説明

建設機械

【課題】空調装置と空調装置以外の装置との間で冷却ファンを共有しつつ、エンジンの燃料消費量を抑制することができる建設機械を提供すること。
【解決手段】建設機械は、空調装置の第1熱交換器と、空調装置以外の装置の第2熱交換器と、第2熱交換器で熱交換が行われる冷却流体の温度を検出する温度センサと、第1熱交換器および第2熱交換器を冷却する冷却ファンと、冷却ファンを駆動する油圧モータと、油圧モータへの作動油流入量を調節する流量調節手段と、温度センサの検出値および空調装置の冷房時の作動モードに基づいて、冷却ファンの目標回転数を設定する目標回転数設定手段84と、目標回転数設定手段84で設定された目標回転数に対応する制御指令を生成して流量調節手段に出力する制御指令生成手段85とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
ダンプトラック、ホイールローダ、ブルドーザ等の建設機械では、エンジンの冷却水やトルクコンバータの作動油等をラジエータまたはオイルクーラ等の熱交換器を通して循環し、この熱交換器に冷却ファンで外気を送風することにより、エンジン等の冷却を行っている。また、建設機械には、オペレータが乗車するキャブ内を冷房または暖房するための空調装置が搭載されており、空調装置の熱交換器も冷却ファンにより冷却される。
【0003】
近年、空調装置の熱交換器の冷却と、ラジエータ等の空調装置以外の装置の熱交換器の冷却とを、共通の冷却ファンにより行うように構成された建設機械が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の建設機械は、空調装置の冷房動作を検知すると、冷房を行わない場合に比べて高い回転数で冷却ファンを回転することで、空調装置の熱交換器の冷却に必要な風量を確保するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−106289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の建設機械では、例えば、エンジンの始動直後のように冷却水温や作動油温が低く、空調装置により冷房したからといって直ぐに冷却ファンの回転数を高くする必要がない場合でも、空調装置の冷房動作に合わせて自動的に回転数を高くしてしまう。冷却ファンはエンジンを駆動源としているため、冷却ファンの回転数を必要以上に高くすると、その分だけエンジンの燃料消費量が増加してしまうという問題がある。特に、建設機械の冷却ファンは慣性が非常に大きく、冷却ファンの回転に要する燃料消費量は乗用車と比べて格段に多くなるため、冷却ファンの必要以上の回転を防ぎ、燃料消費量を抑制することが望まれている。
【0006】
本発明の目的は、空調装置と空調装置以外の装置との間で冷却ファンを共有しつつ、エンジンの燃料消費量を抑制することができる建設機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明に係る建設機械は、空調装置の第1熱交換器と、前記空調装置以外の装置の第2熱交換器と、前記第2熱交換器で熱交換が行われる冷却流体の温度を検出する温度センサと、前記第1熱交換器および前記第2熱交換器を冷却する冷却ファンと、前記冷却ファンを駆動する油圧モータと、前記油圧モータへの作動油の流入量を調節する流量調節手段と、前記温度センサの検出値および前記空調装置の冷房時の作動モードに基づいて、前記冷却ファンの目標回転数を設定する目標回転数設定手段と、前記目標回転数設定手段により設定された目標回転数に対応する制御指令を生成して前記流量調節手段に出力する制御指令生成手段とを備えていることを特徴とする。
【0008】
第2発明に係る建設機械では、前記目標回転数設定手段は、前記温度センサの検出値に基づいて温度依存目標回転数を設定する温度依存回転数設定手段と、前記空調装置の作動モードに応じてモード依存目標回転数を設定するモード依存回転数設定手段と、前記温度依存回転数設定手段により設定された温度依存目標回転数と、前記モード依存回転数設定手段により設定されたモード依存目標回転数との大きい方を前記冷却ファンの目標回転数として選択する目標回転数選択手段とを備えていることを特徴とする。
【0009】
