説明

幹細胞集団および使用方法

【課題】組織を再形成、修復および再生するための新規の幹細胞集団を提供すること。
【解決手段】骨髄から単離されたアルデヒドデヒドロゲナーゼポジティブ細胞ならびにいずれかの幹細胞源に由来するALDHbrCD105を含む幹細胞集団を提供することによって上記課題は解決された。この集団はまた、CD34、CD38、CD41、CD45、CD105、CD133、CD135、CD117およびHLA−DRなどの細胞表面マーカーを発現する細胞を含み得、そして/またはCD3、CD7、CD10、CD13、CD14、CD19、CD33、CD35、CD56、CD127、CD138およびグリコホリンAなどの細胞表面マーカーを実質的に有さない。本発明の細胞を使用して組織を再形成、修復および再生する方法を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、幹細胞集団、これらの幹細胞集団を単離するための方法、ならびにこれらの幹細胞集団を使用して組織を再形成、修復および再生する方法に関する。さらに、本発明は、幹細胞の成長、生着および分化を促進する物質をスクリーニングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
幹細胞前駆細胞(SPC)は、特異的生体シグナルがそれらの細胞を特定の細胞タイプまたは組織タイプに分化するように誘導するまで、複製し、発生の可能性を維持する。成熟幹細胞前駆細胞(ASPC)は、出生後、生物の組織内に残り、生涯を通じて継続的に再生するSPCの小集団である。インビトロコロニーアッセイにより、骨髄(BM)、動員末梢血(MPB)および臍帯血(UCB)はすべて、種々のASPCを含有することが実証された。骨髄には多分化能ASPCが特に豊富である。
【0003】
系統を生じさせるASPC集団は、異種性である可能性が高い。従って、すべての幹細胞が、CD34であるとはかぎらない。同様に、リンパ球共通の前駆体の多くは、CD7およびCD3であるが、CD34であるものもあり、CD34であるものもある。ある部分、このような異種性は、CD34発現を含む細胞表面抗原発現が、細胞周期または活性化ならびに発生の可能性に依存し得るという事実を反映し得る。
【0004】
いくつかの研究は、ほとんどの始原ヒト造血幹細胞(HSC)がCD34表面マーカー(すなわち、CD34である)を発現し、明らかな系統拘束マーカー(lineage
commitment maker)(Linと示される)を欠き、そして低レベルから検出不能レベルの他の細胞表面マーカー(CD38、CD71、CD45RAおよびThy−1が挙げられる)を発現することを示唆している。例えば、非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7;非特許文献8;および非特許文献9を参照のこと。逆に、長期マウス骨髄移植モデルを使用した他の研究により、CD34lo/−細胞が、移植後にリンパ系統および骨髄系統を永続的に発生させることができる造血幹細胞集団を含むことが示唆されている。例えば、生着後にリンパ系統および骨髄系統を永続的に発生させることができるLinCD34lo/−ALDH小細胞の集団を同定した、非特許文献10;非特許文献11および非特許文献12を参照のこと。
【0005】
いくつかの証拠は、血球などの一定の細胞系統に拘束されているように見えるASPCが、適切な条件下で、さらなる組織(例えば筋肉組織または神経組織)を形成する能力を保持し得ることを示唆する。例えば、CD133間葉幹様細胞は概して、CD34/CD133細胞より多くのニューロン細胞マーカーを発現する(非特許文献13)。さらに、SPCの発生の可能性は、徐々に制限されてくる。従って、CD45およびCD34を発現するが、CD38を発現しないヒト幹細胞集団は、多分化能(多能性)造血幹および前駆細胞が高度に富化され、これに対して、CD45、CD34およびCD38を同時に発現する細胞は、発生がより制限される。同様に、インビトロで内皮コロニーを産生するが、造血性コロニーを産生しないヒト幹細胞は、概して、CD31を発現するが、CD45およびCD34を発現しない。間葉幹細胞は、概して、CD105およびCD135を発現する。非特許文献14;非特許文献15;非特許文献16;非特許文献17。
【0006】
アルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH)は、ASPCを富化させるために使用され得るマーカーである。特許文献1を参照のこと(これは、その全体が本明細書中に参考として援用される)。蛍光ALDH反応生成物は、このマーカーが細胞表面では発現されないので、フローサイトメトリーにより細胞を同定するために使用されるはずである。例えば、特許文献2を参照のこと(これは、その全体が本明細書中に参考として援用される)。ALDHの発現は、造血ASPC、神経ASPCおよび場合によっては他のタイプのASPCにおいて有意に高い。低い粒度に対するゲーティングにより、細胞、すなわち側方散乱チャネル(side scatter channel)(SSClo)細胞は、さらに富化され得る。ALDHポジティブ細胞は、CD34とは共分離されない。CD34細胞集団は、ALDHbright(ALDHbr)細胞およびALDHdim細胞を含み、これらは、それぞれ、高レベルおよび低レベルの酵素を発現する(非特許文献18)。ALDHbr細胞は、実質的にすべての幹細胞を含み、このことは、インビトロで多分化能細胞コロニーを生じさせるこの細胞集団の能力、長期にわたってNOD−SCIDマウスを再形成する細胞集団の能力、およびNOD−SCIDマウスにおいて骨髄に迅速に戻る細胞集団の能力により明らかである。逆に、ALDHdim集団は、CD34細胞であるにもかかわらず、非常に限られたコロニー形成能力しか有さず、有効に戻らず、NDO−SCID動物において短期の再形成しか生じさせない。従って、ALDH発現を利用して、機能的に活性なASPC CD34細胞を機能的に不活性なASPC CD34細胞から区別し、単離し得る。CD45およびCD31発現についての臍帯血(UCB)ALDHbr集団における異種性も報告されている(非特許文献19)。
【0007】
骨髄(BM)または動員末梢血(MPB)から治療的に活性なASPCを単離および調製するための技術は、幹細胞療法のために最小限の侵襲手順しか患者には要求されないので特に有用である。さらに、ASPC集団は、自己由来であるので、それらの移植片が拒絶されることはない。BM、MPB由来の、または移植片ドナーの臍帯血(UCB)由来の同種異系ASPC集団も有用である。しかし、移植片拒絶を防止するには、組織適合性ドナーおよび移植片の機能に干渉しない免疫抑制プロトコルが必要である。
【0008】
ASPCの治療の有用性は十分確立されており、そして、いずれの作用メカニズムおよび理論にも拘束されないが、ASPC細胞集団が移植受容者に非造血組織も生じさせ得る証拠が、少なからず存在する。例えば、非特許文献20;非特許文献21;非特許文献22;非特許文献23;非特許文献24;非特許文献25;非特許文献26;非特許文献27;非特許文献28;非特許文献29;非特許文献30;非特許文献31を参照のこと。さらに、いくつかの証拠は、移植されたASPCが、組織を修復するように宿主幹細胞を誘導することを示唆する(非特許文献20)。しかし、幹細胞源由来の細胞集団は低い割合のASPCしか含有しないので、非機能的大多数に対して機能的少数を同定する方法に対する必要性が存在する。これらの細胞が一旦同定されると、治療結果に必要なすべての細胞を含むだけでなく、潜在的に危険な汚染性細胞を欠く特注設計の移植片を使用して、治療は、改善され得る。さらに、同定方法によって有用なASPCを濃縮することができ、それにより移植しなければならない材料の量が減少し、その結果、組織損傷および毒性が減少し、有効性が増加する。さらに、このような選択された細胞を使用して、神経、筋肉および内皮などの組織を修復または置換するために使用され得る間葉細胞を生じさせ得る。幹細胞をまたインビトロで増殖させ、間葉細胞株および造血細胞株に増殖させて、移植のために使用され得るSPCまたは組織細胞の数をさらに増加させ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6,537,807号明細書
【特許文献2】米国特許第6,627,759号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Terstaypenら、「Blood」、1991年、第77巻、p.1218
【非特許文献2】Landsdorpら、「J Exp.Med.」、1993年、第178巻、p.787
【非特許文献3】Cicuttiniら、「Growth Factors」、1994年、第10巻、p.127
【非特許文献4】De Bruynら、「Stem Cells」、1995年、第13巻、p.281
【非特許文献5】Di Giustoら、「Blood」、1994年、第84巻、p.421
【非特許文献6】Haoら、「Blood」、1995年、第86巻、p.374
【非特許文献7】Huangら、「Blood」、1994年、第83巻、p.1515
【非特許文献8】Muenchら、「Blood」、1994年、第83巻、p.3170
【非特許文献9】Rustenら、「Blood」、1994年、第84巻、p.1473
【非特許文献10】Osawaら、「Science」、1996年、第273巻、p.242
【非特許文献11】Morelら、「Blood」、1996年、第88巻、p.629a
【非特許文献12】Jonesら、「Blood」、1996年、第88巻、p.487
【非特許文献13】Padovanら、「Cell Transplantation」、2003年、第12巻、p.839
【非特許文献14】Chenら、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA.」、2002年、第99巻、p.15468
【非特許文献15】Chenら、「Immunity」、2003年、第19巻、p.525
【非特許文献16】Pierelliら、「Leuk.Lymphoma.」、2001年、第42巻、p.1195
【非特許文献17】Moritaら、「Eur.J Haematol.」、2003年、第71巻、p.351
【非特許文献18】Stormsら、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」、1999年、第96巻、p.9118
【非特許文献19】Hessら、「Blood」、2003年、第102巻、p.383A
【非特許文献20】Verfaillie、「Trends in Cell Biol.」、2002年、第12巻、p.502
【非特許文献21】Ferrariら、「Science」、1998年、第279巻、p.1528
【非特許文献22】Gussoniら、「Nature」、1999年、第401巻、p.390−394
【非特許文献23】Orlicら、「Nature」、2001年、第410巻、p.701−705
【非特許文献24】Jacksonら、「J.Clin.Invest.」、2001年、第107巻、p.1395−1402
【非特許文献25】Grantら、「Nat.Med.」、2002年、第8巻、p.607−602
【非特許文献26】Mezeyら、「Science」、2001年、第290巻、p.1779−1782
【非特許文献27】Brazeltonら、「Science」、2000年、第290巻、p.1775−1779
【非特許文献28】Krauseら、「Cell」、2001年、第105巻、p.369−377
【非特許文献29】Petersenら、「Science」、1999年、第284巻、p.1168−1170
【非特許文献30】Lagasseら、「Nat.Med.」、2000年、第6巻、p.1229−1234
【非特許文献31】Rehmanら、「Circulation.」、2003年、第107巻、p.1164−1169
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要旨)
幹細胞の集団ならびにそれらの単離方法および使用方法が提供される。これらの幹細胞集団は、骨髄から単離されたアルデヒドデヒドロゲナーゼポジティブ(ALDHbr)細胞、およびいずれかの幹細胞源由来のALDHbrCD105細胞を含む。これらの集団はまた、CD34、CD38、CD41、CD45、CD105、CD133、CD135、CD117およびHLA−DRのような表面マーカーを発現する細胞も含み得、ならびに/またはCD3、CD7、CD10、CD13、CD14、CD19、CD33、CD35、CD56、CD127、CD138およびグリコホリンAのような細胞表面マーカーを実質的に有さない。この集団はまた、CD90を発現する細胞を含み得る。本発明の幹細胞集団は、骨髄、末梢血、臍帯血および胎児肝臓などの幹細胞源から単離される。
