説明

建設機械

【課題】直射日光によるキャブ内の温度上昇を抑えオペレータの運転環境を快適な状態に保持することができる建設機械を提供する。
【解決手段】キャブ13を形成する天井板16の下側には、オペレータの頭上を覆うように天井循環路30を設ける。キャブ13を形成する左側面板17Cの内側には、天井循環路30の下流側に接続される第1側板循環路32を設ける。第1側板循環路32の下流側と空調装置22との間には、これら第1側板循環路32と空調装置22とを接続する戻り循環路35を設ける。キャブ13内の吹出口26,27,28から吹出された調和空気は、内気として、天井循環路30、第1側板循環路32、戻り循環路35等を通過して空調装置22に戻る。このとき、天井板16、左側面板17C等を内気により冷却することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧ショベル、油圧クレーン等の建設機械に関し、特に、オペレータが搭乗するキャブを備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械の代表例である油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体とにより車体が構成され、上部旋回体の前部側には作業装置が俯仰動可能に設けられている。そして、油圧ショベルは、上部旋回体を旋回させつつ作業装置を俯仰動させることにより、土砂の掘削作業等を行うものである。
【0003】
ここで、油圧ショベルの上部旋回体は、通常、支持構造体をなし前部側に作業装置が設けられる旋回フレームと、該旋回フレーム上に搭載され床板と天井板との間を側板で取囲むことにより運転室を画成するキャブと、該キャブ内に設けられオペレータが着座する運転席と、オペレータにとって快適な調和空気を発生する空調装置と、該空調装置とキャブの運転室との間を接続し空調装置で発生した調和空気を運転室に供給する供給路と、該供給路の下流側に設けられ調和空気を運転室に吹出す吹出口とにより大略構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ここで、特許文献1による油圧ショベルは、キャブ内(運転室)の空気を空調装置に戻すダクト(吸込ダクト)を設け、該ダクトを通じてキャブと空調装置との間で空気を循環できるように構成している。
【0005】
一方、キャブの天井板の真下にダクトを設け、該ダクトを通じてキャブ内の空気を外気に排出する構成が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−28754号公報
【特許文献2】実開平5−49855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2による従来技術によれば、天井板の真下に設けたダクト内を流れる空気により、直射日光により熱せられた天井板の熱を吸収(天井板を冷却)する構成となっている。これにより、直射日光によるキャブ内(運転室)の温度上昇を抑えることができると考えられる。しかし、キャブは、天井板だけでなく、運転席を取囲む側板も、直射日光により熱せられる。このため、特許文献2による従来技術では、直射日光によるキャブ内の温度上昇を十分に抑えることができない虞がある。
【0008】
しかも、特許文献2による従来技術では、天井板の真下に設けたダクトを外気に通じる構成としているため、キャブ内に砂、粉塵等のダストが浸入することを十分に抑制できない虞もある。即ち、キャブ内にダストが浸入することを抑制するために、キャブ内の圧力を外気よりも高く(加圧)しようとしても、天井板の真下に設けたダクトを通じて圧力が逃げ、キャブ内の圧力を高くできない虞がある。これにより、キャブ内にダストが入り込み易くなるという問題がある。
【0009】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、直射日光によるキャブ内の温度上昇を抑えオペレータの運転環境を快適な状態に保持することができる建設機械を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による建設機械は、作業装置が設けられる車体と、該車体の一部を構成し床板と天井板との間を側板で取囲むことにより運転室を画成するキャブと、該キャブ内に設けられオペレータが着座する運転席と、オペレータにとって快適な調和空気を発生する空調装置と、該空調装置と前記キャブの運転室との間を接続し前記空調装置で発生した調和空気を前記運転室に供給する供給路と、該供給路の下流側に設けられ前記調和空気を前記運転室に吹出す吹出口とを備えてなる。
【0011】
そして、上述した課題を解決するために、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記キャブを形成する天井板の下側に位置して前記オペレータの頭上を覆って設けられ前記吹出口から吹出された調和空気が内気として前記天井板に沿って循環する天井循環路と、前記キャブを形成する側板の内側に位置して前記天井循環路の下流側に接続され該天井循環路を通過した内気が前記側板に沿って循環する側板循環路と、該側板循環路の下流側と前記空調装置との間を接続して設けられ前記側板循環路を通過した内気を前記空調装置に戻す戻り循環路とを備える構成としたことにある。
【0012】
請求項2の発明は、前記キャブを形成する側板のうち左側面板および/または右側面板の内側に位置して前記吹出口から吹出された調和空気が内気として前記側板に沿って循環する他の側板循環路を設け、該他の側板循環路は、その下流側を前記戻り循環路の上流側に接続する構成としたことにある。
【0013】
請求項3の発明は、前記側板循環路は、前記側板のうち前記運転席よりも後側の部位に設ける構成としたことにある。
【0014】
