説明

常温溶融塩及びその製造方法

【課題】以下に示す非水高伝導常温溶融塩を提供すること。
【解決手段】
一般式(I):


(式中、Yは、炭素数1〜10のアルキル基及び/又はエーテル結合を含む炭素数1〜10のアルキル基で置換されていてもよい、アンモニウムイオン、スルホニウムイオン、ピリジニウムイオン、(イソ)チアゾリウムイオン及び(イソ)オキサゾリウムイオンからなる群より選択されるカチオンであり(但し、前記カチオンは少なくとも1つの-CH2Rf1又は-OCH2Rf1(式中、Rf1は炭素数1〜10のペルフルオロアルキル基である)の置換基を有する)、Rf2及びRf3はそれぞれ独立に炭素数1〜10のペルフルオロアルキル基であるか、又は、Rf2とRf3は互いに一緒になって炭素数1〜4のペルフルオロアルキレン基を形成していてもよく、Xは-SO2-又は-CO-である。)で表される常温溶融塩。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料科学において有用な非水高伝導常温溶融塩(Hydrophibic, highly conductive ambient-temperature molten salts)又はイオン性液体等を製造するために使用する化合物、より詳しくは、フルオロアルキル基とイミド陰イオン基とを同時に導入することのできる新規な化合物及びその製造方法に関する。さらには、電位窓の広く且つイオン伝導性を有する新規な常温溶融塩及びその製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
フルオロアルキル基とイミド陰イオン基とを有する化合物として、1-メチル-3-(2’,2’,2’-トリフルオロエチル)イミダゾリウムカチオンと-N(SO2CF3)2イミド陰イオンとからなる化合物が知られており、該化合物は非水高伝導常温溶融塩(Hydrophibic, highly conductive ambient-temperature molten salts)として有用である(Inorganic Chemistry, 35巻, 1168-1178頁(1996年))。
【0003】
そのような1-メチル-3-(フルオロアルキル)イミダゾリウムイミドの製造方法としては、フルオロアルコールをトリフルオロメタンスルホン酸無水物と反応させた後、これを1-メチルイミダゾールと反応させて1-メチル-3-(フルオロアルキル)イミダゾリウムトリフルオロメタンスルホナートを得て、これをリチウムイミド塩と反応させて塩交換反応により1-メチル-3-(フルオロアルキル)イミダゾリウムイミドを得る方法が知られている(Inorganic Chemistry, 35巻, 1168-1178頁(1996年))。しかしながら、この従来法には、1-メチルイミダゾールからの全収率が15%という低収率の上、高純度の生成物を得るのが困難という重大な欠陥があった。
【0004】
(2,2,2-トリフルオロエチル)(フェニル)ヨードニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドが合成され、トリフルオロエチル基の導入試剤として用いることができることが報告された(Chemical Communication, 1998年, 2241-2242頁)。しかしながら、(2,2,2-トリフルオロエチル)(フェニル)ヨードニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドは結晶性が低いため、単離や精製が繁雑であるという問題点があった。
【0005】
さらに、(2,2,2-トリフルオロエチル)(フェニル)ヨードニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドの製造において好適な反応溶媒としては唯一1,1,2-トリクロロトリフルオロエタン(CFC-113)が知られているのみであった(Chemical Communication, 1998年, 2241-2242頁)。しかしながら、CFC-113はオゾン層破壊物質であるため、重大な環境破壊の問題があり、工業化が困難であった。
【0006】
また、フルオロアルキルアリールヨードニウムスルホナートが知られているが(Bulletin of the Chemical Society of Japan, 60巻, 3307-3313頁(1987年)及びUSP 4,873,027(特公平3-58332号))、この化合物ではフルオロアルキル基とイミド陰イオン基とを同時に導入することはできない。
【0007】
上述のように、フルオロアルキル基とイミド陰イオン基とを同時に且つ効率的に導入できる方法は知られていない。
【0008】
近年、常温溶融塩としてRf'CH2CH2基(Rf'は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基である)を有するトリアゾリウムイミド塩が報告された(Journal of Organic Chemistry, Vol.67, pp.9340-9345(2002))。しかしながら、原料のトリアゾールが高価であり、また少なくとも3段階の反応工程を必要とする。
【0009】
さらにまた、Rf''CH2CH2基(Rf''は炭素数4〜10のペルフルオロアルキル基である)を有するアンモニウムイミド基が報告された(Tetrahedron Letters, Vol.44, pp.9367-9370(2003))。しかしながら、Rf''CH2CH2基を有するアンモニウムイミド塩の合成には、Rf''CH2CH2基とイミド基の導入に2段階の工程を必要とする。
【0010】
【非特許文献1】Inorganic Chemistry, 35巻, 1168-1178頁(1996年)
【非特許文献2】Chemical Communication, 1998年, 2241-2242頁
【非特許文献3】Bulletin of the Chemical Society of Japan, 60巻, 3307-3313頁(1987年)
【非特許文献4】Tetrahedron Letters, Vol.44, pp.9367-9370(2003)
【特許文献1】特公平3-58332号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、フルオロアルキル基とイミド陰イオン基を同時に高効率で導入できる化合物、及び該化合物を用いて常温溶融塩を容易に且つ高収率で製造できる方法、並びに電位窓が広く且つ高いイオン伝導性を有する新規な常温溶融塩を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは上記の欠点を克服すべく鋭意検討を重ねた結果、フルオロアルキルアリールヨードニウムイミド化合物を用いることにより、一段階で容易にフルオロアルキル基とイミド陰イオン基を同時に高効率で導入できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
即ち、本発明は以下の発明を包含する。
【0014】
(1)一般式(I):
【化1】

(式中、Yは、炭素数1〜10のアルキル基及び/又はエーテル結合を含む炭素数1〜10のアルキル基で置換されていてもよい、アンモニウムイオン、スルホニウムイオン、ピリジニウムイオン、(イソ)チアゾリウムイオン及び(イソ)オキサゾリウムイオンからなる群より選択されるカチオンであり(但し、前記カチオンは少なくとも1つの-CH2Rf1又は-OCH2Rf1(式中、Rf1は炭素数1〜10のペルフルオロアルキル基である)の置換基を有する)、Rf2及びRf3はそれぞれ独立に炭素数1〜10のペルフルオロアルキル基であるか、又は、Rf2とRf3は互いに一緒になって炭素数1〜4のペルフルオロアルキレン基を形成していてもよく、Xは-SO2-又は-CO-である。)
で表される常温溶融塩。
【0015】
(2)Yが下記式(II)のアンモニウムイオン:
【化2】

(式中、R1〜R4はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、エーテル結合を含む炭素数1〜10のアルキル基、-CH2Rf1又は-OCH2Rf1(式中、Rf1は炭素数1〜10のペルフルオロアルキル基である)であり、R1〜R4のうちの2つが一緒になってモルホリン環、ピペリジン環又はピロリジン環を形成してもよい。但し、R1〜R4のうち少なくとも1つは-CH2Rf1又は-OCH2Rf1である。)
である前記(1)記載の常温溶融塩。
【0016】
(3)Yが下記式(III)のスルホニウムイオン:
【化3】

(式中、R1〜R3はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、エーテル結合を含む炭素数1〜10のアルキル基又は-CH2Rf1(式中、Rf1は炭素数1〜10のペルフルオロアルキル基である)である。但し、R1〜R3のうち少なくとも1つは-CH2Rf1である。)
である前記(1)記載の常温溶融塩。
【0017】
(4)Yが下記式(IV)のピリジニウムイオン:
【化4】