【0012】
本発明の方法は、幹細胞源から幹細胞集団を単離および精製する工程包含し、そしてこれらの細胞を使用して組織を再形成、修復および再生する方法を包含する。
本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
多系統発生し得る、ALDHbrCD105幹細胞の細胞集団。
(項目2)
前記幹細胞が、骨髄に由来する、項目1に記載の細胞集団。
(項目3)
前記集団内の細胞の少なくとも10%が、CD34、CD38、CD41、CD45、CD117、CD133、CD135、HLA−DRおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの細胞表面マーカーも発現し、該細胞が多系統発生し得る、項目1に記載の細胞集団。
(項目4)
前記集団が、CD3、CD7、CD10、CD13、CD14、CD19、CD33、CD35、CD56、CD127、CD138、グリコホリンAおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される細胞表面マーカーを発現する細胞を実質的に有さない、項目1に記載の細胞集団。
(項目5)
前記集団内の細胞の約60%より多くが、細胞表面マーカーCD105を発現する、項目1に記載の細胞集団。
(項目6)
前記集団内の細胞の少なくとも10%が、低側方散乱チャネル(SSClo)である、項目1に記載の細胞集団。
(項目7)
前記集団内の細胞の少なくとも10%が、高側方散乱チャネル(SSChi)である、項目1に記載の細胞集団。
(項目8)
前記集団が哺乳動物に生着し得る、項目1に記載の細胞集団。
(項目9)
前記集団が造血細胞に生着し得る、項目8に記載の細胞集団。
(項目10)
前記集団がヒトB細胞前駆体を有するSCID/NODマウス脾臓に生着し得る、項目8に記載の細胞集団。
(項目11)
前記集団がT細胞前駆体を有するSCID/hu Thyマウスに移植されたヒト胸腺組織に生着し得る、項目8に記載の細胞集団。
(項目12)
前記T細胞前駆体が、CD4またはCD8を発現するT細胞に発生し得る、項目11に記載の細胞集団。
(項目13)
前記集団が間葉細胞に生着し得る、項目8に記載の細胞集団。
(項目14)
前記集団が、骨髄間質、骨、軟骨、腱、脂肪、平滑筋、心筋、骨格筋、神経、希突起膠細胞、線維芽細胞、内皮およびこれらの組み合わせからなる群より選択される組織に生着し得る、項目13に記載の細胞集団。
(項目15)
薬理学的に受容可能なキャリア中に項目1に記載の細胞集団を含有する、組成物。
(項目16)
血液組織を再形成する必要がある患者において血液組織を再形成する方法であって、項目1に記載の細胞集団を該患者に導入する工程を包含し、該細胞が生着し得る、方法。
(項目17)
前記患者が、骨髄切除のための治療が必要な患者である、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記患者が、癌のための治療が必要な患者である、項目16に記載の方法。
(項目19)
前記患者が、癌療法に関連した後遺症のための治療が必要な患者である、項目16に記載の方法。
(項目20)
前記集団内の細胞の少なくとも10%が、CD34、CD38、CD41、CD45、CD117、CD133、CD135、HLA−DRおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される細胞表面マーカーを発現し、該細胞が多系統発生し得る、項目16に記載の方法。
(項目21)
前記集団が、CD3、CD7、CD10、CD13、CD14、CD19、CD33、CD35、CD56、CD127、CD138、グリコホリンAおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される細胞表面マーカーを発現する細胞を実質的に有さない、項目16に記載の方法。
(項目22)
前記集団内の細胞の少なくとも10%が、低側方散乱チャネル(SSClo)である、項目16に記載の方法。
(項目23)
前記集団内の細胞の少なくとも10%が、高側方散乱チャネル(SSChi)である、項目16に記載の方法。
(項目24)
間葉組織を修復または再生させる必要がある患者において間葉組織を修復または再生させる方法であって、項目1に記載の細胞集団を該患者に導入する工程を包含する、方法。
(項目25)
前記間葉組織が、骨、軟骨、脂肪、内皮、筋肉およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、項目24に記載の方法。
(項目26)
項目1に記載の細胞集団が、新生血管形成を促進する、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記集団が、骨欠損を矯正するために導入される、項目24に記載の方法。
(項目28)
前記集団が、軟骨欠損を矯正するために導入される、項目24に記載の方法。
(項目29)
前記集団内の細胞の少なくとも10%が、CD34、CD38、CD41、CD45、CD117、CD133、CD135、HLA−DRおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される細胞表面マーカーを発現し、該細胞が多系統発生し得る、項目24に記載の方法。
(項目30)
前記集団が、CD3、CD7、CD10、CD13、CD14、CD19、CD33、CD35、CD56、CD127、CD138、グリコホリンAおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される細胞表面マーカーを発現する細胞を実質的に有さない、項目24に記載の方法。
(項目31)
前記集団内の細胞の少なくとも10%が、低側方散乱チャネル(SSClo)である、項目24に記載の方法。
(項目32)
前記集団内の細胞の少なくとも10%が、高側方散乱チャネル(SSChi)である、項目24に記載の方法。
(項目33)
免疫学的寛容を必要とする患者において免疫学的寛容を誘導する方法であって、項目1に記載の細胞集団を該患者に導入する工程を包含し、該細胞が同種抗原認識および応答をダウンレギュレートし得る、方法。
(項目34)
前記集団が、対宿主性移植片病を予防するために導入される、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記集団が、対宿主性移植片病を改善するために導入される、項目33に記載の方法。
(項目36)
前記集団内の細胞の少なくとも10%が、CD34、CD38、CD41、CD45、CD117、CD133、CD135、HLA−DRおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される細胞表面マーカーを発現し、該細胞が多系統発生し得る、項目33に記載の方法。
(項目37)
前記集団が、CD3、CD7、CD10、CD13、CD14、CD19、CD33、CD35、CD56、CD127、CD138、グリコホリンAおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される細胞表面マーカーを発現する細胞を実質的に有さない、項目33に記載の方法。
(項目38)
前記集団内の細胞の少なくとも10%が、低側方散乱チャネル(SSClo)である、項目33に記載の方法。
(項目39)
前記集団内の細胞の少なくとも10%が、高側方散乱チャネル(SSChi)である、項目33に記載の方法。
(項目40)
ニューロンまたは希突起膠細胞を産生する必要がある患者においてニューロンまたは希突起膠細胞を産生する方法であって、項目1に記載の細胞集団を該患者に導入する工程を包含し、該細胞が神経組織に分化し得る、方法。
(項目41)
前記集団が、神経変性を予防するために導入される、項目40に記載の方法。
(項目42)
前記集団が、神経損傷または神経変性を改善するために導入される、項目40に記載の方法。
(項目43)
前記集団内の細胞の少なくとも10%が、CD34、CD38、CD41、CD45、CD117、CD133、CD135、HLA−DRおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される細胞表面マーカーを発現し、該細胞が多系統発生し得る、項目40に記載の方法。
(項目44)
前記集団が、CD3、CD7、CD10、CD13、CD14、CD19、CD33、CD35、CD56、CD127、CD138、グリコホリンAおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される細胞表面マーカーを発現する細胞を実質的に有さない、項目40に記載の方法。
(項目45)
前記集団内の細胞の少なくとも10%が、低側方散乱チャネル(SSClo)である、項目40に記載の方法。
(項目46)
前記集団内の細胞の少なくとも10%が、高側方散乱チャネル(SSChi)である、項目40に記載の方法。
(項目47)
心筋細胞を産生する必要がある患者において心筋細胞を産生する方法であって、項目1に記載の細胞集団を該患者に導入する工程を包含し、該細胞が心臓組織に分化し得る、方法。
(項目48)
前記集団が、虚血性心臓損傷を予防するために導入される、項目47に記載の方法。
(項目49)
前記集団が、虚血性心臓損傷を改善するために導入される、項目47に記載の方法。
(項目50)
前記集団内の細胞の少なくとも10%が、CD34、CD38、CD41、CD45、CD117、CD133、CD135、HLA−DRおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される細胞表面マーカーを発現し、該細胞が多系統発生し得る、項目47に記載の方法。
(項目51)
前記集団が、CD3、CD7、CD10、CD13、CD14、CD19、CD33、CD35、CD56、CD127、CD138、グリコホリンAおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される細胞表面マーカーを発現する細胞を実質的に有さない、項目47に記載の方法。
(項目52)
前記集団内の細胞の少なくとも10%が、低側方散乱チャネル(SSClo)である、項目47に記載の方法。
(項目53)
前記集団内の細胞の少なくとも10%が、高側方散乱チャネル(SSChi)である、項目47に記載の方法。
(項目54)
多系統発生し得る細胞である骨髄由来ALDHbr幹細胞の細胞集団。
(項目55)
前記集団内の細胞の少なくとも10%が、CD34、CD38、CD41、CD45、CD105、CD117、CD133、CD135、HLA−DRおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される細胞表面マーカーを発現し、該細胞が多系統発生し得る、項目54に記載の細胞集団。
(項目56)
前記集団内の細胞の少なくとも10%が、少なくともCD105を発現する、項目55に記載の細胞集団。
(項目57)
前記集団内の細胞の少なくとも40%が、少なくともCD105を発現する、項目56に記載の細胞集団。
(項目58)
前記集団が、CD3、CD7、CD10、CD13、CD14、CD19、CD33、CD35、CD56、CD127、CD138、グリコホリンAおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される細胞表面マーカーを発現する細胞を実質的に有さない、項目54に記載の細胞集団。
(項目59)
前記集団内の細胞の少なくとも10%が、低側方散乱チャネル(SSClo)である、項目54に記載の細胞集団。
(項目60)
前記集団内の細胞の少なくとも10%が、高側方散乱チャネル(SSChi)である、項目54に記載の細胞集団。
(項目61)
前記集団が哺乳動物に生着し得る、項目54に記載の細胞集団。
(項目62)
前記集団が造血細胞に生着し得る、項目61に記載の細胞集団。
(項目63)
前記集団がヒトB細胞前駆体を有するSCID/NODマウス脾臓に生着し得る、項目61に記載の細胞集団。
(項目64)
前記集団がT細胞前駆体を有するSCID/hu Thyマウスに移植されたヒト胸腺組織に生着し得る、項目61に記載の細胞集団。
(項目65)
前記T細胞前駆体が、CD4またはCD8を発現するT細胞に発生し得る、項目64に記載の細胞集団。
(項目66)
前記集団が間葉細胞に生着し得る、項目61に記載の細胞集団。
(項目67)
前記集団が、骨髄間質、骨、軟骨、腱、脂肪、平滑筋、心筋、骨格筋、神経、希突起膠細胞、線維芽細胞、内皮およびこれらの組み合わせからなる群より選択される組織に生着し得る、項目66に記載の細胞集団。
(項目68)
薬理学的に受容可能なキャリア中に項目54に記載の細胞集団を含有する、組成物。
(項目69)