請求項4の発明は、前記車体は、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体とにより構成し、該上部旋回体は、支持構造体をなす旋回フレームと、該旋回フレーム上に設けられたキャブベッドと、該キャブベッドの上側に設けられた前記キャブと、前記キャブベッド内に設けられた前記空調装置とにより構成し、前記戻り循環路は、前記キャブの床板を介して前記キャブベッド内に配設する構成としたことにある。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、直射日光によるキャブ内(運転室)の温度上昇を抑えオペレータの運転環境を快適な状態に保持することができる。さらに、キャブ内へのダストの浸入を抑制することもできる。
【0016】
即ち、オペレータの頭上を覆って設けられた天井循環路と該天井循環路の下流側に接続された側板循環路とを内気が通過するときに、該内気が直射日光により熱せられた天井板と側板との両方を冷却することができる。これにより、従来技術に比べ、直射日光によるキャブ内の温度上昇を十分に抑え、オペレータの運転環境を快適な状態に保持することができる。
【0017】
しかも、天井循環路と側板循環路とを通過した内気は、戻り循環路を通じて空調装置に戻されるため、キャブ内の圧力が外気に逃げるのを抑制することができる。これにより、キャブ内の圧力を安定して外気より高く(加圧)することができ、キャブ内に砂、粉塵等のダストが浸入することを十分に抑制することができる。
【0018】
請求項2の発明によれば、天井循環路と側板循環路に加えて他の側板循環路を設ける構成としているので、側板循環路を通過する内気と他の側板循環路を通過する内気との2系統の内気により側板を冷却することができる。これにより、直射日光によるキャブ内の温度上昇をより一層抑えることができる。
【0019】
請求項3の発明によれば、側板のうち運転席よりも後側の部位に側板循環路を設ける構成としているので、該側板循環路を通過する内気により、運転席に着座するオペレータの背面側を快適な温度状態に安定して保持することができる。
【0020】
請求項4の発明によれば、キャブベッドを介して高い位置に支持されるキャブが直射日光により熱せられても、天井循環路と側板循環路とを通過する内気により天井板と側板とを安定して冷却することができる。これにより、直射日光を受け易くキャブ内の温度が上昇し易い傾向となるハイキャブ型の建設機械であっても、天井循環路と側板循環路とを通過する内気によりキャブ内を快適な温度状態に安定して保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態による大型の油圧ショベルを示す正面図である。
【図2】キャブ、キャブベッド、空調装置等を示す縦断面図である。
【図3】キャブ等を図2中の矢示III−III方向から拡大してみた横断面図である。
【図4】天井板、左,右の側面板、前面板、天井循環路等を分離した状態で示すキャブの分解斜視図である。
【図5】キャブの内部を示す図4中の(V)部の拡大斜視図である。
【図6】天井内側カバーを取付けた状態で示す図5と同様位置の拡大斜視図である。
【図7】空調装置、供給路、天井循環路、側面循環路、戻り循環路等を示す構成図である。
【図8】本発明の変形例によるキャブの内部を示す図5と同様の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る建設機械の実施の形態を、油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、図1ないし図7を参照しつつ詳細に説明する。
【0023】
図中、1は建設機械の代表例としての油圧ショベルで、本実施の形態の油圧ショベル1は、例えば100〜800トン程度の重量を有する大型な油圧ショベルとして形成されている。この油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3とにより車体が構成されている。そして、車体を構成する上部旋回体3の前部側には、作業装置4が俯仰動可能に設けられ、この作業装置4によって土砂等の掘削作業を行うものである。
【0024】
上部旋回体3は、その下部側に位置して複数の鋼材、鋼板等により支持構造体として形成された旋回フレーム(旋回体ベッド)5と、該旋回フレーム5の後端部に取付けられたカウンタウエイト6と、該カウンタウエイト6の前側に配置され、旋回フレーム5に搭載されたエンジン(図示せず)等の機器を覆う建屋カバー7と、後述のキャブ装置11とにより大略構成されている。
【0025】
11は旋回フレーム5の前部左側に搭載されたハイキャブ型のキャブ装置で、該キャブ装置11は、後述のキャブベッド12、キャブ13、運転席18、空調装置22、供給路23,24,25、循環路29等を備えて構成されている。
【0026】
12は旋回フレーム5に設けられたキャブベッドで、該キャブベッド12は、キャブ装置11の下部側を構成するものである。そして、キャブベッド12は、キャブ13を地上から離れた高い位置に支持し、キャブ13内に搭乗したオペレータが高い位置から周囲を見渡せる状態を保持することにより、オペレータの視界を確保するものである。
【0027】
ここで、キャブベッド12は、例えば複数の鋼板等を溶接することにより略箱形状(四角形状)の中空構造体として形成されている。具体的には、キャブベッド12は、旋回フレーム5の前部左側に取付けられる底板12Aと、該底板12Aを取囲む位置で底板12Aの周縁に立設され、キャブベッド12の前面部、後面部、左側面部、右側面部を形成する前板12B、後板12C、左側板12D、右側板12Eと、後述のキャブ13が搭載される天板12Fとにより構成されている。
【0028】
そして、キャブベッド12内には、これらの前板12B、後板12C、左,右の側板12D,12Eおよび天板12Fによって取囲まれた空間12Gが画成され、該空間12G(キャブベッド12内)には、後述の空調装置22が設けられている。
【0029】
13はキャブベッド12の上側に設けられ上部旋回体3の一部を構成するキャブで、該キャブ13は、オペレータが搭乗する運転室13Aを画成するものである。ここで、キャブ13は、例えば複数の鋼板等を溶接することにより略箱形状(四角形状)の中空構造体として形成されている。具体的には、キャブ13は、後述する床板14と天井板16との間を側板17で取囲むことにより形成されている。
【0030】