第3発明に係る建設機械では、前記空調装置の冷房時の作動モードには、少なくとも通常モードと、当該通常モードよりも冷却能力を抑えたエコノミーモードとがあり、外気温を検出する外気温センサと、前記空調装置の設定温度および外気温の状態を判定する温度状態判定手段とを備え、前記モード依存回転数設定手段は、前記空調装置の作動モードがエコノミーモードである場合に、前記温度状態判定手段により外気温が第1閾値未満であり、かつ前記空調装置の設定温度が第2閾値を超えていると判定されたときは、通常モード時よりも低い目標回転数となるエコノミーモードに応じたモード依存目標回転数を設定し、前記温度状態判定手段により外気温が前記第1閾値以上か、または前記空調装置の設定温度が前記第2閾値以下であると判定されたときは、通常モードに応じたモード依存目標回転数を設定することを特徴とする。
【0010】
第4発明に係る建設機械では、前記空調装置の冷房時の作動モードには、少なくとも通常モードと、当該通常モードよりも冷却能力を抑えたエコノミーモードとがあり、前記建設機械のキャブの室内温度を検出する室温センサと、前記室内温度が前記空調装置の設定温度に所定値を加えた温度以上であるか否かを判定する温度状態判定手段とを備え、前記モード依存回転数設定手段は、前記空調装置の作動モードがエコノミーモードである場合に、前記温度状態判定手段により前記室内温度が前記空調装置の設定温度に所定値を加えた温度よりも低いと判定されたときは、通常モード時よりも低い目標回転数となるエコノミーモードに応じたモード依存目標回転数を設定し、前記温度状態判定手段により前記室内温度が前記空調装置の設定温度に所定値を加えた温度以上であると判定されたときは、通常モードに応じたモード依存目標回転数を設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
第1発明によれば、目標回転数設定手段が、空調装置以外の装置冷却流体の温度および空調装置の冷房時の作動モードに基づいて、冷却ファンの目標回転数を設定するため、空調装置の冷房時の作動モードに応じて冷却ファンの回転数を変化させることができる。このため、例えば、いわゆるエコノミーモードのように空調装置の冷却能力を抑えている場合であって、空調装置の熱交換器への送風量が少なくてすむような場合には、冷却ファンの回転数を低くすることができ、空調装置と空調装置以外の装置との間で冷却ファンを共有しつつ、エンジンの燃料消費量を抑制することができる。特に、冷却ファンの慣性が大きい建設機械では、燃料消費量の抑制に大きな効果を発揮する。
【0012】
第2発明によれば、目標回転数設定手段は、空調装置以外の装置の第2熱交換器で熱交換が行われる冷却流体の温度に基づいて設定した温度依存目標回転数と、空調装置の冷房時の作動モードに応じて設定されたモード依存目標回転数との大きい方を冷却ファンの目標回転数として選択するため、冷却流体の温度が高い場合、つまり空調装置以外の装置に必要な送風量が、空調装置に必要な送風量よりも多い場合は、空調装置の作動モードにかかわらず、冷却流体の温度に合った回転数で冷却ファンを回転させることができ、冷却流体の温度上昇を確実に防止することができる。
【0013】
第3発明によれば、外気温が所定の第1閾値以上のときや、空調装置の設定温度が所定の第2閾値以下のときのように、冷却ファンの回転数を高くして空調装置や空調装置以外の装置の冷却を促進する必要がある場合には、空調装置の作動モードがエコノミーモードであっても、冷却ファンを通常モード時の高い回転数で回転させることができる。従って、冷却ファンの回転数が必要以上に低下しないことから、冷却ファンによる各装置の冷却を最適化できる。
【0014】
第4発明によれば、室内温度が空調装置の設定温度を超えているときのように、室内温度がオペレータの意図する温度まで低下していない場合には、空調装置の作動モードがエコノミーモードであっても、冷却ファンを通常モード時の高い回転数で回転させることで、空調装置の冷却能力を上げることができる。従って、冷却ファンの回転数が必要以上に低下しないので、オペレータの意図する室内温度を速やかに実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係る建設機械の構成を示す模式図。
【図2】前記第1実施形態に係るコントローラの制御ブロック図。
【図3】前記第1実施形態に係る冷却ファンの温度依存回転数マップを示す図。
【図4】前記第1実施形態に係る冷却ファンのモード依存回転数マップを示す図。
【図5】前記第1実施形態に係るコントローラの制御フローを示すフローチャート。
【図6】前記第1実施形態に係るコントローラの制御フローを示すフローチャート。
【図7】前記第1実施形態に係るコントローラの作用を説明するためのグラフ。
【図8】本発明の第2実施形態に係るコントローラの制御ブロック図。
