説明

復号器に分散される復号関数の選択

本発明は、少なくとも1つの現在の画像部分を伝送するための方法であって、少なくとも1つの第1のタイプの選択関数を適用すること(14)により、符号化関数の完成した組から符号化関数が選択され(10)、前述の第1のタイプの1つまたは複数の選択関数が、既に復号されている画像データを使用し、選択された符号化関数を用いて現在の画像部分が符号化され(20)、符号化された画像部分が復号器(6)に向けて伝送され(30)、第1のタイプの1つまたは複数の選択関数を記述する情報が復号器に向けて伝送される(34)ことを特徴とする方法に関する。本発明は、対応する復号方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報を符号化および復号するための競争力のある技法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像を伝送するための、いくつかの符号化および復号方法が存在する。具体的には、画像が自立的に、すなわち他の画像を参照せずに符号化されるイントラ符号化などの主なタイプの符号化と、現在の画像と過去の画像との間の差のみを表し、送るために、現在の画像が過去の画像に関連して符号化されるインタ符号化との間で区別がなされる。
【0003】
符号化のタイプに関係なく、多数の符号化および復号関数が利用可能である。例えばインタ符号化に関しては、符号化関数は、使用可能な多様な予測関数である。
【0004】
特定の符号化関数が、様々な利用可能な関数間の競合により、選択基準または選択関数に基づいて慣習的に選択される。例えば、品質と帯域幅との間の妥協点に達するために使用されるある標準的基準は、符号化がもたらす歪とビット速度との間の比率である。
【0005】
標準的な画像符号化および復号環境では、この選択は、符号器の側だけにもたらされる。このことの結果は、変わるたびに復号器に送信されなければならない符号化関数の選択である。
【0006】
そのような実装形態では、復号器は受動的役割を有し、その計算能力および処理能力が十分に使用されない。
【0007】
具体的には、標準的なシステムでは、符号化関数を記述する大量の情報が使用され、帯域幅の無視できない部分を消費する。さらには、記述的情報の量および変更の頻度は、利用可能な符号化関数の組のサイズとともに増加する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の利点は、帯域幅の使用を最適化し、計算および処理の一部を復号器内で行うことを可能にすることにより、上記の状況を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのために、本発明は、少なくとも1つの現在の画像部分を伝送する方法であって、
・第1のタイプの少なくとも1つの選択関数を適用することにより、有限集合の符号化関数から符号化関数を選択するステップであって、前述の第1のタイプの前述の1つまたは複数の選択関数が復号済み画像データを使用する、選択するステップと、
・選択した符号化関数を使用して現在の画像部分を符号化するステップと、
・符号化した画像部分を復号器に送るステップと、
・前述の第1のタイプの1つまたは複数の選択関数を記述する情報を前述の復号器に送るステップと
を備えることを特徴とする方法を提供する。
【0010】
対応する方法で、本発明は、少なくとも1つの現在の画像部分を復号する方法であって、
・符号化された現在の画像部分を受け取るステップと、
・使用されてきた第1のタイプの少なくとも1つの選択関数を記述する情報を受け取るステップと、
・前述の第1のタイプの前述の1つまたは複数の選択関数を使用して、有限集合の復号関数から復号関数を選択するステップであって、前述の第1のタイプの前述の1つまたは複数の選択関数が復号済みデータを使用する、選択するステップと、
・選択した復号関数を使用して現在の画像部分を復号するステップと
を備えることを特徴とする方法も提供する。
【0011】
上記の方法により、この復号器は、選択関数に関係し、符号器内でもたらされる選択操作を再現するようにこの復号器が自立的に働くことを可能にする、情報にアクセスすることができる。さらに、選択基準の変更は、符号化/復号関数の変更よりも頻度が低いため、無用に送られるデータの量が低減される。
【0012】
ある特定の実装形態では、前述の第1のタイプの前述の1つまたは複数の選択関数を適用することは、個々の固有の符号化関数および復号関数をもたらす。
