説明

帯電防止離型組成物

【課題】
皮膜化する際、硬化性を阻害せず、帯電防止性能と離型性能を1回の塗布工程にて発現し、密着性が高い皮膜を形成できる帯電防止離型組成物を提供すること。
【解決手段】
少なくとも1つ以上のイソシアネート基とケイ素原子が直接結合した構造を有するイソシアネートシラン化合物(成分A)、末端又は側鎖に少なくとも1つ以上の活性水素を有するポリオルガノシロキサン化合物(成分B)、電解質塩化合物(成分C)及び溶剤(成分D)を反応又は混合してなるものであることを特徴とする帯電防止離型組成物、該帯電防止離型組成物を使用して製膜してなる帯電防止離型層、該帯電防止離型層を有するプラスチックフィルム、工程紙及び粘着フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止離型組成物に関し、更に詳細には、少なくとも1つ以上のイソシアネート基とケイ素原子が直接結合した構造を有するイソシアネートシラン化合物(成分A)と末端に少なくとも1つ以上の活性水素を有するポリオルガノシロキサン化合物(成分B)と電解質塩化合物(成分C)と溶剤(成分D)を反応又は混合してなる新規の帯電防止離型組成物に関するものであり、特に、帯電防止性能と離型性能の両性能を必要とする工程紙、プラスチックフィルム、粘着フィルムなどに好適に使用される帯電防止離型組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、工程紙、プラスチックフィルム、粘着フィルムなどの多くの分野において、樹脂の離型や粘着テープの剥離力をコントロールする目的で、離型剤を塗布した離型フィルムが多く使用されている。
【0003】
これら離型フィルムに使用されている離型剤としては、Si−H構造を有する化合物と、CH=CH−Si構造を有する化合物と、白金触媒を使用する付加型のシリコーン系離型剤が多く使用されている。
【0004】
しかしながら、このような付加型のシリコーン系離型剤は、白金触媒を使用して硬化させるが、帯電防止性を与えるために、そこにイオン性を有する4級アンモニウム塩を代表とするカチオンや、第一族金属イオン、第二族金属イオンなどであるアニオンよりなる帯電防止剤を配合すると、それらが白金触媒の触媒毒となるため、皮膜を形成する際、白金触媒の触媒機能を失活させ、硬化不良を引き起こし、基材との密着性を著しく低下させる問題があった。
【0005】
この問題を解決するために、背面電極効果などを利用して、背面に帯電防止層を処理して、表面に付加型のシリコーン離型層を形成する方法が知られているが、良好な帯電防止性能が得られず、また、2回の塗布工程が必要なため、工程にかかる費用が高いといった問題があった。
【0006】
一方、イソシアネートシラン化合物を使用した帯電防止性能と離型性能を兼ね備えた組成物として、四級アンモニウム塩を使用した例が知られている(特許文献1、2)。
【0007】
しかしながら、これら化合物では、四級アンモニウム塩が極性の低い溶剤に溶解せず、アルコール溶剤の使用が必須となるため、アルコールとイソシアネートシラン化合物が反応し、硬化温度を高くする必要があったり、長い硬化時間が必要だったり、また、密着性が不足するといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平2001−107030号公報
【特許文献2】特開平2003−226838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、皮膜化する際、硬化性を阻害せず、帯電防止性能と離型性能を1回の塗布工程にて発現し、密着性が高い皮膜を形成できる帯電防止離型組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定のイソシアネートシラン化合物を硬化剤として用い、離型性能を発現する目的で末端又は側鎖に少なくとも1つ以上の活性水素を有するポリオルガノシロキサン化合物を使用し、帯電防止性を発現するために電解質塩化合物を、表面張力やイソシアネートシランの安定性を加味して選択した適切な溶媒中で反応又は混合して、生成物を溶剤に溶解又は分散することによって、離型性能と帯電防止性能を兼ね備えた組成物が得られることを見出して本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、少なくとも1つ以上のイソシアネート基とケイ素原子が直接結合した構造を有するイソシアネートシラン化合物(成分A)、末端又は側鎖に少なくとも1つ以上の活性水素を有するポリオルガノシロキサン化合物(成分B)、電解質塩化合物(成分C)及び溶剤(成分D)を反応又は混合してなるものであることを特徴とする帯電防止離型組成物を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、上記の帯電防止離型組成物を使用して製膜してなることを特徴とする帯電防止離型層を提供するものである。
【0013】
また、本発明は、被着体の上に、チタン化合物、ジルコニウム化合物及びケイ素化合物よりなる群から選択される1つ以上の化合物を有するプライマー層を形成した後に、その上に製膜してなる上記の帯電防止離型層を提供するものである。
【0014】