14はキャブ13の床面部(床面)を形成する床板で、該床板14は、キャブベッド12の天板12Fの上側に配設され、該天板12Fに例えば防振マウント15等を介して支持されている。これにより、キャブ13は、キャブベッド12に防振マウント15等を介して搭載される構成となっている。
【0031】
ここで、床板14は、鋼板等の板材により略四角形状に形成され、該床板14の四隅には、後述の天井板16を下側から支持する4本の支柱14Aがそれぞれ立設されている。また、床板14の4箇所位置には、上,下方向に貫通する通風孔14B,14C,14D,14Eが設けられている。具体的には、床板14の左端部の前,後方向略中央部位には、後述の空調装置22からキャブ13内(運転室13A)へ向かう調和空気が通過する通風孔14Bと、キャブ13内から空調装置22へ戻る内気が通過する通風孔14Cとが設けられている。また、床板14の右端部の前,後方向略中央部位と後端部の左,右方向略中央部位とには、空調装置22からキャブ13内へ向かう調和空気が通過する通風孔14Dと通風孔14Eとがそれぞれ設けられている。
【0032】
16はキャブ13の屋根部(天面部)を形成する天井板で、該天井板16は、鋼板等の金属製の板材により造られ、後述する運転席18の上方を覆うものである。ここで、天井板16の下側には、後述する天井循環路30が設けられている。具体的には、キャブ13の屋根部(天面部)は、天井板16と後述の天井内側カバー31とが上,下方向に対向して設けられた二重構造(二重天井構造)として形成され、その内部(天井板16と天井内側カバー31との間に形成される隙間)は、内気が通過する天井循環路30となっている。
【0033】
17は床板14と天井板16との間を取囲むように設けられた側板で、該側板17は、前側に配置される前面板17Aと、該前面板17Aと対面して後側に配置された後面板17Bと、前面板17Aと後面板17Bの左端部間を連結する左側面板17Cと、該左側面板17Cと対面し前面板17Aと後面板17Bの右端部間を連結する右側面板17Dとにより構成されている。そして、これら前面板17A、後面板17B、左側面板17C、右側面板17Dにより、キャブ13の前面部、後面部、左側面部、右側面部を形成している。
【0034】
前面板17Aには、略四角形状の前窓17Eが設けられ、後述の運転席18に着席したオペレータは、前窓17Eを通じて作業装置4等を見通すことができ、キャブ13の前方視界を確保する構成となっている。後面板17Bは、左,右方向略中央部が前,後方向に延びるように折曲がった段付き板状に形成され、後面板17Bの右側に設けられた開口17B1には、オペレータがキャブ13内(運転室13A)に出入りするために開,閉されるドア17F(図3参照)が取付けられている。
【0035】
左側面板17Cには、前側左窓17Gと後側左窓17Hとが設けられ、これら各左窓17G,17Hによってキャブ13の左側方の視界を確保する構成となっている。また、右側面板17Dには、上側右窓17Jと下側右窓17Kとが設けられ、これら各右窓17J,17Kによってキャブ13の右側方の視界を確保する構成となっている。
【0036】
そして、キャブ13内には、床板14上に位置してオペレータが着座する運転席18、下部走行体2を走行させるための走行レバー・ペダル19、作業装置4等を操作するための操作レバー20、運転席18に着座したオペレータとは別のオペレータ等が着座する補助席21(図3参照)等が設けられている。
【0037】
22はキャブベッド12内の空間12Gに設けられた空調装置で、該空調装置22は、オペレータにとって快適な冷風ないしは温風の調和空気を発生し、この調和空気をキャブ13内に供給することにより、キャブ13内(運転室13A)の空調を行うものである。ここで、空調装置22は、図7に示すように、各吹出口26,27,28にそれぞれ個別に接続された例えば3つの空調系統によって構成されている。これらの空調系統は、コンプレッサ22A、凝縮器22B、レシーバタンク22C、膨張弁22D、蒸発器22E、ブロアファン22F、空調ケース22G、冷媒配管22H等によってそれぞれ構成されている。
【0038】
この場合、コンプレッサ22Aは、油圧モータ22J(図2参照)と共にキャブベッド12の底板12A上に取付けられ、油圧モータ22Jにより駆動されて冷媒を圧縮するものである。また、凝縮器22Bは圧縮された冷媒を液化し、レシーバタンク22Cは液化された冷媒を収容する。また、膨張弁22Dは、レシーバタンク22Cから流出する冷媒の圧力を下げ、蒸発器22Eは、冷媒が蒸発するときに周囲の空気を冷却する。そして、ブロアファン22Fは、冷却された空気をキャブ13側に送風する構成となっている。
【0039】
また、各空調系統の空調ケース22Gは、例えば蒸発器22E、ブロアファン22F等の機器を収容し、キャブベッド12内で上,下方向に重ねて配置されている。そして、個々の空調ケース22Gの吸込側には、例えばフィルタエレメント(図示せず)等が内蔵されたフィルタボックス22Kが接続ダクト22Lを介して接続され、個々の空調ケース22Gの吹出側には後述の供給路23,24,25が接続されている。
【0040】
次に、空調装置22で発生した調和空気をキャブ13内に供給する供給路について説明する。
【0041】
23,24,25は空調装置22とキャブ13の運転室13Aとの間を接続する3本の供給路で、該各供給路23,24,25は、空調装置22で発生した調和空気をキャブ13内(運転室13A)に供給するものである。これら各供給路23,24,25は、空調装置22と床板14の各通風孔14B,14D,14Eとの間に配設されキャブベッド12内を上,下方向に延びるホース23A,24A,25Aと、上流側が床板14の通風孔14B,14D,14Eに接続されると共に下流側に後述する吹出口26,27,28が開口して設けられる吹出ボックス23B,24B,25Bとにより形成されている。
【0042】
ここで、各供給路23,24,25の上流側を形成するホース23A,24A,25Aは、例えば可撓性を有するホース、より具体的には、ゴムや合成樹脂、金属等により造られたホース、一部ないし全体が蛇腹状のホース等を用いることができる。また、各供給路23,24,25の下流側を形成しキャブ13内に配設される吹出ボックス23B,24B,25Bは、金属製、合成樹脂製等の中空管状のダクト(管路)、ボックス(箱体)等を用いることができる。また、吹出ボックス23B,24B,25Bは、例えばキャブ13の側板17の内側(室内側)に隙間をもって対向するように内張りの如き側板カバーを設け(側板17を二重構造とし)、その内部(側板17と側板カバーとの間の隙間)を空気が通過する流通路(通風路)として形成したものを用いることもできる。