【0013】
したがって、復号器は、使用される復号関数を確実に特定することができ、対応する記述的情報を送る必要はない。
【0014】
別の実装形態では、この符号化方法において、前述の第1のタイプの前述の1つまたは複数の選択関数は、有効な符号化関数群をもたらし、この方法は、
・前述の有効な関数群から符号化関数を選択するために、第2のタイプの少なくとも1つの選択関数を適用するステップと、
・前述の群に関連して表される、選択される復号関数の識別子を特定するステップと、
・前述の識別子を復号器に送るステップと
をさらに備える。
【0015】
そのような実装形態では、この復号方法において、前述の第1のタイプの前述の1つまたは複数の選択関数は、有効な復号関数群をもたらし、この方法は、
・復号関数の識別子を受け取るステップと、
・前述の識別子を前述の有効な復号関数群に適用することの結果として、復号関数を選択するステップと
をさらに備える。
【0016】
したがって、存在するすべての関数の組よりも小さいサイズの群に関連して識別子が表されるので、より小さい識別子を送ることが可能である。
【0017】
さらなる実装形態では、第1のタイプの1つまたは複数の選択関数が索引付きの選択関数の組から選択され、前述の対応する記述的情報が、前述の索引付きの組に関連して表される。これは、選択関数を記述する情報を単純かつ効率的に伝送することを可能にする。
【0018】
この方法は、前述の索引付きの選択関数の組を特定するために、有利には符号器と復号器との間の通信の予備段階を含む。これは、選択関数のリストが適合され、発展することを可能にする。
【0019】
別の実装形態では、前述の第1のタイプの選択関数のうちの少なくとも1つがパラメータを有し、前述の記述的情報がパラメータ情報を含む。
【0020】
したがって、相応の数の様々な関数を構成するために、同じ選択関数が自らのパラメータを様々な方法で設定され得る。
【0021】
さらに本発明は、対応するプログラムおよび装置も提供する。
【0022】
本発明の他の特徴および利点は、非限定的な例として添付の図面を参照して与えられる以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】ビデオ符号器およびビデオ復号器をそれぞれが備える、2つの通信する局を示す図である。
【図2】本発明の第1の実装形態の符号化方法の流れ図である。
【図3】本発明の第1の実装形態の復号方法の流れ図である。
【図4】本発明の第2の実装形態の符号化方法の流れ図である。
【図5】本発明の第2の実装形態の復号方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、図1に示すシステムなど、任意の画像符号化および復号システムに適用可能である。そのシステムは、デジタルテレビストリームFのビデオシーケンスを符号化し、それを、メモリ4に関連するコントローラまたはコンピュータ3を含むビデオ符号器2を含む伝送局1から、同様にコントローラまたはコンピュータ7およびメモリ8を含む復号器6を含む受信局5に伝送する。
【0025】
例えば、伝送器1は、DVB形式などの形式のデータストリームΦをデジタルテレビチャネル上で伝送するアンテナを含み、局5はパーソナルコンピュータである。
【0026】
本発明の第1の実装形態による符号化を、以下に図2を参照して説明する。
【0027】
符号器2が、ビデオシーケンスの画像データのストリームFを受信する。このストリームは、各画像または各画像部分を符号化するために処理される。用語「画像」は、概してビデオシーケンスの要素を指す。使用される標準に応じて、用語「画像」は用語「フレーム」により、そして用語「部分」は用語「ブロック」により同義で置換することができる。
【0028】
この方法は、1つまたは複数の選択関数を使用する競合型プロセスにより、有限集合の符号化関数から符号化関数を選択するステップ10を最初に含む。
【0029】
記載の実装形態では、選択は、利用可能な各符号化関数を現在の画像部分に適用するステップ12を含む。
【0030】
次いで、選択10は、1つまたは複数の選択関数を適用するステップ14を含む。
【0031】
この実装形態では、選択関数は、単一の結果をもたらすという意味で区別的である。
【0032】
例えば、この符号化関数は、イントラ符号化モード、インタ符号化モード、他の符号化モードなどのタイプまたはモードによって分類され、モードごとに候補符号化関数が選択される。したがって、モードごとに1つの候補符号化関数を決定するために、各モードに固有の選択関数を使用して各モードの符号化関数がまず互いに比較される。
