説明

帯電防止部材および入力装置

【課題】静電気障害防止および帯電に伴う汚れ防止などに好適な帯電防止部材およびこの帯電防止部材を適用した入力装置を提供する。
【解決手段】絶縁基板28と、絶縁基板28上に配置された島状の導電層130と、絶縁基板28上に、導電層130の間に配置された中間絶縁層120とを備える帯電防止部材およびこの帯電防止部材を適用した入力装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止部材および入力装置に関し、特に、タッチパネルや各種コントロールスイッチなどの電磁波シールドおよび静電気障害防止に適用可能な帯電防止部材および入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
静電容量方式の入力装置は、機械的な接触部分が無く耐久性に優れるため、タッチパネルや、自動車ハンドル上に設けられたコントロールスイッチなどに広く使用されている。
【0003】
液晶表示素子の表面に設けられたタッチパネルを有する端末として、例えば、液晶表示素子の表示エリア内に数字キーを表示し、タッチパネルで各数字キーの範囲に対応する入力領域に指が触れた場合、当該キーが押圧されたと判断する表示―入力システムは、広く携帯端末、固定端末などにおいて採用されている。
【0004】
これらのタッチパネル用の入力装置としては、静電容量方式の入力装置が、可動部や電気的接点が存在しないため、また耐久性・信頼性が高いため、広く使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009‐301830号公報
【特許文献2】特開2010‐10612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の静電容量方式の入力装置は、図10(a)に示すように、絶縁基材10aと、絶縁基材10a上に配置された電極12aと、電極12a上に配置された誘電層14aとを備える。静電容量方式の入力装置は、図10(a)に示すように、絶縁基材10a上に設けられた電極12aと、指15aなどの人体が誘電層14aを介して容量結合することで動作する。
【0007】
一方、図10(b)に示すように、液晶基板20a上に配置された第1電極22aと、第1電極22a上に配置された絶縁基材24aと、絶縁基材24a上に配置された第2電極26aと、第2電極26a上に配置された誘電層28aと、誘電層28a上に配置された導電フィルム30aとを備えると、指15aは、導電フィルム30aを介して広く電極26aと容量結合を生じてしまい、入力装置は、正常に動作しなくなってしまう。このため、静電気によるシステムの故障・誤動作などの静電気障害から電子機器を保護するために、広く採用されている導電フィルムによる被覆は、静電容量方式の入力装置では、適用が困難であった。
【0008】
また、静電気による汚れの吸着を防止するために使用される半導電塗料の塗布も、入力操作性および帯電防止特性を両立させるためには、適用が困難であった。特に、π共役系導電性ポリマーなどの電子伝導系の塗料では、その表面抵抗を精密に制御する必要があり、適用が著しく困難であった。
【0009】
本発明の目的は、静電気障害防止および帯電に伴う汚れ防止などに好適な帯電防止部材および当該帯電防止部材を適用した入力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明の一態様によれば、絶縁基板と、前記絶縁基板上に配置された島状の導電層と、前記絶縁基板上に、前記導電層の間に配置された中間絶縁層とを備える帯電防止部材が提供される。
【0011】
本発明の他の態様によれば、表示エリア内に入力領域を表示する表示部と、前記表示部上に配置された静電容量方式のタッチパネルと、前記静電容量方式のタッチパネルの入力面側に配置された帯電防止部材とを備え、前記帯電防止部材は、絶縁基板と、前記絶縁基板上に配置された島状の導電層と、前記絶縁基板上に、前記導電層の間に配置された中間絶縁層とを備える入力装置が提供される。
【0012】
本発明の他の態様によれば、基板と、前記基板上に配置されたタッチパネルと、前記タッチパネル上に配置された絶縁基板と、前記絶縁基板上に配置された島状の導電層と、絶縁基板上に、前記導電層の間に配置された中間絶縁層と、前記導電層および前記中間絶縁層上に配置された絶縁層とを備える入力装置が提供される。
【0013】
本発明の他の態様によれば、基板と、基板上に配置された絶縁基板と、前記絶縁基板上に配置された島状の導電層と、絶縁基板上に、前記導電層の間に配置された中間絶縁層と、前記導電層および前記中間絶縁層上に配置された絶縁層と、前記絶縁層上に配置されたタッチパネルとを備える入力装置が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、静電気障害防止および帯電に伴う汚れ防止などに好適な帯電防止部材および当該帯電防止部材を適用した入力装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る入力装置の模式的断面構造図。
