説明

建設車両

【課題】複数の熱交換器のレイアウトを最適化することで、冷却装置全体の熱交換効率を向上させることが可能な建設車両を提供する。
【解決手段】ホイールローダ10は、冷却風流路上に複数の熱交換器を配置した冷却装置20として、冷却風流路の最下流側の位置に略鉛直方向に沿って配置されたラジエータ22と、ラジエータ22の冷却風流路の上流側の前面下部に対して略平行になるように近接配置されたオイルクーラ23と、オイルクーラ23の冷却風流路の上流側の斜め上方であって冷却風流路の上流側から見てラジエータ22の前面上部を覆う位置に冷却風流路の上流側に向かって下方傾斜するように配置されたアフタークーラ24と、アフタークーラ24の冷却風流路の上流側の位置にアフタークーラ25に対して略平行になるように近接配置されたエアコンコンデンサ25と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイールローダ等の建設車両に搭載されており、ラジエータやオイルクーラ、アフタークーラ、エアコンコンデンサ等を含む冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ホイールローダ等の建設車両には、車体にエンジン冷却用のラジエータやオイル冷却用のオイルクーラ、吸気冷却用のアフタークーラ、エアコンコンデンサ等の各種熱交換器が互いに近接する位置に搭載されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、エアコンコンデンサを含む複数の冷却装置(ラジエータ、アフタークーラおよびオイルクーラ)を車体後部に搭載した油圧ショベルにおいて、エアコンコンデンサ等の熱交換器を他の熱交換器に対して回動可能に設け、冷却姿勢と開放姿勢とを切り換えることで、メンテナンス性を向上させた構成が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の建設車両では、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記公報に開示された構成では、4つの熱交換器のうち、比較的熱量の大きいオイルクーラが冷却風の流路における最下流側に配置されている。このため、十分に熱交換することができずに高温になったオイルクーラによって他の熱交換器に対して熱が伝わってしまい、冷却装置全体の効率を低下させるおそれがある。
【0005】
本発明の課題は、冷却装置全体の熱交換効率を向上させることが可能な建設車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係る建設車両は、車体フレームと、動力室と、冷却室と、冷却装置と、冷却ファンと、を備えている。動力室は、車体フレーム上に設置されたエンジンを収容している。冷却室は、動力室の後方に配置されている。冷却装置は、冷却室内に設けられており、複数の熱交換器を含む。冷却ファンは、冷却室内に設けられており、冷却室の後方から外気を吸気して冷却装置側へ導く冷却風流路を形成する。そして、冷却装置は、ラジエータと、オイルクーラと、アフタークーラと、エアコンコンデンサと、を備えている。ラジエータは、建設車両の車帯フレーム上における冷却風流路の最下流側の位置に略鉛直方向に沿って配置されている。オイルクーラは、ラジエータの冷却風流路の上流側の前面下部に対して略平行になるように近接配置されている。アフタークーラは、オイルクーラの冷却風流路の上流側の斜め上方であって、冷却風流路の上流側から見てラジエータの前面上部を覆う位置に、冷却風流路の上流側に向かって下方傾斜するように配置されている。エアコンコンデンサは、アフタークーラの冷却風流路の上流側の位置に、アフタークーラに対して略平行になるように近接配置されている。
【0007】
ここでは、冷却風の流路上において複数の熱交換器(ラジエータ、オイルクーラ、アフタークーラ、エアコンコンデンサ)をFTF(Face to Face)で直列的に配置した冷却装置において、冷却風の流路における上流側から見て、建設車両の吸気口に対する上部最前面にエアコンコンデンサ、下部最前面にオイルクーラがそれぞれ配置されている。そして、エアコンコンデンサの下流側にアフタークーラ、オイルクーラの下流側にラジエータの下部がそれぞれ近接配置されている。また、ラジエータおよびオイルクーラは、略鉛直方向に沿って設けられている。そして、アフタークーラおよびエアコンコンデンサは、冷却風流路の上流側に向かって下方傾斜するように斜めに設けられている。
【0008】
これにより、吸気口からみて上部に配置されたエアコンコンデンサとアフタークーラとが互いに平行に近接配置され、下部に配置されたオイルクーラとラジエータとが互いに平行に近接配置されていることで、冷却風が熱交換器を通過する際の抵抗を小さくして、冷却効率の低下を防止することができる。
【0009】