(式中、R1〜R5はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、エーテル結合を含む炭素数1〜10のアルキル基、-CH2Rf1又は-OCH2Rf1(式中、Rf1は炭素数1〜10のペルフルオロアルキル基である)であり、R6は-CH2Rf1又は-OCH2Rf1である。)
である前記(1)記載の常温溶融塩。
【0018】
(5)Yが下記式(V)の(イソ)チアゾリウムイオン又は(イソ)オキサゾリウムイオン:
【化5】

(式中、R1〜R3はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、エーテル結合を含む炭素数1〜10のアルキル基又は-CH2Rf1(式中、Rf1は炭素数1〜10のペルフルオロアルキル基)であり、R4は-CH2Rf1であり、Zは酸素原子又は硫黄原子である。)
である前記(1)記載の常温溶融塩。
【0019】
(6)一般式(VI):
【化6】

(式中、R1〜R5はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、エーテル結合を含む炭素数1〜10のアルキル基又は-CH2Rf1(式中、Rf1は炭素数1〜10のペルフルオロアルキル基)である。但し、R3及びR5のうち少なくとも1つは-CH2Rf1である。Rf2及びRf3はそれぞれ独立に炭素数1〜10のペルフルオロアルキル基であるか、又は、Rf2とRf3は互いに一緒になって炭素数1〜4のペルフルオロアルキレン基を形成していてもよい。)
で表される常温溶融塩。
【0020】
(7)一般式(VII):
【化7】

(式中、Rf1は炭素数1〜10のポリフルオロアルキル基であり、Rf2及びRf3はそれぞれ独立に炭素数1〜10のペルフルオロアルキル基であるか、又は、Rf2とRf3は互いに一緒になって炭素数1〜4のペルフルオロアルキレン基を形成してもよい。)
で表わされるフルオロアルキルフルオロフェニルヨードニウムイミド化合物。
【0021】
(8)下記式(VIII):
【化8】

(式中、Y'は、炭素数1〜10のアルキル基及び/又はエーテル結合を含む炭素数1〜10のアルキル基で置換されていてもよい、イミダゾリウムイオン、アンモニウムイオン、スルホニウムイオン、ピリジニウムイオン、(イソ)チアゾリウムイオン及び(イソ)オキサゾリウムイオンからなる群より選択されるカチオンであり(但し、前記カチオンは少なくとも1つの-CH2Rf1又は-OCH2Rf1(式中、Rf1は炭素数1〜10のポリフルオロアルキル基)の置換基を有する)、Rf2及びRf3はそれぞれ独立に炭素数1〜10のペルフルオロアルキル基であるか、又は、Rf2とRf3は互いに一緒になって炭素数1〜4のペルフルオロアルキレン基を形成していてもよい。)
で表される化合物の製造方法であって;
炭素数1〜10のアルキル基、エーテル結合を含む炭素数1〜10のアルキル基、-CH2Rf1及び/又は-OCH2Rf1(式中、Rf1は炭素数1〜10のポリフルオロアルキル基)で置換されていてもよい、イミダゾール、アミン、アミンN-オキシド、スルフィド、ピリジン、ピリジンN-オキシド、(イソ)チアゾール及び(イソ)オキサゾールからなる群より選択されるヘテロ原子含有化合物と一般式(IX):
【化9】

(式中、Rf1、Rf2及びRf3は上記定義のとおりであり、Arは未置換又はハロゲン原子若しくは炭素数1〜10のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基である。)
のフルオロアルキルアリールヨードニウムイミド化合物とを反応させて一般式(VIII)の化合物を得ることを含む前記製造方法。
【0022】
(9)Arがフェニル基又は下記式:
【化10】

である前記(8)記載の製造方法。
【0023】
(10)-Arが下記式:
【化11】

である前記(8)記載の製造方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本明細書でいう“炭素数1〜10のアルキル基”とは、直鎖又は分枝の炭素数1〜10のアルキル基であり、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル又はn-デシル等が挙げられる。
【0025】
また、本明細書でいう“炭素数1〜10のペルフルオロアルキル基”とは、上述のような炭素数1〜10のアルキル基であって、その全部の水素原子がフッ素原子により置換されているものをいう。炭素数1〜10のペルフルオロアルキル基としては、例えば、CF3-、CF3CF2-、CF3(CF2)2-、CF3(CF2)3-、CF3(CF2)4-、CF3(CF2)5-、CF3(CF2)6-、CF3(CF2)7-、CF3(CF2)8-、CF3(CF2)9-、(CF3)2CF-、(CF3CF2)(CF3)CF-、(CF3)2CFCF2-、(CF3)2CFCF2CF2-等が挙げられる。
【0026】
本発明の一般式(I):
【化12】

(式中、Yは、炭素数1〜10のアルキル基及び/又はエーテル結合を含む炭素数1〜10のアルキル基で置換されていてもよい、アンモニウムイオン、スルホニウムイオン、ピリジニウムイオン、(イソ)チアゾリウムイオン及び(イソ)オキサゾリウムイオンからなる群より選択されるカチオンであり(但し、前記カチオンは少なくとも1つの-CH2Rf1又は-OCH2Rf1(Rf1は炭素数1〜10のペルフルオロアルキル基である)の置換基を有する)、Rf2及びRf3はそれぞれ独立に炭素数1〜10のペルフルオロアルキル基であるか、又は、Rf2とRf3は互いに一緒になって炭素数1〜4のペルフルオロアルキレン基を形成していてもよく、Xは-SO2-又は-CO-である。)で表される常温溶融塩化合物について説明する。
【0027】
Rf1は炭素数1〜10のペルフルオロアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数1〜7、さらに好ましくは炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基である。
【0028】
RfとRfはそれぞれ独立に上記で例示したような炭素数1〜10個のペルフルオロアルキル基の任意の組み合わせを採用することができ、さらに好ましくは、例えば、-N(SO2CF3)2-N(SO2CF3)(SO2C2F5)、-N(SO2C2F5)2-N(SO2C3F7)2-N(SO2C4F9)2-N(SO2CF3)(SO2C4F9)、-N(SO2CF3)(SO2C6F13)、-N(SO2CF3)(SO2C8F17)、-N(SO2C4F9)(SO2C6F13)等のような、Rf及びRfがそれぞれ独立にペルフルオロアルキル基からなる組み合わせである。
【0029】
さらには、Rf及びRfはそれぞれ独立に炭素数1〜7、さらに好ましくは炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基の任意の組み合わせを採用することができる。
【0030】
あるいは、RfとRfは互いに一緒になって炭素数1〜4のペルフルオロアルキレン基を形成してもよい。この場合、イミド陰イオン部分は下記式のような環状構造を形成する。
【0031】
【化13】

【0032】
炭素数1〜4のペルフルオロアルキレン基とは、例えば、直鎖又は分枝のC1-C4ペルフルオロアルキレン基(-CF2-、-CF2CF2-、-CF(CF3)CF2-、-CF2CF2CF2-、-CF2CF2CF2CF2-等)が挙げられる。
【0033】
で表される炭素数1〜10のアルキル基及び/又はエーテル結合を含む炭素数1〜10のアルキル基で置換されていてもよいヘテロ原子含有化合物のカチオンとしては、例えば、アミン、アミン N-オキシド、スルフィド、ピリジン、ピリジン N-オキシド、(イソ)チアゾール及び(イソ)オキサゾール等に由来するカチオン、即ち、アンモニウムイオン、スルホニウムイオン、ピリジニウムイオン、(イソ)チアゾリウムイオン及び(イソ)オキサゾリウムイオン等が挙げられる。但し、これらのカチオンは、少なくとも1つの-CH2Rf1又は-OCH2Rf1(Rf1は炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜7、さらに好ましくは炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基である)の置換基を有する。
【0034】
は好ましくは以下から選択されるカチオンである。
【0035】
一般式(II)のアンモニウムイオン:
【化14】

