説明

循環式水洗トイレ

【課題】トイレが急の移動を要する場合であっても、被処理水を移送して直ちに移動できる循環式水洗トイレを提供すること。
【解決手段】浄化槽14,15及び送水槽16を少なくとも備えるトイレ部4と、トイレ部4を載置するとともにトイレ部4を移動可能な移動部5とを有し、所定の配置箇所に配置される移動式の移動ユニット2と、移動ユニット2とは別体に設置され、受水槽13を備えた貯留ピット3と、から構成されており、貯留ピット3は、受水槽13に浄化槽14,15及び送水槽16を加えた内容量を備え、移動ユニット2は、浄化槽14,15及び送水槽16内の被処理水を貯留ピット3に移送して、循環水路から貯留ピット3側を切り離し、移動部5により配置箇所から移動するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器の下方に配設され被処理水を導入する受水槽と、受水槽から導入した被処理水を浄化処理する浄化槽と、浄化槽から導入した被処理水を送水管を介し便器に向けて送水する送水槽と、からなる循環水路を備えた循環式水洗トイレに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の循環式水洗トイレには、浄化槽等の水槽から成る循環水路を備えたトイレのユニットを、トレーラーなどの車両に搭載し、移動可能に構成しているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−21972号公報(第5頁、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1にあっては、車両によるトイレの移動の際に、軽量化のために水槽内の被処理水をトイレ外部に排出する必要があるが、衛生上の観点からも被処理水の外部排出は容易ではなく、直ちに移動できないという問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、トイレが急の移動を要する場合であっても、被処理水を移送して直ちに移動できる循環式水洗トイレを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の循環式水洗トイレは、
便器の下方に配設され被処理水を導入する受水槽と、該受水槽から導入した被処理水を浄化処理する浄化槽と、該浄化槽から導入した被処理水を送水管を介し前記便器に向けて送水する送水槽と、からなる循環水路を備えた循環式水洗トイレであって、
前記浄化槽及び前記送水槽を少なくとも備えるトイレ部と、該トイレ部を載置するとともにトイレ部を移動可能な移動部とを有し、所定の配置箇所に配置される移動式の移動ユニットと、
該移動ユニットとは別体に設置され、前記受水槽を備えた貯留ピットと、から構成されており、
前記貯留ピットは、前記受水槽に前記浄化槽及び前記送水槽を加えた内容量を備え、前記移動ユニットは、前記浄化槽及び前記送水槽内の被処理水を前記貯留ピットに移送して、該貯留ピットから切り離し、前記移動部により前記配置箇所から移動するようになっていることを特徴としている。
この特徴によれば、移動ユニットとは別体に設置された貯留ピットが、受水槽に浄化槽及び送水槽を加えた内容量を備えているため、非常時など急の移動を要する場合であっても、浄化槽及び送水槽内の被処理水を貯留ピットに移送して、浄化槽及び送水槽を少なくとも備えたトイレ部を有する移動ユニットを、貯留ピットから切り離し、移動部により配置箇所から直ちに移動して、移動ユニットを移動後の別の箇所での貯留ピットとともにトイレ使用に供することができる。
【0007】
本発明の循環式水洗トイレは、
前記浄化槽及び前記送水槽内の被処理水のオーバーフロー分を移送する移送管が、前記貯留ピットの受水槽に向けて延設されており、該移送管に、前記浄化槽及び前記送水槽内の被処理水の略全量分を排出可能な開閉弁が接続されていることを特徴としている。
この特徴によれば、浄化槽及び送水槽内の被処理水のオーバーフロー分を移送する移送管を利用して、この移送管に、浄化槽及び送水槽内の被処理水の略全量分を排出可能な開閉弁を接続することで、被処理水の移送路を集約できる。
【0008】
本発明の循環式水洗トイレは、
前記移送管は、前記便器から導入した被処理水と合流する合流部を有していることを特徴としている。
この特徴によれば、浄化槽及び送水槽内の被処理水と、便器から導入した被処理水とを合流部で合流させることで、受水槽に向けた被処理水の流路を更に集約できる。
【0009】
本発明の循環式水洗トイレは、
前記貯留ピットは、前記移動ユニットよりも低い位置に設置されており、前記開閉弁は手動式であることを特徴としている。
