説明

情報処理装置及び情報処理装置の実行制御方法

【課題】必要最小限のHW量投資で障害解析性の向上と柔軟かつきめ細かいタイムアウト監視を行うこと
【解決手段】リクエスタ1-10〜1-1mは、リクエスト制御ブロック1-00に対してメモリアクセスリクエストを発行する。発行されたメモリアクセスリクエストは、調停/リプライ部1-20により調停され、選択されたリクエストを送受信部1-24に渡す際、IDテーブル1-21のエントリにエントリ情報を記録する。リプライ検出回路1-26は、メモリ制御部1-25において、送受信部1-24から受信したリクエストに対してリプライを返却する際に、タイムアウト監視部1-22に、リクエストに対応するエントリIDを持つリプライレディ信号を、リプライレディ通知部1-27を経由して通知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は情報処理装置及び情報処理装置の実行制御方法に係り、特に、メモリアクセスを伴うハードウェアレベルでの情報処理要求について、その実行時間のタイムアウトの監視を最適化することができる情報処理装置及び情報処理装置の実行制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、情報処理装置の実行制御時におけるタイムアウト監視方法は、大きく2種類の方法に分類される。
その1つ目の方法は、上位部位(以下、「リクエスタ」と呼称する)から送出される実行要求(以下「リクエスト」と呼称する)の識別情報を管理するIDテーブルの、各エントリ毎に検出タイマーを搭載する方法である。
しかし、この方法では、個々のリクエストのタイムアウトをきめ細かく検出できる反面、監視時間が長くなる程、HW量や遅延が増加し、大規模な情報処理装置では現実的に搭載可能な機能とはなり得ない。
【0003】
また、その2つ目の方法は、IDテーブルに登録されたか、若しくはIDテーブルから発行された最新のリクエストに対して、タイムアウト監視を行う方法である。この方法の場合は、投資するHW量は少なくなる反面、最新のリクエスト動作に依存してタイムアウトを検出するので、先行するリクエストの詰まりが原因の場合など時間関係に対する分解能が低く解析性が悪くなる。また、タイムアウト検出の柔軟性に欠けるという課題がある。
【0004】
この分野の公知技術として、例えば、特許文献1には、上位システムからの命令を複数のモジュールを介して実行処理するシステムにおける命令実行のタイムアウト検出システムで、どのモジュールでタイムアウトが起きるかを上位に報告する技術が開示されている。具体的には、各モジュールで実行に許される時間をOS機能によるタイムアウト監視サービスコールと、各モジュールで実行に許容時間をタイムアウト監視サービスコールにより監視し、許容時間を超える場合はその旨を上位システムに報告する残余時間監視手段と、残余時間監視手段が正常に機能しない場合にその異常をOSとは独立したハードウェアによる時間管理手段を用いて検出する異常検出手段とを設け、上位からの命令の実行に許容最大時間内に残余時間監視手段が前記上位システムに報告しないときは異常検出手段が異常をOSに通知して動作を中止させる。
【0005】
また、特許文献2には、オフライン状態の周辺装置に対する接続状況の確認を行うことによる、オンライン状態の周辺装置に対する入出力処理性能低下を防ぐホストアダプタのSCSIインタフェース制御装置の技術が開示されている。具体的には、セレクション・ディレイ監視時間選択回路を有し、セレクション成功済みの周辺装置に対するセレクション・タイムアウト・ディレイ時間とセレクション失敗の周辺装置に対するセレクション・タイムアウト・ディレイ時間の設定を可能とし、セレクション成功済みの周辺装置に対するSCSIコマンドのセレクション・タイムアウト・ディレイ時間は、ANSIのSCSI規格に則った250ミリ秒以上で設定し、セレクション失敗の周辺装置に対するセレクショ・タイムアウト・ディレイ時間は周辺装置がセレクション可能な時間まで短く設定するという動作を実行する。
【0006】
また、特許文献3には、クライアント/サーバモデルのシステムに関し、レスポンスを低下させることなく、複数のクライアントからのリクエストを処理することが可能なサーバ内の障害検出方式を提供する技術が開示されている。具体的には、サービススレッドが、クライアントからのリクエストを受信すると、要求された処理のタイムアウト時間と自分のスレッドIDをタイムアウト表に書込む。リクエストの処理を終了すると、タイムアウト表内のタイムアウト時間及びスレッドIDを消去する。監視スレッドは、定期的にタイムアウト表からタイムアウト時間を読み出して、現在の時刻と比較することにより、設定されたタイムアウト時間までに処理を終了していないサービススレッドを検出する。タイムアウトしたサービススレッドを発見した場合には、該サービススレッドを強制的に終了させて、クライアントにエラーを通知する。
