説明

幹細胞を活性化するための方法およびデバイス

本明細書に記載の発明の実施形態には、幹細胞源中の間葉幹細胞を、骨を形成できる骨芽細胞に分化するように刺激する方法およびデバイスが含まれる。記載したデバイスおよび方法には、骨髄穿刺液、脂肪組織および/または精製した同種異系幹細胞などの幹細胞源を、活性化幹細胞の形成に有効なように活性剤に曝露することが含まれる。本発明は、哺乳動物において骨成長を促進するための移植組成物を調製する方法を提供し、この方法は、(a)幹細胞を1種または複数の活性剤と24時間以下の間接触させて、活性化幹細胞を調製するステップ、(b)活性化幹細胞から活性剤を分離して、活性剤を実質的に含まない活性化幹細胞集団を形成するステップ、および(c)活性剤を実質的に含まない活性化幹細胞集団と骨移植片代用物とを混合することにより、哺乳動物において骨成長を促進する移植組成物を調製するステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この特許出願は、2008年10月31日に出願された、表題「DEVICE FOR ACTIVATING BONE MARROW ASPIRATE USING EX VIVO STIMULATION BY GROWTH FACTORS FOR IMPROVED BONE FORMATION」の米国仮特許出願第61/110,096号、および2009年2月13日に出願された、表題「METHOD AND DEVICE FOR FORMING A BONE MARROW ASPIRATE PRODUCT」の米国仮特許出願第61/152,335号(これらの内容は、それらの全体が参考として本明細書に援用される)の出願日の利益を主張する。
【0002】
分野
本明細書に記載の発明主題は、骨髄穿刺液(bone marrow aspirate)中の幹細胞を、エクスビボ刺激を用いて活性化することを含む、幹細胞を活性化するデバイスおよび方法に関する。該発明主題は、このような活性化幹細胞を含有する移植物にも関する。
【背景技術】
【0003】
最大限の骨形成を実現するには、骨芽細胞の表現型を既に示している細胞を移植することが望ましく、それは、そのような細胞が骨形成活性を示す見込みがあるためである。しかし、骨髄幹細胞の骨芽細胞へのインビトロ分化には、骨形成培地中での培養が必要であり(非特許文献1)、このような細胞の増殖は、インビトロで低下することになり得る。その上、骨形成培地の使用には、細胞に成分(例えば、増殖因子)を添加することが必要であり、そうした成分は、細胞と共に患者に投与した場合、意図しない副作用を示す恐れがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Jaiswalら、J Cell Biochem(1997年)64巻:295〜312頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、当技術分野では、幹細胞、例えばヒト骨髄幹細胞から、骨原細胞、骨芽細胞または骨芽細胞表現型細胞をインビトロで産生する簡潔で信頼できる方法であって、所望の細胞が、骨原細胞、骨芽細胞または骨芽細胞表現型細胞の生成に使用される因子から容易に分離される方法に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、哺乳動物において骨成長を促進するための移植組成物(implant composition)を調製する方法であって、(a)幹細胞を1種または複数の活性剤と24時間以下の間接触させて、活性化幹細胞を調製するステップ、(b)活性化幹細胞から活性剤を分離して、活性剤を実質的に含まない活性化幹細胞集団を形成するステップ、および(c)活性剤を実質的に含まない活性化幹細胞集団と骨移植片代用物とを混合することにより、哺乳動物において骨成長を促進する移植組成物を調製するステップを含み、少なくとも1種の活性剤が、幹細胞の骨形成原細胞または骨形成前駆細胞(osteogenic precursor cell)への分化を促進する方法である。骨形成原細胞および/または骨形成前駆細胞は、骨原細胞、骨芽細胞または骨芽細胞表現型細胞の場合もある。幾つかの実施形態では、幹細胞を1種または複数の活性剤と5分間から1時間接触させる。他の実施形態では、幹細胞を1種または複数の活性剤と5分間から0.5時間接触させる。幹細胞は、例えば、骨髄、脂肪組織、筋肉組織、臍帯血、胚卵黄嚢、胎盤、臍帯、骨膜、胎児の皮膚、青年の皮膚(adolescent skin)または血液から、取得または単離することができる。幹細胞は、胚性、生後または成体の幹細胞でもよい。幾つかの実施形態では、幹細胞は、自家、同種異系または異種である。幹細胞は、間葉幹細胞を含むことができる。このような間葉幹細胞は、自家骨髄穿刺液を含むことができる。該骨髄穿刺液は、手術中に取り出すことができる。幹細胞を得た後、不要な液体を除去するために幹細胞を濃縮することができる。あるいは、幹細胞は、最初に得た組織または液体から分離することができる。
【0007】
活性剤は、例えば、細胞の増殖および/または分化を調節でき、小分子、ペプチド、増殖因子、サイトカイン、リガンド、ホルモンおよびそれらの組合せからなる群より選択し得る。活性剤の例には、トランスホーミング増殖因子β(TGF−β)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、骨形成タンパク質(BMP)、インスリン増殖因子(IGF)、インターロイキン−I(IL−I)、インターロイキン−11(IL−11)、シンバスタチン(simvastatsin)、デキサメタゾン、オキシステロール、ソニックヘッジホッグ、インターフェロン、腫瘍壊死因子、神経増殖因子(NGF)、フィブロネクチン、RGDペプチド、インテグリン、上皮増殖因子(EGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、ケラチノサイト増殖因子、骨原性タンパク質(osteogenic protein)、およびそれらの組合せ等の活性剤が挙げられる。幾つかの実施形態では、活性剤は、BMP−2、TGF−β3、PSGF−AB、PDGF−BB、FGF−2、TGF−β1、BMP−4、BMP−7、BMP−6、FGF−8、IL−11、シンバスタチン、デキサメタゾン、オキシステロール、ソニックヘッジホッグ、およびそれらの組合せからなる群より選択される。他の実施形態では、活性剤は、TGF−βおよびFGFbを含み、更にPDGFを含むことができる。活性剤は、自家源に由来してもよい。活性剤は、溶液中で本方法に使用することができる。活性剤を溶液中で本方法で使用する場合、活性化幹細胞は、ろ過、ゲルろ過、接線流ろ過、免疫沈降、免疫吸収、カラムクロマトグラフィーまたはそれらの組合せを含む手順によって、ステップ(b)に従って活性剤から分離される。他の実施形態では、活性剤は、固体支持体に結合されている。例えば、活性剤の少なくとも一部は、共有結合、吸着、非共有結合性相互作用および/またはそれらの組合せにより、固体支持体に直接的または間接的に結合することができる。幾つかの実施形態では、活性剤の少なくとも一部は、ペプチド、抗体、化学架橋剤、アルキレン鎖またはそれらの組合せを介して、固体支持体に結合されている。
【0008】
骨移植片代用物は、カルシウム塩などの材料を含むことができる。このようなカルシウム塩は、例えば、リン酸一カルシウム一水和物、α−リン酸三カルシウム、β−リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、またはそれらの組合せを含むことができる。骨移植片代用物は、脱灰骨、リン酸ナトリウム塩、ポリマーまたはそれらの組合せを更に含むことができる。このようなポリマーは、コラーゲン、ゼラチン、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸塩、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、キサンタン(xantham)ガム、ガーガム、アルギネート、またはそれらの組合せでもよい。幾つかの実施形態では、本方法は、幹細胞においてアルカリホスファターゼおよび/または骨形成タンパク質(BMP)受容体サブユニットの発現を増加させる。このような方法は、患者に移植組成物を移植することを更に含むことができる。
【0009】
本発明の別の態様は、本明細書に記載の方法により調製される移植組成物である。
【0010】
本発明の別の態様は、被験体における骨の損傷、障害または状態を処置する方法であって、被験体における骨の損傷、障害または状態の部位へ、本明細書に記載の移植組成物を投与することを含む方法である。このような骨の損傷、障害または状態は、骨折、骨欠陥、骨移植、骨移植片、骨癌、関節置換、関節修復、骨癒合、骨面修復(bone facet repair)、骨変性、歯科インプラント、歯の修復(dental repair)、関節炎、骨再建、またはそれらの組合せでもよい。
【0011】
本発明の別の態様は、固体支持体と、幹細胞の骨形成原細胞または骨形成前駆細胞への分化を促進する少なくとも1種の活性剤とを含む、幹細胞活性化用のデバイスであって、(i)幹細胞を少なくとも1種の活性剤と共にインキュベートするため、および(ii)インキュベートするステップ(i)の後に、幹細胞から少なくとも1種の活性剤を分離するために適合しているデバイスである。例えば、少なくとも1種の活性剤は、トランスホーミング増殖因子β(TGF−β)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、骨形成タンパク質(BMP)、インスリン増殖因子(IGF)、インターロイキン−I(IL−I)、インターロイキン−11(IL−11)、シンバスタチン、デキサメタゾン、オキシステロール、ソニックヘッジホッグ、インターフェロン、腫瘍壊死因子、神経増殖因子(NGF)、フィブロネクチン、RGDペプチド、インテグリン、上皮増殖因子(EGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、ケラチノサイト増殖因子、骨原性タンパク質、およびそれらの組合せからなる群より選択される。
【0012】
幾つかの実施形態では、少なくとも1種の活性剤は、BMP−2、TGF−β3、PSGF−AB、PDGF−BB、FGF−2、TGF−β1、BMP−4、BMP−7、BMP−6、FGF−8、IL−11、シンバスタチン、デキサメタゾン、オキシステロール、ソニックヘッジホッグ、およびそれらの組合せからなる群より選択される。他の実施形態では、少なくとも1種の活性剤は、TGF−βおよびFGFbを含み、更にPDGFを含むことができる。少なくとも1種の活性剤は、例えば、自家源に由来してもよい。活性剤(複数可)は、固体支持体内の溶液中にある、または固体支持体に結合することができる。活性剤は、例えば、少なくとも1種の活性剤と結合する抗体またはペプチドを介して、固体支持体に結合することができる。
【0013】