また、本発明は、上記の帯電防止離型層を有することを特徴とする工程紙を提供するものである。
また、本発明は、上記の帯電防止離型層を有することを特徴とするプラスチックフィルムを提供するものである。
また、本発明は、上記の帯電防止離型層を有し、被着体を介してその背面に粘着層を有することを特徴とする粘着フィルムを提供するものである。
【0015】
また、本発明は、少なくとも1つ以上のイソシアネート基とケイ素原子が直接結合した構造を有するイソシアネートシラン化合物(成分A)、末端又は側鎖に少なくとも1つ以上の活性水素を有するポリオルガノシロキサン化合物(成分B)、電解質塩化合物(成分C)及び溶剤(成分D)を反応又は混合して製造することを特徴とする帯電防止離型組成物の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の帯電防止離型組成物によれば、1回の塗布で、離型性能と帯電防止性能を有する密着性の高い皮膜を被着体に形成することができる。「離型性能」には、表面に貼りつけられた粘着テープなどが容易に剥離される性能(「剥離力」が小さい)、表面に一旦粘着テープなどを貼り付けた後に、そこから剥がした粘着テープなどの粘着性が落ちない性能(「残留接着率」大きい)などがあるが、本発明の帯電防止離型組成物を用いれば、その何れもが優れた皮膜を得ることができる。
【0017】
更に、被着体の上に、チタン化合物、ジルコニウム化合物及びケイ素化合物よりなる群から選択される1つ以上の化合物を有するプライマー層を形成した後に、本発明の帯電防止離型組成物の皮膜を形成することで、被着体に対する密着性を更に高めることができる。また、本発明の帯電防止離型組成物では、皮膜化する際に硬化性が阻害されることがない。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、任意に変形して実施することができる。
【0019】
本発明の帯電防止離型組成物は、少なくとも1つ以上のイソシアネート基とケイ素原子が直接結合した構造を有するイソシアネートシラン化合物(以下、「成分A」と略記することがある)と、末端又は側鎖に少なくとも1つ以上の活性水素を有するポリオルガノシロキサン化合物(以下、「成分B」と略記することがある)と、電解質塩化合物(成分C)と、溶剤(成分D)とを、反応又は混合してなる組成物である。
【0020】
<成分A>
成分Aである「少なくとも1つ以上のイソシアネート基とケイ素原子が直接結合した構造を有するイソシアネートシラン化合物」における、1つのケイ素原子に結合しているイソシアネート基の個数は1個以上4個以下であれば特に限定はないが、2個以上4個以下が好ましく、3個以上4個以下が密着性を向上させる点で特に好ましい。イソシアネート基の個数が少なすぎる場合は、密着性を低下させる場合がある。
【0021】
成分Aは、下記式(1)で示される構造を有する化合物であることが特に好ましい。
【0022】
【化1】

[式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立に、イソシアネート基、炭素数1〜18個のアルキル基、炭素数1〜18個のアルコキシ基、メタクリロキシ基又はフェニル基を示す。]
【0023】
アルキル基の炭素数は、更に好ましくは1〜10個であり、アルコキシ基の炭素数は、更に好ましくは1〜10個である。
【0024】
式(1)で表されるイソシアネートシラン化合物としては、以下の具体例に限定はされないが、例えば、テトライソシアネートシラン、モノメチルトリイソシアネートシラン、モノエチルトリイソシアネートシラン、モノプロピルトリイソシアネートシラン、モノブチルトリイソシアネートシラン、モノメトキシトリイソシアネートシラン、モノエトキシトリイソシアネートシラン、モノn−プロポキシトリイソシアネートシラン、モノイソプロポキシトリイソシアネートシラン、モノブトキシトリイソシアネートシラン、モノ2−ブトキシトリイソシアネートシラン、モノt−ブトキシトリイソシアネートシラン、モノフェニルトリイソシアネートシラン、モノメタクリロキシプロピルトリイソシアネートシラン、ジメチルジイソシアネートシラン、モノメチルモノエトキシジイソシアネートシランなどが挙げられる。これらは、単独又は2種類以上混合して用いることができる。
【0025】
上記式(1)で表されるイソシアネートシラン化合物としては、テトライソシアネートシラン又はモノメチルトリイソシアネートシランが、被着体との密着性が向上できる点で特に好ましい。
【0026】
<成分B>
成分Bである「末端又は側鎖に少なくとも1つ以上の活性水素を有するオルガノポリシロキサン化合物」における活性水素の個数は特に限定はないが、1〜10個が好ましく、1〜5個が特に好ましい。1分子中の活性水素の個数が少なすぎると、密着性の低下や離型性の低下を生じさせる場合があり、一方、多すぎると、帯電防止性の低下や密着性の低下を生じさせる場合がある。
【0027】
ここで、「活性水素」とは反応性が高い水素をいい、特に、水素が脱離などして、脱離後の残基が、イソシアネート基、アルコキシ基などと反応し易いようになる水素をいう。
【0028】
成分Bの平均分子量は特に限定はないが、1000〜1000000が好ましく、5000〜500000が特に好ましい。平均分子量が小さすぎる場合は、離型性が不足する場合があり、一方、大きすぎる場合は、密着性が低下する場合がある。