【図2】本発明の実施の形態の変形例に係る入力装置の模式的断面構造図。
【図3】(a)本発明の実施の形態に係る入力装置に適用可能な帯電防止層の模式的平面パターン構成図、(b)図3(a)のA部分の拡大図。
【図4】(a)本発明の実施の形態に係る入力装置に適用可能な帯電防止層の別の模式的平面パターン構成図、(b)図4(a)のB部分の拡大図。
【図5】本発明の実施の形態に係る入力装置であって、液晶表示素子の表面に設けられたタッチパネルを有する携帯端末の例。
【図6】本発明の実施の形態に係る帯電防止部材において、レーザ照射により中間絶縁層を形成する方法を説明する構成例。
【図7】(a)本発明の実施の形態に係る帯電防止部材の形成方法において、レーザ照射により中間絶縁層を形成する方法を説明する模式的平面パターン構成例、(b)図7(a)のレーザ軌跡の模式的平面パターン拡大図。
【図8】本発明の実施の形態に係る帯電防止部材の形成方法において、熱プロセスにより中間絶縁層を形成する方法を説明する模式的断面構造図。
【図9】(a)比較例に係る帯電防止部材の帯電防止性能を説明する特性例、(b)本発明の実施の形態に係る帯電防止部材の帯電防止性能を説明する特性例、(c)本発明の実施の形態に係る帯電防止部材の帯電防止性能を説明するための模式的断面構造図。
【図10】(a)従来の入力装置の模式的断面構造図、(b)別の従来の入力装置の模式的断面構造図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0017】
又、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施の形態は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の実施の形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0018】
本発明の実施の形態に係る入力装置の模式的断面構造は、図1に示すように表される。また、本発明の実施の形態の変形例に係る入力装置の模式的断面構造は、図2に示すように表される。
【0019】
実施の形態に係る入力装置1は、図1に示すように、液晶基板20と、液晶基板20上に粘着層22を介して配置されたタッチパネル24と、タッチパネル24上に粘着層26を介して配置された絶縁基板28と、絶縁基板28上に配置された島状の導電層130と、絶縁基板28上に、導電層130の間に配置された中間絶縁層120と、導電層130および中間絶縁層120上に配置された絶縁層32とを備える。ここで、例えば、導電層130の幅はD1で表され、中間絶縁層120の幅はD0で表されている。
【0020】
実施の形態に係る入力装置1においては、図1に示すように、液晶基板20上に粘着層22を介してタッチパネル24が配置され、このタッチパネル24上に粘着層26を介して帯電防止部材2が配置されている。
【0021】
実施の形態に係る入力装置1は、指150を絶縁層32の表面上に接触して、指150とタッチパネル24との間の静電容量変化を検出する静電容量方式のタッチパネルを適用されている。静電容量変化は、タッチパネル24の周囲に配置された回路系によって、検出され、信号処理される。
【0022】
実施の形態の変形例に係る入力装置1は、図2に示すように、有機EL基板30と、有機EL基板30上に粘着層22を介して配置された絶縁基板28と、絶縁基板28上に直接配置された島状の導電層130と、絶縁基板28上に、導電層130の間に配置された中間絶縁層120と、導電層130および中間絶縁層120上に配置された絶縁層32と、絶縁層32上に粘着層26を介して配置されたタッチパネル24とを備える。同様に、例えば、導電層130の幅はD1で表され、中間絶縁層120の幅はD0で表されている。
【0023】
実施の形態の変形例に係る入力装置1においては、図2に示すように、有機EL基板30上に粘着層22を介して帯電防止部材2が配置され、帯電防止部材2上に粘着層26を介してタッチパネル24が配置されている。
【0024】
実施の形態の変形例に係る入力装置1は、指150をタッチパネル24の表面上に接触して、指150とタッチパネル24との間の静電容量変化を検出する静電容量方式のタッチパネルを適用されている。静電容量変化は、タッチパネル24の周囲に配置された回路系によって、検出され、信号処理される。
【0025】