固体支持体は、カラムマトリックス材料、フィルター、培養用のプレート、チューブもしくは皿、マイクロタイタープレート、ビーズ、ディスク、またはそれらの組合せを含むことができる。固体支持体は、容器でもよい。固体支持体は、プラスチック、セルロース、セルロース誘導体、磁気粒子、ニトロセルロース、ガラス、グラスファイバー、ラテックス、またはそれらの組合せを含むことができる。固体支持体は、少なくとも1種の活性剤を除去するために、親和性マトリックスも含むことができる。フィルターが固体支持体中に存在する場合、フィルターは、細胞および骨移植片代用物材料(bone graft substitute material)を保持するが、少なくとも1種の活性剤を通過させることができる。あるいは、フィルターは、少なくとも1種の活性剤を保持するが、幹細胞を通過させることができる。幾つかの実施形態では、固体支持体は、幹細胞と結合することも、幹細胞に対して有害な相互作用をすることもしない。他の実施形態では、固体支持体は、幹細胞と有害な相互作用をせずに、幹細胞と結合することができる。
【0014】
該デバイスは、少なくとも1種の活性剤と共に幹細胞をインキュベートする時間を制御するために、タイマーを更に備えることができる。例えば、タイマーは、インキュベートするステップ(i)の後に、幹細胞から少なくとも1種の活性剤を分離することを誘発することができる。幾つかの実施形態では、タイマーを備えたデバイスは、少なくとも1種の活性剤と共に幹細胞をインキュベートする時間を24時間以下に制御する。他の実施形態では、タイマーを備えたデバイスは、少なくとも1種の活性剤と共に幹細胞をインキュベートする時間を5分間から1時間に制御する。
【0015】
本発明の別の態様は、幹細胞源を取り扱うための第1の構成要素と、幹細胞源中の間葉幹細胞を骨芽細胞に分化するように刺激し、骨芽細胞を骨の修復および/または生成に有用な移植組成物中に組み込めるようにするのに有効に、幹細胞源を活性剤に曝露するための第2の構成要素を備える、骨形成用のデバイスである。幹細胞源は、自家骨髄穿刺液を含む骨髄穿刺液、脂肪組織および/または精製した同種異系幹細胞でもよい。
【0016】
活性剤には、それだけに限らないが、BMP−2、TGF−β3、PSGF−AB、PDGF−BB、FGF−2、TGF−β1、BMP−4、BMP−7、BMP−6、FGF−8、IL−11、シンバスタチン、デキサメタゾン、オキシステロールおよび/またはソニックヘッジホッグを挙げることができる。活性剤は、デバイスの固体支持体に直接結合するか、または例えばリンカーを介して固体支持体に繋留してもよい。一実施形態では、繋留部は、アルキレン鎖、ペプチド、抗体、化学架橋剤、およびそれらの組合せから選択される。
【0017】
一実施形態では、活性剤は溶液中にあり、第2の構成要素は、間葉幹細胞から活性剤を除去するフィルター構成要素または親和性マトリックス(例えば、ペプチドもしくは抗体を有する)を更に含むことができる。
【0018】
一実施形態では、骨髄穿刺液を活性化するデバイスを含む。このデバイスは、骨移植片代用物と、患者から取り出した骨髄穿刺液とを混合して、混合物を形成するための構成要素を備える。該デバイスは、間葉幹細胞が、骨芽細胞の表現型を強化するように誘発するのに有効に、その混合物を固定または繋留活性剤に一時的に曝露するための構成要素も備える。
【0019】
別の実施形態では、患者から取り出した骨髄穿刺液を取り扱うための構成要素を備えた、骨髄穿刺液を活性化するデバイスを含む。このデバイスは、間葉幹細胞が、骨芽細胞の表現型を強化するように誘発するのに有効に、骨髄穿刺液を活性剤に曝露するための構成要素も備える。
【0020】
骨移植片代用物と、患者から取り出した骨髄穿刺液とを混合して、混合物を形成するための構成要素を備えた、骨髄穿刺液を活性化する別のデバイスも記載している。該デバイスは、間葉幹細胞が、骨芽細胞の表現型を強化するように誘発するのに有効に、その混合物を固定または繋留活性剤に曝露するための構成要素を更に備える。曝露した後、BMAは、繋留または固定活性剤から分離し、骨移植片代用物と混合することができる。
【0021】
一実施形態では、幹細胞源(例えば、自家骨髄穿刺液を含めた骨髄穿刺液)を活性剤に曝露するステップであって、幹細胞源中の間葉幹細胞が、骨芽細胞に分化するように刺激されるステップを含む方法。一実施形態では、骨髄穿刺液は、手術中に取り出される、および/または患者から取り出されるときの形態で使用される。あるいは、骨髄穿刺液は、患者から取り出された後で更に濃縮することができる。この方法は、刺激または活性化された幹細胞(例えば、間葉幹細胞)と骨移植片合成代用物とを混合して、混合物を形成するステップも含むことができ、前記曝露するステップは、間葉幹細胞が、骨芽細胞の表現型を強化するように誘発するのに有効に、その混合物を固定または繋留活性剤に一時的に曝露することを含む。
【0022】
一実施形態では、活性剤は、基材と結合して、結合基材を形成する。この実施形態では、幹細胞源は、結合活性剤と、5分間から24時間または5分間から1時間または15分間から1時間などのある期間、インキュベートされる。一実施形態では、前記インキュベートするステップは、骨において骨形成タンパク質(BMP)受容体サブユニットの上方調節を起こす。
【0023】
一実施形態では、幹細胞源を活性剤に曝露する前記ステップは、幹細胞の溶液中で行われ、該方法は、親和性マトリックスの形成および/またはろ過などで、幹細胞の溶液から活性剤を除去するステップを更に含むことができる。
【0024】
別の実施形態では、骨形成を刺激できる前駆細胞を形成する方法が提供される。方法の操作には、骨髄穿刺液(BMA)を活性剤と混合し、間葉幹細胞(MSC)が、骨芽細胞の表現型を強化するように誘発するために、活性剤を使用するステップが含まれる。このような方法は、間葉幹細胞が、骨芽細胞の表現型を強化または発現するように誘発することができる。該方法は、骨移植片代用物と、患者から取り出した骨髄穿刺液とを混合して、混合物を形成するステップ、および間葉幹細胞が、骨芽細胞の表現型を強化または発現するように誘発するのに有効に、その混合物を固定または繋留活性剤に一時的に曝露するステップも含むことができる。
【0025】
幾つかの実施形態では、該方法は、刺激した間葉幹細胞を患者に移植するステップを更に含み、そのステップは、幹細胞源と共に活性剤を移植することを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明の実施形態において、初代ヒトMSCにより発現されたアルカリホスファターゼのレベルを図示している。細胞は、線維芽細胞増殖因子(以後「FGF−2」)(100ng/ml)またはTGFβ3(250ng/ml)で1時間処理した後、分化培地中で培養した。次いで、細胞により発現されたアルカリホスファターゼのレベルは、実施例1に記載のアッセイを用いて測定した。
【図2】図2は、初代ヒト間葉細胞(以後「MSC」)を24時間活性剤に曝露した後の該細胞における、3種の骨形成タンパク質(以後「BMP」)受容体ユニット、即ちBMPR−1A(「1A」)、BMPR−1B(「1B」)およびBMPR−II(「II」)の相対的なmRNAコピー数を図示している。使用した活性剤は、血小板由来増殖因子(以後「PDGF BB」)、線維芽細胞増殖因子(以後「FGFb」)およびトランスホーミング増殖因子(以後「TGFβ3」)であり、濃度1ng/ml、10ng/mlおよび100ng/mlで、24時間曝露した。細胞を採集し、BMP受容体ユニット全3種、即ち1A、1BおよびIIに対して、実施例1に記載のように定量的なポリメラーゼ連鎖反応(以後「PCR」)を行った。
【図3】図3は、初代MSCを、濃度1ng/ml、10ng/mlおよび100ng/mlを用いてPDGF BB、FGFbおよびTGFβ3に1時間曝露した後における、BMP受容体ユニット3種(即ち1A、1BおよびII)の相対的なmRNAコピー数を図示している。細胞を採集し、BMP受容体ユニット全3種(即ち1A、1BおよびII)に対して、実施例1に記載のように定量的PCRを行った。
【発明を実施するための形態】
【0027】
当技術の現状では、骨髄穿刺液(以後「BMA」)を手術中に患者から取り出し、骨移植片代用物と混合し、骨治癒を促進するために、手術部位に再移植する。しかし、骨髄穿刺液は、骨芽細胞を産生し得る結合組織前駆細胞をある程度含有し得るが、骨形成を実際に促進できる骨形成原細胞の個数および種類には、患者によって大きな変動がある。
【0028】
本明細書には、BMAまたは幹細胞混合物における該前駆細胞の、細胞数の増加または骨形成能の増加のいずれかにより、幹細胞(例えばBMA)の性能を改善する方法、デバイスおよび移植物が記載されている。本明細書に記載の実施形態には、手短に言えば、手術中に、幹細胞を1種または複数の外因性活性剤にエクスビボで曝露することにより、骨成長を刺激できる前駆細胞を生成し、次いで、その活性剤(複数可)を幹細胞(即ち、活性剤で活性化された前駆細胞)から除去するための方法およびデバイスが含まれる。活性剤(複数可)は、例えば、小分子、ペプチド、増殖因子、サイトカイン、リガンドまたは他の因子でもよい。活性剤(複数可)は、自家源から捕捉でき、または商業源から取得でき、または製造することもできる(例えば、組換え手順により)。
【0029】
幾つかの実施形態では、活性剤は、幹細胞混合物の前駆細胞において骨形成タンパク質、以後のBMPの受容体サブユニット(複数可)の発現を増加させることができる。活性剤によるこの処理は、例えば、骨傷害または骨手術の部位における内因性BMPに応答する前駆細胞の能力の増強を補助する。活性剤によるこのような処理は、幹細胞の骨芽細胞経路に沿った分化を推進することもできる。幹細胞は、本明細書に記載のように、サイトカインによる長期間(例えば7日間)の処理によりこれまで活性化されているが、このような長期間の活性剤に対する幹細胞の曝露は、不要である。約15分間から約3時間活性剤に曝露しただけの後で、幹細胞は、活性化され、骨形成能を示すことができる。
【0030】
その上、幾つかの研究によれば、補助細胞集団の存在が、インビトロでの骨前駆細胞の増生に必要になり得そうであると示されている。したがって、高度に精製された骨前駆細胞は、骨形成サイトカインの混合物がたとえ存在していても、増殖できないこともあり得る。したがって、幹細胞の長期の培養は、有利でないこともあり得る。本明細書に記載の方法およびデバイスは、長期間の細胞培養を必要とせず、より迅速であり、そのため長期の細胞培養に伴う汚染の恐れおよび経費を回避している。
【0031】
本明細書に記載のように、骨形成能を有する幹細胞の増強、活性化および/または分化は、デバイス上またはデバイス内に活性剤(複数可)を繋留することにより実現することができ、その結果、幹細胞混合物内に含まれる細胞を活性化し、例えば、デバイスから細胞を除去することにより、活性剤(複数可)から容易に分離することができる。細胞の移植前に細胞から活性剤を分離することにより、活性剤自体の意図せざる副作用(例えば、望ましくない応答の刺激または有害な免疫応答の誘発)の可能性が低下する。
【0032】
幹細胞源
本明細書に記載の方法、デバイスおよび移植物は、都合よい任意源からの幹細胞を使用することができる。しかし、骨形成能を有するか、または骨形成能を有する細胞を生成するように処理(例えば、分化)できる幹細胞が、好ましい。
【0033】
本明細書に記載の方法、デバイスおよび移植物に使用できる幹細胞源には、骨髄、脂肪組織、筋肉組織、エクスビボ培養自家間葉幹細胞、市販の同種異系間葉幹細胞、臍帯血、胚卵黄嚢、胎盤、臍帯、骨膜、胎児および青年の皮膚、ならびに血液が挙げられる。幾つかの実施形態では、幹細胞は、間葉幹細胞、または間葉幹細胞を含む細胞混合物(例えば、骨髄穿刺液)である。幹細胞は、自家、同種異系、または異種源からでもよい。幹細胞は、胚性、または生後源もしくは成体源からでもよい。