この特徴によれば、手動式の開閉弁を開放することで、浄化槽及び送水槽の被処理水を、低い位置に設置された貯留ピットに向けてヘッド圧を利用して移送管により移送できるため、電源等の特段の駆動源を要することなく被処理水の移送が可能となる。
【0010】
本発明の循環式水洗トイレは、
被処理水をオゾン処理するオゾン処理手段が、前記循環水路に接続されていることを特徴としている。
この特徴によれば、被処理水をオゾン処理手段により浄化処理することで、脱臭・殺菌効果が得られた被処理水を、洗浄水として再使用できる。
【0011】
本発明の循環式水洗トイレは、
前記循環水路が、少なくとも前記浄化槽を備えた浄化処理水路と、
該浄化処理水路の所定箇所に設けられ少なくとも一部の被処理水を分岐可能とする分岐管と、該分岐管に接続された前記オゾン処理手段と、該オゾン処理手段でオゾン処理された被処理水を前記浄化処理水路に供給する供給管と、からなるオゾン処理水路と、
から構成されており、前記オゾン処理水路の所定箇所に、前記浄化処理水路内の被処理水を前記オゾン処理水路内に導入する導入手段が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、浄化槽を備えた浄化処理水路と、オゾン処理手段が構成されたオゾン処理水路とを組合せ、オゾン処理水路に被処理水を循環送水可能とする導入手段が設けられていることにより、オゾン処理の要・不要に応じて導入手段を起動・停止し、人体に影響を及ぼす虞のあるオゾン処理を適宜使用して被処理水を安全に浄化処理できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例における循環式水洗トイレの正面を示す断面図である。
【図2】トイレの平面を示す断面図である。
【図3】トイレの側面を示す断面図である。
【図4】トイレの循環水路を示すフロー図である。
【図5】移動ユニットを移動する状況を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る循環式水洗トイレを実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0014】
先ず図1に示されるように、本実施例における循環式水洗トイレ1(以下、トイレ1と省略する)は、被処理水としてのトイレ汚水を、後述する循環水路を循環移送することで浄化処理し、処理した後の被処理水をトイレ洗浄水として再利用するいわゆる自己処理型トイレである。尚、被処理水とは、後述する浄化処理する前の水、浄化処理中の水、浄化処理した水を全て包含するものとする。
【0015】
図1〜3に示されるように、トイレ1の装置構成の概略について説明すると、トイレ1は、便器10及び浄化槽(分離槽14,接触槽15)等を構成したユニットハウス4を移動台車5上に載置し地上の所定の配置箇所に配置される移動ユニット2と、移動ユニット2の配置箇所近傍の地下に埋設された貯留ピット3と、から構成されている。移動ユニット2のユニットハウス4は本発明のトイレ部を構成し、移動台車5は本発明の移動部を構成している。移動ユニット2と貯留ピット3とは、後述する循環水路を構成する接続ホース11,21により接続されている。本実施例において、トイレ1の配置場所は、不特定多数の利用者が利用可能な河川敷であるものとする。
【0016】
図2に示されるように、ユニットハウス4の内部は、便器10が設置されたトイレ室6と、各槽14,15,16,及び17等が配設された浄化処理室7と、オゾン処理装置33等が設置されたオゾン処理室8と、及び倉庫9とが、各々仕切り壁で仕切られ形成されている。
【0017】
また、貯留ピット3は、内部が所定の容積を有する受水槽13として形成され、地表面上に配設されたマンホールMから受水槽13内部にアプローチできるようになっている。
【0018】
ユニットハウス4と貯留ピット3とを接続し循環水路を構成する接続ホース11,21は、可撓性を備えた所定長さのホースである。詳述すると接続ホース11の一端が、便器10に連結する管10aと後述する開閉弁26〜29及び排水管23,30等に連結する移送管12とが合流する合流部12aに、着脱可能に接続されるとともに、接続ホース11の他端が、貯留ピット3内部の受水槽13に開口して固定設置された管3aに、着脱可能に接続されている。また、接続ホース21は、分離槽14に開口する管14bに、接続ホース21の一端が着脱可能に接続されるとともに、受水槽13内の揚水ポンプ20から延びる管20aに、接続ホース21の他端が着脱可能に接続されている。
【0019】
