説明

帯電除去方法および帯電除去装置

【課題】電子線殺菌時に発生する樹脂製容器の帯電を除去する帯電除去方法および装置において、電子線殺菌性能を妨げることがなく、メンテナンス容易で、かつ安価な装置価格で、樹脂製容器の帯電を確実に除去できる帯電除去方法および帯電除去装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る帯電除去方法は、電子線殺菌時に発生した樹脂製容器の帯電を除去する帯電除去方法において、樹脂製容器の電子線殺菌の後工程で、ハロゲン光線によって樹脂製容器Pを加温することにより、樹脂製容器Pの樹脂の導電率を上昇させ、樹脂製容器Pの壁体の内部に帯電している電荷を壁体の表面に移動させて、電子線殺菌時に発生した樹脂製容器Pの帯電を除去するようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子線殺菌時に発生した樹脂製容器の帯電を除去する帯電除去方法および帯電除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料液、医薬液充填用のPETボトル等の樹脂製容器を充填前に電子線殺菌すると樹脂製容器が帯電することは従来から知られているが、帯電している樹脂製容器は静電気により周囲の埃等を引き寄せるなどの問題が発生する。
このため、電子線殺菌時に樹脂製容器の帯電量を緩和する技術、電子線殺菌によって帯電した樹脂製容器を電子線殺菌後に帯電除去する技術が提案されている。(例えば、特許文献1及び2を参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−26000号公報(図2)
【特許文献2】特開2011−11775号公報(図3、図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1によれば、樹脂製容器の電子線殺菌時に、樹脂製容器の口部から内部にアース電極を挿入した状態で電子線照射することにより樹脂製容器の帯電を防止するとしている。
しかしながら、前記特許文献1の技術では、樹脂製容器の口部から内部にアース電極を挿入すると、該アース電極によって樹脂製容器内に照射されるべき電子線を遮ることになり、樹脂製容器内を殺菌するための電子線吸収線量を低下させてしまう恐れがある。特に、PETボトル等の容器口部のように肉厚が厚くかつ口径が小さい箇所では電子線透過量が少なく、開口部からの電子線の廻り込みによって口部内部を殺菌することになるため、開口部を塞ぐアース電極のような部材は口部内部の殺菌力低下に繋がってしまうという恐れがある。
また、樹脂製容器の帯電防止のためには、挿入するアース電極は容器全長に亘っての挿入が必要であり、容器サイズを変える際に挿入量の変更が必要となり、その構造が複雑化して高価な装置となる恐れがある。
【0005】
また、前記特許文献2によれば、電子線殺菌後の樹脂製容器の内部に液体を充填または噴射し、樹脂製容器の外部に設けたイオナイザから樹脂製容器の外表面にマイナスイオンを照射するとしている。
しかしながら、前記特許文献2の技術では、複雑な容器表面形状に対してイオンを均一に当てる必要があるが、イオナイザを用いると容器表面形状によっては樹脂製容器の壁体の内部の電荷を取り除くのに時間が長くかかるという恐れがある。また、イオナイザの放電電極が適正にイオン発生するためには放電電極自体のメンテナンスが必要となり、メンテナンス費用が多くかかるという恐れがある。
【0006】
本発明は、電子線殺菌時に発生する樹脂製容器の帯電を除去する帯電除去方法および装置において、従来技術をさらに進化させて、電子線殺菌性能を妨げることがなく、メンテナンス容易で、かつ安価な装置価格で、樹脂製容器の帯電を確実に除去できる帯電除去方法および装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題に対し、本発明は以下の手段により解決を図る。
(1)第1の手段の帯電除去方法は、電子線殺菌時に発生した樹脂製容器の帯電を除去する帯電除去方法において、前記樹脂製容器の電子線殺菌の後工程で、加熱媒体によって前記樹脂製容器を加温することにより、前記樹脂製容器の樹脂の導電率を上昇させ、前記樹脂製容器の壁体の内部に帯電している電荷を前記壁体の表面に移動させて、電子線殺菌時に発生した樹脂製容器の帯電を除去するようにしたことを特徴とする。