【0034】
骨髄穿刺液は、本明細書に記載の方法、デバイスおよび移植物に有用な1つの幹細胞源である。このような骨髄穿刺液は、自家、同種異系、または異種源からでもよいが、幾つかの実施形態では、骨髄穿刺液は自家である。
【0035】
骨髄穿刺液は、造血幹細胞、赤血球および白血球ならびにそれらの前駆体、間葉幹細胞および前駆細胞、間質細胞およびその前駆体、ならびに線維芽細胞、網状赤血球、脂肪細胞および内皮細胞を含み、「間質」と呼ばれる結合組織ネットワークを形成する一群の細胞の複雑な混合物を含有する。間質からの細胞は、細胞表面タンパク質を介した直接相互作用および増殖因子の分泌による造血細胞の分化を形態的に調節し、骨構造の基礎形成および支持に関与する。研究によれば、骨髄は、軟骨、骨および他の結合組織細胞に分化する能力を有する「前間質」細胞を含有することが示されている。Beresford 「Osteogenic Stem Cells and the Stromal System of Bone and Marrow」、Clin. Orthop.、240巻:270頁、1989年。最近の研究によれば、多能性間質幹細胞または間葉幹細胞と呼ばれるこうした細胞は、活性化時に異なる数種類の細胞系(即ち、骨細胞、軟骨細胞、脂肪細胞など)に生成される能力を有することが示されている。しかし、間葉幹細胞は、雑多な他の細胞(即ち、赤血球、血小板、好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球、脂肪細胞など)と共に、骨髄穿刺液中に非常に微量に存在することが多い。それに加え、様々な結合組織へのその分化能は、穿刺液中にあって変動し得る生物活性因子の存在に依存するだけでなく、ある程度は供与者の年齢にも依存する。本明細書に記載の方法およびデバイスは、幹細胞試料中の細胞数、および幹細胞の骨芽細胞への分化能を改善することにより、こうした問題に対処する。
【0036】
幾つかの実施形態では、幹細胞は間葉幹細胞を含む。間葉幹細胞は、当業者に利用可能な手順によって同定することができる。例えば、間葉幹細胞は、コロニー形成単位アッセイ(CFU−f)、または間葉幹細胞が通常発現するマーカーを用いたフローサイトメトリーにより同定することができる。間葉幹細胞は、一般に、CD271、CD105、CD73などのマーカーを発現するが、CD34およびCD45の表現型を示す。
【0037】
骨髄細胞を使用する場合、こうした細胞は、腸骨稜、大腿骨、脛骨、脊椎、肋骨または他の髄腔から得てもよい。幾つかの実施形態では、該幹細胞は自家体液(例えば、骨髄穿刺液)に由来する。骨髄穿刺液は、良好な間葉幹細胞源である。
【0038】
該幹細胞は、幾つかの実施形態では、「無関係な」細胞を排除し、活性化ステップの効率を改善するために、または間葉幹細胞を予備選択して、移植物材料における骨形成を促進するために、遠心、サイズろ過、免疫磁気選別などの分離工程を受けることができる。細胞型の分離および/または間葉幹細胞の精製を行うことは必要とは言えないが、幾つかの実施形態では望ましいこともある。
【0039】
細胞型の分離が所望の場合、例えば骨髄を含む生物試料は、遠心して、間葉幹細胞などの結合組織成長促進成分の多い画分を含め、密度に基づく各種の画分に試料の成分を分離することができる。次いで、結合組織成長促進成分の多い画分を単離することができる。それに加え、遠心する生物試料が、細胞培養培地物質を含有しないようにすることができる。幾つかの実施形態では、遠心する生物試料は、得られた単離、活性化された幹細胞を後に移植する患者からの組織材料(例えば、場合により血液または他の組織材料と組み合わさった骨髄材料)から、本質的になることができる。
【0040】
活性剤
活性剤は、本明細書に記載の方法およびデバイスにおいて、幹細胞からの骨形成原細胞への形成および/または分化を促進するために使用される。このような活性剤は、例えば、小分子、ペプチド、増殖因子、サイトカイン、リガンド、ホルモン、ならびに増殖および分化を調節する他の分子でもよい。活性剤(複数可)は、自家源から捕捉でき、または商業源から取得でき、または製造することもできる(例えば、組換え手順により)。
【0041】
使用できる活性剤の例には、TGF、FGF、PDGF、BMP、IGF、インターロイキン、IL−I、IL−11、TGF、NGF、EGF、HGF、シンバスタチン、デキサメタゾン、オキシステロール、ソニックヘッジホッグ、インターフェロン、フィブロネクチン、「RGD」またはインテグリンのペプチドおよび/またはタンパク質、ケラチノサイト増殖因子、骨原性タンパク質、MSX1、NFKB1、RUNX2、SMAD1、SMAD2、SMAD3、SMAD4、SOX9、TNF、TWIST1、VDR、AHSG、AMBN、AMELY、BGLAP、ENAM、MINPP1、STATH、TUFT1、BMP1、COL11A1、SOX9、ALPL、AMBN、AMELY、BGLAP、CALCR、CDH11、DMP1、DSPP、ENAM、MINPP1、PHEX、RUNX2、STATH、TFIP11、TUFT1、BGLAP、BMP3、BMP5、BMP6、COL10A1、COL12A1、COL1A1、COL1A2、COL2A1、COMP、FGFR1、GDF10、IGF1、IGF2、MSX1、ANXA5、CALCR、CDH11、COMP、DMP1、EGF、MMP2、MMP8、COL10A1、COL14A1、COL15A1、COL3A1、COL4A3、COL5A1、EGFR、FGF1、FGF3、IGF1R、TGFB2、VEGFA、VEGFB、COL4A3、CSF3、FLT1、IGF1、IGF1R、IGF2、PDGFA、SMAD3、TGFB1、TGFB2、TGFB3、TGFBR2、VEGFA、VEGFB、BMP1、CSF2、CSF3、FGFR1、FGFR2、FLT1、GDF10、IGF1、IGF1R、IGF2、PDGFA、TGFB1、TGFB2、TGFB3、TGFBR1、TGFBR2、VEGFA、VEGFB、AHSG、SERPINH1、CTSK、MMP10、MMP9、PHEX、AMBN、AMELY、ENAM、STATH、TUFT1、BGN、COMP、DSPP、GDF10、CDH11、ICAM1、ITGB1、VCAM1、ITGA1、ITGA2、ITGA3、ITGAM、ITGB1、CD36、COMP、SCARB1、AMH、GDF2(BMP9)、GDF3(Vgr−2)、GDF5(CDMP−1)、GDF6、GDF7、IGFBP3、IL6、INHA(インヒビンa)、INHBA(インヒビンBA)、LEFTY1、LTBP1、LTBP2、LTBP4、NODAL、ACVR1(ALK2)、ACVR2A、ACVRL1(ALK1)、AMHR2、BMPR1A(ALK3)、BMPR1B(ALK6)、BMPR2、ITGB5(インテグリンB5)、ITGB7(インテグリンB7)、LTBP1、NR0B1、STAT1、TGFB1I1、TGFBR1,(ALK5)TGFBR2、TGFBR3、TGFBRAP1、CDC25A、CDKN1A(p21WAF1/p21CIP1)、CDKN2B(p15LNK2B)、FOS、GSC(グーセコイド)、IGFBP3、ITGB5(インテグリンB5)、ITGB7(インテグリンB7)、JUN、JUNB、MYC、SERPINE1(PAI−1)、TGFB1I1、TSC22D1(TGFB1I4)、TGIF1、DLX2、ID1、ID2、JUNB、SOX4、STAT1、BAMBI、BMPER、CDKN2B(p15LNK2B)、CER1(セルベルス)、CHRD(コルジン)、CST3、ENG(Evi−1)、EVI1、FKBP1B、HIPK2、NBL1(DAN)、NOG、PLAU(uPA)、RUNX1(AML1)、SMURF1ならびに増殖および分化を調節する他の分子、ならびにこれらの因子の組合せが挙げられる。
【0042】
幾つかの実施形態では、活性剤には、トランスホーミング増殖因子β(TGF−β)、線維芽細胞増殖因子(FGF、酸性もしくは塩基性線維芽細胞増殖因子(FGFaもしくはFGFb)および/または線維芽細胞増殖因子−8(FGF−8)を含む)、血小板由来増殖因子(PDGF)、骨形成タンパク質(BMP)ファミリー(BMP−1、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6および/またはBMP−7など)、インスリン増殖因子(IGF)ファミリーの構成員(例えば、インスリン様増殖因子−Iおよび/またはII)、インターロイキン−I(IL−I)、IL−11、シンバスタチン、デキサメタゾン、オキシステロール、ソニックヘッジホッグ、インターフェロン、腫瘍壊死因子、神経増殖因子(NGF)、フィブロネクチン、「RGD」またはインテグリン配列、上皮増殖因子(EGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、ケラチノサイト増殖因子、骨原性タンパク質(Op;Op−1、Op−2、Op−3など)ならびに増殖および分化を調節する他の分子、ならびにこれらの因子の組合せが挙げられる。
【0043】
完全タンパク質と同じ活性化応答を引き出すペプチド活性剤も、使用することができる。例えば、TGF−β、FGFbおよび/またはPDGFに類似の作用を有するタンパク質のアミノ酸断片またはペプチドを、使用することができる。本明細書に記載の活性剤のいずれかからの、または幹細胞の活性化に有用なことが知られているペプチド活性剤は、使用することができる。他の実施形態では、小分子活性剤が、幹細胞の活性化に使用することができる。
【0044】
多くの実施形態では、TGF−βファミリーの構成員が、本明細書に記載の方法およびデバイスにおける活性剤として含まれる。TGF−βファミリーは、構造的に関連する一群のタンパク質を包含し、胚発生中に広範囲な分化過程に影響する。TGFβファミリーに含めることは、システイン残基7個の保存を含む、アミノ酸一次配列の相同性に基づく。このファミリーには、例えば、正常な雄性発生に必要(Behringerら、Nature、345巻:167頁、1990年)なミュラー管抑制物質(MIS)、背部−腹部軸の形成および成虫原基の形態形成に必要(Padgettら、Nature、325巻:81〜84頁、1987年)なDrosophilaデカペンタプレジック(decapentaplegic)(DPP)遺伝子産物、卵の植物極に局在している(Weeksら、Cell、51巻:861〜867頁、1987年)Xenopus Vg−1遺伝子産物、Xenopus胚において中胚葉および前部構造の形成を誘導できる(Thomsenら、Cell、63巻:485頁、1990年)アクチビン(Masonら、Biochem, Biophys. Res. Commun.、135巻:957〜964頁、1986年)、ならびに軟骨および骨の新規な形成を誘導できる(Sampathら、J. Biol. Chem.、265巻:13198頁、1990年)骨形成タンパク質(BMP、例えば、BMP−2〜BMP−15など)が含まれる。TGF−β遺伝子産物は、脂質形成、筋形成、軟骨形成、造血、および上皮細胞分化を含む、多様な分化過程に影響することができる(総説については、全体が参照により本明細書に組み込まれるMassague、Cell 49巻:437頁、1987年を参照されたい)。
【0045】