【0033】
次いで、この選択ステップ10は、この様々なモードに関する符号化関数を比較するようになされた選択関数を適用することにより、候補符号化関数から符号化関数を選択するステップを含む。
【0034】
当然、この選択ステップでは、より大きいまたはより少ない選択の深さを適用することができる。具体的には、以下の基準に関して追加の選択レベルを適用することができる。
・インタモードで参照画像を選択する。
・画像係数が扱われる順番を選択する(行ごと、列ごと、ジグザグ、等)。
・動きを推定するためのピクセル精度を選択する。
・動きベクトルを選択する。
・インタモード符号化において、動きベクトル予測値(movement vector predictor)を選択する。
・変換(transform)を選択する。
・その他。
【0035】
さらに、選択関数を適用するステップ14は符号器内で再現可能であり、すなわち、選択関数が復号済み画像データに基づいて実行される。この符号器は、このデータが復号器内で既に復号されていることを知っている。
【0036】
例えば、現在の画像が被る歪に基づいて計算される歪/ビット速度の比率などの標準的な選択基準は、その現在の画像が復号済みデータの一部分ではないので、これらの選択関数で使用することはできない。
【0037】
したがって、この選択ステップ10は、特定の選択基準を使用することを除いて、原則として標準的方法における競合による選択と同様である。
【0038】
それでもなお、画像外部の参照ピクセルの歪を、符号化され復号済みデータに属しているとみなすことにより、歪/ビット速度の比率など、標準的基準と同様の基準を使用することが可能である。
【0039】
以下に示すように、復号済みデータの統計または特徴に基づく多数の選択関数を使用することができる。
【0040】
次いでこの方法は、選択される符号化関数を使用して現在の画像部分を符号化するステップ20を含む。ここで記載の実装形態では、選択ステップ10が符号化関数を順に適用するステップを伴うので、このステップ20は、選択される符号化関数を適用することの結果を抽出することに一意的に相当する。符号化関数を適用することの結果が利用できない実装形態では、この符号化ステップは、選択される符号化関数を直接適用することに相当する。
【0041】
その後、この方法は、復号器6に情報を送るステップ30を含む。この伝送ステップ30は、その符号化された形式にある現在の画像部分を伝送するステップ32と、使用される1つまたは複数の選択関数を記述する情報を伝送するステップ34とを含む。
【0042】
この記述的情報は、様々な種類のものとすることができる。具体的には、この記述的情報は、選択関数の明示的記述を含むことができる。ここで記載の実装形態では、選択関数が符号器および復号器内にリストされ、連帯的に索引を付けられる。その場合、使用される選択関数を記述する情報を送るステップは、符号器および復号器に共通のこの索引に関連して表される選択関数の識別子を送るステップを単に伴う。
【0043】
符号器では、この伝送ステップ30は、出力ストリーム中にデータを挿入することに相当する。
【0044】
例えば、以下の表1は、動きベクトルの競合型インタモード符号化の状況における予測値に関する様々な選択関数の索引を示す。
【0045】
【表1】

【0046】
上記の表では、選択0は、符号器が、使用される選択関数を復号器に知らせたくないことを示す。存在するすべての関数の組に関連して表される符号化関数の識別子が送られる。このモードは、符号器および復号器システムの標準的動作モードに相当する。したがって、符号器および復号器に共通の選択関数のリストは、標準的方法、すなわち符号器以外に知られていない選択関数を使用し、その結果が送られなければならない方法で動作する可能性を含む。
【0047】
索引1、2、および3は、実装制約に応じて多かれ少なかれ複雑である歪/ビット速度基準の改変形態である選択関数に相当する。
【0048】
索引4および5は、符号化関数が統計的基準またはローカル基準それぞれに応じて選択されるような選択関数に相当する。例えば、選択は、統計的に非常に頻繁である符号化関数、またはローカルレベルで多く使用される、すなわち符号化済みの隣接するマクロブロックに対して頻繁に使用される符号化関数に適用される。
【0049】
イントラ符号化の状況における様々な可能な選択関数を、以下の表2に示す。