血液組織を再形成する必要がある患者において血液組織を再形成する方法であって、項目54に記載の細胞集団を該患者に導入する工程を包含し、該細胞が生着し得る、方法。
(項目70)
前記患者が、骨髄切除のための治療が必要な患者である、項目69に記載の方法。
(項目71)
前記患者が、癌のための治療が必要な患者である、項目69に記載の方法。
(項目72)
前記患者が、癌療法に関連した後遺症のための治療が必要な患者である、項目69に記載の方法。
(項目73)
前記集団内の細胞の少なくとも10%が、CD34、CD38、CD41、CD45、CD105、CD117、CD133、CD135、HLA−DRおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される細胞表面マーカーを発現し、該細胞が多系統発生し得る、項目69に記載の方法。
(項目74)
前記集団内の細胞の少なくとも10%が、少なくともCD105を発現する、項目73に記載の方法。
(項目75)
前記集団内の細胞の少なくとも40%が、少なくともCD105を発現する、項目73に記載の方法。
(項目76)
前記集団が、CD3、CD7、CD10、CD13、CD14、CD19、CD33、CD35、CD56、CD127、CD138、グリコホリンAおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される細胞表面マーカーを発現する細胞を実質的に有さない、項目69に記載の方法。
(項目77)
前記集団内の細胞の少なくとも10%が、低側方散乱チャネル(SSClo)である、項目69に記載の方法。
(項目78)
前記集団内の細胞の少なくとも10%が、高側方散乱チャネル(SSChi)である、項目69に記載の方法。
(項目79)
間葉組織を修復または再生させる必要がある患者において間葉組織を修復または再生させる方法であって、項目54に記載の細胞集団を該患者に導入する工程を包含する、方法。(項目80)
前記間葉組織が、骨、軟骨、脂肪、内皮、筋肉およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、項目79に記載の方法。
(項目81)
前記細胞集団が、新生血管形成を促進する、項目80に記載の方法。
(項目82)
前記集団が、骨欠損を矯正するために導入される、項目79に記載の方法。
(項目83)
前記集団が、軟骨欠損を矯正するために導入される、項目79に記載の方法。
(項目84)
前記集団内の細胞の少なくとも10%が、CD34、CD38、CD41、CD45、CD105、CD117、CD133、CD135、HLA−DRおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される細胞表面マーカーを発現し、該細胞が多系統発生し得る、項目79に記載の方法。
(項目85)
前記集団内の細胞の少なくとも10%が、少なくともCD105を発現する、項目84に記載の方法。
(項目86)
前記集団内の細胞の少なくとも40%が、少なくともCD105を発現する、項目84に記載の方法。
(項目87)
前記集団が、CD3、CD7、CD10、CD13、CD14、CD19、CD33、CD35、CD56、CD127、CD138、グリコホリンAおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される細胞表面マーカーを発現する細胞を実質的に有さない、項目79に記載の方法。
(項目88)
前記集団内の細胞の少なくとも10%が、低側方散乱チャネル(SSClo)である、項目79に記載の方法。
(項目89)
前記集団内の細胞の少なくとも10%が、高側方散乱チャネル(SSChi)である、項目79に記載の方法。
(項目90)
免疫学的寛容を必要とする患者において免疫学的寛容を誘導する方法であって、項目54に記載の細胞集団を該患者に導入する工程を包含し、該細胞が同種抗原認識および応答をダウンレギュレートし得る、方法。
(項目91)
前記集団が、対宿主性移植片病を予防するために導入される、項目90に記載の方法。
(項目92)
前記集団が、対宿主性移植片病を改善するために導入される、項目90に記載の方法。
(項目93)
前記集団内の細胞の少なくとも10%が、CD34、CD38、CD41、CD45、CD105、CD117、CD133、CD135、HLA−DRおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される細胞表面マーカーを発現し、該細胞が多系統発生し得る、項目90に記載の方法。
(項目94)
前記集団内の細胞の少なくとも10%が、少なくともCD105を発現する、項目93に記載の方法。
(項目95)
前記集団内の細胞の少なくとも40%が、少なくともCD105を発現する、項目93に記載の方法。
(項目96)
前記集団が、CD3、CD7、CD10、CD13、CD14、CD19、CD33、CD35、CD56、CD127、CD138、グリコホリンAおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される細胞表面マーカーを発現する細胞を実質的に有さない、項目90に記載の方法。
(項目97)
前記集団内の細胞の少なくとも10%が、低側方散乱チャネル(SSClo)である、項目90に記載の方法。
(項目98)
前記集団内の細胞の少なくとも10%が、高側方散乱チャネル(SSChi)である、項目90に記載の方法。
(項目99)
ニューロンまたは希突起膠細胞を産生する必要がある患者においてニューロンまたは希突起膠細胞を産生する方法であって、項目54に記載の細胞集団を該患者に導入する工程を包含し、該細胞が神経組織に分化し得る、方法。
(項目100)
前記集団が、神経変性を予防するために導入される、項目99に記載の方法。
(項目101)
前記集団が、神経損傷または神経変性を改善するために導入される、項目99に記載の方法。
(項目102)
前記集団内の細胞の少なくとも10%が、CD34、CD38、CD41、CD45、CD105、CD117、CD133、CD135、HLA−DRおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される細胞表面マーカーを発現し、該細胞が多系統発生し得る、項目99に記載の方法。
(項目103)
前記集団内の細胞の少なくとも10%が、少なくともCD105を発現する、項目102に記載の方法。
(項目104)
前記集団内の細胞の少なくとも40%が、少なくともCD105を発現する、項目102に記載の方法。
(項目105)
前記集団が、CD3、CD7、CD10、CD13、CD14、CD19、CD33、CD35、CD56、CD127、CD138、グリコホリンAおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される細胞表面マーカーを発現する細胞を実質的に有さない、項目99に記載の方法。
(項目106)
前記集団内の細胞の少なくとも10%が、低側方散乱チャネル(SSClo)である、項目99に記載の方法。
(項目107)
前記集団内の細胞の少なくとも10%が、高側方散乱チャネル(SSChi)である、項目99に記載の方法。
(項目108)
心筋細胞を産生する必要がある患者において心筋細胞を産生する方法であって、項目54に記載の細胞集団を該患者に導入する工程を包含し、該細胞が心臓組織に分化し得る、方法。
(項目109)
前記集団が、虚血性心臓損傷を予防するために導入される、項目108に記載の方法。
(項目110)
前記集団が、虚血性心臓損傷を改善するために導入される、項目108に記載の方法。
(項目111)
前記集団内の細胞の少なくとも10%が、CD34、CD38、CD41、CD45、CD105、CD117、CD133、CD135、HLA−DRおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される細胞表面マーカーを発現し、該細胞が多系統発生し得る、項目108に記載の方法。
(項目112)
前記集団内の細胞の少なくとも10%が、少なくともCD105を発現する、項目111に記載の方法。
(項目113)
前記集団内の細胞の少なくとも40%が、少なくともCD105を発現する、項目111に記載の方法。
(項目114)
前記集団が、CD3、CD7、CD10、CD13、CD14、CD19、CD33、CD35、CD56、CD127、CD138、グリコホリンAおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される細胞表面マーカーを発現する細胞を実質的に有さない、項目108に記載の方法。
(項目115)
前記集団内の細胞の少なくとも10%が、低側方散乱チャネル(SSClo)である、項目108に記載の方法。
(項目116)
前記集団内の細胞の少なくとも10%が、高側方散乱チャネル(SSChi)である、項目108に記載の方法。
(項目117)
幹細胞の分化、成長、細胞毒性、アポトーシスまたは生着を促進するその能力について化合物をスクリーニングする方法であって、該方法は、以下:
a)幹細胞源からALDHbr幹細胞を単離する工程;
b)CD105を発現する細胞の部分集団をさらに選択する工程;および
c)該細胞部分集団と該化合物とを接触させる工程;
を包含する、方法。
(項目118)
幹細胞の分化、成長、細胞毒性、アポトーシスまたは生着を促進するその能力について化合物をスクリーニングする方法であって、該方法は、以下:
a)骨髄からALDHbr幹細胞を単離する工程;
b)CD34、CD38、CD41、CD45、CD105、CD117、CD133、CD135、HLA−DRおよびこれらの組み合わせからなる群より選択されるマーカーを発現するALDHbr幹細胞の部分集団をさらに選択する工程;ならびに
c)該ALDHbr幹細胞部分集団と該化合物とを接触させる工程;
を包含する、方法。
(項目119)
容器内に配置された検出可能なALDH基質、ならびにCD34、CD38、CD41、CD45、CD105、CD117、CD133、CD135、HLA−DRおよびこれらの組み合わせからなる群より選択され、容器内に配置された細胞表面マーカーに特異的な抗体を備える、キット。
(項目120)
前記ALDH基質が、BODIPYアミノアセトアルデヒドジエチルアセタールまたはBODIPYアミノアセトアルデヒドである、項目119に記載のキット。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、アイソタイプコントロールおよび蛍光コントロールに関する実施例1からの散布図を示す。
【図2】図2は、実施例1からの表面マーカーの発現を示す。
【図3】図3は、異なる移植片におけるALDHbrSSCloの発現の実施例1からのゲートされた散布図を示す。
【図4】図4は、実施例1からの各試験被験体の異なる移植片におけるALDHbrSSClo細胞集団の発現を示す。
【図5】図5は、CD34、CD105、CD133を発現する細胞について示す骨髄、臍帯血および動員末梢血からのALDHbr細胞およびALDHdim細胞、ならびにCD45の発現について示すネガティブ細胞に関する実施例1からの散布図を示す。
【図6】図6は、実施例1からのCD34ALDHbr部分集団の比較を示す。
【図7】図7は、2週間培養した4つの骨髄サンプルに関する造血前駆体コロニー形成アッセイの結果を示す。黒塗りの棒は、赤血球除去後の骨髄サンプルについてのデータであり、白ぬきの棒は、ALDH基質と反応させた後であるが、選別前の細胞懸濁液であり、斜線の棒は、染色後の富化されたALDHbrSSClo集団である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(発明の詳細な説明)
本発明は、幹細胞の集団、これらの幹細胞集団を単離するための方法、およびこれらの幹細胞集団を使用して組織を再形成、再生または修復する方法に関する。これらの幹細胞集団は、ALDHbrである幹および前駆細胞(SPC)を含み、従って幹細胞源中に存在する大部分またはすべての幹細胞を含む。ALDHbr細胞集団は、CD105などの細胞マーカーの組み合わせを発現する、または(フローサイトメトリーにより測定して)低い粒度を有する細胞の部分集団をさらに含み、これらは、本発明の特定の実施形態(例えば、目的の疾患の再形成、再生もしくは修復、またはキットの製造)に有用な部分集団を同定するために役立つ。
【0015】
