説明

床材

【課題】しっかりとした歩行感と表面の耐傷性を有しつつ、十分な衝撃吸収性を有する床材を提供すること。
【解決手段】床面表面に敷設して用いる床材の、少なくとも表面側に硬質層、床面側に軟質層を有する床材であって、前記硬質層がJIS K 7171に準拠して測定した曲げ弾性率が1000〜6000MPaであり、前記軟質層がJIS K 7220に準拠して測定した圧縮弾性率が0.01〜0.06MPaであること、前記硬質層が、厚み3〜9mmの中密度繊維板であること、前記軟質層が、厚み3〜9mmで発泡倍率が5〜12倍のポリオレフィン系樹脂シートからなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は屋内や屋外の建造物床面に敷設して用いる床材に関するものであって、特に耐衝撃性を有し、かつ歩行感が良好なクッション性を有する床材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の屋内床面にはフローリング材が多く用いられている。フローリング材には、合板、MDF、パーチクルボード、樹脂板などに塗装したものや、化粧シートをラミネートしたものなどが知られている。これらフローリング材には表面の耐傷付性、耐衝撃性が求められるあまり、基材となる合板、MDF、パーチクルボード、樹脂板などはより高密度で硬く、耐傷付性、耐衝撃性に優れたものが使われるようになってきた。しかしながら、転倒衝突時には打撲、骨折あるいは死亡事故に繋がるケースもあり、衝撃吸収性の優れたフローリング材が求められてきている。
【0003】
最表面に耐傷性を有する化粧シートを設け、表面側に軟質層、床面側に硬質層を設ける方法も考えられたが、十分な衝撃吸収性を得ることができない。軟質層の厚みや柔軟性を調整することで、ある程度の衝撃吸収性を得ることができたとしても、その場合は歩行感が悪くなったり、化粧シートの層間が弱くなったり、耐傷性が弱くなったりするという問題点があった。
【0004】
そのため、表面側に硬質層、床面側に軟質層を有するフローリング材が効果的であると考えられた。しかしながら硬質層の下に軟質層を設けただけでは、十分な衝撃吸収性を発現できない。軟質層の効果が大きいとフワフワしすぎるものとなり、硬質層の効果が大きいと軟質層による衝撃吸収性が発現できない。これは用いる構成材料や発泡倍率などの加工方法だけでなく、層厚なども影響するが、一番の問題は硬質層と軟質層のバランスにあるため、その条件設定が困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−291836
【特許文献2】特開2010−106654
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、すなわちその課題とするところは、しっかりとした歩行感と表面の耐傷性を有しつつ、十分な衝撃吸収性を有する床材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はこの課題を解決したものであり、すなわちその請求項1記載の発明は、床面表面に敷設して用いる床材の、少なくとも表面側に硬質層、床面側に軟質層を有する床材であって、前記硬質層がJIS K 7171に準拠して測定した曲げ弾性率が1000〜6000MPaであり、前記軟質層がJIS K 7220に準拠して測定した圧縮弾性率が0.01〜0.06MPaであることを特徴とする床材である。
【0008】
またその請求項2記載の発明は、前記硬質層が、厚み3〜9mmの中密度繊維板であることを特徴とする請求項1記載の床材である。
【0009】
またその請求項3記載の発明は、前記軟質層が、厚み3〜9mmで発泡倍率が5〜12倍のポリオレフィン系樹脂シートからなることを特徴とする請求項1、2のいずれか記載の床材である。
【0010】
またその請求項4記載の発明は、JIS K 6519に定めるGs値が55〜120になることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の床材である。
【0011】
またその請求項5記載の発明は、前記硬質層の表面に、ポリオレフィン系樹脂シートを基材とする化粧シートを積層してなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の床材である。
【発明の効果】
【0012】
本発明はその請求項1記載の発明により、所定の曲げ弾性率の硬質層と所定の圧縮弾性率の軟質層を、表面側に硬質層、床面側に軟質層を積層することでしっかりした歩行感と表面の耐傷性を有しつつ、十分な衝撃吸収性を有する床材を提供することが可能となるという効果を奏する。
【0013】
本発明はその請求項2記載の発明により、請求項1記載の曲げ弾性率を有する硬質層を得ることができるという効果を奏する。
【0014】
