説明

床下収納庫又は点検口用の蓋体

【課題】軽量で取り扱いが容易であるとともに、十分な断熱性能を有した床下収納庫又は点検口用の蓋体を提供すること。
【解決手段】床下収納庫又は点検口用の蓋体1であって、熱可塑性樹脂からなるシート状のパリソン10A、10A間に、熱硬化性樹脂発泡体からなる複数枚の断熱材11と、この断熱材11を区画する補強用リブ材12とを配置し、分割金型M1、M2で挟み込んで、ブロー成形により一体成形してなる複数枚の断熱材11を補強用リブ材12で区画した内部構造を備え、外殻10が熱可塑性樹脂から構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床下収納庫又は点検口用の蓋体に関し、特に、高気密・高断熱型の床下収納庫又は点検口用の蓋体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、床下収納庫、床下点検口又は天井点検口の開口部分を塞ぐために用いられる蓋体は、室外からの冷気を遮断するために、蓋体の内部に断熱材を備えるようにしている。
内部に断熱材を備えた蓋体は、蓋体の表面部分、カバー部分及び内部に配置する断熱材を組み合わせてボルト、ビス等の締結手段を用いて組み立てる構造となっている(例えば、特許文献1参照。)。
特に、次世代省エネルギー基準の地域区分のうち、III地域〜VI地域(特にIII地域)に対応するためには、内部に多くの断熱材を配置する必要が生じ、蓋体の厚み寸法が大きくなり、重量も嵩むこととなって取り扱いが不便になるとともに、床下収納庫の蓋体とするときには、収納箱の収納スペースが浸食され、十分な収納スペースを確保することができないという問題があった。
【0003】
さらに、次世代省エネルギー基準の地域区分のうち、I地域〜II地域に対応するためには、床下収納庫の場合、床面の開口部に配設した枠材に載置する蓋体とは別に、内蓋を兼ねた断熱材(断熱蓋)を用いて断熱性能を向上させる必要があるために、相当な厚み(100mm以上)の断熱蓋を蓋体の内側に配備することとなる。
このため、収納箱の収納スペースがさらに小さくなり、また、床下収納庫への物の出し入れに際して、蓋体及び断熱蓋の両方を開閉(脱着)する必要があり、高齢者や子供では蓋体の開閉が困難になるという問題があった。
このように、蓋体のみで十分な断熱性能を確保することができない原因は、蓋体の表面部分、カバー部分及び内部に配置する断熱材のそれぞれが分離した構造であって、それらをボルト、ビス等の締結手段を用いて組み立てるため、それぞれの部材間に隙間が生じることとなり、十分な気密性を確保することができないためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−213923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の床下収納庫又は点検口用の蓋体の有する問題点に鑑み、軽量で取り扱いが容易であるとともに、十分な断熱性能を有する床下収納庫又は点検口用の蓋体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の床下収納庫又は点検口用の蓋体は、床下収納庫又は点検口用の蓋体であって、熱可塑性樹脂からなるシート状のパリソン間に、熱硬化性樹脂発泡体からなる複数枚の断熱材と、該断熱材を区画する補強用リブ材とを配置し、分割金型で挟み込んで、ブロー成形により一体成形してなる複数枚の断熱材を補強用リブ材で区画した内部構造を備え、外殻が熱可塑性樹脂からなることを特徴とする。
【0007】
この場合において、熱可塑性樹脂を、ABS樹脂とすることができる。
【0008】
また、熱硬化性樹脂発泡体を、フェノール樹脂発泡体とすることができる。
【0009】
また、熱硬化性樹脂発泡体の表面を、ポリエステル不織布で覆うことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の床下収納庫又は点検口用の蓋体によれば、蓋体を熱可塑性樹脂からなるシート状のパリソン間に、熱硬化性樹脂発泡体からなる複数枚の断熱材と、該断熱材を区画する補強用リブ材とを配置し、分割金型で挟み込んで、ブロー成形により一体成形してなる複数枚の断熱材を補強用リブ材で区画した内部構造を備え、外殻が熱可塑性樹脂からなるようにしたから、蓋体の内部に配置する硬化性樹脂発泡体からなる断熱材を、蓋体の表面部材及びカバー部材となる外殻と一体として成形することができ、厚み寸法を小さくしても、十分な断熱性能を有した蓋体とすることができるとともに、断熱材を補強用リブ材で区画することで、蓋体に十分な強度を保たせることができる。
【0011】
また、熱可塑性樹脂を、ABS樹脂とすることにより、蓋体の表面部材となる熱可塑性樹脂を、堅牢で引っ張り、曲げ、衝撃に強く、耐熱性、耐寒性に優れたものとすることができ、特に、風呂場前や洗面所など、水気や湿気の多い場所で使用する場合でも腐食する心配がない床下収納庫又は点検口用の蓋体を提供することができる。
【0012】
また、熱硬化性樹脂発泡体を、フェノール樹脂発泡体とすることにより、フェノールとホルムアルデヒドを原料とし、高い断熱性能を有するフェノール樹脂を用いることで、さらに良好な断熱性能を有する床下収納庫又は点検口用の蓋体を提供することができる。
