説明

建設機械

【課題】運転室内に設けられた空調装置に対するメンテナンスを容易に行うことができる建設機械を提供すること。
【解決手段】旋回フレーム上に運転室を備えた旋回体(車体)と、運転室の床板4a上に設置され運転室内の空調を行う空調装置30と、旋回フレームに着脱可能に設けられ、運転室の床板4aの下方空間を下方から閉鎖するアンダーカバー60とを備える建設機械において、床板4aにおける空調装置30の下方位置には、空調装置30が位置する床板4aの上方空間と床板4aの下方空間とを連通させるメンテナンス用開口部と、メンテナンス用開口部を床板4aの下方から開閉可能に閉鎖する開閉部材51とが設けられた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転室内に空調装置を備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された車両用空調装置は、キャビン(運転室)内に形成される室内空間に配置され、空気が流れる空気通路を形成するケースと、ケース内に収納され、空気と熱交換する熱交換器とを備える。ケースはキャビンの周壁部のうち後側の周壁部の下部に隣接配置され、この後側の周壁部の下部に隣接するケースの部位には、ケース側カバーによって開閉されるケース側開口部が形成されている。このケース側開口部は、周壁部に開口してキャビン側カバーによって開閉されるキャビン側開口部に重合配置されている。熱交換器の熱交換コア部はケース側開口部に対向配置されている。つまり、キャビン側カバーとケース側カバーとを開くことによって、熱交換器をケースに収納したままの状態で、キャビン外部から点検、清掃などのメンテナンスを行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−120251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両の一種として建設機械がある。この建設機械において、運転室の後方には、エンジンおよび油圧機器などの種々の機器が格納される機械室が、運転室と隣接して設けられている。この建設機械に対し、特許文献1に開示された車両用空調装置が採用された場合、キャビン(運転室)の後方に機械室が隣接しているため、機械室の壁部がキャビン側カバーとケース側カバーを開けることの障害になる。そこで、キャビン側カバーとケース側カバーを開けることができるようにするには、キャビン側カバーと対向して位置する機械室の壁部に、キャビン側カバーおよびケース側カバーと同様の機械室側カバーを設けて、キャビン側カバーとケース側カバーを開ける前に、その機械室側カバーを開けるようにすることが考えられる。しかし、そのように機械室側カバーを設けたとしても、この機械室側カバーを開ける前には、機械室内の機械室側カバーの周囲に位置する機器を取り外して、その機械室側カバーを開けるのに必要な作業スペースを確保する必要があり、キャビン側カバー、ケース側カバー、機械室側カバーを開けるまでの作業が煩雑である。
【0005】
本発明は、運転室内に設けられた空調装置に対するメンテナンスを容易に行うことができる建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の目的を達成するために本発明に係る建設機械は次のように構成されている。
【0007】
〔1〕 本発明に係る建設機械は、フレーム上に運転室を備えた車体と、前記運転室の床板上に設置され、前記運転室内の空調を行う空調装置と、前記フレームに着脱可能に設けられ、前記運転室の前記床板の下方空間を下方から閉鎖するアンダーカバーとを備えた建設機械において、前記床板における前記空調装置の下方位置には、前記空調装置が位置する前記床板の上方空間と前記床板の下方空間とを連通させるメンテナンス用開口部と、前記メンテナンス用開口部を前記床板の下方から開閉可能に閉鎖する開閉部材とが設けられたことを特徴とする。
【0008】
この「〔1〕」に記載された建設機械においては、アンダーカバーをフレームから取り外した後、開閉部材によりメンテナンス用開口部を開放することで、運転室の床下からメンテナンス用開口部を通じて空調装置にアクセスできるようになる。これにより運転室の床下からメンテナンス用開口部を通じて空調装置のメンテナンスを行うことができる。つまり、「〔1〕」に記載の建設機械によれば、運転室外から空調装置にアクセスできるようにするための作業は、アンダーカバーをフレームから取り外し、開閉部材によりメンテナンス用開口部を開放するというものであり、従来のような煩雑な作業を含まない作業なので、空調装置に対するメンテナンスを容易に行うことができる。
