説明

建築構造物のシーリング方法

【課題】定形のシーリング材を用いて、効率的にかつ確実にシール作業を行うことを可能にする建築構造物のシーリング方法を提供する。
【解決手段】平板なシート状に形成された第1,第2の定形シーリング材11a,11bとを用意する工程と、被施工面に第1の不定形シーリング材14aを塗布する工程と、被施工面に生じたクラックCを挟む両側の位置に、第1の不定形シーリング材14aにより、それぞれ第1の不定形シーリング材14aを接着する工程と、第1の定形シーリング材11a間にかけ渡すように、第2の不定形シーリング材14bにより第2の定形シーリング材11bを接着する工程と、第1,第2の不定形シーリング材14a、14bを硬化させ、クラックCを含む被施工面の領域を空間域として、被施工面に第1,第2の定形シーリング材11a,11bを固着する工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築構造物のシーリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築構造物の目地部分、サッシと建物の開口部との接合部分等をシーリング材を用いてシールする方法は従来から行われている。通常は、ペースト状のシーリング材(不定形のシーリング材)を目地等に充填し、目地内でシーリング材を硬化させてシールする。この不定形のシーリング材を用いてシールする場合は、へら等で成形して仕上げるようにするから、作業者の熟練度によってシール部分の仕上がりの外観、見栄えがばらつくといった問題がある。
【0003】
本出願人は、従前のシーリング方法の場合にシール部分の仕上がりの外観がまちまちになるという問題を解決する方法として、不定形のシーリング材と、所定の形状にあらかじめ成形し、表面を滑らかに形成した定形のシーリング材とを組み合わせることによって、作業者の熟練度によらずに、見栄えのよい施工を可能にするシーリング方法を提案した(特許文献1参照)。このシーリング方法においては、不定形のシーリング材と定形のシーリング材との主たる組成を同じくし、不定形のシーリング材と定形のシーリング材とを一体化させて確実なシールを可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−93985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した不定形のシーリング材と定形のシーリング材を用いてシールする方法は、コンクリート等によって形成された建築構造物の壁面や天井面に生じた亀裂(クラック)部分をシールする方法としても利用される。たとえば、コンクリート壁に生じたクラックからの水漏れを防止するために、コンクリート壁のクラックが生じている外面部分を、不定形のシーリング材(ペースト状)と定形のシーリング材(所定幅、厚さのシート状のもの)によって被覆し、クラック部分を封止するといった方法である。不定形のシーリング材はコンクリート壁に定形のシーリング材を接着するためのものである。
【0006】
コンクリート壁に生じたクラック部分を不定形のシーリング材と定形のシーリング材を用いてシールする場合、クラックから水が漏れている場合には、クラックにウレタン樹脂等の封止用の樹脂を注入し、漏水を止めてからシーリングする。クラックからの水漏れを防止せずに不定形のシーリング材と定形のシーリング材を接着すると、クラックから水が漏れた部分ではシーリング材が膨らんでしまい、確実なシーリングがなされなくなるからである。
【0007】
このように、従来のシーリング方法には、コンクリート壁や、コンクリートの天井面等の建築構造物に生じたクラック部分をシールする場合に、クラック部分の漏水を停止させる作業が必要であったり、不定形のシーリング材と定形のシーリング材を用いてシールする場合であっても、シーリング材(接着剤)が硬化するまでに1週間程度かかるといった、作業効率の問題があった。
【0008】
本発明はこれらの課題を解決すべくなされたものであり、定形のシーリング材を用いてシーリング施工する際に、効率的にかつ確実にシール作業を行うことを可能にする建築構造物のシーリング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は次の構成を備える。