ここで、タッチパネル24には、静電容量方式のタッチパネルを適用することができる。静電容量方式のタッチパネル24としては、表面型静電容量方式、投影型静電容量方式のいずれも適用可能である。また、表面型静電容量方式のタッチパネルの構造としては、表面キャパシタ型、インナーキャパシタ型のいずれも適用可能である。また、投影型静電容量方式のタッチパネルの構造としては、ITOグリッド型、ワイヤセンサ型のいずれも適用可能である。図1および図2においては、タッチパネル24の詳細構造は省略している。
【0026】
また、実施の形態に係る入力装置1においては、図1に示すように、液晶基板20を用いたが、図2と同様に、有機EL基板30を用いても良い。
【0027】
同様に、実施の形態の変形例に係る入力装置1においては、図2に示すように、有機EL基板30を用いたが、図1と同様に、液晶基板20を用いても良い。
【0028】
図1および図2において、310、311、312、313、314は、表示エリアを模式的に示している。
【0029】
(帯電防止部材)
本発明の実施の形態に係る入力装置1に適用される帯電防止部材2は、図1若しくは図2中に示されるように、絶縁基板28と、絶縁基板28上に配置された島状の導電層130と、絶縁基板28上に、導電層130の間に配置された中間絶縁層120とを備える。
【0030】
中間絶縁層120は、格子状に形成されていても良い。
【0031】
また、中間絶縁層120は、導電層130に対する熱プロセスを経て形成されていても良い。
【0032】
また、この熱プロセスは、レーザ光の照射により行われていても良い。
【0033】
また、この熱プロセスは、通電発熱により行われていても良い。
【0034】
また、導電層130と中間絶縁層120は、透明であることが望ましい。
【0035】
また、絶縁基板28は、透明であることが望ましい。
【0036】
また、絶縁基板28は、例えば、ポリエステルで形成されていても良い。
【0037】
(平面パターン構成)
導電層130の島状領域を囲む中間絶縁層120のパターンの形状は、特に限定されるものではないが、例えば、表面型の静電容量方式の入力装置1に、実施の形態に係る帯電防止部材を適用する場合、設計、挙動の予測などから、X−Y方向に中間絶縁層120のパターンが直交する格子状、2次元平面を最小の長さの正六角形が例示される。この他、三角形やランダムな海島構造などを適用しても良い。
【0038】
実施の形態に係る入力装置1に適用可能な帯電防止部材2の模式的平面パターン構成の一例は、図3(a)に示すように表され、図3(a)のA部分の拡大図は、図3(b)に示すように表される。図3においては、中間絶縁層120のパターンが2次元平面を最小の長さの正六角形が例示されている。
【0039】
実施の形態に係る入力装置1に適用可能な帯電防止部材2の模式的平面パターン構成の別の例は、図4(a)に示すように表され、図4(a)のB部分の拡大図は、図4(b)に示すように表される。図4においては、中間絶縁層120のパターンがX−Y方向に直交する格子状に例が示されている。
【0040】
図3および図4のいずれにおいても、帯電防止層140の周辺部は、外部導電層160を形成している。中間絶縁層120によって囲まれている島状の導電層130は、外部導電層160とは絶縁されている。図3(b)および図4(b)に示すように、導電層130の幅はD1で表され、中間絶縁層120の幅はD0で表されている。
【0041】
(携帯端末の例)
実施の形態に係る入力装置1であって、液晶表示素子(液晶基板20)の表面に設けられたタッチパネル24を有する携帯端末の例は、図5に示すように表される。図5の詳細断面構造は、図1に示した通りである。図1において、310、311、312、313、314は、表示エリアを模式的に示している。
【0042】
すなわち、実施の形態に係る入力装置1は、表示エリア310、311、312、313、314…内に入力領域(41・42・43…)或いは入力表示領域40を表示する表示部(20)と、表示部(20)上に配置された静電容量方式のタッチパネル24と、静電容量方式のタッチパネル24の入力面側に配置された帯電防止部材2とを備え、帯電防止部材2は、絶縁基板28と、絶縁基板28上に配置された島状の導電層130と、絶縁基板28上に、導電層130の間に配置された中間絶縁層120とを備える。
【0043】
図5においては、液晶表示素子(液晶基板20)の表面に設けられたタッチパネル24を有する端末として、例えば、液晶表示素子の表示エリア310、311、312、313、314…内に数字キー41・42・43…を表示し、タッチパネル24で各数字キー41・42・43…の範囲に対応する入力領域(41・42・43…)に指が触れた場合、当該数字キー41・42・43…が押圧されたと判断するの携帯端末の例が示されている。
【0044】