【0009】
〔2〕 本発明に係る建設機械は「〔1〕」に記載の建設機械において、前記空調装置は、エバポレータと、このエバポレータの下方に設けられて、前記エバポレータで結露した水滴を受け止めるドレンパンと、このドレンパンの底部からアンダーカバーの外部に延びるドレンホースとを備え、前記床板には前記ドレンパンの底部を前記床板の下方空間に向けて露出させるドレン用開口部が設けられ、前記メンテナンス用開口部および前記開閉部材は、前記ドレンパンの底部に設けられることを特徴とする。
【0010】
この「〔2〕」に記載の建設機械によれば、メンテナンス開口部が設けられる箇所がドレンパンの底部であるので、メンテナンス用開口部がドレン用開口部とは別に設けられる場合よりも、運転室の床板の強度が低下することを防止することができる。
【0011】
〔3〕 本発明に係る建設機械は「〔2〕」に記載の建設機械において、前記ドレンパンは、前記床板のドレン用開口部から前記床板の下方空間側に突出して前記ドレン用開口部を閉鎖するように設けられることを特徴とする。
【0012】
この「〔3〕」に記載の建設機械においては、ドレンパンの底部が床板の下方に突出して位置していない場合よりも、開閉部材の位置がアンダーカバーに近い。これによりアンダーカバーが取り外された位置から開閉部材にアクセスしやすく、したがってメンテナンス用開口部の開閉を行いやすい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る建設機械によれば、前述のように、運転室内に設けられた空調装置に対するメンテナンスを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る建設機械の側面図である。
【図2】図1に示した運転室内に設置された運転席および空調装置をそれらの形状を簡略化して示す斜視図である。
【図3】図2に示した運転席および架台を取り外した状態であって、床板に設置された空調装置を示す斜視図である。
【図4】床板の下方から見た空調装置の斜視図である。
【図5】ドレンパンおよびドレンホースと、床板およびアンダーカバーとの位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態に係る建設機械について図1〜図5を用いて説明する。
【0016】
図1に示すように、本実施形態に係る建設機械は超小旋回型の油圧ショベルであり、左右両側に設けられた履帯1aを駆動して走行する走行体1と、この走行体1の上部に旋回可能に結合した旋回体2(車体)と、この旋回体2に上下方向に回動可能に結合したフロント作業装置6とを備える。
【0017】
旋回体2の下部の骨格は、旋回フレーム3により形成されている。この旋回フレーム3に運転室4、機械室5が設置されている。
【0018】
フロント作業装置6は、旋回体2の旋回フレーム3に上下方向に回動可能に結合したオフセットブーム7と、このオフセットブーム7に回動可能に結合したアーム8と、このアーム8に回動可能に結合したバケット9とを備える。
【0019】
図2に示すように、運転室4内には運転席20が設けられている。この運転席20は、架台21を介して運転室4の床板4aに設置されている。架台21は、運転席20が取り付けられた上板22と、建設機械の前後方向において上板22の前端と後端から下方に延びて形成され、床板4aに取り付けられた一対の脚部23(前側の図示)とを備える。
【0020】
床板4a上において架台21の上板22と床板4aの間には、運転室4内の空調を行う空調装置30が収容されている。この空調装置30は、運転席20の左側方に対して開口する空気の吸込み口31を備える。
【0021】
図3に示すように、空調装置30は、左側部に前出の吸込み口31が設けられたケース32を備える。このケース32内には、エバポレータ33と、吸込み口31からエバポレータ33に向う方向の空気の流れを生起させる送風機34とが格納されている。エバポレータ33により冷却された空気は、ダクト35,36に吐き出され、これらのダクト35,36から分岐して運転室4内の数か所に導かれるようになっている。
【0022】
