説明

建設機械のキャブ構造およびその組立方法

【課題】複数の鋼管を組み合わせて構成されるキャブであっても、溶接時における作業効率を向上させてコストダウンを図ることが可能な建設機械のキャブ構造およびその組立方法を提供する。
【解決手段】キャブ20では、天井板材21aと複数の梁部材21b〜21eとを含む天井部材21と、床板材22aと複数の梁部材22b〜22eとを含む床部材22と、を備えたキャブ構造において、天井部材21および床部材22に形成された接合空間Xに対して、鋼管の側面が当接するようにして柱23a〜23dを取り付けて固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に搭載されるキャブ構造およびその組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ホイルローダやブルドーザ、油圧ショベル等の建設機械には、角鋼管や異形鋼管等を組み合わせて構成されるキャブ(運転室)が搭載されている。
【0003】
例えば、特許文献1〜3には、キャブの内部の機能部品を異形鋼管に取り込んで部品点数を減らすキャブ構造が開示されている。
【0004】
これらのキャブ構造では、異形鋼管を組み合わせてフレームを構成し、その接合部分の継手に鋳物部品を用いている。
【特許文献1】特開2001−207479号公報(平成13年8月3日公開)
【特許文献2】特開2000−198468号公報(平成12年7月18日公開)
【特許文献3】特開2000−198469号公報(平成12年7月18日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の建設機械のキャブ構造では、以下に示すような問題点を有している。
【0006】
すなわち、上記公報に開示された建設機械のキャブ構造では、接合部分に鋳物部品を用いて異形鋼管同士を接合しているため、溶接部分が複雑化して溶接作業に要する時間を増大させたり、溶接性が悪化したりするおそれがある。また、接合部分に鋳物部品を用いることで、部品点数が増加してコストアップの要因となってしまう。
【0007】
本発明の課題は、複数の鋼管を組み合わせて構成されるキャブであっても、溶接時における作業効率を向上させて製造コストを低減することが可能な建設機械のキャブ構造およびその組立方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明に係る建設機械のキャブ構造は、天井部材と、床部材と、複数の柱部材と、を備えている。天井部材は、鋼管によって構成される複数の梁部材と、梁部材に取り付けられる板材と、を有している。床部材は、鋼管によって構成される複数の梁部材と、梁部材に取り付けられる板材と、を有している。複数の柱部材は、鋼管によって構成されており、天井部材および床部材を構成する梁部材の端部に対して鋼管の側面が当接するように取り付けられる。
【0009】
ここでは、天井部材および床部材を構成する複数の梁部材と、この梁部材の端部に対して側面を当接させるように取り付けられる複数の柱部材と、を用いてキャブを構成している。
【0010】
ここで、天井部材および床部材は、例えば、4本の梁部材を組み合わせて四角形とし、その四角形の形状に合わせて形成された略四角形の鋼板を貼り合わせて構成される。また、柱部材が取り付けられる天井部材および床部材の部位としては、例えば、4本の梁部材によって形成される四角形の四隅部分等が考えられる。
【0011】
このため、柱部材は、天井部材と床部材とを組み立てた後、天井部材および床部材の側方から溶接等によって取り付けられることになる。このとき、側方から取り付けられる柱部材と、天井部材および床部材の梁部材との接触部位は、キャブ構造の外側からアクセス可能な位置に露出している。
【0012】
これにより、例えば、柱部材を溶接によって天井部材および床部材に対して取り付ける場合でも、仮組みされたキャブ構造の外側から溶接作業を行うことができる。この結果、組立時の作業性を向上させて製造コストを低減することが可能なキャブ構造を提供することができる。
【0013】
第2の発明に係る建設機械のキャブ構造は、第1の発明に係る建設機械のキャブ構造であって、柱部材が取り付けられる天井部材および床部材に含まれる梁部材の交差部分は、柱部材の断面形状に沿った形状に加工されている。
【0014】
ここでは、柱部材が取り付けられる梁部材が交差する部分は、柱部材の断面形状に合わせて加工されている。
【0015】
これにより、例えば、柱部材が異形断面を有する場合でも、その異形断面に合わせて梁部材の交差部分の形状が加工されているため、柱部材の側面と梁部材の端部とを密着させた状態とし、溶接等によって両者を接続することができる。この結果、溶接部分の剛性を十分に確保したキャブ構造を得ることができる。
【0016】