【図9】前記第2実施形態に係るコントローラの制御フローを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、第2実施形態以降において、次の第1実施形態で説明する構成部材と同じ構成部材および同様な機能を有する構成部材には、第1実施形態の構成部材と同じ符号を付し、それらの説明を省略または簡略化する。
【0017】
〔第1実施形態〕
〔ダンプトラックの全体構成〕
本実施形態に係る建設機械としてのダンプトラック1を模式的に示す図1において、ダンプトラック1は、エンジン2、作業機駆動部3、ファン駆動部4、第1熱交換器としてのコンデンサ51を含む空調装置5、第2熱交換器としてのラジエータ6、第2熱交換器としてのオイルクーラ7、およびコントローラ8を備え、エンジン2により駆動される図示しない走行手段によって自走可能に構成されている。
【0018】
作業機駆動部3は、作業機31、作業機ポンプ32、およびホイストバルブ33を備えている。さらに、作業機31は、ボディ(ホイストまたはベッセルと称することもある)311およびホイストシリンダ312を備えている。ボディ311は、土砂等を積み込むための荷台であり、ダンプトラック1の図示しない車体フレームに対して起伏自在に支承軸Pに支承されている。ボディ311および車体フレーム間はホイストシリンダ312で連結され、ホイストシリンダ312の両端部分がボディ311および車体フレームにそれぞれ回動自在に支持されている。ホイストシリンダ312は、作業機ポンプ32から供給される作動油で駆動され、ホイストバルブ33の弁位置の切り換えに応じて、ホイストシリンダ312が伸縮する。このホイストシリンダ312の伸縮に伴って、ボディ311は車体フレームに対して起伏動作を行う。
【0019】
ファン駆動部4は、冷却ファン(以下、単にファンと称する)41を駆動する部分であり、油圧ポンプ42、油圧モータ43、およびファン逆転制御弁44を備えている。
油圧ポンプ42は、可変容量型であり、エンジン2を動力源として駆動することにより油圧モータ43に作動油を供給する。この油圧ポンプ42は、ポンプ容量を変化させる斜板等の容量可変部421と、容量可変部421を駆動する電磁弁等のレギュレータ部422とを備えている。レギュレータ部422は、コントローラ8からの制御指令により容量可変部421を駆動し、容量可変部421がポンプ容量を変えることで油圧ポンプ42の吐出量が変化する。これら容量可変部421およびレギュレータ部422により、本実施形態における流量調節手段が構成される。
【0020】
油圧モータ43は、正逆両方向に回転可能な油圧モータであり、油圧ポンプ42の吐出量に応じて油圧モータ43への作動油の流入量が変化し、油圧モータ43の回転数が変化する。油圧モータ43の出力軸にはファン41が設けられ、油圧モータ43の駆動によりファン41が回転駆動される。
【0021】
ファン逆転制御弁44は、油圧モータ43と油圧ポンプ42との間に設けられた電磁式の方向切換弁である。すなわち、コントローラ8からの制御指令により、ファン逆転制御弁44の弁位置が切り換わることで、油圧モータ43の回転方向が切り換わるようになっている。
【0022】
空調装置5は、コンデンサ51、コンプレッサ52、およびエバポレータ53を備え、図示しないキャブ内に設けられた操作パネル等の操作手段54からの操作信号に従ってキャブの室内温度の調節を行う。すなわち、冷房時には、冷媒ガスがコンデンサ51に送られ、コンデンサ51がファン41により冷却されて冷媒ガスの熱交換が行われることで、キャブの室内温度が調節される。空調装置5の温度設定や冷房の有無の設定、冷房時の作動モードの設定等の操作は、操作手段54により行うことができる。
【0023】
ここで、作動モードは、空調装置5による冷房時の冷却能力を決定するために準備されたモードであり、作動モードとしては、通常モードと、当該通常モードに比べて冷却能力を抑えたエコノミーモードとが予め準備されている。空調装置5の温度設定値、冷房の有無、および作動モードの種類に関する情報は、空調装置5からコントローラ8に送信される。
【0024】
ラジエータ6は、エンジン2の冷却流体としての冷却水の冷却を行う。すなわち、ラジエータ6へは、エンジン2の冷却水が送られ、ラジエータ6がファン41により冷却されて冷却水の熱交換が行われることで、冷却水が冷却される。同様に、オイルクーラ7がファン41により冷却されることで、作業機31やブレーキ装置の冷却流体としての作動油が冷却される。
【0025】
