説明

微量試料の導入方法およびマイクロ流体デバイス

【課題】マイクロ流体デバイス内の流路に極微量の試料を定量的に導入する試料導入方法及び微小なクロマトグラフを備えたマイクロ流体デバイスの提供。
【解決手段】第一流入口と、第一流出口と、両者を結ぶ第一流路と、第一流路を二分する第一分岐部と、第一分岐部から分岐する第二流路と、第二流路の他端に設けた第二流入口とを有するマイクロ流体デバイスを使用し、第一流入口に接続し、移送用流体を吐出する第二ポンプを停止又は運転状態とし、且つ第一流出口に接続する第一ポンプを、第二ポンプの吐出速度より速い速度で吸引方向に運転し、第一流路内の移送用流体を第一ポンプ方向へ移送すると同時に、両方のポンプの速度差により生じた負圧により、第二流路内の試料を第一流路下流部へ移送する第一工程と、試料が所定量導入された時点で、両方のポンプの速度差をゼロにするか、逆転させて、試料の流入を停止する第二工程、を行う微量試料の導入方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ流体デバイス内の流路や機構に、極微量の試料を定量的に導入する方法、及び、クロマトグラフを有するマイクロ流体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ流体デバイスは、内部に設けられた微細な毛細管状の流路中で反応や分析を行うデバイスである。マイクロ流体デバイスを使用することにより、反応や分析の迅速化、分析試料量の必要量の減少、省資源・省エネルギー、さらには廃棄物の減少が可能となる。このようなマイクロ流体デバイスを使用して、例えば濾過、抽出、反応などの試料の前処理部と、マイクロ・クロマトグラフィー、マイクロ電気泳動などの分離部と、蛍光や可視・紫外吸収などの検出部を一体化し、医療診断、生化学分析、化学分析の方面で微量の試料を分析するマイクロ・トータル・アナリシス・システム(μ−TAS)を構築する試みが行われている。
【0003】
しかしながら、マイクロ流体デバイスの流路の容量は、従来のポンプ、切り替えバルブ、シリンジ、ピペットなどの試料取り扱い手段や装置の容量に比べて桁違いに小さいため、マイクロ流体デバイスの流路に極微量の試料を定量的に注入することは相当困難であった。例えば、マイクロ・液体クロマトグラフィーやマイクロ・アフィニティー・クロマトグラフィーなどのマイクロ・クロマトグラフィーにおいては、展開距離を短くすることにより迅速に高分解能の分析を行うことが期待できるが、そのためには、試料を短いパルス状に分離カラムに注入する必要があった。しかしながら、マイクロシリンジやサンプリングバルブなどの従来法による試料注入手段では注入試料の体積が過大になりがちであり、そのため、クロマトグラムのピークの広がりやテーリングが生じ、短い展開距離では十分な分解能を得ることが出来なかった。
【0004】
これを解決する方法として、特許文献1には、電気泳動分析に関する次の方法が開示されている。即ち、交差する2本の流路の一方の一端に試料を注入し、該流路の両端に電圧を印加して電気泳動又は電気浸透流にて試料を移送し、試料が交差部を通過している時点で該電圧の印加を停止し、次いで、他方の流路の両端に電圧を印加することによって、交差部内の試料のみを他方の流路へ注入する方法である。
【0005】
しかし、この方法では、分岐部の容積だけの極微量の試料を他方の流路に注入することが可能であるが、電気泳動による試料移送であるため、試料は荷電試料に限られ、また、媒体も電解質媒体に限られるため、多くの液体クロマトグラフィーや、ガスクロマトグラフィーのように気相中へ試料を注入する用途には適用できなかった。
【0006】
また、同様の発想に基づく方法として、マイクロ流路による分析装置に関して、接合する二本のチャネルを有するデバイスを包含する装置が開示されている(特許文献2)。該デバイスにおいては、デバイス内のチャネルに圧力勾配を適用させて、試料注入チャネルに試料を流し、それと接合(交差)した分離チャネルの該接合部(交差部)に試料を配置するものである。しかし、該方法においては、次のような点で、試料注入方法としては不十分なものであった。(1)試料注入用流路と電気泳動分析用流路の圧力や、その制御のタイミングを精密に行う必要があるため、ポンプやバルブなどの機構が複雑かつ大がかりとなりがちであること、(2)該公知文献にはクロマトグラフィーの試料注入については記載されていないが、本発明者等の検討によれば、二つの流路の圧力を厳密に制御する必要があり、制御装置が大がかりなものに成りがちであること、(3)注入試料がテーリングを生じがちであり、それを抑制するためには、更に複雑な機構や圧力制御操作が必要なこと。
【0007】
一方、本発明者等の出願になる特許文献3には、部材の内部に、毛細管状の上流側流路と、該上流側流路の上流端に位置する液体注入部と、一端が該上流側流路の末端に接続されている吸着カラムと、該吸着カラムを通過した液体を排出する下流側排出口を有する微小液体クロマトグラフィー機構(微小液体クロマトグラフ)が設けられたマイクロ流体デバイスであって、該上流側流路上に分岐部を有し、該分岐部から分岐流路が設けられていて、該分岐流路が、気体は透過させるが液体は透過させない気液分離体を介して該デバイス外に連絡していることを特徴とするマイクロ流体デバイスが開示されている。しかしながら、該デバイスは、試料導入量の定量性が低いものであった。
【0008】
また、本発明者等の出願になる特許文献4には、第一流路上流部と、その途中の分岐部にて分岐した第一流路下流部と、分岐部近傍の第一流路下流部中に設けられた弁と、分岐部近傍の第一流路上流部の流路壁にあり、第一流路上流部の外部からの圧力により第一流路上流部の断面積を減少させる圧迫部とを有し、該弁が常態では閉じており、且つ圧迫部を圧迫することにより開いて第一流路上流部内の流体が第一流路下流部内に流入する弁であるマイクロ流体デバイスが開示されている。しかし、これも、弁を形成する必要があり、マイクロ流体デバイスの構造が複雑になる欠点があった。
【0009】
さらに、本発明者等の出願になる特許文献5には、少なくとも2本の流路が交差又は接触した流路共有部に試料吸着性物質が固定化されてなり、該流路のうちの一つが試料を移送して該試料吸着性物質に試料を吸着させる流路であり、且つ該流路と交差又は接触する他の流路が該試料吸着性物質から脱離した試料を移送する流路であることを特徴とするマイクロ流体素子が開示されている。しかしながら、これも試料導入量の定量性が低いものであったし、クロマトグラフとしても、試料導入口と該流路共有部までの間にバルブやポンプを設ける必要があり、構造が複雑となった。
【0010】
また、本発明者等の出願になる特許文献6には、外部へ開口した導入口と吐出口が設けられた毛細管状の流路を有するマイクロ流体素子への試料導入方法に関して、流路に導入用液体を充填した後に、導入口において試料を導入用液体に接触させ、吐出口から導入用液体を排出することで試料を流路中に導入する試料導入方法が開示されている。しかしながら、これは、流路全体に試料を満たす方法であり、極微量の試料を定量的にパル状に導入する方法については何の記載もなく、クロマトグラフィーの試料注入方法に用いることは出来なかった。
【0011】