第3の発明に係る建設機械のキャブ構造は、第1または第2の発明に係る建設機械のキャブ構造であって、天井部材を構成する複数の梁部材には、異形断面を有するものが少なくとも1本含まれている。
【0017】
ここでは、天井部材を構成する梁部材の中に異形断面を有するものが含まれている。
【0018】
ここで、異形断面を有する梁部材の配置としては、例えば、天井部材の4辺を構成する梁部材のうち、キャブの側面側に配置される側の2本の梁部材が考えられる。
【0019】
この場合には、キャブに取り付けられるドアや窓ガラスを異形断面の部分に嵌め込むことで容易にキャブを構成することができる。
【0020】
第4の発明に係る建設機械のキャブ構造は、第1から第3の発明のいずれか1つに係る建設機械のキャブ構造であって、床部材を構成する複数の梁部材には、異形断面を有するものが少なくとも1本含まれている。
【0021】
ここでは、床部材を構成する梁部材の中に異形断面を有するものが含まれている。
【0022】
ここで、異形断面を有する梁部材の配置としては、例えば、床部材の4辺を構成する梁部材のうち、キャブの側面側に配置される側の2本の梁部材が考えられる。
【0023】
この場合には、キャブに取り付けられるドアや窓ガラスを異形断面の部分に嵌め込むことで容易にキャブを構成することができる。さらに、天井部材に含まれる異形断面を有する梁部材と対向するように配置された床部材に含まれる梁部材を対称的な異形断面とすることで、さらに効果的にキャブに取り付けられるドアや窓ガラス等を嵌め込んで組み立てることができる。
【0024】
第5の発明に係る建設機械のキャブ構造は、第1から第4の発明のいずれか1つに係る建設機械のキャブ構造であって、柱部材には、異形断面を有するものが少なくとも1本含まれている。
【0025】
ここでは、柱部材の中に異形断面を有するものが含まれている。
【0026】
これにより、キャブに取り付けられるドアや窓ガラスを異形断面の部分に嵌め込むことで容易にキャブを構成することができる。さらに、天井部材や床部材に含まれる異形断面を有する梁部材に合わせて異形断面を有する柱部材を配置することで、さらに効果的にキャブに取り付けられるドアや窓ガラス等を嵌め込んで組み立てることができる。
【0027】
第6の発明に係る建設機械のキャブ構造は、第1から第5の発明のいずれか1つに係る建設機械のキャブ構造であって、梁部材と柱部材との接合部分における梁部材の端部には凸部が形成されており、柱部材の側面には凹部が形成されている。
【0028】
ここでは、梁部材と柱部材とが接合される部分において、梁部材側の梁部材の端部に凸部を形成する一方、柱部材の側面にこの凸部が挿入される凹部を形成している。
【0029】
これにより、天井部材および床部材に対して柱部材を取り付ける際には、柱部材に形成された凹部に対して梁部材の凸部を差し込むことで、天井部材および床部材に対する柱部材の高さ方向における取付位置を容易に合わせることができる。この結果、組み立て時における作業性をさらに向上させて、製造コストを低減することができる。
【0030】
第7の発明に係る建設機械のキャブ構造は、第1から第6の発明のいずれか1つに係る建設機械のキャブ構造であって、梁部材と柱部材との接合位置に設けられており、梁部材と柱部材とをつなぐ補強部材を、さらに備えている。
【0031】
ここでは、梁部材と柱部材との接合位置に、両者の接合を補強するための補強部材を別途設けている。
【0032】
これにより、柱部材の側面と梁部材の端部とを接合する際に、溶接等による接合強度に補強部材による接合強度も付加することができるため、接合部分における剛性を向上させることができる。
【0033】
第8の発明に係る建設機械のキャブ構造は、第1から第7の発明のいずれか1つに係る建設機械のキャブ構造であって、梁部材同士の交差部分において、梁部材同士を接合する接合部材を、さらに備えている。
【0034】
ここでは、複数の梁部材が交差する位置に、両者の接合を補強するための接合部材を別途設けている。
【0035】
これにより、天井部材あるいは床部材を形成する際に、溶接等による接合強度に接合部材による接合強度も付加することができるため、天井部材および床部材の剛性を向上させることができる。
【0036】
第9の発明に係る建設機械のキャブ構造の組立方法は、第1から第8の発明のいずれか1つに係る建設機械のキャブ構造の組立方法であって、第1から第3のステップを含んでいる。第1のステップでは、天井部材および床部材を組み立てる。第2のステップでは、第1のステップにおいて組み立てられた天井部材と床部材とを、柱部材に応じた所定の間隔を空けて上下に配置するための治具にセットする。第3のステップでは、治具にセットされた天井部材と床部材とに対して柱部材を側方から取り付ける。
【0037】