【0008】
(2)第2の手段の帯電除去方法は、前記第1の手段の帯電除去方法において、前記加熱媒体による樹脂製容器加温の温度を、前記樹脂製容器の樹脂のガラス転移点乃至ガラス転移点から15℃低い範囲の温度としたことを特徴とする。
【0009】
(3)第3の手段の帯電除去方法は、前記第1又は第2の手段の帯電除去方法において、前記加熱媒体による樹脂製容器加温を、前記樹脂製容器の表面に向けて熱線を照射して加温するようにしたことを特徴とする。
【0010】
(4)第4の手段の帯電除去方法は、前記第1又は第2の手段の帯電除去方法において、前記加熱媒体による樹脂製容器加温を、前記樹脂製容器の表面に向けて加熱流体を噴射して加温するようにしたことを特徴とする。
【0011】
(5)第5の手段の帯電除去方法は、電子線殺菌時に発生した樹脂製容器の帯電を除去する帯電除去方法において、前記樹脂製容器電子線殺菌の後工程で、前記樹脂製容器の口部を下方に向けた倒立状態で、該口部の下方から樹脂製容器の内面に向けて導電性液体(A)を噴射し、同時に外方から前記樹脂製容器の外面に向けて導電性液体(B)を噴射して、前記導電性液体(A)と導電性液体(B)を電気的に導通させることにより、電子線殺菌時に発生した樹脂製容器の帯電を除去するようにしたことを特徴とする。
【0012】
(6)第6の手段の帯電除去方法は、前記第5の手段の帯電除去方法において、前記導電性液体(A)と導電性液体(B)の電気的な導通を、前記樹脂製容器の内面に噴射されて内面に沿って連続状態で流下してきた導電性液体(A)と前記樹脂製容器の外面に噴射されて外面に沿って連続状態で流下してきた導電性液体(B)を前記口部下方で集合させることにより、前記内面に噴射された導電性液体(A)と前記外面に噴射された導電性液体(B)を電気的に導通させることによって行うようにしたことを特徴とする。
【0013】
(7)第7の手段の帯電除去方法は、前記第5の手段の帯電除去方法において、前記導電性液体(A)と導電性液体(B)の電気的な導通を、前記導電性液体(A)を噴射する噴射ノズル(A)と導電性液体(B)を噴射する噴射ノズル(B)を電気的に導通させることによって行うようにしたことを特徴とする。
【0014】
(8)第8の手段の帯電除去方法は、請求項1から4のいずれか1項に記載した帯電除去方法において、前記帯電除去の前工程或いは後工程に、請求項5から7のいずれか1項に記載した帯電除去方法を付加して組み合わせたことを特徴とする。
【0015】
(9)第9の手段の帯電除去方法は、請求項1から8のいずれか1項に記載した帯電除去方法において、前記帯電除去の後工程に、前記電子線殺菌が済んだ樹脂製容器内に第1の導電性液体を充填するとともに充填中の樹脂製容器の外面に第2の導電性液体を噴射接触させ、前記第1の導電性液体を充填する充填ノズルと前記第2の導電性液体を噴射する噴射ノズルを電気的に導通させることによって電子線殺菌時に発生した樹脂製容器の帯電を除去する帯電除去方法を付加して組み合わせたことを特徴とする。
【0016】
(10)第10の手段の帯電除去装置は、樹脂製容器を電子線照射により殺菌する電子線殺菌装置と、該電子線殺菌装置による殺菌後の前記樹脂製容器内に液体を充填する充填装置との間に、殺菌が済んだ樹脂製容器の樹脂の加温による導電率上昇を介して前記樹脂製容器の壁体内部に帯電していた電荷を前記壁体の表面に移動させるために前記樹脂製容器を加温する加温装置を設けて、電子線殺菌時に発生した樹脂製容器の帯電を除去する構成としたことを特徴とする。
【0017】
(11)第11の手段の帯電除去装置は、請求項10に記載した帯電除去装置において、前記加温装置を、加熱媒体による照射によって前記殺菌が済んだ樹脂製容器を加温する加熱媒体照射装置として構成したことを特徴とする。
【0018】
(12)第12の手段の帯電除去装置は、請求項10に記載した帯電除去装置において、前記加温装置を、殺菌が済んだ樹脂製容器の表面に向けた加熱流体噴射によって加温する加熱流体噴射ノズル装置として構成したことを特徴とする。
【0019】