島状の導電層130の形状は、静電容量方式のタッチパネル24が使用されるシステムで要求されるタッチパネル24の分解能よりも細かくすることが望ましい。
【0045】
すなわち、タッチパネル24を液晶などの表示装置の上部に搭載し、液晶素子上にキーボードを表示して、これに対応する入力を行う場合、島状の導電層130の配列の大きさは、表示されるキーボードと同じピッチか、好ましくはキーボードのピッチの1/2以下にすることが好ましい。ここで、図5に示すように、表示される入力領域(キーボード)の幅はW1で示され、分離領域の幅はW0で示されている。また、図1に示すように、島状の導電層130の幅はD1で表され、中間絶縁層120の幅は、D0で表されることから、W1+W0>=D1+D0若しくは、(W1+W0)/2>=D1+D0にすることが好ましい。
【0046】
(製造方法)
実施の形態に係る帯電防止部材2の製造方法は、以下の通りである。
【0047】
絶縁基板28上に導電層130を形成した導電性基板を用意し、この導電層130を除去若しくは変質させることで、絶縁化した中間絶縁層120を形成する。
【0048】
絶縁基板28としては、各種セラミック、ガラス、ガラスエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂などが適用可能である。特に、実施の形態に係る帯電防止部材2を透明タッチパネルに適用する場合には、透明性に優れた、ガラス或いはポリエチレンテレフタレートフィルムを用いると良い。
【0049】
導電層130としては、例えば、銀(Ag)、アルミニウム(Al)或いはニッケル(Ni)などに代表される金属を用いることができる。或いは、ITOなどに代表される金属酸化物系の導電性材料の蒸着膜を用いることもできる。また、チオフェン/アニリン/ピロールなどのπ共役高分子系の導電性材料の重合体を用いることができる。これらの重合体は、塗布、印刷その他の方法で形成することができる。
【0050】
実施の形態に係る帯電防止部材2を透明タッチパネルに適用する場合には、絶縁基板28上に導電層130を形成した導電性基板そのものを透明なものとする必要がある。ここで、「透明」とは、全光線透過率(JIS K 7361−1)50%以上であると定義される。
【0051】
(製造例1)
―銀蒸着導電フィルム(導電基板)の作製―
厚さ約188μmの透明なポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績製A4300、全光線透過率約93.5%、ヘイズ度約0.68%)の片面にシリコーンアクリルのハードコート層を形成したものを用意し、このハードコート層とは反対の面に、マグネトロンスパッタ装置により、厚さ約60nmの酸化亜鉛(ZnO)膜を形成した。
【0052】
次に、このZnO膜の表面に、マグネトロンスパッタ装置を用いて、厚さ約27nmの銀膜を形成した。
【0053】
さらに、この銀膜の表面に、上記のZnO膜と同様にして、厚さ約60nmのZnO膜を形成した。
【0054】
この結果、この銀蒸着導電フィルムの透明導電層の表面抵抗は、95Ω/□、全光線透過率(JIS K 7361−1)は、約85%であった。
【0055】
(製造例2)
―ポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)水溶液の調整―
14.2gの3,4−エチレンジオキシチオフェンと、36.7gの製造例1で得られたポリエチレンスルホン酸を2000mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合した。
【0056】
これにより得られた混合溶液を20℃に保ち、掻き混ぜながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64gの過硫酸アンモニウムと8.0gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくり添加し、3時間攪拌して反応させた。
【0057】
得られた反応液に2000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法を用いて、約2000mlの液を除去した。この操作を3回繰り返した。
【0058】
さらに、得られた処理液に、2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて、約2000mlの液を除去した。この操作を5回繰り返し、約1.2質量%の青色のポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT−PSS)水溶液を得た。
【0059】