ここでは、天井部材と床部材とを組み立てた後、この天井部材と床部材とを、柱部材の長さに合わせて所定の間隔を空けた状態で固定する組み立て用の治具にセットする。そして、治具にセットされた天井部材および床部材に対して各柱部材を側方から取り付けて溶接等によって接合する。
【0038】
これにより、組み立て用の治具によって、柱部材の長さに合わせて所定の間隔を空けた状態で天井部材および床部材をそれぞれ固定しているため、特に位置合わせ等を行うことなく、そのまま柱部材を側方から取り付けることができる。この結果、キャブの組み立て精度を向上させることができる。そして、キャブの組立作業をさらに効率よく行うことができることから、キャブの製造コストを低減してコストダウンを図ることができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明に係るキャブ構造によれば、例えば、柱部材を溶接によって天井部材および床部材に対して取り付ける場合でも、仮組みされたキャブ構造の外側から溶接作業を行うことができるため、組立時の作業性を向上させて製造コストを低減することが可能なキャブ構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
本発明の一実施形態に係るキャブ構造について、図1〜図17を用いて説明すれば以下の通りである。
【0041】
[キャブ20全体の構成]
本実施形態に係る建設機械のキャブ構造は、図1に示すように、ホイルローダ(建設機械)10に搭載されたキャブ20に対して適用されている。
【0042】
ホイルローダ10は、車体11と、車体の前部に装着されたリフトアーム12と、このリフトアーム12の先端に取り付けられたバケット13と、車体11を支持しながら回転して車体を走行させる4本のタイヤ14と、車体11の上部に搭載されたキャブ20と、を備えている。
【0043】
車体11は、図示しないエンジンを収納するエンジンルームと、リフトアーム12およびバケット13を駆動するための駆動部と、を有している。
【0044】
リフトアーム12は、先端に取り付けられたバケット13を持ち上げるためのアーム部材であって、併設されたリフトシリンダによって駆動される。
【0045】
バケット13は、リフトアーム12の先端に取り付けられており、図示しないバケットシリンダによってダンプおよびチルトされる。
【0046】
キャブ20は、複数の鋼管と鋼板とを組み合わせて構成されるオペレータ用の運転室を形成しており、車体11の中央部分よりもやや前方に配置されている。なお、キャブ20の構成およびその組立方法については、後段にて詳述する。
【0047】
[キャブ20の構造]
キャブ20は、図2に示すように、天井部材21、床部材22、柱部材23および前面カバー部材24を含んでいる。
【0048】
(天井部材21の構成)
天井部材21は、キャブ20の上部、つまり運転室の天井を形成する部材であって、図3に示すように、天井板材21a、4本の梁部材21b〜21e、補強梁部材21f、および補強部材31、接合部材32を含むように構成されている。
【0049】
天井板材21aは、鋼板によって形成される略正方形の板材であって、この略正方形の四辺に沿って4本の梁部材21b〜21eが固定される。
【0050】
梁部材21b〜21eは、鋼管によって形成される棒状の部材であって、上述のように、略正方形の天井部材21(天井板材21a)の四辺に沿って、梁部材21bと梁部材21c、そして梁部材21dと梁部材21eとが対辺になるように、それぞれ取り付けられている。また、4本の梁部材21b〜21eは、すべて異形断面を有している。そして、上記天井板材21aは、このそれぞれの梁部材21b〜21eを略正方向に配置した際に異形断面によって形成される凹み部分に嵌め込まれるようにして固定される。さらに、4本の梁部材21b〜21eによって形成される正方形の四隅(梁部材21b〜21e同士の交差部分)には、図4に示すように、それぞれ柱部材23の断面形状に合わせて形成された接合空間Xが形成されている。換言すれば、各梁部材21b〜21eの端部が、接合空間Xに取り付けられる各柱部材23の断面形状に合わせて加工されている。
【0051】
補強梁部材21fは、断面が略長方形の鋼管によって形成された棒状の部材であって、梁部材21d,21eのほぼ中央付近に取り付けられている。そして、この補強梁部材21fを取り付けることで、天井部材21の剛性が補強される。
【0052】
補強部材31は、略三角形の板材であって、各梁部材21b〜21eと柱部材23との交差部分における異形断面の凹み部分に配置されている。このように、梁部材21b〜21eと柱部材23との間を補強部材31によってつなぐことにより、キャブ20の剛性を向上させることができる。また、補強部材31を梁部材21b〜21eの異形断面の凹み部分に沿って固定することで、補強部材31の位置決めを容易に行うことができる。
【0053】