(式中、R1〜R4はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、エーテル結合を含む炭素数1〜10のアルキル基、-CH2Rf1又は-OCH2Rf1(式中、Rf1は前記と同義である)であり、R1〜R4のうちの2つが一緒になってモルホリン環、ピペリジン環又はピロリジン環を形成してもよい。但し、R1〜R4のうち少なくとも1つは-CH2Rf1又は-OCH2Rf1である。);
【0036】
一般式(III)のスルホニウムイオン:
【化15】

(式中、R1〜R3はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、エーテル結合を含む炭素数1〜10のアルキル基又は-CH2Rf1(式中、Rf1は前記と同義である)である。但し、R1〜R3のうち少なくとも1つは-CH2Rf1である。);
【0037】
一般式(IV)のピリジニウムイオン:
【化16】

(式中、R1〜R5はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、エーテル結合を含む炭素数1〜10のアルキル基、-CH2Rf1又は-OCH2Rf1(式中、Rf1は前記と同義である)であり、R6は-CH2Rf1又は-OCH2Rf1である。);及び
一般式(V)の(イソ)チアゾリウムイオン又は(イソ)オキサゾリウムイオン:
【化17】

(式中、R1〜R3はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、エーテル結合を含む炭素数1〜10のアルキル基又は-CH2Rf1(式中、Rf1は前記と同義である)であり、R4は-CH2Rf1であり、Zは酸素原子又は硫黄原子である。)。
【0038】
また、一般式(I)のアニオン部は非対称構造を有することが好ましい。換言すると、-SO2Rf2と-XRf3とは同一ではないことが好ましい。
【0039】
また、本発明は、一般式(VI):
【化18】

(式中、R1〜R5はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、エーテル結合を含む炭素数1〜10のアルキル基又は-CH2Rf1(式中、Rf1は炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜7、さらに好ましくは炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基)である。但し、R3及びR5のうち少なくとも1つは-CH2Rf1である。Rf2及びRf3はそれぞれ独立に炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜7、さらに好ましくは炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基であるか、又は、Rf2とRf3は互いに一緒になって炭素数1〜4のペルフルオロアルキレン基を形成していてもよい。)
で表される常温溶融塩も包含する。
【0040】
一般式(I)及び(VI)の常温溶融塩は融点が低く、該化合物の融点は一般に常温以下である。常温とは、特に加熱も冷却もしない状況での温度のことであり、通常25℃前後である。しかしながら、融点が常温以上(例えば、100℃程度)の塩であっても、過冷却現象のために常温において液体状態(過冷却液体)として存在する塩もある。本明細書でいう常温溶融塩とは、融点が常温以下の塩だけでなく、融点が常温以上のものであっても常温又は常温以下において液体状態(過冷却液体)として存在し得る塩も含む意味である。
【0041】
一般式(I)及び(VI)の常温溶融塩は、導電率が高く、電位窓が広く、不燃性で、さらに不揮発性という性質を有するため、例えば、リチウム電池の電解質として有用な化合物である。
【0042】
次に、一般式(I')の常温溶融塩:
【化19】

(式中、Y'、Rf2、Rf3及びXは上記定義のとおりである。)
の製造方法について説明する。
【0043】
Xが-SO2-である一般式(I')の常温溶融塩化合物は、一般式(IX):
【化20】

(式中、Arは未置換又はハロゲン原子若しくは炭素数1〜10のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基であり、Rf1、Rf2及びRf3は上記定義のとおりである。)
で表される化合物とイミダゾール、アミン、アミンN-オキシド、スルフィド、ピリジン、ピリジンN-オキシド、(イソ)チアゾール及び(イソ)オキサゾールからなる群より選択されるヘテロ原子含有化合物とを反応させることにより製造することができる。
【0044】
Arは置換または未置換のフェニル基である。置換フェニル基の場合、置換基としてはハロゲン原子若しくは炭素数1〜10のアルキル基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。炭素数1〜10のアルキル基としては、先に述べたアルキル基が挙げられ、好ましくはメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル又はtert-ブチル等の炭素数1〜4のアルキルである。特に好ましくは、反応の効率と収率、及び安定性の面から未置換のフェニル基、フルオロフェニル基である。本発明の製造方法における式(IX)の出発化合物の単離精製の容易さ、及び後で述べるような有用なフルオロベンゼンの同時生成という観点からすると、フルオロフェニル基がより好ましい。
【0045】
ヘテロ原子含有化合物は、炭素数1〜10のアルキル基、エーテル結合、-CH2Rf1、及び/又は-OCH2Rf1(式中、Rf1は上記定義のとおりである)を含む炭素数1〜10のアルキル基等で置換されていてもよい。なお、本明細書でいう“エーテル結合を含む炭素数1〜10のアルキル基”とは、先に定義した“炭素数1〜10のアルキル基”であって、そのアルキル鎖中に少なくとも1つのエーテル結合(-O-)を含むものを言い、例えば、CH3O-、CH3OCH2-、CH3O(CH2)2-、CH3CH2OCH2-、CH3CH2OCH2CH2-、CH3O(CH2)3-、CH3CH2O(CH2)3-及びCH3O(CH2)2O(CH2)2O-等が挙げられる。また、これらのエーテル結合を含むアルキル基は、例えば、CF3CH2OCH2CH2-等のようにフッ素原子で置換されていてもよい。
【0046】
本発明で用いるヘテロ原子含有化合物は商業的に入手可能であるか、又は公知の方法により製造することができる。例えば、-CH2Rf1又は-OCH2Rf1を置換基として有するヘテロ原子含有化合物はRf1CH2I+(Ph)TfO-(TfO-:トリフルオロメタンスルホネートアニオン)を-CH2Rf1の導入剤として用いることによって製造される(Journal of Fluorine Chemistry,31,231-236頁(1986)参照)。
【0047】
一般式(IX)の化合物とヘテロ原子含有化合物との反応において、ヘテロ原子含有化合物の使用量は、一般式(IX)の化合物1モルについて、通常0.2モル等量から2モル等量の範囲であるが、経済性と収率の点から0.3モル〜1.5モル等量が好ましい。
【0048】
一般式(IX)とヘテロ原子含有化合物との反応は、通常溶媒中で行なうが、ヘテロ原子含有化合物が液体の場合、溶媒を用いずに反応を行うことも可能である。上記反応で用いる溶媒としては、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン等のクロロアルカン;トリクロロトリフルオロエタン等のフルオロクロロアルカン;ベンゼン、クロロベンゼン、フルオロベンゼン、トルエン等の芳香族化合物;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル;ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロベンゼン等のニトロ化合物;水;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、sec-ブタノール、t-ブタノール等のアルコール、又はこれらの混合物が挙げられる。しかしながら、これらの溶媒のうち、オゾン層破壊の環境面を考慮すると、四塩化炭素、フルオロクロロアルカンは用いない方が好ましい。
【0049】
反応温度は、用いるヘテロ原子含有化合物の反応性に依存するが、通常-80℃〜+100℃であり、収率及び効率よく反応を進行させるためには-50℃〜+80℃が好ましい。
【0050】
一般式(VII)の化合物:
【化21】

