説明

弾性ローラ製造装置及び弾性ローラの製造方法

【課題】軸体の周面に弾性層形成用材料を均一に塗布することができ、偏肉及び合わせ目等の発生がなく、高粘度の弾性層形成用材料を採用することもできる弾性ローラ製造装置及び偏肉及び合わせ目等の発生のない弾性ローラの製造方法。
【解決手段】塗布ヘッド、及び前記塗布ヘッドを弾性ローラの軸体の軸方向に移動させることができる塗布ヘッド移動手段を有する弾性ローラ製造装置であって、前記塗布ヘッドは、前記弾性ローラの軸体との間に同心環状の間隙を有し、前記弾性ローラの軸体に対して開口されたスリット状吐出口が形成され、前記塗布ヘッドは、前記スリット状吐出口から吐出される未硬化の弾性層形成用材料を収容する収容部と、前記塗布ヘッドの中心軸線を中心にして回転対象に配置された3個以上の、前記収容部に前記弾性層形成用材料を供給する弾性層形成用材料供給口とを有して成る弾性ローラ製造装置及び弾性ローラの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は弾性ローラ製造装置及び弾性ローラの製造方法に関し、さらに詳しくは、例えば、軸体の周面に弾性層形成用材料を均一に塗布することができ、偏肉及び合わせ目等の発生がなく、高粘度の弾性層形成用材料を採用することもできる弾性ローラ製造装置及び弾性ローラの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された芯金の塗布方法は、「エンドレスに形成された連続周面を有する芯金を移動させながら、塗布液を、前記基材側に開口する塗布液流出口を有する塗布液分配スリットを通して、前記基材周面を取り囲むように基材全周にわたって近接形成されたホッパー塗布面に設けられたエンドレスの塗布液流出口から該ホッパー塗布面にあるスライド面上に流出させ、前記基材とホッパー塗布面の先端部に連続的に供給させて塗布する方法において、前記塗布液の粘度を10以上600ミリパスカル・秒未満、前記基材表面及びホッパーの先端部の間隙を50〜500μm、並びに前記塗布液分配スリット間隙を50〜500μmとしたことを特徴とする芯金の塗布方法」である(請求項1参照)。
【0003】
この芯金の塗布方法を実施する塗布装置においては、「図1に示されるように中心線XXに沿って垂直状に重ね合わせた芯金1A,1Bを連続的に矢示方向に上昇移動させ、その周囲を取り囲み、基材1の外周面に対しスライドホッパー型塗布装置の塗布に直接係わる部分(塗布ヘッドと略称する)10により塗布液Lが塗布される。なお、基材としては中空ドラム例えばアルミニウムドラム、プラスチックドラムのほかシームレスベルト型の基材でも良い。前記塗布ヘッド10には、基材1側に開口する塗布液流出口11を有する幅狭の塗布液分配スリット(スリットと略称する)12が水平方向に形成されている。このスリット12は環状の塗布液分配室13に連通し、この環状の塗布液分配室13には貯留タンク4内の感光液Lを圧送ポンプ5により供給管14を介して供給するようになっている。他方、スリット12の塗布液流出口11の下側には、連続して下方に傾斜し基材の外寸よりやや大なる寸法で終端をなすように形成されたスライド面15が形成されている。さらに、このスライド面15終端より下方に延びる唇状部16が形成されている。かかる塗布装置による塗布においては、基材1を引き上げる過程で、塗布液Lをスリット12から押し出し、スライド面15に沿って流下させると、スライド面終端に至った感光液は、そのスライド面終端と基材1の外周面との間にビードを形成した後、基材表面に塗布される」ようになっている(特許文献1の段落番号0004参照)。
【0004】
特許文献2の請求項1は、「円筒状基材の外周を取り囲む円筒状の塗布機構(塗布ヘッド)により円筒状基材表面に均一に塗布液を塗布する塗布装置において、塗布ヘッドのリング状の吐出口の口径を可変構造としたことを特徴とする塗布ヘッドとそれを用いたリングコート方法」と記載され、一の請求項に「塗布ヘッド」と「リングコート方法」との二発明が記載されている。特許文献2の図2には、この塗布ヘッドにつき、13で示される相対向する位置に設けられた2個の塗布液供給口が開示されている。
【0005】
特許文献3には、「芯金上に設けられた弾性層上に薄膜を形成した弾性ローラの製造方法において、弾性層表面に対して所定の間隔をなす距離に全周に開口されたスリット状の吐出口を有するリング塗布ヘッドを使用し、かつ薄膜形成が溶剤系塗布液を該吐出口より吐出して弾性層上に塗布することからなることを特徴とする弾性ローラの製造方法」が開示されている(請求項1参照)。
【0006】
この特許文献3における製造方法に使用されるリング塗布ヘッドに関し、特許文献3には、「一方、リング塗布ヘッド12へ塗布液貯蔵タンク13からは途中に定量ポンプ(本図ではシリンジポンプを示した)19を介して接続されている」との記載があり、この記載の前後の文章及び図2を参照すると、リング塗布ヘッド12には塗布液貯蔵タンク13から一つのラインにより塗布液がリング塗布ヘッド12に供給されていることが、理解できる。この特許文献3の記載によると、「高速且つ安定した状態で塗布する事ができ、粗さの均一性、薄膜厚の均一性に優れたローラを得ることができる」という貢献が、主張されている。
【0007】
特許文献4には、「円筒状基材表面の全周を同軸円筒状に取り囲み、該円筒状基材表面に対して所定の間隔をなす距離に全周に開口された吐出口と塗布液を周方向に分配するために円周溝状として設けられた液分配室と、該液分配室内の液圧を所望圧だけ上昇させ、周方向に流動する力を与える液絞り流路とで構成される円筒状の塗布ヘッド(リング塗布ヘッド)を用い該円筒状部材とリング塗布ヘッドとを所定の速度で相対移動させ、円筒状基材表面に所望の塗布膜厚に応じて全周均一に塗布液を供給して円筒状基材表面に塗布する塗布装置において、液分配室への液供給口が該液分配室の上流側に周方向に等間隔に複数個形成され、かつ該液供給口までの流路はリング塗布ヘッド内においてトーナメント方式で分流するよう設けられたことを特徴とするリング塗布装置」が開示されている(請求項1参照)。
【0008】
この特許文献4に開示されているリング塗布ヘッドにおいては、一つの注入口15から供給された塗布液10が、トーナメント方式により分岐して液分配室12に分配される(図1参照)ように、リング塗布ヘッドの内部には複雑な流路が形成される。
【0009】
【特許文献1】特開2004−74159号公報
【特許文献2】特開2004−97896号公報
【特許文献3】特開2005−321749号公報
【特許文献4】特開2006−106571号公報
【0010】