【0029】
成分Bは、下記式(2)で示される構造を有する化合物であることが特に好ましい。
【0030】
【化2】

[式(2)中、nは1以上の整数を示し、R〜Rは、それぞれ独立にメチル基、フェニル基、ポリオキシアルキレン基、水酸基、アミノ基又はカルボキシル基を示すが、分子中に少なくとも1つ以上の、ポリオキシアルキレン基、水酸基、アミノ基又はカルボキシル基を有する。]
【0031】
式(2)中のRは、n個の繰り返し単位ごとに異なっていてもよい。
また、式(2)中、「側鎖ポリオキシアルキレン基」は、活性水素を有することが必須である。該アルキレン基は特に限定はないが、具体的には、下記式(3)、式(4)又は式(5)で表される「エチレンオキサイド鎖又はプロピレンオキサイド鎖を有する基」が挙げられる。
−(CHCHO)−H (3)
−(CH(CH)CHO)−H (4)
−(CHCHCHO)−H (5)
式(3)〜式(5)中、p、q、rは、それぞれ、1〜100の整数であり、好ましくは、1〜50の整数である。式(3)〜式(5)の繰り返し単位は、互いに共重合されていてもよい。式(3)〜式(5)中の末端のアルコールの水素が活性水素である。
【0032】
式(2)中、活性水素を有する、ポリオキシアルキレン基、水酸基、アミノ基又はカルボキシル基の合計個数は、前記した理由から、好ましくは1〜100個、特に好ましくは1〜50個である。また、nは1以上の整数であるが、好ましくは5〜5000であり、特に好ましくは10〜2500である。nが小さすぎる場合、nが大きすぎる場合は、上記した平均分子量が小さすぎる場合、大き過ぎる場合と同様である。
【0033】
成分Bである「末端又は側鎖に少なくとも1つ以上の活性水素を有するポリオルガノシロキサン化合物」としては、以下の具体例に限定はされないが、側鎖ポリオキシアルキレン基含有ジメチルポリシロキサン、片末端水酸基含有ジメチルポリシロキサン、両末端水酸基含有メチルフェニルポリシロキサン、両末端水酸基含有ジメチルポリシロキサン、側鎖水酸基含有ジメチルポリシロキサン、片末端アミノ基含有ジメチルポリシロキサン、両末端アミノ基含有ジメチルポリシロキサン、側鎖アミノ基含有ジメチルポリシロキサン、片末端カルボキシル基含有ジメチルポリシロキサン、両末端カルボキシル基含有ジメチルポリシロキサン、側鎖カルボキシル基含有ジメチルポリシロキサンなどが挙げられる。これらは、単独又は2種類以上混合して用いることができる。
【0034】
上記式(2)で表されるポリオルガノシロキサン化合物としては、側鎖ポリオキシアルキレン基含有ジメチルポリシロキサン、両末端水酸基含有ジメチルポリシロキサン、片末端水酸基含有ジメチルポリシロキサン又は側鎖水酸基含有ジメチルポリシロキサンが、離型性能が向上し、帯電防止性能を損なわない面で特に好ましい。
【0035】
<成分C>
成分Cの電解質塩化合物は、陽イオン(カチオン)と陰イオン(アニオン)を含有するものであれば特に限定はない。陽イオンは、第一族金属イオン又は第二族金属イオンであることが、より高性能な帯電防止性を得られる点、また、陽イオンが四級アンモニウム塩などの場合に比較して、帯電防止性に優れている点などから好ましい。
【0036】
成分Cの電解質塩化合物の陰イオンは、過塩素酸イオン、過臭素酸イオン、塩素酸イオン、臭素酸イオン、過ヨウ素酸イオン、ヨウ素酸イオンなどが、高性能な帯電防止性が得られる点で好ましい。
【0037】
成分Cである電解質塩化合物は、以下の具体例には限定はされないが、例えば、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸カリウム、過塩素酸ベリリウム、過塩素酸マグネシウム、過塩素酸カルシウム、過塩素酸ストロンチウム、過塩素酸バリウムなどの過塩素酸塩;過臭素酸ナトリウム、過臭素酸リチウム、過臭素酸カリウム、過臭素酸ベリリウム、過臭素酸マグネシウム、過臭素酸カルシウム、過臭素酸ストロンチウム、過臭素酸バリウムなどの過臭素酸塩;などの過ハロゲン化アニオン化合物などが挙げられる。
また、塩素酸ナトリウム、塩素酸リチウム、塩素酸カリウム、塩素酸ベリリウム、塩素酸マグネシウム、塩素酸カルシウム、塩素酸ストロンチウム、塩素酸バリウムなどの塩素酸塩;臭素酸ナトリウム、臭素酸リチウム、臭素酸カリウム、臭素酸ベリリウム、臭素酸マグネシウム、臭素酸カルシウム、臭素酸ストロンチウム、臭素酸バリウムなどの臭素酸塩;などのハロゲン化アニオン化合物などが挙げられる。
【0038】
上述した電解質塩化合物としては、過塩素酸アニオン化合物又は過臭素酸アニオン化合物が、帯電防止性能を高めることができる点でより好ましい。
【0039】
成分Cである電解質塩化合物における、陽イオンと陰イオンの組み合わせとしては、特に限定はないが、陽イオンが第一族金属イオン又は第二族金属イオンであり、かつ、陽イオンが過塩素酸イオンである化合物が、帯電防止性能を高めることができる点で特に好ましい。
【0040】
<成分D>
成分Dである「溶剤」としては、特に限定はないが、炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤などが好ましい。
【0041】