本発明はその請求項3記載の発明により、請求項1記載の圧縮弾性率を有する軟質層を得ることができるという効果を奏する。
【0015】
本発明はその請求項4記載の発明により、十分な衝撃吸収性を有しつつ、施工適性に優れた床材を提供することが可能となるという効果を奏する。
【0016】
本発明はその請求項5記載の発明により、床材としてポリオレフィン系樹脂により一体化して塩化ビニルを用いることがなく、層間強度にも優れることでさらにしっかりした床材を得ることが可能となるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の床材の一実施例の断面の形状を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を図面に基づき詳細に説明する。図1に本発明の床材の一実施例の断面の形状を示す。軟質層1と硬質層3と化粧シート5とを、適宜の接着剤層2、4で貼り合わせてなる。
【0019】
本発明における軟質層1としてはJIS K 7220に準拠して測定した圧縮弾性率が0.01〜0.06MPaのものを用いる。この値の範囲内であれば、後述する硬質層との組み合わせにより、十分な衝撃吸収性を有する床材とすることが可能となる。本発明者らはこの条件設定を見出すために試行錯誤したが、条件設定が決まっていれば、あとは従来公知の材料や製造技術により所望のものを調整して得ることは可能である。具体的には厚み3〜9mmで発泡倍率が5〜12倍のポリオレフィン系樹脂シートからなるものが好適に用いられる。ポリオレフィン系樹脂としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレンビニルアルコール、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、これら数種のうちの2種以上の混合体などがあげられる。
【0020】
接着剤層2は、前記軟質層1と後述する硬質層3を接着するために適宜使用され、接着可能となるものであれば特に限定されるものではない。2液ウレタン水性接着剤や1液酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤、湿気硬化型ウレタン樹脂系ホットメルト接着剤などがあげられるが、具体的には前記のポリオレフィン系樹脂シートと後述する中密度繊維板(MDF)とであれば、湿気硬化型ウレタン系ホットメルト接着剤が好適に用いられる。厚みとしては乾燥後で10〜100μm程度が好適である。
【0021】
本発明における硬質層3としては、JIS K 7171に準拠して測定した曲げ弾性率が1000〜6000MPaのものを用いる。この値の範囲内であれば、前記軟質層との組み合わせにより、十分な衝撃吸収性を有する床材とすることが可能となる。本発明者らはこの条件設定を見出すために試行錯誤したが、条件設定が決まっていれば、あとは従来公知の材料や製造技術により所望のものを調整して得ることは可能である。具体的には、厚み3〜9mmの中密度繊維板(MDF)が好適に用いられる。
【0022】
接着剤層4は、前記硬質層3と後述する化粧シート5を接着するために適宜使用され、接着可能となるものであれば特に限定されるものではない。2液ウレタン水性接着剤や1液酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤、湿気硬化型ウレタン樹脂系ホットメルト接着剤などがあげられるが、具体的には前記の中密度繊維板(MDF)と後述するポリオレフィン系樹脂シートを基材とする化粧シートであれば、湿気硬化型ウレタン系ホットメルト接着剤が好適に用いられる。厚みとしては乾燥後で10〜100μm程度が好適である。
【0023】
本発明における化粧シート5としては、基材シート上に意匠性を付与する絵柄模様層、床材表面の耐傷性や各種物性を付与する表面保護層等からなる公知のものであれば適宜使用可能であり、特に限定しない。前記硬質層3が中密度繊維板(MDF)であれば、ポリオレフィン系樹脂シートを基材シートとするものが好適に用いられる。ポリオレフィン系樹脂としては前記軟質層で用いたものと同様のものが使用可能である。
【0024】
本発明の床材としては、その転倒衝突時の床のかたさ試験(JIS A 6519)におけるGs値が55〜120のものが好適である。この試験は体育館用鋼製床下地構成材に関するものであり、100が体育館床、60が柔道用畳床の規格範囲となっているが、本発明の床材としては、55より低いものであると柔らかすぎて施工適性を著しく欠くものとなり、80を超えるものであると硬すぎて十分な衝撃吸収性があるものとはいえなくなる。
【実施例1】
【0025】
<硬質層の作製>
厚み5.5mmのMDF合板(中密度繊維板)を用いた。JIS K 7171に準拠して測定した曲げ弾性率は4847MPaであった。
【0026】
<軟質層の作製>