また、本発明者等の出願になる特許文献7には、シリコンゴムによる、マイクロシリンジ用のインジェクション部を有するクロマトグラフが開示されている。しかし、前述のように、マイクロシリンジによる試料注入の欠点を有し、クロマトグラフとしても、試料注入口はシリコンゴムで塞がれており、マイクロ流体デバイス外部に開口したものではない。
【0012】
また、非特許文献1には、ガラス製のマイクロ流体デバイスに設けたスライド式マイクバルブが報告されており、これを試料の定量的導入に使用出来る。しかしながら、複雑な構造のバルブをマイクロ流体デバイスに形成する必要があり、微小なスライド式バルブの摺動部からのリークを防止するには極めて高い精度の工作が必要であり、必然的に高価なデバイスとなった。
【0013】
【特許文献1】特開平11−271273号公報
【特許文献2】特表2002−542489号公報
【特許文献3】特開2004−144568号公報
【特許文献4】特開2006−10327号公報
【特許文献5】特開2005−274405号公報
【特許文献6】特開2004−191256号公報
【特許文献7】特開2005−091135号公報
【非特許文献1】第11回化学とマイクロ・ナノシステム研究会予稿集、2005年、88頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明が解決しようとする課題は、マイクロ流体デバイス内の流路に、極微量の試料を定量的にパルス状に導入する試料導入方法であって、荷電試料だけでなく非イオン性試料の導入や、非水溶媒中への試料導入が可能であり、複雑で精密な装置を必要とせず、簡単な機構でテーリングもなく注入することが可能な試料導入方法を提供することにあり、特に、微小なクロマトグラフ(即ち、クロマトグラフィー用の機構)への試料注入方法を提供することにある。また、そのようなクロマトグラフが設けられたマイクロ流体デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、分岐した流路の両端部に接続した2つのポンプの、押し出し量と吸引量を制御することにより、該分岐部に接続した流路から試料を定量的に導入し移送できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0016】
即ち、本発明は、マイクロ流体デバイスの微細な流路に微量の試料を定量的に導入する方法であって、
該マイクロ流体デバイスとして、第一流入口と、第一流出口と、該第一流入口と該第一流出口を結ぶ第一流路と、該第一流路の途上に設けられ該第一流路を第一流路上流部と第一流路下流部に分ける第一分岐部と、該第一分岐部において該第一流路から分岐している第二流路と、該第二流路の他端に設けられた第二流入口とを有するマイクロ流体デバイスを使用し、
(1)該第一流路内には移送用流体を満たし、該第二流路内には試料又は移送用流体を満たし、
該第一流入口に接続された第二ポンプから該移送用流体を該第一流路内に吐出させ、かつ、該第一流出口に接続された第一ポンプを、該第二ポンプの吐出速度より大なる速度で吸引方向に運転するか、該第一ポンプを停止状態とし、更に該第二ポンプを吸引方向に運転することにより、
該第一流路内に充填された該移送用流体を該第一ポンプ方向へ移送すると同時に、該第一ポンプの吐出速度と該第二ポンプの吸引速度との差により生じた負圧により、前記第二流入口から該第二流路を経て試料を該第一流路下流部へ移送する第一工程と、
(2)該試料が該第一流路下流部に所定量導入された時点で、該第一ポンプの吸引速度から該第二ポンプの吐出速度を差し引いた値がゼロ又は負となる流速で該第一ポンプ及び該第二ポンプを運転することにより、
該試料が、該第二流路から該第一分岐部を経て、該第一流路下流部に流入することを停止する第二工程、
を行うことを特徴とする微量試料の導入方法を提供するものである。
【0017】
また、本発明は、微細な流路の一部にクロマトグラフィー用の分離カラムが設けられたマイクロ流体デバイスであって、
該マイクロ流体デバイスが、第一流入口と、第一流出口と、該第一流入口と該第一流出口を結ぶ第一流路と、該第一流路の途上に設けられ、該第一流路を第一流路上流部と第一流路下流部に分ける第一分岐部と、該第一分岐部において該第一流路から分岐し、その途上にバルブやポンプが設けられていない第二流路と、該第二流路の他端に設けられた第二流入口と、該第二流入口に接続され、該マイクロ流体デバイス外部に開口した受液槽と、該第一流路下流部の途上に設けられたクロマトグラフィー用分離カラムとを有するマイクロ流体デバイスを提供するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の微量試料の導入方法は、マイクロ流体デバイス内の流路に、極微量の試料を定量的にかつパルス状に導入することができる試料導入方法であって、荷電試料だけでなく非イオン性の試料や非水溶媒溶液の試料も、テーリングなく導入することが可能であるため、マイクロクロマトグラフなどの各種分析用マイクロ流体デバイスや、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの各種マイクロリアクターに適用可能である。勿論電気泳動分析用の試料導入も可能である。本発明の微量試料の導入方法は、単純な構造のマイクロ流体デバイスを用いて上記を実施可能であるため、マイクロ流体デバイスを安価に製造出来、使い捨てにすることも可能である。また、そのようなクロマトグラフが設けられたマイクロ流体デバイスを提供できる。
【0019】
さらに、本発明の微量試料の導入方法は、試料を試料導入口に滴下するだけで、後は自動的に所定量を流路に吸引し導入し、マイクロ流体デバイス中の所定の機構に移送することが可能であるため、血液などの生体サンプルの全自動分析装置を容易に構築出来る。或いは、マイクロリアクター用のマイクロ流体デバイスにおいて、流路内を流れる反応液の一部を定量的に抜き出して、次段の反応用流路や分析機構などに導入することも可能であるため、反応部と分析部を持った研究用マイクロリアクターを容易に構築できる。また、そのようなクロマトグラフを有するマイクロリアクターを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明について、詳細に説明する。
[マイクロ流体デバイス]
マイクロ流体デバイスとは、マイクロ・フルイディック・デバイス、マイクロ・ファブリケイテッド・デバイス、マイクロ流体素子、マイクロ流路、ラボ・オン・チップなどとも呼ばれるものを指し、マイクロ流体デバイス内に設けられた流路や各種の機構内で、化学や生化学の反応、分散・晶析・混合・分離・濃縮などの化学工学的処理、検出や測定などを行うデバイスをいう。
【0021】
図1、図2は本発明に使用するマイクロ流体デバイスの例を示す平面図と側面図である。本発明に使用するマイクロ流体デバイスは、二つの流入口と一つの流出口と一つの分岐部を持つ毛細管状の流路を有する。即ち、第一流入口11、第一流出口12、該第一流入口11と該第一流出口12を結ぶ第一流路10、該第一流路10の途上に設けられ、該第一流路10を第一流路上流部10aと第一流路下流部10bに分ける第一分岐部15、該第一分岐部15において該第一流路10から分岐している第二流路20、および、該該第二流路20の他端に設けられた第二流入口21を有する。