また、交換熱量の大きいオイルクーラや、機能が居住性に直接影響するエアコンコンデンサに対して、吸気口から入ってきた冷却風を直接当てることができるため、従来よりもオイルクーラやエアコンコンデンサにおける冷却効率を向上させて、他の熱交換器への影響を抑制することができる。
【0010】
さらに、オイル漏れの可能性があるオイルクーラをラジエータの下面に沿って配置しているため、オイル漏れ発生時に他の熱交換器等への影響を最小限とすることができる。
【0011】
この結果、各熱交換器のレイアウトを最適化することで、良好なメンテナンス性を確保しつつ、各熱交換器における熱交換効率を向上させて、冷却装置全体として効率を向上させることができる。
【0012】
第2の発明に係る建設車両は、第1の発明に係る建設車両であって、アフタークーラの下端部とオイルクーラの上端部との間には、所定の隙間が形成されている。
【0013】
ここでは、吸気口側から見てラジエータの上部を覆う位置に設けられたアフタークーラの下端部と、ラジエータの下部を覆う位置に設けられたオイルクーラの上端部との間には、所定の隙間を設けている。
【0014】
これにより、ラジエータの前面上部を通過する冷却風は、エアコンコンデンサおよびアフタークーラを通過した冷却風に加えて、上記隙間から侵入した冷却風も加わってラジエータの前面上部に当てることができる。
【0015】
この結果、ラジエータの前面上部にエアコンコンデンサおよびアフタークーラを二重に配置した場合でも、ラジエータの熱交換効率の低下を回避することができる。
【0016】
第3の発明に係る建設車両は、第1または第2の発明に係る建設車両であって、オイルクーラをラジエータに対して回動させる第1開閉機構と、エアコンコンデンサをアフタークーラに対して回動させる第2開閉機構と、をさらに備えている。
【0017】
ここでは、吸気口側から見て下流側に配置されたアフタークーラおよびラジエータのメンテナンス性を考慮して、その前面側に配置されたオイルクーラおよびエアコンコンデンサを回動させてアフタークーラおよびラジエータの前面を開放する第1・第2開閉機構を設けている。
【0018】
これにより、冷却装置のメンテナンスや清掃を行う際には、吸気口側前面に配置されたオイルクーラ、エアコンコンデンサについてはそのままの状態でメンテナンスを行う。そして、その奥に配置されたラジエータ、アフタークーラについては、オイルクーラおよびエアコンコンデンサをそれぞれ回動させて前面を開放した状態でメンテナンスや清掃等を行うことができる。
【0019】
この結果、複数の熱交換器をFTFで配置した場合でも、メンテナンス性が低下してしまうことを回避することができる。
【0020】
第4の発明に係る建設車両は、第3の発明に係る建設車両であって、ラジエータに対してオイルクーラを所定の開度まで開いた状態でオイルクーラの回動を規制する第1ロック機構と、アフタークーラに対してエアコンコンデンサを所定の開度まで開いた状態でエアコンコンデンサの回動を規制する第2ロック機構と、をさらに備えている。
【0021】
ここでは、上述した第1・第2開閉機構によってエアコンコンデンサおよびオイルクーラを回動させた際に、所定の開度になったらそれ以上の回動を規制する第1・第2ロック機構を設けている。
【0022】
これにより、メンテナンスを実施している際に、回動させたエアコンコンデンサおよびオイルクーラを所定の開度において保持したままで作業を行うことができるため、作業効率を向上させることができる。
【0023】
第5の発明に係る建設車両は、第3または第4の発明に係る建設車両であって、ラジエータとオイルクーラとの間であってオイルクーラの回動中心となる側とは反対側の端部に設けられた燃料クーラを、さらに備えている。
【0024】
ここでは、ラジエータに対して回動するオイルクーラの背面側における回動中心とは反対側の位置に、燃料クーラを設けている。
【0025】
これにより、エンジンに戻る前の未噴射燃料を冷却するための燃料クーラを、冷却装置全体として冷却効率に影響のない位置に設けることができる。
【0026】
第6の発明に係る建設車両は、第1から第5の発明のいずれか1つに係る建設車両であって、エアコンコンデンサおよびアフタークーラは、建設車両の後部に設けられた吸気口が形成されたグリルに対して略平行に設けられている。
【0027】
ここでは、吸気口側から見てラジエータの前面上部を覆うように設けられたエアコンコンデンサおよびアフタークーラを、吸気口が形成されているグリルに略平行になるように設置している。
【0028】
これにより、グリルを通過した冷却風を、抵抗を受けないままスムーズにエアコンコンデンサへ当てることができるため、エアコンコンデンサおよびその背面側に配置されたアフタークーラにおける冷却効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る建設車両によれば、各熱交換器のレイアウトを最適化することで、良好なメンテナンス性を確保しつつ、各熱交換器における熱交換効率を向上させて、冷却装置全体として効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態に係るホイールローダの構成を示す側面図。
