説明

張出ブロックとこれを用いて形成される停車帯

【課題】歩道の車道側に植えられた街路樹の根を保護することのできる停車帯を提供する。
【解決手段】車道2の直下に埋設される底版11と、前記底板11の歩道側に立てられた歩道側縦壁12と、前記歩道側縦壁12から歩道3に向けて張り出す天版14とから構成され、車道2の直下に底版11を埋設し、車道2及び歩道3の延在方向に天版14を直交させた張出ブロック1を多数設置し、全張出ブロック1の天版14を連ねて、街路樹の根を保護することのできる停車帯4を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車道及び歩道に挟まれた停車帯を形成する張出ブロックと、これを用いて形成される停車帯に関する。
【背景技術】
【0002】
車道及び歩道が並び設けられている場合、景観の美観向上、歩道の環境保全や歩行者に日陰を提供することを目的として、歩道の車道側に街路樹が植えられることが多い。こうした街路樹は、幹の近くにまで歩道を構成するブロックが敷き詰められるが、根の伸びる空間を確保するため、前記ブロック下方は土のままである。この場合、前記根の延びる空間が歩行者に踏みしめられると、根の生育に支障を来すし、逆に根が伸びすぎるとブロックを持ち上げて歩道を破損する虞がある。そこで、街路樹に対し、植樹用コンクリートブロックが幹を囲んで設置されることがある(特許文献1)。
【0003】
特許文献1が開示する植樹用コンクリートブロックは、上面及び下面が開放された単位側壁ブロックと、単位側壁ブロックに載せて開放された上面を覆う蓋体とから構成される(特許文献1・[請求項1])。街路樹は、蓋体に設けられた切欠から幹を伸ばし、前記蓋体下方の単位側壁ブロックに囲まれた空間に根を延ばす。特許文献1が開示する植樹用コンクリートブロックは、歩道の範囲内で根の伸びる空間を確保しながら、単位側壁ブロックに開放された側面部分を設け、街路樹の根が車道下方に向かって伸びていけるようにしている(特許文献1・[0015][図4])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-137103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
街路樹の根が伸びる空間は、上述した特許文献1が開示する植樹用コンクリートブロック等を利用すれば、歩道下方に確保できる。しかし、前記植樹用コンクリートブロックから車道下方に向けて根が伸びるだけにしておくと、車道に掛かる負荷が根を圧迫する虞が出てくる。特に、歩道に沿って停車帯が設けられていると、伸びた根の上方に車両が長時間停車することになり、根に対する圧迫が無視できなくなる。そこで、特に停車帯に沿った歩道の車道側に植えられた街路樹の根を保護するため、検討した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
検討の結果、車道及び歩道に挟まれた停車帯を形成する張出ブロックであって、車道の直下に埋設される底版と、前記底板の歩道側に立てられた歩道側縦壁と、前記歩道側縦壁から歩道に向けて張り出す天版とから構成されることを特徴とする張出ブロックを開発した。底版は、車道側に前記歩道側縦壁と対になる車道側縦壁を設けてもよい。底版及び天版は水平を基本とする。天版は、上面を歩道側に向けて下り勾配にしてもよい。
【0007】
停車帯は、車道の直下に埋設される底版と、前記底板の歩道側に立てられた歩道側縦壁と、前記歩道側縦壁から歩道に向けて張り出す天版とから構成され、車道の直下に底版を埋設し、車道及び歩道の延在方向に天版を直交させた張出ブロックを多数設置し、全張出ブロックの天版を連ねて形成される。天版を連ねて停車帯を形成する多数の張出ブロックは、外形が同じな同一種類であることを基本とするが、後述するPC鋼材により緊張が与えられる限り、外形の異なる複数種類を混在させてもよい。天版の上面は、車道と面一に揃えてそのまま停車帯とするか、車道舗装と面一の停車帯舗装を施す。
【0008】