これら接続ホース11,21は、可撓性を備え、且つ各ホース11,21の両端が所定に接続できるに足る十分な延長を有しているため、移動ユニット2と別体に所定箇所に固定に設置された貯留ピット3に対し、一定程度の許容範囲をもって移動ユニット2を配置できるばかりか、トイレ1が使用可能な通常時において、ユニットハウス4内の各槽14〜17の水重量の変化により移動台車5の車高が変位する場合が生じても、可撓性を備えた接続ホース11,21がこの変位に追随して循環水路を維持できる。
【0020】
更に、移動ユニット2の配置箇所近傍には、外部電源に接続された電源接続ボックス56が設けられ、この電源接続ボックス56を介し浄化処理室7の制御盤55に外部電源が電気的に接続されている。この制御盤55を介して、後述するブロア41,42やオゾン発生装置31、導入ポンプ32等のユニットハウス4内の各電源駆動装置に駆動電源が供給されるとともに、制御部55から電源接続ボックス56を経由し、貯留ピット3内の揚水ポンプ20に駆動電源が供給されるようになっている。同様に、貯留ピット3内の後述する検知手段19等に信号線が接続され、制御信号が供給されるようになっている。尚、制御盤55に接続される電源は、外部電源に限られず、例えばトイレ1の近傍の所定箇所に設置した発電機により得られた電源であってもよい。
【0021】
次に、図4に示されるように、被処理水の循環水路について流れる順路に沿って説明すると、循環水路は、浄化処理水路Wとオゾン処理水路Zとから構成される。先ず浄化処理水路Wは、便器10から被処理水を導入する受水槽13と、受水槽13から導入された被処理水を固液分離して導出する分離槽14と、分離槽14から導入した被処理水を微生物処理する接触槽15と、接触槽15から導入した被処理水を洗浄水として便器10に導出可能な送水槽16と、から形成された循環の水路である。図1〜3に示す後述する受水槽13内の揚水ポンプ20の起動により、被処理水が浄化処理水路Wを循環するようになっている。
【0022】
またオゾン処理水路Zは、送水槽16内の被処理水をオゾン処理装置33に導入してオゾン処理し、オゾン処理した被処理水を送水槽16に還流するように形成された循環の水路である。後述する導入ポンプ32の起動により、被処理水がオゾン処理水路Zを循環するようになっている。
【0023】
次に、図1,2を参照して本発明の浄化槽を構成する分離槽14,及び接触槽15について説明する。
【0024】
分離槽14は、接触槽15への堰部25を被覆する様に設置され被処理水を通過させる多数の孔部を備えたスクリーン14aと、スクリーン14aの面に沿って上昇する気泡を発生する散気孔(図示略)とを備え、受水槽13から導入した被処理水を固液分離し、次の接触槽15に導出するように成っている。
【0025】
また、接触槽15は、被処理水を通過させる多数の微生物固定化担体15aを備え、微生物固定化担体15aに向かって気泡を与えることで、分離槽14から導入した被処理水を微生物処理し、堰部24を介し次の送水槽16に導出するように成っている。
【0026】
次に、図1〜4を参照して被処理水の浄化処理水路の循環による浄化処理について説明する。
【0027】
先ず、図1に示されるように、トイレ1の設置当初に、被処理水として、真水を受水槽13内に初期水位S分貯留しておき、同様に、分離槽14、接触槽15、及び送水槽16内に所定水位分貯留しておく。尚、真水に代えて、河川水、雨水、湧き水、防火用水などを用いても良い。送水槽16内の被処理水は、トイレ室6の使用者のフラッシュ操作により便器10への洗浄水として供給されるようになっている。洗浄水として便器10へ供給された被処理水は、管10aを介して移送管12の合流部12aを流下し、接続ホース11及び管3aを流下して受水槽13に導入される。また、後述のように接触槽15、送水槽16、及び貯留槽17内に、それぞれ上向き開口して設けられた排水管36、23、及び30が移送管12に連結しており、各槽15,16,17内の被処理水のオーバーフロー分が移送管12の合流部12aを流下し、接続ホース11及び管3aを流下して受水槽13に導入される。
【0028】
このように、接触槽15、送水槽16、及び貯留槽17内の被処理水と、便器10から導入した被処理水とを合流部12aで合流させることで、受水槽13に向けた被処理水の流路を更に集約できる。
【0029】
図3に示されるように、送水槽16内の所定の上,下各位置には、それぞれフロートスイッチ38,39が設けられており、多数回のフラッシュ操作により送水槽16内の被処理水が所定水位を下回ったことで下位置のフロートスイッチ39が作動すると、受水槽13底部に設置された揚水ポンプ20が起動する。この揚水ポンプ20の起動により、受水槽13内の被処理水が接続ホース21、分離槽14、及び接触槽15を介し、すなわち浄化処理しながら送水槽16に導入される。送水槽16内の被処理水が満水位に戻ることで、上位置のフロートスイッチ38が作動して、揚水ポンプ20が停止する。以降、揚水ポンプ20は、送水槽16内の水位に応じて間欠的に起動・停止を繰り返す。
