説明

強誘電性液晶装置

【課題】 強誘電性液晶パネルのリセット期間のちらつき現象を目立たなくして、表示品質が高く視認性に優れた強誘電性液晶装置を提供する。
【解決手段】 強誘電性液晶パネルを備えた液晶装置において、液晶パネルへの駆動電圧の印加は、1フレーム期間で行われ、1フレーム期間は、強誘電性液晶を2つの安定状態のうち、一方の安定状態にリセットするリセット期間Reと、強誘電性液晶を2つの安定状態のうち、どちらかの安定状態を選択する選択期間Seとを備え、リセット期間Reは、複数の双極性リセットパルスRpdによって構成され、双極性リセットパルスRpdのパルス幅Trは、選択期間Seに印加される選択パルスSpd1〜Spd4のパルス幅Tsと等しいか、それより短い構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの安定状態を持ちメモリ性効果を有する強誘電性液晶パネルの表示品質を改善する強誘電性液晶装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、メモリ性効果を有する強誘電性液晶が盛んに研究開発され、低消費電力の特徴を生かして表示装置や液晶シャッター等の製品化が進んでいる。しかし、強誘電性液晶の動作は、一般的なTN型液晶とは異なっており、特殊な駆動電圧を印加して駆動する必要がある。ここで、公知ではあるが本発明を理解する助けとなるので、強誘電性液晶パネルの構成と動作について概略を以下説明する。
[強誘電性液晶パネルの構成と動作の説明]
まず、強誘電性液晶層を有するメモリ性効果を備えた強誘電性液晶パネルの構造を図8に基づいて説明する。図8(a)は強誘電性液晶パネルの偏光板配置の構成を模式的に示した平面図である。図8(a)において、強誘電性液晶パネル120は、互いの偏光軸をクロスニコルに合わせた偏光板121a、121bの間に、偏光板121aの偏光軸Cと偏光板121bの偏光軸Dのどちらか一方と、液晶分子の第1の安定状態(矢印E)もしくは、第2の安定状態(矢印F)のときの分子長軸方向のどちらかとが、ほぼ平行になるように強誘電性液晶層122を配置する。ここで、図8(a)においては、偏光板121aの偏光軸Cと第1の安定状態(矢印E)のときの分子長軸方向が、ほぼ平行になるように配置されている。
【0003】
次に図8(b)は、強誘電性液晶パネル120の構造を模式的に示した断面図である。図8(b)において、強誘電性液晶パネル120は、少なくとも2つの安定状態を持つメモリ性液晶である強誘電性液晶層122を挟持する一対のガラス基板123a、123bから構成される。また、このガラス基板123aと123bはシール材126によって固着されている。そして、ガラス基板123a、123bの対向面には駆動電極としての複数の走査電極124と、信号電極125が設けられており、その上に配向膜127a、127bが蒸着されている。
【0004】
さらに一方のガラス基板123aの外側には、前述した如く、強誘電性液晶層122の液晶分子の第1もしくは第2の安定状態の時の分子長軸方向が平行になるように第1の偏光板121aが設けられており、他方のガラス基板123bの外側には、第1の偏光板121aの偏光軸と90度異なるようにして第2の偏光板121bが設けられている。
【0005】
次に、図8で示した強誘電性液晶パネル120の動作について図9を用いて説明する。図9は、強誘電性液晶パネル120を駆動する駆動電圧(X軸)に対する光透過率L(Y軸)の変化を示している。ここで、強誘電性液晶のスイッチング、つまり一方の安定状態から他方の安定状態への転移は、印加する駆動電圧のパルス高値Vとパルス幅値Tとの積の値VT(以下、駆動電圧VTと記す)が閾値以上の値となる駆動パルスを強誘電性液晶に印加した場合にのみ起こる。図9において、強誘電性液晶パネル120は駆動電圧VTの極性の違いによって、第1の安定状態(非透過(黒)表示)か、第2の安定状態(透過(白)表示)かのいずれかが選択される。
【0006】
ここで、駆動電圧VTをプラス方向に増加させたとき、光透過率Lが変化し始める電圧値を+Vt、光透過率Lの変化が飽和する電圧値を+Vhとする。次に駆動電圧VTを減少させ、さらに逆極性のマイナス方向に電圧を増加させて光透過率Lが減少し始める電圧値を−Vt、光透過率Lの変化が飽和する電圧値を−Vhとする。ここで、±Vtを強誘
電性液晶の閾値電圧、±Vhを飽和電圧と定義する。
【0007】
このように強誘電性液晶パネル120は、強誘電性液晶の閾値電圧+Vtを越えて飽和電圧+Vh以上の電圧が印加された場合に第2の安定状態が選択され、また、強誘電性液晶の逆極性の閾値電圧−Vtを越えて飽和電圧−Vh以上の電圧が印加された場合は、第1の安定状態が選択される。そして、その後、駆動電圧VTが0Vになっても強誘電性液晶のメモリ性効果によって、それぞれの安定状態は維持される。
【0008】
この結果、図8(a)に示すように偏光板121a、121bを配置すると、第2の安定状態で白表示(透過状態)、第1の安定状態で黒表示(非透過状態)となる。尚、偏光板121a、121bの配置を変えることにより、第2の安定状態で黒表示(非透過状態)、第1の安定状態で白表示(透過状態)とすることも出来る。
【0009】
このように強誘電性液晶を用いた液晶パネルは、駆動電圧を印加して表示を書き換えて安定状態とした後、液晶パネルへの電源を遮断しても、表示を維持することが出来るので、省電力に優れた液晶表示装置を容易に実現することが出来る。
[強誘電性液晶パネルの駆動例]
このようなメモリ性効果を備えた強誘電性液晶パネルの駆動は、様々な駆動波形が開示されている(例えば特許文献1参照)。この特許文献1で開示されている従来の強誘電性液晶パネルの駆動波形について図10を用いて説明する。
【0010】
図10は、特許文献1に記載されている強誘電性液晶パネルの従来の駆動波形であり、駆動電圧VCOMn−1、VCOMnは、走査電極COMn−1とCOMnに印加される駆動電圧であり、3値レベルを有している。これらの駆動電圧は、リセット期間Reと選択期間Seによって構成される。
【0011】
駆動電圧VCOMn−1、VCOMnの先頭の幅の長いパルス列(リセットパルスRp)は、強誘電性液晶パネルに表示データを書き込む前に、強誘電性液晶パネル全体をリセットするためのものである。このリセットのためのパルス列の期間をリセット期間Reと称し、最初の高い電圧+VSが印加される期間で強誘電性液晶パネル全体を白表示状態にする。また、次の低い電圧−VSが印加される期間で強誘電性液晶パネル全体を黒表示状態にする。これをもう1回繰り返し、データ書き込みを行う前に強誘電性液晶パネル全体を黒表示状態にリセットする。