【0022】
図1は本発明に使用するマイクロ流体デバイスの第一の形態を示す平面図と側面図である。本第一の形態は、第二流入口21はマイクロ流体デバイス外に開口した試料導入口21とされている。即ち、本第一の形態のマイクロ流体デバイスは、T字型の流路構造を有し、試料導入口21に配された試料を、第二流路20を経て第一流路下流部10bに導入する試料導入方法(本発明の第一態様)に使用される。また、本第一の形態に於いて、該第一流路下流部の途上にクロマトグラフィー用の分離カラムが形成されたマイクロ流体デバイス(即ち、クロマトグラフ)は本発明のクロマトグラフの第一の形態とされる。
【0023】
図2は本発明に使用するマイクロ流体デバイスの第二の形態を示す平面図と側面図である。本第二の形態は、マイクロ流体デバイスがさらに、第三流入口31、第二流出口32、該第三流入口31と該第二流出口32を結ぶ第三流路30、該第三流路30の途上に設けられ、該第三流路30を第三流路上流部30aと第三流路下流部30bに分ける第二分岐部16を有し、該第二流入口21は該第二分岐部16に接続されている。即ち、本第二の形態のマイクロ流体デバイスは、H字型の流路構造を有する。本第二の形態のマイクロ流体デバイスは、第3流入口31から第二流出口32へと、第三流路30を流れる試料を、第二分岐部16から第二流路20を経て第一流路下流部10bへ導入する試料導入方法(本発明の第二態様)に使用される。また、本第二の形態に於いて、該第一流路下流部の途上にクロマトグラフィー用の分離カラムが形成されたマイクロ流体デバイス(クロマトグラフ)は本発明のクロマトグラフの第二の形態とされる。
【0024】
本発明の微小試料の導入方法に使用するマイクロ流体デバイスについて、さらに詳細に説明する。
【0025】
(第一流入口11)
第一流入口11はマイクロ流体デバイス表面に開口しており、ポンプを接続する配管の接続部とされている。第一流入口11にはポンプ(第二ポンプと称する)を接続する配管の接続部とされている。勿論、第一流入口11は、濾過機構などを介して該第二ポンプに接続して良い。また、該第二ポンプとして本マイクロ流体デバイスに組み込まれたポンプ(内部ポンプと称する)を使用する場合には、第一流入口11は該内部ポンプの吐出口に接続される。
【0026】
(第一流路上流部10a)
第一流路上流部10aは、第一流入口11から導入される移送用流体を第一流路下流部10bへ移送する為の流路としての役割を持つ。第一流路上流部10aの圧力損失は任意であるが、圧力損失は小さいことが、ポンプの耐圧が低くてよいため好ましい。第一流路上流部10aの断面積は、好ましくは100μm以上、さらに好ましくは400μm以上、最も好ましくは1000μm以上で、好ましくは10mm以下、さらに好ましくは1mm以下、最も好ましくは0.1mm以下である。
【0027】
(第一分岐部15)
第一分岐部15に於いて、第一流路10に第二流路20が接続されている。
【0028】
(第一流路下流部10b)
第一流路下流部10bには、例えばクロマトグラフフィーカラムや反応槽のような、微量試料を導入する目的の機構が設けられる。
クロマトグラフィーカラムが設けられる場合には、該カラムの長さは任意であり、用途目的に応じて好適な長さをとり得る。例えば、1mm〜500mmが好ましく、5mm〜200mmが更に好ましい。上記下限以上とすることで、十分な分離能を得ることができ、上記上限以下とすることによって、マイクロ流体デバイスを小形化できる。
第一流路下流部10bの圧力損失、即ち、第一分岐部15から第一流出口12までの間の圧力損失は、上記のような機構も含めて、使用状態で100kPa未満、好ましくは30kPa以下、更に好ましくは、10kPa以下であるようにする。圧力損失の下限は、限りなくゼロに近くて良い。圧力損失は、化学工学の分野で公知の式、例えば、「新版化学機械の理論と計算」、亀井三郎編、産業図書(株)、(1959年)に記載の式で計算できる。圧力損失を上記の範囲にする為に、第一流路下流部10bの断面積は、好ましくは100μm以上、さらに好ましくは400μm以上、最も好ましくは1000μm以上が好ましい。第一流路下流部10bの断面積の上限は、大きいほど圧力損失は小さくなるが、マイクロ流体デバイスが微小であることによるメリットを失わない意味で、好ましくは10mm以下、さらに好ましくは1mm以下、最も好ましくは0.1mm以下である。圧力損失は使用方法である流速に依存するが、流路断面積を上記の範囲とすることにより、流速の許容範囲が広くなり、運転の制約が少なくなる。
【0029】
(第一流出口12)
第一流出口12はマイクロ流体デバイス表面に開口しており、ポンプ(第一ポンプと称する)と接続する配管の接続部とされている。勿論、第一流出口12は、濾過機構などを介して該第一ポンプに接続して良い。また、該第一ポンプとして本マイクロ流体デバイスに組み込まれた内部ポンプを使用する場合には、第一流出口12は該内部ポンプの吸引口に接続される。
【0030】
(第二流入口21)
第二流入口21は、試料の導入口であり、本発明で使用するマイクロ流体デバイスの第一の形態では、マイクロ流体デバイス外に開口し、該開口部に受液槽が設けられた形状とされている。しかし一般には、そこから試料が導入される構造であれば任意であり、上記の他に、例えばマイクロ流体デバイス外と連絡する配管が接続された配管接続部、マイクロ流体デバイス中の他の機構、例えば第一流路や第二流路以外の流路、貯液槽、或いは濾過機構などとの接続部等であり得る。また、本発明で使用するマイクロ流体デバイスの第二の形態では、マイクロ流体デバイス内に設けられた第三流路30の途上に設けられた第二分岐部16に連結されている。いずれの場合も、第一流路下流部10b側から吸引して液体の試料を導入することが可能なように、第二流入口21は、大気圧に連絡しているか、十分な容量の気体と接触しているか、或いは、ポンプなどにより吸引される分だけ送り出される必要がある。
【0031】
(第二流路20)
第二流路20は、第二流入口21から導入される試料を第一流路下流部10bへ移送する為の流路としての役割を持つ。第二流路20の圧力損失は、第一流路下流部10bと同様である。第二流路20は単なる移送用の流路であって良く、その途上に開閉バルブ、逆止弁、またはポンプは設ける必要はない。そのため、マイクロ流体デバイスの構造を非常に単純にすることが出来る。第二流路20の長さは任意であるが、短いことが、必要とされる試料の量が少なくて済むため好ましい。
試料を繰り返し導入する場合、例えば、本発明の微量試料の導入方法の第二態様において、第三流路30中の試料を繰り返し第一流路下流部10bへ導入する場合には、前回の導入試料との混合を避けるため、第二流路20の長さを実質的にゼロにすること、即ち、第一分岐部15と第二分岐部16を接合することが好ましい。
【0032】
(第一ポンプ)
第一ポンプは第一流出口12に接続されるポンプであり、吸引型の定量ポンプ、即ち、設定した流量で吸引出来るポンプである。該定量ポンプとしては、吸引速度の流体圧力依存性が小さなものが好ましい。そのようなポンプとしては、例えば、シリンジポンプ、プランジャーポンプ、ギヤポンプ、しごきポンプを例示できる。第一ポンプは、吸引と吐出の両方が出来るものが、マイクロ流体デバイスの流路に移送用流体を充填することが容易であり、更に好ましい。