TGF−βファミリーのタンパク質は、大きな前駆体タンパク質として当初合成され、その後、C末端からおよそ110〜140個目のアミノ酸である、塩基性残基のクラスターでタンパク分解的切断を受ける。タンパク質のC末端領域は、全て構造的に関連しており、異なるファミリー構成員は、相同性の程度に基づいて別々のサブグループに分類することができる。特定のサブグループ内の相同性は、アミノ酸配列の同一性が70%〜90%の範囲にあるが、サブグループ間の相同性は、それより有意に低く、一般に僅か20%〜50%の範囲にある。各場合において、活性種は、C末端断片のジスルフィド連結二量体であるようである。研究されてきたファミリー構成員の大部分については、ホモ二量体種が生物活性であることが判明しているが、他のファミリー構成員については、インヒビン(Ungら、Nature、321巻:779頁、1986年)およびTGF−β(Cheifetzら、Cell、48巻:409頁、1987年)のように、ヘテロ二量体も検出されており、これらのものは、それぞれのホモ二量体とは異なる生物学的性質を有するようである。
【0046】
TGF−β遺伝子のスーパーファミリー構成員には、TGF−β3、TGF−β2、TGF−β4(ニワトリ)、TGF−β1、TGF−β5(Xenopus)、BMP−2、BMP−4、Drosophila DPP、BMP−5、BMP−6、Vgr1、OP−1/BMP−7、Drosophila 60A、GDF−1、Xenopus Vgf、BMP−3、インヒビン−βA、インヒビン−βB、インヒビン−αおよびMISが挙げられる。これらの遺伝子は、全体が参照により本明細書に組み込まれるMassague、Ann. Rev. Biochem. 67巻:753〜791頁、1998年に考察されている。
【0047】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載のデバイスおよび方法で使用されるTGF−βのファミリー構成員は、TGF−β3である。
【0048】
線維芽細胞増殖因子およびその受容体線維芽細胞増殖因子(FGFS)は、形態形成、血管形成および組織再建を含む多様な生物過程、ならびに多数の疾患の発症に関わる、進化的に保存されたポリペプチドのファミリーを含む(全体が参照により本明細書に明確に組み込まれるOrnitz、Bioessays 22巻:108頁、2000年に総説されている)。このファミリーの様々な構成員は、間葉から上皮および神経外胚葉の起源に及ぶ、広範囲の細胞の増殖をインビトロおよびインビボで刺激する。FGFは、発生中に時間的および空間的に厳密なパターンで発現され、パターン化および四肢形成に重要な役割を有する(Ornitz、Bioessays 22巻:108頁、2000年)。
【0049】
FGFファミリーの全構成員は、アミノ酸約120個の相同性コアドメインを共有し、そこではアミノ酸28残基が高度に保存され、6個は同一である。数種のFGFに関する構造研究によって、各ストランドが、ファミリーを通して保存されているコア領域を含むβループに隣接した、逆平行βストランドが12本同定された。コアドメインは、一次FGFRおよびヘパリン結合部位を含む。受容体結合領域は、ヘパリン結合領域とは異なる(Ornitz and Itoh、Gen. Biol. 2巻、3005.1頁、2001年)。
【0050】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載のデバイスおよび方法で使用されるFGFのファミリー構成員は、FGF−2である。
【0051】
ヒト血小板からの血小板由来増殖因子(PDGF)は、2種のポリペプチド配列、即ちPDGF−BおよびPDGF−Aのポリペプチドを含有する(Antoniades, H. N. and Hunkapiller, M.、Science 220巻:963〜965頁、1983年)。PDGF−Bは、7番染色体上に位置する遺伝子によりコードされ(Betsholtz, C.ら、Nature 320巻:695〜699頁)、PDGF−Aは、22番染色体上に位置する(Dalla−Favera, R.、Science 218巻:686〜688頁、1982年)sis癌遺伝子によりコードされる(Doolittle, R.ら、Science 221巻:275〜277頁、1983年)。このsis遺伝子は、PDGF−2ポリペプチドと密接な関係がある、サル肉腫ウィルス(SSV)の形質転換タンパク質をコードする。ヒト細胞c−sisも、PDGF−A鎖をコードする(Rao, C. D.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83巻:2392〜2396頁、1986年)。PDGFの2本のポリペプチド鎖は、別々の染色体に位置する異なる2種の遺伝子によりコードされるので、ヒトPDGFは、PDGF−BおよびPDGF−Aのジスルフィド連結ヘテロ二量体、またはホモ二量体2種の混合物(PDGF−BBホモ二量体およびPDGF−AAホモ二量体)、またはヘテロ二量体およびホモ二量体2種の混合物からなり得る。
【0052】
PDGFは、商業的に、あるいは人間の組織もしくは細胞、例えば血小板から、固相ペプチド合成により、または組換えDNA技術により得てもよい。PDGF−A鎖をコードする遺伝子を含有する、サル肉腫ウィルスに感染した培養時の哺乳動物細胞は、PDGF−Aポリペプチドを合成し、それをジスルフィド連結ホモ二量体にプロセシングすることができる(Robbinsら、Nature 305巻:605〜608頁、1983年)。それに加え、PDGF−Aホモ二量体は、ヒトPDGFに対して生成した抗血清と反応し、分泌されたPDGF−Aホモ二量体の機能的性質は、血小板由来PDGFのものと類似している。組換えPDGF−Bホモ二量体は、発現ベクターを用いてマウス細胞にc−sis/PDGF−B遺伝子のcDNAクローンを導入することにより、得ることができる。このような発現に用いるc−sis/PDGF−Bクローンは、正常なヒトの培養上皮細胞から得られた(Collins, T.ら、Nature 216巻:748〜750頁、1985年)。
【0053】
多くの活性剤が、骨形成幹細胞の活性化に有用であるが、本発明者らが作成したデータによれば、幾つかの実施形態では、TGF−β3、FGF−2および各種のPDGFが有用であることを示している。他の実施形態では、幹細胞を活性化するためのデバイスおよび方法は、活性剤として少なくともTGF−β3およびFGF−2を含む。
【0054】
幾つかの実施形態では、活性剤は、幹細胞混合物の前駆細胞において骨形成タンパク質受容体サブユニット(複数可)の発現を増加させることができる。このような活性剤による処置は、例えば、骨傷害または骨手術の部位において内因性骨形成タンパク質に応答する、前駆細胞の能力の増強を補助する。活性剤によるこのような処置は、幹細胞の骨芽細胞経路に沿った分化も推進することができる。
【0055】
骨形成タンパク質(BMP)は、骨および軟骨の形成を誘導するだけでなく、多くの細胞型に広範囲の効果を及ぼす多機能サイトカインである(Hoganら、Genes Dev. 10巻:1580〜1594頁(1996年);Reddiら、Cytokine Growth Factor Rev. 8巻:11〜20頁(1997年))。BMPは、TGFβスーパーファミリーの構成員である。人間にはBMP遺伝子がおよそ15〜20個、BMP受容体が3個、およびBMP拮抗剤として機能するBMP関連タンパク質が幾つもある(Yamashitaら、Bone 19巻:569〜574頁(1996年))。BMPは、3個のBMP受容体であるBMPR−1A、IBおよびIIを介するSmadシグナル伝達経路を通して機能する。BMP二量体がII型受容体に結合すると、それは、I型受容体を複合化し、リン酸化して、後者はSmad経路を活性化する。
【0056】
初代骨芽細胞を外因性増殖因子に曝露することにより、こうした受容体の発現を調節することができる。Singhatanadgitら(J. Cell Physiol. 209巻(3号):912〜22頁(2006年))は、初代骨芽細胞のTGF−β1、FGF−2、PDGF−ABおよびBMP−2による処理、ならびにこうした増殖因子の細胞内受容体から細胞表面までに対する幾つかの効果を試験した。Yehら(J. Cell Physiol. 190巻(3号):322〜31頁(2002年);J. Cell Physiol. 191巻(3号):298〜309頁(2002年))は、OP−1に曝露した後の胎児ラット頭蓋冠細胞において、受容体サブユニットmRNAの差次的調節パターンを観察した。Xuら(Growth Factors 24巻(4号):268〜78頁(2006年))は、TGFβ3のBMPR−IBに対する効果を試験した。各受容体に結合したBMPのシグナル伝達に関わる因子は、一般に理解されているが、受容体サブユニットの調節および発現パターンは、十分に解明されていない。その上、研究者たちには、幹細胞(例えば、骨髄)を増殖因子で短期間処理した後、増殖因子を除去することにより、骨形成原細胞および/または骨形成前駆体の形成を刺激できるとは、認識されていない。
【0057】
幹細胞の活性化
本明細書に例示するように、幹細胞は、活性剤に一時的に曝露することにより、骨形成的に活性化することができる。このような活性化幹細胞は、骨原細胞、骨芽細胞および/または骨芽細胞表現型細胞に分化する。その上、活性化幹細胞から活性剤を除去することにより、被験体への移植時に意図せざる副作用を有する恐れのある増殖因子およびサイトカインを含まない、細胞混合物が産生される。したがって、生物活性分子の混合物中で幹細胞を数日間培養する必要はないが、そのように培養すれば、処置を待つ患者の疼痛および不動状態が継続し、骨傷害を最初に修復した後に移植物挿入のために手術が追加され、培養細胞を汚染し、幹細胞集団または骨穿刺液中に望ましくない細胞型が増殖し、その上、培養の維持および傷害患者の介護に時間および経費が追加される事態になり得る。
【0058】
その代わりに、幹細胞は、活性剤(複数可)との短期間のインキュベーションによって、移植および骨成長の刺激のために活性化することができる。したがって、例えば、患者が骨の傷害または状態の処置を認められたとき、患者が手術を受けている間に、自家または同種異系幹細胞(例えば、骨髄穿刺液)を活性化することができ、活性化幹細胞は、直ちに移植することができる(所望であれば、骨移植片代用物と共に)。
【0059】
本明細書で使用する場合の語句「幹細胞の活性化」とは、幹細胞が、増殖に続いて骨形成原細胞に分化できる骨形成前駆細胞に分化するように、誘導されることを意味する。このような骨形成原細胞には、骨芽細胞および骨芽細胞前駆体が含まれる。骨形成原細胞は、アルカリホスファターゼ、オステオカルシン、オステオポンチンおよびBMP受容体などの骨特異マーカーの発現によって、認識することができる。
【0060】
本明細書で示すように、幹細胞の活性化は、ほんの短期間、例えば、5分間から24時間の範囲の期間でよい。幹細胞を活性剤に曝露する他の最適な時間枠は、10分間から2時間または15分間から1時間の範囲である。幾つかの実施形態では、幹細胞は、1種もしくは複数の活性剤と5分間から1時間接触される、または幹細胞は、1種もしくは複数の活性剤と5分間から0.5時間接触される。本明細書で例示するように、骨髄穿刺液を活性剤にほんの1時間曝露すると、アルカリホスファターゼおよびBMP受容体サブユニット(複数可)の発現が上方調節される。
【0061】