【0012】
このリセット動作の目的は、強誘電性液晶パネルでは、液晶層内に自発分極による大きな電界が存在し、この電界により不純物イオンが偏在したり層構造が変化したりする。これが原因となっていわゆる「焼き付き」が現れてしまうので、表示の書き込み前にリセットパルスを印加し、不純物イオンの拡散や層構造の安定化を図っている。
【0013】
また、リセット期間Re後の選択期間Seでは、各走査電極を選択する選択パルスSpが出力される。ここで、リセットパルスRpのパルス幅Trと選択パルスSpのパルス幅Tsを比較すると、図示するように、リセットパルスRpのパルス幅Trのほうがパルス幅Tsより長く設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2003−177378号公報(第3頁、第6図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
一般に、リセットパルスは、正負の双極性リセットパルスで構成されている。このような従来技術では、リセットパルスRpの前半の電圧+VSの印加で画素が一定時間白表示となり、後半の電圧−VSの印加で画素が一定時間黒表示となる。ここで、強誘電性液晶パネルへのリセットパルスRpは、すべての画素に同時に印加されるので、液晶パネルを肉眼で見た場合、リセット期間Reにおいて、液晶パネルの全画素が短時間ではあるが、白→黒の変化が認識されて、これが液晶パネルの表示画面全体のちらつきとして見えてしまう。このちらつき現象は、表示内容が変わる度に発生するので、液晶装置の使用者に不快感や違和感を与え、また、表示品質が低下するので問題である。特に特許文献1では、リセットパルスRpのパルス幅Trがかなり長く設定され、かつ複数の双極性リセットパルスを採用しているため、白→黒→白→黒と顕著にちらつきが見えてしまう
本発明の目的は上記課題を解決し、強誘電性液晶パネルのリセット期間のちらつき現象を目立たなくして、表示品質が高く視認性に優れた強誘電性液晶装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明の強誘電性液晶装置は、下記記載の構成を採用する。
【0017】
本発明の強誘電性液晶装置は、一対の基板間に2つの安定状態を持つ強誘電性液晶を挟持し、駆動電圧を印加するための電極を有する強誘電性液晶パネルを備えた液晶装置であって、電極への駆動電圧の印加は、強誘電性液晶を2つの安定状態のうち一方の安定状態にリセットするリセット期間と、このリセット期間の後に設定され、強誘電性液晶を2つの安定状態のうち、どちらかの安定状態を選択する選択期間とを備えた期間で行われ、リセット期間内では、複数の双極性リセットパルスによって、強誘電性液晶は、リセット期間内で、一方の安定状態と他方の安定状態との両方の安定状態を示し、複数の双極性リセットパルスによる強誘電性液晶の一方の安定状態から他方の安定状態へ移行する繰り返し周期が、人の目が認識出来る時間より短くなるように双極性リセットパルスのパルス幅が設定されていることを特徴とする。 また、リセット期間における双極性リセットパルスの駆動周波数は60Hz以上であることを特徴とする。
【0018】
また、リセット期間は所定の長さを有し、リセット期間の長さの中で、双極性リセットパルスのパルス幅に応じてパルス数を設定することを特徴とする。
【0019】
また、リセット期間は所定の長さを有し、リセット期間の長さの中で、双極性リセットパルスのパルス数に応じてパルス幅を設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
上記の如く本発明によれば、強誘電性液晶パネルのリセットパルスを複数のパルスで構成し、かつ、リセット期間内での強誘電性液晶の一方の安定状態から他方の安定状態へ移行する繰り返し周期が、人の目が認識出来る時間より短くなるように双極性リセットパルスのパルス幅が設定されているので、リセット期間に強誘電性液晶パネルの画素が白または黒に変化しても、その変化が速いので変化を認識できなくなる。これにより、強誘電性液晶装置を表示装置に応用した場合、リセット期間に短時間だけグレー表示となるだけで、ちらつきが目立たなくなり、使用者に不快感や違和感を与えず、表示品質が高く視認性に優れた強誘電性液晶装置を提供することができる。
【0021】
また、リセットパルスのパルス幅に応じてパルス数を増減することで、リセット期間を所定の長さにできるので、強誘電性液晶パネルの書き換え時間が長くなることがない。これにより、所定の書き換え時間の中で、確実に強誘電性液晶パネルのリセット動作を実現することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態の強誘電性液晶装置の構成を説明するブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の強誘電性液晶装置の動作を説明するフローチャートである。
【図3】本発明の第1の実施形態の駆動電圧とSEG駆動電圧の一例を説明する波形図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の合成駆動電圧の一例を説明する波形図である。
【図5】本発明の第1の実施形態の書き換え前の表示状態とリセット期間での表示状態と選択期間後の表示状態とを示す画素の表示模式図である。
【図6】本発明の第2の実施形態の駆動電圧とSEG駆動電圧の一例を説明する波形図である。
【図7】本発明の第2の実施形態の合成駆動電圧の一例を説明する波形図である。
【図8】強誘電性液晶パネルの構造を説明する説明図である。
【図9】強誘電性液晶パネルの動作を説明する動作図である。
【図10】従来の強誘電性液晶パネルの駆動電圧を説明する波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下図面により本発明の実施の形態を詳述する。
[各実施形態の特徴]
第1の実施形態の特徴は、複数あるリセットパルスのパルス幅が短く選択期間の選択パルスのパルス幅と等しいことである。これにより、リセット期間でのちらつきが目立たなくなり、また、制御回路を簡単化できる利点がある。また、第2の実施形態の特徴は、リセットパルスのパルス幅が選択パルスのパルス幅より短く、パルス数が第1の実施形態より多いことである。これにより、ちらつきが更に目立たなくなり、表示品質が向上する。
【実施例1】
【0024】
[第1の実施形態の構成説明:図1]