第一ポンプは独立したポンプであってもよいし、マイクロ流体デバイスに組み込まれた内部ポンプであっても良い。該内部ポンプは第一流路下流部10bの途上の任意の位置に組み込むことが出来る。
第一ポンプは、マイクロ流体デバイスの流路にあらかじめ充填された第一の移送用流体を吸引するが、流路中の第一の移送用流体を吸引した後は、試料を吸引し、続いて第二の移送用流体を吸引する。試料や第二の移送用流体による第一ポンプの汚染を防ぐために、第一流出口12と第一ポンプの間にバッファータンクを挿入することが好ましい。第一流出口12と第一ポンプを接続する配管自体に該バッファータンクの役目を持たせることも出来る。
【0033】
(第二ポンプ)
第二ポンプは第一流入口11に接続されるポンプであり、吐出型の定量ポンプ、即ち、設定した流量で吐出することが出来、かつ、ポンプ停止時には吐出口を吸引しても実質的に吐出されないポンプである。この時の、吐出口を吸引する圧力は、本発明の第一工程に於ける、第二流入口21から試料を吸引する圧力であり、大気圧下で使用する場合には、最大でマイナス100kPa(ゲージ圧)である。また、該定量ポンプとしては、吐出速度の背圧依存性が小さなものが好ましい。このようなポンプとしては、例えば、シリンジポンプ、ギヤポンプ、しごきポンプを例示できる。
第二ポンプは独立したポンプであってもよいし、マイクロ流体デバイスに組み込まれた内部ポンプであっても良い。該内部ポンプは第一流路上流部10aの途上の任意の位置に組み込むことが出来る。第二ポンプは第二の移送用流体を吐出してもよいし、あらかじめ第一流路上流部10aに充填された第二の移送用流体の後に接する別の移送用流体を吐出してもよい。
【0034】
(第三流入口31)
図2では、本発明に使用する第二の形態のマイクロ流体デバイスが有する第三流入口31は、マイクロ流体デバイス表面に開口しており、吐出型のポンプを接続する配管の接続部とされている。しかし、一般には、第三流入口31には、第三流路30に試料を流す為の流体移送機構が接続されれば良く、該流体移送機構としてマイクロ流体デバイスに組み込まれた内部移送機構を使用する場合には、第三流入口3は該内部移送機構の吐出口に接続される。該流体移送機構は任意であり、該第二ポンプと同様のポンプの他、ダイヤフラムポンプなどの任意のポンプであってよいし、圧力気体や重力により移送する機構であってもよい。また、第二流出口32を吸引して第三流路30に試料を移送する場合には、貯液槽に接続されていてよい。
【0035】
(第三流路上流部30a)
本発明に使用する第二の形態のマイクロ流体デバイス、及び、本発明のクロマトグラフの第二の形態が有する第三流路30の、該第二分岐部16から上流側が第三流路上流部30aとされている。第三流路上流部30aは、任意の流路であってよく、例えば、試料を流す単なる連絡流路、マイクロリアクタの反応管、分離機構などであって良い。第三流路上流部30aの圧力損失は、特に制約はなく、上記第一流路上流部10aと同様であってよい。
【0036】
(第二分岐部16)
本発明に使用する第二の形態のマイクロ流体デバイス、及び、本発明のクロマトグラフの第二の形態では、第二分岐部16に於いて、第三流路30に第二流路20の流入口21が接続されている。
【0037】
(第三流路下流部30b)
第三流路30の第二分岐部16から下流側の部分である第三流路下流部30bは、第二分岐部16から第二流路20へ導入されなかった余剰の試料を排出する流路であり、任意の流路であり得る。第三流路下流部30bの圧力損失は、特に制約はなく、上記第一流路上流部10aと同様であってよい。
【0038】
(第二流出口32)
図2に於いて、本発明に使用する第二の形態のマイクロ流体デバイスが有する第二流出口32は、マイクロ流体デバイス表面に開口しており、第三流路下流部30bから排出された液体を溜めることができるような、大気圧に開放された貯液槽とされている。しかし一般には、第二流出口32の形態は任意であり、例えば、マイクロリアクタに於ける次段の反応用流路に接続されていていてもよいし、配管の接続部とされていてもよいし、吸引可能な流体移送機構に接続されていてもよい。該流体移送機構は任意であり、該第一ポンプと同様のポンプの他、ダイヤフラムポンプなどの任意のポンプであってよいし、減圧気体や多孔質吸収体であってもよい。
【0039】
[試料と移送用流体]
本発明の試料導入方法が対象とする試料と、使用する移送用流体について説明する。
【0040】
(試料)
本発明でマイクロ流体デバイスの流路に導入する試料は流体であり、流体は、気体、液体、又は超臨界流体であってよい。また、分散液、蒸気、ミストなでも良い。これらの中で、液体(分散液を含む、以下同様)であることが、試料導入量の精度が向上するため好ましい。
試料が溶液や分散液である場合の溶媒や分散媒は任意であり、水系液体、非水液体、電解質、非電解質であり得る
試料が溶液である場合の溶質も任意であり、化学物質、生化学物質、有機物質、無機物質、揮発性物質、不揮発性物質、ノニオン性物質、カチオン性物質、アニオン性物質、両性イオン性物質、親水性物質、疎水性物質、両新馬異性物質、などであり得る。
試料が分散液である場合の分散室も任意であり、有機化合物、無機化合物、細胞や細胞内組織などの生物物質、荷電物質、非荷電物質などであり得る。
【0041】
(移送用流体)
本発明の試料導入方法に於いては、試料を、第一ポンプに吸引する移送用流体と、第二ポンプから吐出する移送用流体を介して該試料を導入し、移送する。即ち、試料は移送方向の前方と後方がそれぞれ移送用流体に接して挟まれた状態で第一流路下流部10bに導入され、移送される。これら試料前後の移送用流体は同じものであっても、異なるものであってもよい。試料の移動方向の前方の移送用流体を第一の移送用流体、後方のものを第二の移送用流体と称することにする。
【0042】
(第一の移送用流体)
第一の移送用流体は任意であり、気体、液体、又は超臨界流体であってよいが、液体を使用することが好ましい。第一の移送用流体として液体を使用することにより、試料導入量の精度が向上する。第一の移送用流体は、試料や第二の移送用流体と混合するものであっても混合しないものであっても良く、用途目的に応じて選択できる。後述の第二の移送用流体が液体である場合には、本第一の移送用流体として、第二の移送用流体と同じものが好ましく用いられる。
【0043】
(第二の移送用流体)
第二の移送用流体も任意であり、気体、液体、又は超臨界流体であってよいが、液体であることが、本発明の効果がより発揮されるため好ましい。液体である場合には、試料と混合するものであっても混合しないものであっても良く、用途目的に応じて選択できる。例えば、本発明の試料導入方法がマイクロクロマトグラフへの試料注入である場合には、第二の移送用流体としてクロマトフラフィーの展開液を使用する。
【0044】
[本発明のマイクロ流体デバイス]