【0030】
尚、図示しないタイマにより検知した所定時間(例えば24時間)経過しても、送水槽16内の水位が所定水位を下回らない場合には、揚水ポンプ20を強制的に起動させるようになっており、所定時間の間にトイレ使用が少ない若しくは全く無い場合でも、所定頻度で浄化処理を実行できるようになっている。また、接触槽15内には上向きに開口した排水管36が、受水槽13に向けて延設された移送管12と接続されており、前記した揚水ポンプ20の強制的な起動により、接触槽15内が満水位を超えて上昇した場合、被処理水のオーバーフロー分は排水管36及び移送管12を介して受水槽13内に還流される。同様に、送水槽16内には上向きに開口した排水管23が移送管12と接続されており、送水槽16内が満水位を超えて上昇した場合、被処理水のオーバーフロー分は排水管23及び移送管12を介して受水槽13内に還流される。
【0031】
図2に示されるように、被処理水の流動について説明すると、分離槽14に導入された被処理水は、堰部25の周囲に配設された細目多孔のスクリーン14aを通過するとともに固液分離され、スクリーン14aを通過した被処理水が、後述する接触槽15に移動し、固形分はスクリーン14aに捕捉される。
【0032】
スクリーン14aに捕捉された固形分は、ブロア41により散気孔を介して散気されスクリーン14aの面に沿って上昇する気泡により剥離し、分離槽14内部に生じた対流とともに、その重量により下方に沈降し、経時的に濃縮して後述する濃縮物を生成する。
【0033】
次に、分離槽14を通過した被処理水は、槽壁を開口した堰部25を通過し、接触槽15内に導入される。
【0034】
接触槽15において、被処理水は、接触槽15内に充填された多数個の微生物固定化担体15aを通過しながら、槽内に形成された流路に沿って流動する。この流動により微生物固定化担体15aに固定付着した微生物が、被処理水に含有された有機分を捕捉し、有機分解処理する。同時に、ブロア42により曝気孔を介して微生物固定化担体15aに向かって曝気されることで、微生物が活性化し、微生物処理能力が向上できる。
【0035】
このように、接触槽15内の流路に沿って流動した被処理水は、槽壁を開口した堰部24を通過し、浄化処理された被処理水として送水槽16内に導入される。送水槽16内の被処理水は、トイレ室6内の使用者のフラッシュ操作により、便器10に向けて所定量導出されるようになっている。
【0036】
また、ブロア41,42による各槽14,15内の被処理水に与える散気は、常時、行なわれるようになっており、このようにすることで、トイレ使用の頻度に関わらず、被処理水の固液分離処理及び微生物処理を実行し、すなわち被処理水の浄化処理を常時継続できる。
【0037】
次に、図2,3に示されるように、オゾン処理水路Zにおける被処理水の循環移送について説明すると、タイマ(図示略)と接続された導入手段としての導入ポンプ32の起動により、送水槽16内の被処理水は、送水槽16の最下部において接続された分岐管34を介してオゾン処理装置33に供給され、オゾン発生装置31にて発生するオゾンガスによりオゾン処理される。オゾン処理された被処理水は、送水槽16の上部に接続された供給管35を介して送水槽16内に還流される。
【0038】
このように、浄化処理水路Wにおいて浄化処理された被処理水を貯留する送水槽16にオゾン処理水路Zが接続されていることで、分離槽14にて固液分離されるとともに接触槽15にて微生物処理されることにより浄化処理された後の被処理水を、オゾン処理水路Zに導入しオゾン処理装置33でオゾン処理できるため、オゾン処理に掛かる負荷を小さく抑えることが出来る。
【0039】
また、このようにすることで、送水槽16内における略全量の被処理水をオゾン処理できる。また、上述した浄化処理水路Wを循環移送する浄化処理された被処理水と、オゾン処理水路Zを循環移送するオゾン処理された被処理水とが、送水槽16内において流動撹拌することで混合し、浄化効率が高まる。
【0040】
このようにすることで、被処理水をオゾン処理手段としてのオゾン処理装置33により浄化処理することで、脱臭・殺菌効果が得られた被処理水を、洗浄水として再使用できる。
【0041】
上記したオゾン処理は、前記タイマで予め設定された所定の時間帯(例えば0:00〜2:00,8:00〜10:00、及び16:00〜18:00)において、実行される。また、オゾン処理の処理時間やオゾンガス発生量等は、見込まれるトイレ使用頻度に応じて適宜設定変更が可能となっている。