第1の実施形態の強誘電性液晶装置の構成について図1を用いて説明する。図1において、1は第1の実施形態としての強誘電性液晶装置である。強誘電性液晶装置1は、マイクロコンピュータ(以下、マイコンと略す)10と、マイコン10からの制御信号によって制御されるドライバ回路としてのドライバIC20と、ドライバIC20によって駆動される強誘電性液晶パネル30によって構成される。なお、上記構成以外に、マイコン10とドライバIC20を駆動する電源などがあるが、本発明に直接係わらないので説明は省略する。
【0025】
マイコン10は、一般的なワンチップマイコンであり、データ処理を行う演算部11、ファームウエアなどを記憶するROM13、データを一時的に記憶するRAM14などによって構成される。マイコン10の内部は、データバスB1によって、演算部11、ROM13、RAM14などが結合され、様々なデータの受け渡しが行われる。また、演算部11は、ドライバIC20にコマンドを出力するための制御信号としてのシリアルバスSIが接続されている。
【0026】
ドライバIC20は、マイコン10からのシリアルバスSIを介してコマンドを入力し、強誘電性液晶パネル30の動作を制御する制御回路21、強誘電性液晶パネル30を駆動する駆動電圧の基となる複数の液晶電圧を生成する電圧発生回路25、強誘電性液晶パネル30の信号電極に駆動電圧を供給するSEG駆動回路26、及び、強誘電性液晶パネル30の走査電極に駆動電圧を供給するCOM駆動回路27などによって構成される。
【0027】
また、制御回路21は、強誘電性液晶パネル30に供給するリセットパルスのパルス幅やパルス数を決定するリセット制御回路22と、選択パルスのパルス幅を決定する選択制御回路23とを含んでいる。なお、図示しないが、ドライバIC20は、駆動電圧の変動や周囲温度の変化などに応じて駆動電圧のパルス幅を調整する変換テーブルを有している。
【0028】
また、ドライバIC20の内部は、制御バスB2によって、制御回路21、電圧発生回路25、SEG駆動回路26、COM駆動回路27などが結合され、制御回路21によって制御されて各回路は様々な動作を実行する。また、制御回路21は、前述のマイコン10からのシリアルバスSIが接続され、マイコン10からのコマンドを入力してSEG駆動回路26とCOM駆動回路27を制御し、強誘電性液晶パネル30に様々な情報を表示する。
【0029】
また、電圧発生回路25は、内部に昇圧回路(図示せず)を有し、複数の液晶電圧V0、V1、V2、V3を出力して、SEG駆動回路26とCOM駆動回路27に供給する。なお、各液晶電圧の電圧値は、一例として、液晶電圧V0が零ボルトであり、液晶電圧V1が+1.2Vであり、液晶電圧V2が液晶電圧V1を2倍昇圧した+2.4V位であり、液晶電圧V3が液晶電圧V1を4倍昇圧した+4.8V位である。ここで、液晶電圧V1は強誘電性液晶の閾値電圧Vt(図9参照)以下に設定され、液晶電圧V3は強誘電性液晶の飽和電圧Vh(図9参照)を越えた電圧に設定される。
【0030】
また、強誘電性液晶パネル30は、一例として前述の図8で示した強誘電性液晶パネル120と同様な構造であり、少なくとも2つの安定状態を持つ強誘電性液晶層(図示せず)を有し、複数の信号電極SEGと、複数の走査電極COMを備えている。そして、信号電極SEGと走査電極COMが対向する箇所にマトリクス状の画素Gが多数形成されて、この画素GがONまたはOFFすることで、様々な情報を表すことが出来る。
【0031】
また、ドライバIC20のSEG駆動回路26からは、複数のSEG駆動電圧VSEGが出力して液晶パネル30の信号電極SEGに供給され、同様にドライバIC20のCOM駆動回路27からは、複数のCOM駆動電圧VCOMが出力して液晶パネル30の走査電極COMに供給されて、強誘電性液晶パネル30を駆動する。
[第1の実施形態の動作説明:図1、図2]
次に、第1の実施形態の強誘電性液晶装置1の動作の概略を図2のフローチャートを用いて説明する。なお、強誘電性液晶装置1の構成は図1を参照する。また、動作説明の前提として、強誘電性液晶装置1が、時刻などを表示する電子時計の表示装置であるとする。
【0032】
図2において、マイコン10は、強誘電性液晶パネル30の表示を更新するかどうかを判定する(ST1)。ここで、表示内容の更新は、例えば、強誘電性液晶装置1が時分の時刻を表示する電子時計の表示部である場合、マイコン10の演算部11によって計時動作が行われ、分の桁が進んだときに表示の更新が必要となる。または、電子時計の使用者が操作スイッチ(図示せず)を操作して表示モードを切り替えた場合などに必要となる。このステップST1が肯定判定であれば次のステップST2へ進み、否定判定であればステップST1で表示の更新まで待機状態を保持する。
【0033】
次にマイコン10は、ステップST1で肯定判定がなされたならば、ドライバIC20の電圧発生回路25を起動するコマンドをシリアルバスSIによってドライバIC20に送信する。ドライバIC20の制御回路21は、このコマンドを受信すると、制御バスB2を介して電圧発生回路25に制御信号を出力し、電圧発生回路25を起動する。これにより、電圧発生回路25は、強誘電性液晶パネル30の駆動に必要な液晶電圧V0、V1、V2、V3の出力を開始する(ST2)。
【0034】
次にマイコン10は、更新する表示データを表示コマンドに組み込んでシリアルバスSIによってドライバIC20に送信する。ドライバIC20は、この表示コマンドを受信すると、更新する表示データとして制御回路21の内部にあるメモリ(図示せず)に一時的に記憶し、更新する表示データの準備を行う(ST3)。例えば、時刻が11時59分から12時00分に進んだ場合、内蔵メモリに更新する表示データとして12時00分を記憶させて表示データの準備を整える。
【0035】
次にドライバIC20の制御回路21は、内蔵するリセット制御回路22によって、強誘電性液晶パネル30に出力するリセットパルスのパルス幅とパルス数を決定する(ST4)。この場合、リセットパルスのパルス幅とパルス数は、マイコン10からのコマンドを受信してリセット制御回路22で決定されるが、リセット制御回路22の内部で、予め記憶されたデータに基づいて決定してもよい。
【0036】
次にドライバIC20の制御回路21は、内蔵する選択制御回路23によって、強誘電性液晶パネル30に出力する選択パルスのパルス幅を決定する(ST5)。この場合、選択パルスのパルス幅は、マイコン10からのコマンドを受信して選択制御回路23で決定してもよく、または、選択制御回路23の内部で、予め記憶されたデータに基づいて決定してもよい。なお、リセットパルスと選択パルスのパルス幅等の詳細は後述する。
【0037】
次にドライバIC20の制御回路21は、制御バスB2を介してSEG駆動回路26とCOM駆動回路27を動作させ、リセット制御回路22によって設定されたリセットパルスを出力して強誘電性液晶パネル30のすべての画素Gをリセットする(ST6)。