低密度ポリエチレン(密度:0.92g/cm3、メルトインデックス:3.6g/10分)100重量部に発泡剤としてアゾジカルボンアミド15重量部をヘンシェルミキサーに投入し、300rpmで3分間回転させ、さらに1000rpmで3分間回転させ、た。それを160℃のT台から押出し、架橋させた後、230℃の縦型熱風発泡機に連続的に導入し発泡倍率10倍、厚み6.5mmの軟質層を得た。これをJIS K 7220に準拠して圧縮弾性率を測定すると0.02MPaの測定値を得た。
【0027】
<化粧シートの作製>
厚み0.070mmのポリプロピレン樹脂製着色熱可塑性樹脂層(RIVEST TPO リケンテクノス社製)に絵柄模様層として2液ウレタン樹脂系バインダー樹脂製のグラビアインキにて木目柄を印刷し、その上に透明熱可塑性樹脂層として透明ポリプロピレン樹脂を押出しラミネートし、更に、表面に表面保護を設ける前に、乾燥後の塗布量1.3g/m2塗の2液ウレタン樹脂のリコーと層の上に紫外線硬化型塗料を10g/m2塗布、硬化させ、化粧シートを得た。
【0028】
<床材の作製>
前記化粧シートの裏面に湿気硬化型ウレタン樹脂系ホットメルト接着剤(DIC(株)製「タイフォース」)を50μmとなるように塗布し、前記硬質層の表面に貼り合わせた。その後、前記硬質層の裏面と軟質層の表面とを、軟質層の表面に湿気硬化型ウレタン樹脂系ホットメルト接着剤(DIC(株)製「タイフォース」)を50μmとなるように塗布し、貼り合わせ、床材を作製した。
【0029】
<比較例1>
軟質層として、厚み2.0mmで発泡倍率20倍のポリエチレンフォームを用いた以外は、実施例1と同様にして床材を得た。JIS K 7220に準拠して圧縮弾性率を測定すると0.007MPaであった。
【0030】
<比較例2>
硬質層としてラワン材を使用した合板を用いた以外は実施1と同様にして床材を得た。JIS K 7171に準拠して測定した曲げ弾性率が7238MPaであった。
【0031】
<比較例3>
比較例1の硬質層と軟質層を入れ替え、化粧シートを軟質層の表面に貼った以外は実施例1と同様にして床材を得た。
【0032】
<転倒衝突時の床のかたさ試験>
転倒衝突時の床のかたさ試験(JIS A 6519)にてGs値を測定した。
【0033】
<デュポン衝撃試験>
落下物が落ちた際の床材のへこみ方の確認として、JIS K5400に準拠してデュポン衝撃試験を実施した。半径6.35mm撃ち型、おもり500g、高さ500mmの条件下で撃ち型を床材に落として目視にて確認した。
【0034】
<耐傷付き性試験>
耐傷付き性評価として、鉛筆硬度試験を実施した。試験方法はJIS K 5600−5−4 塗料一般試験方法 引っかき硬度(鉛筆法)に準拠。評価方法は傷が付き始めた鉛筆の硬さを目視にて確認した。
【0035】
<試験結果>
結果を表1にまとめて示す。
【0036】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の床材は屋内や屋外の建造物床面に敷設して用いる床材として利用可能であり、特には居住用のフローリング材として利用可能である。
【符号の説明】
【0038】
1…軟質層
2…接着剤層
3…硬質層
4…接着剤層
5…化粧シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面表面に敷設して用いる床材の、少なくとも表面側に硬質層、床面側に軟質層を有する床材であって、前記硬質層がJIS K 7171に準拠して測定した曲げ弾性率が1000〜6000MPaであり、前記軟質層がJIS K 7220に準拠して測定した圧縮弾性率が0.01〜0.06MPaであることを特徴とする床材。
【請求項2】
前記硬質層が、厚み3〜9mmの中密度繊維板であることを特徴とする請求項1記載の床材。
【請求項3】
前記軟質層が、厚み3〜9mmで発泡倍率が5〜12倍のポリオレフィン系樹脂シートからなることを特徴とする請求項1、2のいずれか記載の床材。
【請求項4】
JIS K 6519に定めるGs値が55〜120になることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の床材。
【請求項5】
前記硬質層の表面にポリオレフィン系樹脂シートを基材とする化粧シートを積層してなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の床材。

【図1】
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【公開番号】特開2013−49988(P2013−49988A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188907(P2011−188907)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(593173840)株式会社トッパン・コスモ (243)
【Fターム(参考)】