一方、この発明者の検討によると、リング塗布ヘッドを利用して弾性ローラを製造する場合に、弾性ローラの表面に偏肉及び/又は合わせ目のような筋目の発生をしばしば観察した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この発明は、偏肉、及び筋目等の発生がなく、高粘度の弾性層形成用材料を採用することもできる弾性ローラを製造することのできる生産効率の高い弾性ローラ製造装置及び弾性ローラの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、塗布ヘッド、及び前記塗布ヘッドを弾性ローラの軸体の軸方向に移動させることができる塗布ヘッド移動手段を有する弾性ローラ製造装置であって、
前記塗布ヘッドは、前記弾性ローラの軸体との間に同心環状の間隙を有し、前記弾性ローラの軸体に対して開口されたスリット状吐出口が形成され、
前記塗布ヘッドは、前記スリット状吐出口から吐出される未硬化の弾性層形成用材料を収容する収容部と、前記塗布ヘッドの中心軸線を中心にして回転対象に配置された3個以上の、前記収容部に前記弾性層形成用材料を供給する弾性層形成用材料供給口とを有して成る弾性ローラ製造装置であり、
請求項2は、前記間隙は0.1〜10mmであり、前記未硬化の弾性層形成用材料はその粘度が10〜4000Pa・sであり、その吐出速度が0.01〜500g/minである前記請求項1に記載の弾性ローラ製造装置であり、
請求項3は、前記スリット状吐出口はその幅が0.1〜10mmである前記請求項1又は2に記載の弾性ローラ製造装置であり、
請求項4は、軸体の外表面に未硬化の弾性層形成用材料を塗布してから軸体の外周面に弾性層を形成する弾性ローラの製造方法において、
前記請求項1〜3のいずれか1項に記載の弾性ローラ製造装置を使用して、塗布ヘッド移動手段を軸体の軸線に沿って移動しつつ、スリット状吐出口から前記軸体の外表面に未硬化の弾性層形成用材料を吐出させて塗布することを特徴とする弾性ローラの製造方法であり、
請求項5は、前記弾性層形成用材料は、その粘度が10〜4000Pa・sである前記請求項4に記載の弾性ローラの製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
この発明においては、塗布ヘッド移動手段により、塗布ヘッドが、軸体における一端から他端へと向かって移動する。なお、軸体は縦に配置されることもあり、また横に配置されることもある。塗布ヘッドの軸体に対する初期位置は、軸体の一端又は他端であることもあり、また、軸体の一端寄り又は他端寄りであることもある。
【0014】
塗布ヘッドの内部に形成される収容部には、弾性層形成用材料が供給、充填される。弾性層形成用材料が、塗布ヘッドのスリット状吐出口から吐出されて軸体の外周面に塗布される。
【0015】
塗布ヘッドは、塗布ヘッド移動手段により、軸体の軸線方向に沿って移動するので、塗布ヘッドが移動した領域につき、軸体の外周面に弾性層形成用材料が塗布される。
【0016】
一つの、又は二つの弾性層形成用材料供給口しかない塗布ヘッドの場合、一つの、又は二つの弾性層形成用材料供給口に近いスリット状吐出口から吐出される弾性層形成用材料の流体圧及び/又は吐出量と弾性層形成用材料供給口から遠い位置にあるスリット状吐出口から吐出される弾性層形成用材料の流体圧及び/又は吐出量とが相違することにより、軸体の外周面に形成される弾性層に偏肉が生じるといった現象の発生又はその虞があるが、この発明においては、塗布ヘッドに設けられた3個以上の弾性層形成用材料供給口は、塗布ヘッドの中心軸線を中心にして回転対称の位置関係にあるので、スリット状吐出口から吐出される弾性層形成用材料の流体圧及び/又は吐出量がほぼ均一となり、したがって、軸体の外周面に形成される弾性層に偏肉が生じる虞がないか、生じたとしても実用上問題のないくらいに小さい。しかも、この発明によると、3個以上の弾性層形成用材料供給口から収容部内に弾性層形成用材料が供給されるので、スリット状吐出口から吐出される弾性層形成用材料が途切れることがなくなり、高い生産効率をもって弾性ローラを製造することができる。
【0017】
また、一つの、又は二つの弾性層形成用材料供給口しかない塗布ヘッドの場合、一つの、又は二つの弾性層形成用材料供給口から収容部内に供給された弾性層形成用材料は収容部内を二手に分かれて流動して行き、ついには二手に分かれた弾性層形成用材料が合流し、その結果として軸体の外周面に形成される弾性層に筋目が形成され、また形成される虞があるが、この発明においては、3個以上の弾性層形成用材料供給口から収容部内に弾性層形成用材料が供給されるので、一つの弾性層形成用材料供給口から供給された弾性層形成用材料と他の弾性層形成用材料供給口から供給された弾性層形成用材料とが直ちに合流して一体化するので、その結果として軸体の外周面に形成される弾性層に筋目が形成されず、また形成される虞があるとしても実用上問題のない程度である。したがって、この発明によると、高い歩留まりをもって弾性ローラを製造することができる。
【0018】
一つの、又は二つの弾性層形成用材料供給口しかない塗布ヘッドの場合、その弾性層形成用材料が高粘度であると、高い吐出圧で収容部内に弾性層形成用材料を供給しないと、収容部内に弾性層形成用材料を充填することができず、またたとえ充填することができたとしても、スリット状吐出口から軸体の表面に吐出される弾性層形成用材料の供給量に、弾性層形成用材料供給口から収容部に供給される弾性層形成用材料の供給量が、追いつかず、その結果として、スリット状吐出口から供給される弾性層形成用材料の供給に断続が生じて、軸体の表面に弾性層を形成することができなくなるのであるが、この発明においては、3個以上の弾性層形成用材料供給口から収容部内に供給するのであるから、一つの、又は二つの弾性層形成用材料供給口しかない塗布ヘッドの場合に比べて弾性層形成用材料供給口をことさらに大きくする必要もなく、又成形時の成形速度をことさらに大きくする必要もない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
<弾性ローラ製造装置>
この発明に係る弾性ローラ製造装置は、弾性ローラを製造する装置である。この弾性ローラ1は、例えば、図1に示されるように、軸体2と軸体2の外周面に形成された弾性層3とを備え、所望により、図2に示されるように、さらに、弾性層3の外周面にコート層4を備え、図3に示される画像形成装置等に配設される。
【0020】