本発明のマイクロ流体デバイスは、本発明の試料導入方法で使用するマイクロ流体デバイスの中で、第一流路下流部10bの途上、第三流路上流部10aの途上、又はその両方にクロマトグラフが設けられたものである。上記の第一の形態のマイクロ流体デバイスでクロマトグラフを有するものを、本発明のマイクロ流体デバイスの第一の形態と称し、上記の第二の形態のマイクロ流体デバイスでクロマトグラフを有するものを、本発明のマイクロ流体デバイスの第二の形態と称する。
【0045】
[試料導入方法]
本発明の試料導入方法は、次の手順による。
(1)第一工程
該第一流路上流部の端に接続された第二ポンプから、第二の移送用流体を吐出方向に運転するか又は停止させ、かつ、該第一流路下流部の端に接続された第一ポンプを、該第二ポンプの吐出速度より大なる速度で吸引方向に運転することにより、少なくとも該第一流路下流部に充填されていた第一の移送用流体を該第一ポンプ方向へ移送すると同時に、該移送用流体の移送による吸引力により、試料を、該第二流入口から、該第二流路及び該第一分岐部を経て、第一流路下流部へ移送する。
このとき第二流路には、あらかじめ第一の移送用流体が充填されていても、試料が充填されていても良いが、液体である第一の移送用流体が充填されていることが、試料導入量の定量性が増すため好ましい。
【0046】
(2)第二工程、
該試料が該第一流路下流部に所定量導入された時点で、該第一ポンプの吸引速度から該第二ポンプの吐出速度を差し引いた値がゼロ又は負となる流速で各ポンプを運転することにより、該第一流路下流部に流入する流体を試料から該第一の移送用流体に切り替える。
以上の第一工程と第二工程により、該第二の移送用流体と該第一の移送用流体に挟まれたパルス状に、所定量の試料を第一流路下流部10bに導入し、所定の位置まで移送する。
【0047】
以下、上記の手順について詳細に説明する。
〔微量試料の導入方法の第一態様〕
本発明の試料導入方法の第一態様は、該第一の形態のマイクロ流体デバイスを使用する。流路中に圧縮性の流体である気体が存在すると、試料導入量の定量性が低くなる。そのため、少なくとも第一流路下流部10b内にあらかじめ液体の移送用流体を充填しておくことが好ましい。第二流路20には、あらかじめ第一の移送用流体が充填されていても、試料が充填されていても良いが、あらかじめ液体の第一の移送用流体が充填されていることが、流路からの気体の除去が容易であり、微量試料の導入量の定量性が増すため好ましい。この場合、上記流路内、各配管接続部内、及びマイクロ流体デバイスとポンプを結ぶ各配管内にも気体(気泡)を残さないようにすることが、試料の導入量の定量性を向上させるために好ましい。本微量試料の導入方法を繰り返す場合、後述の第二工程に於ける第一ポンプと第二ポンプの流量差がゼロの場合には、2回目以降の試料導入に於いては、第二流路20には試料が充填されている状態で第一工程を開始する。
【0048】
該移送用流体を該流路中に充填する方法は任意であり、第二ポンプや第一ポンプを接続する前に充填しておいてもよいし、両ポンプを接続した後に、該ポンプから移送用流体を吐出して充填しても良い。例えば、第二ポンプと第一ポンプからそれぞれ移送用流体を吐出すると、第二ポンプから吐出された移送用流体は、第一流入口11、第一流路上流部10a、第一分岐部15、第二流路20を流れて第二流入口21から流出し、第一ポンプから吐出された移送用流体は、第一流出口12、第一流路下流部10b、第一分岐部15、第二流路20を経て第二流入口21から流出する。よって、この方法では、第一流路下流部10bには第一ポンプから吐出された移送用流体が充填され、第一流路上流部10aには第二ポンプから吐出された移送用流体が充填された状態が得られる。第二流路20に充填される移送用流体は、両ポンプの運転順序によって変わり、後から流した移送用流体が充填される。同時に流せば、混合流体が充填される。第一流路下流部10bに充填された移送用流体が第一の移送用流体となり、第二流路20に充填された移送用流体が第二の移送用流体となる。
【0049】
第二ポンプと第一ポンプの双方から移送用の液体を吐出する代わりに、第二ポンプの吐出速度が第一ポンプの吸引速度より大きな条件で両ポンプを運転し、流路中にあった空気が第一ポンプに吸引されて該ポンプから排出されるまで運転する方法によっても良い。この場合には、第一流路及び第二流路の全体に第二ポンプから吐出された移送用流体が充填される。第二ポンプと第一ポンプを上記の逆にすると、流路全体に第一ポンプから吐出された移送用流体が充填される。
上記の充填操作により第二流入口21に設けられた受液槽に溜まった余剰の移送用流体(液体)は、ピペットやシリンジなどで吸引除去すればよい。
【0050】
(1)第一工程
該第二ポンプを、第二の移送用の流体を吐出させるように運転するか又は停止させ、同時に該第一ポンプを、該第二ポンプの吐出速度より大なる速度で吸引方向に運転することにより、該第二流入口21に設けられた受液槽に配された試料を吸引し、該試料を第二流路20から第一分岐部15を越えて第一流路下流部10bへ導入する。この時、第二ポンプは停止させておくことが、導入された試料が第一分岐部15にて第二ポンプから吐出された移送用流体で希釈されることがないため好ましい。上記のポンプ運転状態は、該二つのポンプの双方を停止させた状態から、第一ポンプのみを運転することにより実施しても良いし、該二つのポンプを同一の吐出速度と吸引速度で運転している状態から、第二ポンプのみを停止させることにより実施しても良い。このように第二ポンプの吐出速度が第一ポンプの吸引速度を下回ると、その差の流量で、第二流入口21から試料が第二流路20に吸引され、第一分岐部15を経て第一流路下流部10bへ導入される。このとき、各流路の圧力損失を該の範囲になるように、流路断面積や流速を調節すると、流路壁の撓みなどによる吸引の遅れが無く、定量性良く試料が導入される。
【0051】
(2)第二工程
該試料が該第一流路下流部10bに所定量導入された時点で、該第一ポンプの吸引速度から該第二ポンプの吐出速度を差し引いた値がゼロ又は負となる流速で、即ち、該第二ポンプの吐出速度が、該第一ポンプの吸引速度以上となる流速で、各ポンプを運転する。そうすると、第一分岐部15において、第二流路20からから第一流路下流部10bへ流れていた試料の代わりに、第一流路上流部10aから第二の移送用流体が第一流路下流部10bへ流入して、第二流路20からの試料の流入は止まる。このとき、該第二ポンプの吐出速度を該第一ポンプの吸引速度より高くすると、第一流路上流部10aから第一分岐部15へ流入する第二の移送用液体は第一分岐部15にて分流し、一部は第一流路下流部10bへ流れ、残余は第二流路20へ流れて、第二流路20内の試料を第二流入口21へ押し戻す。そのため、第一流路下流部10bへの試料の流入のテーリングが防止される。第二ポンプの運転速度をプログラム制御し、第一工程から第二工程への切り替え後一定時間だけ第一ポンプの流量より大とし、その後、等しくすることも好ましい。
【0052】
試料が第一流路下流部へ所定量導入されたことは、ポンプ運転時間の計測による方法の他、任意の手段で試料の導入量を検出する方法を採ることが出来る。例えば、第一分岐部15から所定長だけ離れた第一流路下流部10bの一部に検出部(図示略)を設け、該検出部に試料が到達したことを検出して第二工程へ切り替える方法が好ましい。該検出部は、分岐部や第二流路の一部に設けても良い。検出部を分岐部や第二流路20の一部に設ける場合には、該部分に試料が到達した時刻から、所定の遅れ時間の後に第二工程へ切り替える方法を採ることが出来る。試料の検出手段は任意であり、例えば、紫外可視吸収、赤外吸収、蛍光強度などの光学的手段、電気伝導度や起電力などの電気的方法を例示できる。上記の第一工程と第二工程を繰り返して、試料を複数回導入することも可能である。