細胞表面マーカーおよび他のマーカー(例えば細胞内酵素)と細胞の光散乱特性との組合せを使用することにより、本発明の幹細胞移植片は、都合よく特定の治療用途に「合わせて製造」され得る。また、これらの固有の幹細胞集団の一部が、特定の細胞系統の代わりになるので、これらの集団は、インビボで特定の細胞系統をどちらも選択的に再構成するために使用され得る。造血系統を生じさせる幹細胞は、幹細胞移植片の濃度および有効性を増加させるために使用され得、それにより毒性を低下させ得る。有利なことに、これらの細胞は、自己由来の骨髄および末梢血から選別され得、従って、拒絶の機会をさらに減少させ、そして幹細胞移植片の効力をさらに増加させ得る。骨、神経、希突起膠細胞、筋肉、脈管構造、骨髄間質および真皮などの間葉組織を生じさせる幹細胞は、疾患にかかった組織または損傷した組織を修復または置換するために使用され得る。従って、本明細書中で開示するCDマーカーの新規組み合わせは、幹細胞移植片用の細胞を単離する際の使用に機能的にも定量的にも最良である幹細胞源の同定などのさらなる利点を与える。「単離された」とは、哺乳動物から収集され、細胞マーカー(抗体(接合抗体または非接合抗体)、蛍光マーカー、酵素マーカー、色素、染料などが挙げられるが、これらに限定されない)と接触した幹細胞を意図する。
【0016】
「細胞表面マーカー」とは、特定の抗体により検出される、細胞の表面上で発現されるタンパク質を意図する。本発明において有用である細胞表面マーカーとしては、CD(細胞膜分化)抗原CD1a、CD2、CD3、CD5、CD7、CD8、CD10、CD13、CD14、CD16、CD19、CD29、CD31、CD33、CD34、CD35、CD38、CD41、CD45、CD56、CD71、CD73、CD90、CD105、CD115、CD117、CD124、CD127、CD130、CD138、CD144、CD166、HLA−A、HLA−B、HLA−C、HLA−DR、VEGFレセプター1(VEGF−R1)、VEGFレセプター−2(VEGF−R2)およびグリコホリンAが挙げられるが、これらに限定されない。「細胞内マーカー」とは、検出可能な遺伝子または遺伝子産物(例えば酵素)の発現を意図する。例えば、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH)は、ほとんどの造血幹細胞において発現される細胞内酵素である。これは、蛍光基質を使用することによってフローサイトメトリーにより検出され得る。
【0017】
側方散乱チャネル(side scatter channel)(SCC)輝度および前方散乱チャネル(forward scatter channel)(FSC)輝度に基づく細胞の光散乱特性を基にして、集団はさらに分析され得る。「側方散乱」とは、フローサイトメトリーにより測定して、直交的に(レーザー源の方向から約90°に)散乱される光の量を意図する。「前方散乱」とは、光源の方向から一般に90°未満に散乱される光の量を意図する。概して、細胞の粒度が増大するにつれて側方散乱が増加し、細胞の直径が増加するにつれて前方散乱が増加する。側方散乱および前方散乱は、光の強度として測定される。当業者は、ユーザーにより定義された設定を用いて側方散乱の量が区別され得ることを認識する。用語「低側方散乱」および「SSClo」は、フローサイトメータの側方散乱チャネルにおいて約50%未満の強度、約40%未満の強度、約30%未満の強度、またはさらにそれより低い強度を意図する。逆に、「高側方散乱」または「SSChi」細胞は、SSCloではない細胞の相反集団である。前方散乱は、側方散乱と同様に定義されるが、前方散乱チャネル内で光が収集される。従って、本発明の実施形態は、細胞表面マーカーと、細胞内マーカーと、幹細胞源から得られる細胞の光散乱特性との組み合わせに基づく幹細胞集団の選択を含む。
【0018】
本明細書中に開示される幹細胞の集団は、マーカーのポジティブ発現に基づいて選別され得るALDHbr細胞を含み得る。「発現にポジティブ」とは、目的のマーカーが、細胞内マーカーか細胞外マーカーかにかかわらず、任意の方法(フローサイトメトリーが挙げられるが、これに限定されない)を使用して細胞内または細胞上で検出され得ることを意図する。用語「発現にポジティブ」、「ポジティブ発現する」、「発現する」、上付き文字で用いられている「」、および上付き文字で用いられている「pos」は、本明細書中では交換可能に用いられている。「発現にネガティブ」は、目的のマーカーが、細胞内マーカーか細胞外マーカーかにかかわらず、任意の方法(フローサイトメトリーが挙げられるが、これに限定されない)を使用して細胞内または細胞上で検出され得ないことを意図する。用語「発現にネガティブ」、「ネガティブ発現する」、「発現しない」、上付き文字で用いられている「」、および上付き文字で用いられている「neg」は、本明細書中では交換可能に用いられている。
【0019】
上付き文字で用いられている「br」は、(例えばFACSを使用して)蛍光により測定したときに発現についてポジティブである他の細胞より高輝度である、目的のマーカーのポジティブ発現を意図する。当業者は、輝度が検出の閾値に基づくことを認識する。概して、当業者は、まず、ネガティブコントロール管を分析し、FSCおよびSCCにより目的の集団の周りにゲート(ビットマップ)を設定し、光電子増倍管電圧を調整し、細胞の97%がその蛍光マーカーについてネガティブコントロールで染色されないように見えるように、所望の発光波長の蛍光を得る。一旦これらのパラメータが確立されると、染色された細胞が分析され、未染色の蛍光細胞集団に対して蛍光が記録される。本明細書中で使用される場合、用語「高輝度の」または上付き文字での「br」は、未染色のコントロール細胞に対して、約20倍より高い、約30倍より高い、約40倍より高い、約50倍より高い、約60倍より高い、約70倍より高い、約80倍より高い、約90倍より高い、約100倍より高い、またはそれより高い検出可能な蛍光の増加を意図する。逆に、本明細書で使用される場合、用語「dim」または上付き文字での「dim」は、「高輝度の」または「br」と定義されるものの相反集団を意図する。
【0020】
いくつかの実施形態において、目的の集団内の細胞は、マーカー(例えば、CD29(ほとんどの細胞上で発現されるインテグリンβ1サブユニット);CD31(すべての内皮細胞ならびに一部の血小板および白血球上で見出される同型接着分子);CD34(1〜4%の骨髄細胞上で発現される高グリコシル化I型膜貫通型タンパク質);CD38(未成熟T細胞および未成熟B細胞上で見出されるが、ほとんどの成熟末梢リンパ球上では見いだされないII型膜貫通型タンパク質);CD41(血小板および巨核球上で発現されるインテグリンαIIbサブユニット);CD45(造血系起源のすべての細胞上で見出される白血球共通抗原);CD73(成熟リンパ球の部分集合ならびに一部の内皮および上皮細胞上で差次的に発現されるエクト−5’−ヌクレオチダーゼ);CD90(ヒトにおける胸腺前駆細胞上で見出されるGPI細胞アンカー型分子);CD105(内皮細胞上で見出されるが、ほとんどのT細胞およびB細胞には不在であるジスルフィド連結型ホモダイマー);CD115(主に単核食細胞系統の細胞上で発現されるマクロファージコロニー刺激因子レセプター);CD117(1〜4%の骨髄幹細胞上で見出されるc−kitリガンドレセプター);CD133(始原造血前駆細胞上で発現されるペンタスパン膜貫通型糖タンパク質);CD135(CD34造血幹細胞上で発現されるFlt3リガンドレセプター);CD138(未成熟B細胞および形質細胞上で発現される細胞外基質レセプター);CD144(内皮細胞内で付着接合を組織化するVEカドヘリン分子);CD166(胸腺上皮、活性化T細胞およびニューロン上で見出される);HLA−A、HLA−B、HLA−C(MHCクラスI分子の型);HLA−DR(MHCクラスII分子);VEGFレセプター1およびVEGFレセプター2(造血幹細胞および血管内皮上で見出される);ならびにこれらのマーカーの任意の組み合わせ)を発現する。
【0021】
一実施形態において、細胞集団は、ALDHbr細胞を含み、ここで、この細胞の少なくとも10%から100%が、少なくともCD41、少なくともCD105または少なくともHLA−DRを発現する。別の実施形態において、細胞集団は、ALDHbrSSClo細胞を含み、ここで、この細胞の少なくとも10%から100%が、CD41、CD105およびHLA−DRの任意の組み合わせを発現する。
【0022】
いくつかの実施形態において、細胞表面マーカーの発現の欠如は、本発明の幹細胞集団を規定する。例としては、以下のマーカーを発現する細胞を実質的に有さないALDHbrSSClo細胞を含む幹細胞の集団が挙げられる:CD1a(MHCクラスIに構造的に類似しているリンパ系マーカー);CD2(抗原認識に関連したpanリンパ系マーカー);CD3(T細胞レセプター複合体のメンバー);CD5(成熟T細胞および成熟B細胞上で発現される);CD7(初期T細胞系統マーカー);CD10(初期T細胞前駆体および初期B細胞前駆体上で発現されるII型膜型メタロプロテアーゼ);CD13(顆粒球、単球およびそれらの前駆体上で発現されるII型膜型メタロプロテアーゼ);CD14(主として骨髄性単球系統細胞上で発現されるGPI結合型タンパク質);CD19(B細胞抗原シグナル伝達複合体の一成分);CD33(多能性幹細胞には存在しないが、CD34の後に骨髄性単球前駆体上に出現するシアル酸結合性タンパク質);CD35(多くのリンパ系細胞および骨髄性単球性細胞上で発現される1型補体レセプター);CD56(ナチュラルキラー(NK)細胞上で排他的に見出される神経系接着分子のアイソフォーム);CD127(リンパ球上で発現される高親和性インターロイキン7レセプター);CD138(未成熟B細胞および形質細胞上で見出される細胞外基質レセプター);グリコホリンA(ヒト赤血球および胚様前駆体上に存在するシアロ糖タンパク質);ならびにこれらのマーカーの任意の組み合わせ。いくつかの実施形態において、幹細胞は、Linであり、これらの幹細胞は、系統拘束細胞表面マーカーをまだ発現せず、従って、より多くの数の造血幹細胞を含む。用語「Lin」とは、細胞が、細胞表面マーカーCD2、CD3、CD14、CD16、CD19、CD24、CD56、CD66b、CD14およびグリコホリンA(gly A)の発現を欠くことを意図する。
【0023】
これらの固有の細胞表面マーカーの形跡に基づいて、固有の機能的特徴を有する個々の幹細胞集団を同定した。
【0024】
いくつかの実施形態では、本発明の幹細胞集団内のALDHbr細胞の少なくとも10%、20%または30%が、目的の細胞マーカーを発現し、他の実施形態では、幹細胞集団内のALDHbr細胞の少なくとも40%、50%または60%が、目的の細胞マーカーを発現し、なお他の実施形態では、幹細胞集団内のALDHbr細胞の少なくとも70%、80%または90%が、目的の細胞マーカーを発現し、さらに他の実施形態では、幹細胞集団内のALDHbr細胞の少なくとも95%、96%、97%、98%、99%または100%までもが、目的の細胞マーカーを発現する。「実質的に有さない」とは、その集団内の細胞の約5%、4%、3%、2%もしくは1%より少ない、またはさらに0%が、目的のマーカーを発現することを意図する。本明細書中では骨髄からの精製された細胞集団の単離を特に例示しているが、他の源(臍帯血、末梢血および胎児肝臓が挙げられる)からのこのような細胞の単離もまた企図される。
【0025】
当該分野で公知である、および本明細書に記載する選択方法が、SPC(ASPCが挙げられる)をさらに特性付けするために使用され得る。一般に、SPCおよびASPCの供給源をモノクローナル抗体と反応させ、同起源細胞表面抗原を発現する細胞の部分集団を、補体媒介溶解により免疫磁性ビーズで、凝集法で、または蛍光細胞分析分離法(FACS)で、ポジティブまたはネガティブ選択する。規定された細胞表面表現型を有する得られた部分集団の機能特性を、その後、コロニー形成アッセイを用いて決定する。一旦SPC活性またはASPC活性を有する細胞および有さない細胞の表現型がわかると、これらの方法を、治療的移植に適するSPCまたはASPCを選択するために使用し得る。
【0026】
所望される場合には、最初にネガティブ選択分離工程を使用することにより、最終分化細胞の大部分を除去することができる。例えば、最初に磁性ビーズ分離を用いて、多数の系統拘束型細胞を除去することができる。全細胞の望ましくは少なくとも約80%、通常は少なくとも約70%が、除去される。
【0027】
細胞分離のための手順としては、抗体被覆磁性ビーズを使用する磁性分離;親和性クロマトグラフィー;モノクローナル抗体に結合させたか、もしくはモノクローナル抗体に連結して使用した細胞毒性剤(補体および細胞毒素が挙げられるが、これらに限定されない)、ならびに固体マトリックス(例えばプレート)に取り付けた抗体での「パンニング」、溶出または他の従来技術のいずれかの手段によるポジティブ選択またはネガティブ選択が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0028】