コントローラ8は、CPU(Central Processing Unit)等を備え、ファン41の駆動を制御する制御手段として構成されている。コントローラ8の入力側には、冷却水温センサ9、作業機作動油温センサ10、ブレーキ作動油温センサ11、外気温センサ12、室温センサ13、エンジン回転数センサ14、および空調装置5が電気的に接続されている。また、コントローラ8の出力側には、油圧ポンプ42のレギュレータ部422およびファン逆転制御弁44が電気的に接続されている。
【0026】
以上のような構成のダンプトラック1において、コントローラ8は、各センサ9〜13からの温度信号、エンジン回転数センサ14からのエンジン回転数信号、および空調装置5からの各信号に基づいて、油圧ポンプ42のレギュレータ部422およびファン逆転制御弁44に対する制御指令の生成および出力を行う。そして、油圧ポンプ42がコントローラ8からの制御指令に従って吐出量を変化させると、油圧モータ43の回転数が油圧ポンプ42からの吐出量に応じて変化するため、コントローラ8が油圧ポンプ42に対する制御指令を変更することで、ファン41の回転数を制御することができる。
【0027】
〔コントローラの制御構造〕
次に、図2から図4を参照して、コントローラ8の制御構造について説明する。
図2に示すように、コントローラ8は、互いにアクセス可能に構成されたメモリ等の記憶装置81および演算処理装置82を備えている。
記憶装置81は、ファン41の温度依存回転数マップやモード依存回転数マップ、目標回転数に対応する制御指令マップを記憶している。また、記憶装置81は、その他制御に必要なマップ、パラメータ等を記憶している。
【0028】
温度依存回転数マップは、後述する温度依存目標回転数の設定に用いられるマップであり、当該温度依存回転数マップには、図3に示すように、エンジン回転数に対するファン41の目標回転数が、冷却水温および各作動油温と関連付けて記憶されている。本実施形態の温度依存回転数マップには、高温側の冷却水温および作動油温に対応する目標回転数ラインTHと、低温側の冷却水温および作動油温に対応する目標回転数ラインTLとが記憶され、これらの中間温度領域の目標回転数については、高温側の目標回転数ラインTHおよび低温側の目標回転数ラインTL間を補間するようになっている。
【0029】
一方、モード依存回転数マップは、後述するモード依存目標回転数の設定に用いられるマップであり、当該モード依存回転数マップには、図4に示すように、エンジン回転数に対するファン41の目標回転数が、空調装置5の冷房時の作動モードと関連付けて記憶されている。本実施形態のモード依存回転数マップには、通常モード時の目標回転数ラインMNと、エコノミーモード時の目標回転数ラインMEとが記憶されている。これら目標回転数ラインMN,MEは、いずれも温度依存回転数マップの高温側の目標回転数ラインTHと低温側の目標回転数ラインTLとの間に位置する目標回転数を有している。なお、図4には、目標回転数ラインMN,MEと温度依存回転数マップの目標回転数ラインTH,TLとの関係を示すために、目標回転数ラインTH,TLも合わせて記載してある。
【0030】
演算処理装置82は、基準温度選択手段83、目標回転数設定手段84、および制御指令生成手段85を備えている。
基準温度選択手段83は、各油温センサ10,11から得られる作動油温を、温度依存回転数マップに記憶されている水温と各作動油温との対応関係に従って水温に換算し、各作動油温の換算後の水温と冷却水温センサ9から得られる水温とのうち、最も高い温度を基準温度として選択する。
【0031】
目標回転数設定手段84は、温度依存回転数設定手段841、作動モード判定手段842、温度状態判定手段843、モード依存回転数設定手段844、および目標回転数選択手段845を備えている。
【0032】
温度依存回転数設定手段841は、基準温度選択手段83で選択された基準温度およびエンジン回転数に基づいて、ファン41の温度依存目標回転数を設定する。具体的に、温度依存回転数設定手段841は、図3に示す温度依存回転数マップを用いて、基準温度およびエンジン回転数に対応する温度依存目標回転数を設定する。
【0033】
作動モード判定手段842は、空調装置5の冷房時の作動モードを判定する。すなわち、作動モード判定手段842は、空調装置5からの受信情報に基づいて、空調装置5が冷房動作を行っているか否かを判定するとともに、空調装置5が冷房時にどの作動モードで動作しているかを判定し、判定結果をモード依存回転数設定手段844に出力する。
【0034】