【図2】図1のホイールローダの車体部後端に設けられたグリルを開けた状態を示す斜視図。
【図3】図1のホイールローダの車体部内に搭載された冷却装置の構成を示す背面斜視図。
【図4】図3の冷却装置の前面斜視図。
【図5】(a)は図3の冷却装置の概略的なレイアウトを示す平断面図。(b)はその側断面図。
【図6】(a)は、図3の冷却装置に含まれるオイルクーラを30度まで開いた状態を示す側面図。(b)は、オイルクーラを最大開度まで開いた状態を示す側面図。
【図7】図3の冷却装置に含まれるオイルクーラを回動させる開閉機構の構成を示す正面図。
【図8】図3の冷却装置に含まれるオイルクーラを回動させる開閉機構の構成を示す正面図。
【図9】(a)は、図8の開閉機構のプレート部材の部分を示す部品拡大図。(b)は、図8の開閉機構の棒状部材を示す斜視図。
【図10】(a)〜(c)は、図3の冷却装置に含まれるオイルクーラを開いていく際におけるプレート部材に形成された溝部と棒状部材の端部との位置関係を示す正面図。
【図11】図3の冷却装置に含まれるエアコンコンデンサの開閉機構の構成を示す正面図。
【図12】(a)〜(h)は、図3の冷却装置に含まれるオイルクーラを閉状態から10度、20度、37度まで開いていく際の状態を示す側面図と正面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の一実施形態に係る熱交換器の開閉構造を搭載したホイールローダ(建設車両)10について、図1〜図12(h)を用いて説明すれば以下の通りである。
【0032】
[ホイールローダ10の構成]
本実施形態に係るホイールローダ10は、図1に示すように、車体部11と、車体部11の前部に装着されたリフトアーム12と、このリフトアーム12の先端に取り付けられたバケット13と、車体部11を支持しながら回転する4本のタイヤ14と、車体部11の上部に搭載されたキャブ15と、車体部11の後端に取り付けられたカウンタウェイト16と、を備えている。
【0033】
車体部11には、車体フレーム45(図5参照)上に、エンジン17(図5参照)や冷却装置等20が搭載されている。エンジン17は、動力室41に収容されている。また、冷却装置20は、動力室41の後方に設けられた冷却室42に収容されている。動力室41と冷却室42との間は、隔壁43によって仕切られている。なお、この冷却装置20の構成については、後段にて詳述する。
【0034】
リフトアーム12は、先端に取り付けられたバケット13を持ち上げるためのアーム部材であって、併設されたリフトシリンダによって駆動される。
【0035】
バケット13は、リフトアーム12の先端に取り付けられており、バケットシリンダによってダンプおよびチルトされる。
【0036】
キャブ15は、複数の鋼管と鋼板とを組み合わせて構成されるオペレータ用の運転室を形成しており、車体部11の中央部分よりもやや前方に配置されている。
【0037】
カウンタウェイト16は、バケット13で土砂等をすくって作業を行う際に車体バランスを保つことができるように、車体部11の後端において開閉可能なグリル11aの下部に設けられている。
【0038】
[ホイールローダ10の車体後部の構成]
本実施形態のホイールローダ10は、図2に示すように、車体部11の後端に設けられた開閉可能なグリル11aと、グリル11aを開けた状態で外部に露出する位置に設けられた冷却装置20と、を備えている。
【0039】
グリル11aは、車体部11の内部へ空気を取り込むための吸気口が形成されており、冷却装置20に含まれる冷却ファン21によって冷却風を車体部11内へ取り込む。
【0040】
(冷却装置20の構成)
冷却装置20は、エンジン17や作動油を冷却するための複数の熱交換器と、この熱交換器に対して冷却風を当てる空気の流れを形成する冷却ファン21(図3参照)と、を備えている。そして、冷却装置20に含まれる複数の熱交換器として、ラジエータ22、オイルクーラ23、アフタークーラ24、エアコンコンデンサ25および燃料クーラ26が車体部11の前後方向に沿って搭載されている。
【0041】
なお、以下の説明において、前面とは、グリル11aを開けた状態で外部に露出した冷却装置20の面、すなわち車体部11の後端側から見た冷却装置20の正面であって冷却風流路における上流側の面を意味しており、背面とは、その反対側の面を意味している。
【0042】
