説明

延伸積層体

【課題】従来のものよりも透明性に優れ、巻き取りを施してもしわや折れが発生しないような滑り性に優れた脂環式ポリオレフィン樹脂からなる延伸積層体、さらに、これを有する視認性及び耐久性に優れる偏光板及び液晶表示装置を提供する。
【解決手段】透明な樹脂からなるフィルムを延伸してなる延伸フィルム層(A)と、粒子(C)を含有する樹脂(B)からなる層とを積層してなる延伸積層体であって、
層(A)が脂環式ポリオレフィン樹脂からなり、
樹脂(B)に対する粒子(C)の体積比が1%〜30%であり、
粒子(C)の平均粒径が0.01〜0.10μmであり、
樹脂(B)及び粒子(C)の屈折率がいずれも1.45〜1.60であり、
ヘイズが0.3以下であることを特徴とする延伸積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性と滑り性に優れた脂環式ポリオレフィン樹脂からなる延伸積層体、さらに、これを有する視認性及び耐久性に優れる偏光板及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置には、液晶セルの複屈折による位相差を補償するために位相差フィルムが広く用いられている。これまで、様々な構成の位相差フィルムが提案されてきたが、透明樹脂を延伸により配向させて得られる延伸フィルムが広く用いられてきた。該延伸フィルムとしては、耐熱性等に優れるポリカーボネート樹脂からなるフィルムが挙げられるが、特に、耐熱性に優れ、吸湿性が低く、光弾性定数が小さい脂環式ポリオレフィン樹脂からなるフィルムが近年注目を浴びている。
ところで、脂環式ポリオレフィン樹脂フィルムは、滑り性が十分でないために、ハンドリングに支障をきたす場合があった。例えば、製造の最終段階では、巻き取り機でフィルムを巻き取ってロール状フィルムを作ることが多いが、フィルムの滑り性が十分でない場合には、フィルムにしわや折れが発生して、巻き取ったフィルムの品質が大幅に低下することがあった。そのため、実際には、フィルムの製膜後、該フィルム上に、滑り性に優れるフィルムをさらに積層した後に、巻き取り作業を行う手法を行ってきたが、工程が複雑となりコスト高につながっていた。
この問題を解決するため、脂環式ポリオレフィンフィルムの一種である環状ポリオレフィン系樹脂に架橋ポリマー粒子を配合することで、摺動性を向上させた透明フィルムが開示されている(引用文献1)。ここでは実際には、該樹脂中に架橋ポリマー粒子を添加する手法が用いられている。ところが、ここでの環状ポリオレフィン系樹脂フィルムは、延伸を施すと、透明性が低下してしまう欠点があった。従って、該環状ポリオレフィン系樹脂フィルムを位相差フィルムに適用するためには更なる改善が求められていた。
【0003】
【特許文献1】特開平7−196885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は、透明性に優れ、巻き取りを施してもしわや折れが発生しないような滑り性に優れた脂環式ポリオレフィン樹脂からなる延伸積層体、さらに、これを有する視認性及び耐久性に優れる偏光板及び液晶表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、透明な脂環式ポリオレフィン樹脂からなるフィルムを延伸してなる延伸フィルムに、特定範囲の屈折率と平均粒径を有する粒子を含有させた特定範囲の屈折率を有する層を積層することにより、上記目的を達成しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
かくして、本発明によれば、
(1)透明な樹脂からなるフィルムを延伸してなる延伸フィルム層(A)と、粒子(C)を含有する樹脂(B)からなる層とを積層してなる延伸積層体であって、
層(A)が脂環式ポリオレフィン樹脂からなり、
樹脂(B)に対する粒子(C)の体積比が1%〜30%であり、
粒子(C)の平均粒径が0.01〜0.10μmであり、
樹脂(B)及び粒子(C)の屈折率がいずれも1.45〜1.60であり、
ヘイズが0.3以下であることを特徴とする延伸積層体、
(2)樹脂(B)からなる層の表面抵抗が1x1012Ω/□以下であることを特徴とする(1)に記載の延伸積層体、
(3)(1)又は(2)の延伸積層体を有する偏光板、
(4)(1)又は(2)の延伸積層体を有する液晶表示装置、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の延伸積層体は、滑り性が良く、透明性や耐久性に優れるため、ハンドリング性に優れ、長期に渡って光学特性が良好に保たれる位相差板として、液晶表示装置、有機EL表示装置に広く適用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の延伸積層体は、透明な脂環式ポリオレフィン樹脂からなるフィルムを延伸してなる延伸フィルム層(A)と、粒子(C)を含有する樹脂(B)からなる層とを有する。
【0009】
本発明に用いる脂環式ポリオレフィン樹脂は、主鎖及び/又は側鎖に脂環式構造を有するポリオレフィン樹脂であり、機械強度、耐熱性などの観点から、主鎖に脂環式構造を含有するポリオレフィン樹脂が好ましい。
【0010】
脂環式構造としては、飽和脂環炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和脂環炭化水素(シクロアルケン)構造などが挙げられるが、機械強度、耐熱性などの観点から、シクロアルカン構造やシクロアルケン構造が好ましく、中でもシクロアルカン構造が最も好ましい。脂環式構造を構成する炭素原子数には、格別な制限はないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲であるときに、機械強度、耐熱性、及びフィルムの成形性の特性が高度にバランスされ、好適である。本発明に使用される脂環式ポリオレフィン樹脂中の脂環式構造を含有してなる繰り返し単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択すればよいが、好ましくは55重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。脂環式ポリオレフィン樹脂中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合がこの範囲にあると光学積層体の透明性および耐熱性の観点から好ましい。