温度状態判定手段843は、空調装置5の設定温度の状態や外気温の状態について判定する。具体的に、温度状態判定手段843は、外気温が所定の第1閾値T1以上であるか否かを判定するとともに、空調装置5の設定温度が所定の第2閾値T2以下であるか否かを判定することで、空調装置5の作動モードがエコノミーモードであるにもかかわらず、通常モードの冷却能力が求められる状態を判定し、判定結果をモード依存回転数設定手段844に出力する。
【0035】
モード依存回転数設定手段844は、作動モード判定手段842および温度状態判定手段843の判定結果に応じて、ファン41のモード依存目標回転数を設定する。すなわち、モード依存回転数設定手段844は、図4に示すモード依存回転数マップを用いて、空調装置5の作動モードおよびエンジン回転数に対応するモード依存目標回転数を設定する。
【0036】
目標回転数選択手段845は、温度依存回転数設定手段841で設定された温度依存目標回転数と、モード依存回転数設定手段844により設定されたモード依存目標回転数との大きい方をファン41の最終的な目標回転数として選択する。
【0037】
制御指令生成手段85は、目標回転数設定手段84で設定された目標回転数に対応する制御指令を生成し、当該制御指令を油圧ポンプ42のレギュレータ部422へ出力する。
【0038】
〔コントローラの作用〕
次に、図5から図7を参照しつつ、コントローラ8の作用について説明する。
図5のフローチャートに示すように、先ず、コントローラ8は、空調装置5および各センサ9〜14からの信号を読み込んだ後(ステップST1)、基準温度選択手段83が、各作動油温をそれぞれ水温に換算し、各作動油温の換算後の水温と冷却水温センサ9から得られる水温とのうち、最も高い温度を基準温度として選択する(ステップST2)。
【0039】
次に、温度依存回転数設定手段841は、選択された基準温度およびエンジン回転数に基づいて、ファン41の温度依存目標回転数を設定する。具体的に、温度依存回転数設定手段841は、基準温度が所定の高温閾値以上または所定の低温閾値以下であるか否かを判定し(ステップST3)、基準温度が高温閾値以上であると判定した場合は、図3の温度依存回転数マップに示す高温側の目標回転数ラインTHに沿って温度依存目標回転数を設定する(ステップST4)。また、温度依存回転数設定手段841は、基準温度が低温閾値以下であると判定した場合は、図3に示す低温側の目標回転数ラインTLに沿って温度依存目標回転数を設定し(ステップST5)、基準温度が高温閾値と低温閾値との間にあると判定した場合は、高温側の目標回転数ラインTHと低温側の目標回転数ラインTL間を補間して温度依存目標回転数を設定する(ステップST6)。
【0040】
次に、図6のフローチャートに示すように、作動モード判定手段842は、空調装置5が冷房動作中であるか否かを判定し(ステップST7)、空調装置5が冷房動作中であると判定した場合には、エコノミーモードが設定されているか否かをさらに判定する(ステップST8)。ステップST8でエコノミーモードが設定されていると判定されると、温度状態判定手段843は、外気温が所定の第1閾値T1(例えば30℃)以上であるか否かを判定するとともに、空調装置5の設定温度が所定の第2閾値T2(例えば18℃)以下であるか否かを判定する(ステップST9)。ここで、第1閾値T1は、第2閾値T2に比べて大きな値に設定されている。
【0041】
ステップST9において、外気温が第1閾値T1未満で、かつ空調装置5の設定温度が第2閾値T2を超えていると判定された場合、モード依存回転数設定手段844は、図4に示すエコノミーモード時の目標回転数ラインMEに沿ってモード依存目標回転数を設定する(ステップST10)。
【0042】
一方、ステップST9において、外気温が第1閾値T1以上であると判定された場合や空調装置5の設定温度が第2閾値T2以下であると判定された場合、または、ステップST8において、エコノミーモードが設定されていないと判定された場合、モード依存回転数設定手段844は、図4に示す通常モード時の目標回転数ラインMNに沿ってモード依存目標回転数を設定する(ステップST11)。
【0043】
また、ステップST7において、空調装置5が冷房動作でないと判定された場合、モード依存回転数設定手段844は、モード依存目標回転数をゼロ値に設定する(ステップST12)。なお、冷房オフ時のモード依存目標回転数には、図3中の目標回転数ラインTLで設定される温度依存目標回転数以下であれば、ゼロ値以外の値を設定してもよい。
【0044】
次に、目標回転数選択手段845は、温度依存回転数設定手段841により設定された温度依存目標回転数と、モード依存回転数設定手段844により設定されたモード依存目標回転数との大きい方の値を選択して、ファン41の最終的な目標回転数とする(ステップST13)。