(13)第13の手段の帯電除去装置は、樹脂製容器を電子線照射により殺菌する電子線殺菌装置と、該電子線殺菌装置による殺菌後の前記樹脂製容器内に液体を充填する充填装置との間に、その口部を下方に向けて倒立状態の殺菌が済んだ樹脂製容器の口部下方から該殺菌が済んだ樹脂製容器の内面に向けて導電性液体(A)を噴射する噴射ノズル(A)と、前記導電性液体(A)の噴射と同時に外方から前記樹脂製容器の外面に向けて導電性液体(B)を噴射する噴射ノズル(B)を設け、前記内面に噴射された導電性液体(A)と前記外面に噴射された導電性液体(B)が電気的に導通となるようにして、電子線殺菌時に発生した樹脂製容器の帯電を除去する構成としたことを特徴とする。
【0020】
(14)第14の手段の帯電除去装置は、前記第13の手段の帯電除去装置において、請求項13に記載した帯電除去装置において、前記内面に噴射された導電性液体(A)と前記外面に噴射された導電性液体(B)の電気的な導通の構成を、前記樹脂製容器の内面に沿って連続状態で流下してきた前記内面に噴射された導電性液体(A)と前記樹脂製容器の外面に沿って連続状態で流下してきた前記外面に噴射された導電性液体(B)を前記樹脂製容器の口部下方で集合させて受け、前記内面に噴射された導電性液体(A)と前記外面に噴射された導電性液体(B)を導通させるようにしたドレン受けを設ける構成としたことを特徴とする。
【0021】
(15)第15の手段の帯電除去装置は、前記第13の手段の帯電除去装置において、前記内面に噴射された導電性液体(A)と前記外面に噴射された導電性液体(B)の電気的な導通の構成を、前記内面に噴射された噴射ノズル(A)と前記外面に噴射された噴射ノズル(B)を電気的に導通させる構成としたことを特徴とする帯電除去装置。
【発明の効果】
【0022】
請求項1から4および10から12に係わる本発明は、電子線殺菌時に発生した樹脂製容器の帯電を除去する帯電除去方法および装置において、前記樹脂製容器電子線殺菌の後工程で、加熱媒体によって前記樹脂製容器を加温することにより、前記樹脂製容器の樹脂の導電率を上昇させ、前記樹脂製容器の壁体内部に帯電している電荷を前記壁体表面に移動させるようにしたことにより、容器サイズの変更があっても装置を変える必要がなく、メンテナンスが容易で、簡素で安価な構造の装置によって電子線殺菌時に発生した樹脂製容器の帯電を除去できるという効果を有する。
【0023】
請求項5から7および13から15に係わる本発明は、電子線殺菌時に発生した樹脂製容器の帯電を除去する帯電除去方法および装置において、前記樹脂製容器電子線殺菌の後工程で、前記樹脂製容器の口部を下方に向けた倒立状態で、該口部下方から樹脂製容器の内面に向けて導電性液体(A)を噴射し、同時に外方から前記樹脂製容器の外面に向けて導電性液体(B)を噴射して、前記導電性液体(A)と導電性液体(B)を電気的に導通させるようにしたことにより、簡素で安価な構造の装置によって電子線殺菌時に発生した樹脂製容器の帯電を除去できるという効果を有する。
【0024】
請求項8に係わる本発明は、前記請求項1から4に記載する帯電除去方法において、前記帯電除去の前工程或いは後工程に、請求項5から7に記載する帯電除去方法を付加して組み合わせたことにより、帯電除去が確実に行え、或いは、必要とする帯電除去レベルを確保できるという効果を有する。
【0025】
請求項9に係わる本発明は、前記請求項1から8に記載する帯電除去方法において、前記帯電除去の後工程に、前記電子線殺菌済の樹脂製容器内に第1の導電性液体を充填するとともに前記充填中の樹脂製容器の外面に第2の導電性液体を噴射接触させ、前記第1の導電性液体を充填する充填ノズルと前記第2の導電性液体を噴射する噴射ノズルを電気的に導通させることによって電子線殺菌時に発生した樹脂製容器の帯電を除去する帯電除去方法を付加して組み合わせたことにより、帯電除去が確実に行え、或いは、必要とする帯電除去レベルを確保できるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係わる帯電除去装置を組み込んだラインを摸式的に示した平面図である。
【図2】図1のII−II断面図で、本発明の第1の実施の形態に係わる帯電除去装置を示す図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係わる帯電除去装置を組み込んだラインを摸式的に示した平面図で、図1に相当する図である。