【0053】
本発明の微量試料の注入方法によれば、使用するマイクロ流体デバイス中の流路径や、検出部の位置を上記のように設計することにより、微少量、特に0.1pl(但し、pl=nm)〜300nl(但し、nl=pm)、さらに好ましくは1pl〜30nl、最も好ましくは10pl〜10nl程度の微少量の試料を定量的に注入することが可能である。さらに、該第二工程に於いて、該第一ポンプの吸引速度から該第二ポンプの吐出速度を差し引いた値が負となる流速で各ポンプを運転することにより、上記微少量の試料をテーリングなしにパルス的に注入することが可能である。
【0054】
〔微量試料の導入方法の第二態様〕
本発明の微量試料の導入方法の第二態様は、該第二の形態のマイクロ流体デバイスを使用する。本第二態様は、第三流路30中の試料を、第二分岐部16に接続された第二流入口21から導入すること以外は該第一態様と同じである。
該第三流路中を試料を移送する方法は任意であり、例えば第三流入口31に接続されたポンプや、該第二流出口32に接続されたポンプを使用できる。勿論、第三流路上流部30aや第三流路下流部30bに設けられた内部ポンプを使用しても良い。
【0055】
本発明の微量試料の導入方法の第二態様は、クロマトグラフィーや電気泳動などによって分離された試料スポットを選択的に第一流路下流部10bへ導入することも出来る。例えば、第三流路上流部30aにクロマトグラフィー用カラムを設けることによって、分離された試料スポットの化合物を第一流路下流部10bにおける反応に供することが出来る。また、前述のように、第一流路下流部10bにもクロマトグラフィー用カラムを設け、第三流路のクロマトグラフィーと第一流路のクロマトグラフィーを異なる条件(例えば、pHや温度)で行うことにより、分離しにくい物質を容易に分離出来る。このとき、第三流路30の第二分岐部16付近に、第三流路30内の試料を検知する機構、例えば光学測定用の窓を設けたマイクロ流体デバイスを使用し、該部分で試料スポットを検知して該試料スポットを第一流路下流部10bへ導入することも好ましい。
【0056】
上記の微量試料の導入方法の第二の態様は、クロマトグラフィーや電気泳動によって分離された試料スポットを選択的に第三流路30から除去し、残余を第三流路下流部30bへ移送する方法としても利用できる。この方法によって、例えば、特定の試料スポットを除去した試料を第二流出口32から採取したり、該試料スポットを除去した試料を第三流路下流部30bにおける反応に供することが出来る。
【0057】
本微量試料の導入方法の第二態様において、第三流路30中の試料を繰り返し第一流路下流部10bに導入することも出来る。この方法は、第三流路30がマイクロリアクターの反応用流路であり、該反応用流路中の反応液を一定時間毎に試料として第一流路下流部10bに導入し、分析する場合などに有用である。この場合、当該回の導入試料に、第二流路20中に残っていた前回の導入試料の残余が混入しないようにするため、例えば次の方法(第一の方法)を採りうる。即ち、前回の試料導入の第二工程において、該第一ポンプの吸引速度から該第二ポンプの吐出速度を差し引いた値が負となる流速で、各ポンプを運転する。そうすると、第一ポンプから吐出される移送用流体の一部は第二流路20へ流れ、第二流路20内の試料を第二分岐部16から第三流路へ押し戻して、第二流路20は該移送用流体で置換される。このため、当該回の試料導入に於いて、前回の試料が混入することはない。第三流路30に押し戻された試料を第三流路下流部30bへと移送し、当該回の試料導入時に混入しないようにすることが出来る。該移送用流体として液体を用いると、第二流路には該液体が充填されるため、次回の試料導入の際に、改めて第二流路20に液体を充填する操作は不要である。また、前回の試料導入操作により、第一流路下流部10bには移送用流体が充填されているため、当該回の試料導入に際して、改めて第一流路下流部10bに液体を充填する操作は不要である。
【0058】
当該回の導入試料に、第二流路20中に残っていた前回の導入試料の残余が混入しないようにする第二の方法は、本発明で使用するマイクロ流体デバイス(及び本発明のクロマトグラフを有するマイクロ流体デバイス)の第二の形態において、第二流路20の長さを実質的にゼロにする方法である。換言すれば、第一分岐部15と第二分岐部16は接しておおり、該分岐部に於いて、第一流路10と第三流路30は接合された形状とする方法である。これにより第二流路の体積はゼロになる。そのため、第二工程に於いて、第一ポンプの吸引速度と第2ポンプの吐出速度を同じにしても、前回の導入試料が第二流路20に残留することがない。また、第一流路下流部10bに関しても、上記第一の方法と同じ理由で、改めて液体を充填する操作は不要である。
【実施例】
【0059】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例の範囲に限定されるものではない。
本実施例における紫外線照射、および蛍光特性測定の方法を以下に示す。
【0060】
(紫外線ランプ1による照射)
3000Wメタルハライドランプを光源とするアイグラフィックス株式会社製のUE031−353CHC型UV照射装置を用い、365nmにおける紫外線強度が40mW/cmの紫外線を特に指定が無い限り室温、窒素雰囲気中で照射した。
【0061】
(紫外線ランプ2による照射)
250W高圧水銀ランプを光源とするウシオ電機株式会社製のマルチライト250Wシリーズ露光装置用光源ユニットを用い、365nmにおける紫外線強度が50mW/cmの紫外線を、特に指定が無い限り室温、空気雰囲気中で照射した。
【0062】
(実施例1)
本実施例では、本発明のクロマトグラフを有するマイクロ流体デバイスの第一の形態の製造方法と、それを用いた、本発明の微小試料の導入方法の第一態様を示す。図1に本実施例で作製したマイクロ流体デバイスの平面図模式図と側面図模式図を示す。
【0063】
[マイクロ流体デバイスの作製]
〔組成物(X1)の調製〕
エネルギー線重合性化合物(a)として平均分子量2000の3官能ウレタンアクリレートオリゴマー「ユニディックV−4263」(大日本インキ化学工業株式会社製)70部、ヘキサンジオールジアクリレート「ニューフロンティアHDDA」(第一工業製薬株式会社製)30部、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン「イルガキュアー184」(チバガイギー社製)3部、及び重合遅延剤として2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(関東化学株式会社製)0.5部を混合して、組成物(X1)を調製した。
【0064】
〔組成物(X2)の調製〕
エネルギー線重合性化合物として上記「ユニディックV−4263」80部、上記「ニューフロンティアHDDA」20部、光重合開始剤として上記「イルガキュアー184」2部を混合して、蓋用組成物を調製した。