【0043】
ここで、運転席18の左側に位置する吹出ボックス23Bは、全体が略逆U字形に形成されている。即ち、吹出ボックス23Bは、床板14の通風孔14Bからキャブ13の左側面板17Cの内側(室内側)を該左側面板17Cに沿って上方に立上がり、該左側面板17Cの前側左窓17Gの下側となる部位を左側面板17Cに沿って前,後方向に延び、さらに、前端側から床板14の上面に向けて左側面板17Cに沿って下方に延びるように形成されている。そして、図5に矢印Aで示すように、空調装置22からの調和空気は、吹出ボックス23B内を左側面板17Cに沿って流通し、後述の吹出口26からキャブ13内の運転席18の周囲に向けて吹出される。
【0044】
なお、吹出ボックス23Bが略逆U字状に形成されている理由は、床板14の左端側で通風孔14Bの前側となる部位に設けられるキャブマウント(図示せず)を避けるためである。この場合、吹出ボックス23Bは、左側面板17Cのうち前側左窓17Gの下側でキャブマウントを除く部位のほぼ全体を覆うように構成され、左側面板17Cの当該部位を、吹出ボックス23B内を通過する調和空気により冷却ないし暖めることができる。
【0045】
運転席18の右側に位置する吹出ボックス24Bは、全体が略逆L字形に形成されている。即ち、吹出ボックス24Bは、床板14の通風孔14Dからキャブ13の右側面板17Dの内側を該右側面板17Dに沿って上方に立上がり、該右側面板17Dの上側右窓17Jと下側右窓17Kとの間を右側面板17Dに沿って前,後方向に延びるように形成されている。そして、図5に矢印Bで示すように、空調装置22からの調和空気は、吹出ボックス24B内を右側面板17Dに沿って流通し、後述の吹出口27からキャブ13内の運転席18の周囲に向けて吹出される。この場合、吹出ボックス24Bは、右側面板17Dのうち上側右窓17Jの下側で下側右窓17Kを除く部位のほぼ全体を覆うように構成され、右側面板17Dの当該部位を、吹出ボックス24B内を通過する調和空気により冷却ないし暖めることができる。
【0046】
運転席18の後側に位置する吹出ボックス25Bは、全体が略I字状に形成されている。即ち、吹出ボックス25Bは、床板14の通風孔14Eからキャブ13の後面板17Bの内側を該後面板17Bに沿って上方に立上がり、該後面板17Bの左,右方向略中央部を該後面板17Bに沿って上,下方向に延びるように形成されている。そして、図5に矢印Cで示すように、空調装置22からの調和空気は、吹出ボックス25B内を後面板17Bに沿って流通し、後述の吹出口28からキャブ13内の運転席18の周囲に向けて吹出される。この場合、吹出ボックス25Bは、後面板17Bのうち補助席21より右側でドア17Fを除く部位のほぼ全体を覆うように構成され、後面板17Bの当該部位を、吹出ボックス25B内を通過する調和空気により冷却ないし暖めることができる。
【0047】
26,27,28は各吹出ボックス23B,24B,25Bにそれぞれ設けられた吹出口で、これらの吹出口26,27,28は、運転席18の左側、右側、後側に配置されている。そして、吹出口26,27,28は、空調装置22で発生した調和空気をキャブ13の運転室13A(運転席18の周囲)に吹出させる。
【0048】
次に、吹出口26,27,28から吹出された調和空気を内気として空調装置22に戻す循環路について説明する。
【0049】
29は吹出口26,27,28から吹出された調和空気を内気として空調装置22に戻す循環路を示している。この循環路29は、空調装置22とキャブ13との間で空気を循環させるためのもので、該循環路29は、後述の天井循環路30と、第1の側板循環路32と、第2の側板循環路33と、床板循環路34と、戻り循環路35とにより大略構成されている。
【0050】
30は運転席18に着座するオペレータの頭上を覆うように設けられた天井循環路で、該天井循環路30は、キャブ13を形成する天井板16の下側に位置している。そして、天井循環路30は、吹出口26,27,28から吹出された調和空気が内気として天井板16に沿って循環するものである。
【0051】
この為に、天井板16の下側には、該天井板16と上,下方向に隙間を介して対向するように内張りの如き天井内側カバー31が設けられている。そして、これら天井板16と天井内側カバー31との間に形成される隙間を、内気が通過する天井循環路30として形成している。
【0052】
ここで、天井内側カバー31は、天井板16と平行に設けられ該天井板16と略同形状の天井パネル31Aと、該天井パネル31Aの上面側に位置して前側に配置され左,右方向に延びる前枠31Bと、同じく後側に配置され左,右方向に延びる後枠31Cと、左側に配置され前,後方向に延びる左枠31Dと、右側に配置され前,後方向に延びる右枠31Eとにより大略構成されている。そして、前,後,左,右の枠31B,31C,31D,31E内には、前,後方向に延びる2本の左,右の縦補強部材31F,31Gと、左,右方向に延びる4本の横補強部材31Hとが格子状に設けられている。
【0053】
天井パネル31Aの前部側のうち、左枠31Dと左縦補強部材31Fとの間、左,右の縦補強部材31F,31Gの間、右縦補強部材31Gと右枠31Dとの間の3個所位置には、吹出口26,27,28から吹出された調和空気が内気として吸込まれる吸込口31Jが設けられている。各横補強部材31Hのうち、左枠31Dと左縦補強部材31Fとの間、左,右の縦補強部材31F,31Gの間、右縦補強部材31Gと右枠31Dとの間の3個所位置には、吸込口31Jから吸込まれた内気が通過する通風孔31Kがそれぞれ設けられている。
【0054】