【0011】
脂環式ポリオレフィン樹脂としては、ノルボルネン系樹脂、単環の環状オレフィン系樹脂、環状共役ジエン系樹脂、ビニル脂環式炭化水素系樹脂、及び、これらの水素化物等を挙げることができる。これらの中で、ノルボルネン系樹脂は、透明性と成形性が良好なため、好適に用いることができる。
【0012】
ノルボルネン系樹脂としては、例えば、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体若しくはノルボルネン構造を有する単量体と他の単量体との開環重合体又はそれらの水素化物、ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体若しくはノルボルネン構造を有する単量体と他の単量体との付加重合体又はそれらの水素化物等を挙げることができる。これらの中で、ノルボルネン構造を有する単量体の開環(共)重合体水素化物は、透明性、成形性、耐熱性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、特に好適に用いることができる。
【0013】
ノルボルネン構造を有する単量体としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、およびこれらの化合物の誘導体(例えば、環に置換基を有するもの)などを挙げることができる。ここで、置換基としては、例えばアルキル基、アルキレン基、極性基などを挙げることができる。また、これらの置換基は、同一または相異なって複数個が環に結合していてもよい。ノルボルネン構造を有する単量体は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
極性基の種類としては、ヘテロ原子、またはヘテロ原子を有する原子団などが挙げられる。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ハロゲン原子などが挙げられる。極性基の具体例としては、カルボキシル基、カルボニルオキシカルボニル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、オキシ基、エステル基、シラノール基、シリル基、アミノ基、ニトリル基、スルホン基などが挙げられる。
【0014】
ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な他の単量体としては、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどのモノ環状オレフィン類およびその誘導体;シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエンなどの環状共役ジエンおよびその誘導体;などが挙げられる。
ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体およびノルボルネン構造を有する単量体と共重合可能な他の単量体との開環共重合体は、単量体を公知の開環重合触媒の存在下に(共)重合することにより得ることができる。
【0015】
ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどの炭素数2〜20のα−オレフィンおよびこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセンなどのシクロオレフィンおよびこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエンなどの非共役ジエンなどが挙げられる。これらの単量体は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンがより好ましい。
ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体およびノルボルネン構造を有する単量体と共重合可能な他の単量体との付加共重合体は、単量体を公知の付加重合触媒の存在下に重合することにより得ることができる。
【0016】
ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の水素添加物、ノルボルネン構造を有する単量体とこれと開環共重合可能なその他の単量体との開環共重合体の水素添加物、ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体の水素添加物、およびノルボルネン構造を有する単量体とこれと共重合可能なその他の単量体との付加重合体の水素添加物は、これらの重合体の溶液に、ニッケル、パラジウムなどの遷移金属を含む公知の水素添加触媒を添加し、炭素−炭素不飽和結合を好ましくは90%以上水素添加することによって得ることができる。
【0017】
ノルボルネン系樹脂の中でも、繰り返し単位として、X:ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4−ジイル−エチレン構造と、Y:トリシクロ[4.3.0.12,5]デカン−7,9−ジイル−エチレン構造とを有し、これらの繰り返し単位の含有量が、ノルボルネン系樹脂の繰り返し単位全体に対して90重量%以上であり、かつ、Xの含有割合とYの含有割合との比が、X:Yの重量比で100:0〜40:60であるものが好ましい。このような樹脂を用いることにより、長期的に寸法変化がなく、光学特性の安定性に優れる光学フィルムを得ることができる。
