説明

弁当用惣菜容器及び弁当用容器

【課題】弁当用惣菜容器内に液汁が出る惣菜を収容して包装して運ぶ際に、惣菜から出てきた液汁により惣菜の風味を損なうのを防止する。惣菜収容部に収容された惣菜が液汁により本来の味が薄められたり、新鮮さや見栄えが損なわれたりするのを防止する。
【解決手段】合成樹脂シートから容器本体及び蓋からなる弁当用惣菜容器を熱成形する。容器本体の惣菜収容部の底面を傾斜状に形成されると共に傾斜底面の谷部に液抜き孔を形成する。惣菜収容部の底には、液抜き孔から流出する液汁を溜める液溜め容器を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液汁や水分(以下、これらを総称して液汁と称する。)が出やすい野菜サラダ、野菜炒めや煮物等の惣菜を包装して販売するのに適した弁当用惣菜容器及び弁当用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食生活の変化により、弁当専門店、スーパー及びコンビニエンス・ストア等で様々な弁当が販売されるようになってきている。この弁当を包装して販売する際に使用する弁当用容器も、販売する弁当の種類や、その使い方によって種々の工夫がなされるようになってきている。
【0003】
例えば、特許文献1には、複数個の容器本体を重箱状に上下に重ねて配置し、その上部に蓋体を設けた包装用容器において、上側の容器本体を上記蓋体で覆い、その蓋体の周縁フランジ部を下側の容器本体の周縁フランジ部に嵌合保持させるように構成した多段重ねの容器で、蓋及び容器をそれぞれ外周で嵌合保持することで、密閉性を改良した包装容器が記載されている。該包装容器は、弁当に使われる様々な食材及びその量に対応するための各種工夫が施されているが、該弁当用容器内に液汁が出やすい野菜サラダ、野菜炒めや各種の煮物等の惣菜を収容して包装した際には、以下の問題が発生している。
【0004】
即ち、従来の弁当用容器内に液汁が出る惣菜を収容して包装すると、消費者(購入者)がその弁当を運ぶ際に、惣菜から出てきた液汁が、弁当用容器の仕切壁を越えて、主食のご飯や他の惣菜に付着して食材の風味が損なう問題を有している。また、上記した従来の弁当容器は、蓋と容器の密閉性に優れているが、完全密閉することができない構造であるため、持ち運び時に惣菜から出た液汁が容器外へ滲み出て他の弁当容器や包装袋等に付着したりし、包装袋から取り出す際に手に付着したりして衛生上、問題を有している。
【0005】
上記した問題点を解決するため、特許文献2に示す弁当容器が提案されている。該弁当容器は、合成樹脂製の容器本体及び蓋体で構成され、該容器本体が内部に仕切壁により区切られた複数の食品収納部を有しており、少なくとも1つの特定の食品収納部の内側上部に、蓋体に形成された容器本体の食品収納部に内接するように形成された突起部が内嵌合する構造になっている。
【0006】
しかし、上記の弁当容器にあっては、食品収容部に収容された惣菜から出る液汁が他の食材へ付着するのを防止することができるが、食品収容部に収容された惣菜に液汁が付着したままの状態に保たれるため、液汁により惣菜の味付けが薄くなったり、惣菜への液汁の付着時間が長くなると、惣菜がふやけて調理時の形態を保つことができず、見栄えが悪くなる問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−245054号公報
【特許文献2】特開2006−36284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする問題点は、従来の弁当用容器内に液汁が出る惣菜を収容して包装すると、その弁当を運ぶ際に、惣菜から出てきた液汁が、弁当用容器の仕切壁を越えて主食のご飯や他の惣菜に付着して食材の風味が損なう点にある。また、惣菜収容部に惣菜を密閉する従来の弁当用惣菜容器にあっては、収容された惣菜に液汁が付着したままの状態が保たれ、液汁により惣菜の本来の味が薄められたり、新鮮さや見栄えが損なわれる点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、合成樹脂シートから熱成形された容器本体及び蓋からな弁当用惣菜容器において、上記容器本体の惣菜収容部の底面は、傾斜状に形成されると共に傾斜底面の谷部に液抜き孔が形成され、上記惣菜収容部の底には、液抜き孔から流出する液汁を溜める液溜め容器を設けたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、弁当用惣菜容器内に液汁が出る惣菜を収容して包装して運ぶ際に、惣菜から出る液汁により惣菜の風味を損なうのを防止することができる。また、惣菜収容部に収容された惣菜が液汁により本来の味が薄められたり、新鮮さや見栄えが損なわれたりするのを防止することができる。更に、弁当用容器内の惣菜収容部に収容された惣菜から出る液汁が、仕切壁を越えて主食のご飯や他の惣菜に付着して食材の風味が損なうのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の係る弁当用惣菜容器を備えた弁当用容器の概略を示す斜視説明図である。