本発明は、多数の張出ブロックを並べて天版の連なる部分、すなわち歩道に沿って設けられる道路又は付随部分を形成し、「主として車両の停車の用に供するために設けられる帯状の車道の部分(道路構造令第2条第14号)」として利用することから、多数の張出ブロックを並べて天版の連なる部分を「停車帯」と呼んでいる。裏返せば、歩道に沿って設けられる道路又は付随部分は、駐車帯、側道や自転車専用道として利用することもできるので、本発明は前記駐車帯、側道や自転車専用道を含む。
【0009】
本発明の張出ブロックは、車道側から歩道側に向けて天版を張り出し、天版下方に街路樹の根が伸びる空間を確保しながら、前記天版が連なる停車帯を形成する。前記停車帯を形成する各天版は、底版が車道や打設されたコンクリートにより形成されるカウンターブロックにより下方に押し下げられて、相対的に上方へ持ち上げられる力が働くので、仮に停車帯に車両が継続的に停車しても、下方に伸びてくる街路樹の根に圧迫を与えない。このほか、連なる天版は、下方に埋設される電線共同溝や上水管又は下水管を保護する働きもある。
【0010】
張出ブロックにより形成される停車帯は、車道の歩道寄りにあり、通常、歩道及び車道の境界に設けられる排水溝を車道から遠ざける場合がある。そこで、張出ブロックは、歩道側縦壁及び底版に対して、歩道側縦壁に対向する立設面と、底版に対向する水平面とから構成され、前記水平面の上面と下面とを結ぶ排水経路を設けた側溝ブロックを被せることにより、底版、歩道側縦壁、立設面及び水平面に囲まれた閉鎖断面構造の排水溝を形成するとよい。これにより、車道に降る雨水を直ちに排水溝へ流し込むことができる。
【0011】
排水溝を形成する場合、張出ブロックは、車道及び歩道の延在方向に直交する天版又は歩道側縦壁の側端面に、排水溝に臨む内側開口と天版下方に臨む外側開口とを結ぶオーバーフロー溝を設けるとよい。オーバーフロー溝は、天版の側端面を密着させて張出ブロックを並べた場合、前記側端面に塞がれることなく、排水溝に臨む内側開口と天版下方に臨む外側開口とを連通させ、排水溝から溢れ出す雨水を天版下方へ排水させる。排水溝に臨む内側開口は、歩道側縦壁の車道側の側面に開口する。天版下方に臨む外側開口は、前記内側開口より低い位置にあればよく、天版の下面に開口したり、歩道側縦壁の歩道側の側面に開口する。
【0012】
張出ブロックは、車道及び歩道の延在方向に延びる貫通孔を、底版、歩道側縦壁又は天版のいずれか又は複数に設け、設置された多数の張出ブロックそれぞれの貫通孔に挿通したPC鋼材により、前記多数の張出ブロックを緊張状態で密着させて、天版を連ねた停車帯を形成するとよい。緊張状態で密着させた多数の張出ブロックは、万一、特定の張出ブロックの天版が沈み込もうとしても、前記張出ブロックの両隣の張出ブロックがPC鋼材を介して前記沈み込みを抑制又は防止する。
【0013】
停車帯を形成する天版が街路樹の根を保護する場合、前記根に雨水が行き渡るように、天版の上面と下面とを結ぶ通水経路を設けるとよい。通水経路を天版に設けた場合、天版に覆う停車帯舗装は、透水性を備えた舗装材料により形成する。「通水経路」は、天版の上面から下面に向けて雨水が通水する働きのあるものを意味し、ポーラスコンクリートで構成される天版は、全体が通水経路になる。通常コンクリートで構成される天版の通水経路は、天版の上面から下面に貫通する通水孔又は通水スリットや、車道及び歩道の延在方向に直交する天版の側端面を、前記天版の上面から下面にかけて凹ませて形成された凹部を例示できる。凹部は、天版の側端面を密着させて張出ブロックを並べた場合、隣り合う張出ブロックの天版の隙間に通水孔又は通水スリットを形成する。
【0014】