したがって、本発明の一態様は、哺乳動物において骨成長を促進するための移植物を作製する方法である。この方法は、幹細胞を1種または複数の活性剤に24時間以下(例えば、約5分間から24時間、または約10分間から2時間、または約15分間から1時間)曝露して、活性化幹細胞を形成し、活性化幹細胞を1種または複数の活性剤から分離して、活性剤を実質的に含まない活性化幹細胞集団を形成し、活性剤を実質的に含まない活性化幹細胞集団を骨移植片代用物と混合することにより、哺乳動物において骨成長を促進するための移植物を作製することを伴う。
【0062】
幹細胞は、幹細胞を骨形成または骨形成前駆体の表現型に活性化するために、十分な濃度の1種または複数の活性剤に曝露される。当業者であれば、このような濃度がどれだけであるかを、例えば、どれだけの濃度が、アルカリホスファターゼおよびBMP受容体サブユニット(複数可)の発現の増加または上方調節を起こすかを観測することにより、容易に決定することができる。活性剤の適当な濃度例には、濃度約0.01ng/ml〜約1μg/mlの活性剤(複数可)の使用が挙げられる。幾つかの実施形態では、活性剤は、濃度約0.1ng/ml〜約500ng/ml、または約1ng/ml〜約100ng/mlで使用される。
【0063】
本明細書に記載されるように、幹細胞は、都合よい任意源に由来することができる。しかし、骨形成能を有するか、または骨形成能を有する細胞を生成するように処理(例えば、分化)できる幹細胞が、好ましい。本明細書に記載の方法、デバイスおよび移植物に使用できる幹細胞源には、骨髄、脂肪組織、臍帯血、胚卵黄嚢、胎盤、臍帯、骨膜、胎児および青年の皮膚、ならびに血液が挙げられる。幾つかの実施形態では、幹細胞は、間葉幹細胞、または間葉幹細胞を含む細胞混合物である。幹細胞は、自家、同種異系、または異種源由来でもよい。幹細胞は、胚性、生後または成体源由来でもよい。幾つかの実施形態では、幹細胞は、自家または同種異系の骨髄穿刺液である。
【0064】
一般に、幹細胞を非幹細胞から分離すること、または活性化(骨形成)幹細胞を他の細胞型から精製することは、不要である。しかし、当業者が、幹細胞を非幹細胞から、または活性化骨形成幹細胞を非活性化幹細胞および他の細胞型から精製することを欲する場合、当業者は、都合よい任意の手順によりそうすることができる。例えば、骨髄を遠心して、密度に基づく各種の画分に穿刺液の成分を分離し、間葉幹細胞の多い画分を得ることができる。該細胞は、活性化骨形成幹細胞の細胞表面上に発現した因子(例えば、BMP受容体)を認識し、それに結合する抗体を用いて、免疫精製を施すこともできる。
【0065】
本明細書に示すように、幹細胞を活性化するために本明細書に記載の方法およびデバイスに使用する活性剤は、幹細胞の骨形成能を活性化できる任意の活性剤でもよい。その例は、本明細書に記載し、例示してある。
【0066】
幹細胞は、活性化されるとき、骨形成前駆細胞に特有の因子を発現し始める。例えば本明細書に例示するように、初代ヒト間葉幹細胞が発現するアルカリホスファターゼ、骨芽細胞分化の初期マーカーの各レベルが増加する。例えば、非処理対照細胞と比較して、TGFβ3(三角)またはFGF−2(四角)で1時間だけ処理した間葉幹細胞において、アルカリホスファターゼの発現量の増加が経時的に認められ、処理細胞の方が強力な分化応答を示したことを示す図1を参照されたい。
【0067】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載の方法およびデバイスを用いた幹細胞の活性化は、BMP受容体サブユニットのレベルも増加させることができる。本明細書に例示するように、初代間葉幹細胞における3種のBMP受容体ユニット(即ち、BMPR−1A、BMPR−1BおよびBMPR−II)のmRNAコピー数は、活性剤(PDGF BB、FGFbおよびTGFβ3を1ng/ml、10ng/mlおよび100ng/ml)にほんの1時間(図3)または24時間(図2)曝露した後、増加した。したがって、手術部位への移植前における、幹細胞(例えば、間葉幹細胞)の活性剤によるほんの短期間の処理は、移植後の内因性BMPに対する応答をよりロバストにするために、該細胞を増強し得る。
【0068】
活性化幹細胞は、曝露した1種または複数の活性剤から都合よい任意の方法で分離し、それにより活性剤を実質的に含まない活性化幹細胞集団を形成する。幹細胞集団は、幹細胞を含有する組成物(例えば、移植組成物)が、幹細胞組成物(または移植組成物)の投与を排除すると思われる、活性剤(複数可)の副作用を示さない場合、活性剤を実質的に含まない。したがって、活性剤の量が、例えば、10ng/ml未満、または1ng/ml未満、または0.1ng/ml未満、または0.01ng/ml未満である限り、少量の活性剤は、活性化幹細胞集団(または移植組成物)中に残ってもよい。
【0069】
細胞を小型および大型分子から分離する手順は、当業者に利用可能である。例えば、幹細胞は、細胞を媒体または塩水中に浮遊させ、遠心により細胞を収集することにより、洗浄することができる。このような洗浄を数回すれば、活性剤を実質的に含まない活性化幹細胞集団が産生される。別の例では、該細胞は、活性剤を保持するが細胞を通過させるカラムの中に、細胞を通過させることにより、活性剤から分離することができる。このようなカラムは、活性剤(複数可)を結合または保持するマトリックスを有することができ、例えば、そのカラムは、ゲルろ過カラム、アフィニティ精製カラムまたはイオン交換カラムでもよい。
【0070】
したがって、活性剤(複数可)は、溶液として幹細胞源(即ち、骨髄穿刺液)に導入することができる。所与のインキュベーション時間後、活性化幹細胞は、ろ過、ゲルろ過、免疫沈降、免疫吸収、カラムクロマトグラフィーまたはそれらの組合せを含む手順により、活性剤から分離される。例えば、活性剤は、活性剤を固定化し、幹細胞からの活性剤の除去または分離を可能とするために、抗体または結合性のタンパク質もしくはペプチドを用いて除去することができる。幾つかの実施形態では、溶液中の活性剤は、溶液からの活性剤の術中除去を可能とするような分子量の適当なカットオフを有する、接線流ろ過などの術中ろ過工程を介して細胞から除去してもよい。
【0071】
別の実施形態では、単離した幹細胞は、本明細書に記載のように、骨移植片代用物中に取り込んだ後、活性剤(複数可)に曝露される。活性剤は、都合よい任意の手順、例えば、幹細胞/骨移植片代用物の複合体を数回沈降させて、活性剤(複数可)を含有する上清液を除去することにより、幹細胞/骨移植片代用物の複合体から除去することができる。
【0072】
幾つかの実施形態では、活性化幹細胞は、曝露した1種または複数の活性剤から、本明細書に記載のデバイスを用いることにより分離される。
【0073】
幹細胞を活性化するデバイス
本発明の別の態様は、例えば、骨成長を刺激できる細胞(例えば、骨形成前駆細胞、骨芽細胞など)に分化するように、幹細胞を活性化するデバイスである。本明細書に記載の方法におけるデバイスの使用によって、幹細胞、幹細胞混合物および幹細胞組成物(例えば、移植組成物)と少なくとも1種の活性剤との、幹細胞の活性化に十分な時間のインキュベーションが可能になり、活性化幹細胞を少なくとも1種の活性剤から分離し、活性剤を実質的に含まない活性化幹細胞および/または活性化幹細胞組成物の産生が可能になる。
【0074】
したがって例えば、本発明の一態様は、固体支持体、および固体支持体に結合した1種または複数の活性剤を含むデバイスである。活性剤(複数可)は、固体支持体に直接結合することができ(例えば、吸着もしくは共有結合により)、または活性剤(複数可)は、固体支持体に間接的に結合することができる(例えば、リンカー、抗体、ペプチド、アプタマー、アルキレン鎖、ビオチン−ストレプトアビジンなどを介して)。
【0075】
固体支持体は、活性剤を直接または間接に結合することができ、幹細胞と結合または有害な相互作用をしない任意の材料でもよい。したがって、固体支持体は、カラムマトリックス材料料、フィルター、培養用のプレート、チューブまたは皿、マイクロタイタープレート(またはマイクロタイタープレートのウェル)、ビーズ(例えば、磁気ビーズ)、ディスク、および幹細胞に適合する他の材料でもよい。固体支持体は、プラスチック、セルロース、セルロース誘導体、磁気粒子、ニトロセルロース、ガラス、グラスファイバー、ラテックスおよび他の基材などの多様な材料から作製することができる。所望であれば、固体支持体は、幹細胞の結合を阻害する、または固体支持体における材料の反応性を低下させる物質をコーティングすることができる。
【0076】
活性剤(複数可)は、当業者に公知の各種技法を用いて固体支持体に結合し得るが、そうした技法は、特許および科学文献に十分に記載されている。本発明に関しては、用語「結合した(attached)」または「結合(attachment)」とは、吸着などの非共有結合的つながりも、共有結合(活性剤と支持体上の官能基との直接連結によってもよく、または間接的連結によってもよい)も指す。
【0077】
幾つかの固体支持体材料(例えば、プラスチック)上への吸着は、適切な緩衝液中の活性剤を固体支持体と適切な長さの時間接触させることにより、実現し得る。接触時間は、温度と共に変化するが、通常約1時間から約1日の間である。一般に、例えば、プラスチックマイクロタイタープレート(ポリスチレンまたはポリ塩化ビニルなど)のウェルを、約10ng〜約10μg、好ましくは約100ng〜約1μgの範囲にある量の活性剤と接触させれば、十分量の活性剤を固定化するのに足りる。
【0078】
活性剤の固体支持体への共有結合は、支持体にも、活性剤上にあるヒドロキシ基またはアミノ基などの官能基にも反応すると見込まれる二官能性試薬と、支持体を最初に反応させることにより、一般に実現し得る。例えば、活性剤は、適当なポリマー被膜を有する支持体に、ベンゾキノンを用いて、または支持体上のアルデヒド基と、該結合相手上のアミンおよび活性水素との縮合によって、共有結合し得る(例えば、Pierce Immunotechnology Catalog and Handbook、1991年のA12〜A13を参照されたい)。二官能性試薬は、架橋剤、官能基2個のリンカー、ペプチド、アルキレン鎖、アプタマー、または他の二官能性分子でもよい。
【0079】
活性剤は、抗体などの結合剤を介して固体支持体に非共有結合してもよく、その場合抗体は、固体支持体に結合または吸着し、活性剤に非共有結合で結合する。あるいは、活性剤は、ビオチン−ストレプトアビジンを介して固体支持体に非共有結合してもよく、その場合ビオチンまたはストレプトアビジンのいずれかが固体支持体に結合する。ストレプトアビジンが固体支持体に結合する場合、ビオチンは活性剤に結合する。活性剤に連結されるビオチンは、ストレプトアビジンに結合することにより、活性剤を固体支持体上に固定化することになろう。
【0080】
一例においては、活性剤が共有結合しているカラムマトリックスまたはフィルター材料が、含まれる。次いで、幹細胞(例えば、骨髄穿刺液)をしばらくの時間この基材に通すか、またはその中でインキュベートすることができるが、時間枠は、例えば5分間から24時間の範囲、最適な時間枠は、15分間から1時間の範囲である。
【0081】