冷却ファン21は、図3に示すように、車体部11の後端から見て冷却装置20の最後部に配置されており、図示しない電動モータあるいは油圧モータによって回転駆動されることで、グリル11aから冷却風が車体部11内に取り込まれるように空気の流れを形成する。なお、冷却ファン21によって形成される冷却風は、グリル11a側から車体部11内に入って(図5中の矢印A参照)、車体部11の上方および側方から外部へ排出される(図5中矢印A’参照)。
【0043】
ラジエータ22は、エンジン17に流れる冷却水と冷却風との間で熱交換を実施させる熱交換器であって、図4に示すように、冷却ファン21の前面側(冷却風流路における上流側)を覆うように、冷却ファン21に近接配置されている。ラジエータ22は、図4に示すように、左右両端を支持フレーム22aによって支持された状態で立設されている。ラジエータ22は、図5(a)および図5(b)に示すように、他の熱交換器(オイルクーラ23、アフタークーラ24、エアコンコンデンサ25、燃料クーラ26等)に対して、冷却風流路における最も下流側に配置されている。ラジエータ22は、図5(b)に示すように、冷却ファン21とともに略鉛直方向に沿って立設されている。ラジエータ22は、冷却風流路における最も下流側に配置されているため、上部分はエアコンコンデンサ25、アフタークーラ24を通過した後の冷却風、下部分は、オイルクーラ23、燃料クーラ26を通過した冷却風がそれぞれ通過する。
【0044】
オイルクーラ23は、作動油を冷却するための熱交換器であって、図4に示すように、ラジエータ22の下部前面を覆うように、ブラケット26aに対して取り付けられている。オイルクーラ23は、その下端面に対して、接続部23aを介して配管23bが接続されている(図6(a)および図6(b)参照)。オイルクーラ23は、図4に示す開閉機構31によって、図5(a)に示すように、ラジエータ22に対して幅方向における一端側を中心にして、上述した接続部23aや配管23bとともに回動する。オイルクーラ23は、図5(b)に示すように、略鉛直方向に沿って立設されたラジエータ22に対して略平行になるように、車体部11上に立設されている。また、オイルクーラ23は、図5(b)に示すように、その前面側における水平方向延長線上にカウンタウェイト16が配置されている。よって、オイルクーラ23をそのまま水平方向に開閉した場合には、カウンタウェイト16の下端部(接続部23aや配管23b等(図6参照))と干渉する位置関係にある。なお、このカウンタウェイト16との干渉を回避しながらオイルクーラ23を回動させる開閉機構31の構成については、後段にて詳述する。
【0045】
ここで、オイルクーラ23は、大きな熱量を交換するため、できる限り、冷却風流路における最上流側に配置されていることが好ましい。さらに、オイルクーラ23は、オイル漏れ等の不具合発生時に他の熱交換器等への影響を最小限にするために、できる限り、設置面が低い位置にあることが好ましい。よって、本実施形態では、オイルクーラ23をラジエータ22の前面側に配置して、外気から取り込んだ冷却風を直接オイルクーラ23に当てることができるため、冷却効率を向上させることができる。さらに、本実施形態では、オイルクーラ23を車体部11の設置面に直接配置することで、他の熱交換器(アフタークーラ24、エアコンコンデンサ25等)に対して低い位置に配置している。これにより、オイルクーラ24からオイル漏れが生じた場合でも、他の熱交換器への影響を最小限とすることができる。
【0046】
アフタークーラ24は、エンジン17の吸気温度を下げるために設けられた熱交換器であって、図4に示すように、ラジエータ22の上部前面を覆うように設けられている。アフタークーラ24は、図5(b)に示すように、エアコンコンデンサ25とともに、略鉛直方向に沿って立設されたラジエータ22やオイルクーラ23に対して斜めに取り付けられている。
【0047】
なお、アフタークーラ24は、その下端部とオイルクーラ23の上端部との間に所定の隙間を確保した状態で配置されている。これにより、グリル11aから車体部11内に侵入した冷却風は、エアコンコンデンサ25およびアフタークーラ24を通過した分に加えて、グリル11aの下部から侵入して上記所定の隙間を通過した分が合わさって、ラジエータ22の上部を通過する。これにより、ラジエータ22の前面上部に、2つの熱交換器(アフタークーラ24、エアコンコンデンサ25)を設置した場合でも、ラジエータ22の前面上部を通過する冷却風の温度を低く保つことができる。
【0048】
エアコンコンデンサ25は、キャブ15内を快適に保つエアコンへ供給される冷媒ガスを凝縮液化するための熱交換器であって、図4に示すように、アフタークーラ24の前面側であって、冷却装置20の最前面側に配置されている。エアコンコンデンサ25は、図5(a)に示すように、図4に示す開閉機構32によって、図5(a)に示すように、アフタークーラ24に対して幅方向における一端側を中心に回動する。エアコンコンデンサ25は、図5(b)に示すように、アフタークーラ24の前面側において、アフタークーラ24に対して略平行に近接配置されている。エアコンコンデンサ25は、上述したように、アフタークーラ24とともに、鉛直方向に対して斜めに配置されている。ここで、アフタークーラ24およびエアコンコンデンサ25の傾斜角度は、図5(b)に示すように、グリル11aの傾斜角度とほぼ一致するように設定されている。これにより、冷却装置20の最前面側に配置されたエアコンコンデンサ25、その背面側のアフタークーラ24に対して、グリル11aを通過した冷却風を効率よく当てることができ、冷却装置20における冷却効率を向上させることができる。