左,右の縦補強部材31F,31Gのうち、最も後側の横補強部材31Hよりも後側には、各横補強部材31Hの通風孔31Kを通過して天井パネル31Aの後側に流れた内気が通過する通風孔31Lが設けられている。後枠31Cのうち、左枠31Dと左縦補強部材31Fとの間には、後枠31Cを前,後に挟んで前側から後側に内気を通過させる通風孔31Mが設けられている。そして、天井パネル31Aのうち後枠31Cよりも後側となる部位には、天井循環路30から後述の第1の側板循環路32に内気を通過させる通風孔31Nが設けられている。
【0055】
天井内側カバー31は、例えば天井板16と支柱14Aとに溶接、ボルト止め等の固定手段を用いて取付けられる。天井板16の下側に天井内側カバー31が取付けられた状態で、天井板16は、その下側のほぼ全体が天井内側カバー31により覆われる。これにより、天井板16の下側に、オペレータの頭上を覆うように天井循環路30を設けることができる。
【0056】
空調装置22で発生し吹出口26,27,28から吹出された調和空気は、オペレータの周囲等を通過してから、図6に矢印Dで示すように、天井パネル31Aの各吸込口31Jから内気として吸込まれ、該内気は、天井循環路30、即ち、天井板16と天井パネル31Aとの間を、前側から後側に向けて流れる。
【0057】
このとき、内気は、例えば直射日光により熱せられた天井板16を冷却することができる。これにより、直射日光によるキャブ13の天井側の温度上昇を抑え、オペレータの運転環境(生活環境)を快適な状態に保持することができる。また、寒冷地等で油圧ショベル1を使用する場合は、天井循環路30を通過する内気により天井板16を暖める(加熱する)ことができ、キャブ13の天井側の温度低下を抑えることもできる。このため、この面からも、オペレータの運転環境を快適な状態に保持することができる。
【0058】
32は天井循環路30の下流側に接続された側板循環路としての第1の側板循環路で、該第1の側板循環路32は、キャブ13を形成する側板17、より具体的には、左側面板17Cと後面板17Bとの内側(角隅)に位置している。そして、第1の側板循環路32は、天井循環路30を通過した内気が左側面板17Cと後面板17Bとに沿って循環するものである。
【0059】
ここで、第1の側板循環路32は、全体が略逆L字状(略J字状)の接続ボックス32Aにより形成されている。この接続ボックス32Aは、例えば金属製、合成樹脂製等の中空管状のダクト(管路)、ボックス(箱体)等を用いることができる。また、接続ボックス32Aは、例えば側板17(左側面板17Cと後面板17B)の内側(室内側)に隙間をもって対向するように内張りの如き側板カバーを設け(側板17を二重構造とし)、その内部(側板17と側板カバーとの間の隙間)を空気が通過する流通路(通風路)として形成したものを用いることもできる。
【0060】
第1の側板循環路32を形成する接続ボックス32Aは、その上流側32Bが、上,下方向に延びるように配設され、下流側32Cが、前,後方向に延びるように配設されている。これにより、接続ボックス32Aは、左側面板17Cのうち運転席18よりも後側(前側左窓17Gよりも後側)で後側左窓17H以外の部位を、ほぼ全体にわたって覆うと共に、後面板17Bのうち補助席21よりも左側となる部位を、ほぼ全体にわたって覆っている。
【0061】
より具体的に説明すると、接続ボックス32Aの上流側32Bは、天井パネル31Aの通風孔31Nから、左側面板17Cと後面板17Bとの内側(角隅)、即ち、左側面板17Cのうち後側左窓17Hの後側となる部位で、かつ、後面板17Bのうち補助席21の左側となる部位を、上,下方向に延びるように配設されている。一方、接続ボックス32Aの下流側32Cは、左側面板17Cのうち後側左窓17Hの下側となる部位を、左,右方向に延びるように配設されている。そして、接続ボックス32Aの下流端は、床板14の通風孔14Cに接続されている。
【0062】
第1の側板循環路32を形成する接続ボックス32Aは、その内部を内気が図5および図6に矢印Eで示すように流れる。即ち、天井循環路30を通過し天井パネル31Aの通風孔31Nから接続ボックス32A内に流入した内気は、該接続ボックス32Aの上流側32Bを上側から下側に向けて流れ、その下流側32Cを後側から前側に流れる。
【0063】
このとき、内気は、例えば直射日光により熱せられた左側面板17Cと後面板17Bとを冷却することができる。また、寒冷地等で油圧ショベル1を使用する場合は、左側面板17Cと後面板17Bとを内気により暖めることができる。これにより、直射日光によるキャブ13の左側面側ないし後面側の温度上昇ないし寒冷地等で使用する場合の温度低下を抑えることができる。
【0064】
この場合、第1の側板循環路32を形成する接続ボックス32Aは、左側面板17Cのうち運転席18よりも後側の部位に設けられている。このため、第1の側板循環路32を通過する内気により、運転席18に着座するオペレータの背面側を快適な温度状態に安定して保持することができる。
【0065】
また、左側面板17Cは、前側左窓17Gと後側左窓17H以外の部位を、接続ボックス32Aと吹出ボックス23Bとにより覆う構成となっている。このため、接続ボックス32A内(第1の側板循環路32)を通過する内気と吹出ボックス23B内(供給路23)を通過する調和空気とにより、左側面板17Cのほぼ全体、即ち、左側面板17Cのうち各左窓17G,17H以外の部位を確実に冷却ないし暖めることができる。
【0066】
また、後面板17Bは、ドア17Fと補助席21の背面側以外の部位を、接続ボックス32Aと吹出ボックス25Bとにより覆う構成となっている。このため、接続ボックス32A内(第1の側板循環路32)を通過する内気と吹出ボックス25B(供給路25)を通過する調和空気とにより、後面板17Bのほぼ全体、即ち、後面板17Bのうちドア17Fと補助席21の背面側以外の部位を確実に冷却ないし暖めることができる。
【0067】
33は第1の側板循環路32とは別に設けられた他の側板循環路としての第2の側板循環路で、該第2の側板循環路33は、キャブ13を形成する側板17、より具体的には、右側面板17Dの内側に位置している。そして、第2の側板循環路33は、吹出口26,27,28から吹出された調和空気が内気として右側面板17Dに沿って循環するものである。
【0068】