【0038】
次にドライバIC20の制御回路21は、制御バスB2を介してSEG駆動回路26とCOM駆動回路27を動作させ、選択制御回路23によって設定された選択パルスを表示データに基づいて出力する。これにより、一つの走査電極COMが選択されて、そのライン上のすべての画素Gが表示データに基づいて白または黒に書き換えられる(ST7)。
【0039】
次にドライバIC20は、強誘電性液晶パネル30の1フレームの書き換えがすべて終了したかどうかを判定する(ST8)。ここで、肯定判定であれば次のステップST9へ進み、否定判定であればステップST7に戻って、次の走査電極COMを選択する選択パルスを出力し、選択された走査電極COM上のすべての画素を書き換える。このようにステップST7、ST8を繰り返すことによって、強誘電性液晶パネル30に1フレーム分の駆動電圧が供給され、強誘電性液晶パネル30の全画素は新しい表示内容が書き込まれて表示が更新される。
【0040】
次にマイコン10は、ステップST8で肯定判定がなされたならば、1フレームが終了したので停止コマンドをドライバIC20に送信し、SEG駆動回路26とCOM駆動回路27の動作を停止すると共に、電圧発生回路25の出力を停止して強誘電性液晶パネル30の書き換え動作を完了する(ST9)。
【0041】
尚、ドライバIC20はステップST9の終了後、休止状態となり、強誘電性液晶パネ
ル30への駆動電圧は零ボルト(V0)となるので、この休止期間の消費電力は極めて小さくなる。また、強誘電性液晶パネル30はメモリ性液晶パネルであるので、駆動電圧の供給が停止しても、メモリ性効果によって表示が維持されることはもちろんである。
【0042】
このように、強誘電性液晶装置1は、マイコン10からのコマンドによってドライバIC20が制御されて強誘電性液晶パネル30を駆動するものであり、マイコン10は、ドライバIC20を制御して、設定されたリセットパルスを出力し、また、表示データに基づいた選択パルスを出力し、強誘電性液晶パネル30に適した駆動電圧を供給して、様々な情報を表示することが出来る。
[第1の実施形態の強誘電性液晶装置の駆動波形の説明:図3]
次に、強誘電性液晶パネル30(図1参照)をマトリクス駆動するCOM駆動電圧VCOMとSEG駆動電圧VSEGとの各駆動波形を図3に基づいて説明する。なお、説明を分かりやすくするために、強誘電性液晶パネル30の走査電極COMを4本とし、この4本の走査電極COMに1本の信号電極SEGが対向して形成される4個の画素Gを駆動する駆動電圧を例として説明する。なお、4本の走査電極をCOM1、COM2、COM3、COM4と称し、1本の信号電極をSEG1と称する。
【0043】
また、走査電極COM1と信号電極SEG1が対向して形成される画素を画素G1と称し、以下同様に、走査電極COM2と信号電極SEG1による画素G2、走査電極COM3と信号電極SEG1による画素G3、走査電極COM4と信号電極SEG1による画素G4と称する。また、4本の走査電極COM1〜COM4にそれぞれ供給される4つの駆動電圧をCOM駆動電圧VCOM1〜VCOM4と称し、1本の信号電極SEG1に供給される駆動電圧をSEG駆動電圧VSEG1と称する。
【0044】
図3において、まずCOM駆動電圧VCOM1〜VCOM4(以下、駆動電圧VCOM1〜VCOM4と略す)の駆動波形例を説明する。駆動電圧VCOM1〜VCOM4の1フレーム期間は、リセット期間Reと選択期間Seによって構成される。これは、図10で示した従来例と同様である。すなわち、リセット期間Reは、強誘電性液晶パネル30のすべての画素を2つの安定状態のうち、一方の安定状態にリセットする期間である。選択期間Seは走査電極COM1〜COM4を順次選択し、選択した画素を表示情報に基づいて2つの安定状態のうち、どちらかの安定状態(白または黒)を選択し書き込む期間である。
【0045】
1フレーム期間の初めのリセット期間Reは、パルス列となって2つのCOMリセットパルスRpc(以下、リセットパルスRpcと略す)が出力する。そして、リセットパルスRpcの前半は、液晶電圧V3が出力し、リセットパルスRpcの後半は、液晶電圧V0が出力する。すべての駆動電圧VCOM1〜VCOM4のリセット期間Reは、同一のタイミングで同一の2つのリセットパルスRpcが出力される。これによって、すべての画素G1〜G4を同時にリセットすることが出来る。
【0046】
また、リセット期間Reのあとの選択期間Seは、走査電極COM1を選択する第1選択期間Se1、走査電極COM2を選択する第2選択期間Se2、走査電極COM3を選択する第3選択期間Se3、走査電極COM4を選択する第4選択期間Se4によって構成される。ここで、第1選択期間Se1では、駆動電圧VCOM1から選択パルスSp1が出力する。同様に、第2選択期間Se2は駆動電圧VCOM2から選択パルスSp2が出力し、第3選択期間Se3は駆動電圧VCOM3から選択パルスSp3が出力し、第4選択期間Se4は駆動電圧VCOM4から選択パルスSp4が出力する。
【0047】
それぞれの第1〜第4選択パルスSp1〜Sp4の前半は液晶電圧V0が出力され、後半は液晶電圧V3が出力される。また、駆動電圧VCOM1の第1選択期間Se1以外の
第2〜第4選択期間Se2〜Se4は、駆動電圧VCOM1の非選択期間であり、前半が液晶電圧V2、後半が液晶電圧V1である非選択パルスNSpが出力する。同様に、駆動電圧VCOM2〜VCOM4においても、それぞれの選択期間(Se2〜Se4)以外の非選択期間では、前半が液晶電圧V2、後半が液晶電圧V1である非選択パルスNSpが出力する。また、リセットパルスRpcのパルス幅Trと第1〜第4選択パルスSp1〜Sp4のパルス幅Tsは等しく設定されている。
【0048】
次に、信号電極SEG1に供給されるSEG駆動電圧VSEG1(以下、駆動電圧VSEG1と略す)の駆動波形例を説明する。なお、説明の前提として、画素G1〜G4をリセット期間Reによって、すべて一方の安定状態である黒にした後に、選択期間Seによって画素G1とG2を白、画素G3とG4を黒とする駆動電圧を例として説明する。
【0049】
図3において、駆動電圧VSEG1の1フレーム期間は、リセット期間Reと選択期間Seによって構成される。駆動電圧VSEG1のリセット期間Reは、V3の1/2電圧を中心にしたときに、駆動電圧VCOM1〜VCOM4の2つのリセットパルスRpcとは逆極性の2つのSEGリセットパルスRps(以下、リセットパルスRpsと略する)が出力する。すなわち、リセットパルスRpsの前半は、液晶電圧V0が出力し、後半は液晶電圧V3が出力する。
