説明

微小胞膜タンパク質及びその応用

【課題】新規な微小胞膜タンパク質及びその利用、微小胞の分離、分析、又は病気の診断や治療に結びつけるためのリン酸化CSE1L(細胞アポトーシス感受性タンパク質)又はCSE1L−結合剤を含む方法を提供する。
【解決手段】細胞アポトーシス感受性タンパク質(CSE1L)に対する抗体、又はリン酸化CSE1Lに対する抗体。抗体が、リン酸化CSE1Lに対する抗体。(a)被験体からテスト生体液サンプルを得る工程;(b)1以上の健常者からコントロールサンプルを得る工程;(c)テスト生体液サンプル及びコントロールサンプルをin vitroで抗体と接触させる工程;(d)テスト生体液サンプル中の微小胞のCSE1L又はリン酸化CSE1Lの量を測定する工程;及び(e)コントロールサンプル中の微小胞のCSE1L又はリン酸化CSE1Lの量を測定する工程;を含む被験体の癌を診断するin vitroの方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2011年8月18日に出願されたPCT/CN2011/078559号の優先権を主張するもので、その公開された全ての記載を包含するものである。
【0002】
本発明は、リン酸化CSE1Lとその応用に関するものであり、特に、微小胞(microvesicle)の単離、分析、又は病気の診断や治療へ結びつけることである。
【背景技術】
【0003】
これまでの研究は、微小胞(微粒子)が、細胞の中のプロテアーゼ、mRNAs、microRNAs、膜受容体、細胞小器官を含む細胞活性分子の移動によって、細胞間連絡に関与しており、その結果、癌の転移を含む様々な病気の進行を含む基礎生理学的役割を果たしていることを示している(Simak et al. 2006; Cocucci et al. 2009; Muralidharan−Chari et al. 2010)。微小胞は、潜在的なバイオマーカーとして挙げられることが増えてきていることから、多くの関心が微小胞に寄せられている。微小胞は、小さな細胞膜由来の粒子で、外に向かっての出芽や細胞膜分裂によって細胞外環境に放出される。微小胞の大きさは、典型的には、100nm〜15μmといわれている(Simak et al. 2006; Cocucci et al. 2009; Muralidharan−Chari et al. 2010)。微小胞の発生/排出は、腫瘍に生じる共通の特徴である(Simak et al. 2006; Cocucci et al. 2009; van Doormaal et al. 2009; Muralidharan−Chari et al. 2010)。腫瘍から放出された微小胞は、ECM−分解プロテアーゼが豊富で、その結果、癌細胞の浸潤や転移に大きな役割を果たす(Cocucci et al. 2009)。ERK(細胞外シグナル調節キナーゼ)は、腫瘍浸潤において微小胞の排出を媒介することが分かっている(Muralidharan−Chari et al. 2009)。
【0004】
CSE1L(chromosome segregation 1−like protein)は、CAS(cellular apoptosis susceptibility protein:細胞アポトーシス感受性タンパク質、ジーンバンクNo.33286)とも呼ばれているが、癌の中で高く発現しており、癌侵潤や癌転移に関係している(Brinkmann et al. 1995; Tung et al. 2009; Tai et al. 2010)。CSE1Lは、すでに細胞チロシンリン酸化タンパク質、つまり、MEK(mitogen−activated protein kinase or extracellular signal−regulated kinase;マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ又は細胞外シグナル調整キナーゼ)によってリン酸化したタンパク質として知られている。そして、これはCSE1Lの核移動に関係している(Scherf et al. 1998)。
【0005】
ERKシグナル伝達経路は、癌細胞の増殖、生存、浸潤及び転移に関与している(Roberts et al. 2007)。ERK経路の異常活性化は、ヒト腫瘍の多くの種類に共通した基本的な特徴であることが明らかになっている(Hoshino et al. 1999)。Ras−ERK経路は、癌治療用の分子標的薬の開発の潜在的標的である(Roberts et al. 2007)。
【0006】
US6664057は、癌に関係しているヒト染色体20q13.2における新規の単位複製配列の識別を開示している。US6072031は、細胞アポトーシス感受性タンパク質のcDNA及びアミノ酸配列が、正常細胞及び癌細胞にあるCSE1L遺伝子の発現と増幅の検出に用いられることが開示されている。生きている細胞に導入されたアンチセンスCSE1L遺伝子配列は、CSE1Lタンパク質の活性化を阻害するため、細胞のアポトーシスを防止又は阻害する。US5759782は、細胞アポトーシス感受性タンパク質のcDNA及びアミノ酸配列が、正常細胞及び癌細胞にあるCSE1L遺伝子の発現と増幅の検出に用いられることが開示されている。生きている細胞に導入されたアンチセンスCSE1L遺伝子配列は、CSE1Lタンパク質の活性化を阻害するため、細胞のアポトーシスを防止又は阻害する。US6207380は、尿路組織のポリペプチドとポリヌクレオチドの分析が、各個人に対する尿路の病気及び状況の素因の測定、検出、診断、進行具合の診断、監視、予測、生体内撮像、予防又は治療に有用であることを開示している。これらの配列は、ケラチン/サイトケラチン、CSE1L、又はmat−8 ポリペプチド及びポリヌクレオチド由来である。US6,207,380は、尿路組織中のケラチン/サイトケラチン、CSE1L、又はmat−8にコードされたポリペプチド又はタンパク質に特異的に結合する抗体を開示しており、それら分子は、尿路疾患の治療に有用である。つまり、US6,207,380は、尿路疾患の治療のため、尿路組織中のケラチン/サイトケラチン、CSE1L、又はmat−8に特異的に結合する抗体の使用を開示している。US6232086は、正常細胞及び癌細胞にあるCSE1L遺伝子の発現と増幅の検出に用いることができるCSE1Lタンパク質のcDNA及びアミノ酸配列を開示している。US6156564は、ヒトの増殖細胞の検出方法を開示しており、その方法は、ヒト細胞サンプル中のヒトCSE1Lタンパク質のレベルの測定及び通常の非増殖ヒト細胞中のヒトCSE1Lタンパク質レベルより少なくとも2倍のレベルのヒトCSE1Lタンパク質の検出を含んでいる。US6440737は、ヒトCSE1L遺伝子の発現を調整するためのアンチセンス化合物、組成物及び方法を開示している。US20080081339は、前立腺癌診断のためのバイオマーカーとして、体液中に存在するCSE1L自己抗体(抗原又は腫瘍関連マーカーではない。)を含む多くの自己抗体の測定について開示している。US20050260639は、膵臓癌の検出及び診断のため、体液又は体細胞から単離された循環腫瘍細胞中のCSE1Lを含む、膵臓癌関連遺伝子の発現レベルを測定することが開示されている。WO2009/052573は、cDNA遺伝子チップの結果に基づき、消化管癌の腺腫状況の発現を分析するため、血中サンプル又は細胞の循環腫瘍細胞からCSE1L転写物(例えば、CSE1L mRNA)を含む多くのRNA転写物を単離することが開示している。US20100120074は、転移性癌診断のため、体液中のCSE1L又はCSE1Lタンパク質レベルの測定について開示している。US20110053157は、医学的疾患及び状況の診断、予後及び治療のため、微小胞(exosomes)中のDNA、RNA、及びミクロRNAを含む核酸の測定を開示している。US20110053157は、被験体からの生物学サンプルから単離された微小胞のDNA又はRNAバイオマーカーを検出することによって、被験体の疾病その他の医学的状況の診断、予後、監視及び評価を助ける方法;核酸又はタンパク質を含む微小胞を投与することで前記核酸又はタンパク質をターゲットへ伝達する方法;微小胞フリー又は微小胞が濃縮された液体画分を患者に導入することで体液輸注を行う方法、を開示している。WO2009021322及びUS20100255514は、EGFRvIII、EGFR、HER−2、HER−3、HER−4、MET、cKit、PDGFR、Wnt、βカテニン、K−ras、H−ras、N−ras、Raf、N−myc、c−myc、IGFR、PI3K、Akt、BRCA1、BRCA2、PTEN、及び微小胞のVEGFR−2、VEGFR−1、Tie−2、TEM−1及びCD276等の癌に関連する細胞の受容体を構成する発癌性タンパク質を検出することによって、癌の診断及び予後の方法、癌の進行及び又は被検者中の抗癌治療の治療効果の監視方法を開示している。上記先行技術は、細胞レベルでのCSE1L遺伝子の発現、又は体液中のCSE1Lタンパク質レベルを検出している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の観点は、微小胞の単離、分析、又は病気の診断や治療へ結びつけるため、CSE1L又はリン酸化CSE1Lに対する抗体を含む新規な方法を提供することである。本発明の一つの観点は、被験体の疾患の存在又は進行状況の診断方法を提供することで、該方法は、(a)被験体からの生体液サンプル中の微小胞のCSE1L又はリン酸化CSE1Lレベルを測定;(b)コントロールとして、健常者ドナーからの生体液サンプル中の微小胞のCSE1L又はリン酸化CSE1Lレベルを測定;及び(c)被験体及び健常者ドナーの生体液サンプル中の微小胞のCSE1L又はリン酸化CSE1Lレベルの差異に基づき被験体の疾患の存在又は進行状況の診断、することを含んでいる。
【0008】
本発明の他の観点は、被験体の癌の存在又は進行状況の診断方法を提供することで、該方法は、(a)被験体からの生体液サンプル中のリン酸化CSE1Lレベルを測定;(b)コントロールとして、健常者ドナーからの生体液サンプル中のリン酸化CSE1Lレベルを測定;及び(c)被験体及び健常者ドナーの生体液サンプル中のリン酸化CSE1Lレベルの差異に基づき被験体の癌の存在又は進行状況の診断、することを含んでいる。
【0009】
本発明の更に他の観点は、生体液サンプルから微小胞を単離する方法を提供することで、該方法は、(a)生体液サンプルをCSE1L又はリン酸化CSE1Lに対する抗体に接触、;(b)抗体と結合した微小胞を単離、することを含んでいる。
【0010】
本発明の更なる他の観点は、生体液サンプル中の微小胞の存在を検出する方法を提供することで、該方法は、(a)生体液サンプルをCSE1L又はリン酸化CSE1Lに対する抗体に接触;(b)微小胞への抗体結合を検出、することを含んでいる。
【0011】
本発明の他の観点は、病気の予防又は治療のため、微小胞に結合するCSE1L又はリン酸化CSE1Lに対する抗体の管理を含む方法を提供することである。特に望ましい病気は癌である。
【0012】
本発明の他の観点は、病気の診断又は治療のため、微小胞に結合するCSE1L又はリン酸化CSE1Lに対する抗体を含む医薬組成物を提供することである。特に望ましい病気は癌である。
【0013】
本発明の他の目的、特徴及び効果は、発明の詳細な説明及び図面から、当業者であれば明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、B16−dEV、B16−Ras細胞、B16−CSE1L及びB16−Ras/抗−CSE1L細胞中のRas及びCSE1Lレベルの免疫ブロット法による解析結果を示している。
【図2】図2は、v−H−rasトランスフェクションが、細胞中の微小胞の発生を誘導することを示している。
【図3】図3は、v−H−rasトランスフェクションが、CSE1L分泌物を増加することを示している。
【図4】図4は、CSE1Lは、リン酸化タンパク質であることを示している。
【図5】図5は、v−H−rasトランスフェクションが、CSE1Lのリン酸化を増加し、リン酸化CSE1Lは癌血清中に存在していることを示している。
【図6】図6は、結腸直腸中のリン酸ERK及びCSE1Lの高い発現、及びリン酸ERKの相対染色度が腫瘍中のCSE1Lと一致することを示している。