(式中、Rf1、Rf2及びRf3は上記定義のとおりである。)
は新規な化合物である。
【0051】
式(I')の常温溶融塩の製造のために一般式(VII)の化合物を原料として用いた場合、フルオロヨードベンゼンも同時に生成する。フルオロヨードベンゼンは、医薬及び農薬等の製造において重要な中間体である(例えば、CA 85-108420f)。したがって、本発明の一般式(VII)の化合物は、ヘテロ原子含有化合物にフルオロアルキル基Rf1CH2-(Rf1は上記定義のとおりである)と、イミド陰イオン基N-(SO2Rf2)(SO2Rf3)(Rf2及びRf3は上記定義のとおりである)とを一段階の反応で容易に導入できるだけでなく、それと同時に医薬及び農薬等の製造において重要な中間体フルオロヨードベンゼンを収率良く製造できる有用な化合物である。
【0052】
なお、一般式(IX)や(VII)で表わされる化合物のアニオン部の負電荷は窒素原子に局在化しているのではなく、アニオン部は下記に示すような共鳴構造を有する。
【0053】
【化22】

【0054】
本発明の一般式(IX)のフルオロアルキルアリールヨードニウムイミド化合物は以下のようにして製造することができる。
【0055】
一般式(IX)の化合物は、一般式(X):
Rf1CH2I(OCORf4)2 (X)
(式中、Rf1は上記定義のとおりであり、Rfは炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基である。)
で表わされるフルオロアルキルヨードソ化合物と、Ar-H(Arは上記定義のとおりである。)と、一般式(XI):
【化23】

(式中、Rf2及びRf3は上記定義のとおりである。)
で表わされるイミド化合物とを反応させることによって製造することができる。
【0056】
一般式(X)において、Rfは炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基であり、例えば、CF3-、CF3CF2-、CF3(CF2)2-、(CF3)2CF-、CF3(CF2)3-、(CF3CF2)(CF3)CF-、(CF3)2CFCF2-、(CF3)3C-等が挙げられる。
【0057】
一般式(X)のヨードソ化合物は商業的に入手可能なヨードフルオロアルカンを原料として公知の方法により製造することができ、例えば、ヨードフルオロアルカン:Rf1CH2I(Rf1は上記定義のとおりである)とペルフルオロアルキルペルオキシカルボン酸:Rf4COOOH(Rf4は上記定義のとおりである)とを反応させることにより容易に製造することができる(例えば、Bulletin of the Chemical Society of Japan, 60巻, 3307-3313頁(1987年))。ペルフルオロアルキルペルオキシカルボン酸:Rf4COOOHは、例えばペルフルオロアルキルカルボン酸:Rf4COOHの存在下で、20〜60%過酸化水素水とペルフルオロアルキルカルボン酸無水物:(Rf4CO)2Oとを反応させることにより容易に製造することができる。
【0058】
あるいは、一般式(X)のヨードソ化合物はヨードフルオロアルカン:Rf1CH2I(Rf1は上記定義のとおりである)を塩素ガスで塩素化し、続いて、ペルフルオロアルキルカルボン酸の銀塩で処理することによっても得ることができる(Tetrahedron Letters, 35巻(43号)、8015-8018頁(1994年))。
【0059】
本反応で用いられる一般式(X)で表わされるヨードソ化合物としては、例えば、CF3CH2I(OCOCF3)2、CF3CH2I(OCOC2F5)2、CF3CH2I(OCOC-3F7)2、CF3CH2I(OCOC4F9)2、CF3CF2CH2I(OCOCF3)2、CF3(CF2)2CH2I(OCOCF3)2、CF3(CF2)3CH2I(OCOCF3)2、CF(CF2)4CH2I(OCOCF3)2、CF3(CF2)5CH2I(OCOCF3)2、CF3(CF2)6CH2I(OCOCF3)2、CF3(CF2)7CH2I(OCOCF3)2、CF3(CF2)8CH2I(OCOCF3)2、CF3(CF2)9CH2I(OCOCF3)2、(CF3)2CFCH2I(OCOCF3)2、(CF3CF2)(CF3)CFCH2I(OCOCF3)2、(CF3)2CFCF2CH2I(OCOCF3)2、(CF3)2CFCF2CF2CH2I(OCOCF3)2等が挙げられ、CF3CH2I(OCOCF3)2、CF3CF2CH2I(OCOCF3)2、CF3(CF2)2CH2I(OCOCF3)2、CF3(CF2)3CH2I(OCOCF3)2、CF3(CF2)4CH2I(OCOCF3)2、CF3(CF2)5CH2I(OCOCF3)2、CF3(CF2)6CH2I(OCOCF3)2、CF3(CF2)7CH2I(OCOCF3)2、CF3(CF2)8CH2I(OCOCF3)2、CF3(CF2)9CH2I(OCOCF3)2、(CF3)2CFCH2I(OCOCF3)2、(CF3)2CFCF2CH2I(OCOCF3)2、(CF3)2CFCF2CF2CH2I(OCOCF3)2等が好ましい。
【0060】
原料として用いる未置換のベンゼン又はハロゲン原子若しくは炭素数1〜10のアルキル基で置換されていてもよいベンゼンAr-Hは商業的に入手可能である。
【0061】
一般式(XI)で表わされるイミドは商業的に入手可能か、あるいは公知の方法により容易に製造することができる(例えば、Inorganic Chemistry, 23巻, 3720-3723頁(1984年);Chem. Ztg., 96巻, 582頁(1972年);特開昭62-26264 )。
【0062】
原料として使用されるヨードソ化合物(X)、ベンゼン化合物Ar-H及びイミド化合物(XI)の化学量論比は以下のとおりである。
【0063】
Ar-Hの使用量は一般式(X)のヨードソ化合物1モルに対し、通常0.8〜10モル等量であるが、経済性と収率の面から、0.9〜2モル等量が好ましい。また、一般式(XI)のイミド化合物の使用量は一般式(X)のヨードソ化合物1モルに対し、通常0.7〜2モル等量であるが、経済性と収率の面から、0.8〜1.5モル等量が好ましく、0.9〜1.2モル等量がさらに好ましい。
上記各原料を溶媒中、-90℃〜+50℃、好ましくは-30℃〜室温で反応させる。
【0064】
溶媒としては、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン及びトリクロロエタン等のクロロアルカン;トリクロロフルオロメタン、トリクロロフルオロエタン及びトリクロロトリフルオロエタン等のフルオロクロロアルカン;トリフルオロ酢酸、クロロジフルオロ酢酸、ペンタフルオロプロピオン酸及びヘプタフルオロブチル酸等のハロゲン化脂肪酸;トリフルオロ酢酸無水物、クロロジフルオロ酢酸無水物、ペンタフルオロプロピオン酸無水物及びヘプタフルオロブチル酸無水物等のハロゲン化脂肪酸無水物、又はこれらの混合物が挙げられる。取り扱いの簡便さからクロロアルカンやフルオロクロロアルカンが好ましいが、オゾン層破壊の環境問題を避けるため、四塩化炭素を除くクロロアルカンが特に好ましい。さらには、塩化メチレンが収率、効率、及び環境問題を回避するために必要な回収の点から最も好ましい。
【0065】
溶媒の使用量は、前記一般式(X)のフルオロアルキルヨードソ化合物1モルについて、通常100リットル以下であり、10リットル以下が好ましく、5リットル以下が経済性から特に好ましい。溶媒の下限量は特に限定されないが反応が効率よく進行する量を適宜選択する。
【0066】
反応時間は、用いる原料、溶媒及び反応温度等に応じて適宜設定すればよいが、通常は5分〜60時間、好ましくは30分〜30時間である。
【0067】
反応終了後、通常の後処理を行ない、当業者に慣用の精製方法、例えば、再結晶等の方法により精製して、目的とする式(IX)の化合物を得る。
【0068】
式(IX)の化合物のうち、特にArがフルオロフェニル基である化合物は、式(VII)のフルオロアルキルフルオロフェニルヨードニウムイミド化合物であり、これはAr-Hとしてフルオロベンゼンを使用することにより製造される。式(VII)のフルオロアルキルフルオロフェニルヨードニウムイミド化合物は結晶性が高く、再結晶により容易に単離精製できる。例えば、(2,2,2-トリフルオロエチル)(フェニル)ヨードニウムイミドの融点は76-78℃(実施例7参照)であるのに対し、(2,2,2-トリフルオロエチル)(p-フルオロフェニル)ヨードニウムイミドの融点は高く、98.5-100℃(実施例1参照)である。また、(2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル)(フェニル)ヨードニウムイミドは室温で油状態の非結晶性物質(実施例8参照)であるのに対し、驚くべきことに、(2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル)(p-フルオロフェニル)ヨードニウムイミドは融点が91-93℃(実施例3参照)の高い結晶性物質である。
【0069】
また、Xが-CO-又は-SO2-である化合物(I)及び化合物(VI)は塩交換法でも製造することができる。塩交換反応は公知であり、例えば、Inorganic Chemistry, 35巻, 1168-1178頁(1996年)又はJournal of Physical Chemistry, B, Vol. 102, 8858-8864頁(1998)等に記載の方法に従って行うことができる。
【0070】
塩交換法で製造する場合、炭素数1〜10のアルキル基及び/又はエーテル結合を含む炭素数1〜10のアルキル基で置換されていてもよい、イミダゾリウム塩、アンモニウム塩、スルホニウム塩、ピリジニウム塩、(イソ)チアゾリウム塩及び(イソ)オキサゾリウム塩からなる群より選択される塩(但し、前記カチオンは少なくとも1つの-CH2Rf1又は-OCH2Rf1(式中、Rf1は上記定義のとおりである)の置換基を有する)と、一般式(XII):
【化24】