【0045】
例えば、図7に示すように、温度依存目標回転数が目標回転数ラインTLに沿って設定され、空調装置5の冷房時の作動モードが通常モードに設定されている場合、エンジン回転数がNのときのモード依存目標回転数R1は、エンジン回転数Nに対する温度依存目標回転数R2よりも大きいため、目標回転数選択手段845は、モード依存目標回転数R1をエンジン回転数がNの場合の目標回転数として選択する。
【0046】
この場合、空調装置5の冷房時の作動モードがエコノミーモードに設定されると、モード依存目標回転数は、通常モード時の回転数R1よりも小さい回転数R3となる。このモード依存目標回転数R3は温度依存目標回転数R2より大きいため、目標回転数選択手段845は、モード依存目標回転数R3を最終的な目標回転数として選択する。このため、空調装置5の冷房時の作動モードがエコノミーモードに設定された場合には、通常モード時に比べて、ファン41の回転数を低下させることができる。
【0047】
そして、制御指令生成手段85は、選択された目標回転数に対応する制御指令を生成し、当該制御指令を油圧ポンプ42のレギュレータ部422へ出力する(ステップST14)。
【0048】
以上のような構成のダンプトラック1によれば、コントローラ8が、冷却水温、作動油温、および空調装置5の冷房時の作動モードに基づいて、ファン41の目標回転数を設定するため、空調装置5の冷房時の作動モードに応じてファン41の回転数を変化させることができる。このため、エンジン2の始動直後のように冷却水温や作動油温が低く、かつエコノミーモードのように空調装置5の冷却能力を抑えている場合であって、空調装置5のコンデンサ51への送風量が少なくてすむような場合には、空調装置5の冷房時の作動モードに合わせてファン41の回転数を低くすることができるので、エンジン2の燃料消費量を抑制できる。
【0049】
また、エコノミーモードの場合には、ファン41の回転数を低くしてコンデンサ51での熱交換率を低下させ、これにより空調装置5の冷却能力を低下させている。このため、例えば、コンプレッサ52の作動および非作動を切り換える温度閾値を通常モード時とエコノミーモード時とで変化させることで、空調装置5の冷却能力を低下させる場合に比べて、コンプレッサ52の駆動制御が簡易になる分、空調装置5の温度制御構成を簡略化することができる。
【0050】
〔第2実施形態〕
前記第1実施形態では、コントローラ8の温度状態判定手段843は、空調装置5の設定温度の状態や外気温の状態について判定していた。
これに対して、第2実施形態に係る温度状態判定手段843は、空調装置5の設定温度とキャブの室内温度との関係について判定する点が相違する。
【0051】
このような本実施形態では、外気温センサ12が不要となるため、ダンプトラック1は、外気温センサ12を備えていない。また、コントローラ8の構成は、第1実施形態のコントローラ8と類似するが、図8に示すように、温度状態判定手段843の入力信号および機能が第1実施形態とは異なる。具体的に、温度状態判定手段843は、室温センサ13により検出されたキャブの室内温度が、空調装置5の設定温度に所定値を加えた温度以上であるか否かを判定し、判定結果をモード依存回転数設定手段844に出力する。
【0052】
以下、図9のフローチャートを参照して、コントローラ8の作用を説明する。なお、温度依存目標回転数が設定されるまでの流れは、図5に示すフローと同様であるため、ここでの説明を省略する。
【0053】
図9に示すように、ステップST7にて空調装置5が冷房動作中であると判定され、ステップST8にてエコノミーモードが設定されていると判定されると、温度状態判定手段843は、キャブの室内温度が空調装置5の設定温度に所定値(例えば3℃)を加えた温度以上であるかを判定する(ステップST15)。
【0054】
ステップST15において、室内温度が空調装置5の設定温度に所定値を加えた温度よりも低いと判定されると、モード依存回転数設定手段844は、図4に示すエコノミーモード時の目標回転数ラインMEに沿ってモード依存目標回転数を設定する(ステップST10)。一方、ステップST15において、室内温度が空調装置5の設定温度に所定値を加えた温度以上であると判定された場合、または、ステップST8において、エコノミーモードが設定されていないと判定された場合、モード依存回転数設定手段844は、図4に示す通常モード時の目標回転数ラインMNに沿ってモード依存目標回転数を設定する(ステップST11)。また、ステップST7において、空調装置5が冷房動作でないと判定された場合、モード依存回転数設定手段844は、モード依存目標回転数をゼロ値に設定する(ステップST12)。