図6に示されるように、この発明の一例である弾性ローラ製造装置10は、塗布ヘッド11と塗布ヘッド移動手段12と軸体装着手段13とを有する。塗布ヘッド移動手段12は、基台14と、その上面に立設形成された支柱15の側面に設けられたガイドレール16と、このガイドレール16を走行する走行体17と、この走行体17に水平に取り付けられた塗布ヘッド装着部材18と、前記走行体17を駆動する図示しない駆動源とを有して成る。前記軸体装着手段13は、軸体2を垂直に固定する手段であり、前記支柱15から水平に延在する腕体19に設けられた、前記軸体2の上端部を着脱自在に固定する上部固定手段20と、前記基台14の上面に設けられた、前記軸体2の下端部を着脱自在に固定する下部固定手段21とを備えて成る。この弾性ローラ製造装置10は更に、弾性層形成用材料を前記塗布ヘッド11に供給する弾性層形成用材料供給手段21Aを備え、この弾性層形成用材料供給手段21Aは、前記弾性層形成用材料を貯留する貯留タンク22と、この貯留タンク22内の前記弾性層形成用材料を塗布ヘッド11に送り出す供給ライン23及びポンプ(図示せず。)とを備える。
【0021】
前記塗布ヘッド11は、図4及び図5に示されるように、中心に軸体2を挿通する中心開口部24を有する環状の筐体25と、その筐体25の内部に形成された収容部26と、この収容部26と前記中心開口部24とを連通するように形成されたスリット状吐出口28と、この前記中心開口部24の中心軸線を中心にして回転対称に配置された例えば3個の弾性層形成用材料供給口29A、29B、29Cとを備え、前記塗布ヘッド装着部材18に設けられて成る。前記スリット状吐出口28は、前記中心開口部24を形成する塗布ヘッド11における円筒状の内側表面27に、前記軸体2の外周面を囲繞するように環状に形成されて成る。前記塗布ヘッド11における内側表面27と軸体2の外方面との間に一定間隔の間隙が形成されている。塗布ヘッド11における円筒状の内側表面27の軸心と軸体2の軸心とが一致している。前記3個の弾性層形成用材料供給口29A、29B、29Cは、図5に示されるように、塗布ヘッド11の中心軸線に対して互いに120度の角度をなすように塗布ヘッド11における筐体25の外側表面に配置され、また、120度回転による回転対象の位置にある。この3個の弾性層形成用材料供給口29A、29B、29Cは、供給ライン23と収容部26とを連通しており、供給ライン23にて送り込まれて来る弾性層形成用材料が弾性層形成用材料供給口29A、29B、29Cを通じて収容部26内に注入される。なお、この例では弾性層形成用材料供給口の数が3個であるが、この発明においては弾性層形成用材料供給口の数が3個以上であればよい。もっとも、塗布ヘッドの構造及びその製造の容易性等を考慮すると、弾性層形成用材料供給口の数は3個以上6個以下が好ましい。
【0022】
各弾性層形成用材料供給口29A、29B、29Cは、供給ライン23を介して貯留タンク22に連絡されていて、貯留タンク22内の弾性層形成用材料が収容部26内に供給されるようになっている。
【0023】
この塗布ヘッド11における前記中心開口部24の内側表面27と軸体2の外周面とは、0.1〜10mmの間隙70を有するのが好ましい。このような間隙70を有していると、粘度が10〜4000Pa・sである弾性層形成用材料を軸体2の外周面に均一に、筋目等の形成なく塗布して粗弾性層塗膜71を容易に形成することができる。
【0024】
<弾性層形成用材料>
前記弾性層形成用材料としては、弾性ローラ1における弾性層3を形成することのできる材料であればよく、例えばゴムと、導電性付与剤と、所望により各種添加剤とを含有する導電性ゴム組成物を挙げることができる。
【0025】
前記ゴムは、特に限定されず、その粘度が10〜4000Pa・s以内であれば良い。例えば、シリコーン若しくはシリコーン変性ゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム(エチレンプロピレンジエンゴムを含む。)、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等のゴムが挙げられるが、シリコーン若しくはシリコーン変性ゴムが、耐熱性及び帯電特性等に優れる点で、好ましい。これらのゴムは、液状型であっても、ミラブル型であってもよく、弾性層3の成形方法、弾性層3に要求される特性等に応じて、適宜選択することができる。好ましく使用されるゴムとして、液状型シリコーンゴム、ウレタンゴムが挙げられる。
【0026】
前記液状型シリコーンゴムは、下記平均組成式(1)で示されるオルガノポリシロキサンを含有する。
【0027】
SiO(4−n)/2 (1)
ここで、Rは、同一又は異なっていてもよい、置換又は非置換の1価炭化水素基、好ましくは炭素原子数1〜12、より好ましくは炭素原子数1〜8の1価炭化水素基であり、nは1.95〜2.05の正数である。
【0028】
前記Rは、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基及びドデシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基及びヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基及びトリル基等のアリール基、β−フェニルプロピル基等のアラルキル基、並びに、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子又はシアノ基等で置換したクロロメチル基、トリフルオロプロピル基及びシアノエチル基等が挙げられる。
【0029】
前記(A)オルガノポリシロキサンは、分子鎖末端がトリメチルシリル基、ジメチルビニル基、ジメチルヒドロキシシリル基、トリビニルシリル基等で封鎖されていることが好ましい。このオルガノポリシロキサンは分子中に少なくとも2個の前記アルケニル基を有することが好ましく、具体的には、Rのうち0.001〜5モル%、特に0.01〜0.5モル%のアルケニル基を有することが好ましく、特にビニル基を有することが好ましい。特に、後述する硬化剤として白金系触媒とオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを組み合わせて使用する場合には、このようなアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンが通常使用される。
【0030】