【0042】
上述のように、浄化槽としての分離槽14及び接触槽15を備えた浄化処理水路Wと、オゾン処理装置33が構成されたオゾン処理水路Zとを組合せ、オゾン処理水路Zに被処理水を循環送水可能とする導入ポンプ32が設けられていることにより、オゾン処理の要・不要に応じて導入ポンプ32を起動・停止し、人体に影響を及ぼす虞のあるオゾン処理を適宜使用して被処理水を安全に浄化処理できる。
【0043】
次に、図2,4を参照して分離槽14内に蓄積された濃縮物の搬出について説明すると、分離槽14の下部と貯留槽17とに夫々開口する搬出管22と、搬出管22の内部に貯留槽17に向かってブロア41からのエアを送気可能な送気管43が設置されており、搬出管22内に圧縮空気を流入できるようになっている。詳しくは、受水槽13内に設置された図示しないフロートスイッチが、所定水位に達したことを検知することで、ブロア41からのエアが所定時間送気されるようになっている。
【0044】
トイレ1使用により、浄化処理水路Wを流動する被処理水の全水量が増加し、この増加量分は受水槽13に蓄積されるようになる。受水槽13内に設けられた水位検知手段(図示略)が、所定の水位を検知すると、搬出管22内にブロア41により供給される圧縮空気が貯留槽17に向かって流動することにより、分離槽14の下層に蓄積された濃縮物としての被処理水の固形分が、エアリフト効果で、分離槽14から循環水路とは別に設けられた貯留槽17内に貯留される。
【0045】
更に、前記した濃縮物の搬出を繰り返すことで、貯留槽17内が満水位に達した場合、濃縮物は、貯留槽17内に上向き開口する排水管30を介して受水槽13にヘッド圧で移送されるようになっている。
【0046】
多数のトイレ使用により、被処理水の総水量が満水位F以上に増加した場合、受水槽13内の検知手段19により満水位Fを検知して報知し、マンホールMを介し受水槽13内の被処理水を汲み取れるようになっている。
【0047】
次に、図5に示されるように、主に非常時の場合における移動ユニット2の移動について説明する。ここで、非常時の場合とは、当該設置場所におけるトイレ使用が不可能若しくは困難になる場合であり、本実施例では、トイレ1を設置した場所である河川敷が洪水により浸水した場合であるものとする。
【0048】
移動ユニット2内の水槽である分離槽14の底面下方に配設された開閉弁26と、同様に接触槽15,送水槽16,及び貯留槽17の底面下方にそれぞれ配設された開閉弁27,28,及び29を、全て開状態とすることで、移動ユニット2の全ての槽14〜17内の被処理水の全量分を、各開閉弁26〜29に連結して集約した移送管12を介してヘッド圧により受水槽13内に移送する。
【0049】
このように、分離槽14,接触槽15,送水槽16,及び貯留槽17内の被処理水のオーバーフロー分を移送する移送管12を利用して、この移送管12に、槽14〜17内の被処理水の略全量分を排出可能な開閉弁26〜29を接続することで、被処理水の移送路を集約できる。
【0050】
また開閉弁26〜29は、全て手動開閉式であり、手動式の開閉弁26〜29を開放することで、分離槽14,接触槽15,送水槽16,及び貯留槽17の被処理水を、低い高さ位置に設置された貯留ピット3に向けてヘッド圧を利用して移送できるため、非常時に電源が供給できない場合であっても、受水槽13への被処理水の移送は可能である。受水槽13は、前記した通常時において満水位Fに相当する水量に加えて、全ての槽14〜17内の全水量を受容できる緊急水位Eに相当する内容量を備えている。
【0051】
被処理水を受水槽13に移送することで、移動ユニット2は設置時と略同重量に軽量化される。続いて接続ホース11を、接続していた合流部12a及び管3aから取外し、同様に、接続ホース21を、接続していた管14a及び管20aから取外す。また、電源接続ボックス56に接続していた電源ケーブルも取外し、接続ホース11,21とともに、倉庫9に保管しておく。接続ホース11を取外した後の管3aの開口部は、プラグPで被覆しておくことが安全衛生上好ましい。同様に、管20aの開口部も図示しないプラグで被覆しておく。
【0052】
次に、図5に示されるように、車止め用のジャッキ51,51を上げ、牽引部52を牽引車両(図示略)の牽引手段Kにより牽引する等で、移動ユニット2は、主に非常時において、浸水した河川敷から安全な場所へと退避でき、また、退避した安全な場所において、図示しない別の貯留ピットを用い、再びトイレ使用に供することも可能となる。
【0053】