通水孔又は通水スリットや凹部を設けた場合、張出ブロックの天版は、通水経路の上面側開口に向けた下り勾配の傾斜面を形成するとよい。これにより、天版の上面に降った雨水が、通水孔又は通水スリットや凹部が形成する通水孔又は通水スリットへ導かれ、無駄なく天版下方に伸びた街路樹の根に雨水が行き渡るようになる。また、通水孔又は通水スリットや凹部を設けた場合、張出ブロックの天版は、通水経路(凹部により形成されるものを含む)内に透水部材を充填又は嵌合するとよい。これにより、停車帯舗装を施さない場合でも通水孔等にゴミが溜まらないし、停車帯舗装を施した場合に舗装材料が通水孔等に落下しなくなる。透水部材は、通水孔に充填するポーラスコンクリートや砂利、通水スリットに嵌め込む合成樹脂製のメッシュパイプ等を例示できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の張出ブロックは、歩道の車道側に植えた街路樹の根が、停車帯に停車する車両の負荷から保護する効果を有する。街路樹の根は、停車帯を形成する天版下方に広く伸びることができ、従来歩道に設置されていた根保護ブロックと相俟って、街路樹の根が四方に広く伸びる空間を形成する。これは、従来より大きな街路樹を植えることのできることを意味し、街路樹の目的(景観の美観向上、歩道の環境保全や歩行者に日陰を提供すること)をよりよく達成させることになる。
【0016】
張出ブロックの歩道側縦壁及び底版に対して側溝ブロックを被せて形成される排水溝は、車道に降る雨水を直ちに排水できるようにする。底版、歩道側縦壁又は天版のいずれか又は複数に設けた貫通孔は、挿通させたPC鋼材による多数の張出ブロックに緊張状態を与え、相互に天版の沈み込みを規制し、街路樹の根の保護を安定して発揮させる。
【0017】
天版に設けた通水経路(通水孔又は通水スリット等)は、本発明の張出ブロックを並べて形成した停車帯の上面から下面に雨水が通過できるようにし、街路樹の根に前記雨水を行き渡らせる。これにより、天版下方に確保した空間に、街路樹の根が伸びやすくする。通水経路の上面側開口に向けた下り勾配の傾斜面は、停車帯の下面へ雨水をよりよく導き、前記天版下方に確保した空間に、街路樹の根がより伸びやすくする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の張出ブロックの第1例を歩道側斜め上方から見た斜視図である。
【図2】本発明の張出ブロックの第2例を歩道側斜め上方から見た斜視図である。
【図3】本発明の張出ブロックの第3例を歩道側斜め上方から見た斜視図である。
【図4】本発明の張出ブロックの第4例を歩道側斜め上方から見た斜視図である。
【図5】本発明の張出ブロックの第5例を歩道側斜め上方から見た斜視図である。
【図6】本発明の張出ブロックの第6例を歩道側斜め上方から見た斜視図である。
【図7】本発明の張出ブロックの第7例を歩道側斜め上方から見た斜視図である。
【図8】本発明の張出ブロックの第8例を歩道側斜め上方から見た斜視図である。
【図9】本発明の張出ブロックの第9例を歩道側斜め上方から見た斜視図である。
【図10】本発明の張出ブロックの第10例を歩道側斜め上方から見た斜視図である。
【図11】第8例の張出ブロックによる停車帯の形成手順において、張出ブロックを並べている段階を歩道側斜め上方から見た斜視図である。
【図12】第8例の張出ブロックによる停車帯の形成手順において、側溝ブロックを並べている段階を歩道側斜め上方から見た斜視図である。
【図13】第8例の張出ブロックによる停車帯の形成手順において、対向する凹部段差間にメッシュパイプを嵌め込んでいる段階を歩道側斜め上方から見た斜視図である。
【図14】第8例の張出ブロックによる停車帯の形成手順において、車道舗装及び停車帯舗装を施工した段階を歩道側斜め上方から見た斜視図である。
【図15】第8例の張出ブロックによる停車帯の横断方向断面図である。
【図16】第8例の張出ブロックによる停車帯の平面図である(車道舗装及び停車帯舗装を図示略)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。本発明の張出ブロック1は、プレキャストコンクリート製で、例えば図1に見られるように、平面視長方形の底版11と、前記底板11の一端側(歩道側)に向けて僅かに傾斜して立てられた歩道側縦壁12と、前記歩道側縦壁12から前記一端(歩道)に向けて張り出す平面視長方形の天版14とから構成される。第1例の張出ブロック1は、底版11の他端側(車道側)に向けて僅かに傾斜して立てられた車道側縦壁13を、前記歩道側縦壁12と対に設けている。