【0050】
【表2】

【0051】
上記に示したように、イントラ符号化関数は、画像の空間的冗長性のみを使用する予測に相当する。H.264標準によれば、イントラ符号化マクロブロックに関して184の符号化の可能性がある。
【0052】
上記の表では、選択0は、前述同様に標準タイプの動作に相当する。
【0053】
索引1または2に関しては、符号化済みのマクロブロックに対してなされた選択に応じて、現在のマクロブロックのための符号化関数を符号器が選択する。
【0054】
より正確には、選択関数1は、様々なモードの選択統計に応じて符号化関数を選択し、その後、歪/ビット速度基準に応じて最適な符号化関数を選択することをもたらす。
【0055】
選択関数2は、近隣ブロックがすべて、自動的に選択される同じ符号化関数を使用して符号化されることを意味する。当然、近隣ブロックを部分群へと区分化し、各部分群に選択関数を関連付けることが可能である。
【0056】
選択関数3は、近隣ブロックの方向勾配の優先方向(favored direction)に応じて符号化関数を選択することをもたらす。
【0057】
選択を行うために必要な情報を復号器に送ることは、使用される符号化関数を記述する情報を送ることを必要とせずに、使用される符号化関数に対応する復号関数をその復号器が取得できることを確実にする。これは、使用される符号化関数を記述する情報を抑制することにより、帯域幅の使用を最適化する。
【0058】
この選択関数は符号化関数よりも長い間使用され、その結果、符号化関数に関係する情報を送る場合に比べ、選択関数に関係する情報を送るための全有効帯域幅が増す。
【0059】
上述の符号化方法に対応する復号方法を、以下に図3を参照して説明する。
【0060】
この方法は、符号化された現在の画像部分を受け取るステップ42と、使用される1つまたは複数の選択関数を記述する情報を受け取るステップ44とを含む、受け取るステップ40で開始する。
【0061】
このステップ40の後に、選択ステップ10の間に使用された有限集合の符号化関数に対応する有限集合の復号関数から、復号関数を選択するステップ50が続く。
【0062】
ここで記載の実装形態では、この選択ステップは、利用可能な各復号関数を適用するステップ52で開始し、次いで、特定される1つまたは複数の選択関数を、復号関数を選択するために適用するステップ54になる。
【0063】
ここで記載の実装形態では、この適用は、モードごとに候補関数を選択し、次いで、図2を参照して説明した選択ステップ14に対応する方法で前述の候補関数から関数を選択することを含む。
【0064】
この選択関数は区別的であり、復号器レベルで、すなわち復号済みデータのみを使用して適用され、この適用ステップ54は、ステップ20で使用される符号化関数に対応する固有の復号関数をもたらす。
【0065】
この復号方法は、選択した復号関数を適用する、復号するステップ60を最後に含む。
【0066】
ここで記載の実装形態では、このステップは、適用ステップ52の時点で記憶されるすべての結果に関係する、選択した復号関数の結果を抽出することに相当する。
【0067】
本発明の別の実装形態を、図4および図5を参照して以下に説明する。これらの図面では、前の実装形態のステップと同じステップは、同じ参照番号を有する。
【0068】
図4に示す符号化は、既に述べたのと同じ方法で開始する。
【0069】
ただし、この実装形態では、第1の選択関数と呼ばれる選択関数を適用するステップ14は区別的でなく、すなわちこれらの関数は、固有の符号化関数を特定することはもたらさず、むしろ、有効な符号化関数群と呼ばれる符号化関数群を特定することをもたらす。第1の実装形態で使用される選択関数は、このタイプの関数である。
【0070】
次いで、第2のタイプの選択関数が選択ステップ16の間に使用されて、有効な符号化関数群から選択される固有の符号化関数をもたらす。この第2のタイプの選択関数は、復号済みデータまたは復号済みでないデータを区別なく使用する。このタイプの選択関数は符号器レベルでのみ適用され、その結果のみが復号器に送られる。
【0071】
この実装形態では、伝送ステップ30は、実際に使用される前述の固有の符号化関数の識別子を送るステップ36を含む。この識別子は、有効な符号化関数群に関連して表される。
【0072】
第1の選択関数を適用することは、索引付きの符号化関数の組をもたらす。第2の選択関数を適用することは、この組から符号化関数を選択する。
【0073】