成分Dである溶剤としては、以下の具体例に限定はないが、炭化水素系溶剤としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、メチルシクロヘキサン、トルエンなどが挙げられ、エステル系溶剤としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ノルマルブチル、酢酸イソブチル、酢酸セカンダリーブチルなどが挙げられ、ケトン系溶剤としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどが挙げられ、エーテル系溶剤としては、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどが挙げられる。これらは、単独又は2種類以上混合して用いることができる。
【0042】
中でも、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ノルマルブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン又はシクロヘキサノンが、成分A、成分B及び成分Cの溶解性や、被着体への濡れ性の点で特に好ましい。
【0043】
<各成分の使用割合>
成分A、成分B、成分C及び成分Dの割合は特に限定はないが、成分Aと成分Bの質量割合については、[成分A]/[成分B]=1/100〜100/1の範囲が好ましく、1/80〜80/1の範囲がより好ましく、1/50〜50/1の範囲が特に好ましい。
【0044】
また、成分Cの「成分Aと成分Bの合計」に対する質量割合については、[成分C]/[成分Aと成分Bの合計]=1/1000〜1000/1の範囲が好ましく、1/700〜700/1の範囲がより好ましく、1/500〜500/1 の範囲が特に好ましい。
【0045】
また、「成分Aと成分Bと成分Cの合計」と成分Dとの質量割合は、[成分Aと成分Bと成分Cの質量の合計]/[成分Dの質量]=0.03/1000〜1000/0.03の範囲が好ましく、0.03/100〜100/0.03の範囲がより好ましく、0.15/100〜100/0.15の範囲が特に好ましい。
【0046】
成分Aの比率が少ないと、被着体との密着性が不足するため、皮膜化した際、皮膜が脱落する場合があり、一方、成分Aの比率が大きいと、組成物の安定性を著しく劣化させ、白色沈殿物が析出する場合がある。
また、成分Bの比率が少ないと、離型性能が得られなく、離型剤としての機能が得られなくなる場合があり、一方、成分Bの比率が大きすぎると、成分Aによって反応しきれない成分Bが残存し、密着性を著しく低下する場合がある。
成分Cの比率が少ないと、帯電防止性能が得られなく、帯電防止層としての機能が得られない場合があり、一方、成分Cの比率が多いと、皮膜表面へのブリードなどによって、密着性の著しい低下や離型性能の低下などが生じる場合がある。
成分Dの比率が少ないと、成分A、成分B、成分Cの濃度が高くなるため、保存安定性が著しく低下し、白色沈殿などが発生する場合があり、一方、成分Dの比率が大きいと、成分A、成分B、成分Cの濃度が低くなるため、離型性能や帯電防止性能が著しく低下する場合がある。
【0047】
「成分A、成分B、成分C及び成分Dが反応又は混合してなる帯電防止離型組成物」には、主に以下の12形態があり、それらの何れでもよい。
(1)成分Aと成分Bと成分Cと成分Dとの反応により得られる組成物
(2)成分Aと成分Bと成分Cと成分Dとの混合により得られる組成物
(3)「成分Aと成分Bと成分Cとの反応により得られる組成を有するもの」及び成分Dの混合により得られる組成物
(4)「成分Aと成分Bと成分Dとの反応により得られる組成を有するもの」及び成分Cの混合により得られる組成物
(5)「成分Aと成分Cと成分Dとの反応により得られる組成を有するもの」及び成分Bの混合により得られる組成物
(6)「成分Bと成分Cと成分Dとの反応により得られる組成を有するもの」及び成分Aの混合により得られる組成物
(7)「成分Aと成分Bとの反応により得られる組成を有するもの」、成分C及び成分Dの混合により得られる組成物
(8)「成分Bと成分Cとの反応により得られる組成を有するもの」、成分A及び成分Dの混合により得られる組成物
(9)「成分Aと成分Cとの反応により得られる組成を有するもの」、成分B及び成分Dの混合により得られる組成物
(10)「成分Aと成分Dとの反応により得られる組成を有するもの」、成分B及び成分Cの混合により得られる組成物
(11)「成分Bと成分Dとの反応により得られる組成を有するもの」、成分A及び成分Cの混合により得られる組成物
(12)「成分Cと成分Dとの反応により得られる組成を有するもの」、成分D及び成分Cの混合により得られる組成物
【0048】
反応と混合が平行して起こる場合も上記態様に含まれる。また、未反応物がその反応後に混合される場合も含まれる。例えば、「成分Aと成分Bとの反応により得られる反応物」、該反応で未反応のまま残った成分B、成分C及び成分Dの混合により得られる組成物も上記態様に含まれる。すなわち、上記した態様中の「反応により得られる組成」には未反応物が存在する場合も含まれる。
【0049】