【0055】
そして、目標回転数選択手段845は、温度依存目標回転数とモード依存目標回転数との大きい方の値を最終的な目標回転数とし(ステップST13)、制御指令生成手段85は、目標回転数に対応する制御指令を生成し、当該制御指令を油圧ポンプ42のレギュレータ部422へ出力する(ステップST14)。
【0056】
本実施形態のコントローラ8によれば、前記第1実施形態と同様に、空調装置5の作動モードに合わせてファン41の回転数を低くすることができる。また、室内温度がオペレータの意図する温度まで低下していない場合には、空調装置5の冷房時の作動モードがエコノミーモードであっても、ファン41を通常モード時の高い回転数で回転させため、オペレータの意図する室内温度を速やかに実現することができる。
【0057】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記各実施形態では、ファン41でコンデンサ51、ラジエータ6、およびオイルクーラ7を冷却していたが、ファン41で冷却する対象の組み合わせとしてはこれに限られない。要するに、空調装置5と空調装置以外の装置との間で冷却ファンを共有していればよく、例えば、コンデンサ51およびラジエータ6間のみでファン41を共用したり、コンデンサ51およびオイルクーラ7間のみでファン41を共用したりしてもよい。
【0058】
前記各実施形態では、記憶装置81に高温側の目標回転数ラインTHと低温側の目標回転数ラインTLとが記憶されていたが、目標回転数ラインの数としてはこれに限られない。例えば、高温、中温、低温の目標回転数ラインを記憶させて、これら目標回転数ライン間で補間してファン41の目標回転数を設定したり、さらに多くの目標回転数間で補間したりしてもよい。
【0059】
前記各実施形態では、空調装置5の冷房時の作動モードとして通常モードとエコノミーモードが予め設定され、モード依存回転数マップにエコノミーモード時の目標回転数ラインMEと通常モード時の目標回転数ラインMNとが記憶されていたが、空調装置5の作動モードの数や、作動モードに対応する目標回転数ラインの数はこれに限られない。例えば、空調装置5の冷房時の作動モードとして、前述した通常モードおよびエコノミーモードの他に、通常モードとエコノミーモードとの間の冷却能力を発揮する第2エコノミーモードを予め設定しておくとともに、各作動モードに対応する目標回転数ラインを設けておき、各作動モードに応じたモード依存目標回転数を設定してもよい。
【0060】
前記各実施形態では、基準温度を選択した上で、基準温度に対応する温度依存目標回転数を設定していたが、温度依存目標回転数の設定方法としてはこれに限られない。例えば、各油温センサ10,11により得られる作動油温や冷却水温センサ9により得られる冷却水温ごとに高温側および低温側の目標回転数ラインを記憶しておき、各作動油温および水温ごとに温度依存目標回転数を設定し、これらの目標回転数のうちの1つを選択して温度依存目標回転数とするようにしてもよい。この場合、コントローラ8は、基準温度選択手段83を備えている必要はなく、目標回転数設定手段84には、各センサ9〜11で検出された水温および作動油温が、直接入力されることになる。
【0061】
前記各実施形態では、可変容量型の油圧ポンプ42が用いられ、油圧ポンプ42の吐出量を変化させて油圧モータ43への流入量を調節することで、ファン41の回転数を制御していたが、油圧モータ43への流入量を調節する方法としてはこれに限られない。要するに、油圧モータ43への流入量の変化によりファン41の回転数を制御できればよく、例えば、固定容量型の油圧ポンプの吐出側と油圧モータ43との間に流量可変式のフローコントロールバルブを設け、このフローコントロールバルブで油圧モータ43への流入量を調節するようにしてもよい。
【0062】