【図4】図2のIII−III断面図で、本発明の第2の実施の形態に係わる帯電除去装置を示す図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係わる帯電除去装置を組み込んだラインを摸式的に示した平面図で、図1に相当する図である。
【図6】図5のIV−IV断面図で、本発明の第3の実施の形態に係わる帯電除去装置を示す図である。
【図7】本発明の第4の実施の形態に係わり、複数の帯電除去装置を組み込んだラインを摸式的に示した平面図で、図1に相当する図である。
【図8】図7のV−V断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、この発明の実施の形態につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは本質的に同一のものが含まれる。
【0028】
(本発明の第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係わる帯電除去装置を図1、図2に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係わる帯電除去装置を組み込んだラインを摸式的に示した平面図である。
図2は、図1のII−II断面図で、本発明の第1の実施の形態に係わる帯電除去装置を示す図である。
図1において、上流から矢印F1の方向へ搬入されてくる樹脂製容器P(以下容器Pと称することがある。)は、矢印2aの方向に回転搬送されるスターホイール2、矢印3aの方向の回転搬送の間に電子線照射手段3Eからの電子線照射を受けて殺菌される電子線殺菌装置3、矢印4aの方向に回転搬送されるスターホイール4、矢印5aの方向に回転搬送されるスターホイール5、矢印6aの方向に回転搬送されるスターホイール6、矢印7aの方向の回転搬送の間に図示しない充填バルブから飲料等の液体を充填される充填装置7、矢印8aの方向に回転搬送されるスターホイール8を順次受け渡されて、矢印F2の方向へ搬出されるようになっている。
【0029】
なお、前記スターホイール2、電子線殺菌装置3、スターホイール4、スターホイール5、スターホイール6、充填装置7、スターホイール8は同期運転されるように構成されており、また、前記スターホイール2、電子線殺菌装置3、スターホイール4、スターホイール5は、後述するように容器Pを倒立状態で搬送し、スターホイール6は容器Pを倒立状態から正立状態に向きを変えて搬送するようになっており、充填装置7およびスターホイール8は容器Pを正立状態で搬送するようになっている。
また、前記スターホイール5には後述する本発明の第1の実施の形態に係わる帯電除去装置20が設けられている。
【0030】
前記帯電除去装置20は、図2に示すように、容器Pが口部Pmを下方に向けた倒立状態で、スターホイール5の図示しない回転板に設けられたグリッパ28により口部Pmを保持されて、外方から容器Pの外面に向けてハロゲン光線の照射を受けるようになっているハロゲン光線照射(加熱媒体)装置21(図示では一対)が設けられた構成となっている。
なお、図2では、容器Pが倒立状態の場合を示しているが、容器Pは正立状態でもよく、倒立状態に限定するものではない。
【0031】
次に、本発明の第1の実施の形態に係わる帯電除去装置20の作用を説明する。
電子線殺菌装置3による殺菌時に、樹脂製容器Pの壁体内部にはマイナスの電荷が引き寄せられて滞留し、壁体表面にはプラスの電荷が滞留することによって帯電する。
電子線殺菌装置3による殺菌時に帯電した樹脂製容器Pは、帯電除去装置20のハロゲン光線照射装置21からのハロゲン光線の照射を受けて、容器Pの樹脂がガラス転移点(樹脂の種類によるが、一例として75℃)乃至ガラス転移点から15℃低い範囲の温度に加温されると樹脂の導電率が上昇し、容器Pの壁体内部に滞留していたマイナスの電荷が前記壁体の表面に移動することによって、表面に滞留していたプラスの電荷と中和され、除電される。
【0032】
なお、前記加熱温度は、樹脂の導電率を上昇させるが、樹脂が変形しない程度の温度となっている。