「反応」は、共有結合を生成するものの他、イオン結合、配位結合、成分同士の相互作用を生じさせるものなども含まれる。また、同じ成分同士の反応を排除するものではない。例えば、本発明の帯電防止離型組成物には、成分A同士が反応してなるものを含有していてもよい。
【0050】
このうち、(2)「成分Aと成分Bと成分Cと成分Dの混合により得られる組成物」が好ましい。
【0051】
本発明の帯電防止離型組成物は、上記した操作(プロセス)を用いて生成された化学構造や混合組成を有する組成物であれば、その製造方法は限定されるものではない。別の製造方法で製造された結果、同一のものが生成した場合のその帯電防止離型組成物も本発明に含まれる。ただし、本発明の帯電防止離型組成物の製造方法としては、上記製造方法が好ましい。すなわち、少なくとも1つ以上のイソシアネート基とケイ素原子が直接結合した構造を有するイソシアネートシラン化合物(成分A)、末端又は側鎖に少なくとも1つ以上の活性水素を有するポリオルガノシロキサン化合物(成分B)、電解質塩化合物(成分C)及び溶剤(成分D)を反応又は混合して製造することを特徴とする帯電防止離型組成物の製造方法が好ましい。
【0052】
本発明の帯電防止離型組成物をプラスチックフィルムなどの被着体に塗布する場合は、必要に応じて、成分Dの溶剤とは別に、本発明の帯電防止離型組成物を、希釈溶剤を用いて希釈し、塗布を行うことができる。希釈溶剤については、特に限定はないが、各種被着材に対して濡れ性の高い溶剤が好ましい。好ましい希釈溶剤としては、炭化水素系溶剤としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、メチルシクロヘキサン、トルエンなどが挙げられ、エステル系溶剤としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ノルマルブチル、酢酸イソブチル、酢酸セカンダリーブチルなどが挙げられ、ケトン系溶剤としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどが挙げられ、エーテル系溶剤としては、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどが挙げられる。これらは、塗布液の安定性を考慮して、単独又は2種類以上混合して用いることができる。
【0053】
本発明の帯電防止離型剤組成物を塗布する被着体は、特に限定はないが、プラスチックフィルムが挙げられる。具体的にはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ポリイミドなどからなるプラスチックフィルムが挙げられる。
【0054】
本発明の帯電防止離型剤組成物を被着体に処理する場合の塗布方法については、特に限定はないが、プラスチックフィルムの場合、グラビアコートに代表されるロールコート、スピンコート、ディップコートなどが好ましい。通常は、本発明の帯電防止離型剤組成物を被着体に塗布後、過剰の溶剤(成分D)、希釈溶剤などを乾燥除去し、次の硬化の工程に移る。
【0055】
本発明の帯電防止離型剤組成物を被着体に処理する際の硬化条件については、特に限定はないが、硬化温度については、0〜200℃が好ましく、5〜170℃がより好ましく、10〜150℃が特に好ましい。硬化時間については、1秒〜30分が好ましく、5秒〜10分がより好ましく、10秒〜1分が特に好ましい。更には、200℃以下で30分以下にて硬化することが好ましく、170℃以下で10分以下にて硬化することがより好ましく、150℃以下で1分以下にて硬化することが特に好ましい。
【0056】
本発明の帯電防止離型組成物をプラスチックフィルムなどの被着体に塗布する場合の塗布量は特に限定はないが、乾燥前の塗布量としては、0.01〜100g/mが好ましく、0.05〜50g/mがより好ましく、0.1〜30g/mが特に好ましい。また、乾燥後の塗布量としては、0.001〜10g/mが好ましく、0.005〜7g/mがより好ましく、0.01〜5g/mが特に好ましい。
【0057】
本発明の帯電防止離型組成物を使用して製膜してなる帯電防止離型層は、1つの層で離型性能と帯電防止性能を有し、被着体に対する密着性が高い。また、被着体の上に、チタン化合物、ジルコニウム化合物及びケイ素化合物よりなる群から選択される1つ以上の化合物を有するプライマー層を形成した後に、その上に、本発明の帯電防止離型組成物を使用して製膜してなる帯電防止離型層は、被着体に対する密着性を更に高めることができる。
【0058】
本発明の帯電防止離型組成物を使用して製膜してなる帯電防止離型層の下層(被着体側)にプライマー層を形成する際に使用するプライマーとしては、チタン化合物、ジルコニウム化合物又はケイ素化合物を含有するものであれば特に限定はないが、「チタン、ジルコニウム又はケイ素」の「アルコキシド化合物、キレート化合物又はアシレート化合物」が好ましいものとして挙げられる。また、分子内に少なくとも1つの「アミノ基、エポキシ基又はアクリロイロキシ基」を有するケイ素化合物が好ましいものとして挙げられる。また、「チタン、ジルコニウム又はケイ素化合物」に、水を添加して部分加水分解したオリゴマー化合物なども好ましいものとして挙げられる。これらは1種又は2種以上を使用できる。更には、これらの1種類を溶剤と混合した組成物や、2種類以上を混合又は反応した後、溶剤に混合した組成物が挙げられる。