【図7】図7は、CSE1Lが、細胞のv−H−ras−誘発の微小胞発生を媒介することを示している。
【図8】図8は、CSE1Lは、v−H−rasによって誘発された腫瘍細胞の浸潤を媒介することを示している。
【図9】図9は、CSE1Lは、v−H−ras誘発癌細胞の転移を媒介することを示している。
【図10】図10は、CSE1Lは、微小胞膜に局在し、抗−CSE1L抗体は腫瘍を標的にすることができることを示している。
【図11】図11は、抗−リン酸CSE1L抗体は、リン酸化CSE1Lと反応することを示している。
【図12】図12は、リン酸化CSE1Lは、微小胞に局在することを示している。
【図13】図13は、癌血清サンプルから単離された微小胞には、通常細胞から単離された微小胞より、CSE1L及びリン酸化CSE1Lの罹患率が高いことを示している。
【図14】図14は、結腸直腸癌患者の血清中のリン酸化CSE1Lの罹患率が高いことを示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
微小胞(微粒子又はエキソソームと呼ばれることもある)は、細胞から剥がれた原形質膜の断片である。微小胞は、体液や細胞培養中に見られる。微小胞は、体液中又は細胞培養馴化培地に、自由な微小胞として放出されることができる;微小胞はまた、放出されずに、細胞膜結合微小胞として、細胞膜に連結していてもよい(Simak et al. 2006; Cocucci et al. 2009; Muralidharan−Chari et al. 2010)。ここで述べられる方法及び組成物は、自由な微小胞にも、細胞膜結合微小胞にも適用可能である。典型的な微小胞は、100nm〜15μmである。ここで述べられる方法及び組成物は、全てのサイズの微小胞に適用可能である。
【0016】
本発明の一つの観点は、CSE1Lが微小胞の作成を媒介すること、CSE1Lが微小胞膜に局在すること、CSE1Lがセリン/スレオニン及びチロシンリン酸化タンパク質であること、及びリン酸化CSE1Lが癌患者の血清中に存在すること、を新たに見出したことに基づいている。
【0017】
本発明の他の新知見は、CSE1LがERK伝達経路に連鎖していること、CSE1LがERK活性化でリン酸化されること、リン酸化されたCSE1Lが癌患者の血清に存在すること、血清中のリン酸化されたCSE1Lの分析は、血清中のCSE1Lの分析より、癌診断に優れていることである(実施例14)。ERK経路の異常活性化は、ヒト腫瘍の多くに共通する本質的な特徴である(Hoshino et al. 1999)。それ故、血清中のリン酸化CSE1Lのレベルは、健常者ドナーと比較して、癌患者の方が必ず高い。また、血清中のリン酸化されたCSE1Lの分析は、血清中のCSE1Lの分析より感度が高い為、癌診断に優れている。このように、リン酸化CSE1Lは、癌診断において臨床的有用性がある。
【0018】
本発明の他の新知見は、CSE1LがRas−ERK伝達及び癌転移に関連していることである。Ras−ERK経路は、癌の分子標的薬の開発の潜在的標的である(Roberts et al. 2007)。CSE1LがRas−ERK伝達及び癌転移に関連している。そして、リン酸化CSE1Lは、癌患者の血清中に存在している。それ故、血清中のリン酸化CSE1Lは、分子標的薬の治療と併用して、患者の選定、監視及び管理のための臨床的有用性がある。
【0019】
本発明の他の新知見は、CSE1Lは微小胞膜に局在し、そして、抗−CSE1L抗体は、腫瘍を標的とすることができることである。脱落中の微小胞は腫瘍細胞の膜上に広がっており、脱落した微小胞は腫瘍細胞の周囲の細胞外環境に留まる。それ故、微小胞膜タンパク質は、癌治療の潜在的標的となり得る。したがって、微小胞膜中のCSE1Lの局在は、CSE1Lは癌の治療標的になり得る。
【0020】
本発明のある観点は、微小胞が腫瘍細胞から放出され、体液中を循環していることを見出したことに基づいている。微小胞の数は、腫瘍の成長に伴い増加する。体液中の微小胞の濃度は、腫瘍量に比例する。腫瘍量が多くなれば、体液中の微小胞の濃度も高くなる。
【0021】
本発明の他の驚くべき発見は、通常の被験体(健常者ドナー)の体液中にはCSE1Lが存在するが、癌患者の体液中にはリン酸化CSE1Lが存在することである。リン酸化CSE1Lは、通常の被験体(健常者ドナー)の体液中には検出されない(実施例5)。もし、タンパク質が細胞から分泌され、タンパク質がリン酸化形態と脱リン酸化形態を持つなら、タンパク質のリン酸化及び脱リン酸化の両方の形態は、細胞外に分泌される必要は無いと報告されている(Konishi et al. 1994; Fendrick et al. 1997)。それ故、本発明の他の驚くべき発見は、リン酸化CSE1Lは分泌タンパク質で、リン酸化CSE1Lは癌患者の体液中には存在するが、健常者ドナーの体液中には検出されないことである。
【0022】
本発明のある観点は、CSE1L及びリン酸化CSE1Lは、微小胞膜タンパク質であるとの他の驚くべき発見に基づいている。
【0023】
本発明の他の観点は、体液からの微小胞の単離又は分析のための方法又はキットに関し、CSE1L及びリン酸化CSE1Lは微小胞膜タンパク質であるとの知見に基づく。そして、微小胞は、多くの病気の進行を含め、生理学的/病理学的に本質的な役割を果たす。CSE1L−結合剤又はリン酸化CSE1L−結合剤を含む方法又はキットは、体液又は培養馴化培地等の生物学的サンプルからの微小胞の捕獲、精製、単離又は分析に用いることができる。微小胞の単離又は分析のためのCSE1L−結合剤又はリン酸化CSE1L−結合剤を含む方法又はキットは、例えば、超遠心分離、免疫沈降、親和性精製、精密ろ過、蛍光活性化細胞選別装置(FACS:fluorescence activated cell sorter),酵素免疫測定法(ELISA:enzyme−linked immunosorbent)、マイクロアレイ、バイオチップ、クロマトグラフィー、ウエスタンブロット法、マイクロ流体システム、マイクロ流体チップ、及び免疫学的結合を含む他の技術にも適用可能であるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
本発明の他の好ましい実施例は、微小胞の検出又は分析は、光学的方法を用いて実施され、あらゆる光学的方法が用いられる。好ましい光学的方法は、顕微鏡法、共焦点顕微鏡法、蛍光顕微鏡法、内部反射蛍光顕微鏡法、偏光解析法/反射率測定法、光散乱又は表面プラズモン顕微鏡法が挙げられる。
【0025】
本発明のある観点は、CSE1L及びリン酸化CSE1Lは、微小胞膜タンパク質であり、抗−CSE1L抗体等のCSE1L−結合剤又はリン酸化CSE1L−結合剤は、実施例10に示されているように、腫瘍を標的とすることができるとの驚くべき発見に基づいている。
【0026】
CSE1L−結合剤又はリン酸化CSE1L−結合剤を含む方法又はキットは、治療薬又は細胞毒性薬で接合し、CSE1L−結合剤又はリン酸化CSE1L−結合剤を含む医薬組成物又はキットも、同様に、病気治療に用いられる。
【0027】
本発明の一つの観点は、生物学的サンプルからの液体又は微小胞の中のCSE1L量又はリン酸化CSE1L量を測定することで、被験体の病気を診断又は監視するための方法又はキットに関する。決定は、最初に微小胞を単離することなく、又は最初に微小胞を単離した生物学的サンプルを用いて行うことができる。
【0028】
本発明の他の観点は、被験体の体液から微小胞を単離するステップ、微小胞のCSE1L又はリン酸化CSE1Lを分析するステップを含む、被験体の病気又は他の医学的状態の診断又は監視をするための方法又はキットに関する。CSE1L又はリン酸化CSE1Lは、定量的及び/又は定性的に分析され、分析結果は、病気又は医学的状態を有する又は有しない1以上のコントロール検体から得られる結果と比較される。被験体の微小胞のCSE1L又は微小胞のリン酸化CSE1Lの含有量を、コントロールの含有量と比較して差異がある場合は、被験体の進行(例えば、腫瘍サイズ及び腫瘍悪性度の変化)、病気又は他の医学的状態の感受性の有無を示す。
【0029】
本発明の他の観点は、被験体の体液を収集するステップ、体液中のリン酸化CSE1Lを分析するステップを含む、被験体の病気又は他の医学的状態の診断又は監視をするための方法又はキットに関する。リン酸化CSE1Lは、定量的及び/又は定性的に分析され、分析結果は、病気又は医学的状態を有する又は有しない1以上のコントロール検体から得られる結果と比較される。被験体のリン酸化CSE1Lの含有量を、コントロールの含有量と比較して差異がある場合は、被験体の進行(例えば、腫瘍サイズ及び腫瘍悪性度の変化)、病気又は他の医学的状態の感受性の有無を示す。
【0030】
微小胞は、例えば、凝固疾患、アテローム性動脈硬化、冠動脈疾患、糖尿病、血液病、炎症性疾患、神経疾患、自己免疫疾患、伝染性疾患及び癌等、多くの病気の進行を含め、生理学的/病理学的に本質的な役割を果たす(Simak et al. 2006)。本発明における疾患又は他の医学的状態には、凝固疾患、アテローム性動脈硬化、冠動脈疾患、糖尿病、血液病、炎症性疾患、神経疾患、自己免疫疾患、伝染性疾患及び癌が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
本発明は、癌の診断及び治療方法についても開示する。動物の“癌”とは、癌を引き起こす細胞に典型的な特性を所有する細胞が存在することを意味し、例えば、コントロールできない増殖、不死、転移能、急激な成長及び増殖、並びに、ある特有の形態学的状態及び細胞マーカーが挙げられる。状況によっては、癌細胞は腫瘍の形態であるが、癌細胞は動物内で単独で存在、又は白血病細胞のように独立した細胞として血流中を循環している場合もある。本発明の癌は、全ての種類の癌を含むものであり、例えば、肺癌(非小細胞肺癌等)、結腸直腸癌、大腸癌、直腸癌、肛門癌、胆管癌、小腸癌、及び胃癌等の消化器及び胃腸の癌;食道癌;胆嚢癌;肝臓癌; 膵(臓)癌;虫垂癌;乳癌;卵巣癌;腎(臓)癌(例えば、腎細胞癌);中枢神経系癌;皮膚癌;リンパ腫;絨毛腫;絨毛癌;頭頸部癌;骨肉腫;血液癌等が挙げられる。本発明における“腫瘍”は、1以上の癌の細胞を含むことを意味する。
【0032】
本発明は、リン酸化CSE1Lタンパク質を特異的に認識する抗体の結合による、リン酸化CSE1Lの検出を開示する。リン酸化CSE1Lは、セリンリン酸化CSE1L、スレオニンリン酸化CSE1L、又はチロシンリン酸化CSE1Lであってもよい。抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体又は完全ヒト抗体が挙げられる。また、抗体は、モノクロナール抗体、ポリクロナール抗体、単鎖抗体、単鎖Fv抗体、Fab抗体、Fab′抗体、(Fab′)抗体、又は完全ヒト抗体が挙げられる。
【0033】
本発明の“生体液サンプル”とは、被験体の体の任意の場所から採取された液体のサンプルを意味し、例えば、血液、血清、血漿、尿、リンパ液、髄液、唾液、胸膜液、細針吸引物、乳頭吸引液、呼吸器官・腸・尿生殖路の液、母乳、涙液、唾液、リンパ系の液、精液、内臓系の液、脳脊髄液、腹水、羊水、腫瘍嚢胞液等が挙げられる。“生体液サンプル”には、培養馴化培地及び培養馴化培地中の細胞が挙げられる。特に好ましい生体液サンプルは、血液、尿、馴化培地である。生体液サンプル中の微小胞は、生体液サンプル中に存在する細胞の膜に関連する微小胞を意味する。馴化培地とは、ボトルから出したばかりの培地ではなく、細胞がしばらくの間培養された培地を意味する。
【0034】
"被験体"との用語は、微小胞を有する可能性のある全ての動物を意味する。動物は哺乳類を含み、好ましくはヒトである。
【0035】
“通常の被験体”とは、癌又は他の病気が無い被験体を意味する。
【0036】
“テスト”被験体は、テストされる被験体を意味する。
【0037】
“in vitro”との用語は、生命体又は生体の外部環境を意味し、通常は、試験管培養等の人工的な環境が挙げられる。
【0038】
“医学的状態”との用語は、生命体の体内の病気の状態を意味する。
【0039】
“免疫学的技術”とは、抗体に基づいた検出技術を含む全ての分析を意味し、例えば、ドットプロット法、ウエスタンブロット法、免疫沈降法、直接及び競合ELISA法、放射性免疫分析法等の技術が挙げられる。