【0018】
本発明に用いる脂環式ポリオレフィン樹脂の分子量は使用目的に応じて適宜選定されるが、溶媒としてシクロヘキサン(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン)を用いるゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレンまたはポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常10,000〜100,000、好ましくは15,000〜80,000、より好ましくは20,000〜50,000である。重量平均分子量がこのような範囲にあるときに、フィルムの機械的強度および成型加工性とが高度にバランスされ好適である。
【0019】
脂環式ポリオレフィン樹脂のガラス転移温度は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、好ましくは80℃以上、より好ましくは100〜250℃の範囲である。ガラス転移温度がこのような範囲にあるノルボルネン系樹脂を含有するフィルムは、高温下での使用における変形や応力が生じることがなく耐久性に優れる。
【0020】
脂環式ポリオレフィン樹脂の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は特に制限されないが、通常1.0〜10.0、好ましくは1.1〜4.0、より好ましくは1.2〜3.5の範囲である。
【0021】
本発明に用いる脂環式ポリオレフィン樹脂は、光弾性係数の絶対値が10×10−12Pa−1以下であることが好ましく、7×10−12Pa−1以下であることがより好ましく、4×10−12Pa−1以下であることが特に好ましい。光弾性係数Cは、複屈折をΔn、応力をσとしたとき、
C=Δn/σ
で表される値である。脂環式ポリオレフィン樹脂の光弾性係数が10×10−12Pa−1を超えると、光学積層体の面内レターデーションのバラツキが大きくなるおそれがある。
【0022】
本発明において、脂環式ポリオレフィン樹脂には、実質的に粒子を含まないことが好ましい。ここで、実質的に粒子を含まないとは、脂環式ポリオレフィン樹脂からなるフィルムへ粒子を添加しても、未添加状態からのヘイズの上昇が0.05以下の範囲である程度の量までは許容できることを意味する。特に、脂環式ポリオレフィン樹脂は、多くの有機粒子や無機粒子との親和性に欠けるため、上記範囲を超えた粒子を添加した脂環式ポリオレフィン樹脂フィルムを延伸すると、空隙が発生しやすく、その結果として、ヘイズの著しい上昇が生じるおそれがある。
【0023】
本発明に用いる脂環式ポリオレフィン樹脂には、粒子以外に、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤などの公知の添加剤を発明の効果が損なわれない範囲で添加してもよい。
【0024】
本発明に用いる脂環式ポリオレフィン樹脂からなるフィルムを製造する方法としては、特に制限はなく、例えば、溶液流延法や射出成形法や溶融押出法などの従来公知の方法が挙げられる。中でも、溶剤を使用しない溶融押出法の方が、(A)層の残留揮発成分量を効率よく低減させることができ、地球環境や作業環境の観点、及び製造効率に優れる観点から好ましい。
溶融押出法としては、ダイスを用いるインフレーション法等が挙げられるが、生産性や厚さ精度に優れる点でTダイを用いる方法が好ましい。
【0025】
(A)層は、1mm厚での全光線透過率が80%以上である。さらに好ましくは、全光線透過率が90%以上である。
また、(A)層は、1mm厚でのヘイズが0.3以下である。好ましくは、ヘイズが0.2以下である。ヘイズが0.3を超えると、積層体の透明性が低下し、位相差フィルムに適用できないおそれがある。
【0026】
(A)層の面内の平均レターデーション;Re及び厚さ方向の平均レターデーション;Rthの値はディスプレイの設計によって異なるが、一般的には、Reで40〜120nm、Rthで100〜300nm程度の範囲が好ましい。
【0027】
(A)層の平均厚さは、機械的強度などの観点から、好ましくは40〜120μm、さらに好ましくは40〜100μm、特に好ましくは40〜80μmである。
また、(A)層の厚さ変動は、この長手方向及び幅方向にわたって前記厚さの±3%以内であることが好ましい。(A)層の厚さ変動を上記範囲にすることにより、本発明の積層体のRe等の光学特性のバラツキを小さくすることができる。
【0028】
(A)層の残留揮発性成分の含有量は特に制約されないが、好ましくは0.1重量%以下、より好ましくは0.05重量%以下、さらに好ましくは0.02重量%以下である。残留揮発性成分の含有量が0.1重量%を超えると、経時的に積層体の光学特性が変化するおそれがある。揮発性成分の含有量を上記範囲にすることにより、寸法安定性が向上し、(A)層のReやRthの経時変化を小さくすることができ、さらには本発明の積層体を有する偏光板や液晶表示装置の劣化を抑制でき、長期的にディスプレイの表示を安定で良好に保つことができる。
揮発性成分は、(A)層に微量含まれる分子量200以下の物質であり、例えば、残留単量体や溶媒などが挙げられる。揮発性成分の含有量は、(A)層に含まれる分子量200以下の物質の合計として、(A)層をガスクロマトグラフィーにより分析することにより定量することができる。
【0029】
(A)層の飽和吸水率は好ましくは0.03重量%以下、さらに好ましくは0.02重量%以下、特に好ましくは0.01重量%以下である。飽和吸水率が上記範囲であると、(A)層のReやRthの経時変化を小さくすることができ、さらには本発明の積層体を有する偏光板や液晶表示装置の劣化を抑制でき、長期的にディスプレイの表示を安定で良好に保つことができる。