活性剤(複数可)に対するこの曝露は、BMP受容体サブユニットおよびアルカリホスファターゼの発現を増加させることが示された。例えば、図2および3は、3種の活性剤(PDGF BB、FGFbおよびTGF−β3)が、BMPR−IBサブユニットを上方調節し、特定の濃度では、BMPR−IAおよびBMPR−IIのサブユニットが、バックグランドより増加することを例示している。このような活性剤に対する曝露は、間葉幹細胞を活性化または誘発して、骨芽細胞の表現型を増強するのに役立つ。
【0082】
その結果、活性剤には、FGFb、TGF−β3および/またはPDGF BBがなり得る。他の実施形態では、固体支持体上の活性剤は、BMPポリペプチドを含むことができる。他の活性剤、例えば本明細書に列挙した活性剤のいずれかも、固体支持体上に結合することができる。活性剤は、自家源由来でも同種異系でもよく、または製造してもよい(例えば、組換え技術により)。
【0083】
数種または多種の活性剤を同じ固体支持体上に結合することができる。例えば、BMPは、現在市販されているホモ二量体処方より、ヘテロ二量体(即ち、BMP−2/BMP−7の組合せ)の方が強力であることが一般に認められている。その結果、本明細書に記載のデバイスおよび方法の実施形態のために、活性剤を固体支持体に結合し、続いてBMAから分離した後、再移植を行うことができる。したがって、本デバイスおよび本明細書に記載の方法に採用できる複数の活性剤を使用する可能性に関しては、融通性が加えられている。
【0084】
幾つかの実施形態では、該デバイスは、移植組成物中の幹細胞を活性化するために、移植組成物を1種または複数の活性剤に選定時間(例えば、24時間以下および/または本明細書に記載の他の時間)の間、曝露するように適合されている。このようなデバイスは、移植組成物の本明細書に記載の活性剤少なくとも1種とのインキュベーションを可能にし、次いで移植組成物からの活性剤(複数可)の分離を可能にするように適合されている。したがって、移植物材料(例えば、骨移植片代用物)および移植組成物内の幹細胞は、活性剤を除去する間、デバイス中に保持され得る。デバイスの使用によって、活性剤を実質的に含まない移植組成物が産生される。
【0085】
したがって、該デバイスは、幹細胞および/または骨移植片代用物を活性剤(複数可)から分離する手段を備える。例えば、該デバイスは、幹細胞および/または骨移植片代用物などの大型材料を排除するが、溶液中の活性剤(複数可)は、フィルター材料の通過を可能とすることにより、幹細胞および/または骨移植片代用物を活性剤から分離する、フィルターを備えることができる。移植組成物と活性剤(複数可)とのインキュベーション後、移植組成物および活性剤(複数可)を保持するインキュベーション室から排水し、その室を適当な媒体(例えば、緩衝液、塩水、緩衝塩水、培地)で濯ぐことができる。したがって、該デバイスは、活性化幹細胞を含有し、活性剤(複数可)を実質的に含まない幹細胞組成物(例えば、移植組成物)を産生することができる。
【0086】
本明細書に記載のデバイスは、少なくとも1種の活性剤と共に幹細胞をインキュベートする時間を制御するために、タイマーを更に備えることができる。例えば、タイマーは、インキュベートするステップ(i)の後に、幹細胞から少なくとも1種の活性剤を分離することを誘発することができる。したがって、例えば、タイマーは、少なくとも1種の活性剤を含有する溶液の排水または除去を開始することができる。それに加え、または代替として、タイマーは、幹細胞および/または骨移植片代用物材料料を洗浄するために、溶液の添加を開始することができる。幾つかの実施形態では、タイマーを備えたデバイスは、少なくとも1種の活性剤と共に幹細胞をインキュベートする時間を24時間以下に制御する。他の実施形態では、タイマーを備えたデバイスは、少なくとも1種の活性剤と共に幹細胞をインキュベートする時間を5分間から1時間に制御する。
【0087】
移植物
一実施形態では、本明細書に記載のように調製した活性化幹細胞(例えば、骨髄穿刺液)は、β−リン酸三カルシウム(β−TCP)などの合成骨移植片代用物と更に組み合わせて、移植組成物を形成する。一例では、活性化幹細胞(例えば、活性化骨髄穿刺液)と合成骨移植片代用物との複合体が、組織移植片の代わりに使用される。幹細胞は、活性剤(複数可)への曝露によって幹細胞を活性化する前または後のいずれかに、合成骨移植片代用物と組み合わせることができる。しかし、幹細胞は、移植の前に、移植組成物中の幹細胞が活性化幹細胞となるように、活性剤(複数可)に曝露または接触される。
【0088】
骨移植片代用物は、適切な条件下で生体骨中に配置したとき、または生体骨に並置したとき、骨形成性活性化幹細胞により新骨を形成する足場として役立つ固体材料とすることができる。採用することのできる骨移植片代用物の例は、各々の全体が参照により本明細書に明確に組み込まれる米国特許第5,383,931号、第6,461,632号、第7,044,972号、第7,494,950号、および米国特許出願公開第20060008504号に記載されている。
【0089】
骨移植片代用物は、カルシウム塩含有成分を含むことができる。例えば、骨移植片代用物は、リン酸一カルシウム一水和物、α−リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、脱灰骨、リン酸ナトリウム塩、および場合によりポリマーを含むことができる。該ポリマーは、吸収性ポリマーでもよい。幾つかの実施形態では、該ポリマーは、繊維長約15mm以下、アスペクト比約50:1から約1000:1のホモポリマーもしくはコポリマー繊維、または両方を含む(および場合により連続強化繊維も含む)。
【0090】
該ポリマーは、コラーゲン、ゼラチン、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸塩、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、キサンタンガム、ガーガムおよび/またはアルギネートでもよい。
【0091】
採用することのできる骨移植片代用物の例には、制限することなく、β−TCP(例えば、Synthes製のchronOS)、コラーゲン、バイオガラス(例えば、45S5 BioGlass)、BioOss(リン酸カルシウム系骨移植片代用物)、Pepgen P−15(天然型ヒドロキシアパタイトに結合した合成P−15ペプチド)、およびAlloGraft(脱灰骨基質、同種異系移植片主体の骨移植片代用物)が挙げられる。
【0092】
一般に、活性化幹細胞は、骨移植片代用物とインキュベートまたは混合して、移植組成物を形成する。幾つかの実施形態では、移植組成物はパテであり、他の実施形態では、移植組成物は、注射針の中を流れるのに十分に流動性である。例えば、移植組成物は、約0.3〜約0.0または約0.41〜約0.55の液体成分対固体成分の比を有することができる。
【0093】
別の実施形態には、活性剤と幹細胞源(即ちBMA)とをエクスビボで短期間(即ち、5分間から60分間)併用することによる、骨芽細胞経路に沿った幹細胞の刺激が含まれる。エクスビボでのインキュベーション後、幹細胞および活性剤の組合せは、一緒に移植する。
【0094】
処置の方法
活性化幹細胞および骨移植片代用物を含有する移植組成物は、骨の傷害、障害および状態の修復および処置に有用である。このような骨の傷害、障害または状態は、骨量減少(骨減少症もしくは骨溶解症)、または骨損傷もしくは骨傷害を特徴とする。このような骨の傷害、障害および状態には、それだけに限らないが、骨折、骨欠陥、骨移植、骨移植片、骨癌、関節置換、関節修復、癒合、面修復、骨変性、歯科インプラントおよび修復、疾患(例えば関節炎)が原因の骨欠陥、再建術が原因の骨欠陥、ならびに骨および骨組織に伴う他の状態が挙げられる。骨欠陥の例には、それだけに限らないが、骨における間隙、変形または癒着不能骨折が挙げられる。骨変性の例には、それだけに限らないが、骨減少症または骨粗鬆症が挙げられる。一実施形態では、骨欠陥は小人症が原因である。該組成物は、関節の置換または修復にも有用であり、その場合の関節は、脊椎、膝、股、足根、指、肘、踵、仙腸関節、または他の可動性/非可動性関節である。
【0095】
移植組成物は、該組成物を骨部位中に押し込むもしくは取り込むことにより、または移植組成物の注入により投与することができる。注入により投与する場合、シリンジは、約12〜約18のゲージの針を有し得るが、その際に用いる最大注入圧は、約40ポンド以下である。一実施形態では、該組成物は連続強化繊維も含む。
【0096】
以下の非限定的な実施例は、本発明のある種の態様を更に例示する。
【実施例】
【0097】
(実施例1)
材料および方法
以下の材料および方法を用いて、本発明のある種の態様を展開した。
【0098】
細胞の分化
継代3回のヒト間葉幹細胞(Lonza、Walkersville、MD)を6×10細胞/35mmウェルの密度で基本培地(Stem Cell Technologies、Vancouver、Canada)中に播種し、37℃で2日間インキュベートした。細胞をPBSで濯ぎ、新鮮基本培地中の増殖因子(FGF−2またはTGFβ3、R&D Systems、Minneapolis、MN)100ng/mlで1時間活性化し、PBSで濯ぎ、次いで新鮮基本培地または骨形成分化培地(Stem Cell Technologies、Vancouver、Canada)のいずれか中、37℃で7〜14日間インキュベートした。
【0099】
リアルタイムPCR
総RNAは、RNeasy Plus Mini KitおよびQIA shredder Mini Spinカラム(Qiagen)を用いて、各種の活性剤で処理した細胞から調製した。総RNAは、対照として非処理細胞からも調製した。cDNAは、TaqMan Reverse Transcription Kit(Applied Biosystems)に従って、ランダムヘキサマー(hexamer)およびオリゴdTを用いて生成した。リアルタイム用のプライマーおよびプローブのセットは、以下の通りであった。
【0100】
【化1】

試料は、β2ミクログロブリン内因性対照(VIC/TAMRA)を用いた多重反応として、Applied Biosystems 7500 Fast Real−Time PCR System上で操作した(Applied Biosystems)。
【0101】
アルカリホスファターゼアッセイ
継代3回のヒト間葉幹細胞(Lonza、Walkersville、MD)を6×10細胞/35mmウェルの密度で基本培地(Stem Cell Technologies、Vancouver、Canada)中に播種し、37℃で2日間インキュベートした。細胞をPBSで濯ぎ、新鮮基本培地中の増殖因子(FGF−2またはTGFβ3、R&D Systems、Minneapolis、MN)100ng/mlで1時間活性化し、PBSで濯ぎ、次いで新鮮基本培地または骨形成分化培地(Stem Cell Technologies、Vancouver、Canada)のいずれか中、37℃で7〜14日間インキュベートした。アッセイ時に、細胞をPBSで2回濯ぎ、溶解緩衝液100μl/35mmウェル中で採集し、液体窒素中で2回凍結/融解した。アルカリホスファターゼ活性は、溶解物20μlと1mg/mlのp−ニトロフェニルリン酸20μlとの3分間のインキュベーション、および生成した発光の405nmでの測定により決定した。アルカリホスファターゼ活性は、CyQuant(Invitrogen、Carlsbad、CA)によるDNA定量化で決定した際に、細胞含量に従って正規化した。
【0102】