すなわち、平板なシート状に形成された第1の定形シーリング材と、第2の定形シーリング材とを用意する工程と、被施工面に第1の不定形シーリング材を塗布する工程と、前記被施工面に生じたクラックを挟む両側の位置に、前記第1の不定形シーリング材により、それぞれ前記第1の不定形シーリング材を接着する工程と、前記第1の定形シーリング材間にかけ渡すように、第2の不定形シーリング材により前記第2の定形シーリング材を接着する工程と、前記第1の不定形シーリング材と前記第2の不定形シーリング材を硬化させ、前記クラックを含む前記被施工面の領域を空間域として、前記被施工面に前記第1の定形シーリング材と前記第2の定形シーリング材を固着する工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る建築構造物のシーリング方法によれば、被施工面に生じたクラック部分を定形シーリング材によってシールすることにより、シーリング施工を容易にかつ確実に行うことができ、シール部分の仕上がりを良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】参考実施形態において、コンクリート壁に定形シーリング材を貼着した状態の正面図(a)、及び断面図(b)である。
【図2】参考実施形態において、コンクリート壁に定形シーリング材を貼着した状態を拡大して示す断面図である。
【図3】シーリング方法の第1の実施の形態の施工方法を示す断面図(a)、(b)及び平面図(c)である。
【図4】シーリング方法の第2の実施の形態の施工方法を示す断面図である。
【図5】従来のシーリング方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る建築構造物のシーリング方法をコンクリート壁に適用した例につい説明する。
参考実施形態
図1(a)は、コンクリート壁5のクラックCが生じた部分に、定形シーリング材10を貼着した状態の正面図、図1(b)は断面図である。
ダムの擁壁、トンネルの内壁等にはコンクリート壁が多く用いられている。これらのコンクリート壁では、施工後、時間が経過するとともにとともに、コンクリートブロックの継ぎ目部分やコンクリートブロック本体にクラック(亀裂)や隙間が生じて、クラック部分から水が漏れ出るといった問題が生じることがある。
【0013】
図1は、コンクリート壁5に生じたクラックCからの漏水を防止するために、クラックCを定形シーリング材10によって覆い、クラックCからの漏水を防止するシーリング加工を施した状態を示す。
本発明に係るシーリング方法において特徴とする構成は、コンクリート壁5に貼着する定形シーリング材10として、クラックCが形成されている部位については定形シーリング材10が密着しないように形成した定形シーリング材10を使用することにある。すなわち、本実施形態においては、クラックCに対向する部位が凹部10cとして形成され、凹部10cの両側にコンクリート壁5に接着されるシール部10a、10bが形成された定形シーリング材10を使用する。図1(b)に、クラックCが形成された部位を跨ぐように定形シーリング材10を貼着した状態を示す。
【0014】
図1(a)は、コンクリート壁5に鉛直方向(上下方向)に向けてクラックCが生じている例を示す。定形シーリング材10は、鉛直方向に延びるクラックCに沿って、クラックCを挟む配置にシール部10a、10bを配置し、クラックCが定形シーリング材10によって覆われるようにコンクリート壁5に貼着されている。クラックCは、定形シーリング材10を貼着した状態で、外部から遮蔽されている。図1(a)では、クラックCと凹部10cの境界位置を破線によって示した。
【0015】
コンクリート壁に生じるクラックは、鉛直方向に生じるとは限らないが、コンクリート壁によって擁壁等を構築する場合は、特定の大きさのブロック単位で工事を行う方法が一般的であり、コンクリート壁に生じるクラックは、鉛直方向あるいは水平方向に生じる場合が多い。また、クラックは直線的に連続する状態で発生することが多い。図1(a)は、鉛直方向にクラックが生じた例を示したものであるが、クラックの向きが水平向きであったり、傾斜した向きであっても、クラックの向きに定形シーリング材10の長手方向を一致させて定形シーリング材10を貼着する。
【0016】
図2に、コンクリート壁5に定形シーリング材10を貼着した状態(断面図)を拡大して示す。定形シーリング材10は、コンクリート壁5の外面に施したプライマー12と、不定形シーリング材14を介して、コンクリート壁5の外面に貼着されている。不定形シーリング材14は、ペースト状物として提供され、定形シーリング材10を接着した後、硬化させることにより、コンクリート壁面に定形シーリング材10が固着される。
不定形シーリング材14には、定形シーリング材10と主たる組成を同じくする材料からなるものを使用する。このような材料からなる不定形シーリング材14を使用するのは、定形シーリング材10を堅固にコンクリート壁面に固着させるためである。