【0050】
また、駆動電圧VSEG1の選択期間Seは、駆動電圧VCOM1〜VCOM4と同様に、第1〜第4選択期間Se1〜se4によって構成される。そして、画素G1が選択される第1選択期間Se1は、画素G1が白となる書き込みをするので、V3の1/2電圧を中心にしたときに、駆動電圧VCOM1の選択パルスSp1と逆極性の白選択パルスSpwが出力される。すなわち、白選択パルスSpwの前半は液晶電圧V3であり、後半は液晶電圧V0である。また同様に、画素G2が選択される第2選択期間Se2は、画素G2が白となる書き込みをするので、V3の1/2電圧を中心にしたときに、駆動電圧VCOM2の選択パルスSp2と逆極性の白選択パルスSpwが出力される。すなわち、白選択パルスSpwの前半は液晶電圧V3であり、後半は液晶電圧V0である。
【0051】
また、画素G3が選択される第3選択期間Se3は、画素G3が黒となる書き込みをするので、V3の1/2電圧を中心にしたときに、駆動電圧VCOM3の選択パルスSp3と同極性で電圧の低い黒選択パルスSpbが出力される。すなわち、黒選択パルスSpbの前半は液晶電圧V1であり、後半は液晶電圧V2である。また同様に、画素G4が選択される第4選択期間Se4は、画素G4が黒となる書き込みをするので、V3の1/2電圧を中心にしたときに、駆動電圧VCOM4の選択パルスSp4と同極性で電圧の低い黒選択パルスSpbが出力される。すなわち、黒選択パルスSpbの前半は液晶電圧V1であり、後半は液晶電圧V2である。
【0052】
次に、1フレーム期間が終了したならば、前述したように、強誘電性液晶パネル30の書き換え動作が完了したので、図示しないが、駆動電圧VCOM1〜VCOM4と駆動電圧VSEG1は、液晶電圧V0(零ボルト)となる。
[第1の実施形態の強誘電性液晶装置の合成駆動波形の説明:図4]
次に、駆動電圧VCOMと駆動電圧VSEGを合成した合成駆動波形について図4を用いて説明する。図4において、合成駆動電圧Vpx1〜Vpx4(以下、駆動電圧Vpx1〜Vpx4と略す)は、図3で示した駆動電圧VCOM1〜VCOM4と駆動電圧VSEG1を合成した駆動電圧であり、強誘電性液晶パネル30の画素G1〜G4にそれぞれ印加される。
【0053】
すなわち、強誘電性液晶パネル30の走査電極COM1〜COM4に駆動電圧VCOM1〜VCOM4が印加され、信号電極SEG1に駆動電圧VSEG1が印加されることで
、画素G1〜G4には、合成された駆動電圧Vpx1〜Vpx4が印加されて駆動されるのである。ここで、駆動電圧Vpx1は画素G1を選択し、以下同様に、駆動電圧Vpx2〜Vpx4は画素G2〜G4を選択する。
【0054】
この駆動電圧Vpx1〜Vpx4の1フレーム期間は、リセット期間Reと選択期間Seによって構成される。リセット期間Reは、前述のリセットパルスRpcとリセットパルスRpsが合成されてプラスマイナスの双方向のパルスである双極性リセットパルスRpdが2つのパルス列として出力する。これは、リセットパルスRpcとリセットパルスRpsがV3の1/2電圧を中心にしたときに逆極性のパルスだからである。
【0055】
この双極性リセットパルスRpdの前半は、プラス方向の液晶電圧+V3が出力し、後半はマイナス方向の液晶電圧−V3が出力する。すなわち、双極性リセットパルスRpdは、零ボルトである液晶電圧V0を中心にした交流電圧である。この交流化駆動は、強誘電性液晶の劣化を防ぐために必要であり、後述する選択期間Seの合成選択パルスも交流電圧である。
【0056】
このリセット期間Reにおいて、画素G1〜G4には、同時に双極性リセットパルスRpdが2回繰り返して印加されるが、液晶電圧+V3と−V3の絶対値が、強誘電性液晶パネル30の飽和電圧Vh(図9参照)を越えるように設定されるならば、すべての画素G1〜G4は最初の双極性リセットパルスRpdの前半で白の安定状態になり、次の双極性リセットパルスRpdの後半で、黒の安定状態になる。そして更に次の2つ目の双極性リセットパルスRpdの前半で、すべての画素G1〜G4は再び白の安定状態になり、次の双極性リセットパルスRpdの後半で、黒の安定状態になる。すなわち、リセット期間Reにおいて、強誘電性液晶パネル30の画素G1〜G4は、2つの安定状態の両方をしめし、白→黒→白→黒の動作を繰り返し、リセット期間Reの最後には黒にリセットされて次の選択期間Seに移行する。
【0057】
次にリセット期間Re後の選択期間Seの第1選択期間Se1において、駆動電圧Vpx1は、駆動電圧VCOM1の選択パルスSp1と駆動電圧VSEG1の白選択パルスSpwが合成された合成選択パルスSpd1(以下、選択パルスSpd1と略す)が出力する。この選択パルスSpd1は、図示するように、パルスの前半は液晶電圧−V3が出力し、パルスの後半は液晶電圧+V3が出力する。これにより、選択パルスSpd1の前半は、画素G1は黒の安定状態が続くが、パルスの後半では白の安定状態となる。そして、第1選択期間Se1のあとの第2〜第4選択期間Se2〜Se4は、強誘電性液晶パネル30の閾値電圧Vt以下の液晶電圧+V1、−V1が繰り返されるので、白の安定状態が継続する。
【0058】
また、リセット期間Re後の選択期間Seの第2選択期間Se2において、駆動電圧Vpx2は、駆動電圧VCOM2の選択パルスSp2と駆動電圧VSEG1の白選択パルスSpwが合成された選択パルスSpd2が出力する。この選択パルスSpd2は、図示するように、パルスの前半は液晶電圧−V3が出力し、パルスの後半は液晶電圧+V3が出力する。これにより、選択パルスSpd2の前半は、画素G2は黒の安定状態が続くが、パルスの後半では白の安定状態となる。そして、第2選択期間Se2のあとの第3、第4選択期間Se3、Se4は、強誘電性液晶パネル30の閾値電圧Vt以下の液晶電圧+V1、−V1が繰り返されるので、白の安定状態が継続する。なお、駆動電圧Vpx2の第1選択期間Se1は、閾値電圧Vt以下の液晶電圧−V1、+V1が印加されるので、リセット期間Reの最後の黒が第1選択期間Se1だけ継続する。
【0059】
また、選択期間Seの第3選択期間Se3において、駆動電圧Vpx3は、駆動電圧VCOM3の選択パルスSp3と駆動電圧VSEG1の黒選択パルスSpbが合成された選
択パルスSpd3が出力する。この選択パルスSpd3は、図示するように、パルスの前半は液晶電圧−V1が出力し、パルスの後半は液晶電圧+V1が出力する。ここで、液晶電圧−V1と+V1は閾値電圧Vtより小さいので、選択される画素G3の安定状態が転移することはない。また、第1と第2選択期間Se1、Se2、及び第4選択期間Se4においても、閾値電圧Vt以下の液晶電圧+V1、−V1が繰り返されるので、安定状態は転移せず、これにより、画素G3はリセット期間Reでリセットされた黒の安定状態が継続する。