飽和吸水率は、(A)層の試験片を一定温度の水中に一定時間、浸漬し、増加した質量の浸漬前の試験片質量に対する百分率で表される値である。通常は、23℃の水中に24時間、浸漬して測定される。
(A)層における飽和吸水率は、例えば熱可塑性ノルボルネン系樹脂中の極性基の量を減少させることにより、前記値に調節することができるが、好ましくは、極性基を持たない樹脂であることが望まれる。
【0030】
(A)層を製造する方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を適用し得る。具体的には、ロール間の周速の差を利用して縦方向に一軸延伸する方法、テンターを用いて横方向に一軸延伸する方法等の一軸延伸法;固定するクリップの間隔が開かれて縦方向の延伸と同時にガイドレールの広がり角度により横方向に延伸する同時二軸延伸法や、ロール間の周速の差を利用して縦方向に延伸した後にその両端部がクリップ把持してテンターを用いて横方向に延伸する逐次二軸延伸法などの二軸延伸法;が挙げられる。
【0031】
縦方向に延伸する方法としては、ロール間でのIR加熱方式、フロート方式等が上げられるが、本発明のフィルムの用途に求められる光学的な均一性を得るためには後者が好適である。延伸条件に特に制限はないが、延伸温度としてはTg〜Tg+20℃の範囲で、延伸倍率としては1.1〜3.0倍の範囲にて所望の光学特性を得るために調整すればよい。
横方向に延伸する方法としては、テンター法が挙げられる。この場合も延伸条件に特に制限はないが、延伸温度としてはTg〜Tg+20℃の範囲で、延伸倍率としては1.3〜3.0倍の範囲にて所望の光学特性を得るために調整すればよい。
【0032】
(A)層表面には、必要に応じて表面処理を行うことができる。表面処理する方法としては、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線処理、火炎処理などが挙げられる。表面処理は、樹脂(B)からなる層を積層する前に行っても、積層した後に行ってもよい。(A)層表面を表面処理することにより、例えば樹脂(B)からなる層との接着性を改善することができる。
【0033】
本発明に用いる樹脂(B)は特に制限されず、公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、放射線硬化性樹脂、反応型樹脂およびこれらの混合物等を用いることができるが、好ましくは、ポリビニルアルコール系重合体またはその誘導体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体、酸化でんぷん、エーテル化でんぷん、デキストリンなどのでんぷん類、ポリビニルピロリドン、スルホイソフタル酸等の極性基を含有する共重合ポリエステル、ポリヒドロキシエチルメタクリレートまたはその共重合体などのビニル系重合体、アクリル系高分子、ウレタン系高分子、エーテル系高分子あるいはこれらの各種重合体のカルボキシル基、アミノ基、メチロール基など官能基変性重合体などが使用される。
【0034】
中でも、ポリビニルアルコール系重合体およびエチレン−ビニルアルコール共重合体がより好ましく、さらには、けん化度80モル%以上のポリビニルアルコールまたはエチレン−ビニルアルコール共重合体が特に好ましく使用される。
【0035】
かかるエチレン−ビニルアルコール系重合体としては、ビニルアルコール単位が、好ましくは60モル%以上、より好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上含有し、またエチレン単位を好ましくは40モル%以下、より好ましくは20モル%以下、特に好ましくは10モル%以下の含有量になるように共重合したエチレン−ビニルアルコール共重合体が好ましく使用される。
【0036】
これらポリビニルアルコール系重合体またはエチレン−ビニルアルコール共重合体は、もちろんそれ単独で用いられてもよいが、本発明の目的を阻害しない限り、混合可能な他の樹脂化合物と併用することができる。このような樹脂としては、たとえばポリアクリル酸またはそのエステルからなるアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂などを使用することができる。また、(B)からなる層を強固なものにするためには架橋剤等の添加が好ましい。
【0037】
本発明に用いる樹脂(B)の屈折率は1.45〜1.60である。好ましくは1.47〜1.57、さらに好ましくは1.50〜1.55、特に好ましくは1.52〜1.55であることが好ましい。該範囲を外れると、本発明の延伸積層体の透明性低下の原因となる。
【0038】
本発明に用いる樹脂(B)からなる層には、工程内での貼り付きや静電気による火花発生を抑えるために帯電防止剤を添加するのが好ましい。該帯電防止剤については何ら制限がなく、ノニオン性、アニオン性、カチオン性および両性のいずれのタイプの帯電防止剤を用いてもよいし、これらを併用してもよい。また、低分子量タイプであっても高分子量タイプであってもかまわないが、好適なものの一例としてアルキルスルホン酸ナトリウム系の帯電防止剤を挙げることができる。樹脂(B)に帯電防止剤を添加することにより、本発明の延伸積層体の表面抵抗値を低くすることができ、積層体のハンドリング性も向上する。
【0039】
樹脂(B)からなる層は、ハンドリング性、及び製造効率に優れる観点から、表面抵抗値が1x1012Ω/□以下であることが好ましい。表面抵抗値が1x1012Ω/□を超えると、積層体の製膜工程において、静電気による火花が発生したり、積層体の貼り付きが発生したりするおそれがある。
【0040】