【0049】
なお、エアコンコンデンサ25は、キャブ15内の快適性を維持するために、できる限り、外気から取り込んだ冷却風を直接当てることが好ましい。よって、本実施形態では、エアコンコンデンサ25を冷却装置20の最前面に配置し、かつグリル11aに対して略平行になるように配置している。
【0050】
燃料クーラ26は、エンジン17に供給される燃料の温度上昇を防ぐために設けられた熱交換器であって、図5(a)に示すように、ラジエータ22とオイルクーラ23との間におけるオイルクーラ23の回動中心となる側とは反対寄りの位置に設けられている。燃料クーラ26は、図4に示すように、ラジエータ22を固定する支持フレーム22aに装着されている。
【0051】
(オイルクーラ23の開閉機構31)
オイルクーラ23を回動させる開閉機構31は、オイルクーラ23の背面側に配置されたラジエータ22のメンテナンスを実施するための空間を確保するために設けられており、図6(a)および図6(b)に示すように、オイルクーラ23の前面右端部付近に設けられた回動軸31a(図7参照)を中心に所定の開度になるまでオイルクーラ23を回動させる。なお、図6(a)は、オイルクーラ23を約30度まで開いた状態を示している。図6(b)は、オイルクーラ23を約37度の最大開度まで開いた状態を示している。
【0052】
開閉機構31は、図7に示すように、回転軸31a、取付部31b、本体フレーム31c、取っ手31d、プレート部材31e、誘導溝31f、棒状部材31g、ワッシャ31h、ピン31i、および支持部31jを有している。
【0053】
回転軸31aは、オイルクーラ23を回動させる際の回動中心であって、オイルクーラ23の右端部付近に設けられている。回転軸31aは、図8に示すように、鉛直方向に対して角度αだけ車体部11の前後方向に傾斜して設けられている。そして、回転軸31aの傾斜方向は、車体部11の後方に向かって下方傾斜するように、換言すれば、回転軸31aの上端の方が下端よりもラジエータ22の前面に対して距離が近くなるように、設けられている。
【0054】
本実施形態では、この回動軸31aを角度αだけ傾斜させた状態で取り付けていることで、後述するように、オイルクーラ23を開いていく過程において、オイルクーラ23を斜め上方にせり上がるようにして移動させることができる。よって、オイルクーラ23の端部の水平方向の延長線上にある上述したカウンタウェイト16(図5および図6等参照)を避けながら、オイルクーラ23を所定の開度まで回動させて、メンテナンス作業等を実施することができる。
【0055】
取付部31bは、回動軸31aを介して、本体フレーム31cとラジエータ22の支持フレーム22aとを連結する部材であって、支持フレーム22aに対してボルト止めされている。
【0056】
本体フレーム31cは、オイルクーラ23の背面側に取り付けられる略四角環状のフレームであって、回動軸31aを中心としてオイルクーラ23とともに回動する。本体フレーム31cは、図8に示すように、略鉛直方向に沿って配置されている。これにより、オイルクーラ23を、ラジエータ22とともに略鉛直方向に沿って配置することができる。
【0057】
取っ手31dは、オイルクーラ23を回動させる際に持ち手となる部分であって、本体フレーム31cにおける回動軸31aとは反対側の端部に設けられている。
【0058】
プレート部材31eは、図8に示すように、略四角環状の本体フレーム31cにおける下辺中央部やや右寄りの位置に下向きに突出するように設けられている。プレート部材31eは、図9(a)に示すように、中央部分に誘導溝31fを有している。
【0059】
誘導溝31fは、図7に示すように、棒状部材31gの第1端部31ga(図9(b)参照)が挿入された状態で移動するとともに、車体部11の前後方向に貫通する溝であって、図8に示すように、プレート部材31eに形成されている。誘導溝31fは、図9(a)に示すように、点X1〜点X2までの水平方向に沿った溝部分と、点X2〜点X3までの鉛直方向に沿った溝部分とを有している。これにより、オイルクーラ23を開いていく過程において、棒状部材31gの第1端部31gaが誘導溝31f内に沿って移動していき、点X2まで移動すると、棒状部材31gにかかる重力によって下向きに落下して溝内の点X3において保持される。この結果、所望の最大開度(ここでは、約37度)において、オイルクーラ23の回動を規制することができる。