【0040】
ドットプロット法は、先ず、サンプルが、ペーパー、ガラスファイバー、プラスチックシート上に付着、固定され、次いで、タンパク質の存在が、例えば、直接又は間接的にラベルされた抗体とのハイブリダイゼーション等、可視化シグナルを作成する多様な方法で決定される分析手順のことを意味する。
【0041】
“抗体”との用語は、(a)免疫グロブリンポリペプチド及び免疫グロブリンポリペプチドの免疫学的有効性分(例えば、免疫グロブリンファミリーのペプチド、又はそれら断片で、それらは、特異抗原(例えば、CSE1L又はリン酸化CSE1L)に免疫学的に結合する抗原結合部位)、又は(b)そのような免疫グロブリンポリペプチド又は抗原(例えば、CSE1L又はリン酸化CSE1L)に免疫学的に結合する断片の特徴を保持した置換誘導体(conservatively substituted derivatives)を意味する。
【0042】
抗体は、従来から知られている方法により作成され、例えば、モノクロナール抗体は、ハイブリドーマ、組み換え、ファージディスプレイ技術、又はそれらの組み合わせ等を含む広く知られた技術から調整することができる。
【0043】
微小胞とCSE1L抗体又はリン酸化CSE1L抗体との結合反応は、免疫測定法により検出することができる。典型的な免疫測定法は、微小胞又は抗体が固定化され、未反応成分が除去された後、検出が行われる。細胞、微小胞又は抗体の固定化方法は知られており、例えば、それらは、化学結合又は物理的吸着により固相の上に直接固定化される。あるいは、本発明の抗体がビオチン化される時、アビジン、ストレプトアビジン、又は同種のものを吸着した固相上に、間接的に抗体を固定することも可能である。抗体が磁性粒子に結合している時は、抗体のみならず、抗体に結合している微小胞は、磁石を用いて速やか且つ簡単に検出及び分離される。あるいは、多特異的な抗体のように、多重抗原を認識する抗体を使用した時、抗体は、微小胞のCSE1L又はリン酸化CSE1Lに結合し、そして、他の抗原は抗体に結合することができる。あるいは、抗体は、タンパク質A又はG又は同種のものを介して固相上に固定化される。
【0044】
抗体の固定化のタイミングは特に限定はされず、抗体がサンプルに接触する前、後、又は同時に固定化される。任意の固相が、抗体の固定化に用いられる。それら固相は、膜形成性の、微粒子状の、又は繊維状のキャリヤで、それらは、ガラス;ポリスチレン等の有機ポリマー;及びシリカゲル、アルミナ及び活性炭等の無機材料から作成される。例えば、本発明の抗体は、プレート、皿、試験管又はビーズのような反応容器の内壁上に固定される。
【0045】
微小胞を検出するための本発明の抗体を用いた微小胞の検出又は定量するための免疫学的方法は、例えば、蛍光抗体法(Monoclonal Antibodies: Principle and Practice, 3rd ed. (1996) Academic Press参照)、ELISAs、RIAs、免疫細胞学的染色及び免疫組織学的染色等の免疫組織化学的染色(the ABC method and CSA method; Monoclonal Antibodies: Principle and Practice, 3rd ed. (1996) Academic Press参照)、ウエスタンブロット法、免疫沈降法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
本発明において、“平均値”とは、一つ以上のサンプル中に存在するCSE1L又はリン酸化CSE1Lのレベル又は濃度を決定することで計算し、次いで、レベルの平均値を計算することで求められるものである。平均値は、複数の個々の値を合計し、次いで、複数の数で割ることで求められる。本発明において、“微小胞のCSE1Lの平均量”とは、1以上のコントロール生体液サンプル中の微小胞のCSE1Lタンパク質の平均含有量を意味する。本発明において、“微小胞のリン酸化CSE1Lの平均量”とは、1以上のコントロール生体液サンプル中の微小胞のリン酸化CSE1Lタンパク質の平均含有量を意味する。本発明において、“コントロール生体液サンプル中のリン酸化CSE1Lの平均量”とは、1以上のコントロール生体液サンプル中のリン酸化CSE1Lタンパク質の平均含有量を意味する。本発明において、“増加量(increased amount)”とは、コントロールサンプルと比較して、テストサンプルの量でプラスに増加した量を意味する。増加は、典型的には少なくとも10%以上で、又は少なくとも20%以上、又は50%、100%、2倍、少なくとも5倍、10倍、20倍であってもよい。
【0047】
本発明における“カットオフ値(cutoff value or cut−off value)”とは、疾患や病態を患っている被験体を、疾患や病態を患っていない被験体から区別する閾値を意味する。カットオフ値は、診断ツールとして利用される統計的に求められた最適数値で、試験値の手段及び標準偏差(SD)は、患者のカテゴリーから読み出されたグループ値から計算される。患者の試験値がこのカットオフ値より低い時は、患者は陰性(癌が無い)で、試験値がカットオフ値より大きい又は等しい時は、患者は陽性(癌がある)と考えられる。
【0048】
本発明の“医薬組成物”とは、1以上の製剤原料及び添加剤との混合物を意味する。
【0049】
本発明の“医薬品賦形剤、希釈剤又はキャリヤ”は、一般的な医薬品賦形剤、希釈剤又はキャリヤを含み、例えば、リン酸緩衝生理食塩水、水、油/水又は水/油の乳液、及び多様なタイプの湿潤剤が挙げられる。また、この用語は、US連邦政府の規制当局が認可している又はヒトを含む動物に使用可能であるとして米国薬局方が公表している物質を含む。
【0050】
本発明における“キット”は、使用されるためにパッケージされている化合物、組成物、混合物、計器、装置を含む、1以上のアイテムを意味するが、これらに限定されるものではない。キットには、説明書が含まれていてもよい。
【0051】
本発明において、他の特定されていない技術又は科学的用語は、本発明が属する技術分野において当業者が一般的に理解する意味と同様である。本発明で述べられている方法及び材料に類似した全ての方法及び材料も、本発明において使用することができ、その中で、特に好ましい方法及び材料が以下に記載されている。ここに使用されるように、用語の各々は、このセクションの中で関連する意味を有する。本発明は、特別な手順、プロトコル及び試薬に限定されるものではなく、変更できるものである。また、ここに使用される専門用語は、特別の実施例について記載するためにのみ用いられており、本発明の範囲を制限するものではない。発明の範囲は、特許請求の範囲によって定義される。
【0052】
タンパク質及びその遺伝子は周知である。CSE1L遺伝子のDNA配列(GenBank accession no. U33286)は以下のとおりである。
SEQ ID NO: 1
1 gtcgcgccat tttgccgggg tttgaatgtg aggcggagcg gcggcaggag cggatagtgc
61 cagctacggt ccgcggctgg ggttccctcc tccgtttctg tatccccacg agatcctata
121 gcaatggaac tcagcgatgc aaatctgcaa acactaacag aatatttaaa gaaaacactt
181 gatcctgatc ctgccatccg acgtccagct gagaaatttc ttgaatctgt tgaaggaaat
241 cagaattatc cactgttgct tttgacatta ctggagaagt cccaggataa tgttatcaaa
301 gtatgtgctt cagtaacatt caaaaactat attaaaagga actggagaat tgttgaagat
361 gaaccaaaca aaatttgtga agccgatcga gtggccatta aagccaacat agtgcacttg
421 atgcttagca gcccagagca aattcagaag cagttaagtg atgcaattag cattattggc
481 agagaagatt ttccacagaa atggcctgac ttgctgacag aaatggtgaa tcgctttcag
541 agtggagatt tccatgttat taatggagtc ctccgtacag cacattcatt atttaaaaga
601 taccgtcatg aatttaagtc aaacgagtta tggactgaaa ttaagcttgt tctggatgcc
661 tttgctttgc ctttgactaa tctttttaag gccactattg aactctgcag tacccatgca
721 aatgatgcct ctgccctgag gattctgttt tcttccctga tcctgatctc aaaattgttc
781 tatagtttaa actttcagga tctccctgaa ttttgggaag gtaatatgga aacttggatg
841 aataatttcc atactctctt aacattggat aataagcttt tacaaactga tgatgaagag
901 gaagccggct tattggagct cttaaaatcc cagatttgtg ataatgccgc actctatgca
961 caaaagtacg atgaagaatt ccagcgatac ctgcctcgtt ttgttacagc catctggaat
1021 ttactagtta caacgggtca agaggttaaa tatgatttgt tggtaagtaa tgcaattcaa
1081 tttctggctt cagtttgtga gagacctcat tataagaatc tatttgagga ccagaacacg
1141 ctgacaagta tctgtgaaaa ggttattgtg cctaacatgg aatttagagc tgctgatgaa
1201 gaagcatttg aagataattc tgaggagtac ataaggagag atttggaagg atctgatatt
1261 gatactagac gcagggctgc ttgtgatctg gtacgaggat tatgcaagtt ttttgaggga
1321 cctgtgacag gaatcttctc tggttatgtt aattccatgc tgcaggaata cgcaaaaaat
1381 ccatctgtca actggaaaca caaagatgca gccatctacc tagtgacatc tttggcatca
1441 aaagcccaaa cacagaagca tggaattaca caagcaaatg aacttgtaaa cctaactgag
1501 ttctttgtga atcacatcct ccctgattta aaatcagcta atgtgaatga atttcctgtc
1561 cttaaagctg acggtatcaa atatattatg atttttagaa atcaagtgcc aaaagaacat
1621 cttttagtct cgattcctct cttgattaat catcttcaag ctggaagtat tgttgttcat
1681 acttacgcag ctcatgctct tgaacggctc tttactatgc gagggcctaa caatgccact
1741 ctctttacag ctgcagaaat cgcaccgttt gttgagattc tgctaacaaa ccttttcaaa
1801 gctctcacac ttcctggctc ttcagaaaat gaatatatta tgaaagctat catgagaagt
1861 ttttctctcc tacaagaagc cataatcccc tacatcccta ctctcatcac tcagcttaca
1921 cagaagctat tagctgttag taagaaccca agcaaacctc actttaatca ctacatgttt
1981 gaagcaatat gtttatccat aagaataact tgcaaagcta accctgctgc tgttgtaaat