次に、銀コロイド粒子(ナノサイズ社製、AG321、エチレングリコール溶剤、濃度50質量%)6.0g、ガーリック酸1.8g、4,4’−(3−エチルオキセタン−3−イルメチルオキシメチル)ビフェニル(宇部興産社製、OXBP)4.2g(π共役系導電性高分子とポリアニオンの合計100質量%に対して、4,4’−(3−エチルオキセタン−3−イルメチルオキシメチル)ビフェニル63.9質量%)、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド20g、サンエイドSI−110L(三新化学社製)0.092g、エタノール800gを混合し、攪拌した。これにより得た混合溶液に、PEDOT−PSS水溶液600gを添加し、ホモジナイザ分散処理して、導電性高分子溶液Aを得た。
【0060】
導電性高分子溶液Aを、ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績製A4300、厚さ約188μm、全光線透過率約93.5%、ヘイズ度約0.68%)に、バーコーターにより塗布し、120℃、2分間、熱風により乾燥して、導電性塗布膜を得た。
【0061】
―中間絶縁層のパターン形成―
実施の形態に係る帯電防止部材2において、島状の導電層130は、スクリーン印刷その他の方法で形成しても良い。
【0062】
実施の形態に係る帯電防止部材2を透明タッチパネルに適用する場合には、透明性が要求されるため、絶縁基板28上の導電層130の一部を除去または変質させることで、中間絶縁層120で囲まれる島状の導電層130を形成する。
【0063】
導電層130の一部の除去方法としては、サンドブラストやエッチングを適用可能である。また、導電層130の一部の変質方法としては、レーザ光の照射法(図6)もしくは、先端の尖ったプローブ針620(図8)による通電などの熱プロセスを伴う手法を適用可能である。
【0064】
実施の形態に係る帯電防止部材2において、レーザ照射法により中間絶縁層120を形成する方法を説明する構成例は、図6に示すように、レーザ発生装置510と、レーザ発生装置510から発生されたレーザ光線520を反射するガルバノミラー540と、ガルバノミラー540によって反射されたレーザ光線を集光する凸レンズ530とを備える。
【0065】
凸レンズ530によって焦点501に集光されたレーザ光線を、図6に示すように、実施の形態に係る帯電防止部材2の表面上の集光エリア501aにおいて照射する。
【0066】
(実施例1)
キーエンス社のレーザ加工機MDV―9920YV04(1064nmのパルス状レーザ、ガルバノミラー、焦点距離300mm)を用い、製造例1の導電性フィルムに150×150mmのエリアに幅0.1mm、間隔1mmの格子状絶縁パターンで囲まれた導電層130のパターンを形成した。
【0067】
このときの照射条件は、繰り返し周波数70kHz、走査速度6000mm/s、出力50%であった。
【0068】
(実施例2)
実施の形態に係る帯電防止部材2の形成方法において、先端の尖ったプローブ針620(図8)による通電などの熱プロセスを伴う手法により中間絶縁層120を形成する方法を説明する模式的平面パターン構成例は、図7(a)に示すように表され、図7(a)のレーザ軌跡の模式的平面パターンの拡大図は、図7(b)に示すように表される。
【0069】
また、実施の形態に係る帯電防止部材2の形成方法において、先端の尖ったプローブ針620(図8)による通電などの熱プロセスにより中間絶縁層120を形成する方法を説明する模式的断面構造は、図8に示すように表される。
【0070】
製造例2によって作製されたA4版大の導電性フィルムの端に、幅5mmの電極600をAgペーストで形成し、この電極600を接地した。
【0071】
次に、先端の尖ったプローブ針620に電圧300Vの電源を接続し、筆圧30gfで描画を行い、格子状の絶縁パターンS1〜S15を形成した。このとき、絶縁パターンS1〜S15の描画は、電極600と直交する方向のパターンを先に中央から絶縁パターンS1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、S8、S9、S10の順に描画し、次に、電極600と平行なパターンを電極600から遠い順に、絶縁パターンS11、S12、S13、S14、S15の順に描画した。
【0072】
絶縁パターンS1〜S15を形成後、紫外線硬化アクリル樹脂塗料を80×150mmの範囲に塗布することで、中間絶縁層120を見えなくする。
【0073】
(帯電防止性能)
特に、静電気障害の原因となる1000V以上の電荷が迅速に減衰するのに対して、静電容量方式の入力装置の動作領域である100V以下では、表面抵抗が実質的に絶縁状態になるために、レーザ光線の照射若しくは、先端の尖ったプローブ針620による通電等の熱プロセスを使用した絶縁パターン形成が静電容量方式の入力装置用の帯電防止部材2の形成方法として好適である。
【0074】