ここで、第2の側板循環路33は、全体が略I字状の吸込ボックス33Aにより形成されている。この吸込ボックス33Aは、接続ボックス32Aと同様に、例えば金属製、合成樹脂製等の中空管状のダクト(管路)、ボックス(箱体)等を用いることができる。また、吸込ボックス33Aは、例えば側板17(右側面板17D)の内側(室内側)に隙間をもって対向するように内張りの如き側板カバーを設け(側板17を二重構造とし)、その内部(側板17と側板カバーとの間の隙間)を空気が通過する流通路(通風路)として形成したものを用いることもできる。
【0069】
第2の側板循環路33を形成する吸込ボックス33Aは、右側面板17Dのうち運転席18よりも後側となる部位を、ほぼ全体にわたって覆っている。即ち、吸込ボックス33Aは、右側面板17Dのうち上側右窓17Jの後側となる部位を、上,下方向に延びるように配設されている。そして、吸込ボックス33Aの上端(上流端)には、吹出口26,27,28から吹出された調和空気が内気として吸込まれる吸込口33Bが設けられている。
【0070】
空調装置22で発生し吹出口26,27,28から吹出された調和空気は、オペレータの周囲等を通過してから、図5に矢印Fで示すように、吸込口33Bから内気として吸込まれ、該内気は、吸込ボックス33A内(第2の側板循環路33)を上側から下側に向けて流れる。このとき、内気は、例えば直射日光により熱せられた右側面板17Dを冷却することができる。また、寒冷地等で油圧ショベル1を使用する場合は、右側面板17Dを内気により暖めることができる。これにより、直射日光によるキャブ13の右側面側の温度上昇ないし寒冷地等で使用する場合の温度低下を抑えることができる。
【0071】
この場合、第2の側板循環路33を形成する吸込ボックス33Aは、右側面板17Dのうち運転席18よりも後側の部位に設けられている。このため、第2の側板循環路33を通過する内気により、運転席18に着座するオペレータの背面側を快適な温度状態に安定して保持することができる。
【0072】
また、右側面板17Dは、上側右窓17Jと下側右窓17K以外の部位を、吸込ボックス33Aと吹出ボックス24Bとにより覆う構成となっている。このため、吸込ボックス33A内(第2の側板循環路33)を通過する内気と吹出ボックス24B内(供給路24)を通過する調和空気とにより、右側面板17Dのほぼ全体、即ち、右側面板17Dのうち各右窓17J,17K以外の部位を確実に冷却ないし暖めることができる。
【0073】
34は第2の側板循環路33の下流側に接続された床板循環路で、該床板循環路34は、キャブ13を形成する床板14の上側に位置している。そして、床板循環路34は、第2の側板循環路33を通過した内気が床板14に沿って循環するものである。
【0074】
ここで、床板循環路34は、全体が略I字状の床側接続ボックス34Aにより形成されている。この床側接続ボックス34Aも、接続ボックス32Aや吸込ボックス33A等と同様に、例えば金属製、合成樹脂製等の中空管状のダクト(管路)、ボックス(箱体)等を用いることができる。また、床側接続ボックス34Aは、例えば床板14を二重構造(二重床)とし、その内部を空気が通過する流通路(通風路)として形成したものを用いることもできる。
【0075】
床板循環路34を形成する床側接続ボックス34Aは、吸込ボックス33Aの下端(第2の側板循環路33の下流端)との接続部から、床板14のうち運転席18の後側でドア17Fよりも前側となる部位を、左,右方向に延びるように配設されている。そして、床側接続ボックス34Aの左端(床板循環路34の下流端)は、接続ボックス32Aの下流側32Cの前端(第1の側板循環路32の下流端)を介して床板14の通風孔14Cに接続されている。これにより、図5および図6に矢印Fで示すように、吸込ボックス33A内(第2の側板循環路33)を通過し床側接続ボックス34A内(床板循環路34)に流入した内気は、床側接続ボックス34A内を右側から左側に流れる。
【0076】
35は第1の側板循環路32の下流側と空調装置22との間を接続して設けられた戻り循環路で、該戻り循環路35は、天井循環路30、第1の側板循環路32、第2の側板循環路33、床板循環路34を通過した内気を空調装置22に戻すものである。ここで、戻り循環路35は、ホース35Aにより形成されている。このホース35Aは、例えば可撓性を有するホース、より具体的には、ゴムや合成樹脂、金属等により造られたホース、一部ないし全体が蛇腹状のホース等を用いることができる。
【0077】
戻り循環路35を形成するホース35Aの上流端は、床板14の通風孔14Cに接続され、下流端は、空調装置22のフィルタボックス22Kに接続されている。そして、ホース35Aは、キャブベッド12内を上,下方向に延びるように床板14の通風孔14Cと空調装置22との間に配設されている。
【0078】
36は例えばキャブベッド12等の部位に設けられた外気吸込口で、該外気吸込口36は、図7に示すように、空調装置22が外気導入運転を行うときに外気をフィルタボックス22K内に吸込むものである。
【0079】
本実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
【0080】
まず、油圧ショベル1の運転時には、オペレータがキャブ13に搭乗して運転席18に着座し、周囲の走行レバー・ペダル19、操作レバー20等を操作することにより、車体を走行、旋回させたり、作業装置4を作動させて土砂等の掘削作業を行うことができる。
【0081】
また、オペレータが空調装置22のスイッチを入れたときには、油圧モータ22Jによりコンプレッサ22Aが駆動され、空調装置22が作動する。これにより、蒸発器22Eによって冷やされた冷風と、ヒータコア(図示せず)等によって温められた温風とがオペレータの空調操作に応じて混合され、適切な温度の調和空気が発生する。そして、この調和空気は、ブロアファン22Fによって送風されることにより、供給路23,24,25を通って吹出口26,27,28からキャブ13内に吹出すので、運転席18に着座したオペレータの周囲を快適な温度に保持することができる。
【0082】