接合部材32は、中央部分を直角に折り曲げて形成される板材であって、梁部材21b〜21eの交差部分、つまり接合空間Xの部分に取り付けられる。具体的には、接合部材32は、図4に示すように、互いに隣接する各梁部材21b〜21eの端部における鋼管の内部に取り付けられることで、両梁部材を接合する。
【0054】
(床部材22の構成)
床部材22は、キャブ20の下部、つまり運転室の床面を形成する部材であって、図5に示すように、床板材22a、4本の梁部材22b〜22e、補強梁部材22f、および補強部材33,34を含むように構成されている。
【0055】
床板材22aは、鋼板によって形成される略ホームベース型の板材であって、この板材に沿って4本の梁部材22b〜22eが略正方形に固定される。
【0056】
梁部材22b〜22eは、鋼管によって形成される棒状の部材であって、上述のように、略正方形の床板材22aの外周に沿って、梁部材22bと梁部材22c、そして梁部材22dと梁部材22eとが対辺になるように、それぞれ取り付けられている。また、4本の梁部材22b〜22eのうちの梁部材22b,22c,22eは、異形断面を有している。そして、上記床板材22aは、このそれぞれの梁部材22b,22c,22eを略正方形に配置した際に異形断面によって形成される凹み部分に嵌め込まれるようにして固定される。さらに、4本の梁部材22b〜22eによって形成される正方形の四隅(梁部材22b〜22eの交差部分)には、図6に示すように、それぞれ柱部材23の断面形状に合わせて形成された接合空間Xが形成されている。換言すれば、各梁部材22b〜22eの端部が、接合空間Xに取り付けられる各柱部材23の断面形状に合わせて加工されている。
【0057】
補強梁部材22fは、断面が略長方形の鋼管によって形成された棒状の部材であって、梁部材22b,22cのほぼ中央付近に取り付けられている。そして、この補強梁部材22fを取り付けることで、床部材22の剛性が補強される。
【0058】
補強部材33は、補強部材31と同様に略三角形の板材であって、各梁部材22b〜22eと柱部材23との交差部分に配置されている。このように、梁部材22b〜22eと柱部材23との間を補強部材33によってつなぐことにより、キャブ20の剛性を向上させることができる。また、補強部材33を梁部材22b〜22eの異形断面の凹み部分に沿って固定することで、補強部材33の位置決めを容易に行うことができる。
【0059】
補強部材34は、背面側に配置される梁部材22e上に配置されており、梁部材22eとその両側に配置される柱23c,23d(図7参照)とを接合する。このように、梁部材22eと柱部材23との間を補強部材34によってつなぐことにより、補強部材33と同様に、キャブ20の剛性を向上させることができる。さらに、補強部材34についても、上記補強部材33と同様に、梁部材22b〜22eの異形断面の凹み部分に沿って固定することで、補強部材33の位置決めを容易に行うことができる。
【0060】
(柱部材23の構成)
柱部材23は、図7に示す4本の柱23a〜23dと、図2等に示すBピラーとしての2本の柱23eと、によって構成されている。そして、4本の柱23a〜23dは、それぞれ天井部材21の四隅に形成された梁部材21b〜21e間の接合空間X、床部材22の四隅に形成された梁部材22b〜22e間の接合区間Xに対して、側方から取り付けられる。一方、2本の柱23eは、キャブ20の側面の中央部分に縦に立設される。
【0061】
そして、天井部材21および床部材22に対して4本の柱23a〜23dが取り付けられたキャブ20には、図8に示すように、2本の柱23e、複数のカバー部材を含む前面カバー部材24、側面カバー部材25a,25bおよび背面カバー部材25cがそれぞれ取り付けられる。
【0062】
また、各柱23a〜23dが取り付けられる天井部材21および床部材22の接合空間X(図4および図6参照)では、柱23a〜23dの異形断面X1に合うように梁部材21b〜21eおよび梁部材22b〜22eの端部が加工されている。これにより、柱23a〜23dを天井部材21および床部材22の側方から取り付けることができるとともに、柱23a〜23dを収まりのよい状態で接合部分に嵌め込むことができる。また、各柱23a〜23dが異形断面を有していることで、異形断面の凹み部分に、キャブ20に対して取り付けられる窓ガラスやドア等を挿入することができる。
【0063】
さらに、これらの柱23a〜23dは、後述する組立工程において溶接によって固定されるものであるが、この溶接作業をキャブ20の外側から行うことができる。
【0064】
具体的には、図10に示す部分では、柱23dと梁部材22c,22eとの接触部分、および柱23dと補強部材33との接触部分、梁部材22cと補強部材33との接触部分を溶接する。図11および図12に示す部分では、柱23aと梁部材22b,22dとの接触部分、および柱23aと補強部材33との接触部分、梁部材22dと補強部材33との接触部分、梁部材22bと補強部材33との接触部分を溶接する。