本発明における粒子(C)は特に制限はなく、無機粒子でも有機粒子でも構わないが、金属酸化物の微粒子を好ましく用いることができる。例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化銅、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化珪素、酸化スズ、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化マンガンを例示することができる。中でも酸化チタン−酸化ケイ素系の金属酸化物は屈折率の調整が容易である点から好ましい。これらの粒子は、例えば特開平7−2520公報に記載の手法を用いて製造することができる。
【0041】
本発明に用いる粒子(C)の平均粒径は、0.01〜0.10μmである。好ましくは0.02〜0.08μm、さらに好ましくは0.03〜0.06μmである。平均粒径が0.10μmを超えると透明性の低下が顕著となり、0.01μm未満では巻き取り性の向上に寄与することができない。
【0042】
粒子(C)の屈折率は1.45〜1.60である。好ましくは1.47〜1.57、さらに好ましくは1.50〜1.55、特に好ましくは1.52〜1.55である。該範囲を外れると、本発明の延伸積層体の透明性低下の原因となる。
【0043】
本発明に用いる樹脂(B)と粒子(C)との配合割合は、(B)に対する(C)の体積比が、1〜30%、好ましくは1〜20%、さらに好ましくは1〜15%である。体積比が1%未満では、延伸積層体の巻き取り性になんら影響を与えない。一方体積比30%を超えると、延伸積層体表面に粒子の脱落による白粉が発生して、それによる傷つきが生じたり、粒子(C)を含有する樹脂(B)からなる層の強度が低下したりするおそれがある。
【0044】
(A)層と樹脂(B)からなる層とを積層する方法は特に制限されないが、粒子(C)を含み、公知の溶媒に溶解させた樹脂(B)の溶液を、(A)層上に塗布して積層する方法が好ましい。樹脂(B)の溶液を塗布する方法は特に限定されないが、高速で薄膜状の層を形成できる観点から、グラビアコート法、リバースコート法、スプレーコート法、キッスコート法、コンマコート法、ダイコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法あるいはメタリングバーコート法が好ましく使用できる。樹脂(B)の溶液を塗布する工程は、(A)層の製膜工程中に設けても製膜工程後に設けてもよいが、製造効率の観点から、製膜工程中に設けることが好ましい。特に、テンター法により横方向に延伸して(A)層を製膜する工程において、その延伸操作の直前で塗布することが好ましい。
【0045】
本発明の延伸積層体の(A)層と樹脂(B)からなる層との摩擦係数は、積層体のハンドリング性向上の観点から、0.8以下であることが好ましい。摩擦係数が0.8を超えると、積層体をロール状に巻き取る際に、積層体にシワや折れが発生してきれいに巻き取れないおそれがある。
【0046】
本発明の延伸積層体は、1mm厚でのヘイズが0.3以下である。好ましくは、ヘイズが0.2以下である。ヘイズが0.3を超えると、延伸フィルムの透明性が低下し、位相差フィルム等に好適に採用できなくなる。
【0047】
本発明の延伸積層体は、Reのバラツキが10nm以内、好ましくは5nm以内、さらに好ましくは2nm以内である。Reのバラツキを、上記範囲にすることにより、液晶表示装置用の位相差フィルムとして用いた場合に表示品質を良好なものにすることが可能になる。ここで、Reのバラツキは、光入射角0°(入射光線と本発明の積層体表面が直交する状態)の時のReを積層体の幅方向に測定したときの、そのReの最大値と最小値との差である。
【0048】
本発明の延伸積層体は長尺状であることが好ましい。長尺状とは、フィルムまたは積層体の幅方向に対し少なくとも5倍程度以上の長さを有するものを言い、好ましくは10倍もしくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻回されて保管または運搬される程度の長さを有するものを言う。
【0049】
本発明の偏光板は、偏光膜の少なくとも片面に本発明の延伸積層体を積層させてなる。偏光膜には、ポリピニルアルコールや部分ホルマール化ポリビニルアルコール等の従来に準じた適宜なビニルアルコール系ポリマーよりなるフィルムに、ヨウ素や二色性染料等よりなる二色性物質による染色処理、延伸処理、架橋処理等の適宜な処理を適宜な順序や方式で施したもので、自然光を入射させると直線偏光を透過する適宜なものを用いることができる。特に、光透過率や偏光度に優れるものが好ましい。偏光膜の厚さは、5〜80μmが一般的であるが、これに限定されない。
【0050】
積層形態としては、本発明の延伸積層体を偏光膜の両面に積層させても片面に積層させてもよく、また積層数にも特に限定はなく、2枚以上積層させてもよい。特に、本発明の偏光板のハンドリング性が向上する観点から、積層体の層(A)側を偏光膜に向けて積層するのが好ましい。また、積層手法としては、必須手法ではないが、接着剤を用いて積層させることができる。延伸積層体と偏光膜との間に本発明の特性を損なわない範囲で他の部材を介在させることもできる。
【0051】
偏光膜の片側又は両側には、偏光膜の保護を目的として、適宜の接着層を介して保護フィルムが接着されていてもよい。保護フィルムとしては、適宜な透明フィルムを用いることができる。中でも、透明性や機械的強度、熱安定性や水分遮蔽性等に優れる樹脂を有するフィルム等が好ましく用いられる。その樹脂の例としては、トリアセチルセルロースの如きアセテート重合体、脂環式構造を有する重合体、ポリオレフィン重合体、ポリカーボネート重合体、ポリエチレンテレフタレートの如きポリエステル重合体、ポリ塩化ビニル重合体、ポリスチレン重合体、ポリアクリロニトリル重合体、ポリスルフォン重合体、ポリエーテルスルフォン重合体、ポリアミド重合体、ポリイミド重合体、アクリル重合体等があげられる。