【図2】容器本体の平面図である。
【図3】図2のA−A線縦断面図である。
【図4】傾斜面の変更例を示す説明図である。
【図5】液溜め容器の変更例を示す説明図である。
【図6】液汁の排出状態を示す説明図である。
【図7】液抜き孔の閉鎖状態を示す説明図である。
【図8】傾斜面の変更例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、惣菜収容部の底面を傾斜状に形成すると共に傾斜底面の谷部に液抜き孔を形成し、かつ惣菜収容部の底に液抜き孔から流出する液汁を溜める液溜め容器を設けたことを最良の実施形態とする。
【実施例1】
【0013】
以下、実施例を示す図に従って本発明を説明する。
図1乃至図5に示すように、弁当用容器1は、容器本体3と該容器本体3の上面開口を覆う蓋5から構成され、これら容器本体3及び蓋5は、例えばポリエチレン(PE)等の合成樹脂シートを加熱成形して立体形状に形成される。なお、図1は容器本体3と蓋5を別体としたが、容器本体3の長側縁に蓋5を一体成形した構成であってもよい。
【0014】
上記容器本体3は、食材収容部7及び惣菜収容部9が中央部のリブ11により区画されて設けられている。食材収容部7は、底面が平面状で、例えばご飯やパスタ等の主食となる食材が、また惣菜収容部9は、本発明に係る弁当用惣菜容器を構成するもので、底面が多角錐面、半球面等の傾斜面9aを有した形状で、例えば野菜炒め、野菜サラダ、煮物等の惣菜となる食材が載置されて収容される。更に、リブ11は、その長手直交方向断面が逆U字型で、空間部が形成されている。
【0015】
なお、上記容器本体3は、主食になる食材を収容する第1食材収容部7及び惣菜収容部9を一体成形したものを示すが、それぞれを別体に成形したものであってもよい。また、傾斜面9aとしては、図4に示すように底面を又は截頭多角錐面、截頭半球面とし、頂部に惣菜を載置する平面部9cを設けた形状としてもよい。
【0016】
上記惣菜収容部9における傾斜底面9aの谷部には、すくなくとも1個以上の液抜き孔9b(図示の例では8個)が形成されている。また、惣菜収容部9の底には、液溜め容器13が嵌め込まれた状態で、電気ヒータ、超音波等の融着手段(図示せず)により融着して固着されている。該液溜め容器13としては、容器本体3と別体成形し、これを惣菜収容部9の底に密着するように挿嵌して非融着状態で固着した構造、または図5に示すように惣菜収容部9における正面側、背面側または側面側の側壁上端に一体成形し、側壁上端にて屈曲させて第2食材収容部9の底に嵌め込んで密着するように固定した構造のいずれであってもよい。
【0017】
なお、惣菜収容部9における液抜き孔9bの数は、図示の例に限定されるものではなく、惣菜収容部9の四隅に設けた例であってもよい。この場合にあっては、傾斜底面9aの谷部を長手方向中央部から各角部に向かって傾斜するように若干盛り上げた形状とすることにより惣菜から出る液汁を効率的に液抜き孔9bへ案内することができる。
【0018】
上記蓋5の内面または外面には、液抜き孔9bに一致する個数の栓15が取り付けられている。各栓15は、長くて惣菜収容部9の深さに一致する長さの軸部15aの先端部に液抜き孔9bより大径の大径テーパ部15bを一体化した構造からなる。各栓15は、蓋5とは別に成形して蓋5に粘着テープ5a等で仮固定したもの、または各液抜き孔9bに対向する蓋5の各個所に切離可能に一体成形したもののいずれであってもよい。なお、図は、蓋5の上面に栓15を粘着テープ5aにより仮固定した例を示すが、容器本体3に固定したり、一体に成形してもよい。
【0019】
次に、上記した構造の弁当用容器1の使用例を説明する。
先ず、容器本体3の食材収容部7及び惣菜収容部9内にそれぞれの食材を収容して包装した際の作用を説明すると、食材収容部7内に主食となる食材(図示せず)を、また惣菜収容部9内に、例えば野菜サラダ、野菜炒め、煮物等の水分や液汁を多く含む惣菜17を収容した後に蓋5を掛けて包装して商品台に並べたり、輸送したりする。
【0020】
このとき、時間の経過に伴って惣菜収容部9内に収容された惣菜17から液汁や水分が出てくるが、惣菜17から出る液汁等は、傾斜面9aに沿って垂れ落ちた後に液抜き孔9bを通過して液溜め容器13内に溜められて回収される。(図6参照)