また、このオルガノポリシロキサンは、通常選択されたオルガノハロシランの1種若しくは2種以上を共加水分解縮合することによって、又は、シロキサンの3量体若しくは4量体等の環状ポリシロキサンをアルカリ性又は酸性の触媒を用いて開環重合することによって得ることができる。このオルガノポリシロキサンは基本的には直鎖状のジオルガノポリシロキサンであるが、一部分岐していてもよい。また、分子構造の異なる2種又はそれ以上の混合物であってもよい。このオルガノポリシロキサンは、通常、25℃におけるその粘度が100cSt以上であり、好ましくは100,000〜10,000,000cStである。また、このオルガノポリシロキサンは、通常、その重合度は100以上であり、好ましくは3,000以上であり、その上限は、好ましくは100,000であり、さらに10,000が好ましい。
【0031】
前記導電性付与剤は、導電性を有していれば特に限定されず、例えば、導電性粉末、イオン導電性物質等が挙げられる。導電性粉末としては、より具体的には、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等の導電性カーボンの他に、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボン類、また、酸化チタン、酸化亜鉛、ニッケル、銅、銀、ゲルマニウム等の金属、さらには、金属酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン等の導電性ポリマー等が挙げられ、イオン導電性物質としては、より具体的には、例えば、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸カルシウム、塩化リチウム等の無機イオン性導電物質等が挙げられる。導電性付与剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて、導電層としたときに所望の電気抵抗値を示すように、適宜の含有量で添加される。例えば、樹脂組成物における導電性付与剤の含有量は、前記ゴム100質量部に対して、2〜80質量部とすることができる。
【0032】
樹脂組成物は、所望によりシリカ系充填材を含有する。シリカ系充填材は、特に限定されないが、煙霧質シリカ又は沈降性シリカ等が挙げられ、一般式がRSi(OR’)で示されるシランカップリング剤で表面処理された、補強効果の高い表面処理シリカ系充填材が好ましい。ここで、前記一般式におけるRは、グリシジル基、ビニル基、アミノプロピル基、メタクリロキシ基、N−フェニルアミノプロピル基又はメルカプト基等であり、前記一般式におけるR’はメチル基又はエチル基である。前記一般式で示されるシランカップリング剤は、例えば、信越化学工業株式会社製の商品名「KBM1003」及び「KBE402」等として、容易に入手することができる。このようなシランカップリング剤で表面処理されたシリカ系充填材は、定法に従って、シリカ系充填材の表面を処理することにより、得られる。なお、シランカップリング剤で表面処理されたシリカ系充填材は、市販品を用いてもよく、例えば、J.M.HUBER株式会社製の商品名「Zeothix 95」等が入手可能である。シリカ系充填材の配合量は、前記樹脂100質量部に対して、11〜39質量部であるのが好ましく、15〜35質量部であるのが特に好ましい。
【0033】
樹脂組成物は、前記樹脂、所望により導電性付与剤及びシリカ系充填材に加えて、通常、樹脂組成物に含有される各種添加剤を含有してもよく、各種添加剤としては、例えば、硬化剤、鎖延長剤及び架橋剤等の助剤、触媒、分散剤、発泡剤、老化防止剤、酸化防止剤、充填材、顔料、着色剤、加工助剤、軟化剤、可塑剤、乳化剤、耐熱性向上剤、難燃性向上剤、受酸剤、熱伝導性向上剤、離型剤、溶剤等が挙げられる。これらの各種添加剤は、通常用いられる添加剤であってもよく、用途に応じて特別に用いられる添加剤であってもよい。
【0034】
前記硬化剤としては、公知の白金系触媒とオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを組み合わせた硬化剤、及び、有機過酸化物が挙げられる。前記白金系触媒としては、公知の触媒を使用することができ、具体的には、白金元素単体、白金化合物、白金複合体、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール化合物、アルデヒド化合物、エーテル化合物、各種オレフィン類とのコンプレックス等が挙げられる。白金系触媒の含有量は、有効量、いわゆる触媒量であればよく、例えば、(A)オルガノポリシロキサンに対して、白金族金属換算で1〜2,000ppmとするのが好ましい。
【0035】
前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、その重合度は300以下が好ましく、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたジオルガノポリシロキサン、末端がトリメチルシロキシ基でジメチルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位からなる共重合体、ジメチルハイドロジェンシロキサン単位(H(CHSiO1/2とSiO単位とからなる低粘度流体、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジハイドロジェン−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン等が例示される。オルガノハイドロジェンポリシロキサンの含有量は、(A)オルガノポリシロキサンのアルケニル基に対して、ケイ素原子に直結した水素原子が50〜500モル%となる割合で用いられるのが好ましい。
【0036】
前記有機過酸化物としては、例えば、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン等のアルキル過酸化物、ジクミルパーオキサイド等のアラルキル過酸化物等の有機過酸化物が挙げられる。有機過酸化物の含有量は有効量であればよく、例えば、(A)オルガノポリシロキサン100質量部に対して、0.1〜10質量部であるのが好ましい。
【0037】
導電性ゴム組成物は、二本ローラ、三本ローラ、ロールミル、バンバリーミキサ、ドウミキサ(ニーダー)、スターテックミキサー、ダイナミックミキサー等のゴム混練り機等を用いて、前記ゴム、導電性付与剤及び所望により各種添加剤が均一に混合されるまで、例えば、数分から数時間、好ましくは5分〜1時間、常温又は加熱下で混練して、得られる。
【0038】
前記導電性ゴム組成物はこの弾性ローラを現像ローラとして形成する場合に好適である。
【0039】