【0013】
また、熱硬化性樹脂発泡体の表面を、ポリエステル不織布で覆うことで、断熱材の強度を向上させることができるとともに、さらに良好な断熱性能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の床下収納庫又は点検口用の蓋体の一実施例を示し、(a)は底面図、(b)は(a)のX−X断面図である。
【図2】同床下収納庫又は点検口用の蓋体の製造工程を示し(a)は初期状態を、(b)は分割金型間を締めた状態を示す概略図である。
【図3】同床下収納庫又は点検口用の蓋体別の実施例を示し、(a)は底面図、(b)は正面図である。
【図4】同床下収納庫又は点検口用の蓋体の全体斜視図である。
【図5】同床下収納庫又は点検口用の蓋体で床下収納庫の開口部を塞いだ状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の床下収納庫又は点検口用の蓋体の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0016】
図1〜図5に、本発明の床下収納庫又は点検口用の蓋体の一実施例を示す。
この床下収納庫又は点検口用の蓋体1は、床下収納庫又は点検口用の蓋体であって、熱可塑性樹脂からなるシート状のパリソン10A、10A間に、熱硬化性樹脂発泡体からなる複数枚の断熱材11と、この断熱材11を区画する補強用リブ材12とを配置し、分割金型M1、M2で挟み込んで、ブロー成形により一体成形してなる複数枚の断熱材11を補強用リブ材12で区画した内部構造を備え、外殻が熱可塑性樹脂から構成するようにしている。
【0017】
ブロー成形は、熱可塑性樹脂からなるパリソンを、分割金型で挟み込み、内部に空気又は加圧流体を導入することでパリソンを型の内面形状に密着させた後、冷却固化して取り出す成形方法で、この床下収納庫又は点検口用の蓋体1では、図2に示すように、樹脂押し出しヘッド(図示省略)からパリソン10Aを対となるようにシート状に押し出し、そのパリソン10A、10A間に、補強用リブ材12によって区画された断熱材11を、断熱材11と補強用リブ材12とは密着するように配置し(図2(a)参照)、その後、分割金型M1、M2で挟み込み、空気又は加圧流体を導入した後に冷却して成形する(図2(b)参照)。
【0018】
分割金型M2は、床下収納庫又は点検口用の蓋体1の底面側を形成する形状となっており、分割金型M1は、床下収納庫又は点検口用の蓋体1の表面側を形成する形状となっている。本実施例においては、床下収納庫又は点検口用の蓋体1の表面側に、図4に示すように、1方向の窪み模様を施すようにしている。これによって、蓋体表面が滑りにくく、表面に積もった塵などを掃除する際も、塵が1方向に移動し、手間をかけることなく表面を綺麗に掃除することができる。
【0019】
また、床下収納庫又は点検口用の蓋体1の側面には、指を引っ掛けて、床下収納庫又は点検口用の蓋体1を開閉することができるように窪み部13を形成することができる。
この場合、床下収納庫又は点検口用の蓋体1が取り付けられる枠材2の窪み部13に対応する位置に、外側に向かって屈曲する平面視コ字状の指挿入口を形成し(床面又は天井面側にも所定の空間が形成されるように切り欠くようにする。)、床下収納庫又は点検口用の蓋体1の開閉を行わないときには、カバー部材で覆うように構成する。
この窪み部13は、4側面のすべてに形成することで、枠材2に対して、床下収納庫又は点検口用の蓋体1をどの方向に向けて載置しても問題なく開閉することができる。
窪み部13に指を引っ掛けて開閉するようにすることで、蓋体の表面に回転取っ手を配設して開閉する一般的な床下収納庫又は点検口用の蓋体と比べて、指先が痛くなることもなく快適に蓋体の開閉を行うことができる。
【0020】
床下収納庫又は点検口用の蓋体1の外殻10となるパリソン10Aは、熱可塑性樹脂であれば、特に限定されるものではないが、本実施例においては、ABS樹脂を用いるようにしており、これによって、堅牢で引っ張り、曲げ、衝撃に強く、耐熱性、耐寒性に優れたものとすることができ、特に、風呂場前や洗面所(サニタリー)など、水気や湿気の多い場所で使用する場合でも腐食する心配がない床下収納庫又は点検口用の蓋体を提供することができる。
【0021】
床下収納庫又は点検口用の蓋体1内に一体に成形される断熱材11は、熱硬化性樹脂発泡体で構成されており、断熱性に優れて性質を有し、本実施例においては、熱硬化性樹脂発泡体として、フェノール樹脂発泡体を用いることにより、高い断熱性能を備えた蓋体とすることができる。
【0022】
断熱材11は、フェノール樹脂発泡体を用いるほか、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラニン樹脂、リグニン樹脂、ユリア樹脂等の熱硬化性樹脂製の発泡体を用いることもできる。
【0023】
また、断熱材11として用いる熱硬化性樹脂発泡体の表面を、ポリエステル不織布で覆うことで、断熱材11の強度を向上させることができるとともに、さらに良好な断熱性能を発揮することができる。