【0060】
また、選択期間Seの第4選択期間Se4において、駆動電圧Vpx4は、駆動電圧VCOM4の選択パルスSp4と駆動電圧VSEG1の黒選択パルスSpbが合成された選択パルスSpd4が出力する。この選択パルスSpd4は、図示するように、パルスの前半は液晶電圧−V1が出力し、パルスの後半は液晶電圧+V1が出力する。ここで、液晶電圧−V1と+V1は閾値電圧Vtより小さいので、選択される画素G4の安定状態が転移することはない。また、第1〜第3選択期間Se1〜Se3においても、閾値電圧Vt以下の液晶電圧+V1、−V1が繰り返されるので、安定状態は転移せず、これにより、画素G4はリセット期間Reでリセットされた黒の安定状態が継続する。
【0061】
この結果、1フレーム期間において、すべての画素G1〜G4は、リセット期間Reによって黒にリセットされたのち、選択期間Seでの駆動電圧の印加によって、画素G1とG2は、白表示となり、画素G3とG4は、黒表示となる。なお、本実施例では、双極性リセットパルスRpdのパルス幅Trは、前述したように、選択パルスSpd1〜Spd4のパルス幅Tsと等しく設定される。これにより、リセット期間Reと選択期間Seのパルス幅が等しいので、前述したリセット制御回路22と選択制御回路23の回路構成を簡単化できる利点がある。なお、ここで強誘電性液晶の一方の安定状態から他方の安定状態へ移行する繰り返し周期が、人の目が認識出来る時間より短くなるように、双極性リセットパルスRpdのパルス幅Trを設定する。一般に人の目が認識できる時間より短くするには、駆動電圧の駆動周波数を駆動周波数を60Hz以上にすることが望ましい。よって、本実施形態では一例として、双極性リセットパルスRpdの駆動周波数を60Hzとし、双極性リセットパルスRpdのパルス幅Trを約16mSに設定した。
[第1の実施形態の画素表示状態の説明:図5]
次に、図4で示した合成駆動波形によって、強誘電性液晶パネル30の画素G1〜G4がどのように表示されるかの一例を図5の模式図によって説明する。なお、図5において画素G1〜G4は、走査電極COM1〜COM4と信号電極SEG1がそれぞれ対向して形成される画素であるが、信号電極SEG1に隣接する信号電極SEG2と対向して形成される画素は図示を省略している。また実際には、さらに多くの走査電極と信号電極が形成され、各電極が対向する位置に画素が形成される。
【0062】
図5において、画素G1〜G4の書き換え前の表示状態は、強誘電性液晶のメモリ性効果によって、画素G1とG3が白表示であり、画素G2とG4が黒表示である一例を示している。この状態から画素を書き換えるための1フレーム期間が開始されると(図4参照)、最初のリセット期間Reでは、前述したように、画素G1〜G4に2つの双極性リセットパルスRpdが印加される。
【0063】
これにより、画素G1〜G4は安定状態が転移して表示が白→黒→白→黒と変化する。しかし、前述したように、双極性リセットパルスRpdのパルス幅Trは、人の目が認識出来る時間より短い時間に設定されているので、使用者が強誘電性液晶パネル30を見ると、画素の白→黒→白→黒の変化が認識できず、図示するように、白表示と黒表示の中間色であるグレーに近い状態として見える。すなわち、リセット期間でのちらつき現象が目立たなくなる。
【0064】
次に選択期間Seでは、画素G1〜G4は駆動電圧Vpx1〜Vpx4によって、画素G1とG2が白表示、画素G3とG4が黒表示となる電圧が印加されるので、画素G1〜G4は、グレーに近い状態から、画素G1とG2が白表示、画素G3とG4が黒表示となり、以降、この表示状態がメモリ性効果によって継続する。すなわち、1フレーム期間での書き換え動作によって、書き換え前の表示状態から、リセット期間Reですべての画素が短時間グレーに近い表示状態になったのちに、選択期間Seで書き換えられて、更新された表示状態に移行する。
【0065】
このように、本発明の第1の実施形態では、リセット期間Reに2つの双極性リセットパルスRpdを印加すると共に、リセット期間Reにおいて、強誘電性液晶が、一方の安定状態から他方の安定状態へ繰り返し移行しても、人の目が認識出来ないように双極性リセットパルスの駆動周期を大きくし、パルス幅Trを短く設定したので、画素の表示状態を短期間で白と黒を繰り返しても、見た目の表示状態をグレーに近い状態にすることが出来た。
【0066】
これにより、リセット期間Reでのちらつき現象が目立たなくなると共に、書き換え前表示から書き換え後表示へ移行するときに、表示が短時間グレーに近い状態となるので、表示の変化が滑らかで見やすい動きとなる。この結果、使用者に不快感や違和感を与えず、表示品質が高く視認性に優れた強誘電性液晶装置を提供することができる。
【0067】
また、双極性リセットパルスのパルス幅Trは短くなるが、双極性リセットパルスを2回繰り返すことで、強誘電性液晶パネルは確実にリセットされて、強誘電性液晶層の不純物イオンの拡散や層構造の安定化を実現し、焼き付き現象の解消を行うことが出来る。
【実施例2】
【0068】
[第2の実施形態の構成説明:図1]
次に、第2の実施形態の強誘電性液晶装置の構成について説明する。ここで、第2の実施形態は、前述したように、リセットパルスのパルス幅が選択期間の選択パルスのパルス幅と比較して短いが、これは、マイコン10からのコマンドによって、リセット制御回路22から出力する制御信号を制御し、リセット期間における駆動電圧VCOMや駆動電圧VSEGの駆動周波数を切り替え、リセットパルスのパルス幅とパルス数を決定している。ここで、第2の実施形態の構成は、図1で示した第1の実施形態の構成と同一であるので、構成の説明は省略する。また、第2の実施形態の基本的な動作についても、前述の図2のフローチャートと同様であるので、基本的な動作についての説明は省略する。
[第2の実施形態の強誘電性液晶装置の駆動波形の説明:図6]
次に、第2の実施形態の駆動電圧VCOMと駆動電圧VSEGとの各駆動波形を図6に基づいて説明する。なお、第1の実施形態と同様に、説明を分かりやすくするために、強誘電性液晶パネル30の走査電極COM(図1参照)を4本とし、この4本の走査電極COMに1本の信号電極SEG(図1参照)が対向して形成される4個の画素G1〜G4を駆動することを例として説明する。
【0069】
なお、第1の実施形態と同様に、4本の走査電極をCOM1〜COM4と称し、1本の信号電極をSEG1と称する。また、4本の走査電極COM1〜COM4にそれぞれ供給される4つの駆動電圧をCOM駆動電圧VCOM1´〜VCOM4´と称し、1本の信号電極SEG1に供給される駆動電圧をSEG駆動電圧VSEG1´と称する。