固定化
初期試験のために、活性剤(例えば、増殖因子)を以下の通りマイクロタイターウェル上に固定化した。
【0103】
ビオチニル化抗増殖因子抗体(500ng)(R&D Systems、Minneapolis、MN)を、ストレプトアビジン被覆96ウェルプレートで、PBS200μl/ウェル中で30分間インキュベートし、PBSで3回濯ぎ、次いでPBS200μl中で増加していく各量の増殖因子に30分間結合した。PBSで3回濯いだ後、増殖因子の存在を、0.1%BSA入りPBS200μl中で第2の非標識抗増殖因子抗体1μgと30分間インキュベーションすることにより、検出した。各ウェルは、PBSで3回洗浄し、0.1%BSA入りPBS200μl中でホースラディシュペルオキシダーゼ複合第2抗体1μgと30分間インキュベートし、PBSで3回再び濯いだ。次いで、固定化した抗体−増殖因子−第2抗体は、強化化学発光基質200μlと1分間インキュベートした。固定化したホースラディシュペルオキシダーゼ複合第2抗体の量の定量化は、可視光波長における化学発光の測定により行った。
【0104】
活性アッセイ
幹細胞活性化ステップの前に、繋留活性剤の生物活性を決定するために、以下のアッセイを形成した。FGF−2が関わる試験には、Swiss Albino3T3細胞(ATCC、Manassas、VA)を4×10/35mmウェルの密度で10%血清基本培地中に播種し、37℃で1日間インキュベートし、PBSで3回濯ぎ、次いで37℃で1日間、0.5%血清基本培地中で同調させた。FGF2(R&D Systems、Minneapolis、MN)および50倍過剰量のビオチニル化抗FGF2抗体(R&D Systems、Minneapolis、MN)を、0.5%血清基本培地中で15分間複合させた。同調細胞をPBSで3回濯いだ後、FGF2/ビオチニル化抗FGF2抗体複合体で37℃で30分間処理した。アッセイの終点で、細胞をPBSで3回濯ぎ、SDS試料緩衝液中で採集し、90℃で10分間加熱した。生成した溶解物をSDS−PAGEにより分別し、PVDF膜に転写し、抗ホスホERK(Cell Signaling Technology、Beverly、MA)抗体の1:10000希釈液、次いでホースラディシュペルオキシダーゼ複合第2抗体(Santa Cruz Biotechnology、Santa Cruz、CA)の1:10000希釈液で順にプローブした。ホースラディシュペルオキシダーゼの活性は、強化化学発光基質に1分間曝露することにより決定し、CCDカメラで可視化し、ImageJ分析プログラムを用いた濃度測定で定量化した。
【0105】
TGFβ3の活性アッセイには、Mv1Luミンク肺細胞(ATCC、Manassas、VA)を、96ウェルプレートで、4×10細胞/ウェルの密度で基本培地中に播種し、37℃で1日間インキュベートした。TGFβ3(R&D Systems、Minneapolis、MN)および50倍過剰量のビオチニル化抗TGFβ3抗体(R&D Systems、Minneapolis、MN)を、基本培地中で15分間複合させた。PBSで3回濯いだ後、細胞をTGFβ3/ビオチニル化抗TGFβ3抗体複合体で37℃で3日間処理した。アッセイ時に、TGFβ3処理培地をCellTiter−Glo ATP検出試薬(Promega、Madison、WI)で補充し、5分間インキュベートし、可視光波長における化学発光の測定により、細胞数を定量化した。
【0106】
(実施例2)
結果
初代ヒト間葉幹細胞は、骨芽細胞系統へ分化することができる。これは、デキサメタゾン、アスコルビン酸およびβ−グリセロリン酸を含有するが、それだけに限らない骨形成混合液中で細胞を培養することにより、インビトロで実証される。こうした培養条件下では、細胞は、骨芽細胞分化マーカー、最も一般的には初期マーカーのアルカリホスファターゼの上方調節を示す。
【0107】
図1は、予想通り10〜12日目に、非処理間葉幹細胞(丸)のアルカリホスファターゼ活性の僅かな上方調節を示している。しかし、間葉幹細胞をTGFβ3(三角)またはFGF−2(四角)で1時間、前処理した後、その作用剤を除去し、分化培地中で培養した場合、アルカリホスファターゼ活性のレベルは有意に2〜3倍に増加した。
【0108】
こうしたデータは、TGFβ3またはFGF−2のいずれかで0日目に間葉幹細胞をほんの1時間処理しただけで、骨芽細胞形成のマーカーが処理から10日以後に上方調節されるように、骨芽細胞の分化に影響を及ぼせることを示している。
【0109】
間葉幹細胞は、インビトロおよびインビボの双方で骨形成タンパク質に応答し、骨芽細胞の表現型を誘導する。BMPは、3種のサブユニットBMPR−IA、BMPR−IBおよびBMPR−IIで構成される受容体複合体を介して作用する。MSCを選定した活性剤(PDGF−BB、TGFβ3およびFGF−2)で24時間処理したとき、BMPR−IB遺伝子の相対的コピー数が、非処理細胞に対して有意に増加した。しかし、図3は、ほんの1時間の処理後に同様な応答が認められたことを示している。
【0110】
こうしたデータは、手術中の僅か1時間の時間枠が、BMPリガンドに対する受容体のレベルが非処理細胞に対して増加できるように、活性剤でMSCを処理するのに十分であることを示す。間葉幹細胞上に増加レベルのBMP受容体が存在することにより、これらの細胞は、インビボでのBMP−2の骨形成応答のために増強され、その結果骨治癒がよりロバストになる。
【0111】
本明細書で参照または言及した全ての特許および刊行物は、本発明が関わる技術分野の業者の技術水準を示しており、参照した各特許または刊行物は、その全体が個別に参照により組み込まれたとした場合、またはその全体が本明細書に提示されたとした場合と同程度に、参照により本明細書に明確に組み込まれている。出願者らは、引用したこのようないずれの特許または刊行物からも、ありとあらゆる資料および情報を本明細書中に物理的に組み込む権利を留保している。
【0112】
本明細書に記載の特定の方法および組成物は、好ましい実施形態を代表して、例示的であり、本発明の範囲を制限する意図はない。他の目的、態様および実施形態は、本明細書を考慮すれば当業者には思い付くことであると見込まれ、しかも特許請求の範囲に規定されるように、本発明の趣旨内に包含される。様々な置き換えおよび改変が、本発明の範囲および趣旨から逸脱せずに、本明細書に開示した本発明になし得ることは、当業者には容易に明らかとなろう。本明細書に適切に例示的に記載した本発明は、必須のものとして本明細書に具体的に開示されていない、1つもしくは複数の要素または1つもしくは複数の制限が全くない状態で、実施し得る。本明細書に適切に例示的に記載した方法およびプロセスは、ステップの異なる順に実施してもよく、本明細書または特許請求の範囲に示したステップの順に必ずしも制限されない。本明細書または付属する特許請求の範囲で使用する場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈から明確に否定されない限り、複数への言及を含む。したがって、例えば「1つの抗体」への言及は、このような抗体の複数(例えば、複数抗体の溶液または一連の抗体調製物)を包含することなどである。本特許は、本明細書に具体的に開示した特定の実施例もしくは実施形態または方法に限定される、と解釈しては決してならない。本特許は、如何なる審査官または特許庁の他の如何なる係官もしくは従業員が行った如何なる言明も、出願者らによる回答文書において具体的に、かつ制限または留保なく明確に採用されていない限り、このような言明に限定されると解釈しては決してならない。
【0113】
採用してきた用語および表現は、制限用語ではなく記述用語として使用しており、このような用語および表現の使用には、示し、記載した特徴の任意の同等事項またはその一部を除外する意図はなく、請求したような本発明の範囲内で、多様な改変が可能であると認識している。したがって、本発明は、好ましい実施形態および任意選択の特徴により具体的に開示したが、本明細書に開示した概念の改変および変更は、当業者が頼りにし得るものであり、このような改変および変更が、本発明の付属する特許請求の範囲および言明に規定されるように、本発明の範囲内にあると見なされることは、理解されよう。
【0114】
本発明を、本明細書に広く、属レベルで説明してきた。属レベルの開示内に入るより狭い種および属未満のグループも、各々本発明の一部をなす。これには、取り除いた主題が本明細書に具体的に言及されているか否かに関わらず、属から任意の主題を取り除く但し書きまたは否定的な制限の付いた、本発明の属レベル記述も含まれる。
【0115】
他の実施形態も、以下の特許請求の範囲内に入る。それに加え、本発明の特徴または態様がマーカッシュグループにより記載されている場合、本発明が、マーカッシュ群の任意の個別構成事項、または構成事項のサブグループによっても記載されることを、当業者は認識されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物において骨成長を促進するための移植組成物を調製する方法であって、該方法は(a)幹細胞を1種または複数の活性剤と24時間以下の間接触させて、活性化幹細胞を調製するステップ、(b)該活性化幹細胞から該活性剤を分離して、活性剤を実質的に含まない活性化幹細胞集団を形成するステップ、および(c)活性剤を実質的に含まない該活性化幹細胞集団と骨移植片代用物とを混合することにより、哺乳動物において骨成長を促進する移植組成物を調製するステップを含み、少なくとも1種の活性剤が、幹細胞の骨形成原細胞または骨形成前駆細胞への分化を促進する、方法。
【請求項2】
前記幹細胞を1種または複数の活性剤と5分間から1時間接触させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記幹細胞を1種または複数の活性剤と5分間から0.5時間接触させる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記幹細胞が、骨髄、脂肪組織、筋肉組織、臍帯血、胚卵黄嚢、胎盤、臍帯、骨膜、胎児の皮膚、青年の皮膚または血液に由来する、請求項1から3までのいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記幹細胞が、自家、同種異系または異種である、請求項1から4までのいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記幹細胞が、胚性、生後または成体の幹細胞である、請求項1から5までのいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記幹細胞が、間葉幹細胞を含む、請求項1から6までのいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記幹細胞が、自家骨髄穿刺液を含む、請求項1から4までのいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記骨髄穿刺液が、手術中に取り出される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記骨髄穿刺液中の細胞が、単離または濃縮される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記活性剤が、細胞の増殖および/または分化を調節でき、小