【0052】
本発明の延伸積層体と偏光膜が接する構成の場合は、延伸積層体を偏光膜の保護フィルムとして兼用することができる。延伸積層体を偏光膜の保護フィルムとして兼用することにより、保護フィルム一層を省いて液晶表示装置を薄型化するとともに、偏光膜の耐久性を向上することができる。
【0053】
本発明の延伸積層体は、容易に製造が可能で、複屈折の高度な補償が可能なので、それ単独あるいは他の部材と組み合わせて、位相差板や視野角補償フィルムとして、液晶表示装置、有機EL表示装置、プラズマ表示装置、FED(電界放出)表示装置、SED(表面電界)表示装置などに広く応用が可能である。液晶表示装置としては、例えば、インプレーンスイッチング(IPS)モード、バーチカルアラインメント(VA)モード、マルチドメインバーチカルアラインメント(MVA)モード、コンティニュアスピンホイールアラインメント(CPA)モード、ハイブリッドアラインメントネマチック(HAN)モード、ツイステッドネマチック(TN)モード、スーパーツイステッドネマチック(STN)モード、オプチカルコンペンセイテッドベンド(OCB)モードなどを挙げることができる。
【0054】
本発明の液晶表示装置において、液晶表示装置の形成に際しては、例えばプリズムアレイシート、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトや輝度向上フィルム等の適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。バックライトとしては、冷陰極管、水銀平面ランプ、発光ダイオード、ELなどが挙げられる。
【実施例】
【0055】
本発明を、実施例及び比較例を示しながら、さらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
なお部及び%は特に断りのない限り重量基準である。
本実施例における評価は、以下の方法によって行う。
(1)厚み
延伸積層体をエポキシ樹脂に包埋した後、大和光機(株)製のミクロトーム(RUB−2100)を用いて0.05μm厚にスライスし顕微鏡下で断面観察を行い、各層の厚みを測定する。
(2)ヘイズ
日本電色工業(株)製のヘイズメーター(NDH−2000)を用いて、延伸積層体の全面に渡って任意に3点測定して、その3点の平均値を測定値とする。
(3)樹脂(B)の屈折率
本発明に用いる樹脂(B)の溶液をガラス板上に塗布し、90℃で溶媒を乾固した後、樹脂(B)層をガラス板から剥離して、(B)層の屈折率をアッベ屈折率計(D線589nm)で測定する。
(4)粒子(C)の屈折率
本発明に用いる粒子(C)を90℃で乾固した後、(C)を屈折率の異なる種々の25℃の液に懸濁し、懸濁液が最も透明に見える液の屈折率をアッベ式屈折計(D線589nm)によって測定する。
(5)粒子(C)の平均粒径
日本電子(株)製のスパッタリング装置(JPC−1000型)を用いて、延伸積層体の樹脂(B)からなる層の表面に下記条件でイオンエッチング処理を施す。条件はベルジャー内に試料を設置し、約1x10−3Torrまで真空度を上げ、電圧0.25kv、電流12.5mAにて約10分間イオンエッチング処理を施す。更に同装置にて、該表面に金スパッターを施し、走査型電子顕微鏡にて1万〜3万倍の倍率で観察し、続いて、日本レギュレータ(株)製の画像解析装置(ルーゼックス500)にて少なくとも100個の粒子の長径Dli、短径Dsi及び面積円相当径を求める。そしてこれらのそれぞれの数平均値をもって、粒子の長径Di、短径Ds、平均粒径Dを算出する。
(6)樹脂(B)に対する粒子(C)の体積比
延伸積層体から(A)層を剥離した後、樹脂(B)から粒子(C)を除き、樹脂(B)の密度ρ1 をJIS−K−7117に基づき測定する。さらに粒子(C)の密度ρ2 をJIS R−1620に基づき測定を行う。また、樹脂(B)と粒子(C)の重量を測定し、樹脂(B)に対する粒子(C)の重量% Xを求める。そして、次式から該体積比を算出する。
樹脂(B)に対する粒子(C)の体積比
=(X/ρ2)/(X/ρ2+(1−X)/ρ1)
(7)摩擦係数
延伸積層体から、小判状のサンプルを2枚切り出し、一方のサンプルの(A)層側ともう一方のサンプルの樹脂(B)からなる層側とが接するように重ねる。そして、テスター産業(株)製AB−401を用いて、延伸積層体の(A)層と樹脂(B)からなる層との摩擦係数をJIS−K7125に従い測定する。
(8)表面抵抗値
表面電位計S2002A及び表面電位測定用電極を用いて、延伸積層体の樹脂(B)からなる層の表面をJIS−K7194に従い測定する。
(9)面状評価
延伸積層体の任意の箇所1mを観察する。
○・・・フィルム上に白紛、傷が見られない
× ・・・フィルム上に白紛、傷が見られる
(10)巻き取り性
積層体をロール状に巻き取って外観を観察する。
○・・・マスキングフィルム使用時と同等のロール外観を有する
× ・・・しわが入りきれいに巻き取ることができない
(11)経時テスト
積層体を用いて、液晶表示装置を作製し、80℃、90%RH環境下1時間と、−20℃、40%RH環境下1時間のヒートサイクルテストを200サイクル繰り返した後、正面から液晶表示装置の画像の表示状態を目視で観察する。
良好:特に異常は認められない。
不良:画面端部などに部分的に色相変化が認められる。
【0056】
(製造例1)粒子(C)を含有する樹脂(B)溶液の調整
ケン化度98.0モル%、重合度500のポリビニルアルコ−ルの4.2%、75℃加熱水溶液中に、表1の記載に基づいて選択した粒子を、ツインミキサ−を用いて攪拌しながら加えた。このポリビニルアルコ−ル水溶液を常温まで温度を下げてから、イソプロパノ−ルと直鎖アルキルスルホン酸ソーダーの混合溶媒を加え、さらに帯電防止剤としてアトレーAS1000(日本鉱業(株)製)を、該ポリビニルアルコ−ル水溶液に対して、該混合溶媒を20重量%及び該帯電防止剤を1重量%で少しずつ加え、約1時間混合攪拌して樹脂(B)溶液を作成した。なお、ケン化度及び粒子添加量は表2に示す樹脂(B)の屈折率及び粒子の体積比率を得るために種々に調整した。