正確な細胞分離を提供する技術としては、種々の程度の精巧さ(例えば、複数のカラーチャネル、低角および鈍角の光散乱検出チャネル、インピーダンスチャネルなど)を有し得るフローサイトメトリーが挙げられるが、これに限定されない。種々の専用系統に対する抗体を異なる蛍光色素により発光させることができる。多色分析における使用を見出し得る蛍光色素としては、フィコビリタンパク質、例えばフィコエリトリンおよびアロフィコシアニン;フルオレセイン;ならびにテキサスレッドが挙げられる。細胞は、死滅細胞に選択的に蓄積する色素(例えば、ヨウ化プロピジウムおよび7−アミノアクチノマイシンD(7−AAD))を利用することにより、死滅細胞に対して選択され得る。好ましくは細胞は、約2%ウシ胎仔血清(FCS)または0.2%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有する培地内で回収される。例えば、Fallonら、(2003)Br.J.Haematol.121:1(これは、本明細書に参考として援用される)を参照のこと。
【0029】
正確な分離を可能にするポジティブ選択のための他の技術(例えば親和性カラムなど)が利用され得る。その選択法は、所望の幹細胞集団の約20%未満、約15%未満、約10%未満または約5%未満の残量になるまで非前駆細胞を除去することができなければならない。
【0030】
本発明の幹細胞集団は、種々の方法(本明細書中に記載されるものおよび以下に例示されるものが挙げられる)を用いて幹細胞源から単離され得る。例えば、一実施形態では、二工程手順を用いることができる。例えば、第一工程において、例えばFACSを用いることによりALDHbrの細胞発現について最初に選別することにより、幹細胞がポジティブ選択される。第二工程において、細胞表面マーカー(例えばCD105、HLA−DR、CD41)の発現について選別することにより細胞をポジティブ選択するか、細胞表面マーカー(例えば系統拘束マーカー)の発現の欠如についてネガティブ選別することにより細胞をネガティブ選択する。
【0031】
あるいは、三工程単離手順を用いることができる。第一工程では、StemCell Technologiesからの市販キットを使用して、例えば特異的系統拘束に関連した異なる表面抗原のいずれかを発現する成熟単核細胞が排除され得る。得られる調製物は、Linと呼ばれ、以下の表面抗原のいずれかを発現する細胞を本質的に欠く:グリコホリンA(glyA)、CD2、CD3、CD14、CD16、CD19、CD24、CD56およびCD66b。第二工程では、Lin細胞の部分集合を、例えばBODIPYアミノアセトアルデヒドでの染色後、フローサイトメトリーにより選別して、ALDHbrLinおよびALDHloLinを得ることができる。第三工程では、例えばフローサイトメトリーを用いてそのALDHbrLin画分からCD34細胞を選別して、ALDHbrCD34Lin細胞およびALDHbrCD34Lin細胞を得ることができる。この調製物を、CD13、CD33、CD35、CD38、CD41、CD45、CD90、CD105、CD117、CD133、CD135、CD138、HLA−DRまたはこれらの任意の組み合わせをポジティブ発現する細胞についてさらに選別することができる。
【0032】
代替的な実施形態において、単離手順は、単一のネガティブ涸渇工程の使用を包含する。この手順に従って、適切な抗体を用いて、Lin系統マーカーを発現する細胞が一工程で除去される。
【0033】
使用される単離手順にかかわらず、得られる細胞は、多系統幹細胞の特性を有する。「多系統幹細胞」とは、例えば、間葉幹細胞(MSC)、造血幹細胞(HSC)などの細胞に多系統発生し得る細胞、または自分自身でMSCもしくはHSCに発生し得る自己再生前駆細胞を意図する。「多系統発生」とは、任意の分化した組織(血球(リンパ球、骨髄球、赤血球および血小板が挙げられる);骨(骨細胞、骨芽細胞および破骨細胞が挙げられる);骨髄間質;軟骨(軟骨細胞、軟骨芽細胞および軟骨吸収細胞が挙げられる);心筋、平滑筋および骨格筋(筋細胞および心筋細胞が挙げられる);腱;神経(希突起膠細胞およびニューロンが挙げられる);血管組織(血管細胞および内皮が挙げられる);脂肪(脂肪細胞が挙げられる);線維芽細胞;肝細胞;腸および肺の上皮細胞;角膜(角膜細胞が挙げられる)ならびに真皮(皮膚細胞が挙げられる)が挙げられるが、これらに限定されない)に発生し得ることを意図する。「造血幹細胞」とは、血球に分化する幹細胞を意図する。「間葉幹細胞」とは、血球以外の細胞に分化する幹細胞を意図する。SPCおよびASPCは、間葉幹細胞または造血幹細胞のいずれかに発達し得る多系統幹細胞を含む。
【0034】
造血幹細胞は、系統拘束型前駆体とは異なり、未成熟および成熟のリンパ球、赤血球および骨髄細胞についての細胞表面マーカーを発現しない。より具体的には、造血幹細胞は、蛍光接合抗体を使用して発現を検出した場合、骨髄細胞の表面マーカー(CD33)、Bリンパ球の表面マーカー(CD19、HLA−DR)、Tリンパ球の表面マーカー(CD3、CD4、CD8)、NK細胞の表面マーカー(CD16、CD56)および赤血球系細胞の表面マーカー(CD71)の検出可能な発現を有さない。また、造血幹細胞は、拘束リンパ系前駆体上に存在する初期リンパ系マーカーCD1a、CD2、CD5およびCD10の検出可能な発現を有さない。有利なことに、本発明の始原造血幹細胞は、以下のいずれの抗原の検出可能な発現も有さない:CD3、CD4、CD8、CD13、CD14、CD16、CD19、CD25、CD33、CD56、CD71、CD124、CD130、CD138およびglyA。好ましくは、ALDHbr幹細胞はまた、マウスにおいて長期造血を維持し得る(例えば、Goodellら、(1996)J.Exp.Med.183:1797を参照のこと)。より好ましくは、ALDHbr幹細胞は、G(始原造血細胞の特性であると考えられている一細胞周期状態)にある(Spangrudeら、(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:7433)。
【0035】
一実施形態において、本発明の幹細胞は、骨髄由来のALDHbr細胞を含む。これらのALDHbr細胞を使用して、造血系統のいずれかの細胞(骨髄細胞(例えば、血小板、巨核球および赤血球)ならびにリンパ系細胞(例えば、T細胞、B細胞、NK細胞および抗原提示細胞)が挙げられるが、これらに限定されない)を生じさせることができる。代替的な実施形態において、本発明の幹細胞は、骨髄のみではないいずれかの幹細胞源から単離されたALDHbrCD105細胞を含み得る。これらの細胞はまた、造血系統のいずれかの細胞(骨髄細胞(例えば、血小板、巨核球および赤血球)ならびにリンパ系細胞(例えば、T細胞、B細胞、NK細胞および抗原提示細胞)が挙げられるが、これらに限定されない)を生じさせ得る。代替的な実施形態において、骨髄由来のALDHbr細胞、またはいずれかの幹細胞源から単離されたALDHbrCD105細胞は、フローサイトメータの側方散乱チャネルにおいて測定したときに低粒度(SSClo)を有する細胞を含む。
【0036】
間葉幹細胞(MSC)は、造血幹細胞に非常に類似した抗体パネルを使用して特性付けされている。MSCは、一般に、CD14、CD34およびCD45の発現を欠く。MSCは、一般に、CD105およびCD73に対してポジティブである。培養間葉細胞を同定するために研究者が使用する他のマーカーとしては、CD29、Thy−1(CD90)、CD115、CD144、CD166およびHLA−A、BまたはCなどのマーカーのポジティブ発現が挙げられる。機能的には、MSCは、脂質生成性、骨形成性、筋肉形成性および軟骨形成性の細胞コロニーに分化する能力について、インビトロで試験され得る。
【0037】
上で開示したように、本発明の幹細胞は、骨髄由来のALDHbr細胞を含む。これらのALDHbr細胞はまた、間葉系統のいずれかの細胞(骨(骨細胞、骨芽細胞および破骨細胞が挙げられる)、骨髄間質、軟骨(軟骨細胞、軟骨芽細胞および軟骨吸収細胞が挙げられる)、心筋、平滑筋および骨格筋(筋細胞および心筋細胞が挙げられる)、腱、神経(希突起膠細胞およびニューロンが挙げられる)、血管組織(内皮が挙げられる)、脂肪(脂肪細胞が挙げられる)、線維芽細胞ならびに真皮が挙げられるが、これらに限定されない)を少なくとも生じさせるために使用され得る。代替的な実施形態において、本発明の幹細胞は、骨髄のみではないいずれかの幹細胞源から単離されたALDHbrCD105細胞を含み得る。これらの細胞はまた、間葉系統のいずれかの細胞(骨(骨細胞、骨芽細胞および破骨細胞が挙げられる)、骨髄間質、軟骨(軟骨細胞、軟骨芽細胞および軟骨吸収細胞が挙げられる)、心筋、平滑筋および骨格筋(筋細胞および心筋細胞が挙げられる)、腱、神経(希突起膠細胞およびニューロンが挙げられる)、血管組織(内皮が挙げられる)、脂肪(脂肪細胞が挙げられる)、線維芽細胞ならびに真皮が挙げられるが、これらに限定されない)を生じさせ得る。代替的な実施形態において、骨髄由来のALDHbr細胞、またはいずれかの幹細胞源から単離されたALDHbrCD105細胞は、フローサイトメトリーの側方散乱チャネルにおいて測定したときに低粒度(SSClo)を有する細胞を含む。
【0038】
いくつかの実施形態において、例えば、骨髄から単離された本発明の幹細胞集団はALDHdimであり、CD45ネガティブである細胞を含む。他の実施形態において、例えば、骨髄から単離された本発明の幹細胞集団はALDHbrであり、CD45ネガティブである細胞を含む。さらに他の実施形態において、臍帯血および動員末梢血から単離された幹細胞集団は例えばALDHbrであり、CD45ネガティブである。さらに他の実施形態において、例えば、臍帯血および動員末梢血から単離された幹細胞集団はALDHdimであり、CD45ネガティブである。
【0039】
幹細胞についての機能アッセイには、インビトロ法とインビボ法の両方が含まれる。インビトロ試験については、特定タイプの組織細胞へのSPCまたはASPCの分化に有利な条件下で、培養物に組織からの細胞を接種する。例えば、Williams(1995)Hematology at L22−6(第5版、E.Beutlerら編)内のEaves、「Assays of Hematopoietic Progenitor
Cells」;Petzerら、(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:1470;Mayaniら、(1993)Blood 81:3252;Hoggeら、(1997)Br.J.Haematol.96:790;Lazarusら、(1995)Bone Marrow Transplant.16:557;Pittengerら、(1999)Science 284:143を参照のこと。
【0040】
通常、ASPCは、分化して分化細胞のコロニーを形成するので、培養中に数倍増加する。血球分化に関係するようないくつかのアッセイでは、コロニーを開始した細胞の発達の可能性は、そのコロニー内の表現型の範囲から推測される。あるいは、細胞培養物をサンプリングし、異なる培養系に、または動物モデル(例えば免疫不全NOD−SCIDマウスもしくはヒツジ胚)に二次培養して、個々のコロニー内に残存するAPSCからさらなる表現型が誘導され得るか否かを決定する。例えば、Almeida−Poradaら、(2000)Blood 95:3620;Lewisら、(2001)Blood 97:3441;Riceら、(2000)Transplantation 69:927; Ishikawaら、(2002)Exp.Hematol.30:488を参照のこと。複数の表現型を生じさせるASPCは、通常より少ない表現型を生じさせる細胞に比べより初期の多分化能の前駆体であると考えられる。
【0041】
これらのアッセイに基づいて、特定の系統を優先的に選択する細胞集団と連結させた出発幹細胞源の選択は、1つまたは少数のASPCタイプを使用して種々の治療適用を可能とする。例えば、CD105などの初期間葉幹細胞マーカーを発現する細胞の割合の増加に基づいて、BMの選別により単離されたALDHbr細胞集団は、非造血組織を生じさせることができる間葉幹細胞を、MPBまたはUCB由来のALDHbr細胞集団より多く含む。本明細書における以下の実施例1、表1を参照のこと。
【0042】
本発明の幹細胞集団は、種々の治療養生法および診断養生法において適用される。これらは、好ましくは、注射前に緩衝生理食塩水などの適切なキャリアに希釈される。これらの細胞は、任意の生理学的に許容されるビヒクル中で、通常は血管内に投与され得るが、それらの細胞はまた、骨もしくは再生および分化に適する部位(例えば、胸腺)に達し得る他の好都合な部位に導入され得る。通常、少なくとも1×10細胞/kg、好ましくは1×10細胞/kgまたはそれより多くが投与される。例えば、Sezerら、(2000)J.Clin.Oncol.18:3319およびSienaら、(2000)J.Clin.Oncol.18:1360を参照のこと。これらの細胞は、注射、カテーテルなどにより導入され得る。所望される場合には、5−フルオロウラシルおよび/または成長因子などのさらなる薬物がまた同時に導入され得る。適切な成長因子としては、サイトカイン、例えばIL−2、IL−3、IL−6、IL−11、G−CSF、M−CSF、GM−CSF、γ−インターフェロンおよびエリスロポエチンが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、本発明の細胞集団は、任意の手段(有益なサイトカインの分泌および/または幹細胞の成長、ホーミングもしくは分化を誘導するシグナルを送達し得る細胞表面タンパク質の提示が挙げられるが、これらに限定されない)により生着を支持または増強する他の細胞集団と併用して投与され得る。これらの実施形態において、移植集団の100%未満が、ALDHbr幹細胞を含む。