2041 tttgaggagg ctttgttttt ggtgtttact gaaatcttac aaaatgatgt gcaagaattt
2101 attccatacg tctttcaagt gatgtctttg cttctggaaa cacacaaaaa tgacatcccg
2161 tcttcctata tggccttatt tcctcatctc cttcagccag tgctttggga aagaacagga
2221 aatattcctg ctctagtgag gcttcttcaa gcattcttag aacgcggttc aaacacaata
2281 gcaagtgctg cagctgacaa aattcctggg ttactaggtg tctttcagaa gctgattgca
2341 tccaaagcaa atgaccacca aggtttttat cttctaaaca gtataataga gcacatgcct
2401 cctgaatcag ttgaccaata taggaaacaa atcttcattc tgctattcca gagacttcag
2461 aattccaaaa caaccaagtt tatcaagagt tttttagtct ttattaattt gtattgcata
2521 aaatatgggg cactagcact acaagaaata tttgatggta tacaaccaaa aatgtttgga
2581 atggttttgg aaaaaattat tattcctgaa attcagaagg tatctggaaa tgtagagaaa
2641 aagatctgtg cggttggcat aaccaactta ctaacagaat gtcccccaat gatggacact
2701 gagtatacca aactgtggac tccattatta cagtctttga ttggtctttt tgagttaccc
2761 gaagatgata ccattcctga tgaggaacat tttattgaca tagaagatac accaggatat
2821 cagactgcct tctcacagtt ggcatttgct gggaaaaaag agcatgatcc tgtaggtcaa
2881 atggtgaata accccaaaat tcacctggca cagtcacttc acatgttgtc taccgcctgt
2941 ccaggaaggg ttccatcaat ggtgagcacc agcctgaatg cagaagcgct ccagtatctc
3001 caagggtacc ttcaggcagc cagtgtgaca ctgctttaaa ctgcattttt ctaatgggct
3061 aaacccagat ggtttcctag gaaatcacag gcttctgagc acagctgcat taaaacaaag
3121 gaagttttcc ttttgaactt gtcacga
【0053】
CSE1Lタンパク質(タンパク質ID Accession No. AAC50367.1)のアミノ酸配列は以下のとおりである。
SEQ ID NO: 2
MELSDANLQTLTEYLKKTLDPDPAIRRPAEKFLESVEGNQNYPL
LLLTLLEKSQDNVIKVCASVTFKNYIKRNWRIVEDEPNKICEADRVAIKANIVHLMLS
SPEQIQKQLSDAISIIGREDFPQKWPDLLTEMVNRFQSGDFHVINGVLRTAHSLFKRY
RHEFKSNELWTEIKLVLDAFALPLTNLFKATIELCSTHANDASALRILFSSLILISKL
FYSLNFQDLPEFWEGNMETWMNNFHTLLTLDNKLLQTDDEEEAGLLELLKSQICDNAA
LYAQKYDEEFQRYLPRFVTAIWNLLVTTGQEVKYDLLVSNAIQFLASVCERPHYKNLF
EDQNTLTSICEKVIVPNMEFRAADEEAFEDNSEEYIRRDLEGSDIDTRRRAACDLVRG
LCKFFEGPVTGIFSGYVNSMLQEYAKNPSVNWKHKDAAIYLVTSLASKAQTQKHGITQ
ANELVNLTEFFVNHILPDLKSANVNEFPVLKADGIKYIMIFRNQVPKEHLLVSIPLLI
NHLQAGSIVVHTYAAHALERLFTMRGPNNATLFTAAEIAPFVEILLTNLFKALTLPGS
SENEYIMKAIMRSFSLLQEAIIPYIPTLITQLTQKLLAVSKNPSKPHFNHYMFEAICL
SIRITCKANPAAVVNFEEALFLVFTEILQNDVQEFIPYVFQVMSLLLETHKNDIPSSY
MALFPHLLQPVLWERTGNIPALVRLLQAFLERGSNTIASAAADKIPGLLGVFQKLIAS
KANDHQGFYLLNSIIEHMPPESVDQYRKQIFILLFQRLQNSKTTKFIKSFLVFINLYC
IKYGALALQEIFDGIQPKMFGMVLEKIIIPEIQKVSGNVEKKICAVGITNLLTECPPM
MDTEYTKLWTPLLQSLIGLFELPEDDTIPDEEHFIDIEDTPGYQTAFSQLAFAGKKEH
DPVGQMVNNPKIHLAQSLHMLSTACPGRVPSMVSTSLNAEALQYLQGYLQAASVTLL
【0054】
リン酸化CSE1Lタンパク質(タンパク質ID Accession No. AAC50367.1)に特異的な抗体を作成するために用いられるリン酸化タンパク質のアミノ酸配列は以下のとおりである。
LTpEYpLKKTLDPDPAC(Tpはリン酸スレオニンを表し、Ypはホスホチロシンを表す)
【実施例】
【0055】
<テスト材料と方法>
【0056】
〔抗体〕
実験で用いられた抗体は、抗−p21/ras(EP1125Y)(Epitomics,Burlingame,CA,USA);抗−CSE1L(3D8)及び抗−MAPK1/MAPK3(リン酸 T202/204,G15−B)(Abnova,Taipei,Taiwan);抗−CSE1L(24)、抗−ホスホチロシン(PY20)、及び抗−ホスホセリン/スレオニン(22A/pSer/Thr)(BD Pharmingen,San Diego,CA,USA);抗−β−チューブリン(D66)(Sigma,St.Louis,MO,USA);抗−β−アクチン(Ab−5)及び抗−GFP(Ab−1)(Lab Vision,Fremont,CA,USA);抗−MMP−2(H−76)及び抗−ホスホスレオニン(H2)(Santa Cruz Biotechnology,Santa Cruz,CA,USA);ヤギ抗−マウスIgG(Jackson ImmunoResearch Laboratories,West Grove,PA,USA);Alexa Fluor 488(又は568)(Molecular Probes,Eugene,OR,USA)に結合しているヤギ抗−マウス(又は抗−ウサギ)IgG2次抗体。
【0057】
〔プラスミド〕
ネオマイシン選択マーカーを有するv−H−Ras(pZIP−v−H−ras)発現ベクターは、Dr.Channing J Derから提供を受けた。ネオマイシン選択マーカーを有する哺乳類のCSE1L発現ベクター(pcDNA−CSE1L)は、CSE1L cDNA(Apa I、pGEM−CSE1L vectorのI断片ではない。)を、pcDNA3.1ベクターのApaI及びIでないサイトに挿入することで作成される。CSE1L shRNA プラスミド(sc−29909−SH)は、CSE1Lの発現をノックダウンするように設計されている。また、いかなる細胞情報の特異的分解を導かない暗号化したshRNA配列をエンコードする、コントロールshRNAプラスミド(sc−108060)は、Santa Cruz Biotechnology(Santa Cruz)に注文した。CSE1L shRNAプラスミド及びコントロールshRNAプラスミドは、ピューロマイシン選択マーカーを有する。
【0058】
〔細胞及びDNAトランスフェクション〕
B16F10メラノーマ細胞は、ATCC(Manassas,VA,USA)から入手した。細胞は、熱不活性化ウシ胎仔血清を10%、ペニシリンを100units/ml、ストレプトマイシンを100mg/ml、及びグルタミン酸塩を2mmol/L添加したダルベッコ改変イーグル培地で、5%CO2の加湿条件下、37℃で培養した。B16−dEV、B16−Ras、B16−CSE1L、及びB16−Ras/抗−CSE1L細胞を得るため、リオフェクチンプラス試薬(Invitrogen,Carlsbad,CA,USA)の手順書にしたがい、B16F10細胞に、コントロールpZIP−NeoSV(X)1エンプティベクター+コントロールshRNAプラスミド、pZIP−v−H−ras+コントロールshRNAプラスミド、pcDNA−CSE1L+コントロールshRNAプラスミド、及びpZIP−v−H−ras+CSE1L shRNAプラスミドが導入された。形質転換された細胞は、1mg/mlのG418で3週間、次いで、1μg/mlのピューロマイシンで3週間処理することで選択された。多剤抵抗性を有するコロニー(>50)は、集められ集団培養された。形質転換した細胞は、200μg/mlのG418及び0.2μg/mlのピューロマイシンを含む培地中に保管された。実験には、G418及びピューロマイシンを含まない培地で培養された細胞を用いた。
【0059】
〔免疫ブロット法〕
細胞は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄され、氷冷した放射性免疫沈降法(RIPA)バッファー[25mM Tris–HCl(pH7.2)、0.1% SDS、0.1% TritonX−100、1% デオキシコール酸ナトリウム、150mM NaCl、1mM EDTA、1mM オルトバナジウム酸ナトリウム、1mM フッ化フェニルメチルスルホニル、10μg/ml アプロチニン、5μg/ml ロイペプチン、25mM β−グリセロリン酸エステル、5mM オルトバナジウム酸ナトリウム、及び5mM フッ化ナトリウム]に溶解した。タンパク質濃度は、BCAタンパク質分析キット(Pierce,Rockford,IL,USA)を用いて測定した。タンパク質サンプルは、各々50μgを、SDS−ポリアクリルアミドゲル上に載せた。タンパク質は、ニトロセルロース膜(Amersham Pharmacia,Buckinghamshire,UK)に転写された。膜は、ブロッキングバッファー[1% ウシ血清アルブミン(BSA)、50mM Tris–HCl(pH7.6)、150mM NaCl、及び0.1% Tween−20]を用い、室温で1時間ブロックされた。ブロットは、1次抗体と4℃で一晩インキュベートされ、次いで、西洋ワサビペルオキシダーゼと結合している2次抗体と1時間インキュベートされた。タンパク質レベルは、Forte Western HRP Substrate(Millipore Corp.,Billerica,MA,USA)を用い、手順書に従って測定した。
ビオチン結合抗体で免疫ブロットするため、ビオチン結合抗体は、Biotin Labeling Kit−NH2 kit(Dojindo Laboratories,Kumamoto,Japan)の手順書に従って、抗−CSE1L抗体をビオチニル化することによって調整された。次いで、免疫ブロットは、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合ストレプトアビジンと反応し、タンパク質量はForte Western HRP Substrateによって検出される。
【0060】
〔免疫蛍光測定法及び微小胞のスコアリング〕
ガラスカバースライド(12×12mm)上で4日間成長した細胞は、1000rpmで10分間、サイトスピンすることでスライド上に密着した。細胞は、PBSで洗浄され、4%パラホルムアルデヒドで固定され、メタノールで透過処理され、0.1%BSAを含むPBSでブロックされた。サンプルは、一次抗体で1時間インキュベートされた。サンプル、次いでPBSで3回洗浄され、Alexa Fluor 488(又は568)に結合している2次抗体とインキュベートされ、倒立蛍光顕微鏡で測定された。各実施条件で、表面に微小胞を示した細胞が確認された。300の細胞がそれぞれの実施で観察され、3つの独立した実施のデータが、ブロットされた。標準偏差棒が示される。