【0057】
(実施例1〜4)
ノルボルネン系樹脂であるZEONOR1420(ZN1420)(日本ゼオン(株)製)のペレットを100℃で5時間乾燥した後、常法によって該ペレットを押出し機に供給して250℃で溶融してダイから冷却ドラム上に吐出し、厚さ150μmの未延伸フィルム(1)を得た。続いて、ロール間でのフロート方式を用いた縦延伸機にて、未延伸フィルム(1)を150℃の温度で縦方向に2.0倍に延伸して、延伸フィルム(2)を得た。さらに、ライン速度50m/minで、ロールコーターを用いて、延伸フィルム(2)の片面に、製造例1で得られた溶液を乾燥後の膜厚みが0.05μmになるように塗布した後、連続してテンター法を用いた横延伸機にて、延伸フィルム(2)を150℃の温度で横方向に2.0倍に延伸し、積層体を得た。そして、さらに連続して(ライン速度50m/min)、得られた積層体を巻き取り、幅1350mm、長さ1500mのロール状の積層体を得た。得られた積層体は、マスキングフィルムを使用しなくても十分巻き取り可能なレベルであり、透明性に変化は見られず、積層体の面状も良好であった。得られた積層体の物性と評価結果を表2に示す。
上記積層体と透過軸が長さ方向にある偏光板(サンリッツ社製、HLC2-5618S、厚さ180μm)とをロールトゥーロール法により積層して光学素子の巻状体を得た。この時、積層体の遅相軸と偏光板の吸収軸とがほぼ垂直となるように積層した。この巻状体から切り出した光学素子を、市販のバーチカルアラインメント(VA)モードの液晶表示装置のバックライト側の偏光板と置き換え、積層体が液晶セル側に配置するように組み込んだ。得られた液晶表示装置の表示特性を目視により正面から確認したところ、表示は良好かつ均一であった。
【0058】
(比較例1)
実施例1に準じて(表1及び表2の記載に基づいた樹脂及び粒子を選択して)積層体を得た。得られた積層体は、マスキングフィルムを使用しなくても十分巻き取り可能なレベルであったが、透明性の悪化及び粒子の脱落による面状の悪化が見られた。得られた積層体の物性と評価結果を表2に示す。
実施例1と同様にして、ここで得られた積層体と偏光板とをロールトゥーロール法により積層して光学素子の巻状体を得た。この巻状体から切り出した光学素子を、市販のバーチカルアラインメント(VA)モードの液晶表示装置のバックライト側の偏光板と置き換え、積層体が液晶セル側に配置するように組み込んだ。得られた液晶表示装置の表示特性を目視により正面から確認したところ、表示は不良であった。
【0059】
(比較例2)
実施例1に準じて(表1及び表2に記載の樹脂及び粒子を用いて)積層体を得た。但し、得られた積層体は、シワや折れが発生して巻き取ることができなかった。積層体の透明性については変化は見られず、面状も良好であった。得られた積層体の物性と評価結果を表2に示す。
実施例1と同様にして、ここで得られた積層体から切り出したフィルムと偏光板(サンリッツ社製、HLC2-5618S、厚さ180μm)から切り出したフィルムとを積層して光学素子を得た。この時、積層体の遅相軸と偏光板の吸収軸とがほぼ垂直となるように積層した。この光学素子を、市販のバーチカルアラインメント(VA)モードの液晶表示装置のバックライト側の偏光板と置き換え、積層体が液晶セル側に配置するように組み込んだ。得られた液晶表示装置の表示特性を目視により正面から確認したところ、表示は良好であった。
【0060】
(比較例3)
実施例1に準じて(表1及び表2に記載の樹脂及び粒子を用いて)積層体を得た。得られた積層体は、マスキングフィルムを使用しなくても十分巻き取り可能なレベルであったが、透明性の悪化及び粒子の脱落因による面状の悪化が見られた。得られた積層体の物性と評価結果を表2に示す。
実施例1と同様にして、ここで得られた積層体と偏光板とをロールトゥーロール法により積層して光学素子の巻状体を得た。この巻状体から切り出した光学素子を、市販のバーチカルアラインメント(VA)モードの液晶表示装置のバックライト側の偏光板と置き換え、積層体が液晶セル側に配置するように組み込んだ。得られた液晶表示装置の表示特性を目視により正面から確認したところ、表示は不良であった。
【0061】
(比較例4〜6)
実施例1に準じて(表1及び表2に記載の樹脂及び粒子を用いて)積層体を得た。得られた積層体は、マスキングフィルムを使用しなくても十分巻き取り可能なレベルであったが、透明性が格段に悪化した。積層体の面状は良好であった。得られた積層体の物性と評価結果を表2に示す。
実施例1と同様にして、ここで得られた積層体と偏光板とをロールトゥーロール法により積層して光学素子の巻状体を得た。この巻状体から切り出した光学素子を、市販のバーチカルアラインメント(VA)モードの液晶表示装置のバックライト側の偏光板と置き換え、積層体が液晶セル側に配置するように組み込んだ。得られた液晶表示装置の表示特性を目視により正面から確認したところ、表示は不良であった。
【0062】
【表1】

【表2】

【0063】
表2の結果から以下のことがわかる。
実施例1に示すように、本発明の延伸積層体は、脂環式ポリオレフィンからなる延伸フィルム上に、平均粒径0.04μm、屈折率1.53の粒子を、屈折率1.54の透明樹脂に添加しており、その粒子添加量は透明樹脂に対して体積比で14%の割合である。このため、この延伸積層体は、曇りも見られず透明性に優れ、その表面に白紛や傷は見られず、長尺に渡ってきれいに巻き取ることができる。また、本発明の積層体を、液晶表示装置に使用して表示性能を確認すると、画面端部などにおいての部分的な色相変化も全く見られず良好な表示を確認でき、長期に渡って表示特性が良好である。