【0043】
本発明の単離された細胞が、造血幹細胞に生着し得る場合、これらの単離細胞は、移植目的にも、遺伝子治療目的にも適している。これらの細胞集団は、系統拘束型細胞にも、系統非拘束型細胞にも選別され得るので、各集団は、異なる、しかし互いに排他的でない、治療適用を有する。いくつかの実施形態において、系統拘束型細胞は、リンパ系細胞集団および/または骨髄性細胞集団の再構成または増強に有用である。例えば、治療されるべき適応症としては、免疫欠損および幹細胞移植が挙げられる。前駆細胞は、造血細胞の移植と再増殖の間の遅れ時間を減少させるために、幹細胞移植中に、特に有用である。この前駆細胞を得る方法は、本明細書中に記載される。患者への幹細胞の投与方法は、本明細書中、上で述べたような技術分野の当業者の範囲内である。
【0044】
いくつかの実施形態において、リンパ系拘束前駆細胞集団の同定は、この集団の疾患(例えば、白血病)の原因についての評価を可能とし、従って、自己移植片からのこのような細胞の除去に有用である。他の実施形態において、系統拘束型前駆細胞は、免疫応答をマウントする患者の能力を増大させる細胞移植片として有用であり得る。いくつかの場合、細胞に抗原を負荷し、注射して、特異的免疫応答を誘導するワクチン戦略における前駆体の使用が有利なことがある。あるいは、注射された細胞は、特異的に外因的に誘導された抗原に対する耐性を誘導するために使用され得る。
【0045】
系統拘束型前駆体は、リンパ系統および/または骨髄系統において外因性遺伝子能力の発現が望まれる様々な遺伝子治療アプローチに使用され得る。系統拘束型前駆細胞はまた、外因性遺伝子能力の永続発現ではなく一過性の発現を有することが望まれる場合に好ましい。また、場合によっては、遺伝子導入が、系統拘束型前駆細胞ではより有効である可能性が高い。これは、前駆細胞は、幹細胞より活発にサイクルするため、およびレトロウイルスベクターは、組換えDNAの効率的な組み込みのために活発にサイクルする細胞を必要とすることが知られているためである。
【0046】
さらに、遺伝子治療には、成熟リンパ系細胞の使用に比べてリンパ系前駆細胞の使用がより有利である。現在、T細胞遺伝子治療は、サイトカインとともにT細胞のエキソビボでの増幅を必要とする。再注入すると、これらの修飾されたT細胞は、多くの場合、それらの標的器官に適切に戻らず、そして肺、肝臓または脾臓に捕捉され得る(および肝臓または脾臓により一掃され得る)。この不適切なホーミングは、エキソビボでのプロセシングの間の膜の変化、戻るレセプターのダウンレギュレーションなどに起因し得る。修飾された前駆細胞の使用により、エフェクターT細胞のエキソビボでの増幅の必要性が取り除かれ、従って、インビボでの輸送の変更および存続の問題が取り除かれる。さらに、修飾された前駆体の使用は、後代細胞数の増幅を可能とし、それにより、エキソビボでの増幅の必要性を低減し、投与の頻度を減少させることができる。
【0047】
他の実施形態では、非系統拘束型細胞またはより始原の幹細胞を使用することが好ましい。非系統拘束型細胞は、骨髄細胞の機能障害によって引き起こされる疾患(および関連する治療後遺症)の治療に有用である。このような疾患の例としては、リンパ腫、多発性骨髄腫、乳癌、睾丸癌、白血病、先天性溶血性貧血(例えば、サラセミア)、ならびに一部の免疫不全疾患、例えば、急性白血病、ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫ならびに神経芽腫が挙げられるが、これらに限定されない。複数の高用量化学療法サイクルで観察される血液毒性後遺症は、自己由来の造血幹細胞の併用投与により軽減されることも示されている。幹細胞の再注入が記載された疾患としては、急性白血病、ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫、神経芽腫、睾丸癌、乳癌、多発性骨髄腫、サラセミアならびに鎌状赤血球性貧血が挙げられる(Chesonら、(1989)Ann.Intern.Med.30 110:51;Wheelerら、(1990)J.Clin.Oncol.8:648;Takvorianら、(1987)N.Engl.J.Med.316:1499;Yeagerら、(1986)N.Eng.J.Med.315:141;Bironら、(1985)In Autologous Bone Marrow Transplantation: Proceedings of the First International Symposium,Dickeら編、p.203;Peters(1985)ABMT,id.p.189;Barlogie,(1993)Leukemia 7:1095;Sullivan,(1993)Leukemia 7:1098−1099)。
【0048】
例えば、癌患者において、本発明の幹細胞(例えばALDHbr骨髄由来細胞またはいずれかの供給源からのALDHbrCD105細胞)の選別は、患者への再導入前に幹細胞を癌細胞から分離する。自家移植を受けるこれらの患者において、このような分離を用いて、癌細胞がその患者に戻る機会を減少させることができる(Jonesら、(1987)Blood 70:1490;Colvin In:Hematopoietic Cell Transplantation 217(Forman編、1999)、およびRussoおよびHilton(1989) in Enyzmology and Molecular Biology of Carbonyl Metabolism at 65(WeinerおよびFlynn編)。別の実施形態では、本発明の精製された自己由来のALDHbr幹細胞を患者への再導入前にエキソビボで増幅させて、リンパ球、赤血球および血小板生着を促進することができる。エキソビボ増幅は、定義されたサイトカイン内、間質層上および/またはバイオリアクター内で増殖させることにより達成され得る(Emersonら、(1996)Blood 87:3082)。さらに、移植不全の発生率は、減少され得る。これは、自家移植を受ける癌患者に、遺伝子治療に、そして自己免疫疾患に罹患している患者に有益である。
【0049】
いくつかの実施形態において、いずれの作用メカニズムおよび理論にも拘束されないが、本発明の非系統拘束型幹細胞の集団は、外傷の治癒、外傷の修復および組織の再生を促進するために使用され得る。本発明の細胞集団は、間葉組織に分化し得るので、本発明の幹細胞は、造血と関連しない広範な種々の疾患(例えば、関節炎のための関節再生;骨粗しょう症、骨異常(osteoimperfecta)および歯周炎のための骨再生;虚血性傷害のための新脈管形成および内皮細胞再生;変性筋肉疾患(例えば筋ジストロフィーおよび心臓虚血)のための筋肉再成長;脊髄および脳損傷の際の神経細胞再成長;多発性硬化症の際の希突起膠細胞の再生;ならびに組織再成長が有益である手術(例えば形成手術、整形手術および外科的組織除去)に有益に使用され得る。従って、本発明の間葉幹細胞は、いくつかの実施形態では、新しい内皮、新しい心筋細胞、新しいニューロンおよび希突起膠細胞、ならびに新しい骨および軟骨を産生するために使用され得る。例えば、間葉幹細胞が内皮に成長すること、ならびに間葉移植片により再狭窄および虚血性心臓損傷が治療されることが示されている。例えば、Hristovら、(2003)Trends Cardiovasc Med.13:201;Sata、(2003)Trends in Cardiovasc.Med.13:249;Isnerら、(2001)Ann.NY Acad.Sci.953:75;AbbottおよびGiordano(2003)J.Nucl.Cardiol.10:403;Forresterら、(2003)Circulation 108:1139を参照のこと。間葉幹細胞移植片が、神経損傷および神経疾患後の損傷したニューロンの再成長を促進することも示されている。例えば、Gage(2000)Science 287:1433; Shinら、(2001)Blood 98:2412;Zhaoら、(2003)Brain Res.Protocols 11:38を参照のこと。間葉幹細胞移植片が、新しい骨および新しい軟骨の成長を促進することも示されている。例えば、Pittengerら、(1999)Science 284:143、および米国特許第6,541,024号を参照のこと。
【0050】
いくつかの実施形態において、本発明の単離された幹細胞集団は、遺伝子治療における使用に適している。例えば、骨髄からの自己由来のALDHbr細胞または任意の幹細胞源からのALDHbrCD105の単離後、単離された細胞は遺伝子送達ベクターに暴露され、その遺伝的に改変された幹細胞は、患者に再注入される。遺伝的に改変された幹細胞を使用する遺伝子治療プロトコルは、当該技術分野で公知である。例えば、Smith(1992)Hematother.1:155を参照のこと。このアプローチは、エキソビボ培養を必要とし得るか、または非分裂性細胞に遺伝子を移し得るベクターの使用によりエキソビボ培養を必ずしも必要でなくさせる。用語「エキソビボ遺伝子治療」とは、幹細胞をインビトロでトランスフェクトするか、レトロウイルスで感染させた後、そのトランスフェクトされた幹細胞を哺乳動物に導入することを意味する。遺伝子治療は、例えば、先天性疾患(アデノシンデアミナーゼ欠損症、リコンビナーゼ欠損症、リコンビナーゼ調節遺伝子欠損症および鎌状赤血球性貧血が挙げられるが、これらに限定されない)の治療に有用であり得る。例えば、鎌状赤血球性貧血の治療では、突然変異β−グロビン遺伝子を野生型グロビン遺伝子または抗鎌状グロビン遺伝子のどちらかで置換するか、突然変異β−グロビン遺伝子に野生型グロビン遺伝子または抗鎌状グロビン遺伝子を補充する。癌治療では、薬物耐性遺伝子を細胞に導入して、細胞毒性薬に対する耐性を付与する。これは、骨髄機能抑制の発生率および重症度を低下させ得る。感染性疾患(HIVが挙げられる)の治療には、抗ウイルス遺伝子を本発明の幹細胞集団に導入して、それらをウイルスに対して耐性にすることができる(例えば、GilboaおよびSmith、(1994)Trends in Genetics 10:139を参照のこと)。
【0051】
いくつかの実施形態において、骨髄からのALDHbr細胞の単離または任意の幹細胞源からのALDHbrCD105の単離は、対宿主性移植片病(GvHD)の原因となるプレ−T−細胞の除去を生じる。本発明の幹細胞集団からのこの除去により、自家移植のレシピエントにおけるGvHDの発生率および重症度が低下することが予測され得る。例えば、HoおよびSoiffer(2001)Blood 98:3192を参照のこと。
【0052】
単離されたASPCをエキソビボで増幅させて、自家移植後の好中球、赤血球および血小板生着を促進し得る。さらに、移植不全の発生率を低下させることができる。これは、少ない細胞用量により移植の成功が制限される臍帯血移植のレシピエントには特に重要である可能性が高い。エキソビボ増幅のための技術は、当該技術分野において十分記載されている。例えば、McNieceおよびBriddle(2001)Exp.Hematol.29:3;McNieceら、(2000)Exp.Hematol.28:1186;Jaroscakら、(2003)Blood 101:5061を参照のこと。
【0053】
いくつかの実施形態において、骨髄からのALDHbr細胞での、または任意の幹細胞源からのALDHbrCD105での首尾よい生着は、同種抗原に対する耐性を誘導することも予測され得る。耐性の事前導入は、同じドナーを起源とする後続の実質性器官移植片の永久生着の機会を増大する。
【0054】
本発明の幹細胞集団は、成長および発生に重要な遺伝子を含む、(例えば、サイトカインおよびサイトカインレセプターのための)新たな遺伝子源として使用され得ることが理解される。
【0055】
治療および診断の戦略における適用に加えて、本発明の幹細胞集団は、例えば幹細胞の分化または成長および/または生着の促進に使用され得る物質を同定するためのスクリーニングプロトコルに使用され得る。一つのこのようなプロトコルでは、骨髄由来のALDHbr細胞または任意の幹細胞源由来のALDHbrCD105は、分化を誘導すると推測される試験化合物と接触され、分化を起こさせるその試験化合物の能力が決定される(例えば、顕微鏡およびフローサイトメトリー試験を用いる)。別のスクリーニングプロトコルでは、骨髄由来のALDHbr細胞または任意の幹細胞源由来のALDHbrCD105を、増幅および/または生着を誘導すると推測される試験化合物と接触させ、例えば、インビトロ長期コロニーアッセイまたはインビボ免疫不全マウスモデル(例えば、SCID/NODマウス)を用いて、増殖および/または生着を起こさせるその試験化合物の能力が決定される。例えば、Peaultら、(1993)Leukemia 7:s98−101を参照のこと。