【0061】
〔細胞増殖分析〕
同じ数の細胞(1×10細胞/dish)が、100mmの培養皿に播種された。培地は、3日毎に新しいものに交換された。細胞数は、細胞播種後、24時間毎に、トリパンブルー色素排除分析法(trypan blue exclusion assay)によりカウントされた。カウントの際には、3つのプレートの細胞数がカウントされ、それぞれのプレートは1回のみカウントした。
【0062】
〔馴化培地〕
細胞は、対数増殖期中期から後期に入ったあたりの状態(subconfluence)まで増殖され、PBSで洗浄され、ウシ胎仔血清を含まない培地に変更された。48時間のインキュベーション後、馴化培地は回収され、細胞数がカウントされた。浮遊している可能性のある細胞を除く為、培地は10,000rpmで10分間遠心分離され、その後、上澄みが回収された。
【0063】
〔微小胞の調整〕
微小胞は、サイズ排除クロマトグラフィー及び超遠心分離法により、馴化培地又は血清から調整された。馴化培地又は血清は、PBSで平衡化されたセファロース2Bカラム(Amersham Biosciences,NJ,USA)に入れられた。フラクション(1ml)が集められ、タンパク質量は280nmの吸光度を測定することでモニターした。>50ミリオンkDaのタンパク質を含む空隙容量ピーク材料は、4℃、105,000gで1時間遠心分離された。ペレットは微小胞を含み、50μlのPBSに再縣濁された。
【0064】
〔 免疫沈降〕
プラスチック皿で成長した細胞は、PBSで洗浄され、免疫沈降溶解バッファー[10mM Tris−HCl(pH7.4)、10mM EDTA、0.4% デオキシコール酸、0.5% TritonX−100、1mM フッ化フェニルメチルスルホニル、10μg/ml アプロチニン、5μg/ml ロイペプチン、25mM β−グリセロリン酸エステル、5mM オルトバナジウム酸ナトリウム、5mM フッ化ナトリウム]で、4°C、20分間インキュベートした。細胞は掻き集められ、ピペッティングにより破壊された。細胞溶解物は、12,000g、4℃、10分間の遠心分離で、不溶性物質が除去され、タンパク質濃度は、BCAタンパク質分析kit(Pierce)を用いて測定した。細胞溶解物(500μg)は、免疫沈降バッファー[50mM Tris−HCl(pH7.5)、150mM NaCl]中の一次抗体と、4°C、3時間、インキュベーとされ、次いで、タンパク質A/Gスラリーに、アガロースビーズ(Santa Cruz)が添加され、更に、2時間インキュベーとされた。免疫沈降物は、溶解バッファーで3回洗浄され、次いで、SDS−PAGEに置かれ、抗体で免疫ブロットされた。マウス抗−GFP抗体が、コントロール反応として用いられた。血清サンプルの免疫沈降のため、血清は、アガロース結合抗−リン酸スレオニン抗体(H2)(Santa Cruz)を含むPBSバッファーで、4℃で、緩やかな旋回をかけながら一晩インキュベーとされた。免疫沈降物は、免疫沈降溶解バッファーで3回洗浄され、SDS−PAGEにかけられ、次いで、抗−CSE1L抗体と免疫ブロットされた。コントロール免疫沈降は、アガロース結合通常マウスIgG(Santa Cruz)を用いて実施された。
【0065】
〔 GST−CSE1L融合タンパク質の生成〕
GST−CSE1L融合タンパク質は、ENDEXT技術手順書(CellFree Sciences,Yokohama,Japan)に記載されている方法に従って、小麦胚芽無細胞タンパク質合成システムを用いて生成した。簡単に説明すると、pcDNA−CSE1Lベクター中のCSE1Lのオープン・リーディング・フレームが制限酵素で切断され、小麦胚芽発現ベクターpPEU−E01−MCS(CellFree Sciences)にサブクローンされた。CSE1L mRNAの転写は、2μgのサブクローンプラスミドを、転写プレミックス溶液(CellFree Sciences)を含むチューブに加えることで行われた。混合液は、転写反応のため、37℃で6時間インキュベートされた。翻訳反応のため、10μlのmRNA混合物が、10μlの小麦胚芽抽出溶液(WEPRO 3240,CellFree Sciences)に加えられた。翻訳混合物(20μl)は、下層に翻訳混合物を含む2層を形成するために、SUB−AMIX(CellFree Sciences)を含むウェルの底に移された。26℃で16時間のインキュベーション後、混合物は、GST−CSE1L融合タンパク質の精製のために用いられた。GST−CSE1L融合タンパク質は、グルタチオン−セファロース4Bビーズ及びBulk GST Purification Modules(Amersham Pharmacia)を用いて精製を行った。精製されたGST−CSE1L融合タンパク質は、トロンビンで開裂され、GSTは、Amicon Ultra−4 Centrifugal Filter Units (Millipore,Billerica,MA,USA)を用いて除去された。
【0066】
〔組織マイクロアレイ及び免疫組織化学〕
パラフィンブロック中の癌組織から取り出された組織及び非癌組織から取り出された組織が、縦方向に切断され、組織マイクロアレイを作成するため、BiosynMatric Handmade Kit(Formosa Transcrip,Kaohsiung,Taiwan)のマニュアル方法を用いて、新しいパラフィンブロック中に配置された。現発癌の形態学的な代表領域の存在を確認するため、組織セクション(4−μm)が、ヘマトキシリン及びエオシンで染色された。免疫組織化学が、抗−CSE1L抗体(clone 3D8)又は抗−MAPK1/MAPK3(リン酸T202/204)抗体の50倍希釈物を用いて実施された。免疫組織化学検出は、Histostain kit(Zymed,San Francisco,CA,USA)の標識ストレプトアビジン−ビオチン法を用いて、手順書とおりに実施した。切片は、ジアミノベンジジンと反応させられ、蒸留水で洗浄され、マイヤーヘマトキシリンで対比染色された。
【0067】
〔マトリゲル基底膜浸潤性分析(Matrigel−based invasion assay)〕
マトリゲル基底膜浸潤性分析は、マトリゲル(BD Biosciences)及び孔サイズが8μmのポリビニルピロリドン−フリー ポリカーボネート フィルター(polyvinylpyrrolidone−free polycarbonate filters)(Costar,Cambridge,MA,USA)を用いて行われた。フィルターは、4℃で一晩、37℃で更に2時間、マトリゲル(1:10 in DMEM)でコートされた。フィルターは、DMEMで3回洗浄され、ミクロ走行性チャンバー(microchemotaxis chambers)に置かれた。細胞は、0.1%トリプシン−EDTAで洗浄され、FBSを10%含むDMEM培地中に再縣濁され、次いで、血清−フリーDMEM培地で洗浄された。細胞(3×10)は、DMEM(200μl)に縣濁され、走行性チャンバーの上方コンパートメントに置かれた。FBSを20%含む培地(300μl)が、化学誘引物質源として走行性チャンバーの下方コンパートメントに置かれた。培養インキュベーターで12時間のインキュベート後、フィルターの上面の細胞は、綿棒で完全に拭き取られた。フィルターの下面の細胞は、メタノールで固定され、Liu’s A及び Liu’s B試薬で染色され、そして、顕微鏡でカウントされた。ミクロ走行性チャンバーに浸入した細胞も、同様にカウントされた。分析は、3回繰り返され、各々の分析は、夫々の細胞ライン用フィルターの複製を4回繰り返して行われた。各複製のため、選択されたフィールドから任意の10の腫瘍細胞が決められ、カウントが平均化された。
【0068】
〔免疫金電子顕微鏡法(Immunogold electron microscopy)〕
細胞は、PBSで洗浄され、Hepesバッファー(pH6.8)中、15分間、0.5%グルタルアルデヒド及び2%パラホルムアルデヒド混合物で固定され、次いで、2%パラホルムアルデヒドを含むHepesバッファー(pH6.8)中、4℃で14日間固定された。サンプルは、80%エタノールで脱水処理され、Lowicryl HM20樹脂(Polysciences,Tokyo,Japan)の濃縮物に浸透した。Lowicryl HM20樹脂のポリマー化は、24時間、UV照射(波長ピーク360nm)することで行った。極薄切片は、切断及び2%ネオプレン(Ohken,Tokyo,Japan)でコートされたニッケル格子上に固定された。100%エタノールに3分間浸漬後、サンプルは、65℃の0.01M EDTA(pH7.2)に24時間浸漬した。サンプルは、PBSで3回(5分/洗浄)洗浄され、1%BSAを含むPBS及び0.1%Tween−20で15分間、ブロックされた。サンプルは、PBSに希釈された一次抗体(1:30)の混合物とインキュベートされ、PBSで3回(5分/洗浄)洗浄され、18−nm(又は12−nm)の金標識2次抗体と反応し、次いで、PBSで3回(5分/洗浄)洗浄した。サンプルは、酢酸ウラニルで染色され、透過型電子顕微鏡(日立社製 H−7000、Tokyo、Japan)で観察された。
【0069】
〔ゼラチン酵素電気泳動分析(Gelatin zymography Assay)〕
細胞数が標準化された馴化培地から採取された微小胞は、1mg/mlのゼラチンを含む10%SDS−PAGEで分離された。ゲルは、SDSを除去するため、2.5%Triton X−100で30分間洗浄され、次いで、50mM Tris−HCl(pH7.6)、200mM NaCl及び10mM CaClを含むバッファーで、37℃で24時間、インキュベートした。ゲルは、クマシーブルー R−250(0.125% Comassie blue R−250、50% メタノール、10% 酢酸)で30分間染色され、脱色液(20% メタノール、10% 酢酸、70% ddHO)で、鮮明なバンドが視認できるまで脱色した。
【0070】
〔動物の転移実験〕
6〜7週(N=18)及び14〜15週(N=26)のオスのC57BL/6マウス(National Laboratory Animal Center,Taipei,Taiwan)が、標準状態の動物飼育室(22℃;湿度50%、12時間の明暗周期)で飼育された。実験は、4つのグループ(B16−dEV、B16−CSE1L、B16−Ras及びB16−Ras/抗−CSE1L細胞が注入されたマウス)で行われ、異なる週齢のマウスも同様に4つのグループに分配された。それぞれのマウスには、生きている細胞(100μlPBS中に3×10細胞/mouse)が、尾静脈注射された。実験は、B16−dEV、B16−CSE1L、B16−Ras、B16−Ras/抗−CSE1L細胞がそれぞれ注射された11、14、8及び11匹のマウスで行われた。注射後3週間で、マウスは解剖された。肺中の腫瘍細胞数は、肉眼検査及び顕微鏡検査で行われた。マウスのケアと実験は、台湾中央研究院(Academia Sinica, Taiwan)の動物ケア委員会のガイドラインに従って実施した。16−dEV、B16−CSE1L、B16−Ras、B16−Ras/抗−CSE1L細胞の注射後、3週間後までに、それぞれ、3、10、4、1匹のマウスが死亡したので、それらは、統計から除外した。また、16−dEV、B16−CSE1L、B16−Ras、B16−Ras/抗−CSE1L細胞を注射したマウスの内、それそれ、1、1、0、3匹のマウスは肺に腫瘍細胞が成長しなかったので、統計から除外した。
【0071】
〔患者と腫瘍サンプル〕
結腸直腸癌のサンプルは、中華キリスト病院(Changhua Christian Hospital)において、IRB−承認ガイドラインを用い、診察時にインフォームド・コンセントを行い、且つ未治療の115の連続した患者から得られた。すべての患者は、関与の前に、施設内倫理委員会が承認したガイドラインを用いてインフォームド・コンセントを行い説明事項について理解した。腫瘍は、段階に分けられ、対がん米国合同委員会(American Joint Committee on Cancer)の癌ステージマニュアルに従って、分類された。コントロールの健常者の血清サンプルは、60人の健常個体(平均年齢61.0±8.7歳、年齢範囲22〜71歳)から得られた。血清サンプルは、血液が凝固するよう少なくとも30分は室温で放置した。懸濁の可能性のある細胞及び血清中の細胞破片を除去するため、サンプルは、10,000rpmで10分間遠心分離され、上澄みは回収された後、−80℃で保存した。表1は、患者の基本特性を示す。