【0020】
第1例の張出ブロック1は、底版11、歩道側縦壁12、車道側縦壁13及び天版14それぞれの天版14の張出方向に直交する方向の幅が同じであり、張出ブロック1全体として平面視長方形である。底版11は、上下方向の肉厚が一定であるが、天版14は前記張出方向に向けて先細りの断面楔形である。また、第1例の張出ブロック1は、歩道側縦壁12、底版11及び車道側縦壁13それぞれに、天版14の張出方向に直交する方向(車道及び歩道の延在方向)に延びる貫通孔15を設けている。貫通孔15は、PC鋼材151を挿通する。
【0021】
第1例の張出ブロック1は、歩道側縦壁12、底版11及び車道側縦壁13に囲まれた空間にコンクリートや土砂を充填してカウンターブロック22としたり、前記空間に設置するブロックをカウンターブロック22としたりする(後掲図14及び図15参照)。底版11の下面と天版14の上面とは、水平かつ平行である。これから、水平な掘削地盤に張出ブロック1を載置すれば、天版14の上面も水平となり、平坦な停車帯4(後掲図14及び図15参照)を形成できる。また、天版14の上面と車道側縦壁13の上面とは、面一である。これから、水平な掘削地盤に張出ブロック1を載置すれば、天版14の上面に倣う停車帯舗装41と車道側縦壁13の上面に倣う車道舗装21とは、水平かつ面一になる。
【0022】
第2例の張出ブロック1は、図2に見られるように、上記第1例と同様に、貫通孔15を設けた底版11、歩道側縦壁12及び車道側縦壁13と天版14とから構成されながら、側溝ブロック5を前記歩道側縦壁12及び底版11に対して被せ、排水溝54(後掲図12〜図15参照)を形成している。第2例の張出ブロック1は、側溝ブロック5の立設面51を添わせる添設段差111を、底版11及び歩道側縦壁12の交差角部に、断面角形に突出させて設けている。また、第2例の張出ブロック1は、側溝ブロック5の水平面52を係合させる係合段差141を、歩道側縦壁12及び天版14の交差角部を断面角形に凹ませて設けている。
【0023】
側溝ブロック5は、歩道側縦壁12に対向する側面視長方形の立設面51と、底版11に対向する平面視長方形の水平面52とから構成されるプレキャストコンクリート製で、天版14の張出方向に直交する水平面52の幅方向中間に前記張出方向に直交する方向(車道及び歩道の延在方向)に延びる溝を形成し、前記溝の中間付近に、前記水平面52の上面と下面とを結ぶ排水スリット(排水経路)53を設けている。これにより、車道2又は停車帯4から流れてくる雨水を、前記排水リット53を通じて、張出ブロック1の底版11、歩道側縦壁12、側溝ブロック5の立設面51及び水平面42に囲まれた閉鎖断面構造の排水溝54へ流し込める。
【0024】
第3例の張出ブロック1は、図3に見られるように、上記第2例と同様に、貫通孔15を設けた底版11、歩道側縦壁12及び車道側縦壁13と天版14とから構成され、側溝ブロック5を被せて排水溝54(後掲図12〜図15参照)を形成できるようにしながら、前記排水溝54に連通するオーバーフロー溝146を、天版14の張出方向(車道及び歩道の延在方向に直交する方向)に延びる側端面に設けている。オーバーフロー溝146は、両側端面に設けてもよいし、一方の側端面にのみ設けてもよい。第3例の張出ブロック1は、排水溝54に流れ込む雨水の水嵩が増すと、オーバーフロー溝146を通じて天版14下方に前記雨水を排水する。天版14下方には街路樹31の根312が伸びている(後掲図15又は図16参照)ので、オーバーフロー溝146を通じて排水される雨水は、前記根312への給水となる。
【0025】