【0065】
〔製膜液(Y1)の調製〕
エネルギー線重合性化合物(b)として、上記「ユニディックV−4263」72質量部、ジシクロペンタニルジアクリレート「R−684」(日本化薬株式会社製)18質量部、メタクリル酸グリシジル(和光純薬工業株式会社製)10質量部、貧溶剤(R)としてデカン酸メチル(和光純薬工業株式会社製)を180質量部、揮発性の良溶剤としてアセトンを10質量部、紫外線重合開始剤として上記「イルガキュアー184」3質量部を、均一に混合して製膜液(Y1)を調製した。
【0066】
〔孔質層3の形成〕
厚さ1mmのアクリル樹脂製の基板1にスピンコーターを用いて、組成物X2を塗布し、紫外線ランプ1にて1秒間紫外線を照射して塗膜を半硬化させて接着層2とし、その上にスピンコーターにて製膜液(Y1)を塗工し、紫外線ランプ2により、フォトマスクを通して多孔質層3を形成する範囲に紫外線を40秒照射して該塗膜を硬化させ、n−ヘキサンで貧溶剤を洗浄除去して多孔質層3を形成した。
【0067】
〔流路となる溝の形成〕
上記多孔質層3が形成された基板1の上に、バーコーターを用いて組成物(X1)を塗工し、第一流路上流部10a、第一分岐部15、第一流路下流部10b、及び第二流路20と成すべき部分以外の部分にフォトマスクを通して紫外線ランプ2による紫外線照射を120秒行って組成物(X1)を中間層4となる半硬化塗膜と成し、非照射部分の未硬化の該組成物(X1)をエタノールで除去して、第一流路上流部10a、第一分岐部15、第一流路下流部10b、及び第二流路20となる溝を形成した。このとき、第一流路下流部10bと多孔質層3とが重なった部分の流路底面には多孔質層3が露出した状態となり、それ以外の部分における多孔質層3は組成物(X1)が充填されて硬化した。この部材を、基板側部材とした。
【0068】
〔プローブDNAの固定〕
(アミノ基の注入)
上記基板側部材の第一流路下流部10bの底面に露出した多孔質層3の上に5質量%ポリアリルアミン(分子量15000、日東紡株式会社製)水溶液を接触させ、60℃、1時間静置して、ポリアリルアミンのアミノ基の一部を多孔質層3のエポキシ基と反応させた後、流水で15分洗浄して、多孔質層へアミノ基を導入した。
【0069】
(アルデヒド基の導入)
上記アミノ基を導入した後、上記基板側部材をグルタルアルデヒド(和光純薬工業株式会社製)の5質量%水溶液中に浸漬し、50℃に2時間保つことによって、ポリアリルアミンのほぼ全てのアミノ基をグルタルアルデヒドの一方のアルデヒド基と反応させ、流水で10分洗浄して、多孔質層にアルデヒド基を導入した。
【0070】
(DNAの固定)
上記アルデヒド基を導入した多孔質層3に、5’末端にアミノ修飾した長さ20塩基のDNA(N0と称する、エスペックオリゴサービス株式会社製)の50μM水溶液を2μl滴下し、湿度100%、50℃にて15時間保つことにより、DNA(N0)の末端アミノ基を多孔質層のアルデヒド基と反応させた後、0.2質量%のテトラヒドロ硼酸ナトリウム水溶液中に入れ、5分間還元反応させ、次いで、0.2×SSC/0.1%SDS溶液でリンスし、次に、0.2×SSCと蒸留水でリンスした後自然乾燥して、多孔質層3にプローブDNAとしてDNA(N0)を固定した。(ここで、0.2×SSCは0.03M NaCl,3mMクエン酸ナトリウム水溶液であり、0.1%SDSは0.1質量%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液である。)
【0071】
〔カバー層5の固着〕
片面がコロナ放電処理された厚さ30μmの2軸延伸ポリプロピレンシート(二村化学株式会社製)を一時的な支持体(図示略)として、この上に組成物(X2)をバーコーターを用いて塗工し、紫外線ランプ1により紫外線を2秒照射し、該組成物の半硬化塗膜を形成し、カバー層側部材とした。
上記カバー層側部材を該基板側部材の中間層4に積層して密着させ、紫外線ランプ1により紫外線を40秒照射して完全に硬化させてカバー層5を固着した。次いで、該一時的な支持体を剥離除去して、毛細管状の第一流路上流部10a、第一分岐部15、第一流路下流部10b、及び第二流路20を有するマイクロ流体デバイス前駆体を形成した。
【0072】
〔その他の構造の形成〕
この後、上記カバー層5を貫通し第一流路上流部10aの端部、第一流路下流部10bの端部及び第二流路20の端部に於いて、ドリルを用いて直径0.5mmの孔41、42、43を開けて、それぞれ、第一流入口11、第一流出口12、第二流入口21を形成し、各口にルアーフィッティング51、52、53を接着して、クロマトグラフを有するマイクロ流体デバイスを得た。
本マイクロ流体デバイスの各部の寸法は、全体の寸法は75mm×25mm×1.145mmであり、各層の厚みは、基板1が1.0mm、接着層2は15μm、多孔質層3は3μm、多孔質層3を除く中間層3の厚みは30μm、カバー層は100μmであり、各流路の長さは、第一流路上流部10aが15mm、第二流路下流部10bが約130mm、第一流路下流部10bの底面の一部に露出している多孔質層3の長さは100mm、第二流路20が約25mmであり、第一流路10、第二流路の幅は共に100μmである。また、第一流路下流部10bの第一分岐部からの距離が約0〜1mmの範囲を、マイクロ流体デバイス上面から第一流路10を観察できる窓である検出部33とし、第一流路下流部10bの、多孔質層3形成部と第一流出口12の間の、多孔質層3がない部分を、マイクロ流体デバイス上面から第一流路10を観察できる窓であるクロマトグラフ検出部34とした。
【0073】
[試料導入試験]
〔料の調製〕
(プローブDNAと相補的なDNA試料)
5’末端を蛍光色素FITCにて修飾し、プローブDNA(N0)に相補的な塩基配列を持つ長さ20塩基のDNA(F0と称する)(エスペックオリゴサービス株式会社製、濃度500μM)を0.2×SSC溶液で希釈して、濃度0.3μMのクロマトグラフィー測定用試料F0とした。
【0074】
(プローブDNAと一塩基ミスマッチを有するDNA試料)
DNAが、プローブDNA(N0)と1塩基ミスマッチとなる塩基配列を有するDNA(F1と称する)であること以外は、試料F0と同様にして試料F1を調製した。
【0075】
〔試料F0のクロマトグラフィー〕
マイクロ流体デバイスを40℃に温度調節されたヒートブロック上に固定し、第一流出口12に第一ポンプとしてマイクロシリンジポンプ(図示略)を、また、第一流入口11に第二ポンプとしてマイクロシリンジポンプ(図示略)を接続した。配管は、内径500μmのポリ四フッ化エチレン(PTFE)製のチュ−ブを用いた。第二流入口には配管を接続せず、ルアーフィッティング53を試料の受液槽として使用した。
先ず、第一ポンプ、第二ポンプの双方から緩衝液(0.2×SSC)を2μl/分で吐出し、全流路中に緩衝液を充填した。第二流入口のルアーフィッティング53内に溜まった緩衝液はピペットで吸引除去した。
【0076】
(第一工程)
次いで、ルアーフィッティング53の内側にピペットで試料100μlを滴下し、第一ポンプを0.2μl/分で吸引方向に運転したところ、試料は第二流入口21から吸引され、第二流路20を経て第一分岐部15から第一流路下流部10bに移送された。