(式中、Rf2及びRf3は上記定義のとおりであり、Xは-CO-又は-SO2-であり、Mは1価の金属イオン、例えば、Li、Na、K等である。)
で表される塩とを反応させる。
【0071】
-CH2Rf1又は-OCH2Rf1(式中、Rf1は上記定義のとおりである)の少なくともひとつの置換基を有し、そして炭素数1〜10のアルキル基及び/又はエーテル結合を含む炭素数1〜10のアルキル基で置換されていてもよい、イミダゾリウム塩、アンモニウム塩、スルホニウム塩、ピリジニウム塩、(イソ)チアゾリウム塩及び(イソ)オキサゾリウム塩としては、好ましくは、先に述べたようなY'で表されるカチオン(例えば、イミダゾリウムイオン、アンモニウムイオン、スルホニウムイオン、ピリジニウムイオン、(イソ)チアゾリウムイオン又は(イソ)オキサゾリウムイオン等)と、アニオン(例えば、トリフルオロメタンスルホネートアニオン TfO-等)との塩が挙げられる。これらの塩は公知の方法により製造することができ、例えば、RaRbRcNCH2Rf1・TfO-(Ra、Rb及びRcは、それぞれ独立にC1-10アルキル、エーテル結合を有するC1-10アルキル、-CH2Rf1又は-OCH2Rf1(式中、Rf1は上記定義のとおりである)を表す。)は、アミンRaRbRcNとRf1CH2I(Ph)TfO-とを反応させることにより製造することができる(Bulletin of the Chemical Society of Japan”, 64巻, 2008-2010頁(1991年))。
【0072】
上述の塩と一般式(XII)の塩との塩交換反応により、塩のアニオンがイミド陰イオン基N-(SO2Rf2)(XRf3)(Rf2、Rf3及びXは上記定義のとおりである)に交換されて、一般式(I)又は(VI)の化合物が得られる。
【実施例】
【0073】
以下に実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0074】
(実施例1)(フルオロアルキル)(フルオロフェニル)ヨードニウムイミド:化合物1の製造
【0075】
【化25】

【0076】
反応容器に、CF3CH2I(OCOCF3)243.6 g (100 mmol)、HN(SO2CF3)2 28.1 g (100 mmol)、および 乾燥塩化メチレン125 mlを入れ、反応容器内を窒素置換し、この混合溶液を室温で 30 分間攪拌した。これを 0 ℃の浴で冷却した後、撹拌しながらフルオロベンゼン 14.2 ml (150 mmol) を2 分間かけて滴下した。この後、浴温をゆっくりと室温まで上げ、室温で20 時間反応させた。
【0077】
反応終了後、室温でエバポレータで溶媒を留去した後、さらに真空ポンプで吸引することにより副生成物のトリフルオロ酢酸を除去した。得られた結晶生成物を最小量のアセトニトリルに溶かし、これにクロロホルム/エーテルを加えるとすぐに結晶が析出した。析出した結晶をろ別して(2,2,2-トリフルオロエチル)(4-フルオロフェニル)ヨードニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(化合物1)を収量47g(収率80%)で得た。分析用サンプルをアセトニトリル/クロロホルムから再結晶して得た。
【0078】
融点 : 98.5-100℃
1H-NMR (in CD3CN, ppm) : δ 8.15(dd, J = 6, 4 Hz, o-H), 7.35(t, J = 8 Hz, m-H), 4.75(q, J = 10 Hz, CH2)
19F-NMR (内部標準 C6F6, in CD3CN, ppm) : δ 101.3(t, J = 10 Hz, CF3), 84.3(s, CF3S), 59.9(m, p-F)
IR (cm-1) : 1201(SO2), 1359(SO2)
元素分析:実測値C 20.52%,H 1.18%,N 2.40%
計算値C 20.53%,H 1.03%,N 2.39%
【0079】
(実施例2)(フルオロアルキル)(フルオロフェニル)ヨードニウムイミド:化合物2の製造
【0080】
【化26】

【0081】
原料としてCF3CH2I(OCOCF3)221.8 g(50 mmol)、フルオロベンゼン 7.05 ml(75 mmol)、HN(SO2CF2CF3)219.1 g (50 mmol)と溶媒としてCClF2CCl2F 100mlを用いて、実施例1と同様にして化合物2を得た(収率56%)。
【0082】
融点 : 79.5-80.5℃
1H-NMR (in CD3CN, ppm) : δ 8.15(dd, J = 9, 5 Hz, o-H), 7.36(t, J = 9 Hz, m-H), 4.76(q, J = 10 Hz, CH2)
19F-NMR (内部標準 C6F6, in CD3CN, ppm) : δ 101.4(t, J = 10 Hz, CF3CH2), 84.5(s, CF3), 60.0(m, p-F), 46.2(s, CF2S)
IR (cm-1) : 1215(SO2), 1348(SO2)
元素分析:実測値C 20.95%,H 1.05%,N 2.08%
計算値C 21.04%,H 0.88%,N 2.04%
【0083】
(実施例3)(フルオロアルキル)(フルオロフェニル)ヨードニウムイミド:化合物3の製造
【0084】
【化27】