前記弾性層形成用材料としては、ゴムと、発泡剤又は中空充填材と、所望により各種添加剤等とを含有するゴム組成物を挙げることもできる。このゴム組成物としては、例えば、独立セル状態のセルを形成することのできる発泡シリコーンゴム系組成物及び発泡ウレタンゴム系組成物等が好ましく挙げられる。特に、独立セル状態のセルを形成することのできる発泡シリコーンゴム系組成物は、耐熱性、耐久性及び耐残留歪み特性等に優れ、画像形成装置の高速運転にも耐えられる好適なゴム組成物である。このような発泡シリコーンゴム系組成物として、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物が特に好ましい。中空充填材としては、例えば、ゴム組成物を硬化した後に、セルを形成することのできる充填材であればよく、例えば、ポリオルガノシロキサン系球状粉末が挙げられる。ポリオルガノシロキサン系球状粉末は、ポリオルガノシロキサンからなる球状の粉末であればよく、例えば、シリコーンパウダ等が挙げられる。より具体的には、直鎖状のジメチルポリシロキサンを架橋した構造を持つシリコーンゴムの粉末、シロキサン結合が(CHSiO3/2で表される三次元網目状に架橋した構造を持つ、いわゆるポリメチルシルセスキオキサン等のシリコーンレジンの粉末、及び、前記シリコーンゴムの表面をシリコーンレジン等で被覆した被覆シリコーンゴムの粉末等が挙げられる。
【0040】
付加反応型発泡シリコーンゴム組成物は、ビニル基含有シリコーン生ゴムと、シリカ系充填材と、発泡剤と、付加反応架橋剤と、付加反応触媒と、反応制御剤とを含有し、所望により、さらに、有機過酸化物架橋剤と耐熱性向上剤と各種添加剤とを含有してもよい。
【0041】
前記ビニル基含有シリコーン生ゴムは、例えば、ミラブル型シリコーンゴム、熱架橋シリコーンゴム(HTV:High Temperature Vulcanizing)等が挙げられる。これらのビニル基含有シリコーン生ゴムは、後工程で、発泡剤及び付加反応架橋剤等をロールミル等で容易に混練りすることができるという特性を有し、一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0042】
前記シリカ系充填材は、補強性を有する煙霧質シリカ又は沈降性シリカ等が挙げられ、一般式がRSi(OR’)で示されるシランカップリング剤で表面処理された、補強効果の高い表面処理シリカ系充填材が好ましい。ここで、前記一般式におけるRは、グリシジル基、ビニル基、アミノプロピル基、メタクリロキシ基、N−フェニルアミノプロピル基又はメルカプト基等であり、前記一般式におけるR’はメチル基又はエチル基である。前記一般式で示されるシランカップリング剤は、例えば、信越化学工業株式会社製の商品名「KBM1003」及び「KBE402」等として、容易に入手することができる。このようなシランカップリング剤で表面処理されたシリカ系充填材は、定法に従って、シリカ系充填材の表面を処理することにより、得られる。シリカ系充填材の配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、5〜100質量部であるのがよい。シリカ系充填材は、一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0043】
前記発泡剤としては、従来、発泡ゴムに用いられる発泡剤であればよく、例えば、無機系発泡剤として、重炭酸ソーダ、炭酸アンモニウム等が挙げられ、有機系発泡剤として、ジアゾアミノ誘導体、アゾニトリル誘導体、アゾジカルボン酸誘導体等の有機アゾ化合物等が挙げられる。通常、ゴムに連続セルを形成する場合には無機系発泡剤が用いられ、独立セルを形成する場合には有機系発泡剤が用いられる。弾性ローラ1においては、発泡剤は、独立セル状態のセルを形成することができる点で、有機系発泡剤であるのがよく、具体的には、例えば、アゾジカルボン酸アミド、アゾビス−イソブチロニトリル等のアゾ化合物が好適に使用される。特に、ジメチル−1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)が好適に使用できる。発泡剤の配合量は、発泡剤の種類によって相違するが、弾性層3のアスカーC硬度が27〜45となるように調整するのがよい。具体的には、例えば、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、0.1〜10質量部、特に0.5〜10質量部であるのがよい。発泡剤の配合量が、0.1質量部未満であると、形成される弾性層3に十分なセルを形成することができないことがあり、一方、10質量部を越えると、発泡シリコーンゴムとしての形態を維持することができなくなり、弾性層3の機械的強度が低下することがある。発泡剤として、ジメチル−1,1’−アゾ−ビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)を選択する場合には、その配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して0.5〜5質量部であるのが特によい。発泡剤は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0044】
前記付加反応架橋剤は、例えば、一分子中に2個以上のSiH基(SiH結合)を有する付加反応型の架橋剤として公知のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを使用することができる。このオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、直鎖状、環又は分枝状のいずれであってもよい。オルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、0.01〜20質量部であるのがよい。付加反応架橋剤は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0045】
前記付加反応触媒は、例えば、周期律表第9族又は第10族の金属単体及びその化合物が挙げられ、より具体的には、シリカ、アルミナ又はシリカゲル等の担体上に吸着された微粒子状白金金属、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸六水塩とオレフィン又はジビニルジメチルポリシロキサンとの錯体、塩化白金酸六水塩のアルコール溶液等の白金系触媒、パラジウム触媒、ロジウム触媒等が挙げられる。これら付加反応触媒の配合量は、触媒量で十分であり、通常、周期律表第9族又は第10族の金属量に換算して、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物全体に対して、1〜1,000ppmであるのがよく、10〜500ppmであるのが特によい。付加反応触媒の配合量が、周期律表第9族又は第10族の金属量に換算して、1ppmより少ないと、ビニル基含有シリコーン生ゴムの架橋反応が十分に進行せず、ビニル基含有シリコーン生ゴムの硬化が不十分となることがあり、一方、1,000ppmを越えると、ビニル基含有シリコーン生ゴムの架橋反応を促進する能力が向上せず、かえって、経済性が低下することがある。付加反応触媒は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0046】