さらに、空調装置22で発生し吹出口26,27,28から吹出された調和空気は、オペレータの周囲等を通過してから、図5および図6に矢印D,Eで示すように、天井パネル31Aの各吸込口31Jから内気として吸込まれ、該内気は、天井循環路30、第1の側板循環路32、戻り循環路35を流れ空調装置22に戻される。また、これと共に、図5および図6に矢印Fで示すように、吸込ボックス33Aの吸込口33Bから内気として吸込まれ、該内気は、第2の側板循環路33、床板循環路34、戻り循環路35を流れ空調装置22に戻される。
【0083】
このとき、内気は、例えば直射日光により熱せられた天井板16、側板17(後面板17B、左,右の側面板17C,17D)を冷却することができる。また、寒冷地等で油圧ショベル1を使用する場合は、天井板16、側板17(後面板17B、左,右の側面板17C,17D)を内気により暖める(加熱する)ことができる。これにより、直射日光によるキャブ13の温度上昇ないし寒冷地等で使用する場合の温度低下を抑えることができる。
【0084】
また、このようにキャブ13と空調装置22との間で内気を循環させているときには、キャブ13内の圧力を外気に逃げにくくできる。これにより、キャブ13内の圧力を外気より高く(加圧)して、キャブ13内に砂、粉塵等のダストが浸入すること抑制することができる。
【0085】
本実施の形態によれば、直射日光によるキャブ13内の温度上昇ないし寒冷地等で使用する場合のキャブ13内の温度低下を抑え、オペレータの運転環境を快適な状態に保持することができる。さらに、キャブ13内へのダストの浸入を抑制することもできる。
【0086】
即ち、オペレータの頭上を覆って設けられた天井循環路30と側板17(後面板17B、左,右の側面板17C,17D)の内側に設けられた第1,第2の側板循環路32,33とを内気が流れるときに、該内気が直射日光により熱せられた天井板16と側板17(後面板17B、左,右の側面板17C,17D)との両方を冷却することができる。また、寒冷地等で油圧ショベル1を使用する場合は、天井板16と側板17(後面板17B、左,右の側面板17C,17D)との両方を内気により暖めることができる。これにより、従来技術に比べ、直射日光によるキャブ13内の温度上昇と寒冷地等で使用する場合のキャブ13内の温度低下を十分に抑え、オペレータの運転環境を快適な状態に保持することができる。
【0087】
しかも、天井循環路30と第1,第2の側板循環路32,33とを流れる内気は、戻り循環路35を通じて空調装置22に戻されるため、キャブ13内の圧力が外気に逃げるのを抑制することができる。これにより、キャブ13内の圧力を安定して外気より高く(加圧)することができ、キャブ13内に砂、粉塵等のダストが浸入することを十分に抑制することができる。
【0088】
本実施の形態によれば、天井循環路30と第1の側板循環路32に加えて第2の側板循環路33を設ける構成としているので、第1の側板循環路32と第2の側板循環路33との両方(2系統)の側板循環路32,33を流れる内気により側板17(後面板17B、左,右の側面板17C,17D)を冷却することができる。このため、直射日光によるキャブ13内の温度上昇と寒冷地等で使用する場合のキャブ13内の温度低下をより一層確実に抑え、オペレータの運転環境を快適な状態により安定して保持することができる。
【0089】
しかも、本実施の形態によれば、天井板16の下側は、該天井板16と天井内側カバー31とにより形成される天井循環路30により全体を覆う構成となっている。また、左側面板17Cの内側は、前側左窓17Gと後側左窓17Hを除き、第1の側板循環路32を形成する接続ボックス32Aと供給路23を形成する吹出ボックス23Bとにより全体を覆う構成となっている。また、右側面板17Dの内側は、上側右窓17Jと下側右窓17Kを除き、第2の側板循環路33を形成する吸込ボックス33Aと供給路24を形成する吹出ボックス24Bとにより全体を覆う構成となっている。さらに、後面板17Bの内側(前側)は、ドア17Fと補助席21の背面側を除き、第1の側板循環路32を形成する接続ボックス32Aと供給路25を形成する吹出ボックス25Bとにより全体を覆う構成となっている。このため、天井循環路30、第1の側板循環路32、第2の側板循環路33を通過する内気と供給路23,24,25を通過する調和空気とにより、天井板16、左,右の側面板17C,17D、後面板17Bを全体にわたって安定して冷却ないし暖めることができる。
【0090】
本実施の形態によれば、側板17のうち運転席18よりも後側の部位、即ち、左,右の側面板17C,17Dと後面板17Bに第1,第2の側板循環路32,33を設ける構成としている。このため、第1,第2の側板循環路32,33を通過する内気により、運転席18に着座するオペレータの背面側を快適な温度状態に安定して保持することができる。
【0091】
本実施の形態によれば、キャブベッド12を介してキャブ13を高い位置に支持するハイキャブ型の油圧ショベル1としているが、直射日光によりキャブ13が熱せられても、天井循環路30と第1,第2の側板循環路32,33とを通過する内気により天井板16と側板17(後面板17B、左,右の側面板17C,17D)とを安定して冷却することができる。このため、直射日光を受け易くキャブ13内の温度が上昇し易いハイキャブ型の油圧ショベル1であっても、天井循環路30と第1,第2の側板循環路32,33とを通過する内気によりキャブ13内を快適な温度状態に安定して保持することができる。
【0092】
なお、上述した実施の形態では、他の側板循環路としての第2の側板循環路33を右側面板17Dの内側に設ける構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば、図8に示す変形例のように、第2の側板循環路33に加え、他の側板循環路としての第3の側板循環路41を左側面板17Cの内側に設ける構成としてもよい。
【0093】
この場合、第3の側板循環路41は、第2の側板循環路33と同様に、全体が略I字状の吸込ボックス41Aにより形成することができる。具体的には、吸込ボックス41Aは、例えば金属製、合成樹脂製等の中空管状のダクト(管路)、ボックス(箱体)等を用いることができる。また、吸込ボックス41Aは、例えば側板17(左側面板17C)の内側(室内側)に隙間をもって対向するように内張りの如き側板カバーを設け(側板17を二重構造とし)、その内部(側板17と側板カバーとの間の隙間)を空気が通過する流通路(通風路)として形成したものを用いることもできる。