また、前記説明では外方から容器Pの外面に向けてハロゲン光線の照射を受ける場合を説明したが、容器Pが内面でハロゲン光線の照射を受ける場合としてもよく、その作用は同様であるので、詳細な説明は省略する。
さらに、ここでは加熱媒体としてハロゲン光線照射を利用する場合を示したが、ハロゲン光線照射に限定するものではなく、赤外線等他の熱線照射でもよいことはもちろんである。
【0033】
(本発明の第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態に係わる帯電除去装置を図3および図4に基づいて説明する。
図3は、本発明の第2の実施の形態に係わる帯電除去装置を組み込んだラインを摸式的に示した平面図で、図1に相当する図である。
図4は、図3のIII−III断面図で、本発明の第2の実施の形態に係わる帯電除去装置を示す図である。
図3において、図1と同じ構造のものは同じ符号を記してあり、重複する説明は省略するが、スターホイール5には後述する本発明の第2の実施の形態に係わる帯電除去装置30が設けられている。
【0034】
前記帯電除去装置30は、図4に示すように、容器Pが口部Pmを下方に向けた倒立状態で、前記スターホイール5の図示しない回転板に設けられたグリッパ38により口部Pmを保持されて、口部Pmの下方から容器Pの内面に加熱媒体である熱水(加熱流体)Hを図示破線で示すように熱水31hとして噴射される噴射ノズル31が設けられた構成となっている。
なお、図4では、容器Pが倒立状態の場合を示しているが、容器Pは正立状態でもよく、倒立状態に限定するものではない。
【0035】
次に、本発明の第2の実施の形態に係わる帯電除去装置30の作用を説明する。
電子線殺菌装置3による殺菌時に帯電された樹脂製容器Pは、帯電除去装置30の噴射ノズル31から内部に熱水Hの噴射を受けて、容器Pの樹脂がガラス転移点(樹脂の種類によるが、1例として75℃)乃至ガラス転移点から15℃低い範囲の温度に加温されると、前記第1の実施の形態での説明と同様に、樹脂の導電率が上昇して容器Pの壁体内部に滞留していたマイナスの電荷が移動して、前記壁体の表面に滞留していたプラスの電荷と中和することにより除電される。
ここで、容器Pの内面に熱水Hを噴射すると、容器Pは熱水Hからの熱量を確実に受けるので、帯電除去を確実に行うことができる。
【0036】
なお、前記加熱温度は、樹脂の導電率を上昇させるが、樹脂が変形しない程度の温度となっている。
また、前記説明では容器Pの内面に熱水Hを噴射する場合を説明したが、容器Pの外面に熱水Hを噴射する場合としてもよく、その作用は同様であるので、詳細な説明は省略する。
さらに、前記説明では加熱流体として熱水を噴射する場合を示したが、熱水に限定するものではなく、蒸気或いは熱風等の加熱流体としてもよいことはもちろんである。
【0037】
(本発明の第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態に係わる帯電除去装置を図5および図6に基づいて説明する。
図5は、本発明の第3の実施の形態に係わる帯電除去装置を組み込んだラインを摸式的に示した平面図で、図1に相当する図である。
図6は、図5のIV−IV断面図で、本発明の第3の実施の形態に係わる帯電除去装置を示す図である。
図5において、図1および図3と同じ構造のものは同じ符号を記してあり、重複する説明は省略するが、スターホイール5には後述する本発明の第3の実施の形態に係わる帯電除去装置40が設けられている。
【0038】
前記帯電除去装置40は、図6に示すように、容器Pが口部Pmを下方に向けた倒立状態で前記スターホイール5の図示しない回転板に設けられたグリッパ48により口部Pmを保持されて、口部Pmの下方から容器Pの内面に向けて導電性液体L(一例として水)を図示破線で示すような導電性液体41Lとして噴射する噴射ノズル41と、外方から容器Pの外面に向けて導電性液体L(例えば水)を図示破線で示すような導電性液体43Lとして噴射する噴射ノズル43(図示では一対)と、前記噴射ノズル41から噴射されて容器Pの内面を連続して流下してくる図示太線で示すような導電性液体41Ldと前記噴射ノズル43から噴射されて容器Pの外面を連続して流下してくる図示太線で示すような導電性液体43Ldを受けて、前記導電性液体41Ldと導電性液体43Ldが集合により導通となるようにしたドレン受け42が設けられた構成となっている。