原料としてCF3CF2CH2I(OCOCF3)24.86 g(10 mmol)、フルオロベンゼン 1.41 ml(15 mmol)、HN(SO2CF3)22.81 g (10 mmol)と溶媒としてCClF2CCl2F 20mlを用いて、実施例1と同様にして化合物3を得た(収率72%)。
【0085】
融点 : 91.0-93.0℃
1H-NMR (in CD3CN, ppm) : δ 8.17(dd, J = 9, 4 Hz, o-H), 7.36(t, J = 9 Hz, m-H), 4.78(t, J = 17 Hz, CH2)
19F-NMR (内部標準 C6F6, in CD3CN, ppm) : δ 84.1(s, CF3S), 80.3(s, CF3), 60.0(m, p-F), 55.5(t, J = 17 Hz, CF2)
IR (cm-1) : 1199(SO2), 1346(SO2)
元素分析:実測値C 20.63%,H 1.08%,N 2.26%
計算値C 20.80%,H 0.95%,N 2.21%
【0086】
(実施例4)(フルオロアルキル)(フルオロフェニル)ヨードニウムイミド:化合物4の製造
【0087】
【化28】

【0088】
原料としてCF3CF2CH2I(OCOCF3)29.72g(20 mmol)、フルオロベンゼン 2.85ml(30 mmol)、HN(SO2CF2CF3)27.62g(20 mmol)と溶媒としてCH2Cl2 40mlを用いて、実施例1と同様にして化合物4を得た(収率62%)。
【0089】
融点 : 99.3-99.8℃
1H-NMR (in CD3CN, ppm) : δ 8.17(m, o-H), 7.35(m, m-H), 4.78(t, J = 17 Hz, CH2)
19F-NMR (内部標準 C6F6, in CD3CN, ppm) : δ 84.5(s, CF3CF2S), 80.5(CF3), 60.1(m, p-F), 55.8(t, J = 10 Hz, CF2), 46.2(s, CF2S)
IR (cm-1) : 1221(SO2), 1349(SO2)
元素分析:実測値C 21.15%,H 0.97%,N 2.09%
計算値C 21.24%,H 0.82%,N 1.91%
【0090】
(実施例5)(フルオロアルキル)(フルオロフェニル)ヨードニウムイミド:化合物5の製造
【0091】
【化29】

【0092】
原料としてCF3(CF2)2CH2I(OCOCF3)25.36g(10 mmol)、フルオロベンゼン 1.41ml(15 mmol)、HN(SO2CF3)22.81g(10 mmol)と溶媒としてCH2Cl2 12.5mlを用いて、実施例1と同様にして化合物5を得た(収率84%)。
【0093】
融点 : 58.7-59.7℃
1H-NMR (in CD3CN, ppm) : δ 8.19(dd, J = 9, 5 Hz o-H), 7.35(t, J = 9 Hz m-H), 4.84(t, J = 18 Hz, CH2)
19F-NMR (内部標準 C6F6, in CD3CN, ppm) : δ 84.4(s, SCF3), 83.3(t, J = 10 Hz, CF3), 60.2(m, p-F), 59.0(m, CF2), 38.2(m, CF2)
IR (cm-1) : 1338(SO2), 1203(SO2)
元素分析:実測値C 20.82%,H 0.86%,N 2.18%
計算値C 21.03%,H 0.88%,N 2.04%
【0094】
(実施例6)(フルオロアルキル)(フルオロフェニル)ヨードニウムイミド:化合物6の製造
【0095】
【化30】

【0096】
原料としてCF3(CF2)6CH2I(OCOCF3)27.36g(10 mmol)、フルオロベンゼン 1.41ml(15 mmol)、HN(SO2CF3)22.81g(10 mmol)と溶媒としてCH2Cl2 12.5mlを用いて、実施例1と同様にして化合物6を得た(収率88%)。
【0097】
融点 : 67.4-68.0℃
1H-NMR (in CD3CN, ppm) : δ 8.20(dd, J = 9, 5 Hz o-H), 7.35(t, J = 9 Hz m-H), 4.86(t, J = 18 Hz, CH2)
19F-NMR (内部標準 C6F6, in CD3CN, ppm) : δ 84.4(s, SCF3), 82.9(m, CF3), 60.2(m, p-F), 60.0(m, CF2), 42.7(m, CF2 x 2), 42.1(m, CF2), 41.3(m, CF2), 37.9(m, CF2)
IR (cm-1) : 1354(SO2), 1204(SO2)
元素分析:実測値C 21.65%,H 0.69%,N 2.01%
計算値C 21.71%,H 0.68%,N 1.58%
【0098】
(実施例7)(フルオロアルキル)(フェニル)ヨードニウムイミド:化合物7の製造
【0099】
【化31】

【0100】
原料としてCF3CH2I(OCOCF3)221.8g(50 mmol)、ベンゼン 6.7ml(75 mmol)、HN(SO2CF3)214.1g(50 mmol)と溶媒としてCH2Cl2 62.5mlを用いて、実施例1と同様にして反応を行なった。
【0101】
反応終了後、室温で溶媒の塩化メチレンをエバポレータで留去した後、真空ポンプで副生成物のトリフルオロ酢酸を留去した。得られた油状生成物にクロロホルムを加え、生じた固体状生成物をろ別した。この固体生成物をアセトニトリル/クロロホルムに溶解し、冷凍庫(-20℃)のなかで一晩放置して生じた結晶をろ別して、(2,2,2-トリフルオロエチル)(フェニル)ヨードニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド 化合物7を得た(収率71%)。分析用サンプルをアセトニトリル/クロロホルムから再度再結晶して得た。
【0102】
融点 : 76.0-78.0℃(文献値(Chemical Communication, 1998年, 2241-2242頁):77-79℃)
1H-NMR (in CD3CN, ppm) : δ 8.13(d, J = 8 Hz o-H), 7.83(t, J = 8 Hz p-H), 7.62(t, J = 8 Hz m-H), 4.76(q, J = 10 Hz, CH2)
19F-NMR (内部標準 C6F6, in CD3CN, ppm) : δ 101.4(t, J = 10 Hz CF3), 84.2(s, CF3S)
IR (cm-1) : 1202(SO2), 1361(SO2)
元素分析:実測値C 21.03%,H 1.38%,N 2.51%
計算値C 21.18%,H 1.24%,N 2.47%
【0103】
(実施例8)(フルオロアルキル)(フェニル)ヨードニウムイミド:化合物8の製造
【0104】
【化32】

【0105】
原料としてCF3CF2CH2I(OCOCF3)24.86g(10 mmol)、ベンゼン 1.34ml(15 mmol)、HN(SO2CF3)22.81g(10 mmol)と溶媒としてCH2Cl2 12.5mlを用いて、実施例1と同様にして反応を行なった。
【0106】
反応終了後、室温で溶媒の塩化メチレンをエバポレータで留去した後、真空ポンプで副生成物のトリフルオロ酢酸を留去した。得られた油状生成物を最少量のアセトニトリルに溶かした後、多量のクロロホルムを加えて下層に分離した油状物を取り出し、(2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル)(フェニル)ヨードニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド 化合物8を得た(収率61%)。
【0107】
1H-NMR (in CD3CN, ppm) : δ 8.15(d, J = 8 Hz o-H), 7.82(t, J = 8 Hz p-H), 7.61(t, J = 8 Hz m-H), 4.80(t, J = 17 Hz, CH2)
19F-NMR (内部標準 C6F6, in CD3CN, ppm) : δ 84.2(s, CF3S), 80.4(s, CF3), 55.7(t, J = 17 Hz, CF2)
IR (cm-1) : 1201(SO2), 1345(SO2)
元素分析:実測値C 19.89%,H 1.24%,N 2.07%
計算値C 21.41%,H 1.14%,N 2.27%
【0108】
(実施例9)化合物7を用いる1-メチル-3-(2',2',2'-トリフルオロエチル)イミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(化合物9)の合成
【0109】
【化33】