【0017】
コンクリート壁5に定形シーリング材10を貼着する方法は、次のようにして行う。
まず、コンクリート壁5に生じているクラックの位置、クラックの大きさ(長さ)に合わせた大きさの定形シーリング材10を用意する(定形シーリング材を用意する工程)。定形シーリング材10の幅方向の中央にはクラックCが形成された領域に対向する凹部10cが、定形シーリング材10の長手方向の全長にわたって連通して形成され、凹部10cの両側にシール部10a、10bが形成されている。シール部10a、10bは所要の接着力が得られるように、一定の幅を確保するように形成される。たとえば、定形シーリング材10の全幅を200mmとし、シール部10a、10bの幅を70mm、凹部10cの幅を60mmとした定形シーリング材10を用意する。定形シーリング材10の厚さは5〜10mm程度である。
【0018】
定形シーリング材10は、シリコーンゴムからなる長尺なシート体(凹部10cが形成されている)を所定長さに切断して得られる。シリコーンゴムは柔軟性を有することから、コンクリート壁5の外面の凹凸にならって貼着しやすいという利点と、耐候性が高く、屋外におけるシーリング材料として好適に使用できるという利点を有する。また、長尺なシート体として提供される材料から定形シーリング材10を用意する方法は、型枠などを用いて定形シーリング材10を成形する方法とくらべて、はるかに短時間のうちに用意できるという利点がある。
【0019】
従前は、コンクリート壁に生じたクラックを覆う場合に用いるような、シリコーンゴム等からなる、広幅で長尺な建築用のシーリング材は市販されていなかった。したがって、コンクリート壁のクラックのシーリング用には、型枠を用いて所定の大きさのシート状のシーリング材をあらかじめ製作して使用していた。定形シーリング材と称するのは、被施工個所に合わせて、あらかじめ所定形状にシーリング材を成形して用意するという意味である。
しかしながら、型枠を用いてシーリング材を製作する方法は、シーリング材を急速に硬化させると柔軟性が得られなくなるため、1週間程度かけてゆっくりと硬化させる必要があり、完成までに時間がかかるという問題があった。この点、市販品として提供される長尺なシート体の材料を使用する方法は定形シーリング材10を用意する方法としてきわめて有効である。
【0020】
定形シーリング材10をコンクリート壁5の外面に貼着する場合は、まずコンクリート壁5の外面に付着している汚れをきれいに落とした後、プライマーを塗布する。プライマーはコンクリート壁5とシーリング材との接着性を向上させるためのものであり、ここではコンクリート用のプライマーを用いる。プライマーは定形シーリング材10を貼着する対象に合わせて選択する。プライマーは、定形シーリング材10を貼着する範囲よりも若干広めに塗る。
【0021】
プライマーが乾いた後、定形シーリング材10を貼る位置に合わせて不定形シーリング材14を塗る(不定形シーリング材を塗布する工程)。定形シーリング材10のシール部10a、10bは、コンクリート壁5のクラックCを挟む位置に配置するから、不定形シーリング材14はクラックCを挟む両側に帯状に塗る。不定形シーリング材14の厚さは3mm程度でよい。不定形シーリング材14としては、建築用シーリング材、たとえば2成分型のシリコーンシーリング材を用いる。
【0022】
次いで、不定形シーリング材14を塗った位置に合わせて定形シーリング材10を貼り付ける(定形シーリング材を接着する工程)。不定形シーリング材14としてシリコーン系のシーリング材を使用する場合は、不定形シーリング材14と主たる組成を共通にするシリコーンゴムシートからなる定形シーリング材10を使用する。定形シーリング材10の材質によっては不定形シーリング材14が硬化阻害(硬化しにくくなること)をおこす場合がある。この場合は、不定形シーリング材14を塗布した後、硬化阻害を防止するバリアコート剤を塗り、定形シーリング材10にじかに不定形シーリング材14に接触しないようにするのがよい。
定形シーリング材10を貼り着けた後、数日で不定形シーリング材14が完全に硬化し、コンクリート壁5に定形シーリング材10が堅固に固着される(定形シーリング材を固着する工程)。
【0023】
クラックCが生じた部分とシール部10a、10bとが干渉しないように定形シーリング材10を貼り付けたことにより、コンクリート壁5のクラックCが生じた近傍領域は、所定幅にわたって定形シーリング材10のコンクリート壁5に対向する面とコンクリート壁5の表面とが離間した空間域Aとなる。この空間域Aは、外部からは遮蔽され、定形シーリング材10の長手方向に連通する領域であり、クラックCから排出される水を流す樋(導水路)のように作用する。すなわち、クラックCから漏れ出た水は、この空間域Aを通って排出される。図1(a)に示す例では、クラックCから生じた水は空間域Aを通過して、下方に落下することになる。
