基材の片面上に、請求項1〜7のいずれかに記載の粘着剤組成物からなる粘着剤層が積層されたことを特徴とする粘着フィルム。
【請求項10】
請求項8または9に記載の粘着フィルムが用いられた、表面保護フィルム。
【請求項11】
請求項8または9に記載の粘着フィルムが用いられた、偏光板用の表面保護フィルム。
【請求項12】
請求項8または9に記載の粘着フィルムが用いられた、光学用の表面保護フィルム。
【請求項13】
光学フィルムの少なくとも一方の面に、請求項1〜7のいずれかに記載の粘着剤組成物からなる粘着剤層が積層されている粘着剤付き光学フィルム。
【請求項14】
光学フィルムが偏光板である請求項13に記載の粘着剤付き光学フィルム。
【請求項15】
請求項13または14に記載の粘着剤付き光学フィルムが、前記粘着剤層を介して貼り合わされてなる画像表示装置。

【公開番号】特開2013−47292(P2013−47292A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185846(P2011−185846)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000224101)藤森工業株式会社 (292)
【Fターム(参考)】