前記反応制御剤は、公知の反応制御剤を制限されることなく使用することができ、例えば、メチルビニルシクロテトラシロキサン、アセチレンアルコール類、シロキサン変性アセチレンアルコール、ハイドロパーオキサイド等が挙げられる。反応制御剤の配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して0.1〜2質量部であるのがよい。反応制御剤は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0047】
前記有機過酸化物架橋剤は、単独でビニル基含有シリコーン生ゴムを架橋させることも可能であるが、付加反応架橋剤の補助架橋剤として併用すれば、シリコーンゴムの強度、歪み等の物性がより向上する。有機過酸化物架橋剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ビス−2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン等が挙げられる。有機過酸化物架橋剤の配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して0.3〜10質量部であるのがよい。有機過酸化物架橋剤は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0048】
耐熱性向上剤は、弾性層3の耐熱性を向上させる化合物であればよく、例えば、カーボンブラック、酸化鉄(ベンガラとも称する。)、酸化セリウム及び水酸化セリウム等が挙げられる。これらは一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0049】
前記カーボンブラックは、通常、その製造方法によって、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック等に類別され得るが、硫黄、アミン等の含有量が多いと、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物の付加反応を阻害することがあるので、硫黄、アミン等の含有量が少ないカーボンブラック、例えば、アセチレンブラックが好適に使用される。前記酸化鉄は、黒色ベンガラ(Fe)及び赤色ベンガラ(Fe)が好ましく挙げられる。前記酸化セリウム及び前記水酸化セリウムは、単独で使用されてもよいが、前記カーボンブラック及び/又は前記酸化鉄と共に使用されるのが、弾性層3の硬度変化を抑えることができる点で、好ましい。
【0050】
前記耐熱性向上剤の総配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、0.1〜35質量部であるのがよく、1〜10質量部であるのが特によい。耐熱性向上剤の総配合量が前記範囲であれば、カーボンブラック、酸化鉄、酸化セリウム及び水酸化セリウムの配合量は、特に限定されない。例えば、カーボンブラックの配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、0〜15質量部であるのがよく、0.2〜15質量部であるのがさらによく、2〜10質量部であるのが特によい。ベンガラの配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、0〜30質量部であるのがよく、0.2〜30質量部であるのがさらによく、2〜20質量部であるのが特によい。酸化セリウム及び水酸化セリウムの配合量はそれぞれ、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、0.1〜5質量部であるのがよく、0.2〜2質量部であるのが特によい。
【0051】
前記各種添加剤は、例えば、炭酸カルシウム等の充填材、着色剤、難燃性向上剤、熱伝導性向上剤等の添加剤、離型剤、アルコキシシラン、ジフェニルシランジオール、カーボンファンクショナルシラン、両末端シラノール基封鎖低分子シロキサン等の分散剤、及び、得られるゴムの硬度を調整することのできる粉砕石英、珪藻土等の非補強性シリカ等が挙げられる。これらの各種添加剤は、所望の配合量で配合される。
【0052】
前記ビニル基含有シリコーン生ゴム、前記シリカ系充填材及び前記各種添加剤を含有するシリコーンゴム組成物として、例えば、信越化学工業株式会社製の商品名「KEシリーズ」及び「KEGシリーズ」等を容易に入手することができる。
【0053】
ゴム組成物は、その比重は特に限定されないが、ゴム組成物の比重は弾性層3の密度にもある程度影響を与えるから、画像形成装置に配設される各種ローラに応じて、所定の比重に調整される。ゴム組成物の比重は、通常、1.00〜2.00であるのが好ましく、1.05〜1.50であるのがさらに好ましい。
【0054】
ゴム組成物は、二本ロール、三本ロール、ロールミル、バンバリーミキサ、ドウミキサ(ニーダー)、スターテックミキサー、ダイナミックミキサー等のゴム混練り機等を用いて、均一に混合されるまで、例えば、数分から数時間、好ましくは5分以上1時間以下にわたって、常温又は加熱下で混練して、得られる。
【0055】
前記ゴム組成物は、この弾性ローラを定着ローラとする場合に、好適である。
【0056】
<弾性ローラの製造>
弾性ローラ1を製造する場合、その軸体2は、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮若しくはこれらの合金等の金属、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂等の樹脂、及び前記樹脂等に導電性付与剤としてカーボンブラック又は金属粉体等を配合した導電性樹脂等の材料を用いて、公知の方法により所望の形状に調製される。軸体2に導電性が要求される場合には、前記金属及び前記導電性樹脂の他に、前記樹脂等で形成した絶縁性芯体の表面に定法によりメッキを施して軸体2を形成することができる。前記材料の中でも、容易に導電性を付与することができる点で、金属であるのが好ましく、アルミニウム又はステンレス鋼であるのが特に好ましい。