【0065】
これにより、キャブ20を仮組みした後でキャブ20の外側から溶接作業を行うことで、溶接作業時における作業性を向上させることができる。
【0066】
さらに、各柱23a〜23dが取り付けられる天井部材21および床部材22の接合空間X(図4および図6参照)には、図9(a)および図9(b)に示すように、例えば、床部材22の左後ろの接合部分においては梁部材22cの端部に凸部22ca、床部材22の左前の接合部分においては梁部材22cの上記と反対側の端部に凸部22cbが形成されている。この凸部22ca,22cbは、左後ろ、左前にそれぞれ取り付けられる柱23d,23bの側面に形成される孔部(図10の柱23dの側面に形成された孔部23da参照)に差し込まれる。このように、梁部材22b〜22eの端部に形成された凸部22ca,22cb等を柱23a〜23dの側面に形成された孔部23da等に差し込むようにして柱23a〜23dを取り付けることで、床部材22および柱部材23間の高さ方向における位置合わせを容易に行うことができる。図11に示す梁部材22dの凸部22daと柱23aの孔部23ab、そして、図13に示す梁部材22bの凸部22baと柱23aの孔部23ab、についても同様である。
【0067】
なお、天井部材21および柱部材23間における位置合わせについても、天井部材21に含まれる梁部材の端部に形成された凸部と、柱部材23の側面に形成された孔部とを組み合わせることで、同様にして行うことができる。
【0068】
また、柱23a〜23dが取り付けられる接合部分には、図10〜図12に示すように、略三角形の補強部材33がそれぞれ梁部材22c,22eと柱23dとの間(図10参照)、梁部材22b,22dと柱23aとの間(図11および図12参照)に取り付けられる。これにより、各梁部材と柱との間の接合強度を補強して、キャブ20全体の剛性を向上させることができる。
【0069】
さらに、梁部材21b〜21eおよび梁部材22b〜22e同士の交差部分には、図12に示すように、接合部材35が取り付けられている。この接合部材35は、上述した天井部材21(図3および図4参照)に含まれる接合部材32と同様の形状、機能を果たす部材であるため、ここではその説明を省略する。
【0070】
なお、天井部材21側における補強部材31および接合部材32についても同様である。
【0071】
柱部材23に含まれる柱23a〜23dは、以上のように、天井部材21および床部材の側方から取り付けられ、異形断面の鋼管によって構成される各柱23a〜23dの上下の端部はそれぞれ開放状態となっている。このため、柱23a〜23dの上端部の開口は図示しないキャップによって塞がれる。このキャップは、天井板材21aよりも厚い板材によって形成されている。これにより、キャブ20の上方に落下してくる石等の落下物が柱23a〜23d内へ入ってしまうことを防止するとともに、キャップの強度によって柱23a〜23dの異形断面が変形することを抑制することができる。一方、柱23a〜23dの下端部の開口23aaは、図13に示すように、電着塗装工程において溶液が柱23a〜23dの内部に溜まってしまうことを防止するためにそのまま開放されている。
【0072】
<キャブ20の組立工程>
本実施形態に係るキャブ20の組み立て工程について、図14〜図17を用いて説明すれば以下の通りである。
【0073】
すなわち、キャブ20は、上述した複数の部材によって構成されており、図14〜図16に示すような組立治具50を用いて組み立てられる。
【0074】
具体的には、図17に示すフローチャートに従って組み立てが行われる。
【0075】
まず、ステップS1およびステップS2において、天井部材21および床部材22が、各構成部材を溶接等によって固定する等して組み立てられる。なお、天井部材21および床部材22の組立て順については、同時に行われてもよいし、順番が反対になってもよい。
【0076】
次に、ステップS3において、ステップS1およびステップS2において組み立てられた天井部材21および床部材22を、図14に示す組立治具50に対して取り付ける。このとき、組立治具50では、クランプ51によって、天井部材21を床部材22との間隔が所定の長さになるように支持する。そして、床部材22については、組立治具50のマウント部52に床部材22を載置して平面方向および高さ方向における位置決めを行った後で固定される。また、床部材22は、図15に示すように、押し付け部55によって方向D3に沿って反対側に向かって押し付けられている。
【0077】