【0059】
プライマー層の塗布量については特に限定はないが、乾燥後の塗布量として0.001〜10g/mが好ましく、0.005〜7g/mがより好ましく、0.01〜5g/mが特に好ましい。
【0060】
本発明の帯電防止離型層を設けたプラスチックフィルムなどは、離型性を必要とする工程紙に使用できる。使用分野は特に限定はないが、積層セラミックコンデンサーを製造する際のグリーンシート用の工程紙、人工皮革を製造する際に使用する工程紙、偏光板などの保護のために用いられる工程紙、樹脂シートを製造する際に使用する工程紙などが挙げられる。
【0061】
また、本発明の帯電防止離型層を設けたのち、離型剤層の背面に粘着剤層を設けることにより、粘着フィルムとして使用することができる。すなわち、本発明の帯電防止離型組成物を使用して製膜してなる帯電防止離型層を有し、被着体を介してその背面に(被着体の反対側に)粘着層を設けて粘着フィルムとすることができる。該粘着フィルムに用いる粘着剤としては特に限定はないが、アクリル樹脂系の粘着剤、ゴム系の粘着剤、シリコーン系の粘着剤などが上げられる。
【0062】
粘着層の塗布量については特に限定はないが、乾燥後の塗布量として、1〜100g/mが好ましく、5〜80g/mがより好ましく、10〜50g/mが特に好ましい。
【0063】
上記粘着フィルムの用途としては、特に限定はないが、プロテクトフィルム、マスキングフィルム、キャリアフィルム、ウインドウフィルム、半導体ウェハーのダイシングフィルム、ラベルなどが挙げられる。
【0064】
本発明の帯電防止離型組成物は、特にプラスチックフィルムを用いた工程紙や粘着フィルムの離型性と帯電防止性を兼ね備えた皮膜を形成するコーティング剤として好適に使用できる。その際、プラスチックフィルムに直接塗布するか、プライマー組成物で被着体を処理した後に、本発明の帯電防止離型組成物を塗布することが好ましい。
【実施例】
【0065】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例及び比較例に限定されるものではない。
【0066】
合成例1
モノメチルトリイソシアネートシラン(成分A)10.0g、テトライソシアネートシラン(成分A)1.0g、平均分子量が約10万の両末端に水酸基を有するジメチルポリシロキサン(成分B)7g、過塩素酸リチウム(成分C)1.0g、及び、酢酸エチル70gとメチルエチルケトン15gの混合溶剤(成分D)を、マグネチックスターラーにて10分間攪拌混合し、溶解させて帯電防止離型組成物Aを得た。
【0067】
合成例2
モノメチルトリイソシアネートシラン(成分A)11.0g、平均分子量が約20万の両末端に水酸基を有するジメチルポリシロキサン(成分B)5g、過塩素酸ナトリウム(成分C)1.0g、及び、酢酸エチル70gとメチルエチルケトン15gの混合溶剤(成分D)を、マグネチックスターラーにて10分間攪拌混合し、溶解させて帯電防止離型組成物Bを得た。
【0068】
合成例3
テトライソシアネートシラン(成分A)10.0g、分子量が約15万の両末端に水酸基を有するジメチルポリシロキサン(成分B)6g、過塩素酸カリウム(成分C)1.0g、及び、酢酸エチル70gとメチルエチルケトン15gの混合溶剤(成分D)を、マグネチックスターラーにて10分間攪拌混合し、溶解させて帯電防止離型組成物Cを得た。
【0069】
合成例4
ジメチルトリイソシアネートシラン(成分A)10.0g、テトライソシアネートシラン(成分A)1.0g、平均分子量が約10万の側鎖ポリオキシアルキレン基を有するジメチルポリシロキサン(成分B)7g、過塩素酸ナトリウム(成分C)1.0g、及び、酢酸エチル70gとメチルエチルケトン15gの混合溶剤(成分D)を、マグネチックスターラーにて10分間攪拌混合し、溶解させて帯電防止離型組成物Dを得た。
【0070】
合成例5
フェニルトリイソシアネートシラン(成分A)10.0g、テトライソシアネートシラン(成分A)1.0g、平均分子量が約10万の側鎖ポリオキシアルキレン基を有するジメチルポリシロキサン(成分B)4g、分子量が約10万の両末端に水酸基を有するジメチルポリシロキサン(成分B)3g、過塩素酸リチウム(成分C)1.0g、及び、酢酸エチル70gとメチルエチルケトン15gの混合溶剤(成分D)を、マグネチックスターラーにて10分間攪拌混合し、溶解させて帯電防止離型組成物Eを得た。
【0071】
合成例6
モノメチルトリイソシアネートシラン(成分A)10.0g、テトライソシアネートシラン(成分A)1.0g、「末端又は側鎖に水酸基を有するジメチルポリシロキサンに過塩素酸リチウムを作用させ、MEKにて溶解した帯電防止剤(製品名:PC−3660 丸菱油化工業社製)」(成分B)(成分C)6.0g、両末端に水酸基を有するジメチルポリシロキサン(成分B)1.0g、及び、酢酸エチル70gとメチルエチルケトン15gの混合溶剤(成分D)を、マグネチックスターラーにて10分間攪拌混合し、溶解させて帯電防止離型組成物Fを得た。
【0072】
合成例7