【0057】
軸体2は、所望により、その外周面にプライマーが塗布されてもよい。プライマーは、所望により溶剤等に溶解され、定法、例えば、ディップ法、スプレー法等に従って、軸体2の外周面に塗布される。プライマーとしては、特に制限はないが、例えば、アルキッド樹脂、フェノール変性・シリコーン変性等のアルキッド樹脂変性物、オイルフリーアルキッド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂及びこれらの混合物等が挙げられる。所望により、前記樹脂を硬化及び/又は架橋する架橋剤を用いることができ、このような架橋剤としては、例えば、イソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物、過酸化物、フェノール化合物、ハイドロジェンシロキサン化合物等が挙げられる。プライマー層は、例えば、0.1〜10μmの厚さに形成される。
【0058】
弾性ローラ製造装置10に、軸体2が、軸体装着手段13により装着される。すなわち、塗布ヘッド11における中心開口部24に挿通した軸体2の上端部を上部固定手段20で固定し、軸体2の下端部を下部固定手段21で固定する。
【0059】
初期状態においては、塗布ヘッド11は、軸体2の上端部近傍に位置する。塗布ヘッド11においては、貯留タンク22から未硬化の弾性層形成用材料が、3本の供給ライン23を通じて3個の弾性層形成用材料供給口29A、29B、29Cから収容部26内に供給され、収容部26内に未硬化の弾性層形成用材料が充満している。
【0060】
この塗布ヘッド11における前記中心開口部24の内側表面27と軸体2の外周面との間隙70が、例えば0.1〜10mmである場合に、未硬化の前記弾性層形成用材料の粘度が10〜4000Pa・sであるときには、収容部26内からスリット状吐出口28を通じて軸体2の外表面に供給される未硬化の弾性層形成用材料の吐出速度は0.01〜500g/minであり、塗布ヘッド11の下降速度は軸体への未硬化の弾性層形成用材料が途切れないように、かつ軸体の周囲にあふれすぎないように適宜に調節するのが好ましい。このような吐出速度であると、偏肉が少ない、合わせ目がない、外径及び振れ精度が高いローラを成形し易く好ましい。
【0061】
特に、3個の弾性層形成用材料供給口29A、29B、29Cから収容部26内に未硬化の弾性層形成用材料が供給されると、収容部26内では、一つの弾性層形成用材料供給口から収容部26内に供給された未硬化の弾性層形成用材料の流れと、隣接する弾性層形成用材料供給口から収容部26内に供給された未硬化の弾性層形成用材料の流れとが合流して均一な流れ及び圧力となり、スリット状吐出口28の全周にわたって均一な吐出速度となって軸体2の外表面に未硬化の弾性層形成用材料が供給される。
【0062】
軸体2の上端部近傍に位置する塗布ヘッド11が、図示しない駆動手段により、軸体に沿って下降する。塗布ヘッド11の下降に伴って、前記スリット状吐出口28から吐出される未硬化の弾性層形成用材料が軸体2の外表面に塗布される。
【0063】
塗布ヘッド11が軸体2の下端部近傍まで下降しきると、軸体2の外表面に未硬化の弾性層形成用材料による粗弾性層塗膜71が形成される。
【0064】
この後、粗弾性層塗膜71を有する軸体2を弾性ローラ製造装置10から取り外して、加熱硬化、必要に応じ、研磨・表層コーティング等をすることにより、弾性ローラ例えば現像ローラ、定着ローラ等を得る。
【0065】
この発明の方法により製造された弾性ローラは、画像形成装置に好適に組み込むことができる。画像形成装置としては特に制限がないが、図3に示す画像形成装置を一例として挙げることができる。図3において、30は画像形成装置、31は像担持体、32は帯電手段、33は露光手段、34は転写手段、35は定着手段、36は被転写体、37はクリーニング手段、40は現像手段、41は現像剤収納部、42は現像剤、43は現像剤供給手段、44は現像ローラ、45は現像剤規制部材、50は筐体、52は開口部、53は定着ローラ、54は無端ベルト支持ローラ、及び55は無端ベルトである。
【実施例】
【0066】
(実施例1〜20)
無電解ニッケルメッキ処理が施された軸体(SUM22製、直径15mm、長さ275mm)をトルエンで洗浄し、その表面にシリコーン系プライマー(商品名「プライマーNo.16」、信越化学工業株式会社製)を塗布した。プライマー処理した軸体を、ギヤオーブンを用いて、150℃の温度にて10分焼成処理した後、常温にて30分以上冷却し、軸体の表面にプライマー層を形成した。
一方、液状導電性シリコーンゴム(商品名「KE−1334」、信越化学工業株式会社製)100質量部とカーボンブラック(商品名「アサヒサーマル」、旭カーボン株式会社製)10質量部とを、攪拌ミキサーにて混合し、真空脱泡し、成形用導電性シリコーンゴムとした。その粘度は35Pa・sであった。
【0067】
次いで、シリコーンオイル(商品名「KF−96」、信越化学工業株式会社製)、及びシリカ(商品名「RS−150」、東ソー・シリカ株式会社製)を混合させる事により、表1の粘度となる様にして未硬化の弾性層形成用材料を調製した。
【0068】
次いで、3個の弾性層形成用材料供給口29A〜29Cを有する塗布ヘッド11を選択し、表1の吐出速度、間隙となるように調整した。
【0069】
(比較例1〜3)
塗布ヘッド11の中心軸線に対して180度の角度を成すように配置された2個の弾性層形成用材料供給口(図示せず。)を有する塗布ヘッド11を選択し、表1の吐出速度及び間隙になるように調整した。
【0070】
〈弾性ローラの外径及び振れ精度の測定〉
表1の条件に基づいて成形された各弾性ローラを、ミツトヨ(株)製のレーザー測定器LSM−6000にて各弾性ローラの外径精度及び振れ精度を測定した。
【0071】
外径精度は、少なくとも、弾性層3における中央部と両端部近傍との3点における外径を測定して、測定された外径から求めた弾性層3の平均外径(rav)に対する、各測定点における外径(r)と平均外径(rav)との外径差(r−rav)を百分率で示した値であり、具体的には、各測定点において、式[(r−rav)/rav]×100(%)で算出される。ここで、弾性層3の外径精度は、定法に従って、弾性層3の測定点における外径を前記レーザー測定器で測定し、測定された各外径から、前記式により算出し、結果を下記基準に基づき判定した。
【0072】
○:±0.14%
△:±0.25%(但し、±0.14%の範囲を除く。)