次に、ステップS4において、組立治具50にセットされた天井部材21および床部材22に対して、側方から柱部材23が天井部材21および床部材22の四隅にそれぞれ取り付けられる。このとき、柱23a,柱23bは、図15に示す方向D2に沿って、柱23c,23dは、図15に示す方向D1に沿ってそれぞれ所定の接合空間Xへ挿入された後、上述した凸部と孔部とを組み合わせて高さ方向における位置決めを行った後、仮止め部53によって仮固定される。
【0078】
次に、ステップS5において、ステップS4において仮固定された柱23a〜23dを溶接によって天井部材21および床部材22に対して仮固定する。
【0079】
次に、ステップS6において、クランプ51等を外して組立治具50からキャブ20を取り外した後、ステップS7において柱部材23を天井部材21および床部材22に対して本溶接によって固定する。
【0080】
最後に、補強部材31,33,34を所定の接合箇所に取り付けて組立てを完了する。
【0081】
[本キャブ20の特徴]
(1)
本実施形態のキャブ20では、天井板材21aと複数の梁部材21b〜21eとを含む天井部材21と、床板材22aと複数の梁部材22b〜22eとを含む床部材22と、を備えたキャブ構造において、図4および図6に示す天井部材21および床部材22の四隅に形成された接合空間Xに対して、図15に示すように、鋼管の側面が当接するようにして柱23a〜23dを取り付けて固定する。
【0082】
これにより、各柱23a〜23dを天井部材21および床部材22の側方から取り付けて溶接によって固定することができる。このとき、各柱23a〜23dの上端部および下端部はキャブ20の外部に露出した状態となる。このため、各柱23a〜23dの上下端部と、天井部材21および床部材22を構成する梁部材21b〜21e、22b〜22eとの接合部分を溶接することで、溶接箇所に対してキャブ20の外部からアクセスすることができるため、溶接時における作業性を向上させて、キャブ20の製造コストを低減することができる。
【0083】
(2)
本実施形態のキャブ20では、天井部材21および床部材22における柱23a〜23dが挿入される部分である接合空間Xにおける各梁部材21b〜21e,22b〜22eの端部が、図9(a)および図9(b)に示すように、柱23a〜23dの異形断面の形状に合わせて加工されている。
【0084】
これにより、異形断面を有する柱23a〜23dを用いた場合でも、各柱23a〜23dを梁部材21b〜21e,22b〜22eの交差部分に収まりよく取り付けることができる。さらに、柱23a〜23dの形状に沿って梁部材21b〜21e,22b〜22eの端部が接触した状態になるため、溶接部分を十分に確保してキャブ20の剛性を十分に確保することができる。
【0085】
(3)
本実施形態のキャブ20では、天井部材21を構成する複数の梁部材21b〜21eの中に、異形断面を有するものを含んでいる。本実施形態では、図4に示すように、梁部材21b〜21eの全てが異形断面を有している。
【0086】
これにより、キャブ20の前面や側面、背面等に取り付けられるガラス窓やドア等を異形断面に沿って装着することができる。
【0087】
(4)
本実施形態のキャブ20では、床部材22を構成する複数の梁部材22b〜22eの中に、異形断面を有するものを含んでいる。本実施形態では、図9(a)および図9(b)等に示すように、梁部材22b,22c,22eの3本が異形断面を有している。
【0088】
これにより、キャブ20の前面や側面、背面等に取り付けられるガラス窓やドア等を異形断面に沿って装着することができる。
【0089】
さらに、キャブ20の上下面を構成する天井部材21と床部材22とを構成する各梁部材21b〜21e,22b〜22eを上下で一対になるように異形断面のものを用いた場合には、さらに効果的にキャブ20の前面や側面、背面等に取り付けられるガラス窓やドア等を異形断面に沿って装着することができる。
【0090】
(5)
本実施形態のキャブ20では、図9(a)および図9(b)に異形断面X1として示すように、天井部材21および床部材22に対して側方から取り付けられる4本の柱23a〜23dが異形断面を有している。
【0091】
これにより、キャブ20の前面や側面、背面等に取り付けられるガラス窓やドア等を異形断面に沿って装着することができる。
【0092】
さらに、キャブ20の上下面を構成する天井部材21と床部材22とを構成する各梁部材21b〜21e,22b〜22eの異形断面を有するものと組み合わせて用いることで、さらに効果的にキャブ20の前面や側面、背面等に取り付けられるガラス窓やドア等を異形断面に沿って装着することができる。
【0093】
(6)
本実施形態のキャブ20では、柱23a〜23dと梁部材21b〜21e,22b〜22eとの接合部分に、図11等に示すような凸部22daを梁部材22d側に、凸部22daを挿入する孔部23abを柱23a側にそれぞれ形成している。
【0094】