【0024】
本実施形態においては、クラックCを幅方向に挟む配置に凹部10cを位置合わせするようにして定形シーリング材10を貼着したことにより、クラックCから漏水が生じている場合でも、漏水による影響を受けずに定形シーリング材10を貼着することが可能になる。
図5は、クラックCが生じている部位と重複するように、平板状の定形シーリング材9を貼着した例を示す。このように、クラックCと重複させて定形シーリング材9を貼着すると、クラックCから排出される水の圧力によって定形シーリング材9が外側に膨らむ(膨出部9a)ようになる。
これに対して、本実施形態のシーリング方法によれば、空間域Aが漏水を排水する流路として作用し、クラックCから漏水しても定形シーリング材10が外側に膨らむことがない。
【0025】
また、定形シーリング材9の全面を(べた状に)不定形シーリング材14によって接着する場合は、本実施形態と比較して、不定形シーリング材14と空気との接触面積が小さく、不定形シーリング材14が硬化するまでに時間がかかるという難点がある。これに対して、本実施形態のシーリング方法の場合は、定形シーリング材10の内側にも空間域Aが形成され、空間域Aに空気が流通することによって、不定形シーリング材14の硬化が内側からも進み、図5に示す方法と比較して、より短時間で硬化させることができる。シール施工の工期が短い場合には、不定形シーリング材14をできるだけ短時間で硬化させるようにすることは、工期を短縮する上で有効である。
【0026】
従来は、図5に示すように、クラックC部分にも定形シーリング材9を貼着するようにしているから、クラックCから漏水が生じている場合には、図5の破線で示すように、クラックCの側方からクラックCに向けて穴をあけ、クラックCに漏水防止用の樹脂を注入し、漏水を防止してから定形シーリング材9を貼着している。
本実施形態のシーリング方法によれば、クラックCから漏水が生じている場合であっても、漏水は空間域Aから排出されるから、不定形シーリング材14の硬化に水が影響を及ぼすことがなく、漏水を防止する作業を行うことなく、シール作業を行うことができ、これによって作業効率を格段に向上させることができる。
もちろん、本実施形態においても、クラックCからの漏水を防止する施工を行ってから、前述した方法によって定形シーリング材10を貼着してシール施工することももちろん可能である。
【0027】
第1の実施の形態
参考実施形態におけるシーリング方法は、凹部10cが形成された定形シーリング材10を用いる方法である。第1の実施の形態は、平板なシート状に提供されるシーリング材を用いてシーリングする方法である。
図3に、第1の実施の形態の施工方法を示す。本実施形態においては、コンクリート壁5の外面に付着している汚れをきれいに落とした後、コンクリート壁5の表面にプライマー12を塗布し、コンクリート壁5の表面に第1の不定形シーリング材14aを塗布した後、クラックCを挟む位置に、それぞれ第1の定形シーリング材11a、11aを、第1の不定形シーリング材14aによって貼り付ける(図3(a))。第1の定形シーリング材11a、11aは仮接着された状態になる。
【0028】
次いで、第1の定形シーリング材11aの上に第2の不定形シーリング材14bを塗布し、第1の定形シーリング材11a、11a間に掛け渡すように、第2のシーリング材11bを接着する(図3(b))。第1の不定形シーリング材14aと第2の不定形シーリング材14bは同一のシーリング材でよい。本実施形態では、第1、第2の不定形シーリング材14a、14bには2成分型のシリコーンシーリング材を使用し、第1の定形シーリング材11aと第2の定形シーリング材11bにシリコーンゴムからなるシート体を使用した。
【0029】
本実施形態のシーリング方法によれば、第1の定形シーリング材11a、11aと第2の定形シーリング材11bによって、コンクリート壁5のクラックCが生じた部位が外部から遮蔽され、かつクラックCの近傍のコンクリート壁5の表面部分は、第1と第2の定形シーリング材11a、11bによって長手方向に連通する空間域Bとなる。
本実施形態のシーリング方法による場合も、参考実施形態と同様に、第1と第2の定形シーリング材11a、11bを貼着する領域をクラックCが形成されている領域とは重複しないように設定し、クラックCからの漏水を空間域Bから排出させることによって、クラックCの漏水を止める作業を行うことなくシーリングすることが可能である。