×:−0.25%未満、又は0.25%を越える(0.25%を含まない。)
弾性層3の振れ精度は、弾性層3の中心点3Cと軸体2の中心点2Cとの距離に影響される。例えば、図7(a)に示されるように、弾性ローラ1は、その弾性層3が、軸線方向において、軸体2の軸線2Cとその軸線とがずれて軸体2の外周面に形成され、弾性ローラ1のA−A線における断面が図7(b)に示されている。図7を参照すると、弾性層3の振れ精度は、弾性層3の最大厚さ(tmax)と最小厚さ(tmin)との差(tmax−tmin)、換言すると、軸体2の中心点2Cから弾性層3の外周面までの最長距離Lと最短距離Lとの差(L−L)を、弾性層3の平均外径(rav)に対する百分率で示された値として、算出される。
【0073】
すなわち、弾性層3の振れ精度は、弾性層3の平均外径(rav)に対する、少なくとも、弾性層3における中央部と両端部近傍との3点における、弾性層3の最大厚さ(tmax)と最小厚さ(tmin)との差(tmax−tmin)を、百分率で示した値であり、より具体的には、各測定点において、式[(tmax−tmin)/rav]×100(%)で算出される。
【0074】
ここで、弾性ローラの振れ精度は、弾性ローラを回転させながら、レーザー測長機により、各測定点における、弾性ローラの中心点から弾性ローラの外周面までの距離を測定し、測定された最長距離と最短距離とから、前記式により算出し、結果を下記基準に基づき判定した。
【0075】
○:0.5%以下
△:0.5%を越え、0.8%以下
×:0.8%を越える。
【0076】
なお、図3に示される画像形成装置において、高品質の画像を形成するには、通常、外径精度は±0.25%の範囲内、振れ精度は0.8%以下であるのがよい。
【0077】
〈ローラの電気抵抗値の測定〉
成形されたローラの電気抵抗は抵抗測定器例えば、製品名「R8340A」(アドバンテスト株式会社製)を用いて、ローラの全長に渡って、10mmの間隔で、一周72点で抵抗を測り、そのばらつきを測定した。
【0078】
電気抵抗値のばらつきは、以下の判定基準により判定された。
【0079】
○: (電気抵抗値の最大値/電気抵抗値の最小値)が10以下
△: (電気抵抗値の最大値/電気抵抗値の最小値)は10を越え100以下
×: (電気抵抗値の最大値/電気抵抗値の最小値)が100を越える。
【0080】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】図1はこの発明の弾性ローラ製造装置により製造される一例としての弾性ローラを示す斜視図である。
【図2】図2はこの発明の弾性ローラ製造装置により製造される他の例としての弾性ローラを示す斜視図である。
【図3】図3はこの発明の弾性ローラ製造装置により製造される一例としての弾性ローラを組み込んでなる画像形成装置の一例を示す説明図である。
【図4】図4はこの発明の一例である弾性ローラ製造装置における塗布ヘッドを示す断面説明図である。
【図5】図5はこの前記塗布ヘッドを示す平面図である。
【図6】図6はこの発明の一例である弾性ローラ製造装置を示す説明図である。
【図7】図7はこの発明における弾性ローラの振れ精度を測定する原理を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0082】
1 弾性ローラ
2 軸体
2C 軸体の中心点
3 弾性層
3C 弾性層の中心点
4 コート層
10 弾性ローラ製造装置
11 塗布ヘッド
12 塗布ヘッド移動手段
13 軸体装着手段
14 軸体装着手段
15 支柱
16 ガイドレール
17 走行体
18 塗布ヘッド装着部材
19 腕体
20 上部固定手段
21 下部固定手段
21A 弾性層形成用材料供給手段
22 貯留タンク
23 供給ライン
24 中心開口部
25 筐体
26 収容部
27 内側表面
28 スリット状吐出口
29A、29B、29C 弾性層形成用材料供給口
30 画像形成装置
31 像担持体
32 帯電手段
33 露光手段
34 転写手段
35 定着手段
36 被転写体
37 クリーニング手段
40 現像手段
41 現像剤収納部
42 現像剤
43 現像剤供給手段
44 現像ローラ
45 現像剤規制部材
50 筐体
52 開口
53 定着ローラ
54 無端ベルト支持ローラ
55 無端ベルト
70 間隙
71 粗弾性層塗膜
80 レーザー測定器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布ヘッド、及び前記塗布ヘッドを弾性ローラの軸体の軸方向に移動させることができる塗布ヘッド移動手段を有する弾性ローラ製造装置であって、
前記塗布ヘッドは、前記弾性ローラの軸体との間に同心環状の間隙を有し、前記弾性ローラの軸体に対して開口されたスリット状吐出口が形成され、
前記塗布ヘッドは、前記スリット状吐出口から吐出される未硬化の弾性層形成用材料を収容する収容部と、前記塗布ヘッドの中心軸線を中心にして回転対象に配置された3個以上の、前記収容部に前記弾性層形成用材料を供給する弾性層形成用材料供給口とを有して成る弾性ローラ製造装置。
【請求項2】
前記間隙は0.1〜10mmであり、前記未硬化の弾性層形成用材料はその粘度が10〜4000Pa・sであり、その吐出速度が0.01〜500g/minである前記請求項1に記載の弾性ローラ製造装置。
【請求項3】
前記スリット状吐出口はその幅が0.1〜10mmである前記請求項1又は2に記載の弾性ローラ製造装置。
【請求項4】
軸体の外表面に未硬化の弾性層形成用材料を塗布してから軸体の外周面に弾性層を形成する弾性ローラの製造方法において、
前記請求項1〜3のいずれか1項に記載の弾性ローラ製造装置を使用して、塗布ヘッド移動手段を軸体の軸線に沿って移動しつつ、スリット状吐出口から前記軸体の外表面に未硬化の弾性層形成用材料を吐出させて塗布することを特徴とする弾性ローラの製造方法。
【請求項5】
前記弾性層形成用材料は、その粘度が10〜4000Pa・sである前記請求項4に記載の弾性ローラの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−238034(P2008−238034A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−81436(P2007−81436)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【復代理人】
【識別番号】100118809
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 育男
【Fターム(参考)】