【0056】
本発明は、本発明の幹細胞集団を調製するために使用され得るキットにも関し、いくつかの実施形態において、この集団は、骨髄由来のALDHbr細胞または任意の幹細胞源由来のALDHbrCD105を含む。このキットは、単一の容器内に配置されたALDH基質、および別の容器内の、細胞の直接単離を達成するために使用され得る抗体を備える。好ましい実施形態において、このキットは、1つ以上の収容手段の中に配置された系統特異的マーカーに対して特異的な抗体を少なくとも備える。これらの抗体は、StemCell Technologiesキットの中に存在するものと併用して、例えば約80%またはそれ以上の純度を達成することができる。有利には、このキットはまた、HLA−DRに特異的な抗体を含む。CD2、CD3、CD8、CD10、CD13、CD14、CD16、CD19、CD33、CD34、CD35、CD38、CD41、CD45、CD56、CD71、CD105、CD117、CD124、CD127、CD130、CD138およびglyAに特異的な抗体のいずれかまたはそのすべてが含まれ得、これらは、少なくとも1つの収容手段の中に配置され得る。このキットはまた、収容手段の中に配置された、抗CD7抗体を含み得る。
【0057】
キットの抗体は、収容手段の中に配置されており、そのキットは、単離プロトコルの実施に適した補助試薬(例えば、緩衝液など)をさらに備え得る。
【0058】
以下の実施例は、説明のために提供するものであり、制限するために提供するものではない。
【実施例】
【0059】
(実施例1:組織のプロセシングおよび表現型分析)
直接複合蛍光抗体を細胞表面抗原の分析に利用した。使用したものとしては、CD3に対する抗体(Leu4;Becton Dickinson clone SK7);CD7に対する抗体(Leu9;Becton Dickinson clone M−T701);CD10に対する抗体(Beckman Coulter/Immunotech clone ALB1);CD13に対する抗体(Beckman Coulter/Immunotech clone SJ1D1);CD14に対する抗体(Beckman Coulter/Immunotech clone RM052);CD19に対する抗体(Leu12;Pharmingen clone WM15);CD33に対する抗体(LeuM9;Becton Dickinson clone M−ΦP9);CD34に対する抗体(Becton Dickinson clone 8G12);CD35に対する抗体(Pharmingen clone E11);CD38に対する抗体(Leu17;Becton Dickinson clone HB7);CD41に対する抗体(Caltag clone VIPL3);CD45に対する抗体(Miltenyi clone 5B1);CD56に対する抗体(Leu19;Becton Dickinson clone My31);CD90に対する抗体(Pharmingen;clone 5E10);CD105に対する抗体(Caltag clone SN6);CD117に対する抗体(Becton Dickinson clone 104D2);CD127に対する抗体(Beckman Coulter/Immunotech clone R34.34);CD133に対する抗体(Miltenyi clone AC 133);CD135に対する抗体(Pharmingen clone 4G8);CD 138に対する抗体(IQ products clone B−B4);HLA−DRに対する抗体(Becton Dickinson clone L243);およびglyAに対する抗体(Becton Dickinson clone GAR−2)が挙げられる。
【0060】
10人の正常なドナーからの新鮮な骨髄サンプル(Cambrex)を塩化アンモニウム(最終濃度、10mM Tris−HCl(pH7.2)および200mM EDTAを含有する、0.17M NHCl)中で容積比1:40に希釈し、4℃で30分間インキュベートして、赤血球を溶解した。遠心分離により細胞をペレット化し、1×10/mLで再び懸濁させ、ALDEFLUORTMキット(StemCo Biomedical,Inc.)を使用してアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性のために反応させた。細胞をアッセイ緩衝液に懸濁させ、50mLの基質/mLをそれらの細胞に添加し、直ちに混合した。100mLの細胞をその基質管から除去し、ジエチルアミノベンズアルデヒド(DEAB)コントロール管に添加した。細胞を37℃で30分間インキュベートした。3〜4×10の細胞を各免疫表現型管に入れ、適切なモノクローナル抗体と共にさらに15分間、4℃でインキュベートした。インキュベートした後、1mLのアッセイ緩衝液を各管に添加して細胞を洗浄し、それらの細胞を遠心分離によりペレット化した。上清を除去し、細胞を300〜500mLのアッセイ緩衝液に再び懸濁させた。
【0061】
ヘタスターチおよび塩化アンモニウム溶解またはヘタスターチおよびフィコールを用いて、新鮮なUBCサンプルから赤血球を除去した。20mLの臍帯血を同量のPBSおよび8mLのヘタスターチ(Heta Sep;Stem Cell Technologies,Inc.)で希釈した。サンプルを混合し、60分間、室温でインキュベートした。白血球画分を各管から除去し、遠心分離によりペレット化した。回収した細胞を30mlの塩化アンモニウムに再び懸濁させ、37℃で15〜30分間インキュベートするか、フィコール勾配を通過させて、汚染赤血球を除去した。細胞を洗浄し、希釈し、上で記載したようにモノクローナル抗体およびALDEFLUORTMで表現型分析した。
【0062】
正常なドナーから、および癌患者(すなわち、G−CSF注入後)からの新鮮な動員末梢血サンプルを塩化アンモニウム中で1:20に希釈し、15〜30分間、37℃でインキュベートした。患者処置については、Fieldsら、(1994)Cancer Control 1:213およびElfenbeinら、(1995)Annal.NY
Acad.Sci.770:315を参照のこと。次いで、回収した細胞を洗浄し、希釈し、上で記載したようにモノクローナル抗体およびALDEFLUORTMで表現型分析した。
【0063】
ヒトのサンプルはすべて、関連規則を満たしており、地元の治験審査委員会(local instutuitional review boards)による承認を受けた技術およびインフォームドコンセント手順を用いて入手した。
【0064】
マルチパラメータ表現型分析データを、488nmのアルゴンレーザー放射を使用してALDEFLUORTM反応生成物(FL1チャネルにおいて検出される蛍光)、マーカーの大きなパネルに対するフィコエリトリン接合抗体(表1を参照のこと;FL2チャネルにおいて検出される蛍光)を励起させることにより、Becton Dickinson FACSCaliburで得、7−アミノアクチノマイシンDを使用して死滅細胞(FL3チャネルにおいて検出される蛍光)を染色および区別し、そしてHeNeレーザーを使用してアロフィコシアニン結合型CD34(FL4において検出される蛍光)を励起させた。マルチパラメータ分析において蛍光を注意深く補正して、チャネルの中のシグナルのこぼれ信号を修正した(補正コントロールについては表1を参照のこと)。ALDHbrSSClo細胞集団は、前方散乱および側方散乱ならびにFL1でのゲーティングにより定義した。ALDHbrSSCloゲートに2000より多くの事象が含まれているような大きなデータファイルが得られた。
【0065】
表1は、所定のマーカーを発現するALDHbrSSCloウインドウ内の細胞の割合、およびまたそのALDHbrウインドウ内に入らないマーカーを発現するサンプル中の全細胞の割合を示す。従って、CD7(主としてT細胞マーカー)およびCD45(全血球マーカー)は、主としてこのウインドウ内に入らないが、CD34およびCD133などの幹細胞マーカーの割合は、このウインドウ内で、ゲーティングされていない細胞に対して、増加する。特に、幹細胞マーカーを発現する細胞のすべてがこのウインドウ内にあるとはかぎらない。従って、ALDHは、これらの幹細胞マーカーの部分集合を規定し、それらの集団は、3つの供給源で異なる。ALDHbrウインドウ内のマーカーの分布は、組織間でも所定の組織(特に臍帯血について)のサンプル間でも異なり、これは、ALDHマーカーが、幹細胞の生理状態および機能状態についての情報をより多くもたらすことを示唆する。
【0066】
表2は、他の各マーカーもそれぞれ発現するCD34細胞の割合を示し、各組織ごとに示す。この表では、全てのマーカーをCD34およびALDHの発現について分析した。
【0067】
表3は、3つの組織内のマーカーの全発現を示す。
【0068】
表4A〜Cは、骨髄、臍帯血および末梢血、それぞれについての異なるゲートでのCDマーカーの発現をまとめたものである。組織内での全発現、ALDHbrゲートでの発現、およびCD34ゲートでの発現を示す。
【0069】
このゲート(ALDHbrSSClo)内では、表現型プロフィールに基づいて、BMが、非造血組織を生じさせることができる(例えば、CD34、CD105、CD117およびCD133にポジティブな)細胞を、MPBまたはUCB由来の集団より多く含むことが観察された。さらに、CD105は、他の移植片内でよりも骨髄ALDHbr細胞集団内でのほうが発現される程度が大きい。CD105細胞およびCD133細胞は、骨髄におけるALDHに対して非常に高輝度であり、CD34ポジティブ細胞よりさらに高輝度である。CD133細胞がCD105ポジティブであることは可能であるが、すべてのCD105細胞が、CD133ポジティブであるわけではない。また、SSCloウインドウは、骨髄の場合、すべてのCD105/CD133 ALDHbr細胞を補足するわけではないが、CD34細胞を補足することができ、これは、UCBおよびPBSCの場合と異なる。これらの結論を支持する分布図および比較データを図1〜6に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
【表2】

【0072】
【表3】

【0073】
【表4A】

【0074】
【表4B】

【0075】
【表4C】

(実施例2:目的の表現型を有するALDHbrSSClo細胞の視覚化および特性付け)
細胞内染色については、Fix and Perm細胞透過化キットをその製造業者(Caltag Laboratories)の指示書に従って使用して、実施例1において同定した目的の表現型を有するFACSTM単離ALDHbrSSClo細胞を染色する。Wright Giemsa分染法のための調製では、Cytospin3遠心分離機を使用して、PBS中の細胞を3分間、1000rpmでペレット化して直接スライドガラス上にコーティングする。自動細胞染色装置においてWright Giemsa染色でそれらの細胞を染色する。
【0076】
(実施例3:インビトロ培養を用いる、目的の表現型を有するALDHbrSSClo細胞の機能的特性付け)
MethoCult H4431(StemCell Technologies,Inc.)において、実施例1で同定した目的の表現型を有する100〜200のALDHbrSSClo細胞をプレーティングすることにより、造血前駆体コロニーHPCアッセイを行う。加湿したチャンバー内、37℃、5%COで、この細胞をインキュベートする。その後、培養開始後14〜18日目に造血性コロニー(細胞数は100より多い)を計数する。例えば、Fallonら、(2003)Br.J.Haematol.121:1を参照のこと(これは、本明細書中にその全体が参考として援用される)。
【0077】