第1の選択関数を適用することは復号器レベルで再現可能であり、選択される符号化関数の識別子は、有効な符号化関数群に関連して表すことができる。
【0074】
利用可能な関数の組よりも小さい関数群に関連して識別子が表されるため、この識別子は標準的な識別子よりも小さく、そのことは帯域幅を節約する。
【0075】
ここで記載の実装形態では、この識別子は、有効な符号化関数群の索引に関連して表される関数の数である。
【0076】
例えば、この符号器および復号器は、そのサイズが64から2まで、2の倍数単位で様々なウィンドウ上で符号化関数および復号関数を使用する。次いで、すべての有効な関数の組が、以下の表3のような表として簡易化された形で表される。
【0077】
【表3】

【0078】
第1の選択関数は、所与の画像解像度、または所与の値よりも大きい画像解像度を課す。例えば、この第1の選択関数が4よりも大きいウィンドウサイズを課し、その結果、サイズ2およびサイズ4の区分に相当する索引0および索引1の符号化/復号関数が単純に禁止される。
【0079】
すると、有効な符号化/復号関数群は、以下の表4によって表される群である。
【0080】
【表4】

【0081】
別の第1の選択関数は、処理される領域の同質性に関係する基準に応じて、小さな区分を削除することを課す。その結果、有効な符号化/復号関数群は、以下の表5に相当する。
【0082】
【表5】

【0083】
第2の選択(サイズ16のウィンドウ)は、有効な関数群を形成する3つの符号化関数から符号化関数を選択する。選択される関数の識別子は、この群およびより小さい該当する索引に関連して表される。
【0084】
図5に示す復号方法では、受信ステップ40は、符号化された画像を受け取るステップ42、および第1の選択関数を記述する情報を受け取るステップ44に加え、使用される符号化関数の識別子を受け取るステップ46を含む。
【0085】
さらに、選択ステップ50の間、第1の選択関数を適用するステップ52は、選択ステップ14の後に確認される有効な符号化関数群に対応する有効な復号関数群のみを生み出す。
【0086】
次いでこの方法は、ステップ46の間に受信した識別子の助けで符号化関数を選択するステップ56を備える。
【0087】
この選択ステップ56の後に、復号関数が特定され、ステップ60で適用される。
【0088】
したがって、本発明により、符号器内でもたらされる符号化関数の選択を、復号器内で再現することができる。これは、符号化関数を特定する情報を、より小さいサイズの群に関連して表し、または完全に削除することにより、符号化関数を特定する情報に割り当てられる帯域幅を大幅に低減する利点がある。
【0089】
当然、他の実装形態を考えることもできる。
【0090】
これらの場合のそれぞれにおいて、選択関数に追加のパラメータが伴うことができる。例えば、第2の選択パラメータは、歪が、差分絶対値和(SAD: Sum of Absolute Differences)を使用して空間領域内で、または変換差分絶対値和(SATD: Sum of Absolute Transformed Differences)を使用して周波数領域内で計算されることを示すことができる。同様に、ビット速度の評価は、符号化された画像の帯域幅コスト、識別子の帯域幅コスト、等を考慮することができる。
【0091】
例えば、これらの選択関数は等しくパラメータを有することができ、使用されるパラメータを記述する情報は符号器から復号器に送ることができる。
【0092】
インタ符号化のパラメータの一例は、現在の画像に先行する所与の数の画像に関する時間的活動基準に応じた参照画像の数である。
【0093】
別の例は、所謂「サブピクセル」動き補償関数の精度である。
【0094】
さらなる例では、適用される選択関数は、歪/ビット速度基準を最小限に抑えることに基づく。ビット速度は、以下の等式により、多くの場合ビットストリームのすべての成分のビット速度の和としてみなされる。
R=RrmRmoRomvRmv
【0095】
上記の等式では、Rrは輝度成分およびクロミナンス成分に関するブロック残差(block residual)のビット速度であり、Rmは符号化モードのビット速度であり、Rmvは動きベクトル残差(movement vector residual)のビット速度であり、Roはヘッダ、ブロック構造、挿入ビット、および他の限定子を含む他の成分のビット速度である。
【0096】