帯電防止部材の帯電防止性能を説明するための模式的断面構造は、図9(c)に示すように表される。帯電防止部材の帯電防止性能は、電圧VHの高電圧と接地電圧を、絶縁基板28上に配置された帯電防止層140の両端に印加した際の過渡応答によって求めることができる。
【0075】
中間絶縁層120を備えない比較例に係る帯電防止層140の帯電防止性能を説明する特性例は、図9(a)に示すように表される。帯電防止層140が中間絶縁層120を備えないことから、帯電防止層140は、導電層130のみで形成されている。この場合、帯電防止層140の帯電防止性能は、電圧VHの高電圧状態から急激に減衰するが、時刻t1で電圧V1に減衰後は、時刻t2以降まで、略一定値V1の値を維持する。例えば、VHの値は5000Vに対して、電圧V1の値は、例えば、100V程度である。これは、特に、静電気障害の原因となる1000V以上の電荷が迅速に減衰するのに対して、静電容量方式の入力装置の動作領域である100V以下では、導電層130の表面抵抗が実質的に絶縁状態となり、インピーダンスは、キャパシタ状態となるためである。
【0076】
これに対して、実施の形態に係る帯電防止部材2の帯電防止性能を説明する特性例は、図9(b)に示すように、時刻tLにおいて、V1よりも極めて低い値VLまで、減衰する。ここで、VLの値は、例えば、タッチパネルの動作電圧である5V〜10V以下である。これは、中間絶縁層120によって囲まれた導電層130からなる帯電防止層140が、VHの値5000Vから迅速に減衰し、かつ、静電容量方式の入力装置の動作領域である100V以下では、導電層130間の中間絶縁層120間で、電荷が急激に移動するからである。
【0077】
実施例1によって形成された帯電防止部材2を、表面型静電容量方式のタッチパネル24に搭載し操作を行った。その結果、図1に示すように、銀蒸着面を操作面(指150で接触する面)側に配置した構造、図2に示すように、銀蒸着面をタッチパネル24面側に配置した構造のいずれの場合にも、配列ピッチW1+W0=5mmのテンキー入力が問題なく操作可能であった。また、配列ピッチW1+W0=10mmのメニュー選択が問題なく操作可能であった。
【0078】
同様に、図4(a)に示される格子状絶縁パターンのピッチ(D1+D0)を、5mmとした所、帯電防止性能として10%までの減衰時間は、0.07秒であった。この帯電防止部材2を配列ピッチW1+W0=5mmのテンキー入力で入力操作を実施した所、入力にやや不安定な面は見られたが、略通常の入力操作が可能であった。
【0079】
実施例2によって形成された帯電防止部材2の帯電防止性能を測定した所、10%までの減衰時間は、0.18秒であった。
【0080】
実施例2によって形成された帯電防止部材2を、表面型静電容量方式のタッチパネル24に搭載し操作を行った。その結果、配列ピッチW1+W0=5mmのテンキー入力は、正常に操作できなかったが、配列ピッチW1+W0=10mmのメニュー入力は、入力操作が可能であった。
【0081】
(比較例)
厚さ188μmのPETフィルムの帯電防止性能を測定した所、30秒経過しても10%まで減衰しなかった。また、このフィルムを携帯端末上に載置し操作したところ、入力操作が不安定であった。
【0082】
また、製造例1.2のフィルムに絶縁処理を行わない(中間絶縁層120を形成しない)で、帯電防止層140を形成し、この帯電防止層140を携帯端末上に載置し、入力操作を実行したところ、入力操作は全く実施できなかった。
【0083】
本発明によれば、静電気障害防止および帯電に伴う汚れ防止などに好適な帯電防止部材および当該帯電防止部材を適用した入力装置を提供することができる。
【0084】
上記のように、本発明は実施の形態およびその変形例によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面は例示的なものであり、この発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0085】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態などを含む。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の帯電防止部材および当該帯電防止部材を適用した入力装置は、タッチパネルや各種コントロールスイッチなどの電磁波シールドおよび静電気障害防止に有効であることから、透明エレクトロニクス分野、照明分野、ハイブリッド/電気自動車分野など幅広い分野において適用可能である。
【符号の説明】
【0087】
1…入力装置
2…帯電防止部材
20…液晶基板
22、26…粘着層
24…タッチパネル
28…絶縁基板
30…有機EL基板
32…絶縁層
40…入力表示領域
41、42、43…入力領域(数字キー)