【0094】
そして、吸込ボックス41Aの上流側には、吹出口26,27,28から吹出された調和空気が内気として吸込まれる吸込口41Bを設け、吸込ボックス41Aの下流側は、接続ボックス32Aの下流側32Cに接続する。これにより、吸込口41Bから吸込まれた内気は、図8に矢印Gで示すように、第3の側板循環路41を上側から下側に向けて流れ、第1の側板循環路32等を通過する内気と合流し、戻り循環路35を介して空調装置22に戻る。
【0095】
上述した変形例では、他の側板循環路としての第2の側板循環路33と第3の側板循環路41を右側面板17Dの内側と左側面板17Cの内側との両方に設ける構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば他の側板循環路を右側面板の内側にのみ設ける構成としてもよい。また、他の側板循環路を後面板の内側(前側)や前面板の内側(後側)に設ける構成としてもよい。即ち、他の側板循環路は、キャブの側面を形成する前面板と後面板と左,右の側面板とのうちの少なくとも何れかに設けることができる。
【0096】
上述した実施の形態では、キャブ13の天井を天井板16と天井内側カバー31とにより二重構造(二重天井)に形成し、これら天井板16と天井内側カバー31との間に形成される隙間を、内気が通過する天井循環路30とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば、天井板の下側に金属製、合成樹脂製等の中空管状のダクト(管路)、ボックス(箱体)等を設けることにより天井循環路を形成してもよい。
【0097】
即ち、キャブ内に設ける天井循環路、側板循環路、他の側板循環路、床板循環路、供給路は、例えば中空管状のダクト、ボックス等を用いて形成することもできるし、天井板ないし側板の内側(室内側)に隙間をもって対向するように内張りの如き天井内側カバーないし側板カバーを設け(天井板ないし側板を二重構造とし)、その内部(天井板と天井内側カバーとの間の隙間ないし側板と側板カバーとの間の隙間)を空気が通過する流通路(通風路)とすることにより形成することができる。
【0098】
上述した実施の形態では、大型なハイキャブ型の油圧ショベル1を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではなく、例えば旋回フレームに(キャブベッドを介することなく直接)キャブを設けるハイキャブ型でない油圧ショベルに適用してもよい。
【0099】
さらに、上述した実施の形態では、建設機械としてクローラ式の下部走行体2を備えた油圧ショベル1を例に挙げて説明している。しかし、本発明はこれに限らず、例えばホイール式の下部走行体を備えた油圧ショベルや、油圧クレーン等の他の建設機械にも適用することができる。
【符号の説明】
【0100】
1 油圧ショベル(建設機械)
2 下部走行体(車体)
3 上部旋回体(車体)
4 作業装置
5 旋回フレーム
12 キャブベッド
13 キャブ
13A 運転室
16 天井板
17 側板
17C 左側面板
17D 右側面板
18 運転席
22 空調装置
23,24,25 供給路
26,27,28 吹出口
30 天井循環路
32 第1の側板循環路(側板循環路)
33 第2の側板循環路(他の側板循環路)
35 戻り循環路
41 第3の側板循環路(他の側板循環路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業装置が設けられる車体と、該車体の一部を構成し床板と天井板との間を側板で取囲むことにより運転室を画成するキャブと、該キャブ内に設けられオペレータが着座する運転席と、オペレータにとって快適な調和空気を発生する空調装置と、該空調装置と前記キャブの運転室との間を接続し前記空調装置で発生した調和空気を前記運転室に供給する供給路と、該供給路の下流側に設けられ前記調和空気を前記運転室に吹出す吹出口とを備えてなる建設機械において、
前記キャブを形成する天井板の下側に位置して前記オペレータの頭上を覆って設けられ前記吹出口から吹出された調和空気が内気として前記天井板に沿って循環する天井循環路と、
前記キャブを形成する側板の内側に位置して前記天井循環路の下流側に接続され該天井循環路を通過した内気が前記側板に沿って循環する側板循環路と、
該側板循環路の下流側と前記空調装置との間を接続して設けられ前記側板循環路を通過した内気を前記空調装置に戻す戻り循環路とを備える構成としたことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記キャブを形成する側板のうち左側面板および/または右側面板の内側に位置して前記吹出口から吹出された調和空気が内気として前記側板に沿って循環する他の側板循環路を設け、
該他の側板循環路は、その下流側を前記戻り循環路の上流側に接続する構成としてなる請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記側板循環路は、前記側板のうち前記運転席よりも後側の部位に設ける構成としてなる請求項1に記載の建設機械。
【請求項4】
前記車体は、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体とにより構成し、
該上部旋回体は、支持構造体をなす旋回フレームと、該旋回フレーム上に設けられたキャブベッドと、該キャブベッドの上側に設けられた前記キャブと、前記キャブベッド内に設けられた前記空調装置とにより構成し、
前記戻り循環路は、前記キャブの床板を介して前記キャブベッド内に配設する構成としてなる請求項1,2または3に記載の建設機械。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−28987(P2013−28987A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166756(P2011−166756)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】