【0070】
図6において、まずCOM駆動電圧VCOM1´〜VCOM4´(以下、駆動電圧VCOM1´〜VCOM4´と略す)の駆動波形例を説明する。4つの駆動電圧VCOM1´〜VCOM4´の1フレーム期間は、リセット期間Re´と選択期間Seによって構成される。1フレーム期間の初めのリセット期間Re´は、パルス列となって4つのCOMリ
セットパルスRpc´(以下、リセットパルスRpc´と略す)が出力する。そして、リセットパルスRpc´のそれぞれの前半は、液晶電圧V3が出力し、リセットパルスRpc´のそれぞれの後半は、液晶電圧V0が出力する。
【0071】
そして、第2の実施形態のリセット期間Re´が、第1の実施形態のリセット期間Reと同一時間であると仮定すると、4つのリセットパルスRpc´のそれぞれのパルス幅Tr´は、第1の実施形態のリセットパルスRpcのパルス幅Trの半分である。すなわち、4つのリセットパルスRpc´のパルス幅Tr´は、選択期間Seの選択パルスSp1のパルス幅Tsの半分の長さとなる。なお、駆動電圧VCOM1´〜VCOM4´のリセット期間Re´のあとの選択期間Seは、第1の実施形態と同様の駆動波形であるので、説明は省略する。
【0072】
次に、信号電極SEG1に供給されるSEG駆動電圧VSEG1´(以下、駆動電圧VSEG1´と略する)の駆動波形例を説明する。なお、説明の前提として、第1の実施形態と同様に、画素G1〜G4をリセット期間Re´によって、すべて一方の安定状態である黒にした後に、画素G1とG2を白、画素G3とG4を黒とする駆動電圧を例として説明する。
【0073】
図6において、駆動電圧VSEG1´の1フレーム期間は、リセット期間Re´と選択期間Seによって構成される。駆動電圧VSEG1´のリセット期間Re´は、V3の1/2電圧を中心にしたときに、駆動電圧VCOM1´〜VCOM4´の4つのリセットパルスRpc´とは逆極性の4つのSEGリセットパルスRps´(以下、リセットパルスRps´と略する)が出力する。すなわち、リセットパルスRps´の前半は、液晶電圧V0が出力し、後半は液晶電圧V3が出力する。
【0074】
また、駆動電圧VSEG1´の選択期間Seの駆動波形は、第1の実施形態と同様であるので説明は省略する。このようにして、1フレーム期間が終了したならば、前述したように書き換え動作が完了したので、図示しないが、駆動電圧VCOM1´〜VCOM4´と駆動電圧VSEG1´は、液晶電圧V0(零ボルト)となる。
[第2の実施形態の強誘電性液晶装置の合成駆動波形の説明:図7]
次に、第2の実施形態の駆動電圧と駆動電圧を合成した合成駆動波形を図7を用いて説明する。図7において、合成駆動電圧Vpx1´〜Vpx4´(以下、駆動電圧Vpx1´〜Vpx4´と略す)は、それぞれ、図6で示した駆動電圧VCOM1´〜VCOM4´と駆動電圧VSEG1´を合成した駆動電圧であり、画素G1〜G4にそれぞれ印加される。ここで、駆動電圧Vpx1´は画素G1を選択し、以下同様に、駆動電圧Vpx2´〜Vpx4´は画素G2〜G4を選択する。
【0075】
この駆動電圧Vpx1´〜Vpx4´の1フレーム期間は、リセット期間Re´と選択期間Seによって構成される。リセット期間Re´は、前述のリセットパルスRpc´とリセットパルスRps´が合成されてプラスマイナスの双方向のパルスである双極性リセットパルスRpd´が4つのパルス列として出力する。これは、リセットパルスRpc´とリセットパルスRps´がV3の1/2電圧を中心にしたときに逆極性のパルスだからである。
【0076】
この双極性リセットパルスRpd´の前半は、プラス方向の液晶電圧+V3が出力し、後半はマイナス方向の液晶電圧−V3が出力する。すなわち、零ボルトである液晶電圧V0を中心に交流電圧が出力される。そして、双極性リセットパルスRpd´のパルス幅Tr´は、選択パルスのパルス幅Tsより短い。そして前述したように、第1の実施形態のリセット期間Reと第2の実施形態のリセット期間Re´を同一時間とするならば、双極性リセットパルスRpd´のパルス幅Tr´は、選択パルスのパルス幅Tsの半分であり
、本実施形態でも、白から黒、あるいは黒から白へ移項する繰り返し周期が、人の目が認識出来る時間より短くなるように設定されて、たとえば、本実施形態では、パルス幅Tr´を約8mSと設定し、駆動周波数は約120Hzとしている。なお、このように選択パルスのパルス幅Tsを双極性リセットパルスRpd´のパルス幅Tr´の整数倍(本実施形態では2倍)とすると、電圧制御が容易になり、回路構成が簡易化でき良好である。
【0077】
このリセット期間Re´において、画素G1〜G4には、同時に双極性リセットパルスRpd´が4回繰り返して印加されるが、液晶電圧+V3と−V3の絶対値が、強誘電性液晶パネル30の飽和電圧Vhを越えるように設定されるならば、すべての画素G1〜G4は最初の双極性リセットパルスRpd´の前半で白の安定状態になり、次に双極性リセットパルスRpd´の後半で、黒の安定状態になる。
【0078】
そして更に次の2つ目の双極性リセットパルスRpd´の前半で、すべての画素G1〜G4は再び白の安定状態になり、次に双極性リセットパルスRpd´の後半で、再び黒の安定状態になる。ここで、双極性リセットパルスRpd´は4つ連続して出力するので、リセット期間Re´において、強誘電性液晶パネル30の画素G1〜G4は、短時間で白→黒を4回繰り返し、セット期間Re´の最後には黒にリセットされて次の選択期間Seに移行する。なお、リセット期間Re´後の選択期間Seの駆動波形は、第1の実施形態と同様であるので説明は省略する。
【0079】
以上のように、第2の実施形態の駆動電圧Vpx1´〜Vpx4´によって、すべての画素G1〜G4は、リセット期間Re´で白→黒を4回繰り返した後に黒にリセットされ、選択期間Seで画素G1とG2は白表示となり、画素G3とG4は黒表示となる。
【0080】
この第2の実施形態の駆動電圧Vpx1´〜Vpx4´による画素G1〜G4の表示変化の動きは、前述の第1の実施形態の図5と同様であるが、リセット期間Re´での双極性リセットパルスRpd´のパルス数が多く、パルス幅が短いので、画素の表示状態は人の目が認識出来る時間よりさらに短い時間で変化する。これにより、リセット期間Re´でのちらつき現象は更に目立たなくなり、表示はグレーに近い状態となる。この結果、書き換え前表示から書き換え後表示へ移行するときの表示状態は、一段と表示の変化が滑らかで見やすい動きとなり、使用者に不快感や違和感を与えず、表示品質が高く視認性に優れた強誘電性液晶装置を提供することができる。