120…中間絶縁層
130…導電層
140…帯電防止層
150…指
160…外部導電層
310、311、312、313、314…表示エリア
501…焦点
501a…集光エリア
510…レーザ発生装置
520…レーザ光線
530…凸レンズ
540…ガルバノミラー
600…電極
620…プローブ針
S1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、S8、S9、S10、S11、S12、S13、S14、S15…絶縁パターン
D1…導電層の幅
D0…絶縁層の幅
W1…入力領域の幅
W0…分離領域の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、
前記絶縁基板上に配置された島状の導電層と、
前記絶縁基板上に、前記導電層の間に配置された中間絶縁層と
を備えることを特徴とする帯電防止部材。
【請求項2】
前記中間絶縁層は、格子状に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の帯電防止部材。
【請求項3】
前記中間絶縁層は、前記導電層に対する熱プロセスを経て形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の帯電防止部材。
【請求項4】
前記熱プロセスは、レーザ光の照射により行われたことを特徴とする請求項3に記載の帯電防止部材。
【請求項5】
前記熱プロセスは、通電発熱により行われたことを特徴とする請求項3に記載の帯電防止部材。
【請求項6】
前記導電層と前記中間絶縁層は、透明であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の帯電防止部材。
【請求項7】
前記絶縁基板は、透明であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の帯電防止部材。
【請求項8】
前記絶縁基板は、ポリエステルで形成されたことを特徴とする請求項1に記載の帯電防止部材。
【請求項9】
表示エリア内に入力領域を表示する表示部と、
前記表示部上に配置された静電容量方式のタッチパネルと、
前記静電容量方式のタッチパネルの入力面側に配置された帯電防止部材と
を備え、
前記帯電防止部材は、
絶縁基板と、
前記絶縁基板上に配置された島状の導電層と、
前記絶縁基板上に、前記導電層の間に配置された中間絶縁層と
を備えることを特徴とする入力装置。
【請求項10】
前記島状の導電層の配置ピッチは、前記表示部に表示された前記入力領域の配置ピッチよりも小さいことを特徴とする請求項9に記載の入力装置。
【請求項11】
基板と、
基板上に配置されたタッチパネルと、
前記タッチパネル上に配置された絶縁基板と、
前記絶縁基板上に配置された島状の導電層と、
絶縁基板上に、前記導電層の間に配置された中間絶縁層と、
前記導電層および前記中間絶縁層上に配置された絶縁層と
を備えることを特徴とする入力装置。
【請求項12】
基板と、
基板上に配置された絶縁基板と、
前記絶縁基板上に配置された島状の導電層と、
絶縁基板上に、前記導電層の間に配置された中間絶縁層と、
前記導電層および前記中間絶縁層上に配置された絶縁層と、
前記絶縁層上に配置されたタッチパネルと
を備えることを特徴とする入力装置。
【請求項13】
前記基板は、液晶基板若しくは有機EL基板であることを特徴とする請求項9または10に記載の入力装置。
【請求項14】
前記絶縁層は、格子状に形成されたことを特徴とする請求項11または12に記載の入力装置。
【請求項15】
前記絶縁層は、前記導電層に対する熱プロセスを経て形成されることを特徴とする請求項9〜14のいずれか1項に記載の入力装置。
【請求項16】
前記熱プロセスは、レーザ光の照射により行われたことを特徴とする請求項15に記載の入力装置。
【請求項17】
前記熱プロセスは、通電発熱により行われたことを特徴とする請求項15に記載の入力装置。
【請求項18】
前記導電層と前記絶縁層は、透明であることを特徴とする請求項9〜17のいずれか1項に記載の入力装置。
【請求項19】
前記絶縁基板は、透明であることを特徴とする請求項9〜18のいずれか1項に記載の入力装置。
【請求項20】
前記絶縁基板は、ポリエステルで形成されたことを特徴とする請求項9〜12のいずれか1項に記載の入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−104310(P2012−104310A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250584(P2010−250584)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】