【0110】
反応容器に、(2,2,2-トリフルオロエチル)(フェニル)ヨードニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(化合物7)3.4 g(6 mmol)と塩化メチレン12 mlを入れ、反応容器内を窒素雰囲気とした。氷浴冷却下で撹拌しながら、これに1-メチルイミダゾール0.49 g(6 mmol)を1分かけて滴下した。滴下後、氷浴を取り外して室温で3時間反応させた。反応終了後、溶媒を留去した。得られた液状生成物を水、続いて、副生成物のヨードベンゼンを除くためヘキサンで洗浄した。次いで、この液状生成物を少量の酢酸エチルに溶かし、これに多量のエーテルを加えることによって液状生成物を分離した。この液状生成物を溶媒から分離し、真空ポンプの減圧下で110℃で乾燥して、純粋な1-メチル-3-(2',2',2'-トリフルオロエチル)イミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(化合物9)を液状物質として得た(収量1.94 g:収率73%)。なお、生成物が着色している場合は活性炭で脱色処理してもよい。化合物9の物性、元素分析及びスペクトルデータを表8に示す。
【0111】
(実施例10)化合物1を用いる1-メチル-3-(2',2',2'-トリフルオロエチル)イミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(化合物9)とp-フルオロヨードベンゼンの合成
【0112】
【化34】

【0113】
反応容器に、(2,2,2-トリフルオロエチル)(4-フルオロフェニル)ヨードニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド17.6 g(30 mmol)と塩化メチレン60 mlを入れ、反応容器内を窒素雰囲気とした。氷浴冷却下で撹拌しながら、これに1-メチルイミダゾール 2.46g(30 mmol)を滴下した。滴下後、氷浴を取り外して室温で3時間反応させた。反応終了後、溶媒を留去した。得られた液状生成物をヘキサン(又はペンタン)、水、続いて、ヘキサン(又はペンタン)で洗浄した。次いで、この液状生成物を少量の酢酸エチルに溶かし、これに多量のエーテルを加えることによって液状生成物を分離した。この液状生成物を溶媒から分離し、真空ポンプの減圧下で110℃で6時間乾燥させて、純粋な1-メチル-3-(2',2',2'-トリフルオロエチル)イミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(化合物9)を液状物質として得た(収量11.5 g:収率86%)。なお、生成物が着色している場合は活性炭で脱色処理してもよい。一方、上記のヘキサン(又はペンタン)洗浄液からほぼ定量的にp-フルオロヨードベンゼンを得た。
【0114】
(実施例11)化合物3を用いる1-メチル-3-(2',2',3',3',3'-ペンタフルオロプロピル)イミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(化合物11)とp-フルオロヨードベンゼンの合成
【0115】
【化35】

【0116】
化合物1の代わりに化合物3を用いる以外は、実施例10と同様にして純粋な1-メチル-3-(2',2',3',3',3'-ペンタフルオロプロピル)イミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(化合物11)を液状物質として得た(収率90%)。また、p-フルオロヨードベンゼンをほぼ定量的に得た。化合物11の物性、元素分析及びスペクトルデータを表8に示す。
【0117】
(実施例12)塩交換反応による1-メチル-3-(2',2',2'-トリフルオロエチル)イミダゾリウム N-(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド(化合物12)の合成
【0118】
【化36】

【0119】
原料の1-メチル-3-(2',2',2'-トリフルオロエチル)イミダゾリウムトリフラートは以下のようにして合成できる。
【0120】
塩化メチレン20mlに1-メチルイミダゾール0.82g(10mmol)を加え、氷浴中で攪拌しながら(2,2,2-トリフルオロエチル)(フェニル)ヨードニウムトリフラート4.54g(10mmol)を加えた。その後、室温で3時間攪拌した。次いで、塩化メチレンを留去し、加熱しながら真空ポンプで乾燥して、目的とする1-メチル-3-(2',2',2'-トリフルオロエチル)イミダゾリウムトリフラートをほぼ定量的に得た。
【0121】
【化37】

【0122】
反応容器に、1-メチル-3-(2',2',2'-トリフルオロエチル)イミダゾリウムトリフラート10mmol及び水10mlを入れ、攪拌しながらナトリウム N-(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド2.94g(11mmol)と水3mlとの溶液を添加し、15分間攪拌した。下層の油層を分離し、これを水で繰り返し洗浄した。得られた油状物を110℃で3時間、真空ポンプで乾燥して、1-メチル-3-(2',2',2'-トリフルオロエチル)イミダゾリウム N-(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド(化合物12)を得た(2.87g、70%)。さらに精製する必要がある場合には、得られた油状物を少量の酢酸エチルに溶解し、これに多量のエーテルを加えることにより析出させて乾燥すればよい。また、生成物が着色している場合には活性炭で処理するとよい。化合物12の物性、元素分析及びスペクトルデータを表8に示す。
【0123】
実施例14〜22
表1に示す出発物質及び反応条件を用いて、方法A又は方法Bに従って種々のフルオロアルキル置換イミダゾリウム塩を合成した。方法Aは実施例10と同様の方法であり、方法Bは実施例12と同様の方法(塩交換法)である。
【0124】
【表1】



【0125】
実施例23〜30
表2に示す出発物質及び反応条件を用いて、方法A又は方法Bに従って種々のフルオロアルキル置換ピリジニウム塩を合成した。方法Aは実施例10と同様の方法であり、方法Bは実施例12と同様の方法(塩交換法)である。
【0126】
【表2】


【0127】
実施例31〜34
表3に示す出発物質及び反応条件を用いて、方法A又は方法Bに従って種々のフルオロアルコキシ置換ピリジニウム塩を合成した。方法Aは実施例10と同様の方法であり、方法Bは実施例12と同様の方法(塩交換法)である。
【0128】
【表3】

【0129】
実施例35〜61
表4に示す出発物質及び反応条件を用いて、方法A又は方法Bに従って種々のフルオロアルキル置換アンモニウム塩を合成した。方法Aは実施例10と同様の方法であり、方法Bは実施例12と同様の方法(塩交換法)である。
【0130】
【表4】






【0131】
実施例62〜64
表5に示す出発物質及び反応条件を用いて、方法A又は方法Bに従って種々のフルオロアルコキシ置換アンモニウム塩を合成した。方法Aは実施例10と同様の方法であり、方法Bは実施例12と同様の方法(塩交換法)である。実施例62、63及び64では、副生成物としてそれぞれ(CH3)3N+CH2CF3N-(SO2CF3)2、(CH3CH2)3N+CH2CF3N-(SO2CF3)2及びCH3CH2CH2CH2N+(CH3)2(CH2CF3) N-(SO2CF3)2が得られ、それらの収率はそれぞれ44%、9%及び30%であった。
【0132】
【表5】

【0133】
実施例65〜72
表6に示す出発物質及び反応条件を用いて、方法A又は方法Bに従って種々のフルオロアルキル置換スルホニウム塩を合成した。方法Aは実施例10と同様の方法であり、方法Bは実施例12と同様の方法(塩交換法)である。
【0134】
【表6】


【0135】
実施例73〜75
表7に示す出発物質及び反応条件を用いて、方法A又は方法Bに従って種々のフルオロアルキル置換オキサゾリウム塩、チアゾリウム塩及びイソオキサゾリウム塩を合成した。方法Aは実施例10と同様の方法であり、方法Bは実施例12と同様の方法(塩交換法)である。
【0136】
【表7】