【0081】
なお、リセット期間Reにおける双極性リセットパルスのパルス数は、2個以上であれば限定されず、さらにパルス数を増やしてもよい。また、リセット期間Reが長すぎると、ちらつきが目立ちやすくなり、また、表示の書き換えのための1フレーム期間が長くなるので、リセット期間Reは所定の時間を超えない設定が必要である。このために、所定の長さのリセット期間Reの中で、双極性リセットパルスのパルス幅に応じてパルス数を決定する、または、双極性リセットパルスのパルス数に応じてパルス幅を決定するとよい。
【0082】
たとえば、第2の実施形態のように、双極性リセットパルスのパルス数が4つである場合は、第1の実施形態のパルス幅をそのまま用いると、リセット期間Re´が長すぎて、ちらつきが目立ちやすくなり、また、1フレーム期間も長くなってしまう。このため、第2の実施形態では、双極性リセットパルスのパルス幅を選択パルスの1/2とすることで、リセット期間Re´を一定とし、且つ、パルス幅を短くしたことで、ちらつき現象をさらに目立たなくすることが出来る。
【0083】
また、双極性リセットパルスのパルス数が6つである場合は、そのパルス幅は選択パルスのパルス幅の1/3程度であるとよい(この場合は、選択パルスのパルス幅が双極性リ
セットパルスのパルス幅の3倍)。これによって、リセット期間Reの長さを一定に保つことが出来るので、書き換え時間(1フレーム期間)が長くなることがない。また、双極性リセットパルスのパルス数に応じてパルス幅を短くすることで、ちらつき現象をさらに改善することが可能となる。
【0084】
また、双極性リセットパルスのパルス幅を、人の目が画素の変化を認識出来る時間より、短い時間に設定するので、リセット期間Reにおけるちらつき現象を確実に目立たなくすることが出来る。また、双極性リセットパルスのパルス幅を短くしても、パルス幅に応じてパルス数を増やすならば、リセット期間全体のパルス幅は変わらないので、強誘電性液晶パネルを確実にリセットすることが出来る。
【0085】
また、1フレームのリセット期間Reと選択期間Seの間に、駆動電圧がV0となる所定の長さの休止期間を設けても良い。また、強誘電性液晶は、低温では閾値電圧Vtが高くなる温度特性を有している。このため、図示しないが、装置の中に温度センサを設けて、周囲温度が所定の温度以下になった場合は、マイコン10によって双極性リセットパルスのパルス幅を長くする、または、パルス数を増やすなどの制御を行うことで、温度特性を補償できる。
【0086】
なお、本発明の強誘電性液晶パネルにおける画素はマトリクス状の配置には限定されず、例えば、7セグメントや固有の模様などでも良い。また、強誘電性液晶パネルは、表示パネルに限定されず、例えば、プリンタのヘッド用としての液晶シャッターなどでも良い。また、実施例において、強誘電性液晶の2つの安定状態を白または黒としたが、画素の表示状態は色彩や濃度の異なる2つの表示状態であれば限定されない。また、本発明の実施形態で示したブロック図や駆動電圧の波形等は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を満たすものであれば、任意に変更してよい。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の強誘電性液晶装置は低消費電力であると共に、表示品質に優れた液晶装置を実現できるので、特に電池駆動の小型電子機器の表示装置として好適であり、電子棚札、電子時計、携帯電話、携帯端末等の表示装置として幅広く利用することが出来る。
【符号の説明】
【0088】
1 強誘電性液晶装置
10 マイクロコンピュータ(マイコン)
11 演算部
13 ROM
14 RAM
20 ドライバIC
21 制御回路
22 リセット制御回路
23 選択制御回路
25 電圧発生回路
26 SEG駆動回路
27 COM駆動回路
30 強誘電性液晶パネル
G、G1〜G4 画素
B1 データバス
B2 制御バス
SI シリアルバス
COM 走査電極
SEG 信号電極
V0、V1、V2、V3 液晶電圧
VCOM1〜VCOM4 COM駆動電圧
VSEG1 SEG駆動電圧
Vpx1〜Vpx4 合成駆動電圧
Re リセット期間
Rpc COMリセットパルス
Rps SEGリセットパルス
Rpd 双極性リセットパルス
Se 選択期間
Se1〜Se4 第1〜第4選択期間
Spw 白選択パルス
Spb 黒選択パルス
Sp1〜Sp4 選択パルス
Spd1〜Spd4 合成選択パルス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の基板間に2つの安定状態を持つ強誘電性液晶を挟持し、駆動電圧を印加するための電極を有する強誘電性液晶パネルを備えた液晶装置であって、
前記電極への駆動電圧の印加は、前記強誘電性液晶を2つの安定状態のうち一方の安定状態にリセットするリセット期間と、該リセット期間の後に設定され、前記強誘電性液晶を2つの安定状態のうち、どちらかの安定状態を選択する選択期間とを備えた期間で行われ、
前記リセット期間内では、複数の双極性リセットパルスによって、前記強誘電性液晶は、前記一方の安定状態と他方の安定状態との両方の安定状態を示し、
前記複数の双極性リセットパルスによる前記強誘電性液晶の一方の安定状態から他方の安定状態へ移行する繰り返し周期が、人の目が認識出来る時間より短くなるように前記双極性リセットパルスのパルス幅が設定されていることを特徴とする強誘電性液晶装置。
【請求項2】
前記リセット期間における前記双極性リセットパルスの駆動周波数は60Hz以上であることを特徴とする請求項1に記載の強誘電性液晶装置。
【請求項3】
前記リセット期間は所定の長さを有し、前記リセット期間の長さの中で、前記双極性リセットパルスのパルス幅に応じてパルス数を設定することを特徴とする請求項1または2に記載の強誘電性液晶装置。
【請求項4】
前記リセット期間は所定の長さを有し、前記リセット期間の長さの中で、前記双極性リセットパルスのパルス数に応じてパルス幅を設定することを特徴とする請求項1または2に記載の強誘電性液晶装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−58296(P2012−58296A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198605(P2010−198605)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【出願人】(000124362)シチズンセイミツ株式会社 (120)
【Fターム(参考)】