テトライソシアネートシラン(成分A)10.0g、「末端又は側鎖に水酸基を有するジメチルポリシロキサンに過塩素酸リチウムを作用させ、MEKにて溶解した帯電防止剤(製品名:PC−3660 丸菱油化工業社製)」(成分B)(成分C)5.5g、両末端に水酸基を有するジメチルポリシロキサン(成分B)1.5g、及び、酢酸エチル70gとメチルエチルケトン15gの混合溶剤(成分D)を、マグネチックスターラーにて10分間攪拌混合し、溶解させて帯電防止離型組成物Gを得た。
【0073】
合成例8
平均分子量が約20万の両末端に水酸基を有するジメチルポリシロキサン(成分B)5g、過塩素酸ナトリウム(成分C)1.0g、及び、酢酸エチル70gとメチルエチルケトン15gの混合溶剤(成分D)を、マグネチックスターラーにて10分間攪拌混合し、溶解させて帯電防止離型組成物Hを得た。
【0074】
合成例9
モノメチルトリイソシアネートシラン(成分A)10.0g、テトライソシアネートシラン(成分A)1.0g、平均分子量が約10万の両末端に水酸基を有するジメチルポリシロキサン(成分B)7g、及び、酢酸エチル70gとメチルエチルケトン15gの混合溶剤(成分D)を、マグネチックスターラーにて10分間攪拌混合し、溶解させて帯電防止離型組成物Iを得た。
【0075】
実施例1〜7
合成例1〜7で合成した帯電防止離型組成物A〜Gを使用して、表1に示す希釈溶剤にて所定濃度に希釈した。表1中の「希釈倍率」は質量による倍率である。希釈後、乾燥前の塗布量が6〜7g/mになるように、バーコーターNo.4(松尾産業社製 商品名:バーコーター)を使用し、PETフィルムに塗布後、熱風循環式乾燥機にて120℃の雰囲気下で30秒硬化した。硬化したフィルムの物理特性を以下の評価例に記載する方法にて評価した。結果を表1に示す。
【0076】
実施例8〜16
表2に示すプライマーa〜g(表2中、特定の市販のプライマーそのものを「成分e」と記載することがある)を使用して、乾燥前の塗布量が6〜7g/mになるように、バーコーターNo.4(松尾産業社製 商品名:バーコーター)を使用し、PETフィルムに塗布後、熱風循環式乾燥機にて120℃の雰囲気下で30秒硬化した。
【0077】
合成例1〜7で合成した帯電防止離型組成物A〜Gを使用して、表3に示す希釈溶剤にて所定濃度に希釈した。表3中の「希釈倍率」は質量による倍率である。希釈後、上記プライマーを塗布・硬化したPETフィルムに、乾燥前の塗布量が6〜7g/mになるように、バーコーターNo.4(松尾産業社製 商品名:バーコーター)を使用し塗布後、熱風循環式乾燥機にて120℃の雰囲気下で30秒硬化した。硬化したフィルムの物理特性を、以下の評価例に記載する方法にて評価した。結果を表3に示す。
【0078】
比較例1〜2
合成例8〜9で合成した帯電防止離型組成物H、Iを使用して、表1に示す希釈溶剤にて所定濃度に希釈した。希釈後、乾燥前の塗布量が6〜7g/mになるようにバーコーターNo.4(松尾産業社製 商品名:バーコーター)を使用し、PETフィルムに塗布後、熱風循環式乾燥機にて120℃の雰囲気下で30秒硬化した。硬化したフィルムの物理特性を、以下の評価例に記載する方法にて評価した。結果を表1に示す。
【0079】
比較例3〜4
表2に示すプライマーc及びaを、マグネチックスターラーを使用して希釈溶剤にて混合し、乾燥前の塗布量が6〜7g/mになるようにバーコーターNo.4(松尾産業社製 商品名:バーコーター)を使用して、PETフィルムに塗布後、熱風循環式乾燥機にて120℃の雰囲気下で30秒硬化した。その後、合成例8〜9で合成した帯電防止離型組成物H、Iを使用して、表3に示す溶剤にて所定濃度に希釈した。希釈後、塗布厚みが6〜7g/mになるようにバーコーターNo.4(松尾産業社製 商品名:バーコーター)を使用し、PETフィルムに塗布後、熱風循環式乾燥機にて120℃の雰囲気下で30秒硬化した。硬化したフィルムの物理特性を以下の評価例に記載する方法にて評価した。結果を表3に示す。
【0080】
評価例
「離型性能」を、以下の「剥離力」と「残留接着率」により評価し、「帯電防止性能」を、以下の「表面抵抗値」により評価し、被着体に対する「密着性」を、以下の「皮膜密着性」により評価した。
【0081】
[剥離力の測定方法]
フィルムの処理面に、25mm幅のニットーポリエステルテープ31B(日東電工(株)社製)を、2kgfのゴムロールで1往復圧着して、300mm/分の速度で180度剥離を行った。25mm幅の剥離に要した力を「剥離力」(mN/25mm)とした。
【0082】
[残留接着率の測定方法]
フィルムの処理面に、25mm幅のニットーポリエステルテープ31Bを2kgfのゴムロールで1往復圧着した。一旦貼り付けたニットーポリエステルテープ31B(日東電工(株)社製)を剥がし、それを再びステンレス板に貼り替え、300mm/分の速度で180度剥離強度を測定した。これを「サンプルの剥離力」とする。
【0083】
ブランクとして、ステンレス板にニットーポリエステルテープ31Bを2kgfのゴムロールで1往復圧着し、300mm/minの速度で180度剥離強度を測定した。これを「ブランクの剥離力」とする。
【0084】
下記の式に代入し、残留接着率(%)を求めた。
[残留接着率(%)]=100×「サンプルの剥離力」/「ブランクの剥離力」
【0085】
[表面抵抗値の測定方法]
処理したフィルムを、15cm×15cmの大きさに切り、室温が25℃、湿度が50%に設定した部屋にて、そのフィルムの処理面を超絶縁抵抗計で表面抵抗率を測定した後、表面抵抗値に換算して求めた。