【0137】
また、実施例9〜75で得られた化合物の融点、元素分析及び19F-NMRスペクトルデータを以下の表8に示す。融点が室温(約25℃)以下である化合物は室温で液体状態を示した。融点が室温を超える化合物では、過冷却現象のために室温で液体状態を示す。
【0138】
【表8】





【0139】
(実施例76)サイクリックボルタモグラムによる酸化電位及び還元電位の測定
下記の各化合物についてサイクリックボルタモグラムを測定し、各化合物の電位窓を求めた。また、比較例としてEMI-TFSI(1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)を用いた。
【0140】
【化38】

【0141】
サイクリックボルタモグラムの測定条件は以下のとおりである。
作用極 :Pt電極
対極・参照極:Ag
電圧掃引速度:50 mV/sec
【0142】
サイクリックボルタモグラムにより測定された各化合物の酸化電位及び還元電位を以下の表に示す。
【0143】
【表9】

【0144】
表9に示されるとおり、本発明の化合物は従来の常温溶融塩と比較して同等かそれよりも広い電位窓(酸化電位と還元電位との差)を有することがわかる。
【0145】
(実施例77)イオン伝導度
以下の化合物I-1(実施例12の化合物)及び比較例としてTFEMI-TFSIについてイオン伝導度を測定した。その結果を図1に示す。
【0146】
【化39】

【0147】
図1より、常温溶融塩I-1のイオン伝導度はTFEMI-TFSIと比較して高温領域において向上することが示された。
【0148】
本明細書で引用した全ての刊行物をそのまま参考として本明細書中にとり入れるものとする。
【産業上の利用可能性】
【0149】
一般式(VII)及び(IX)の化合物を用いることにより、イミダゾール等のへテロ原子含有化合物にフルオロアルキル基とイミド陰イオン基とを同時に導入して、容易に常温溶融塩を得ることができる。また、本発明の常温溶融塩は電位窓が広く、安定性に優れ、且つ高いイオン伝導度を有しているため、リチウム電池の電解質等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】実施例77の結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】

(式中、Yは、炭素数1〜10のアルキル基及び/又はエーテル結合を含む炭素数1〜10のアルキル基で置換されていてもよい、アンモニウムイオン、スルホニウムイオン、ピリジニウムイオン、(イソ)チアゾリウムイオン及び(イソ)オキサゾリウムイオンからなる群より選択されるカチオンであり(但し、前記カチオンは少なくとも1つの-CH2Rf1又は-OCH2Rf1(式中、Rf1は炭素数1〜10のペルフルオロアルキル基である)の置換基を有する)、Rf2及びRf3はそれぞれ独立に炭素数1〜10のペルフルオロアルキル基であるか、又は、Rf2とRf3は互いに一緒になって炭素数1〜4のペルフルオロアルキレン基を形成していてもよく、Xは-SO2-又は-CO-である。)
で表される常温溶融塩。
【請求項2】
が下記式(II)のアンモニウムイオン:
【化2】

(式中、R1〜R4はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、エーテル結合を含む炭素数1〜10のアルキル基、-CH2Rf1又は-OCH2Rf1(式中、Rf1は炭素数1〜10のペルフルオロアルキル基である)であり、R1〜R4のうちの2つが一緒になってモルホリン環、ピペリジン環又はピロリジン環を形成してもよい。但し、R1〜R4のうち少なくとも1つは-CH2Rf1又は-OCH2Rf1である。)
である請求の範囲第1項記載の常温溶融塩。
【請求項3】
が下記式(III)のスルホニウムイオン:
【化3】

(式中、R1〜R3はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、エーテル結合を含む炭素数1〜10のアルキル基又は-CH2Rf1(式中、Rf1は炭素数1〜10のペルフルオロアルキル基である)である。但し、R1〜R3のうち少なくとも1つは-CH2Rf1である。)
である請求の範囲第1項記載の常温溶融塩。
【請求項4】
が下記式(IV)のピリジニウムイオン:
【化4】

(式中、R1〜R5はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、エーテル結合を含む炭素数1〜10のアルキル基、-CH2Rf1又は-OCH2Rf1(式中、Rf1は炭素数1〜10のペルフルオロアルキル基である)であり、R6は-CH2Rf1又は-OCH2Rf1である。)
である請求の範囲第1項記載の常温溶融塩。
【請求項5】
が下記式(V)の(イソ)チアゾリウムイオン又は(イソ)オキサゾリウムイオン:
【化5】

(式中、R1〜R3はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、エーテル結合を含む炭素数1〜10のアルキル基又は-CH2Rf1(式中、Rf1は炭素数1〜10のペルフルオロアルキル基)であり、R4は-CH2Rf1であり、Zは酸素原子又は硫黄原子である。)
である請求の範囲第1項記載の常温溶融塩。
【請求項6】
一般式(VI):
【化6】

(式中、R1〜R5はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、エーテル結合を含む炭素数1〜10のアルキル基又は-CH2Rf1(式中、Rf1は炭素数1〜10のペルフルオロアルキル基)である。但し、R3及びR5のうち少なくとも1つは-CH2Rf1である。Rf2及びRf3はそれぞれ独立に炭素数1〜10のペルフルオロアルキル基であるか、又は、Rf2とRf3は互いに一緒になって炭素数1〜4のペルフルオロアルキレン基を形成していてもよい。)
で表される常温溶融塩。
【請求項7】
一般式(VII):
【化7】

(式中、Rf1は炭素数1〜10のペルフルオロアルキル基であり、Rf2及びRf3はそれぞれ独立に炭素数1〜10のペルフルオロアルキル基であるか、又は、Rf2とRf3は互いに一緒になって炭素数1〜4のペルフルオロアルキレン基を形成してもよい。)
で表わされるフルオロアルキルフルオロフェニルヨードニウムイミド化合物。
【請求項8】
下記式(VIII):
【化8】

(式中、Y'は、炭素数1〜10のアルキル基及び/又はエーテル結合を含む炭素数1〜10のアルキル基で置換されていてもよい、イミダゾリウムイオン、アンモニウムイオン、スルホニウムイオン、ピリジニウムイオン、(イソ)チアゾリウムイオン及び(イソ)オキサゾリウムイオンからなる群より選択されるカチオンであり(但し、前記カチオンは少なくとも1つの-CH2Rf1又は-OCH2Rf1(式中、Rf1は炭素数1〜10のペルフルオロアルキル基)の置換基を有する)、Rf2及びRf3はそれぞれ独立に炭素数1〜10のペルフルオロアルキル基であるか、又は、Rf2とRf3は互いに一緒になって炭素数1〜4のペルフルオロアルキレン基を形成していてもよい。)
で表される化合物の製造方法であって;
炭素数1〜10のアルキル基、エーテル結合を含む炭素数1〜10のアルキル基、-CH2Rf1又は-OCH2Rf1(式中、Rf1はC1-10ペルフルオロアルキルである)で置換されていてもよい、イミダゾール、アミン、アミンN-オキシド、スルフィド、ピリジン、ピリジンN-オキシド、(イソ)チアゾール及び(イソ)オキサゾールからなる群より選択されるヘテロ原子含有化合物と一般式(IX):
【化9】

(式中、Rf1、Rf2及びRf3は上記定義のとおりであり、Arは未置換又はハロゲン原子若しくは炭素数1〜10のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基である。)
とを反応させて一般式(VIII)の化合物を得ることを含む前記製造方法。
【請求項9】
-Arがフェニル基又は下記式:
【化10】

である請求の範囲第8項記載の製造方法。
【請求項10】
-Arが下記式:
【化11】

である請求の範囲第8項記載の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−131615(P2006−131615A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−267143(P2005−267143)
【出願日】平成17年9月14日(2005.9.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】