【0077】
(第二工程)
ニコン製蛍光実体顕微鏡(図示略)を用いて検出部33に於ける試料の蛍光を観察し、試料が第一分岐部15を通過し、第一流路下流部10bに約0.5mm入った時点で、第二ポンプを1.1μl/分で吐出方向に運転したところ、試料の代わりに移送用流体が第一流路上流部10aから第一流路下流部10bに流入した。そして、既に第一流路上流部10aに導入されていた長さ約0.5mmの試料は引き続き第一流路下流部10b中を下流方向に向かって移送された。一方、第二流路20中にあった試料は、今度は第二流路20中を第二流入口21方向に向かってゆっくりと押し出された。このようにして、極微量の試料が第一流路下流部10bにパルス状に注入された。
その後、両ポンプを1μl/分で運転し、第一流路下流部10bのクロマトグラフ検出部34においてニコン製蛍光実体顕微鏡を用いて蛍光強度変化を測定した。その結果、DNA(F0)試料は約105秒にピークを持つクロマトグラム、DNA(F1)試料が88秒にピークを持つ、テーリングのないクロマトグラムが得られた。また、該クロマトグラムのピーク面積と検量線から、試料注入量は約1.5nlと計算された。
【0078】
(実施例2)
本実施例では、本発明のマイクロ流体デバイスの第二の形態の製造方法と、それを用いた、本発明の微小試料の導入方法の第二態様を示す。
【0079】
[マイクロ流体デバイスの作製]
本実施例は、図2に示したように、マイクロ流体デバイスに、第三流入口31、第三流路上流部10a、第二分岐部16、第三流路下流部30b、第二流出口32を設け、第三流入口31と第二流出口32にそれぞれルアーフィッティング54、55を接着したこと、及び第二流入口21は該第二分岐部16に接続されていること、以外は実施例1と同様にして作製した。第三流路の幅は200μmとした。
【0080】
[試料導入方法]
シリンジポンプ(図示略)を第三流入口31のルアーフィッッティング54に接続したこと、試料をシリンジポンプから第三流路30に1mm/分の一定流速で流したこと、以外は、実施例1と同様の試料導入試験を行い、実施例1と同様の結果を得た。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】実施例1で作製した本発明のマイクロ流体デバイスの(a)平面図模式図および(b)側面図模式図である。
【図2】実施例2で作製した本発明のマイクロ流体デバイスの(a)平面図模式図および(b)側面図模式図である。
【符号の説明】
【0082】
1 基板
2 接着層
3 多孔質層
4 中間層
5 カバー層
10 第一流路
10a 第一流路上流部
10b 第一流路下流部
11 第一流入口
12 第一流入口
15 第一分岐部
16 第二分岐部
20 第二流路
21 第二流入口
30 第三流路
30a 第三流路上流部
30b 第三流路下流部
31 第三流入口
32 第二流出口
33 検出部
34 クロマトグラフ検出部
41、42、43、44、45 孔
51、52、53、54、55 ルアーフィッティング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ流体デバイスの微細な流路に微量の試料を定量的に導入する方法であって、
該マイクロ流体デバイスとして、第一流入口と、第一流出口と、該第一流入口と該第一流出口を結ぶ第一流路と、該第一流路の途上に設けられ該第一流路を第一流路上流部と第一流路下流部に分ける第一分岐部と、該第一分岐部において該第一流路から分岐している第二流路と、該第二流路の他端に設けられた第二流入口とを有するマイクロ流体デバイスを使用し、
(1)該第一流路内には移送用流体を満たし、該第二流路内には試料又は移送用流体を満たし、
該第一流入口に接続された第二ポンプから該移送用流体を該第一流路内に吐出させ、かつ、該第一流出口に接続された第一ポンプを、該第二ポンプの吐出速度より大なる速度で吸引方向に運転するか、該第一ポンプを停止状態とし、更に該第二ポンプを吸引方向に運転することにより、
該第一流路内に充填された該移送用流体を該第一ポンプ方向へ移送すると同時に、該第一ポンプの吐出速度と該第二ポンプの吸引速度との差により生じた負圧により、前記第二流入口から該第二流路を経て試料を該第一流路下流部へ移送する第一工程と、
(2)該試料が該第一流路下流部に所定量導入された時点で、該第一ポンプの吸引速度から該第二ポンプの吐出速度を差し引いた値がゼロ又は負となる流速で該第一ポンプ及び該第二ポンプを運転することにより、
該試料が、該第二流路から該第一分岐部を経て、該第一流路下流部に流入することを停止する第二工程、
を行うことを特徴とする微量試料の導入方法。
【請求項2】
前記第二流路又は前記第一流路下流部内の一部において、前記試料が通過したことを検出し、その情報により前記第一工程から前記第二工程に切り替える請求項1に記載の微量試料の導入方法。
【請求項3】
前記マイクロ流体デバイスが、前記第一流路下流部の途中にクロマトグラフィー用分離カラムが設けられたクロマトグラフィー用マイクロ流体デバイスであり、前記移送用流体がクロマトグラフィー用の展開液である請求項1又は2に記載の微量試料の導入方法。
【請求項4】
前記マイクロ流体デバイスが、更に、第三流入口と、第二流出口と、該第三流入口と該第二流出口を結ぶ第三流路と、該第三流路の途上に設けられ、該第三流路を第三流路上流部と第三流路下流部に分ける第二分岐部とを有し、
該第二分岐部には前記第二流入口が接続し、
該第三流路内を該第三流入口から第二流出口へと流れる前記試料の一部を、該第二分岐部に接続する該第二流入口から第二流路を経て第一流路下流部へ導入する請求項1、2又は3に記載の微量試料の導入方法。
【請求項5】
微細な流路の一部にクロマトグラフィー用の分離カラムが設けられたマイクロ流体デバイスであって、
該マイクロ流体デバイスが、第一流入口と、第一流出口と、該第一流入口と該第一流出口を結ぶ第一流路と、該第一流路の途上に設けられ、該第一流路を第一流路上流部と第一流路下流部に分ける第一分岐部と、該第一分岐部において該第一流路から分岐し、その途上にバルブやポンプが設けられていない第二流路と、該第二流路の他端に設けられた第二流入口と、該第二流入口に接続され、該マイクロ流体デバイス外部に開口した受液槽と、該第一流路下流部の途上に設けられたクロマトグラフィー用分離カラムとを有するマイクロ流体デバイス。
【請求項6】
更に、第三流入口と、第二流出口と、該第三流入口と該第二流出口を結ぶ第三流路と、該第三流路の途上に設けられ、該第三流路を第三流路上流部と第三流路下流部に分ける第二分岐部とを有し、該第二分岐部に前記第二流入口が接続されている請求項5に記載のマイクロ流体デバイス。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−218838(P2007−218838A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−42300(P2006−42300)
【出願日】平成18年2月20日(2006.2.20)
【出願人】(000173751)財団法人川村理化学研究所 (206)
【Fターム(参考)】