なお、前記ドレン受け42にはドレン用の配管42dが設けられていて、ドレン受け42内の導電性液体Lが外部にドレンされるようになっている。
【0039】
次に、本発明の第3の実施の形態に係わる帯電除去装置40の作用を説明する。
電子線殺菌装置3による殺菌時に帯電された樹脂製容器Pは、帯電除去装置40の噴射ノズル41から内面の全表面に噴射された導電性液体41Lおよび導電性液体41Lの噴射と同時に噴射ノズル43から外面の全表面に噴射された導電性液体43Lによって連続状態で接触されながら(濡らされながら)、前記内面および外面から連続状態で流下してきた導電性液体41Ldと導電性液体43Ldがドレン受け42に集合して電気的に導通となることにより、即ち、容器Pの内面と外面が導電性液体で同電位となることにより壁体の内部に帯電していたマイナスの電荷を外部に逃すことができる。
【0040】
前記説明では、容器Pが噴射ノズル41および噴射ノズル43からそれぞれ内外面の全表面に同時に導電性液体Lの噴射を受けて、容器Pから連続状態で流下してきた前記導電性液体41Ldと導電性液体43Ldがドレン受け42に集合して電気的に導通となるようにした場合を説明したが、前記噴射ノズル41および噴射ノズル43を電気的に導通させる場合としてもよく、前記内外面の全表面に同時に噴射する導電性液体41Lと導電性液体43L、或いは、前記内外面から連続状態で流下してきた導電性液体41Ldと導電性液体43Ldが電気的に導通状態となればよいことであるので、詳細な説明は省略する。
【0041】
(本発明の第4の実施の形態)
次に、本発明の第4の実施の形態に係わる帯電除去方法を図7および図8に基づいて説明する。
図7は、本発明の第4の実施の形態に係わる複数の帯電除去装置を組み込んだラインを摸式的に示した平面図で、図1に相当する図である。
図8は、図7のV−V断面図である。
図7において、図1、図3および図5と同じ構造のものは同じ符号を記してあり、重複する説明は省略するが、スターホイール5には第1の実施の形態で説明した帯電除去装置20が設けられ、充填装置7には後述する帯電除去装置50が設けられている。
即ち、本発明の第4の実施の形態では、前記帯電除去装置20の後工程に帯電除去装置50が付加して組み合わされた複数の帯電除去装置による構成となっている。
【0042】
図8において、前記帯電除去装置50は、容器Pが口部Pmを上方に向けた正立状態で前記充填装置7の回転板54に設けられたグリッパ58により口部Pmを保持されて、前記回転板54に設けられた充填バルブ53の充填ノズル53nから矢印FLaのように容器Pの内部に充填液FLを充填されると同時に、容器Pの外方に設けられ、容器Pの外面に向けて導電性液体(一例として水)Lを図示破線で示すような導電性液体51Lとして噴射する噴射ノズル51(図示では一対)が配管52に接続されており、前記充填ノズル53nと前記噴射ノズル51(配管52を介して)は図示二点鎖線Eで示すように電気的に導通状態となるように構成されている。
【0043】
次に、本発明の第4の実施の形態に係わる帯電除去装置20と帯電除去装置50の組み合わせによる帯電除去方法の作用を説明する。
電子線殺菌装置3により殺菌された樹脂製容器Pは、前記第1の実施の形態で説明したように、帯電除去装置20のハロゲン光線照射装置21からハロゲン光線の照射を受けて、容器Pの樹脂がガラス転移点(樹脂の種類によるが、一例として75℃)乃至ガラス転移点から15℃低い範囲の温度に加温されると、樹脂の導電率が上昇して容器Pの壁体の中に溜まっていたマイナス電荷が前記壁体の表面に移動して、前記壁体の表面のプラス電荷と中和することにより帯電除去された後、さらに、充填装置7に設けられた帯電除去装置50の充填ノズル53nと噴射ノズル51が電気的に導通状態で、充填ノズル53nによって容器Pの内部に充填液FLを充填され、同時に噴射ノズル51によって容器Pの外面に導電性液体Lが噴射されることにより、容器Pの壁体の中に滞留していたマイナスの電荷を外部に逃して確実に帯電除去される。
このように複数の帯電除去装置の組み合わせにより、容器Pの帯電除去性能レベルをより向上させ、より確実なものとすることができる。