【0072】
【表1】

【0073】
平均±SD.グレード1:十分分化(well differentiation)、グレード2:適度に分化(moderate differentiation)、グレード3:低分化(poor differentiation)。cN0:リンパ節部分転移無し、N1:1〜3か所のリンパ節転移、N2:4か所以上のリンパ節転移、dM0:遠隔転移無し、M1:遠隔転移あり
【0074】
〔In vivo 腫瘍イメージング〕
抗−CSE1L抗体(clone24)及び抗−マウスIgGが、Qdot800抗体複合体キット(Invitrogen)を用い、キット添付マニュアルに従って量子ドットに抱合された。Qdotは、N−コハク酸イミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボン酸塩(SMCC)で活性化され、抗体はジチオスレイトールで還元された。還元された抗体は、活性化されたQdotsと共有結合し、複合化反応は、β―メルカプトエタノールで抑えられた。複合体は、限外ろ過により濃縮されサイズ除去クロマトグラフィーにより精製された。複合体の濃縮物は、蛍光分光計により決定された。
週齢6〜7のオスのC57BL/6マウスは、生きているB16−CSE1L細胞(100μlPBS中に3×10細胞/mouse)が背面皮膚に注射された。腫瘍細胞の接種から3週間後、マウスの腫瘍は、量子ドット−接合抗−CSE1L抗体又は量子ドット−接合抗−マウスIgG(100μlのPBS中500pmole/mouse)と共に、尾静脈に注入された。マウスは、Xenogen IVIS 200イメージング・システム(励起:525/50nm;発光:832/65nm)を用い、注入後、0、1及び4時間経過時に観察した。NIR蛍光画像は、カメラで撮影された。
【0075】
〔リン酸化−CSE1Lに特異的な抗体の作製〕
リン酸タンパク質、LTEYLKKTLDPDPAC(Tは、リン酸スレオニン及びYはリン酸チロシンを意味する)、及び非リン酸タンパク質、LTEYLKKTLDPDPACは、固相法を用いて合成された。リン酸化されたタンパク質は、N−末端システインのチオールを介して、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)に接合した。ニュージーランドウサギが、タンパク質で5回免疫を与えられた。免疫血清は、最後の免疫付与から1週間後に回収された。IgGフラクションは、プロテインGカラム(Amersham Pharmacia Biotech, Uppsala, Sweden)を用いて精製された。抗体は、リン酸化タンパク質アフィニティーカラムで精製され、次いで、非リン酸特異的抗体を除去するため、非リン酸タンパク質クロス吸着を行った。力価と抗体特異性は、ELISA及び免疫ブロット法でテストされた。
【0076】
〔ドットブロット〕
精製された微小胞懸濁液(5μl)が、96ウェルのドットブロットマニフォールド装置(BRL,Bethesda,MD,USA)のニトロセルロース膜(Amersham Pharmacia)の夫々のウェルに滴下された。膜は、ブロッキングバッファー[1%BSA、50mM Tris−HCl(pH7.6)、150mM NaCl及び0.1%Tween−20]を用い室温で1時間、ブロックされた。ブロットは、4℃で一晩、一次抗体とインキュベートされ、次いで、西洋ワサビペルオキシダーゼと結合した2次抗体と1時間インキュベーションされた。タンパク質レベルは、Forte Western HRP Substrate(Millipore)を用い、キットの添付マニュアルに従って検出した。
【0077】
〔ELASA〕
血清サンプルは、96−well Nunc Immunoplate MaxiSorb plates(Nunc,Roskilde,Denmark)を用いて4℃で一晩、複製した。サンプルは吸引され1%BSAを含むPBSでブロックされた。ブロッキングバッファーが除去され、次いで、PBST(0.05%Tween−20を含むPBS)で洗浄された。ウェルは、ビオチン結合抗−リン酸−CSE1L抗体又はビオチン結合抗−CSE1L抗体で1時間、インキュベートされた。ビオチン結合抗体又はビオチン結合抗体は、ビオチンラベル キット−NH2(Dojindo Laboratories,Kumamoto,Japan)を用いて、抗体をビオチン化することで準備した。ウェルは、次いでPBSTで洗浄され、ストレプトアビジン結合西洋ワサビペルオキシダーゼ(R&D Systems,Minneapolis,MN,USA)と反応され、次いで、基質試薬(R&D Systems)とインキュベーションした。校正のため、PBSを含む3つのブランクウェルが、バックグランド値の測定に用いられ、PBSを含む、且つ他のELISA試薬のすべてと反応した3つのブランクウェルがコントロールウェルとして用いられた。450nmにおける吸光度は、Thermo Multiskan EX Microplate Photometer(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA,USA)を用いて、30分以内に測定した。コントロールウェルのもっとも高いOD値より高いサンプルウェルのOD値は、SE1L陽性、又はリン酸化CSE1陽性と考えられる。
【0078】
〔統計的分析〕
データは、SPSS 14.0統計ソフトを用いて分析された。統計学的差異は、フィッシャーの正確確率検定で両側検定(two−tailed Fisher’s exact test)を行い分析した。α−level≦0.01は、統計学的に意義があると考えられた。
【0079】
<実施例1>
〔v−H−rasが導入された安定細胞の作製、CSE1L、及びv−H−ras plus CSE1L shRNA発現プラスミド〕
B16F10メラノーマ細胞に、B16−Ras細胞にv−H−rasコーディング領域を運ぶレトロウィルス発現ベクターであるpZIP−v−H−rasが導入された;pcDNA−CSE1L、B16−CSE1L細胞を得るための人CSE1Lコーディング領域を運ぶレトロウィルス発現ベクター;B16−Ras/抗−CSE1L細胞を得るためのpZIP−v−H−ras plus CSE1L shRNAプラスミド。コントロールとして、B16−Ras細胞及びB16−CSE1L細胞に、如何なる細胞メッセージも伝えないごちゃ混ぜになったshRNA配列をコードするコントロールshRNAプラスミド(pshEV)が導入された;B16F10細胞に、B16−dEV細胞を得るためコントロールベクターpshEV及びpZIP−NeoSV(X)1が導入された。免疫ブロットの結果は、RasレベルはB16−Ras及びB16−Ras/抗−CSE1L細胞で増加したことを示した;CSE1Lレベルは、B16−CSE1L細胞で増加し、B16−Ras/抗−CSE1L細胞で減少したことを示した(図1)。
【0080】
図1は、B16−dEV、B16−Ras細胞、B16−CSE1L、及びB16−Ras/抗−CSE1L細胞中の、Ras及びCSE1Lのレベルのイムノブロット解析を示してい。B16F10メラノーマ細胞に、コントロールの空のベクター、v−H−ras、CSE1L、及びv−H−ras plus CSE1L shRNA発現プラスミドを導入したもの、すなわち、それぞれ図示されている、B16−dEV、B16−Ras細胞、B16−CSE1L、及びB16−Ras/抗−CSE1L細胞から調整された細胞溶解物中のRas及びCSE1Lのレベルは、抗−CSE1L及び抗−Ras抗体との免疫ブロットにより分析された。β−アクチンレベルがコントロールとして分析された。
【0081】
<実施例2>
〔v−H−rasが誘導する腫瘍細胞微小胞の生成〕
ras腫瘍遺伝子は、細胞形質転換の重要な伝達物質で、多様な種類の人癌に存在する;ERKは、多様な種類の細胞外刺激やRas及びErbB等のプロトオンコジーンファミリーに応答して活性化され、分子標的治療の重要なターゲットである(Roberts et al. 2007)。顕微鏡検査では、B16−Ras細胞表面は多くの気泡状の微小胞で覆われているが、B16F10及びB16−dEVコントロール細胞では確認されなかった(図2A)。細胞外小胞の形成は、しばしば、偽足(pseudopodia)又は突起伸長(protrusion extension)と一体となっている(Bianco et al. 2005)。微小胞の成長の存在は、B16−Ras細胞の偽足又は細胞質の底部に観察された(図2B)。脱落微小胞は、メタロプロテイナーゼで濃縮されていた(Taraboletti et al.2002)。メタロプロテイナーゼ−2(MMP−2)基質は、B16−Ras細胞中の微小胞に局在する(図2C)。v−H−rasトランスフェクションは、微小空胞MMP−2及びPD98059レベルを増加した。それは潜在的なERK活性阻害因子、微小胞中でv−H−rasが誘導した増加したMMP−2の弱毒化の治療の可能性を意味する(図2D)。DAPI(4’,6−diamidino−2−phenylindole)染色は、細胞中にアポトーシスに関するクロマチン凝縮/分解のサインが無いことを示している。つまり、B16−Ras細胞膜の微小胞の存在は微小胞の生成に関与しており、ERKはv−H−rasによって誘導される微小胞の形成に関与している。
【0082】
図2は、V−H−rasが細胞中で微小胞の発生を誘導していることを示している。(A)ガラスカバースライド上で4日間成長したB16F10、B16−dEV、及びB16−Ras細胞の反転顕微鏡写真。(B)B16−Ras細胞の偽足(矢印)の底部及び細胞膜(矢印)での微小胞の成長の存在。(C)抗−MMP−2抗体による免疫蛍光は、MMP−2がB16−Ras細胞中の微小胞(矢印)に位置していたことを示した。(D)DMSO又は50μMPD98059で48時間処理された、血清飢餓B16−dEV及びB16−Ras細胞の細胞数が標準化された馴化培地から採取された微小胞の微小空胞MMP−2のレベル。
【0083】
<実施例3>
〔v−H−rasトランスフェクションがCSE1L分泌物を増加〕
免疫ブロットの結果は、v−H−rasトランスフェクションがCSE1L分泌物を増加することを示した。また、PD98059処理は、B16F10細胞のv−H−ras−誘導CSE1L分泌物の増加を弱めた(図3)。v−H−rasトランスフェクション及びPD98059処理は、細胞中のCSE1L発現に明らかに影響したとはいえなかった(図3)。したがって、v−H−rasトランスフェクションは、CSE1L分泌物を刺激し、このことはERK活性に関係した。
【0084】
図3は、DMSO又は50μMPD98059で48時間処理された血清飢餓B16−dEV及びB16−Ras細胞の細胞数が標準化された馴化培地から採取された細胞の溶解物及び馴化培地のCSE1Lレベルを示しており、ビオチン結合抗−CSE1L抗体及び西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)結合ストレプトアビジンを用いた免疫ブロット解析の結果である。
【0085】
<実施例4>
〔CSE1Lは、セリン/スレオニン及びチロシンリン酸化タンパク質〕
GST−CSE1L融合タンパク質が、小麦胚芽無細胞タンパク質合成系を用いて合成された。免疫ブロットは、合成されたCSE1Lタンパク質は、抗−リン酸セリン/スレオニン及び抗−ホスホチロシン抗体と反応した(図4)。したがって、CSE1Lは、セリン/スレオニン及びチロシンリン酸化タンパク質である。
【0086】
図4は、小麦胚芽無細胞タンパク質合成系を用いて合成されたGST−CSE1Lタンパク質、並びにリン酸セリン/スレオニン、ホスホチロシン及びCSE1Lに対する抗体を用いた、CSE1Lのリン酸化反応の免疫ブロット解析を示している。CSE1Lタンパク質は、トロンビンを含むGST−CSE1L融合タンパク質の開裂により得られた。レーン2は、抗−CSE1L抗体及びA/G plus−agaroseで処理されたB16−dEVの上澄みを回収することで生成したCSE1Lが枯渇した細胞溶解物である。