これにより、柱23a〜23dを天井部材21および床部材22に対して取り付ける際に、柱23a〜23dに対する天井部材21、床部材22の高さ方向における位置合わせを容易に行うことができる。この結果、キャブ20の組立作業時における作業性をさらに向上させて更なる製造コストの低減を図ることができる。
【0095】
(7)
本実施形態のキャブ20では、図3および図5に示すように、柱23a〜23dと、梁部材21b〜21e,22b〜22eとの接合部分には、両者を接合する補強部材31,33,34を取り付けている。
【0096】
これにより、柱23a〜23dと梁部材21b〜21e,22b〜22eとの間の溶接強度に加えて、補強部材31,33,34による強度を付加することができるため、キャブ20の剛性を向上させることができる。
【0097】
(8)
本実施形態のキャブ20では、天井部材21および床部材22を構成する各梁部材21b〜21e,22b〜22e同士の交差部分(接合空間X)に、図4に示すように、互いに交差する梁部材同士を接合する接合部材32を設けている。
【0098】
これにより、天井部材21および床部材22の強度を向上させることができるため、結果として、キャブ20の剛性を向上させることができる。
【0099】
(9)
本実施形態のキャブ20の組立て方法では、図17に示すように、天井部材21および床部材22を組立治具50(図14〜図16参照)にセットするステップと、天井部材21と床部材22とを柱23a〜23dの長さに合わせて所定の間隔を空けて固定するステップと、天井部材21および床部材22に対して側方から柱23a〜23dを取り付ける(図15の方向D1,D2参照)ステップと、を含んでいる。
【0100】
これにより、天井部材21と床部材22とが柱23a〜23dの長さに応じた間隔を空けて組立治具50にセットされているため、柱部材23と天井部材21、床部材22との位置合わせを特に行うことなく、スムーズに柱23a〜23dの高精度な取付けを行うことができる。そして、組立作業の作業効率を向上させることができるため、さらにキャブ20の製造コストを低減することができる。
【0101】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0102】
(A)
上記実施形態では、柱部材23に含まれる4本の柱23a〜23dの全てが異形断面を有する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0103】
例えば、前方左右に取り付けられる柱23a,23bのみが異形断面を有し、後方左右に取り付けられる柱23c,23dは略長方形の断面であってもよい。
【0104】
(B)
上記実施形態では、天井部材21を構成する全ての梁部材21b〜21eが異形断面を有する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0105】
例えば、前後一対の梁部材21d,21e、あるいは左右一対の梁部材21b,21cが異形断面を有しており、他の梁部材は略長方形の断面を有していてもよい。
【0106】
(C)
上記実施形態では、柱23a〜23dと梁部材21b〜21e,22b〜22eとの接合部分の全てに補強部材31,33,34を取り付けた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0107】
例えば、上記接合部分の一部には補強部材を取り付けていなくてもよい。
【0108】
ただし、キャブ20全体の剛性を十分に確保するためには、上記実施形態のように全ての接合部分について補強部材を設けることが好ましい。
【0109】
(D)
上記実施形態では、ホイルローダに搭載されるキャブに対して本発明を適用した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0110】
例えば、ホイルローダ以外にも、ブルドーザや油圧ショベル等の建設機械に搭載されるキャブに対しても本発明を適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明のキャブ構造は、組み立て時における溶接作業等の作業効率を向上させることができるという効果を奏することから、複数の鋼管を組み合わせて構成されるキャブを搭載する各種建設機械に対して広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の一実施形態に係るキャブを搭載したホイルローダを示す外観図。
【図2】図1のホイルローダに搭載されたキャブの構造を示す斜視図。
【図3】図2のキャブを構成する天井部材に含まれる各部品を示す分解図。
【図4】図3の各部品を組み合わせて構成される天井部材を示す斜視図。
【図5】図2のキャブを構成する床部材に含まれる各部品を示す分解図。
【図6】図5の各部品を組み合わせて構成される床部材を示す斜視図。