分子、ペプチド、増殖因子、サイトカイン、リガンド、ホルモンおよびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項1から10までのいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記活性剤が、トランスホーミング増殖因子β(TGF−β)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、骨形成タンパク質(BMP)、インスリン増殖因子(IGF)、インターロイキン−I(IL−I)、インターロイキン−11(IL−11)、シンバスタチン、デキサメタゾン、オキシステロール、ソニックヘッジホッグ、インターフェロン、腫瘍壊死因子、神経増殖因子(NGF)、フィブロネクチン、RGDペプチド、インテグリン、上皮増殖因子(EGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、ケラチノサイト増殖因子、骨原性タンパク質、およびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項1から11までのいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記活性剤が、BMP−2、TGF−β3、PSGF−AB、PDGF−BB、FGF−2、TGF−β1、BMP−4、BMP−7、BMP−6、FGF−8、IL−11、シンバスタチン、デキサメタゾン、オキシステロール、ソニックヘッジホッグ、およびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項1から12までのいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記活性剤が、TGF−βおよびFGFbを含む、請求項1から13までのいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記活性剤が、PDGFを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記活性剤が、溶液中にある、請求項1から15までのいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記活性剤が、固体支持体に結合されている、請求項1から15までのいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記活性剤の少なくとも一部は、ペプチド、抗体、化学架橋剤またはそれらの組合せを介して、固体支持体に結合されている、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記活性化幹細胞が、ろ過、ゲルろ過、接線流ろ過、免疫沈降、免疫吸収、アフィニティクロマトグラフィー、カラムクロマトグラフィー、またはそれらの組合せを含む手順によって、前記活性剤から分離される、請求項1から18までのいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記骨移植片代用物が、カルシウム塩を含む、請求項1から19までのいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記カルシウム塩が、リン酸一カルシウム一水和物、α−リン酸三カルシウム、β−リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、またはそれらの組合せを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記骨移植片代用物が、脱灰骨、リン酸ナトリウム塩、ポリマー、またはそれらの組合せを更に含む、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
前記ポリマーが、コラーゲン、ゼラチン、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸塩、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、キサンタンガム、ガーガム、アルギネート、またはそれらの組合せである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記幹細胞においてアルカリホスファターゼおよび/または骨形成タンパク質(BMP)受容体サブユニットの発現を増加させる、請求項1から23までのいずれかに記載の方法。
【請求項25】
患者に前記移植組成物を移植するステップを更に含む、請求項1から24までのいずれかに記載の方法。
【請求項26】
請求項1から25までのいずれかの方法により調製された移植組成物。
【請求項27】
被験体における骨の損傷、障害または状態を処置するための方法であって、該被験体における骨の損傷、障害または状態の部位へ、請求項26に記載の移植組成物を投与することを含む、方法。
【請求項28】
前記骨の損傷、障害または状態が、骨折、骨欠陥、骨移植、骨移植片、骨癌、関節置換、関節修復、骨癒合、骨面修復、骨変性、歯科インプラント、歯の修復、関節炎、骨再建、またはそれらの組合せを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
固体支持体と、幹細胞の骨形成原細胞または骨形成前駆細胞への分化を促進する少なくとも1種の活性剤とを含む、幹細胞を活性化するためのデバイスであって、(i)該幹細胞を少なくとも1種の該活性剤と共にインキュベートするため、および(ii)インキュベートするステップ(i)の後、少なくとも1種の該活性剤を該幹細胞から分離するために、適合しているデバイス。
【請求項30】
少なくとも1種の前記活性剤が、トランスホーミング増殖因子β(TGF−β)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、骨形成タンパク質(BMP)、インスリン増殖因子(IGF)、インターロイキン−I(IL−I)、インターロイキン−11(IL−11)、シンバスタチン、デキサメタゾン、オキシステロール、ソニックヘッジホッグ、インターフェロン、腫瘍壊死因子、神経増殖因子(NGF)、フィブロネクチン、RGDペプチド、インテグリン、上皮増殖因子(EGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、ケラチノサイト増殖因子、骨原性タンパク質、およびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項29に記載のデバイス。
【請求項31】
少なくとも1種の前記活性剤が、BMP−2、TGF−β3、PSGF−AB、PDGF−BB、FGF−2、TGF−β1、BMP−4、BMP−7、BMP−6、FGF−8、IL−11、シンバスタチン、デキサメタゾン、オキシステロール、ソニックヘッジホッグ、およびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項29または30に記載のデバイス。
【請求項32】
少なくとも1種の前記活性剤が、TGF−βおよびFGFbを含む、請求項29、30または31に記載のデバイス。
【請求項33】
少なくとも1種の前記活性剤が、PDGFを更に含む、請求項32に記載のデバイス。
【請求項34】
少なくとも1種の前記活性剤が、溶液中にある、請求項29から33までのいずれかに記載のデバイス。
【請求項35】
少なくとも1種の前記活性剤が、前記固体支持体に結合している、請求項29から33までのいずれかに記載のデバイス。
【請求項36】
前記固体支持体が、カラムマトリックス材料、フィルター、培養用のプレート、チューブもしくは皿、フラスコ、マイクロタイタープレート、ビーズ、ディスク、またはそれらの組合せを含む、請求項29から35までのいずれかに記載のデバイス。
【請求項37】
前記固体支持体が、プラスチック、セルロース、セルロース誘導体、磁気粒子、ニトロセルロース、ガラス、グラスファイバー、ラテックス、またはそれらの組合せを含む、請求項29から36までのいずれかに記載のデバイス。
【請求項38】
前記固体支持体が、少なくとも1種の前記活性剤を除去するために、親和性マトリックスを含む、請求項29から37までのいずれかに記載のデバイス。
【請求項39】
前記固体支持体が、少なくとも1種の活性剤に結合する、ストレプトアビジン、ビオチン、架橋剤、抗体またはペプチドを含む、請求項29から38までのいずれかに記載のデバイス。
【請求項40】
前記固体支持体が、容器を含む、請求項29から39までのいずれかに記載のデバイス。
【請求項41】
前記固体支持体が、フィルターを含む、請求項29から40までのいずれかに記載のデバイス。
【請求項42】
前記フィルターが、細胞および骨移植片代用物材料を保持するが、少なくとも1種の前記活性剤を通過させる、請求項41に記載のデバイス。
【請求項43】
前記フィルターが、少なくとも1種の前記活性剤を保持するが、前記幹細胞を通過させる、請求項41に記載のデバイス。
【請求項44】
前記固体支持体材料が、幹細胞と結合することも、幹細胞に対して有害な相互作用をすることもしない、請求項29から43までのいずれかに記載のデバイス。
【請求項45】
前記幹細胞が、骨髄、脂肪組織、筋肉組織、臍帯血、胚卵黄嚢、胎盤、臍帯、骨膜、胎児の皮膚、青年の皮膚、または血液に由来する、請求項29から44までのいずれかに記載のデバイス。
【請求項46】
前記幹細胞が、間葉幹細胞を含む、請求項29から45までのいずれかに記載のデバイス。
【請求項47】
前記幹細胞が、自家骨髄穿刺液を含む、請求項29から46までのいずれかに記載のデバイス。
【請求項48】
少なくとも1種の前記活性剤と共に前記幹細胞をインキュベートする時間を制御するために、タイマーを更に備える、請求項29から47までのいずれかに記載のデバイス。
【請求項49】
前記タイマーが、インキュベートするステップ(i)の後に、前記幹細胞から少なくとも1種の前記活性剤を分離することを誘発する、請求項48に記載のデバイス。
【請求項50】
前記タイマーが、少なくとも1種の前記活性剤と共に前記幹細胞をインキュベートする時間を24時間以下に制御する、請求項48に記載のデバイス。
【請求項51】
前記タイマーが、少なくとも1種の前記活性剤と共に前記幹細胞をインキュベートする時間を5分間から1時間に制御する、請求項48に記載のデバイス。
【請求項52】
前記タイマーが、少なくとも1種の前記活性剤と共に前記幹細胞をインキュベートする時間を5分間から0.5時間に制御する、請求項48に記載のデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−507285(P2012−507285A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534520(P2011−534520)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/005910
【国際公開番号】WO2010/051032
【国際公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(508111279)シンセス ゲーエムベーハー (9)
【Fターム(参考)】