【0007】
さらに、特許文献4には、システム監視機構を有する処理装置に関し、CPU監視の起動・停止が柔軟な非監視プログラムで行うことができ、CPU監視異常時に異常原因をハード/ファームの識別およびハードウェアのどの部分で異常であったかを特定でき、特にCPU障害(特に電源投入直後やリセット直後に動作不良を起こす障害)をソフトハングではなく異常判断できる処理装置の技術が開示されている。具体的には、監視対象装置の監視対象項目を設定する手段と、前記監視対象項目の監視時間を設定する手段と、設定された前記監視対象項目について、前記監視対象装置によって当該監視対象項目が前記監視時間内で処理されるかを監視する手段とが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−091803号公報
【特許文献2】特開2002−373122号公報
【特許文献3】特開平08−263325号公報
【特許文献4】特開平11−085569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記背景技術で述べた従来の情報処理装置のタイムアウト監視方法にあっては、前述のとおり、大別して2種類の方法に分類されている。その第1の方法は、上位装置等から要求されたリクエストの識別情報を管理するIDテーブルの、各エントリ毎に検出タイマーを搭載する方法である。
しかし、この方法では、個々のリクエストのタイムアウトをきめ細かく検出することができる反面、監視時間が長くなる程、HW量や遅延が増加し、大規模な情報処理装置では現実的に搭載可能な機能とはなり得ないという問題点が有る。
また、上記タイムアウト監視方法の2つ目の方法は、IDテーブルに登録されたか、若しくはIDテーブルから発行された最新のリクエストに対して、タイムアウト監視を行う方法である。
【0010】
しかし、この方法では、投資するHW量は少なくなる反面、最新のリクエスト動作に依存してタイムアウトを検出するので、先行するリクエストの詰まりが原因の場合など時間関係に対する分解能が低く解析性が悪くなるといった問題点や、タイムアウト検出の柔軟性に欠けるという問題点がある。
そこで、本発明の課題は、情報処理装置のタイムアウト監視手段として、
(1) 各リクエストの識別情報を管理するIDテーブル内のリクエスト種別に応じてタイムアウト時間を指定可能とすることと、
(2) 各リクエストの発行後経過時間とリクエスト種別とに応じたタイムアウト検出を可能にすることと、
(3) リクエスト種別により、レイテンシタイマからの監視時間を選択する時間選択手段を備えること、
により、リクエストタイムアウトの解析性の向上と、タイムアウト監視の柔軟性の向上とを共に実現することであった。
【0011】
これに対し、前述の特許文献1〜4の各技術には、本発明の構成要件を部分的には備えるものがあっても、全面的な比較では相違点を有する。
本発明の目的は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、リクエストを識別するIDテーブルを用いたタイムアウト監視動作の実行を可能にして、必要最小限のHW量投資で障害解析性の向上と柔軟かつきめ細かいタイムアウト監視とを行うことができる情報処理装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、リクエスト種別に応じたタイムアウト時間を指定可能にして、各リクエストの発行後の経過時間とリクエスト種別とに応じたタイムアウト検出を可能にすることで、滞在するリクエストの時間関係や依存性を把握することができる情報処理装置の実行制御方法を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、先行するリクエストの詰まりが原因の場合などに発生するリクエストのタイムアウト検出の解析性を向上させると共に、検出すべきリクエストタイムアウト時間をリクエスト毎に可変にすることを可能にして、処理に柔軟性を備えると共に、タイムアウト検出処理のきめ細かさを向上させることができる情報処理装置の実行制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明に係る情報処理装置は、メモリアクセスを伴う複数のリクエストを発行する手段と、発行された前記複数のリクエストの各々を調停して選択する手段と、前記発行された複数のリクエストの各々に対応した、リクエスト元ID情報とリクエスト種別とを含む管理情報を、テーブル内のエントリ情報として登録する手段と、前記複数のリクエストの各々に対応した前記エントリ内に、前記管理情報の少なくとも1つとして、前記リクエストのタイムアウトを監視するための経過時間カウント領域を設ける手段と、前記発行された複数のリクエストの各々について、対応するリプライを返却するまでの間の経過時間を、前記経過時間カウント領域を使用して計時する手段と、前記リクエストに対応するリプライ要求受信時に、前記テーブルを参照してリプライ先を判断する手段と、前記経過時間カウント領域がオーバーフローした時にタイムウトを通知する手段と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る情報処理装置の実行制御方法は、メモリアクセスを伴う複数のリクエストを発行するステップと、発行された前記複数のリクエストの各々を調停して選択するステップと、前記発行された複数のリクエストの各々に対応した、リクエスト元ID情報とリクエスト種別とを含む管理情報を、テーブル内のエントリ情報として登録するステップと、前記複数のリクエストの各々に対応した前記エントリ内に、前記管理情報の少なくとも1つとして、前記リクエストのタイムアウトを監視するための経過時間カウント領域を設けるステップと、前記発行された複数のリクエストの各々について、対応するリプライを返却するまでの間の経過時間を、前記経過時間カウント領域を使用して計時するステップと、前記リクエストに対応するリプライ要求受信時に、前記テーブルを参照してリプライ先を判断するステップと、前記経過時間カウント領域がオーバーフローした時にタイムウトを通知するステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明のタイトルによれば、必要最小限のHW量投資で、滞在するリクエストの時間関係や依存性を把握することができるので、先行するリクエストの詰まりが原因の場合などに発生するリクエストタイムアウトの障害解析性を向上させる効果が有り、また、タイムアウトの監視時間を、リクエスト毎に対応して設定することでタイムアウト監視の柔軟性や、きめ細かさを向上させることができる効果が有る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る情報処理装置を含むシステムの全体構成を示す構成図である。
【図2】IDテーブル1-21の構成を示す構成図である。
【図3】IDテーブル1-21のエントリ構成と、各エントリに登録されるエントリ情報とを示す構成図である。
【図4】タイムアウト監視部1-22が有する監視回路(カウンタ)の遷移状態を示す説明図であり、図4(a)は、サンプル時間が1〔s〕、図4(b)は、サンプル時間が500〔ms〕の場合の監視回路(カウンタ)の遷移状態をそれぞれ示すものである。
【図5】タイムアウト監視部1-22が有する監視回路(カウンタ)のタイムアウト観測例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る情報処理装置は、発行されたリクエストを記録するIDテーブルを備え、該テーブルを参照するタイムアウト監視方法を採用することで、必要最小限のHW量投資で障害解析性の向上と柔軟かつきめ細かいタイムアウト監視機能を実現する。具体的にはリクエスト種別に応じたタイムアウト時間を指定可能にし、各リクエストの発行後経過時間とリクエスト種別に応じたタイムアウト検出を可能にしている。
より具体的には、リクエスタからのリクエスト処理は、調停/リプライ部を経て送受信部よりメモリ制御部に発行されるが、応答するリクエストの管理にIDテーブルを使用する。
【0018】
このIDテーブルには、調停/リプライ部が、発行されたリクエストに対応してリクエスト元IDやリクエスト種別等を記録する。また、調停/リプライ部は、メモリ制御部に対するID付け替えを行い、メモリ制御部へリクエストを送出する。
メモリリクエストのリプライ受信時には、IDテーブルを索引してリクエスト元IDに付け戻し、リプライ先を判断して、リプライ部によりリクエスタにリプライ返却する。
IDテーブルに対する動作は、一般的にリプライ順序が保証されないことを考慮し、空き番選択で登録処理する。なお、このIDテーブルには、リクエスト種別に応じたタイムアウト監視機構を実装する。
リクエスト受け付け時、リクエスト元IDとリクエスト種別とをIDテーブルに登録し、有効ビットをセットする。この時、IDテーブルのエントリ数より十分に大きな値を持つオーダービット( 登録順序識別子) の登録と、検出フラグを含むタイムアウト監視部の初期化とを行う。
【0019】