【0087】
<実施例5>
〔v−H−rasトランスフェクションはCSE1Lリン酸化を増加し、リン酸化CSE1Lは癌血清中に存在〕
B16−dEV細胞、B16−Ras細胞、及びPD98059で処理されたB16−Ras細胞から精製された細胞溶解物中のCSE1Lタンパク質は、抗−CSE1L抗体で免疫沈降された。免疫沈降物は、HRP(西洋わさびペルオキシダーゼ)結合抗−リン酸スレオニン抗体で免疫ブロットされた。結果は、B16F10細胞へのv−H−rasトランスフェクションは、CSE1Lのスレオニンのリン酸化反応を増加し、そして、PD98059処理は、CSE1L中でv−H−rasによるスレオニンのリン酸化反応を抑制すること示している(図5A)。つまり、CSE1Lはリン酸化タンパク質で、Ras−ERK信号によりリン酸化される。血清飢餓B16−dEV、B16−Rasから回収された細胞の細胞数が標準化された馴化培地中、及びPD98059で処理されたB16−Ras細胞のCSE1Lタンパク質は、抗−CSE1L抗体で免疫沈降された。免疫沈降物は、HRP結合抗−リン酸スレオニン抗体で免疫ブロットされた。結果は、B16F10細胞へのv−H−rasトランスフェクションは、スレオニンリン酸化CSE1Lの分泌物を増加し、そして、PD98059処理は、B16−Ras細胞から馴化培地中に、v−H−ras増加によるスレオニンリン酸化反応物を分泌することを抑制することを示している(図5B)。
結腸直腸癌患者及び健常者ドナーの血清中のスレオニンリン酸化CSE1Lのレベルが分析された。結腸直腸癌患者(N=36)又は健常者ドナー(N=36)から採取された血清スレオニンリン酸化CSE1Lタンパク質は、アガロースゲル結合抗−リン酸化スレオニン抗体で免疫沈降された。免疫沈降物は抗−CSE1L抗体で免疫ブロットされた。結果は、癌血清サンプルからの免疫沈降物中にはスレオニンリン酸化CSE1Lが存在することを示したが、健常者ドナーの血清サンプルには存在していなかった(図5C)。血清CSE1Lレベルは、健常者ドナーのサンプルより癌患者のサンプルの方が高かったが、違いは、スレオニンリン酸化CSE1Lのアッセイで見られたように顕著ではなかった。
【0088】
図5は、v−H−rasトランスフェクションがCSE1Lのリン酸化を促進すること、及びリン酸化したCSE1Lは癌血清中に存在することを示す。(A)DMSO及び50μMのPD98059で24時間処理されたB16−dEV細胞及びB16−Ras細胞中の細胞質スレオニンリン酸化CSE1Lレベルが、抗−CSE1L抗体との免疫沈降及びHRP結合抗−リン酸スレオニン抗体との免疫ブロットにより分析された。免疫ブロットは、抗−CSE1L抗体で再検査された。コントロールの免疫沈降物は、マウス抗−GFP抗体を用いて行われた。(B)DMSO又は50μMのPD98059で24時間処理された血清飢餓B16−dEV細胞及びB16−Ras細胞数を調整した馴化培地中の分泌スレオニンリン酸化CSE1Lレベルは、抗−CSE1L抗体との免疫沈降及びHRP結合抗−リン酸スレオニン抗体との免疫ブロットにより分析された。(C)血清スレオニンリン酸CSE1Lは、結腸直腸癌患者(36人、夫々10μl)又は36人の健常者ドナー(夫々10μl)から得られた血清プールのアガロース結合抗−リン酸スレオニン抗体との免疫沈降、及び抗−CSE1L抗体との免疫ブロットで分析された。コントロールの免疫沈降物は、アガロース結合健常マウスIgGを用いて行われた。(D)結腸直腸癌患者及び健常者ドナーから得られた血清プールのCSE1Lレベルは、抗−CSE1L抗体との免疫ブロットで分析された(24クローン)。
【0089】
<実施例6>
〔結腸直腸癌におけるリン酸化−ERK及びCSE1Lの高発現、及び腫瘍中のCSE1Lとリン酸−ERKの相関染色強度の一致〕
【0090】
115の結腸直腸癌の標本の組織マイクロアレイ免疫組織化学検査の結果は、リン酸−ERK(100%、115/115)の及びCSE1L(99.1%、114/115)の強い染色を示した(図6A)。健常な組織は、弱いリン酸−ERK及びCSE1L染色しか示さなかった(図6A)。腫瘍中のCSE1Lとリン酸−ERKの相関染色強度の一致は、結腸直腸癌の進行においてCSE1Lとリン酸−ERKは近い関係にあることを示している(図6B)。
【0091】
図6は、結腸直腸癌においてCSE1L及びリン酸−ERKは高い発現をしており、腫瘍中のCSE1Lとリン酸−ERKの相関染色強度は一致することを示している。(A)結腸直腸癌のリン酸−ERK及びCSE1Lの発現は、115の癌標本の組織マイクロアレイ免疫組織化学検査により分析された。左パネル:非腫瘍組織;右パネル:結腸直腸癌組織。400倍の拡大写真。(B)隣接した連続結腸直腸癌組織切片の免疫組織化学検査により分析された腫瘍中のCSE1Lとリン酸−ERKの相関染色強度の代表的イメージ。矢印は、腫瘍中のCSE1Lとリン酸−ERKの相関染色強度が一致していることを示している。倍率は40倍。
【0092】
<実施例7>
〔CSE1Lが細胞中のv−H−ras−誘導の微小胞の発生を媒介する〕
顕微鏡検査は、B16−Ras/抗−CSE1L細胞及びCSE1L shRNAプラスミドが導入されたB16−Ras細胞の表面には微小胞が存在していないことを示している(図7A)。B16−Ras/抗−CSE1L細胞の細胞質又は偽足の底部にも微小胞の蓄積はなかった(図7A)。顕微鏡検査は、B16−CSE1L細胞の表面には微小胞が存在していることを示している(図7B)。v−H−rasが誘導する微小胞と違い、CSE1Lは、細胞あたり、ほとんど微小胞を誘導しせず、小胞は細胞の表面突起(invadopodia)の先端に多く存在し、また、サイズも大きかった(図7B)。これらの違いは意味がある、なぜなら、v−H−rasトランスフェクションはERK活性を刺激して、ERKは微小胞の生成と放出を媒介するからである。CSE1Lの過剰発現は微小胞の生成を刺激するに過ぎない;そのため、CSE1Lに誘導された微小胞は、細胞膜に蓄積し大きなサイズになる。先行研究は、小胞は原形質膜で形成され、糸状偽足に沿って、糸状偽足の先端に移動することを示している(Bianco et al.2005)。CSE1Lは、偽足の底部に位置したMMP−2の豊富な発育過程の微小胞で着色された(図7C)。CSE1Lは、また、B16−Ras細胞の脱落した微小胞の後に位置した発育過程の微小胞の細胞質で着色された(図7C)。更に、CSE1L shRNAは、v−H−rasが誘導する微小胞の成長を阻害した(図7A)。つまり、CSE1Lは、微小胞生成の調節遺伝子であり、v−H−rasが誘導する微小胞の生成を媒介する。
【0093】
図7は、CSE1Lは、v−H−rasが誘導する微小胞の生成を媒介することを示している。(A)ガラスカバースライド上で4日間成長したB16−Ras及びB16−Ras/抗−CSE1L細胞の反転顕微鏡写真。(B)ガラスカバースライド上で4日間成長したB16−dEV及びB16−CSE1L細胞成長の代表イメージ。(C)偽足(矢印)の底部に位置した発育過程の微小胞、又は脱落した微小胞(矢印)の後の細胞質におけるCSE1L及びMMP−2染色の代表イメージ。
【0094】
<実施例8>
〔CSE1Lはv−H−rasにより誘導された腫瘍細胞のin vitro浸潤を媒介する〕
DMSO又は50μMPD98059で処理又は処理されていない血清飢餓B16−dEV、B16−Ras、B16−CSE1L及びB16−Ras/抗−CSE1L細胞から採取した微小胞のゼラチン酵素電気泳動分析の結果は、v−H−rasトランスフェクションは、微小胞MMP−2の酵素電気泳動の活性を増加した、及びPD98059処理は微小胞MMP−2の酵素電気泳動の活性におけるv−H−rasが誘導する増加を弱めることができた(図8A)。CSE1Lの過剰発現は、微小胞MMP−2の酵素電気泳動の活性を増加した、そして、CSE1L shRNA トランスフェクションは微小胞MMP−2の酵素電気泳動の活性におけるv−H−rasが誘導する増加を弱めることができた(図8A)。マトリゲル・ベースの浸潤分析は、v−H−Ras トランスフェクション及びCSE1Lの過剰発現とも、B16F10細胞のin vitro浸潤を増加させ、CSE1L shRNAトランスフェクションはv−H−Rasが誘導した細胞の浸潤能力が増加することを弱めた(図8B)。つまり、CSE1Lは、v−H−Rasにより誘導された腫瘍細胞のin vitro浸潤を媒介する。
【0095】
図8は、CSE1Lは、v−H−Rasにより誘導された腫瘍細胞のin vitro浸潤を媒介することを示す。(A)DMSO又は50μMPD98059で処理又は処理されていない血清飢餓B16−dEV、B16−Ras、B16−CSE1L及びB16−Ras/抗−CSE1L細胞から採取した微小胞のMMP−2のゼラチン酵素電気泳動分析の結果。(B)マトリゲル・ベース浸潤により分析されたB16−dEV、B16−Ras、B16−CSE1L及びB16−Ras/抗−CSE1L細胞のin vitro浸潤能力。侵入性細胞の平均±SD数は、B16−dEV、B16−Ras、B16−CSE1L及びB16−Ras/抗−CSE1L細胞のフィールドあたり、それぞれ、109.4±12.6、406.8±23.9、311.25±32.4、46.75±8.7であった。
【0096】
<実施例9>
〔CSE1Lはv−H−rasが誘導した癌細胞の転移を媒介する〕
MMP−2は、腫瘍浸潤で本質的な役割を果たす(Taraboletti et al.2002)。免疫蛍光は、CSE1LはB16−Ras及びB16−CSE1L細胞表面の微小胞のMMP−2と共局在化されていることを示している(図9A)。また、CSE1Lは、微小胞に選択的に蓄積されていた(図9A)。C57BL/6マウスによる動物実験では、CSE1Lの過剰発現及びv−H−Rasトランスフェクションは、それぞれ、361.5%(P<0.01)及び246.1%(P<0.01)のB16F10細胞の肺腫瘍転移を示した;CSE1L shRNAトランスフェクションはv−H−Rasが誘導した腫瘍の肺転移を100%(P<0.01)に弱めた;B16−Ras及びB16−Ras/抗−CSE1L細胞の成長速度は類似しているにもかかわらず(図9B及びC)。つまり、CSE1Lは、v−H−Rasにより誘導された腫瘍細胞の転移を媒介する。
【0097】
図9は、CSE1Lは、v−H−rasが誘導した癌細胞の転移を媒介することを示す。(A)代表的な免疫蛍光は、免疫蛍光で分析されたB16−Ras及びB16−CSE1L細胞中の微小胞のCSE1L及びMMP−2の共存を示す。また、CSE1Lは、微小胞に選択的に蓄積されていた(矢印)。MMP−2分布が、比較のために使われた。(B)CSE1Lは、v−H−rasが誘導した細胞の転移を媒介する。上段は、B16−dEV、B16−Ras、B16−CSE1L及びB16−Ras/抗−CSE1L細胞が注入されたC57BL/6マウスの肺腫瘍の写真である。肺腫瘍の平均±SD数は、B16−dEV(N=7)、B16−CSE1L(N=3)、B16−Ras(N=4),B16−Ras/抗−CSE1L細胞(N=7)が注入されたマウス1匹あたり、それぞれ、13.7±4.8、47±15.8、32.2±8.5、7±3.6であった。B16−dEV、B16−CSE1L、B16−Ras、B16−Ras/抗−CSE1L細胞を注入後、3週間でそれぞれ3、10、4、1匹のマウスが死亡したので統計処理から除いた。B16−dEV、B16−CSE1L、B16−Ras、B16−Ras/抗−CSE1L細胞を注入後、それぞれ、1、1、0、3匹のマウスには肺腫瘍が成長しなかったので、同様に統計処理から除いた。(C)B16−dEV、B16−CSE1L、B16−Ras、B16−Ras/抗−CSE1L細胞の成長曲線を示す。グラフは、3つの独立した分析結果を示す。
【0098】
<実施例10>
〔CSE1Lは微小胞膜に局在化し抗−CSE1L抗体は腫瘍をターゲットとすることができる〕