【0060】
棒状部材31gは、図9(b)に示すように、第1端部31gaと第2端部31gbとを有しており、オイルクーラ23の回動に従って回動軸となる第2端部31gbを中心に回動しながら、第1端部31gaが誘導溝31fに沿って移動する。第1端部31gaは、取付け状態において略水平方向に沿って突出しており、誘導溝31f内に挿入される。第2端部31gbは、取付け状態において略鉛直下向きに突出しており、支持部31jにおいて支持された状態で、棒状部材31gの回動中心として機能する。
【0061】
ワッシャ31hは、図10(a)〜図10(c)に示すように、棒状部材31gの第1端部31gaが誘導溝31f内に挿入された状態で、第1端部31gaの先端に取り付けられ、ピン31iによって固定されている。
【0062】
ピン31iは、第1端部31gaの先端部分にワッシャ31hが抜けないように固定するために、第1端部31ga先端に形成された孔部(図示せず)に挿入されている。
【0063】
支持部31jは、図7に示すように、支持フレーム22aに対してボルト止めされており、棒状部材31gの第2端部31gbが挿入される円孔部31jaを有している。円孔部31jaは、棒状部材31gの第2端部31gbの外径よりも大きい内径を有しており、棒状部材31gの第1端部31gaが鉛直方向に移動可能な程度のクリアランス(所定の隙間)を持っている。これにより、棒状部材31gの第1端部31gaは、オイルクーラ23を最大開度まで開いた状態において、回転軸となる第2端部31gb側に拘束されることなく、誘導溝31f内における点X2から点X3へと自由落下することができる。
【0064】
(エアコンコンデンサ25の開閉機構32)
エアコンコンデンサ25を回動させる開閉機構32は、図11に示すように、エアコンコンデンサ25の前面右端部付近に設けられた回動軸32aを中心に所定の開度になるまでエアコンコンデンサ25を回動させる。
【0065】
開閉機構32は、回転軸32a、取付部32b、本体フレーム32c、取っ手32d、プレート部材32e、誘導溝32f、棒状部材32g、ワッシャ32h、ピン32i、および支持部32jを有している。
【0066】
回転軸32aは、図11に示すように、エアコンコンデンサ25を回動させる際の回動中心であって、エアコンコンデンサ25の右端部付近に設けられている。なお、回転軸32aは、本体フレーム32cに対して傾斜することなく平行に取り付けられている点で、上述した開閉機構31の回転軸31aと異なっている。このため、エアコンコンデンサ25は、閉じた状態から開いていく際に向きを変えることなくそのまま正面方向に回動していく。
【0067】
取付部32bは、図11に示すように、本体フレーム32cにボルト止めされている。また、取付け部32bは、回動軸32aおよびブラケット22bを介して、ラジエータ22の支持フレーム22aと連結されている。
【0068】
本体フレーム32cは、図11に示すように、エアコンコンデンサ25の背面側に取り付けられる略四角環状のフレームであって、回動軸32aを中心としてエアコンコンデンサ25とともに回動する。本体フレーム32cは、略鉛直方向に対して斜めに配置されている。これにより、エアコンコンデンサ25を、背面側に近接配置されたアフタークーラ24とともに、グリル11aの角度に沿って斜めに配置することができる。
【0069】
取っ手32dは、図11に示すように、エアコンコンデンサ25を回動させる際に持ち手となる部分であって、本体フレーム32cにおける回動軸32aとは反対側の端部に設けられている。
【0070】
プレート部材32eは、図11に示すように、略四角環状の本体フレーム32cにおける下辺中央部やや右寄りの位置に下向きに突出するように設けられている。プレート部材32eは、中央部分に誘導溝32fを有している。
【0071】
誘導溝32fは、図11に示すように、棒状部材32gの第1端部32gaが挿入された状態で移動するとともに、車体部11の前後方向に貫通する溝であって、プレート部材32eに形成されている。誘導溝32fは、上述した誘導溝31fと同様に、水平方向に沿った溝部分と、鉛直方向に沿った溝部分とを有している。これにより、エアコンコンデンサ25を開いていく過程において、棒状部材32gの第1端部32gaが誘導溝32f内に沿って移動していき、点X2に相当する所定の位置まで移動すると、棒状部材32gにかかる重力によって下向きに落下して溝内において保持される。この結果、所望の最大開度において、エアコンコンデンサ25の回動を規制することができる。
【0072】
棒状部材32gは、図11に示すように、第1端部32gaと第2端部32gbとを有しており、エアコンコンデンサ25の回動に従って回動軸となる第2端部32gbを中心に回動しながら、第1端部32gaが誘導溝32fに沿って移動する。第1端部32gaは、取付け状態において略水平方向に沿って突出しており、誘導溝32f内に挿入される。第2端部32gbは、取付け状態において略鉛直下向きに突出しており、支持部32jにおいて支持された状態で、棒状部材32gの回動中心として機能する。