第4例の張出ブロック1は、図4に見られるように、上記第1例と同様に、貫通孔15を設けた底版11、歩道側縦壁12及び車道側縦壁13と天版14とから構成されながら、天版14の張出方向(車道及び歩道の延在方向に直交する方向)に延びる通水スリット(通水経路)142を前記天版14に設けている。図示を省略するが、平面視長尺な前記通水スリット142に代えて又は共に、平面視円形の通水孔(通水経路)を天版14に設けてもよい。通水スリット142は、天版14の上面を直に停車帯として利用する場合にそのまま開口させておいてもよいが、ポーラスコンクリート又は砂利を充填したり、後述するメッシュパイプ16(後掲図13参照)を嵌め込んだりすることで、ゴミ詰まり等を避けたり、停車帯舗装の舗装材料が落ち込んだり、停車帯が凹んだりする事態を回避するとよい。
【0026】
第5例の張出ブロック1は、図5に見られるように、上記第1例と同様に、貫通孔15を設けた底版11、歩道側縦壁12及び車道側縦壁13と天版14とから構成されながら、天版14の張出方向に延びる側端面を、面直交方向(車道及び歩道の延在方向)に凹ませて凹部143を設けている。凹部143は、天版14の上面から下面にかけて水平断面が同一であり、断面楔形の天版14に倣って、側面視台形状である。凹部143は、両側端面に設けてもよいし、一方の側端面のみ設けてもよい。両側端面に設ける凹部143は、天版14の張出方向の位置が一致しても、またずれていてもよい。
【0027】
凹部143は、隣り合う張出ブロック1の側端面を接面させると、対となる凹部143同士で通水スリット142を形成する。凹部143が天版14の側端面の一方にしか設けられていない場合、前記凹部143と対向する天版14の側端面との間に、通水スリット142が形成される。こうして凹部143により形成される通水スリット142は、上述同様、天版14の上面を直に停車帯として利用する場合にそのまま開口させておいてもよいが、ポーラスコンクリート又は砂利を充填したり、後述するメッシュパイプ16(後掲図13参照)を嵌め込んだりすることで、ゴミ詰まり等を避けたり、停車帯舗装の舗装材料が落ち込んだり、停車帯が凹んだりする事態を回避するとよい。
【0028】
第6例の張出ブロック1は、図6に見られるように、上記第1例と同様に、貫通孔15を設けた底版11、歩道側縦壁12及び車道側縦壁13と天版14とから構成されているが、面一となる天版14の上面と車道側縦壁13の上面とを、前記面一の関係を保ったまま、車道側を持ち上げて勾配αを与えている。これは、底版11の下面に対し、天版14の上面と車道側縦壁13の上面とが勾配αで歩道側に向けて傾いていることを意味する。これから、水平な掘削地盤に張出ブロック1を載置しても、天版14の上面と車道側縦壁13の上面とは歩道側に向けて下り勾配を有するので、前記天版14の上面に倣う停車帯舗装41や前記停車4に面一に形成される車道舗装21(後掲図14及び図15参照)は、歩道側に向けた下り勾配となり、車道2又は停車帯4に降る雨水を歩道側に誘導できる。
【0029】
第7例の張出ブロック1は、図7に見られるように、上記第5例と同様に、貫通孔15を設けた底版11、歩道側縦壁12及び車道側縦壁13と天版14とから構成され、天版14の張出方向に延びる側端面を面直交方向(車道及び歩道の延在方向)に凹ませて凹部143を設けながら、天版14の上面を前記天版14の張出方向に直交する方向(車道及び歩道の延在方向)に山形断面とし、前記凹部14に向けた下り勾配の傾斜面145を設けている。第7の傾斜面145は断面直線状であるが、下り勾配が一方向(第7例では天版14の張出方向に直交する方向)に揃っていれば、下り勾配が変化する断面円弧状又は断面波形状であってもよい。
【0030】
第7例の張出ブロック1は、車道及び歩道の延在方向に並べると、連なる天版14の上面が凸凹するため、停車帯4は停車帯舗装41を施して前記凸凹を吸収する(後掲図14及び図15参照)。こうした停車帯舗装41による凸凹の吸収は、傾斜面145を設けた後掲第8例(図8)〜第10例(図10)の張出ブロッック1も同様である。また、第7例の張出ブロック1は、対となる凹部143を突き合わせて形成される通水スリット142に嵌入するメッシュパイプ16(後掲図13参照)の側面が天版14の上面に倣って保持されるように、前記メッシュパイプ16を係合させる断面角形の凹部段差144を、凹部143の上縁を切り欠いて形成している。