【0086】
[皮膜密着性の測定方法]
処理したフィルムの硬化した膜の上を指で強く10回擦過し、擦過部の膜の剥がれの有無を目視で確認した。確認した結果を以下の基準で判断した。
○:膜の剥離なし(合格レベル)
△:50〜99%の膜が残存(合格レベル)
×:膜の残存が50%以下(不合格レベル)
【0087】
【表1】

【0088】
【表2】

表2中の「オルガチックス」は、マツモトファインケミカル株式会社製である。
【0089】
【表3】

【0090】
実施例1〜16は何れも、剥離力、残留接着率、表面抵抗値、皮膜密着性の何れにも優れていたが、成分Aを使用していない「比較例1と比較例3」(帯電防止離型組成物H)、及び、成分Cを使用していない「比較例2と比較例4」(帯電防止離型組成物I)では、残留接着率と表面抵抗値の何れもが劣っていた。また、実施例1〜7(帯電防止離型組成物A〜G)では、皮膜密着性が「△」であったが、予めプライマー層を形成することによって「○」に向上した。しかし、帯電防止離型組成物Hでは、予めプライマー層を形成させても、皮膜密着性「×」のままで、向上が見られなかった。
【0091】
以上より、「離型性能」、「帯電防止性能」及び「密着性」の何れもが優れていたものは実施例の帯電防止離型組成物A〜Gのみであった。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の帯電防止離型組成物は、離型性と帯電防止性を1回のコートで発現でき、プライマー層上に塗布することで更に被着体との接着性や密着性を増すことができることから、プラスチックフィルムを使用する工程紙の分野や粘着テープの分野などの産業分野に広く利用されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つ以上のイソシアネート基とケイ素原子が直接結合した構造を有するイソシアネートシラン化合物(成分A)、末端又は側鎖に少なくとも1つ以上の活性水素を有するポリオルガノシロキサン化合物(成分B)、電解質塩化合物(成分C)及び溶剤(成分D)を反応又は混合してなるものであることを特徴とする帯電防止離型組成物。
【請求項2】
上記少なくとも1つ以上のイソシアネート基とケイ素原子が直接結合した構造を有するイソシアネートシラン化合物(成分A)が、下記式(1)で示される構造を有するイソシアネートシラン化合物である請求項1に記載の帯電防止離型組成物。
【化1】

[式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立に、イソシアネート基、炭素数1〜18個のアルキル基、炭素数1〜18個のアルコキシ基、メタクリロキシ基又はフェニル基を示す。]
【請求項3】
上記末端又は側鎖に少なくとも1つ以上の活性水素を有するポリオルガノシロキサン化合物(成分B)が、下記式(2)で示される構造を有するものである請求項1又は請求項2に記載の帯電防止離型組成物。
【化2】

[式(2)中、nは1以上の整数を示し、R〜Rは、それぞれ独立にメチル基、フェニル基、ポリオキシアルキレン基、水酸基、アミノ基又はカルボキシル基を示すが、分子中に少なくとも1つ以上の、ポリオキシアルキレン基、水酸基、アミノ基又はカルボキシル基を有する。]
【請求項4】
上記電解質塩化合物の陽イオンが第一族金属イオン又は第二族金属イオンであり、陽イオンが過塩素酸イオンである請求項1ないし請求項3の何れかの請求項に記載の帯電防止離型組成物。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れかの請求項に記載の帯電防止離型組成物を使用して製膜してなることを特徴とする帯電防止離型層。
【請求項6】
被着体の上に、チタン化合物、ジルコニウム化合物及びケイ素化合物よりなる群から選択される1つ以上の化合物を有するプライマー層を形成した後に、その上に製膜してなる請求項5に記載の帯電防止離型層。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の帯電防止離型層を有することを特徴とするプラスチックフィルム。
【請求項8】
請求項5又は請求項6に記載の帯電防止離型層を有することを特徴とする工程紙。
【請求項9】
請求項5又は請求項6に記載の帯電防止離型層を有し、被着体を介してその背面に粘着層を有することを特徴とする粘着フィルム。
【請求項10】
少なくとも1つ以上のイソシアネート基とケイ素原子が直接結合した構造を有するイソシアネートシラン化合物(成分A)、末端又は側鎖に少なくとも1つ以上の活性水素を有するポリオルガノシロキサン化合物(成分B)、電解質塩化合物(成分C)及び溶剤(成分D)を反応又は混合して製造することを特徴とする帯電防止離型組成物の製造方法。

【公開番号】特開2011−132309(P2011−132309A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−291102(P2009−291102)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000188939)マツモトファインケミカル株式会社 (26)
【Fターム(参考)】