エバポレータ33の下方には、エバポレータ33で結露した水滴を受け止めるドレンパン41が設けられている。また、床板4aには、ドレンパン41の底部を床板4aの下方空間に向けて露出させるドレン用開口部40が設けられている。図4に示すように、ドレンパン41はドレン用開口部40を閉鎖して、床板4aに対し固定されている。ドレンパン41の底部はドレン用開口部40から床板4aの下方空間側に突出している。なお、図3においてドレンパン41の図示は省略した。
【0023】
図4に示すように、ドレンパン41の底部にはメンテナンス用開口部50が設けられている。このメンテナンス用開口部50は、空調装置30が位置する床板4aの上方空間と床板4aの下方空間を連通させるものである。また、ドレンパン41の底部には、メンテナンス用開口部50を床板4aの下方から開閉可能に閉鎖する開閉部材51が設けられている。開閉部材51はドレンパン41の底部にネジ留めにより着脱可能に設けられていて、これによりメンテナンス用開口部50が開閉可能となっている。
【0024】
図5に示すように、開閉部材51からはドレンホース42がアンダーカバーの外部100まで延びている。詳細には、開閉部材51には、ドレンホース42を接続するための円筒状のホース接続部51aが設けられていて、ドレンホース42はそのホース接続部51aに接続されて垂下している。運転室4の床板4aは下方からアンダーカバー60に覆われていて、このアンダーカバー60には貫通孔(図示していない)が設けられている。ドレンホース42はその貫通孔に挿し通されることによって、建設機械の外部に達している。なお、アンダーカバー60は床板4aから離間して配置され、旋回フレーム3にネジ留めにより着脱可能に取り付けられている。
【0025】
このように構成された建設機械において、空調装置30のエバポレータ33に対するメンテナンス、例えば清掃を、保守員は次のようにして行う。
【0026】
まず、保守員は走行体1の左右の履帯1aの間から旋回体2の下方に潜って、アンダーカバー60を旋回フレーム3から取り外す。次に、開閉部材51をドレンホース42とともにドレンパン41の底部から取り外す。これにより、ドレンパン41の底部においてメンテナンス用開口部50が開放され、運転室4の床下からメンテナンス用開口部50を通じてエバポレータ33にアクセスできるようになる。次に、そのメンテナンス用開口部50から清掃用ブロアのノズルをエバポレータ33に向かって差し込む。そして、その清掃用ブロアでエバポレータ33に付着した塵埃を吹き飛ばし除去する。
【0027】
エバポレータ33に付着した塵埃の除去が完了した後は、開閉部材51をドレンパン41の底部に取り付けてメンテナンス用開口部50を閉じる。次に、開閉部材51から延びたドレンホース42をアンダーカバー60に挿し通し、このアンダーカバー60を旋回フレーム3に取り付ける。これでエバポレータ33の清掃作業は完了する。
【0028】
本実施形態に係る建設機械によれば次の効果を得られる。
【0029】
本実施形態に係る建設機械によれば、運転室4外からエバポレータ33にアクセスできるようにするための作業は、アンダーカバー60を旋回フレーム3から取り外し、開閉部材51によりメンテナンス用開口部50を開放するというものであり、従来のような煩雑な作業を含まない作業なので、エバポレータ33に対するメンテナンスを容易に行うことができる。
【0030】
本実施形態に係る建設機械によれば、メンテナンス用開口部50が設けられる箇所がドレンパン41の底部であるので、メンテナンス用開口部50がドレン用開口部40とは別に設けられる場合よりも、運転室4の床板の強度が低下することを防止することができる。
【0031】
本実施形態に係る建設機械によれば、ドレンパン41の底部は床板4aの下方空間に突出していて、ドレンパン41の底部に開閉部材51が設けられているので、ドレンパン41の底部が床板4aの下方空間に突出していない場合よりも、開閉部材51の位置がアンダーカバー60に近い。これによりアンダーカバー60が取り外された位置から開閉部材51にアクセスしやすく、したがってメンテナンス用開口部50の開閉を行いやすい。
【0032】
本実施形態に係る建設機械において、架台21と床板4aとの間に空調装置30が収容されていて、すなわち、空調装置30が運転席20に対し上下方向に重なる位置に配置されていて、その空調装置30の下方にメンテナンス用開口部50および開閉部材51が設けられている。これにより、特に超小旋回型の油圧ショベルのように運転室4の大きさに制約がある建設機械について、空調装置30のエバポレータ33のメンテナンスのしやすさを向上させることができる。