【0031】
第8例の張出ブロック1は、図8に見られるように、上記第7例と同様に、貫通孔15を設けた底版11、歩道側縦壁12及び車道側縦壁13と天版14とから構成され、天版14の張出方向に延びる側端面を面直交方向(車道及び歩道の延在方向)に凹ませて凹部143を設け、更に天版14の上面を前記天版14の張出方向に直交する方向(車道及び歩道の延在方向)に山形断面とし、前記凹部14に向けた下り勾配の傾斜面145を設けながら、上記第2例と同様に、側溝ブロック5を前記歩道側縦壁12及び底版11に対して被せ、排水溝54(後掲図12〜図15参照)を形成している。
【0032】
第8例の張出ブロック1は、上記第2例と同様に、側溝ブロック5の立設面51を添わせる添設段差111を、底版11及び歩道側縦壁12の交差角部から断面角形に突出させて設け、側溝ブロック5の水平面52を係合させる係合段差141を、歩道側縦壁12及び天版14の交差角部を凹ませて設けている。また、第8例の張出ブロック1は、上記第7例と同様に、対となる凹部143を突き合わせて形成される通水スリット142に嵌めるメッシュパイプ16(後掲図13参照)の側面が天版14の上面に倣って保持されるように、前記メッシュパイプ16を係合させる断面角形の凹部段差144を、凹部143の上縁を切り欠いて形成している。
【0033】
第9例の張出ブロック1は、図9に見られるように、上記第8例と同様に、貫通孔15を設けた底版11、歩道側縦壁12及び車道側縦壁13と天版14とから構成され、天版14の張出方向に延びる側端面を面直交方向(車道及び歩道の延在方向)に凹ませて凹部143を設け、前記凹部143の上縁を切り欠いて凹部段差144を形成し、天版14の上面を前記天版14の張出方向に直交する方向(車道及び歩道の延在方向)に山形断面とし、前記凹部14に向けた下り勾配の傾斜面145を設けて、更に側溝ブロック5を前記歩道側縦壁12及び底版11に対して被せ、排水溝54(後掲図12〜図15参照)を形成しながら、上記第3例と同様に、前記排水溝54に連通するオーバーフロー溝146を、天版14の張出方向(車道及び歩道の延在方向に直交する方向)に延びる側端面に設けている。
【0034】
第10例の張出ブロック1は、図10に見られるように、上記第7例と同様に、貫通孔15を設けた底版11、歩道側縦壁12及び車道側縦壁13と天版14とから構成され、天版14の張出方向に延びる側端面を面直交方向(車道及び歩道の延在方向)に凹ませて凹部143を設け、前記凹部143の上縁を切り欠いて凹部段差144を形成し、更に天版14の上面を前記天版14の張出方向に直交する方向(車道及び歩道の延在方向)に山形断面とし、前記凹部14に向けた下り勾配の傾斜面145を設けながら、上記第6例同様に、天版14の上面の車道側や車道側縦壁13の上面の車道側を持ち上げて勾配αを与えている。これから、水平な掘削地盤に張出ブロック1を載置しても、前記天版14の上面に倣う停車帯舗装41や前記停車4に面一に形成される車道舗装21(後掲図14及び図15参照)は、歩道側に向けた下り勾配となり、車道2又は停車帯4に降る雨水を歩道側に誘導できる。
【0035】
第8例の張出ブロック1を例に、停車帯4の形成手順を説明する。まず、歩道3の車道側に植えられた街路樹31の根312を避けて掘削し、図11(街路樹31の根312を分かりやすくするため、歩道3の舗装は図示略。図12以下、同じ)に見られるように、水平な掘削地盤に底版11を載置し、車道2及び歩道3の延在方向に天版14を直交させた多数の張出ブロック1を並べる。これにより、張出ブロック1の天版14は、街路樹31の幹311近傍にまで張り出して、車道側に向けて伸びる根312を覆う格好となる。この段階の張出ブロック1は、相互間に隙間があり、必ずしも平行に並んでおらず、張出ブロック1の同じ位置関係に設けられた貫通孔15にわたってPC鋼材151を挿通している。
【0036】