前記各実施形態では、ダンプトラック1に対して本発明が適用されていたが、本発明が適用される建設機械としてはこれに限られない。要するに、空調装置と空調装置以外の装置との間で冷却ファンを共有していればよく、例えば、ホイールローダ、ブルドーザ、ショベル等の他の建設機械であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、空調装置と空調装置以外の装置との間で冷却ファンを共有した建設機械に利用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1…ダンプトラック(建設機械)、6…ラジエータ(第2熱交換器)、7…オイルクーラ(第2熱交換器)、9…冷却水温センサ(温度センサ)、10…トルクコンバータ作動油温センサ(温度センサ)、11…ブレーキ作動油温センサ(温度センサ)、12…外気温センサ、13…室温センサ、14…エンジン回転数センサ、41…冷却ファン、43…油圧モータ、51…コンデンサ(第1熱交換器)、84…目標回転数設定手段、85…制御指令生成手段、421…容量可変部(流量調節手段)、422…レギュレータ部(流量調節手段)、841…温度依存回転数設定手段、843…温度状態判定手段、844…モード依存回転数設定手段、845…目標回転数選択手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調装置の第1熱交換器と、
前記空調装置以外の装置の第2熱交換器と、
前記第2熱交換器で熱交換が行われる冷却流体の温度を検出する温度センサと、
前記第1熱交換器および前記第2熱交換器を冷却する冷却ファンと、
前記冷却ファンを駆動する油圧モータと、
前記油圧モータへの作動油の流入量を調節する流量調節手段と、
前記温度センサの検出値および前記空調装置の冷房時の作動モードに基づいて、前記冷却ファンの目標回転数を設定する目標回転数設定手段と、
前記目標回転数設定手段により設定された目標回転数に対応する制御指令を生成して前記流量調節手段に出力する制御指令生成手段とを備えている
ことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械において、
前記目標回転数設定手段は、
前記温度センサの検出値に基づいて温度依存目標回転数を設定する温度依存回転数設定手段と、
前記空調装置の作動モードに応じてモード依存目標回転数を設定するモード依存回転数設定手段と、
前記温度依存回転数設定手段により設定された温度依存目標回転数と、前記モード依存回転数設定手段により設定されたモード依存目標回転数との大きい方を前記冷却ファンの目標回転数として選択する目標回転数選択手段とを備えている
ことを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項2に記載の建設機械において、
前記空調装置の冷房時の作動モードには、少なくとも通常モードと、当該通常モードよりも冷却能力を抑えたエコノミーモードとがあり、
外気温を検出する外気温センサと、
前記空調装置の設定温度および外気温の状態を判定する温度状態判定手段とを備え、
前記モード依存回転数設定手段は、前記空調装置の作動モードがエコノミーモードである場合に、
前記温度状態判定手段により外気温が第1閾値未満であり、かつ前記空調装置の設定温度が第2閾値を超えていると判定されたときは、通常モード時よりも低い目標回転数となるエコノミーモードに応じたモード依存目標回転数を設定し、
前記温度状態判定手段により外気温が前記第1閾値以上か、または前記空調装置の設定温度が前記第2閾値以下であると判定されたときは、通常モードに応じたモード依存目標回転数を設定する
ことを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項2に記載の建設機械において、
前記空調装置の冷房時の作動モードには、少なくとも通常モードと、当該通常モードよりも冷却能力を抑えたエコノミーモードとがあり、
前記建設機械のキャブの室内温度を検出する室温センサと、
前記室内温度が前記空調装置の設定温度に所定値を加えた温度以上であるか否かを判定する温度状態判定手段とを備え、
前記モード依存回転数設定手段は、前記空調装置の作動モードがエコノミーモードである場合に、
前記温度状態判定手段により前記室内温度が前記空調装置の設定温度に所定値を加えた温度よりも低いと判定されたときは、通常モード時よりも低い目標回転数となるエコノミーモードに応じたモード依存目標回転数を設定し、
前記温度状態判定手段により前記室内温度が前記空調装置の設定温度に所定値を加えた温度以上であると判定されたときは、通常モードに応じたモード依存目標回転数を設定する
ことを特徴とする建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−144231(P2012−144231A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6332(P2011−6332)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】