実施例2に示すように、本発明の延伸積層体は、脂環式ポリオレフィンからなる延伸フィルム上に、平均粒径0.04μm、屈折率1.50の粒子を、屈折率1.54の透明樹脂に添加しており、その粒子添加量は透明樹脂に対して体積比で14%の割合である。このため、この延伸積層体は、曇りも見られず透明性に優れ、その表面に白紛や傷は見られず、長尺に渡ってきれいに巻き取ることができる。また、本発明の延伸積層体を、液晶表示装置に使用して表示性能を確認すると、画面端部などにおいての部分的な色相変化も全く見られず良好な表示を確認でき、長期に渡って表示特性が良好である。
実施例3に示すように、本発明の延伸積層体は、脂環式ポリオレフィンからなる延伸フィルム上に、平均粒径0.06μm、屈折率1.55の粒子を、屈折率1.54の透明樹脂に添加しており、その粒子添加量は透明樹脂に対して体積比で14%の割合である。このため、この延伸積層体は、曇りも見られず透明性に優れ、その表面に白紛や傷は見られず、長尺に渡ってきれいに巻き取ることができる。また、本発明の延伸積層体を、液晶表示装置に使用して表示性能を確認すると、画面端部などにおいての部分的な色相変化も全く見られず良好な表示を確認でき、長期に渡って表示特性が良好である。
実施例4に示すように、本発明の延伸積層体は、脂環式ポリオレフィンからなる延伸フィルム上に、平均粒径0.08μm、屈折率1.55の粒子を、屈折率1.54の透明樹脂に添加しており、その粒子添加量は透明樹脂に対して体積比で14%の割合である。このため、この延伸積層体は、曇りも見られず透明性に優れ、その表面に白紛や傷は見られず、長尺に渡ってきれいに巻き取ることができる。また、本発明の延伸積層体を、液晶表示装置に使用して表示性能を確認すると、画面端部などにおいての部分的な色相変化も全く見られず良好な表示を確認でき、長期に渡って表示特性が良好である。
一方、比較例1の延伸積層体は、前記実施例と比較して、粒子(C)の平均粒径が大きく異なり、その値が大きい。このため、この延伸積層体は、実施例の積層体に比べて透明性に劣る。また、長尺に渡ってほぼきれいに巻き取ることができるものの、その表面に白紛や傷が見られる。さらに、比較例1の延伸積層体を、液晶表示装置に使用して表示性能を確認すると、画面端部などにおいての部分的な色相変化が見られ、表示不良である。
比較例2の延伸積層体は、前記実施例と比較して、粒子(C)の平均粒径が大きく異なり、その値が小さい。このため、この延伸積層体は、透明性に優れ、その表面に白紛や傷は見られないものの、ロール状に巻き取ろうとするとシワや折れが発生して巻き取ることができない。また、比較例2の延伸積層体を、液晶表示装置に使用して表示性能を確認すると、画面端部などにおいての部分的な色相変化も全く見られず良好な表示を確認でき、長期に渡って表示特性が良好である。
比較例3の延伸積層体は、前記実施例と比較して、粒子(C)の添加量が大きく異なり、その値が大きい。このため、この延伸積層体は、実施例の積層体に比べて透明性に劣る。また、長尺に渡ってほぼきれいに巻き取ることができるものの、その表面に白紛や傷が見られる。また、比較例3の延伸積層体を、液晶表示装置に使用して表示性能を確認すると、画面端部などにおいての部分的な色相変化が見られ、表示不良である。
比較例4の延伸積層体は、前記実施例と比較して、粒子(C)の屈折率が大きく異なり、その値が大きい。このため、この延伸積層体は、実施例の積層体に比べて透明性に劣る。また、その表面に白紛や傷は見られず、長尺に渡ってきれいに巻き取ることができる。しかしながら、比較例4の延伸積層体を、液晶表示装置に使用して表示性能を確認すると、画面端部などにおいての部分的な色相変化が見られ、表示不良である。
比較例5の延伸積層体は、前記実施例と比較して、粒子(C)の屈折率が大きく異なり、その値が小さい。このため、この延伸積層体は、実施例の積層体に比べて透明性に劣る。また、その表面に白紛や傷は見られず、長尺に渡ってきれいに巻き取ることができる。しかしながら、比較例5の延伸積層体を、液晶表示装置に使用して表示性能を確認すると、画面端部などにおいての部分的な色相変化が見られ、表示不良である。
比較例6の延伸積層体は、前記実施例と比較して、樹脂(B)の屈折率が大きく異なり、その値が小さい。このため、この延伸積層体は、実施例の積層体に比べて透明性に劣る。また、その表面に白紛や傷は見られず、長尺に渡ってきれいに巻き取ることができる。しかしながら、比較例6の延伸積層体を、液晶表示装置に使用して表示性能を確認すると、画面端部などにおいての部分的な色相変化が見られ、表示不良である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な樹脂からなるフィルムを延伸してなる延伸フィルム層(A)と、粒子(C)を含有する樹脂(B)からなる層とを積層してなる延伸積層体であって、
層(A)が脂環式ポリオレフィン樹脂からなり、
樹脂(B)に対する粒子(C)の体積比が1%〜30%であり、
粒子(C)の平均粒径が0.01〜0.10μmであり、
樹脂(B)及び粒子(C)の屈折率がいずれも1.45〜1.60であり、
ヘイズが0.3以下であることを特徴とする延伸積層体。
【請求項2】
樹脂(B)からなる層の表面抵抗が1x1012Ω/□以下であることを特徴とする請求項1記載の延伸積層体。
【請求項3】
請求項1又は2記載の延伸積層体を有する偏光板。
【請求項4】
請求項1又は2記載の延伸積層体を有する液晶表示装置。

【公開番号】特開2006−62109(P2006−62109A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−244637(P2004−244637)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】