係数λは、量子化(quantization)ステップに応じた重み付け係数である。ただし、これらの係数λの値は、符号化を効率的に改善するためにビデオシーケンスのコンテンツに応じて適合される。
【0097】
この種の実装形態では、使用される選択関数を記述する情報は、符号器の入力信号Fに応じた基準に基づく係数λの修正形態を含む。
【0098】
例えば、以下の表は、送信される係数λの修正形態を詳述する。
【0099】
【表6】

【0100】
さらに、これらの選択関数のどれか一方を使用することは、ビット速度や利用可能帯域幅の進化などの環境パラメータによって、または使用される機器にリンクされるパラメータによってトリガされ得る。したがって、モバイル機器では、バッテリレベルが特定の選択関数の使用をトリガすることができる。
【0101】
ある特定の実装形態では、この符号器および復号器が、予備段階中に選択関数のリストを交換する。よって、それぞれが同じリストを有し、使用される選択関数の識別子の表現を簡易化する。そのような実装形態は、符号器と復号器との間の双方向リンクを必要とする。
【0102】
符号器および復号器の両方において、本発明の実装は、上述の特徴を含むようになされたプログラムに基づくことができる。当然、専用プロセッサまたは特定の回路を使用することも可能である。
【0103】
具体的には、上述の符号化または復号を実施するために、ビデオ処理装置用のプロセッサまたはコンピュータによって実行されるプログラムを使用することができる。具体的には、本発明の多様で可能な実装形態に従う符号化および復号方法の多様なステップを実施するために、コンピュータ3およびコンピュータ7が、メモリ4およびメモリ8とそれぞれ通信する。
【0104】
さらに、本発明を符号器および対応する復号器内に適用することができ、その後、それらの機器は上記に特定した関数を実行するための手段を含む。これらの手段には、マイクロプロセッサ、メモリに接続されるマイクロコントローラまたは他のプロセッサ、および他の構成要素が含まれる。
【符号の説明】
【0105】
1 伝送局
2 ビデオ符号器
3 コントローラまたはコンピュータ
4 メモリ
5 受信局
6 復号器
7 コントローラまたはコンピュータ
8 メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの現在の画像部分を伝送する方法であって、
第1のタイプの少なくとも1つの選択関数を適用すること(14)により、有限集合の符号化関数から符号化関数を選択するステップ(10)であって、前記第1のタイプの前記1つまたは複数の選択関数が復号済み画像データを使用する、選択するステップ(10)と、
前記選択した符号化関数を使用して前記現在の画像部分を符号化するステップ(20)と、
前記符号化した画像部分を復号器(6)に送るステップ(30)と、
前記第1のタイプの前記1つまたは複数の選択関数を記述する情報を前記復号器に送るステップ(34)と
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1のタイプの前記1つまたは複数の選択関数を適用することが、固有の符号化関数をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のタイプの前記1つまたは複数の選択関数は、有効な符号化関数群をもたらし、前記方法が、
前記有効な関数群から符号化関数を選択するために、第2のタイプの少なくとも1つの選択関数を適用するステップ(16)と、
前記群に関連して表される、選択される復号関数の識別子を特定するステップと、
前記識別子を前記復号器に送るステップ(36)と
をさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のタイプの前記1つまたは複数の選択関数が索引付きの選択関数の組から選択され、前記対応する記述的情報が、前記索引付きの組に関連して表される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記索引付きの選択関数の組を特定するために、符号器と復号器との間の通信の予備段階を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のタイプの前記選択関数のうちの少なくとも1つがパラメータを有し、前記記述的情報がパラメータ情報を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ビデオ処理装置(2)用のコンピュータプログラムであって、前記装置の計算ユニット(3)による前記プログラムの実行時に、請求項1から6のいずれか1項に記載のビデオ符号化方法の前記ステップを実行するための命令を含む、コンピュータプログラム。