【0073】
ワッシャ32hは、図11に示すように、棒状部材32gの第1端部32gaが誘導溝32f内に挿入された状態で、第1端部32gaの先端に取り付けられ、ピン32iによって固定されている。
【0074】
ピン32iは、図11に示すように、第1端部32gaの先端部分にワッシャ32hが抜けないように固定するために、第1端部32ga先端に形成された孔部(図示せず)に挿入されている。
【0075】
支持部32jは、図11に示すように、ブラケット22bにボルト止めされている。ブラケット22bは、ラジエータ22の支持フレーム22aにボルト止めされている。支持部32jは、棒状部材32gの第2端部32gbが挿入される円孔部32jaを有している。円孔部32jaは、棒状部材32gの第2端部32gbの外径よりも大きい内径を有しており、棒状部材32gの第1端部32gaが鉛直方向に移動可能な程度のクリアランスを持っている。これにより、棒状部材32gの第1端部32gaは、エアコンコンデンサ25を最大開度まで開いた状態において、回転軸となる第2端部32gb側に拘束されることなく、誘導溝32fの形状に沿って自由落下することができる。
【0076】
<オイルクーラ23の開閉工程>
ここでは、上述した開閉機構31を用いてオイルクーラ23を開閉する際の工程について、図12(a)〜図12(h)を用いて説明すれば以下の通りである。なお、ここで説明する図面のうち、図12(a),図12(c),図12(e),図12(g)については、オイルクーラ23を開く過程を側面視で示したものであり、図12(b),図12(d),図12(f),図12(h)については、正面視で示したものである。
【0077】
すなわち、本実施形態では、ラジエータ22のメンテナンスや清掃等を実施する際には、図12(a)および図12(b)に示すように、オイルクーラ23を閉じた状態(開度0度)から開閉機構31の取っ手31dを持って手前側に引くことで、オイルクーラ23をラジエータ22に対して徐々に開いていく
ここで、オイルクーラ23を開度10度まで開いた状態では、図12(c)および図12(d)に示すように、オイルクーラ23は、開く方向において斜め上方に移動していく。これは、上述した開閉機構31の回転軸31aが鉛直方向に対して斜めに配置されていることによるものである。
【0078】
オイルクーラ23を開度20度まで開いた状態では、図12(e)および図12(f)に示すように、オイルクーラ23はさらに斜め上方へと移動する。これにより、閉じた状態においてオイルクーラ23の下端部(接続部23aや配管23b等)と同じ高さレベルに配置されたカウンタウェイト16とオイルクーラ23とを干渉させることなく、オイルクーラ23をスムーズに開くことができる。
【0079】
そして、最大開度である約37度までオイルクーラ23を開いていくと、図12(g)および図12(h)に示すように、オイルクーラ23は斜め上方にさらに移動していくとともに、開く側に上端が倒れていくように移動する。よって、オイルクーラ23は、開度が変化するのに従って回転軸31aに対する重心位置が移動するため、ある一定の開度を超えた時点で重量によってさらに開いていこうとする状態となる。
【0080】
ここで、オイルクーラ23の開閉機構31は、上述したように、オイルクーラ23の回動を規制するためのロック機構として、プレート部材31e(誘導溝31f)や棒状部材31gを有している。このため、オイルクーラ23は、図12(g)および図12(h)に示す最大開度まで回動した状態では、オイルクーラ23が重量によってさらに開いていくことを規制することができる。
【0081】
具体的には、最大開度付近までオイルクーラ23を開いていくと、誘導溝31fにおける位置X2から棒状部材31gの第1端部31gaが自由落下して位置X3において保持される。
【0082】
これにより、オイルクーラ23を最大開度まで開いた状態でロックすることができる。この結果、ラジエータ22を含む冷却装置20のメンテナンス作業や清掃作業等を、安定した状態で効率的に実施することができる。
【0083】
なお、上述したロック機構については、エアコンコンデンサ25の開閉機構32についても同様である。特に、エアコンコンデンサ25は、上述したように、閉じた状態において鉛直方向に対して斜めに設けられていることから、作業者が取っ手32dから手を離すと重量によって閉じていく方向に移動する。よって、開閉機構32では、アフタークーラ24のメンテナンス等を実施する際には、エアコンコンデンサ25が重力によって閉じないようにするために、ロック機構(プレート部材32e(誘導溝32f)、棒状部材32g)を利用すればよい。
【0084】