Fallonら、(2003)Br.J.Haematol.121:1の方法に従って、(Flt3リガンド、Il−3、エリスロポエチン、G−CSFおよびIL−15を含有する培地を用いて)照射された同種骨髄間質またはマウスMS−5細胞の間質層(Issaadら、(1993)Blood 81:2916)または場合によってはS17細胞の間質層上に、実施例1で同定した目的の表現型を有するALDHbrSSClo細胞を維持することにより、長期培養(LTC)アッセイを行う。MS−5細胞は、長期間にわたってヒト多分化能細胞およびBFU−Eの増殖を支持し、そして標準的な同種間質と同様に、またはそれより良好に初期幹細胞を支持し得る。間質層は、10%FCSを補充した0.5mL DMEM中、6〜7×10のMS−5細胞/ウェルで、24ウエルプレート(Corning Costar Corp.)の中央ウェルに接種することにより確立する。これらの細胞を、培養物が約80%のコンフルーエンスに達するまで、加湿されたインキュベータにおいて37℃で培養する。その後、その単層にセシウム源からの30Gy γ線照射で照射する。照射後、それらの単層からの培養培地をMyelocult H5100(StemCell Technologies,Inc.)で完全に置換し、加湿されたチャンバー内で、33℃、5%COで細胞を維持する。代表的に、長期培養は、被照射MS−5細胞に対して、選別された造血前駆細胞500〜20,000/ウェルで開始する。7〜10日間隔で各ウェルから培地の半分を除去して培地を再補充することができる。2週間後に接着細胞および非接着細胞を回収し、上で記載したようにHPCアッセイにプレーティングする。HPCアッセイは、一般に、限定された系統および自己複製能力を有する比較的成熟した前駆細胞を同定し、一方、LTCアッセイは、一般に、より高度な自己複製能力を有する、より始原の細胞を定量する。
【0078】
(実施例4: 大きな区域のイヌの大腿欠損は、自己幹細胞療法で治癒される)
本発明の幹細胞をイヌ骨生着モデルにおいて使用する。例えば、米国特許第6,541,024号を参照のこと(これは、本明細書中にその全体が参考として援用される)。大型動物モデルにおいて臨床的に有意な骨欠損を再生し得る本発明の自己間葉幹細胞を培養−増幅するために、以下のプロトコルを用いる。
【0079】
(MSC培養および操作)
IACUC承認プロトコルに従って各動物の腸骨稜から15ccの骨髄吸引液を得、氷を用いてオーバーナイトクーリエで細胞培養施設に出荷する。イヌのALDHbrMSCの単離は、実施例1において記載した手順を用いて達成する。組織培養フラスコ(185cm)に、そのクッションから単離した10の有核細胞を接種し、選択したロットからの10%ウシ胎仔血清を含有するDMEMを用いて培養する。細胞を8×10細胞/cmで継代し、移植時まで維持する。細胞負荷移植片は、7.5×10細胞/mlのMSC懸濁液中、3時間、37℃で、フィブロネクチン被覆多孔質ヒドロキシアパタイト−リン酸三カルシウム(HA/TCP)シリンダー(Zimmer,Inc.)をインキュベートすることにより調製する。骨髄回収と移植との間隔は、16日である。各調製物からの細胞のアリコートも骨誘導条件下で培養して、骨芽細胞分化の様子を定量する。
【0080】
(イヌ大腿部間隙モデル)
IACUCの承認に従って、この試験のために片側区域性大腿欠損モデルを発生させる。通常の麻酔のもと、36匹の骨格的に成熟した雌の特定用途向けに育てられた犬(20kg)の中央骨幹から21mm長の骨骨膜区域を切除する。4.5mm SynthesTM8穴延長プレートに骨の側面の輪郭をつけ、バイコーティカルスクリューで固定する。以下の3つの材料のうちの一つをその欠損に充填する:1)無細胞HA/TCPシリンダー、2)MSC負荷HA/TCPシリンダー、または3)腸骨稜から回収した海綿質。HA/TCP移植片は、移植片およびプレートの周囲に2本の縫合糸を配置することにより固定する。動物に手術時抗生物質を与え、鎮痛薬を手術後3日間投与する。
【0081】
(放射線写真分析および組織学的分析)
手術前、手術直後および試験終了まで4週間間隔で標準的な放射線画像を撮る。一定期間にわたる変化およびイヌ間の変化を比較するために、すべてのサンプルが、バイアスを生じる放射線濃度階段光学くさびを含有する。屠殺の際、試料を高解像度Faxitron放射線撮影に供し、その後、生物医学的評価のために処理する。ねじり試験後、非脱灰縦切片を定量組織形態計測のために処理する。
【0082】
(生体力学試験)
移植の16週間後、大腿骨のねじり試験のために動物を屠殺する。固定プレート、ねじ、および接着軟組織を除去し、その骨の骨幹端を包埋する。試料を特注ねじり試験装置で外側に回転させ、破壊荷重および剛性を記録し、Student−Newman−Keuls多重比較検定に従って一元配置ANOVAによりデータを分析する。
【0083】
(結果)
一般に、動物は、この手術手順に十分に耐え、感染、移植拒絶反応および固定の失敗は発生しない。MSC負荷サンプルでは、一般に、2つの修復モデルを観察することができる:第一に、かなりの量の仮骨が、一般に、宿主と移植片の両方の界面で発生する;そして第二に、移植片それ自体の周囲に実質的な骨環が発生する。無細胞移植片は、一般に、これらの特徴のいずれも有さない。自己移植サンプルは、一般に、伝統的な硬化連鎖を受け、大部分の骨が、間隙欠損の内側部に生み出される。一般に、MSC負荷サンプルは、宿主移植片界面だけでなく、その間隙の切縁を越えて近位および遠位に広がる骨膜環において完全に一体化するようになる。さらに、その中骨幹における新たな骨の直径は、MSC負荷移植片では、自己移植サンプルまたはインタクトな肢でのものより一般に大きい。各動物からの骨形成性潜在的MSCの分析は、有意な石灰化細胞外基質を堆積させるアルカリホスファターゼポジティブ細胞の発生を一般に示す。
【0084】
(実施例5:心筋梗塞を自己幹細胞療法で治癒させる)
本発明の幹細胞をブタ心筋梗塞モデルにおいて使用する。例えば、Dibら、(2002)J.Endovasc.Ther.9:313を参照のこと。大型動物モデルにおいて臨床的に有意な心臓損傷を再生させ得る本発明の自己間葉幹細胞を培養−増幅させるために、以下のプロトコルを使用する。
【0085】
(動物の準備)
7ヶ月齢のブタをベースライン心臓血管評価に供し、筋原細胞移植のためのレシピエント動物として役立てる。12リードの心電図(ECG)を得、二次元経胸壁超音波心エコー検査を行って、壁運動および駆出率を評価する。血管切開技術を用いて8−F動脈シースを右大腿動脈に挿入し、右前方斜投影法および左前方斜投影法を用いて選択的左冠動脈造影および選択的右冠動脈造影および左心室造影を行う。
【0086】
NOGA Biosense Navigational Systemを使用し、7−F NOGA Bカーブカテーテルを8−Fシースを通して左心室に前進させることによって三次元(3D)電気機械的マッピングを行う。心筋層の電気機械的活性は、35の獲得ポイントから構築されるマップを基に決定する。
【0087】
大腿部血管切開と同時に、縦方向に右後肢に沿って6cmの切開を行う。無菌条件下、大腿筋の5g切片を除去する。この筋肉切片を氷の上の細胞輸送培地の中に入れ、筋原細胞増殖のために細胞培養施設に送る。
【0088】
(梗塞モデル)
中左前下行動脈(left anterior descending artery)に送達された個々の3mmおよび4mmのVortxTMコイルを用いるコイル塞栓形成により、宿主ブタにおいて前方梗塞を誘発する。冠動脈造影により実証されるように、コイル配置の2分後に冠動脈閉塞が発生する。梗塞後左心室造影図、心エコー図およびECGを梗塞の5分以内に実行する。顕著な心室性不整脈を2%静脈内リドカインボーラスおよび電気的カルジオバージョンで治療する。大腿動脈を縫合し、切開を閉鎖し、動物に標準的な手術手順を行なう。
【0089】
(筋原細胞単離)
実施例1に記載した一連の工程により、骨格筋筋原細胞を単離する。この細胞を、10%(容積/容積)ウシ胎仔血清および0.5%(容積/容積)ゲンタマイシンを有するダルベッコ改変イーグル培地から成る成長培地中にプレーティングする。この細胞を70%未満の密度で維持し、1日おきにその成長培地の半分を新たな培地と交換しながら4週間にわたって増殖させる。細胞を毎日、目視検査し、成長曲線を得る。
【0090】
細胞注入のための調製では、0.05%トリプシン/エチレンジアミン四酢酸を使用して筋原細胞を回収し、ウシ胎仔血清を含有する成長培地の添加によりトリプシンを不活性化する。細胞を遠心分離し、2回洗浄する。得られた細胞ペレットを2.5mLの無血清ダルベッコ改変イーグル培地に再び懸濁する。
【0091】
(同種異系筋原細胞移植)
梗塞を生じさせた4週間後、動物を筋肉内Telozol(塩酸チレタミンおよび塩酸ゾラゼパム;500mg)で麻酔し、挿管し、2%イソフルランおよび3L/分の酸素を機械的に通気する。血管切開法を用いて左大腿動脈に8−F動脈シースを挿入し、心血管の評価を繰り返す(ECG、心エコー検査、左心室造影および冠動脈造影)。電気機械的マッピングにより梗塞領域を同定する。
【0092】
心内膜の方に4〜5mm伸びるように較正したBカーブ針直接注入用カテーテル(B−curve needle injection catherter)を使用して、2.5mLの懸濁液中の約200,000,000個の細胞を、梗塞した心筋層の中心および周囲の25の任意に選択した部位(各0.1mL)に注入する。心内膜の貫通は、針を進めていく間のST上昇および心室性早期収縮により検証する。電気機械的マップに注入部位の輪郭を描く。注入完了後、シースを除去し、大腿動脈を縫合し、動物を回復させる。
【0093】
10日後、動物を麻酔し、安楽死させる。心臓を回収し、生理食塩水でリンスし、10%ホルマリン中で保存し、その後、頂端から基部へ5mm刻みで切り出す。梗塞領域からの薄い切片(8μm)を、ヘマトキシリンとエオシン(H&E)またはマッソン三色染料のいずれかで染色する。
【0094】
一般に、上記手順後、心臓機能を梗塞前レベルに回復させる。これは、ECGによる全心臓機能についての機能的測定、および動物を屠殺した後の組織で行う病理により測定される組織機能についての機能的測定の両方を含む。
【0095】
(実施例6:培養での骨髄由来細胞の特徴付け)
骨髄(サンプル番号40411)を実施例1でのように処理した。出発集団に関する表現型を決定した。ALDHbrSSClo集団を選別し、1.8×10の細胞をCambrex MSCGMTM−Mesenchymal Stem Cell Medium(製品番号3238)中で培養した。非接着細胞を7日後に除去し、接着細胞を4週間にわたって製造業者の指示書に従って増幅させ、この時、その表現型パネルを繰り返した。結果は、培養期間前および培養期間後のALDHおよび他のマーカーを発現する細胞の割合を示す(表5)。これらのデータは、間葉幹細胞の表現型を有する接着細胞が生じることを例証する。
【0096】
【表5】

(実施例7:複数のドナーからの骨髄由来細胞の特性付けおよび培養)
正常なヒト骨髄から選別されたALDHbrSSClo細胞についての造血前駆体コロニーアッセイを行った。表6に示す表現型を有する骨髄サンプルを選別して、ALDHbrSSClo集団を調製した。
【0097】
【表6】

標準的なメチルセルロースコロニー形成アッセイで、細胞を二週間培養した。すべての培養物が、多系統コロニーを形成した(図7)。図7に示すデータは、注入した1000の細胞あたりの全コロニー数である。黒塗りの棒は、塩化アンモニウム処理で赤血球を除去した後の骨髄サンプルについてのデータであり、白ぬきの棒は、ALDH基質と反応させた後であるが、選別前の細胞懸濁液であり、斜線の棒は、染色後の富化されたALDHbrSSClo集団である。これらのデータは、初期内皮前駆体の代表的なマーカー(例えばCD31およびVEGFレセプター)が存在し、ほとんどの場合、ALDHbr集団が富化されることを例証している。
【0098】
前述の説明および添付の図面に提示されている教示の利点を有する、本明細書中に示される本発明の多くの変形および他の実施形態が、これらの発明が属する技術分野の技術者には思い浮かぶ。従って、本発明が、開示されている特定の実施形態に限定されるべきではないこと、ならびに変形および他の実施形態が、添付の特許請求の範囲の範囲内に包含されることが意図されることが、理解されるべきである。本明細書中では特定の用語を使用しているが、それらは、単に一般的および説明的な意味で使用しているのであり、限定を目的として使用しているのではない。
【0099】
本明細書において言及するすべての出版物および特許出願は、この発明が属する技術分野における当業者のレベルの示すものである。すべての出版物および特許出願は、あたかもそれぞれ個々の出版物または特許出願が、参考として具体的、かつ、個々に援用されることが示されるのと同程度に、本明細書中に参考として援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−40021(P2012−40021A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241710(P2011−241710)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【分割の表示】特願2009−44911(P2009−44911)の分割
【原出願日】平成16年5月4日(2004.5.4)
【出願人】(506274442)アルダジェン, インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】