【0021】
これにより惣菜収容部9内に収容された惣菜は、液汁等により味付けが薄められたり、液汁に漬かったままになることが避けられ、食材の外観が悪くなったり、鮮度が悪くなることが防止される。
【0022】
一方、蓋5を開放して食材収容部7及び惣菜収容部9内の各食材を食べる際に、惣菜収容部9内の惣菜17に、例えば醤油やソース、ドレッシング等の調味液を掛ける場合がある。この場合にあっては、蓋5から取り外した栓15の大径テーパ部15bを液抜き孔9b内に差し込んで閉鎖した後、惣菜に調味液をかけてから食べるようにする。(図7参照)
【0023】
これにより惣菜17にかけられた調味液が液溜め容器13内へ流出することを避けることができ、所望の調味液で味付けして食べることができる。
【0024】
本実施例は、容器本体3の惣菜収容部9内に収容された惣菜17から出る液汁を回収し、惣菜17が液汁に漬かって味付けが薄くなったりするのを防止し、包装時における食材の調理状態を保つことができる。また、惣菜収容部9内の惣菜17に調味液を掛けて食べる際には、調味液が流れ出すのを回避し、所望の調味液で味付けして食べることができる。
【0025】
上記説明においては、惣菜収容部9における底面の傾斜面9aを図3に示すように多角錐面、または図4に示すように截頭多角錐面としたが、図8に示すように惣菜収容部9における一方の内側面から他方の内側面に向かって高さが低くなるテーパ状の傾斜面9aであってもよいことは、勿論である。この場合に、傾斜面9aの谷部に少なくとも1個以上の液抜き孔9bに形成し、液抜き孔9bに対応する個所の底面に液溜め容器13を取り付ければよい。
【0026】
上記説明は、容器本体3に食材収容部7及び惣菜収容部9を設け、食材収容部7に主食になる食材を、また惣菜収容部9に液汁が出る惣菜を収容する弁当用容器として構成としたが、容器本体3を惣菜収容部9のみとする弁当用惣菜容器として構成してもよい。また、液汁が出る惣菜と共に液汁がでない惣菜を収容するには、液汁が出る惣菜を収容する上記惣菜収容部9に対して底面が平面状からなる1個または複数個からなる液汁が出ない惣菜を収容する惣菜収容部を一体に成形した構成であってもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 弁当用容器
3 容器本体
5 蓋
5a 粘着テープ
7 食材収容部
9 惣菜収容部
9a 傾斜面
9b 液抜き孔
9c 平面部
11 リブ
13 液溜め容器
15 栓
15a 軸部
15b 大径テーパ部
17 惣菜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂シートから熱成形された容器本体及び蓋からな弁当用惣菜容器において、
上記容器本体の惣菜収容部の底面は、傾斜状に形成されると共に傾斜底面の谷部に液抜き孔が形成され、
上記惣菜収容部の底には、液抜き孔から流出する液汁を溜める液溜め容器を設けた、
ことを特徴とする弁当用惣菜容器。
【請求項2】
請求項1において、上記容器本体及び蓋のいずれか一方には、液抜き孔を閉鎖する栓を設けた弁当用惣菜容器。
【請求項3】
請求項2において、上記栓は、容器本体及び蓋と別体に成形された弁当用惣菜容器。
【請求項4】
請求項2において、上記栓は、上記容器本体及び蓋のいずれか一方と切離可能に一体成形された弁当用惣菜容器。
【請求項5】
請求項1において、上記惣菜収容部の底面は、多角錐面、半球面のいずれかとした弁当用惣菜容器。
【請求項6】
請求項1において、上記惣菜収容部の底面は、截頭多角錐面、截頭半球面のいずれかとした弁当用惣菜容器。
【請求項7】
請求項1において、上記惣菜収容部の底面は、テーパ面とした弁当用惣菜容器。
【請求項8】
請求項1において、上記液溜め容器は、容器本体と別体成形された弁当用惣菜容器。
【請求項9】
請求項1において、上記液溜め容器は、惣菜収容部における側壁上端に屈曲可能に一体成形し、側壁上端にて屈曲された液溜め容器を惣菜収容部の底面に配置可能にした弁当用惣菜容器。
【請求項10】
請求項1において、容器本体には、合成樹脂シートを熱成形して惣菜収容部に、底面が平面状で、主食となる食材を収容する食材収容部を一体成形した弁当用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−240943(P2011−240943A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112733(P2010−112733)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(310012638)
【Fターム(参考)】