【図7】図4の天井部材および図6の床部材に対して側方から柱部材を取り付けることを示す斜視図。
【図8】図7のキャブの骨組みに対して壁部材等を貼り付けることを示す斜視図。
【図9】(a),(b)は、図6の床部材に含まれる梁部材の交差部分に形成される接合空間を示す斜視図。
【図10】図6の床部材に含まれる梁部材と柱部材との交差部分に取り付けられる接合部材を示す斜視図。
【図11】図6の床部材に含まれる梁部材と柱部材との交差部分に取り付けられる接合部材を示す斜視図。
【図12】図6の床部材に含まれる梁部材の交差部分に取り付けられる接合部材を示す斜視図。
【図13】図6の床部材に含まれる梁部材と柱部材との交差部分を裏面から見た斜視図。
【図14】図2のキャブの組立工程において使用される組立治具を示す正面図。
【図15】図14の組立治具を示す平面図。
【図16】図14の組立治具を示す側面図。
【図17】本発明の一実施形態に係る建設機械のキャブの組立て方法の流れを示すフローチャート。
【符号の説明】
【0113】
10 ホイルローダ(建設機械)
11 車体
12 リフトアーム
13 バケット
14 タイヤ
20 キャブ(キャブ構造)
21 天井部材
21a 天井板材(板材)
21b〜21e 梁部材
21f 補強梁部材
22 床部材
22a 床板材
22b〜22e 梁部材
22ba 凸部
22ca 凸部
22cb 凸部
22da 凸部
22f 補強梁部材
23 柱部材
23a〜23d 柱
23aa 開口
23ab 孔部
23da 孔部
24 前面カバー部材
25a,25b 側面カバー部材
25c 背面カバー部材
31 補強部材
32 接合部材
33 補強部材
34 補強部材
35 接合部材
50 組立治具
51 クランプ
52 マウント部
53 仮止め部
55 押し付け部
X 接合空間
X1 異形断面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管によって構成される複数の梁部材と、前記梁部材に取り付けられる板材と、を有する天井部材と、
鋼管によって構成される複数の梁部材と、前記梁部材に取り付けられる板材と、を有する床部材と、
鋼管によって構成されており、前記天井部材および前記床部材を構成する前記梁部材の端部に対して前記鋼管の側面が当接するように取り付けられる複数の柱部材と、
を備えている建設機械のキャブ構造。
【請求項2】
前記柱部材が取り付けられる前記天井部材および前記床部材に含まれる前記梁部材の交差部分は、前記柱部材の断面形状に沿った形状に加工されている、
請求項1に記載の建設機械のキャブ構造。
【請求項3】
前記天井部材を構成する前記複数の梁部材には、異形断面を有するものが少なくとも1本含まれている、
請求項1または2に記載の建設機械のキャブ構造。
【請求項4】
前記床部材を構成する前記複数の梁部材には、異形断面を有するものが少なくとも1本含まれている、
請求項1から3のいずれか1項に記載の建設機械のキャブ構造。
【請求項5】
前記柱部材には、異形断面を有するものが少なくとも1本含まれている、
請求項1から4のいずれか1項に記載の建設機械のキャブ構造。
【請求項6】
前記梁部材と前記柱部材との接合部分における前記梁部材の端部には凸部が形成されており、前記柱部材の側面には凹部が形成されている、
請求項1から5のいずれか1項に記載の建設機械のキャブ構造。
【請求項7】
前記梁部材と前記柱部材との接合位置に設けられており、前記梁部材と前記柱部材とをつなぐ補強部材を、
さらに備えている、
請求項1から6のいずれか1項に記載の建設機械のキャブ構造。
【請求項8】
前記梁部材同士の交差部分において、前記梁部材同士を接合する接合部材を、
さらに備えている、
請求項1から7のいずれか1項に記載の建設機械のキャブ構造。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の建設機械のキャブ構造の組み立て方法であって、
前記天井部材および前記床部材を組み立てる第1のステップと、
前記第1のステップにおいて組み立てられた前記天井部材と前記床部材とを、前記柱部材に応じた所定の間隔を空けて上下に配置するための治具にセットする第2のステップと、
前記治具にセットされた前記天井部材と前記床部材とに対して前記柱部材を側方から取り付ける第3のステップと、
を含む、建設機械のキャブ構造の組み立て方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−131263(P2007−131263A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−328667(P2005−328667)
【出願日】平成17年11月14日(2005.11.14)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】