このように、移動ユニット2とは別体に設置された貯留ピット3が、受水槽13に浄化槽を構成する分離槽14、接触槽15、及び送水槽16を加えた内容量を備えているため、非常時など急の移動を要する場合であっても、分離槽14、接触槽15、及び送水槽16内の被処理水を貯留ピット3に移送して、分離槽14、接触槽15、及び送水槽16を備えたユニットハウス4を有する移動ユニット2を、貯留ピット3から切り離し、移動台車5により配置箇所から直ちに移動して、移動ユニット2を移動後の別の箇所での貯留ピットとともにトイレ使用に供することができる。
【0054】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0055】
例えば、便器若しくは循環水路中の所定箇所に、被処理水の色度を検知する色度センサ及び/または濁度を検知する濁度センサを設置し、このセンサにより検知した被処理水の色度及び/または濁度に基づいて、被処理水の浄化処理を実行するようにしてもよい。
【0056】
また、上記実施例では、分離槽14と接触槽15とからなる浄化槽により、被処理水を浄化処理しているが、浄化槽は、他の公知の浄化技術を利用した槽であってもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 循環式水洗トイレ
2 移動ユニット
3 貯留ピット
4 ユニットハウス(トイレ部)
5 移動台車(移動部)
10 便器
11,21 接続ホース
12 移送管
12a 合流部
13 受水槽
14 分離槽(浄化槽)
15 接触槽(浄化槽)
16 送水槽
17 貯留槽
20 揚水ポンプ
26〜29 開閉弁
31 オゾン発生装置
32 導入ポンプ(導入手段)
33 オゾン処理装置
34 分岐管
35 供給管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器の下方に配設され被処理水を導入する受水槽と、該受水槽から導入した被処理水を浄化処理する浄化槽と、該浄化槽から導入した被処理水を送水管を介し前記便器に向けて送水する送水槽と、からなる循環水路を備えた循環式水洗トイレであって、
前記浄化槽及び前記送水槽を少なくとも備えるトイレ部と、該トイレ部を載置するとともにトイレ部を移動可能な移動部とを有し、所定の配置箇所に配置される移動式の移動ユニットと、
該移動ユニットとは別体に設置され、前記受水槽を備えた貯留ピットと、から構成されており、
前記貯留ピットは、前記受水槽に前記浄化槽及び前記送水槽を加えた内容量を備え、前記移動ユニットは、前記浄化槽及び前記送水槽内の被処理水を前記貯留ピットに移送して、該貯留ピットから切り離し、前記移動部により前記配置箇所から移動するようになっていることを特徴とする循環式水洗トイレ。
【請求項2】
前記浄化槽及び前記送水槽内の被処理水のオーバーフロー分を移送する移送管が、前記貯留ピットの受水槽に向けて延設されており、該移送管に、前記浄化槽及び前記送水槽内の被処理水の略全量分を排出可能な開閉弁が接続されていることを特徴とする請求項1に記載の循環式水洗トイレ。
【請求項3】
前記移送管は、前記便器から導入した被処理水と合流する合流部を有していることを特徴とする請求項2に記載の循環式水洗トイレ。
【請求項4】
前記貯留ピットは、前記移動ユニットよりも低い位置に設置されており、前記開閉弁は手動式であることを特徴とする請求項2または3に記載の循環式水洗トイレ。
【請求項5】
被処理水をオゾン処理するオゾン処理手段が、前記循環水路に接続されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の循環式水洗トイレ。
【請求項6】
前記循環水路が、少なくとも前記浄化槽を備えた浄化処理水路と、
該浄化処理水路の所定箇所に設けられ少なくとも一部の被処理水を分岐可能とする分岐管と、該分岐管に接続された前記オゾン処理手段と、該オゾン処理手段でオゾン処理された被処理水を前記浄化処理水路に供給する供給管と、からなるオゾン処理水路と、
から構成されており、前記オゾン処理水路の所定箇所に、前記浄化処理水路内の被処理水を前記オゾン処理水路内に導入する導入手段が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の循環式水洗トイレ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−248730(P2010−248730A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−97153(P2009−97153)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(502080380)株式会社オリエント・エコロジー (4)
【Fターム(参考)】