【請求項8】
少なくとも1つの現在の画像部分を伝送するための装置(2)であって、
第1のタイプの少なくとも1つの選択関数を適用することにより、有限集合の符号化関数から符号化関数を選択するための手段であって、前記第1のタイプの前記1つまたは複数の選択関数が復号済み画像データを使用する、選択するための手段と、
前記選択した符号化関数を使用して前記現在の画像部分を符号化するための手段と、
前記符号化した画像部分を復号器(6)に送るための手段と、
前記第1のタイプの前記1つまたは複数の選択関数を記述する情報を前記復号器に送るための手段と
を備えることを特徴とする装置(2)。
【請求項9】
少なくとも1つの現在の画像部分を復号する方法であって、
符号化された現在の画像部分を受け取るステップ(42)と、
使用されてきた第1のタイプの少なくとも1つの選択関数を記述する情報を受け取るステップ(44)と、
前記第1のタイプの前記1つまたは複数の選択関数を使用して、有限集合の復号関数から復号関数を選択するステップ(50)であって、前記第1のタイプの前記1つまたは複数の選択関数が復号済みデータを使用する、選択するステップ(50)と、
前記選択した復号関数を使用して前記現在の画像部分を復号するステップ(60)と
を備えることを特徴とする方法。
【請求項10】
前記第1のタイプの前記1つまたは複数の選択関数が、固有の復号関数をもたらす、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のタイプの前記1つまたは複数の選択関数は、有効な復号関数群をもたらし、前記方法が、
復号関数の識別子を受け取るステップ(46)と、
前記識別子を前記有効な復号関数群に適用することの結果として、復号関数を選択するステップ(56)と
をさらに備える、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記第1のタイプの前記1つまたは複数の選択関数が索引付きの選択関数の組から選択され、前記記述的情報が、前記索引付きの組に関連して表される、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記索引付きの選択関数の組を特定するために、符号器と復号器との間の通信の予備段階を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1のタイプの前記選択関数のうちの少なくとも1つがパラメータを有し、前記記述的情報がパラメータ情報を含むことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
ビデオ処理装置(6)用のコンピュータプログラムであって、前記装置の計算ユニット(7)による前記プログラムの実行時に、請求項9から14のいずれか1項に記載のビデオ復号方法の前記ステップを実行するための命令を含む、コンピュータプログラム。
【請求項16】
少なくとも1つの現在の画像部分を復号するための装置(6)であって、
符号化された現在の画像部分を受け取るための手段と、
使用されてきた第1のタイプの選択関数を記述する情報を受け取るための手段と、
前記第1のタイプの前記1つまたは複数の選択関数を使用して、有限集合の復号関数から復号関数を選択するための手段であって、前記第1のタイプの前記1つまたは複数の選択関数が復号済みデータを使用する、選択するための手段と、
前記選択した復号関数を使用して前記現在の画像部分を復号するための手段と
を備えることを特徴とする装置(6)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−532123(P2010−532123A)
【公表日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−514053(P2010−514053)
【出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際出願番号】PCT/FR2008/051101
【国際公開番号】WO2009/004255
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(591034154)フランス・テレコム (290)
【Fターム(参考)】