【0030】
本実施形態では、第1の定形シーリング材11aをコンクリート壁5に貼着し、第1の定形シーリング材11aに第2の定形シーリング材11bを貼着するため、貼着作業が2回となるが、第1の定形シーリング材11aと第2の定形シーリング材11bとして平板なシート体が利用できるという利点がある。平板なシート状の定形シーリング材は一般に市販されているから、この定形シーリング材を利用する方法は、凹部10cが形成されたシート体を使用する方法と比較して利便性の点で有利である。
【0031】
また、第1と第2の定形シーリング材11a、11bを使用する方法は、第1の定形シーリング材11a、11aを接着する際に、接着位置を適宜調節できるという利点もある。クラックCの状態によって第1の定形シーリング材11aの貼着位置を調節することで、より汎用的な利用が可能である。
第2の定形シーリング材11bは、第1の定形シーリング材11a、11aの配置間隔に合わせた幅寸法のものを用いればよい。第2の定形シーリング材11bと第1の定形シーリング材11aとは一定幅以上で重複(接着される範囲)していれば所要の接着力が得られるから、第1と第2の定形シーリング材11a、11bの外側縁の位置は正確に一致していなくても、シール作用上は問題はない。
【0032】
本実施形態においては、第1の定形シーリング材11aと第2の定形シーリング材11bの接着作業(仮接着した状態)を終えてから、第1の不定形シーリング材14aと第2の不定形シーリング材14bを硬化させることにより、第1の定形シーリング材11aと第2の定形シーリング材11bを一体的にコンクリート壁5に固着させる。空間域Bに空気が流通することにより、第1と第2の不定形シーリング材14a、14bを硬化させるまでの時間も、クラックCの部分を含めてベタ状に定形シーリング材を貼着する方法とくらべて、短縮することができる。
【0033】
図3(b)では、第2の定形シーリング材11bを接着する際に、第2の定形シーリング材11bとコンクリート壁5の表面との間にスペーサ材15を介在させた状態を示す。第2の定形シーリング材11bを第1の定形シーリング材11a、11a間を掛け渡すように配置する際に、第2の定形シーリング材11bがコンクリート壁5に向けて湾曲し、コンクリート壁5と第2の定形シーリング材11bとの間に十分な離間間隔(空間域B)が確保されないような場合には、スペーサ材15を使用することによって、コンクリート壁5と第2の定形シーリング材11bとの離間間隔を確保することができる。
【0034】
第2の定形シーリング材11bとは別体に形成したスペーサ材15を、現場施工時に、コンクリート壁5の表面に接着してから、第2の定形シーリング材11bを接着するようにすることもできるし、第2の定形シーリング材11bの表面にあらかじめスペーサ材15を接着しておき、第2の定形シーリング材11bを接着する際に、スペーサ材15をコンクリート壁5に向けて接着することも可能である。
【0035】
図3(c)は、第1の定形シーリング材11a、第2の定形シーリング材11b、及びスペーサ材15の平面配置例を示す。スペーサ材15としては円柱体状のもの、平面形状が矩形のもの、平面形状が細長の形態のものなど適宜形態とすることができる。スペーサ材15をクラックCが形成されている領域範囲(空間域B)に離散的に配置することにより、クラックCからの漏水を排出させる作用が阻害されることはない。スペーサ材15は部分的にクラックCと重複する配置としてもかまわない。
【0036】
第2の実施の形態
トンネルなどのシーリング作業には、トンネルの天井面からの漏水を防止するといった作業がある。このようなシーリング作業では、参考実施形態あるいは第1の実施の形態において説明したように、被施工面(コンクリート壁面)のクラックを覆うように定形シーリング材を貼着した際に、クラックの近傍部分が定形シーリング材の長手方向に連通する空間域となるように施工することが有効である。定形シーリング材を天井面に貼着して形成される空間域が漏水を排出させる樋(導水路)のように作用し、天井面からの漏水をトンネルの側壁方向に導き、天井から漏水が落下することを防止することができる。
【0037】