張出ブロック1は、PC鋼材151を引き締めて相互間の隙間をなくし、図12に見られるように、天版14の張出方向(車道2及び歩道3の延在方向に直交する方向)の側端面を密着させる。これにより、多数の張出ブロック1は、PC鋼材151を介して一体化し、互いに緊張状態で密着する。こうして側端面を密着させた張出ブロック1は、例えば何らかの外力が上方から加わり、特定の張出ブロック1の天版14が沈み込もうとしても、前記張出ブロックの両隣の張出ブロック1,1がPC鋼材151を介して前記沈み込みを抑制又は防止する。このほか、PC鋼材151による引き締めは、張出ブロック1相互を密着させ、互いの位置関係を修正させる。
【0037】
側溝ブロック5は、張出ブロック1の天版14の張出方向に直交する方向の幅が前記張出ブロック1と同幅であるため、張出ブロック1に揃えて設置すると位置決めしやすく、張出ブロック1に設けた添設段差111に立設面51を宛てがい、また係合段差141に水平面52を上方から係合させるだけで設置が完了する。側溝ブロック5は、PC鋼材151により張出ブロック1相互の引き締めを終えた段階又は前記段階以降で車道舗装21及び停車帯舗装41を施す前に、張出ブロック1の歩道側縦壁12及び底版11に対して被せ、排水溝54を形成すればよい。
【0038】
本例は、天版14の張出方向(車道2及び歩道3の延在方向に直交する方向)の側端面を密着させ、対となる凹部143を突き合わせて形成される通水スリット142に対し、合成樹脂製のメッシュパイプ16を嵌め込み、各凹部143の上縁に形成した凹部段差144に前記メッシュパイプ16を係合させ、天版14の上面に側面が倣うように、前記メッシュパイプ16を保持させている。これにより、張出ブロック1の天版14の上面に停車帯舗装41を施しても、アスファルトが通水スリット142に侵入したり、形成された停車帯舗装41が径時的に凹んだりすることを防止できる。メッシュパイプ16に代えて、通水スリット142にポーラスコンクリートや砂利を充填したり、通水スリット142の上面開口にメッシュネットを張ったりしてもよい。
【0039】
こうしてメッシュパイプ16を通水スリット142に嵌め込んだ後、底版11、歩道側縦壁12及び車道側縦壁13に囲まれた空間に、例えばカウンターブロック22となるブロックを設置し、側溝ブロック5の水平面52の上面と面一に、前記カウンターブロック22の上面と張出ブロック1の車道側縦壁13の上面にわたって車道側舗装21を施し、また張出ブロック1の天版14に停車帯舗装41を施せば、図14に見られるように、車道2及び停車帯4の施工が完了する。車道2の上面、側溝ブロック5の水平面52の上面、そして停車帯4の上面は面一である。車道舗装21は、アスファルトから構成される通常舗装でよい。停車帯舗装41は、通水スリット142へ雨水を導けるように、透水性を備えた舗装とする。
【0040】
停車帯4は、図15及び図16に見られるように、歩道3の車道側に植えられた街路樹31の幹311近傍にまで形成され、前記街路樹31の根312の上方を覆っている。こうした停車帯4を形成する張出ブロック1の天版14は、底版11が車道2やカウンターブロック22により下方に押し下げられて、相対的に上方へ持ち上げられる力が働くので、仮に停車帯4に車両が継続的に停車しても、下方に伸びてくる街路樹31の根312に圧迫を与えない。また、既述したように、PC鋼材151により張出ブロック1相互が一体化しているため、特に特定の張出ブロック1の天版14にのみ負荷が掛かっても、なお根312を保護できる。
【0041】
停車帯4を形成する張出ブロック1の天版14は、車道2及び歩道3の延在方向へ密に敷き詰められ、街路樹31の根312を覆っている。しかし、停車帯舗装41が透水性を備え、また前記天版14の側端面に設けた凹部143により天版14の上面から下面に至る通水スリット142が形成されていることから、停車帯舗装41から通水スリット142を通じて、雨水を根312に行き渡らせることができる。このように、張出ブロック1は、停車する車両の圧迫から根312を保護し、天版14がなければ給水される雨水を根312に行き渡らせて、街路樹31の生育を妨げないようにする。