免疫蛍光の結果は、CSE1Lは微小胞膜に局在化することを示した(図10A)。免疫金電子顕微鏡検査は、CSE1L及びMMP−2は小胞に局在化し、そしてCSE1Lは小胞膜に主に局在化することを更に示した(図10B)。脱落した微小胞は腫瘍細胞膜の上で広範囲に広がり、脱落微小胞は、腫瘍細胞の周りの細胞外環境に留まっている可能性がある;それゆえ、微小胞膜タンパク質は、癌治療の潜在的ターゲットとなる可能性がある。微小胞膜中のCSE1Lの局在化は、CSE1Lが癌治療の潜在的ターゲットとなり得ることを示している。腫瘍のあるC57BL/6マウスに、Qdot800ナノクリスタル結合抗−CSE1L抗体、又はコントロールとしてQdot800ナノクリスタル結合抗マウスIgGが尾静脈注射された。in vivoイメージの結果は、抗−CSE1L抗体結合量子ドットを注入したマウスの腫瘍中には重要な近赤外(NIR)蛍光信号の存在を示したが、コントロールのIgG結合量子ドットを注入したマウスの腫瘍中では観察されなかったことを示した(図10C)。つまり、抗−CSE1L抗体は、腫瘍をターゲットとすることがでる。
【0099】
図10は、CSE1Lは微小胞膜に局在化し、抗−CSE1L抗体は腫瘍をターゲットとすることができる。(A)免疫蛍光の結果、CSE1LはB16−CSE1L細胞の微小胞膜(矢印)に局在化していた。(B)B16−CSE1L細胞の微小胞へのCSE1L(18−nm金、矢印)及びMMP−2(12−nm金、矢印)の免疫金電子顕微鏡による分布検査。250,000倍。(C)合成画像は、量子ドット結合抗−CSE1L抗体(右、N=3)又は量子ドット結合抗−マウスIgG(左、N=3)を注入して4時間後の、B16−CSE1L細胞から派生した腫瘍異種移植片を運んでいるC57BL/6匹のマウスのNIR蛍光信号を示す。NIRイメージは、同じ状況の下で得られ、処理された。
【0100】
<実施例11>
〔抗−リン酸CSE1L抗体はリン酸化されたCSE1Lと反応する〕
リン酸CSE1Lに特異的な抗体は、CSE1Lの推定リン酸化領域と一致するようになっている合成リンペプチドをニュージーランド・ウサギに免疫接種することで作製した。抗−リン酸−CSE1L抗体の力価は、間接的なELISAによって測定された(表2)。免疫ブロットの結果は、抗−リン酸−CSE1L抗体はリン酸化したCSE1Lと反応することを示した(図11)。
【0101】
表2は、精製された抗−リン酸−CSE1L抗体の親和性の力価は、間接的なELISAによって測定された。
【0102】
【表2】

【0103】
図11は、抗−リン酸CSE1L抗体は、リン酸化されたCSE1Lと反応することを示す。抗−リン酸CSE1L抗体の特異的特徴は、DMSO又は50μMPD98059で12時間処理されたB16−dEV及びB16−Ras細胞からの細胞溶解物(50μg)を免疫ブロットすることで行われた。抗−CSE1L抗体(clone24)及び動物の免疫前の血清が、コントロールとして用いられた。
【0104】
<実施例12>
〔リン酸化CSE1Lは微小胞に局在する〕
リン酸化CSE1Lが微小胞に局在するか否かが分析された。抗−リン酸CSE1L抗体を用いた免疫蛍光は、リン酸化CSE1Lが微小胞(矢印)に局在化していることを示した(図12)。
【0105】
図12は、抗−リン酸CSE1L抗体を用いた免疫蛍光分析により、リン酸化CSE1Lが、B16−CSE1L細胞の微小胞(矢印)に局在化していることを示している。
【0106】
<実施例13>
〔癌血清から分離された微小胞のCSE1Lの存在〕
微小胞が、結腸直腸癌の患者及び健常者ドナーの血清から分離された。分離された微小胞は、96ウェルドットブロットマニホールド(BRL,Bethesda,MD,USA)に入れられ、血清微小胞のCSE1Lの存在は、抗−CSE1L抗体及び抗−リン酸CSE1L抗体を用いたドットブロットにより分析された。ブロットの強さは、IS−1000デジタル画像処理システムを用いて定量化された(Kaiser Alpha Innotech,USA)。結果は、癌血清サンプルから分離された微小胞のCSE1Lの罹患率は、健常者ドナーの血清サンプルより高い値を示した(図13A)。また、癌血清サンプルから分離された微小胞のリン酸化CSE1Lの罹患率は、健常者ドナーの血清サンプルより高い値を示すことも結果より明らかとなった(図13B)。CSE1Lは、癌患者から分離された血清微小胞の96.5%(111/115)で検出され、健常者ドナーから分離された血清微小胞では6.6%(4/60)検出された。P−値は、癌グループと健常者グループで<0.01であった。標準として合成されたCSE1Lを使って、癌患者からの血清微小胞のCSE1Lのカット―オフ値は、≥21ng/mlと決定された。リン酸化CSE1Lは、癌患者から分離された血清微小胞の98.2%(113/115)で検出され、健常者ドナーから分離された血清微小胞では3.3%(2/60)検出された。P−値は、癌グループと健常者グループで<0.01であった。標準として合成されたリン酸化CSE1Lタンパク質を使って、癌患者からの血清微小胞のリン酸化CSE1Lのカット―オフ値は、≥15ng/mlと決定された。
【0107】
図13は、癌血清サンプルから分離された微小胞のCSE1L及びリン酸化CSE1Lの罹患率は、健常者ドナーの血清サンプルより高い値であることを示している。血清から分離された微小胞のCSE1L(A)及びリン酸化CSE1L(B)の罹患率は、抗−CSE1L抗体及び抗−リン酸CSE1L抗体を用いたドットブロットにより分析された。*は、健常者ドナーと比較して、統計学的に有意であることを示す。
【0108】
<実施例14>
〔癌患者の血清のリン酸化CSE1Lのより高い罹患率、及び癌診断には血清中のリン酸化CSE1Lの分析がCSE1Lの分析より優れていること〕
結果は、癌血清から分離された微小胞にリン酸化CSE1Lが存在していることを示している(実施例13)。免疫沈降の結果は、癌血清サンプルからの免疫沈降物にはリン酸化CSE1Lが存在するが、健常者の血清サンプル中には存在しないことを示している(図5C)。結腸直腸癌患者の血清中のCSE1L及びリン酸化CSE1Lの罹患率が分析された。ELISAの結果は、癌血清の92.1%(106/115)はリン酸化CSE1L−陽性であったのに対し、健常者ドナーの血清では、わずか1.6%(1/60)がリン酸化CSE1L−陽性であった(図14)。P−値は、癌グループと健常者グループで<0.01であった。標準として合成されたリン酸化CSE1Lタンパク質を使って、癌患者からの血清中のリン酸化CSE1Lのカット―オフ値は、≥3ng/mlと決定された。ELISAの結果は、癌血清の65.2%(75/115)はCSE1L−陽性であったのに対し、健常者ドナーの血清では、13%(8/60)がCSE1L−陽性であった。標準として合成されたCSE1Lを使って、癌患者からの血清中のCSE1Lのカット―オフ値は、≥8ng/mlと決定された。癌検出のためのリン酸化CSE1L血清の感度と選択性は、それぞれ、92.1%と98.3%であった。
癌検出のためのCSE1L血清の感度と選択性は、それぞれ、65.2%と86.6%であった。したがって、リン酸化CSE1L血清の分析は、CSE1L血清の分析より癌診断に優れている。
【0109】
図14は、結腸直腸癌患者の血清のリン酸化CSE1Lのより高い罹患率を示している。健常者ドナーと結腸直腸癌患者の血清中のリン酸化CSE1Lの罹患率がELISAにより決定された。*は、健常者ドナーと比較して、統計学的に有意であることを示す。
【0110】
<参考文献>
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞アポトーシス感受性タンパク質(CSE1L)に対する抗体、又はリン酸化CSE1Lに対する抗体。
【請求項2】
抗体が、リン酸化CSE1Lに対する抗体であることを特徴とする請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
(a) 被験体からテスト生体液サンプルを得る工程;
(b) 1以上の健常者からコントロールサンプルを得る工程;
(c) テスト生体液サンプル及びコントロールサンプルをin vitroで請求項1に記載されている抗体と接触させる工程;
(d) テスト生体液サンプル中の微小胞のCSE1L又はリン酸化CSE1Lの量を測定する工程;及び
(e) コントロールサンプル中の微小胞のCSE1L又はリン酸化CSE1Lの量を測定する工程;
を含む被験体の癌を診断するin vitroの方法において、
工程(d)で測定されたテスト生体液サンプル中の微小胞のCSE1L又はリン酸化CSE1Lの量を、ステップ(e)で測定されたコントロールサンプルのCSE1L又はリン酸化CSE1Lの平均量と比較し、CSE1Lの増加又はリン酸化CSE1Lの存在が被験体に癌が存在することを示すことを特徴とする方法。
【請求項4】
CSE1L又はリン酸化CSE1Lの量が前記サンプルのドットブロット分析により測定されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
CSE1Lの量が、抗−CSE1L抗体及び微小胞との結合による分析で測定され;リン酸化CSE1Lの量が、抗−リン酸化CSE1L抗体及び微小胞との結合による分析で測定されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項6】
被験体が人であることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項7】
(a) 被験体からテスト生体液サンプルを得る工程;
(b) 1以上の健常者からコントロール生体液サンプルを得る工程;
(c) テスト生体液サンプル及びコントロール生体液サンプルをin vitroで請求項2に記載されている抗体と接触させる工程;及び
(d) テスト生体液サンプル中のリン酸化CSE1Lの量及びコントロールサンプル中のリン酸化CSE1Lの量を測定する工程;
を含む被験体の癌を診断するin vitroの方法において、
テスト生体液サンプル中のリン酸化CSE1Lの量をコントロール生体液サンプルのリン酸化CSE1Lの平均量と比較し、リン酸化CSE1Lの増加が被験体に癌が存在することを示すことを特徴とする方法。
【請求項8】
リン酸化CSE1Lの量は、前記サンプルを酵素免疫測定法(ELISA)により測定したものであることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
リン酸化CSE1Lの量は、抗−リン酸化CSE1L抗体及びリン酸化CSE1Lを結合して分析したものであることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
被験体が人であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項11】
(a) 被験体から生体液サンプルを得る工程;
(b)生体液サンプルをin vitroで請求項1に記載されている抗体と接触させる工程;及び
(c)抗体に結合している微小胞を分離する工程;
を含む生体液サンプルから微小胞を分離するin vitroの方法。
【請求項12】
抗−CSE1L抗体又は抗−リン酸化CSE1L抗体、及び医薬品賦形剤、希釈剤またはキャリヤを含む医薬組成物。
【請求項13】
生体液サンプルをin vitroで請求項1に記載されている抗体と接触させる工程;及び抗体の結合を検出する工程を含む生体液サンプル中の微小胞の存在を検出するin vitroの方法において、微小胞のCSE1L又はリン酸化CSE1Lへの抗体の結合が生体液サンプル中の微小胞の存在を示すことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1の抗体を含む微小胞をin vitroで検出及び/又は分離するためのキット。
【請求項15】
請求項2の抗体を含む生体液サンプル中のリン酸化CSE1Lをin vitroで検出するためのキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−49662(P2013−49662A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−109698(P2012−109698)
【出願日】平成24年5月11日(2012.5.11)
【出願人】(512124669)
【氏名又は名称原語表記】JIANG,Ming−Chung
【住所又は居所原語表記】2F.,No.5,Alley 31,Lane 61 Sec.1, Guangfu Rd., Sanchong District New Taipei City 241, Taiwan China
【Fターム(参考)】