図4は、トンネルなどの建築構造物で天井面が水平面となっている場合に天井面をシーリングする方法を示す。中央が高く外側が低位となっている天井の場合は、前述した定形シーリング材を貼着する方法がそのまま利用できるが、水平な天井面の場合は、図4に示すように、中央部が薄く、外側に向かうにしたがって肉厚が厚くなる長手方向にテーパ状となる第1の定形シーリング材16aを使用し、第1の実施の形態と同様に、クラックを挟むように第1の定形シーリング材16aを平行に配置し、第1の定形シーリング材16a、16a間を掛け渡すように第2の定形シーリング材16bを接着すればよい。図4(a)は図4(b)のE-E線断面図、図4(b)は、図4(a)のD-D線断面図を示す。
【0038】
第1の定形シーリング材16aとして長手方向に厚さがテーパ状に変化するシート体を使用することによって、天井面の中央部側から壁面側に漏水を排出させることができ、クラックから漏水が生じている場合であっても、漏水の影響を受けずに、第1の定形シーリング材16aと第2の定形シーリング材16bを貼着することができる。不定形シーリング材、プライマー等については、前述した実施形態と同様に使用すればよい。クラックからの漏水を排水させるようにして定形シーリング材を貼着する方法は、漏水が頻繁に生じているような場合の応急のシーリング方法として有効に利用できる。
【0039】
前述した実施形態においては、コンクリート壁の壁面あるいはトンネルなどの建築構造物の天井面をシーリングする方法について説明したが、本発明方法はこれらの施工対象に限定されるものではなく、任意の建築構造物のシーリング方法として利用することができる。不定形シーリング材、定形シーリング材も、シールの対象とする被施工面の性状、材質等に応じて適宜選択して使用すればよい。
【符号の説明】
【0040】
5 コンクリート壁
10 定形シーリング材
10a、10b シール部
10c 凹部
11a 第1の定形シーリング材
11b 第2の定形シーリング材
12 プライマー
14 不定形シーリング材
14a 第1の不定形シーリング材
14b 第2の不定形シーリング材
15 スペーサ材
16a 第1の定形シーリング材
16b 第2の定形シーリング材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板なシート状に形成された第1の定形シーリング材と、第2の定形シーリング材とを用意する工程と、
被施工面に第1の不定形シーリング材を塗布する工程と、
前記被施工面に生じたクラックを挟む両側の位置に、前記第1の不定形シーリング材により、それぞれ前記第1の不定形シーリング材を接着する工程と、
前記第1の定形シーリング材間にかけ渡すように、第2の不定形シーリング材により前記第2の定形シーリング材を接着する工程と、
前記第1の不定形シーリング材と前記第2の不定形シーリング材を硬化させ、前記クラックを含む前記被施工面の領域を空間域として、前記被施工面に前記第1の定形シーリング材と前記第2の定形シーリング材を固着する工程と、
を備えることを特徴とする建築構造物のシーリング方法。
【請求項2】
前記第2の定形シーリング材を接着する工程において、被施工面と前記第2の定形シーリング材との間にスペーサ材を介在させて、前記第2の定形シーリング材を接着することを特徴とする請求項記載の建築構造物のシーリング方法。
【請求項3】
前記第1の定形シーリング材として、長手方向の厚さが徐々に変わるテーパ状のシーリング材を用いることを特徴とする請求項1または2記載の建築構造物のシーリング方法。
【請求項4】
前記被施工面がコンクリート壁であり、
前記不定形シーリング材を塗布する前工程として、
前記コンクリート壁の表面の汚れを落とした後、コンクリート壁の表面にプライマーを塗布する工程を備えることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項記載の建築構造物のシーリング方法。
【請求項5】
前記不定形シーリング材と前記定形シーリング材とは、主たる組成を共通にするものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の建築構造物のシーリング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−154169(P2012−154169A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−106992(P2012−106992)
【出願日】平成24年5月8日(2012.5.8)
【分割の表示】特願2009−196570(P2009−196570)の分割
【原出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(309016555)ハタ防水建設株式会社 (4)
【出願人】(000201478)前田建設工業株式会社 (358)
【Fターム(参考)】