【0024】
断熱材11を区画する補強用リブ材12は、一体成形された後、床下収納庫又は点検口用の蓋体1の強度を保つための補強材として機能するものであれば、その材質は特に限定されるものではないが、本実施例においては、金属製のものを使用するようにしている。
なお、補強用リブ材12は、金属製のものを用いるほか、熱可塑性樹脂とガラス繊維等からなる複合材料を用いることもできる。
補強用リブ材12は、縦横に2組(井桁)配設するようにしているが、これに限られるものではなく、図3に示すように、縦横に1組(十字)配設するようにしてもよく、床下収納庫や床下点検口に使用する場合には、十分な強度が必要であり、縦横に2組以上、また天井点検口に用いる場合には、縦横1組で十分な強度を備えることができる。
【0025】
次に、この床下収納庫又は点検口用の蓋体1を、床下収納庫に適用した例を図5に基づいて説明する。
【0026】
まず、床下収納庫の収納箱3を配置する床下収納空間4の床面の開口部に、枠材2を取り付ける。
この枠材2は、アルミニウム等の金属を押出成形によって製造した長尺部材を、長手方向に所望の長さに切断し、端部同士を付き合わせて、溶接又は連結部材を介して、矩形の枠状に連結するようにして構成されるもので、図5に示すように、正面から断面視でみたとき、上部に床面に当接するフランジ部20、フランジ部20から下方に延設される第1立設部21、第1立設部21から内側に向かって、床下収納庫又は点検口用の蓋体1の端部が載置される第1水平部22、さらにこの第1水平部22から下方に向かって延設される第2立設部23、そして第2立設部23から内側に向かって収納箱3の屈曲した開口端縁部30が載置される第2水平部24から構成されている。
【0027】
また、床下収納庫又は点検口用の蓋体1の側面に、上述したように指を引っ掛けて、床下収納庫又は点検口用の蓋体1を開閉する窪み部13を形成しているときには、少なくともこの枠材2の1辺に、窪み部13に対応する位置において、外側に向かって屈曲する平面視コ字状の指挿入口(図示省略)を形成し、常時はカバー部材(図示省略)によって指挿入口を塞ぐようにしている。
【0028】
そして、この床下収納庫又は点検口用の蓋体1は、断熱材11及び補強用リブ材12をブロー成形によって一体に成形しているので、その厚みTが約50mmと薄く、一般的な収納箱3の深さDが400mmの場合であっても、収納物Wとして一升瓶を立てた状態で収納することができる。
また、重量も3kg以下に抑えることが可能であり、高齢者や子供でも床下収納庫の蓋体として、容易に開閉作業を行うことができる。
さらに、この床下収納庫又は点検口用の蓋体1の内部には、断熱材11を区画する補強用リブ材12が一体に成形されているから、床下収納庫の蓋体の上を歩いても蓋体がきしんで異音が発生したり破損したりすることがない。
【0029】
以上、本発明の床下収納庫又は点検口用の蓋体について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の床下収納庫又は点検口用の蓋体は、軽量で取り扱いが容易であるとともに、十分な断熱性能を有するようにすることができることから、寒冷地等における高気密・高断熱性能が要求される床下収納庫や床下、天井点検口等の蓋体の用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0031】
1 床下収納庫又は点検口用の蓋体
10 外殻
10A パリソン
11 断熱材
12 補強用リブ材
M1 分割金型
M2 分割金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床下収納庫又は点検口用の蓋体であって、熱可塑性樹脂からなるシート状のパリソン間に、熱硬化性樹脂発泡体からなる複数枚の断熱材と、該断熱材を区画する補強用リブ材とを配置し、分割金型で挟み込んで、ブロー成形により一体成形してなる複数枚の断熱材を補強用リブ材で区画した内部構造を備え、外殻が熱可塑性樹脂からなることを特徴とする床下収納庫又は点検口用の蓋体。
【請求項2】
熱可塑性樹脂が、ABS樹脂であることを特徴とする請求項1記載の床下収納庫又は点検口用の蓋体。
【請求項3】
熱硬化性樹脂発泡体が、フェノール樹脂発泡体であることを特徴とする請求項1又は2記載の床下収納庫又は点検口用の蓋体。
【請求項4】
熱硬化性樹脂発泡体の表面を、ポリエステル不織布で覆ってなることを特徴とする請求項1、2又は3記載の床下収納庫又は点検口用の蓋体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−72198(P2013−72198A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211075(P2011−211075)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000104674)キョーラク株式会社 (292)
【出願人】(390018717)旭化成建材株式会社 (249)
【出願人】(392034746)吉川化成株式会社 (22)