【0044】
前記説明では、図7に示すラインに帯電除去装置20と帯電除去装置50を組み合わせて設けた場合を説明したが、前記第2或いは第3の実施の形態で説明した帯電除去装置30或いは帯電除去装置40と帯電除去装置50の組み合わせとしてもよく、目的とする帯電除去性能レベルを考慮して選択することができる。
また、前記説明による前記第1から第3の実施の形態の帯電除去装置20、帯電除去装置30、帯電除去装置40の内の1種類の帯電除去装置と帯電除去装置50の組み合わせに限定することなく、前記第1から第3の実施の形態の帯電除去装置20、帯電除去装置30、帯電除去装置40の内の2種類以上の帯電除去装置と帯電除去装置50との3種類以上の帯電除去装置の組合せとしてもよく、目的とする帯電除去性能レベルを考慮した選択することができる。
【0045】
さらに、前記説明による前記第1から第3の実施の形態の帯電除去装置20、帯電除去装置30、帯電除去装置40を複数組み合わせた方式としてもよいことは勿論であり、目的とする帯電除去性能レベルを考慮して選択することができる。
【符号の説明】
【0046】
2、4、5、6、8 スターホイール
2a 矢印
3 電子線殺菌装置
3a 矢印
3E 電子線照射手段
4a 矢印
5a 矢印
6a 矢印
7 充填装置
7a 矢印
8a 矢印
20 (第1の実施の形態の)帯電除去装置
21 ハロゲン光線照射装置
28 グリッパ
30 (第2の実施の形態の)帯電除去装置
31 (加熱流体の)噴射ノズル
31h 熱水
38 グリッパ
40 (第3の実施の形態の)帯電除去装置
41、43 (導電性液体の)噴射ノズル
41L 導電性液体
41Ld 導電性液体
42 ドレン受け
42d 配管
43L 導電性液体
43Ld 導電性液体
48 グリッパ
50 (充填装置7に設けられた)帯電除去装置
51 噴射ノズル
51L 導電性液体
52 配管
53 充填バルブ
53n 充填ノズル
54 回転板
58 グリッパ
E 二点鎖線
F1 矢印
F2 矢印
FL 充填液
FLa 矢印
H 熱水
L 導電性液体
P 樹脂製容器(容器)
Pm 口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子線殺菌時に発生した樹脂製容器の帯電を除去する帯電除去方法において、前記樹脂製容器の電子線殺菌の後工程で、加熱媒体によって前記樹脂製容器を加温することにより、前記樹脂製容器の樹脂の導電率を上昇させ、前記樹脂製容器の壁体の内部に帯電している電荷を前記壁体の表面に移動させて、電子線殺菌時に発生した樹脂製容器の帯電を除去するようにしたことを特徴とする帯電除去方法。
【請求項2】
請求項1に記載した帯電除去方法において、前記加熱媒体による樹脂製容器加温の温度を、前記樹脂製容器の樹脂のガラス転移点乃至ガラス転移点から15℃低い範囲の温度としたことを特徴とする帯電除去方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載した帯電除去方法において、前記加熱媒体による樹脂製容器加温を、前記樹脂製容器の表面に向けて熱線を照射して加温するようにしたことを特徴とする帯電除去方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載した帯電除去方法において、前記加熱媒体による樹脂製容器加温を、前記樹脂製容器の表面に向けて加熱流体を噴射して加温するようにしたことを特徴とする帯電除去方法。
【請求項5】
電子線殺菌時に発生した樹脂製容器の帯電を除去する帯電除去方法において、前記樹脂製容器電子線殺菌の後工程で、前記樹脂製容器の口部を下方に向けた倒立状態で、該口部の下方から樹脂製容器の内面に向けて導電性液体(A)を噴射し、同時に外方から前記樹脂製容器の外面に向けて導電性液体(B)を噴射して、前記導電性液体(A)と導電性液体(B)を電気的に導通させることにより、電子線殺菌時に発生した樹脂製容器の帯電を除去するようにしたことを特徴とする帯電除去方法。
【請求項6】