【符号の説明】
【0042】
1 張出ブロック
11 底版
12 歩道側縦壁
13 車道側縦壁
14 天版
15 貫通孔
16 メッシュパイプ
2 車道
21 車道舗装
22 カウンターブロック
3 歩道
31 街路樹
312 根
4 停車帯
41 停車帯舗装
5 側溝ブロック
51 立設面
52 水平面
53 排水スリット
54 排水溝
α 上面の勾配

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車道及び歩道に挟まれた停車帯を形成する張出ブロックであって、
車道の直下に埋設される底版と、前記底板の歩道側に立てられた歩道側縦壁と、前記歩道側縦壁から歩道に向けて張り出す天版とから構成されることを特徴とする張出ブロック。
【請求項2】
底版、縦壁又は天版のいずれか又は複数は、車道及び歩道の延在方向に延びる貫通孔を設けた請求項1記載の張出ブロック。
【請求項3】
天版は、上面と下面とを結ぶ通水経路を設けた請求項1又は2いずれか記載の張出ブロック。
【請求項4】
通水経路は、天版の上面から下面に貫通する通水孔又は通水スリットである請求項3記載の張出ブロック。
【請求項5】
通水経路は、車道及び歩道の延在方向に直交する天版の側端面を、前記天版の上面から下面にかけて凹ませて形成された凹部である請求項3記載の張出ブロック。
【請求項6】
天版は、通水経路の上面側開口に向けた下り勾配の傾斜面を形成した請求項3〜5いずれか記載の張出ブロック。
【請求項7】
天版は、通水経路内に透水部材を充填又は嵌合した請求項3〜6いずれか記載の張出ブロック。
【請求項8】
車道及び歩道の間に張出ブロックを設置して形成される停車帯であって、
張出ブロックは、車道の直下に埋設される底版と、前記底板の歩道側に立てられた歩道側縦壁と、前記歩道側縦壁から歩道に向けて張り出す天版とから構成され、
車道の直下に底版を埋設し、車道及び歩道の延在方向に天版を直交させた張出ブロックを多数設置し、全張出ブロックの天版を連ねて形成されることを特徴とする停車帯。
【請求項9】
張出ブロックは、歩道側縦壁及び底版に対して、歩道側縦壁に対向する立設面と、底版に対向する水平面とから構成され、前記水平面の上面と下面とを結ぶ排水経路を設けた側溝ブロックを被せることにより、底版、歩道側縦壁、立設面及び水平面に囲まれた閉鎖断面構造の排水溝を形成する請求項8記載の停車帯。
【請求項10】
張出ブロックは、車道及び歩道の延在方向に延びる貫通孔を、底版、歩道側縦壁又は天版のいずれか又は複数に設け、
設置された多数の張出ブロックそれぞれの貫通孔に挿通したPC鋼材により、前記多数の張出ブロックを緊張状態で密着させた請求項8又は9いずれか記載の停車帯。
【請求項11】
張出ブロックは、上面と下面とを結ぶ通水経路を天版に設けた請求項8〜10いずれか記載の停車帯。
【請求項12】
通水経路は、天版の上面から下面に貫通する通水孔又は通水スリットである請求項11記載の停車帯。
【請求項13】
通水経路は、車道及び歩道の延在方向に直交する天版の側端面を、前記天版の上面から下面にかけて凹ませて形成された凹部である請求項11記載の停車帯。
【請求項14】
張出ブロックは、通水経路の上面側開口に向けた下り勾配の傾斜面を天版に形成した請求項11〜13いずれか記載の停車帯。
【請求項15】
張出ブロックは、天版の通水経路内に透水部材を充填又は嵌合した請求項11〜14いずれか記載の停車帯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−23947(P2013−23947A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160966(P2011−160966)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000211237)ランデス株式会社 (35)
【Fターム(参考)】