【0033】
なお、前述の実施形態に係る建設機械は、メンテナンス開口部が設けられる箇所がドレンパンの底部であるので、メンテナンス用開口部がドレン用開口部とは別に設けられる場合よりも、運転室の床板の強度が低下することを防止することができるものであった。本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、床板4aの強度を十分に確保できる場合には、ドレン用開口部40とは別の床板4aの箇所にメンテナンス用開口部と開閉部材51とが設けられていてもよい。
【0034】
前述の実施形態に係る建設機械においては、開閉部材51はドレンパン41の底部に対してネジ留めにより着脱可能になっていることによって、メンテナンス用開口部50の開閉を可能するものであった。本発明はこれに限定されるものではない。本発明において、開閉部材はドレンパン41に対して開き戸状に開閉可能に設けられたもの、あるいは引き戸状に開閉可能に設けられたものであって、開閉部材は閉じた状態を保持するロック機構を備えるものであってもよい。
【0035】
前述の実施形態に係る建設機械において、ドレン用開口部40は床板4aに設けられていて、メンテナンス用開口部50はドレンパン41に設けられていて、メンテナンス用開口部50はドレンパン41の底部に着脱可能に取り付けられた開閉部材51により開閉されるようになっていたが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明において、ドレンパンは床板に下方から着脱自在に取り付けられてドレン用開口部を塞ぐようになっていてもよい。これによって、ドレン用開口部がメンテナンス用開口部を兼ね、ドレンパンが開閉部材を兼ねる。したがって、メンテナンス用開口部および開閉部材に係る部品点数を削減することができる。
【0036】
前述の実施形態に係る建設機械において、メンテナンス用開口部50は建設機械の外部から空調装置30のエバポレータ33に対してアクセスするためのものであったが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明のメンテナンス用開口部50は、点検、清掃などのメンテナンスが必要な箇所に対してアクセスできるよう設けられたものであればよい。
【符号の説明】
【0037】
1 走行体
2 旋回体(車体)
3 旋回フレーム
4 運転室
4a 床板
30 空調装置
33 エバポレータ
40 ドレン用開口部
41 ドレンパン
42 ドレンホース
50 メンテナンス用開口部
51 開閉部材
60 アンダーカバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム上に運転室を備えた車体と、
前記運転室の床板上に設置され、前記運転室内の空調を行う空調装置と、
前記フレームに着脱可能に設けられ、前記運転室の前記床板の下方空間を下方から閉鎖するアンダーカバーとを備えた建設機械において、
前記床板における前記空調装置の下方位置には、前記空調装置が位置する前記床板の上方空間と前記床板の下方空間とを連通させるメンテナンス用開口部と、前記メンテナンス用開口部を前記床板の下方から開閉可能に閉鎖する開閉部材とが設けられた
ことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械において、
前記空調装置は、エバポレータと、このエバポレータの下方に設けられて、前記エバポレータで結露した水滴を受け止めるドレンパンと、このドレンパンの底部からアンダーカバーの外部に延びるドレンホースとを備え、
前記床板には前記ドレンパンの底部を前記床板の下方空間に向けて露出させるドレン用開口部が設けられ、
前記メンテナンス用開口部および前記開閉部材は、前記ドレンパンの底部に設けられる
ことを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項2に記載の建設機械において、
前記ドレンパンは、前記床板のドレン用開口部から前記床板の下方空間側に突出して前記ドレン用開口部を閉鎖するように設けられる
ことを特徴とする建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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