請求項5に記載した帯電除去方法において、前記導電性液体(A)と導電性液体(B)の電気的な導通を、前記樹脂製容器の内面に噴射されて内面に沿って連続状態で流下してきた導電性液体(A)と前記樹脂製容器の外面に噴射されて外面に沿って連続状態で流下してきた導電性液体(B)を前記口部下方で集合させることにより、前記内面に噴射された導電性液体(A)と前記外面に噴射された導電性液体(B)を電気的に導通させることによって行うようにしたことを特徴とする帯電除去方法。
【請求項7】
請求項5に記載した帯電除去方法において、前記導電性液体(A)と導電性液体(B)の電気的な導通を、前記導電性液体(A)を噴射する噴射ノズル(A)と導電性液体(B)を噴射する噴射ノズル(B)を電気的に導通させることによって行うようにしたことを特徴とする帯電除去方法。
【請求項8】
請求項1から4のいずれか1項に記載した帯電除去方法において、前記帯電除去の前工程或いは後工程に、請求項5から7のいずれか1項に記載した帯電除去方法を付加して組み合わせたことを特徴とする帯電除去方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載した帯電除去方法において、前記帯電除去の後工程に、前記電子線殺菌が済んだ樹脂製容器内に第1の導電性液体を充填するとともに充填中の樹脂製容器の外面に第2の導電性液体を噴射接触させ、前記第1の導電性液体を充填する充填ノズルと前記第2の導電性液体を噴射する噴射ノズルを電気的に導通させることによって電子線殺菌時に発生した樹脂製容器の帯電を除去する帯電除去方法を付加して組み合わせたことを特徴とする帯電除去方法。
【請求項10】
樹脂製容器を電子線照射により殺菌する電子線殺菌装置と、該電子線殺菌装置による殺菌後の前記樹脂製容器内に液体を充填する充填装置との間に、殺菌が済んだ樹脂製容器の樹脂の加温による導電率上昇を介して前記樹脂製容器の壁体内部に帯電していた電荷を前記壁体の表面に移動させるために前記樹脂製容器を加温する加温装置を設けて、電子線殺菌時に発生した樹脂製容器の帯電を除去する構成としたことを特徴とする帯電除去装置。
【請求項11】
請求項10に記載した帯電除去装置において、前記加温装置を、加熱媒体による照射によって前記殺菌が済んだ樹脂製容器を加温する加熱媒体照射装置として構成したことを特徴とする帯電除去装置。
【請求項12】
請求項10に記載した帯電除去装置において、前記加温装置を、殺菌が済んだ樹脂製容器の表面に向けた加熱流体噴射によって加温する加熱流体噴射ノズル装置として構成したことを特徴とする帯電除去装置。
【請求項13】
樹脂製容器を電子線照射により殺菌する電子線殺菌装置と、該電子線殺菌装置による殺菌後の前記樹脂製容器内に液体を充填する充填装置との間に、その口部を下方に向けて倒立状態の殺菌が済んだ樹脂製容器の口部下方から該殺菌が済んだ樹脂製容器の内面に向けて導電性液体(A)を噴射する噴射ノズル(A)と、前記導電性液体(A)の噴射と同時に外方から前記樹脂製容器の外面に向けて導電性液体(B)を噴射する噴射ノズル(B)を設け、前記内面に噴射された導電性液体(A)と前記外面に噴射された導電性液体(B)が電気的に導通となるようにして、電子線殺菌時に発生した樹脂製容器の帯電を除去する構成としたことを特徴とする帯電除去装置。
【請求項14】
請求項13に記載した帯電除去装置において、前記内面に噴射された導電性液体(A)と前記外面に噴射された導電性液体(B)の電気的な導通の構成を、前記樹脂製容器の内面に沿って連続状態で流下してきた前記内面に噴射された導電性液体(A)と前記樹脂製容器の外面に沿って連続状態で流下してきた前記外面に噴射された導電性液体(B)を前記樹脂製容器の口部下方で集合させて受け、前記内面に噴射された導電性液体(A)と前記外面に噴射された導電性液体(B)を導通させるようにしたドレン受けを設ける構成としたことを特徴とする帯電除去装置。
【請求項15】
請求項13に記載した帯電除去装置において、前記内面に噴射された導電性液体(A)と前記外面に噴射された導電性液体(B)の電気的な導通の構成を、前記内面に噴射された噴射ノズル(A)と前記外面に噴射された噴射ノズル(B)を電気的に導通させる構成としたことを特徴とする帯電除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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