なお、上述したオイルクーラ23およびエアコンコンデンサ25は、右側に設けられた回転軸を中心として回転する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0085】
例えば、左側に設けられた回転軸を中心として回転してもよい。
ただし、本実施形態のように、オイルクーラ23およびエアコンコンデンサ25の回転軸を、グリル11aの回転軸と同じ側に設けることで、使い勝手を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の建設車両は、各熱交換器のレイアウトを最適化することで、良好なメンテナンス性を確保しつつ、各熱交換器における熱交換効率を向上させて、冷却装置全体として効率を向上させることができるという効果を奏することから、冷却装置を搭載した各種建設車両に対して広く適用可能である。
【符号の説明】
【0087】
10 ホイールローダ(建設車両)
11 車体部
11a グリル(吸気口)
12 リフトアーム
13 バケット
14 タイヤ
15 キャブ
16 カウンタウェイト
17 エンジン
20 冷却装置
21 冷却ファン
22 ラジエータ
22a 支持フレーム
22b ブラケット
23 オイルクーラ
23a 接続部
23b 配管
24 アフタークーラ
25 エアコンコンデンサ
26 燃料クーラ
26a ブラケット
31,32 開閉機構(第1・第2開閉機構)
31a,32a 回転軸
31b,32b 取付部
31c,32c 本体フレーム
31d,32d 取っ手
31e,32e プレート部材(第1・第2ロック機構)
31f,32f 誘導溝(第1・第2ロック機構)
31g,32g 棒状部材(第1・第2ロック機構)
31ga 第1端部
31gb 第2端部
31h,32h ワッシャ
31i,32i ピン
31j,32j 支持部
31ja,32ja 円孔部
41 動力室
42 冷却室
43 隔壁
45 車体フレーム
【先行技術文献】
【特許文献】
【0088】
【特許文献1】特開2004−001681号公報(平成16年1月8日公開)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームと、
前記車体フレーム上に設置されたエンジンを収容した動力室と、
前記動力室の後方に配置された冷却室と、
前記冷却室内に設けられており、複数の熱交換器を含む冷却装置と、
前記冷却室内に設けられており、前記冷却室の後方から外気を吸気して前記冷却装置側へ導く冷却風流路を形成する冷却ファンと、
を備えており、
前記冷却装置は、
前記車体フレーム上における前記冷却風流路の最下流側の位置に略鉛直方向に沿って配置されたラジエータと、
前記ラジエータの前記冷却風流路の上流側の前面下部に対して略平行になるように近接配置されたオイルクーラと、
前記オイルクーラの前記冷却風流路の上流側の斜め上方であって、前記冷却風流路の上流側から見て前記ラジエータの前面上部を覆う位置に、前記冷却風流路の上流側に向かって下方傾斜するように配置されたアフタークーラと、
前記アフタークーラの前記冷却風流路の上流側の位置に、前記アフタークーラに対して略平行になるように近接配置されたエアコンコンデンサと、
を有している建設車両。
【請求項2】
前記アフタークーラの下端部と前記オイルクーラの上端部との間には、所定の隙間が形成されている、
請求項1に記載の建設車両。
【請求項3】
前記オイルクーラを前記ラジエータに対して回動させる第1開閉機構と、
前記エアコンコンデンサを前記アフタークーラに対して回動させる第2開閉機構と、
をさらに備えている、
請求項1または2に記載の建設車両。
【請求項4】
前記ラジエータに対して前記オイルクーラを所定の開度まで開いた状態で前記オイルクーラの回動を規制する第1ロック機構と、
前記アフタークーラに対して前記エアコンコンデンサを所定の開度まで開いた状態で前記エアコンコンデンサの回動を規制する第2ロック機構と、
をさらに備えている、
請求項3に記載の建設車両。
【請求項5】
前記ラジエータと前記オイルクーラとの間であって前記オイルクーラの回動中心となる側とは反対側の端部に設けられた燃料クーラを、さらに備えている、
請求項3または4に記載の建設車両。
【請求項6】
前記エアコンコンデンサおよび前記アフタークーラは、前記建設車両の後部に設けられた吸気口が形成されたグリルに対して略平行に設けられている、
請求項1から5のいずれか1項に記載の建設車両。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−132269(P2012−132269A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286976(P2010−286976)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】