オーダービットは、リクエスト登録毎に昇順更新される。タイムアウト監視には唯一搭載されるフリーランカウントのレイテンシタイマを使用し、各エントリ毎、リクエスト種別により指定された監視サンプル時間(例えば1秒とか500ミリ秒)が経過したならば、タイムアウト監視部に反映させる。
タイムアウト監視部は、監視サンプル時間毎に更新され、監視部のオーバーフローにより検出フラグを点灯させ、タイムアウトを通知する。
レイテンシタイマは通常動作時にリセットされないフリーランカウンタを各エントリで共用することで、各エントリの監視回路への通知タイミングに統一性を持たせることができる。
【0020】
また、タイムアウト監視部は、各IDテーブルに登録したリクエストのリプライが返却されると、有効ビットと共に監視動作を停止させる。この機能により、リクエスト種別に応じたタイムアウト監視時間を指定可能とし、各リクエストの発行後経過時間の記録と、リクエスト種別に応じたタイムアウト検出とを可能にする。このようにして、滞在するリクエストの時間関係や依存性を把握することができるようにしている。
なお、この実施形態に係る情報処理装置におけるリクエストのタイムアウト監視は、リクエスト経路の時間監視とリプライ経路の時間監視とを独立して行うことができる。
【0021】
以下、本発明の情報処理装置及び情報処理装置の実行制御方法の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る情報処理装置を含むシステムの全体構成を示す構成図である。
同図において、本実施形態の情報処理装置は、リクエストを発行する複数のリクエスタ1-10〜1-1mと、これらのリクエストを受け付けるリクエスト制御ブロック1-00と、リクエストの発行先となるメモリ制御部1-25と、リプライ検出回路1-26と、リプライレディ通知部1-27と、を備える。
リクエスト制御ブロック1-00は、調停/リプライ部1-20と、IDテーブル1-21と、IDテーブル1-21内に実装されるタイムアウト監視部1-22と、レイテンシタイマ1-23と、送受信部1-24と、を備える。
【0022】
以下、図1を参照しながら、本実施形態の情報処理装置の動作について説明する。
まず、メモリリクエストの動作に関して説明すると、図1の複数からなるリクエスタ1-10〜1-1mは、リクエスト制御ブロック1-00に対してメモリアクセスリクエストを発行する。
発行されたメモリアクセスリクエストは、調停/リプライ部1-20により調停され、選択されたリクエストを送受信部1-24に渡す際、IDテーブル1-21のエントリにエントリ情報を登録する。
リプライ検出回路1-26は、メモリ制御部1-25において、送受信部1-24から受信したリクエストに対してリプライを返却する際に、タイムアウト監視部1-22に、リクエストに対応するエントリIDを持つリプライレディ信号を、リプライレディ通知部1-27を経由して通知する。
【0023】
タイムアウト監視部1-22は、リプライレディ信号を受信すると、該当エントリIDに対応する監視回路3-05(図3参照)の情報をリセットしてリプライ識別子をセットする。該監視回路はリセットされた後もリプライが返却されるまで監視動作を継続する。
このように構成したことにより、タイムアウトの監視を、リクエスト経路、リプライ経路と独立させて実行することが可能となる。
また、監視回路3-05(図3参照)をリセットせずにリプライ識別子をセットする制御を行うようにすると、タイムアウト検出した時にリクエストが何処まで仕掛かっていたかを把握することができる。
その結果、リクエストタイムアウトの解析性と、タイムアウト監視の柔軟性とを一層向上させることができる。
【0024】
図2は、IDテーブル1-21の構成を示す構成図である。
同図において、IDテーブル1-21は、n 個のエントリのエントリ情報を保持可能であり、エントリID=000〜n に対応してn 個のID管理情報部2-00-000〜2-00-nと、n 個のタイムアウト監視部2-01-000〜2-01-nと、n個の時間選択回路2-02-000〜2-02-nと、から構成される。レイテンシタイマ2-03の構成は、レイテンシタイマ1-23の構成と同じである。
【0025】
図3は、IDテーブル1-21のエントリ構成と、各エントリに登録されるエントリ情報とを示す構成図である。
同図に示すように、IDテーブル1-21の各エントリに登録されるエントリ情報は、有効ビット3-00と、登録ID(リクエスト元ID)3-01と、リクエスト種別3-02と、タイムアウト監視部1-22の要素であるオーダー3-03と、タイムアウト検出フラグ3-04と、監視回路3-05と、登録されたリクエスト種別3-02によりレイテンシタイマ3-06からの時間選択を行う時間選択回路3-07、とで構成される。
図3に示すレイテンシタイマ3-06は、図1に示すレイテンシタイマ1-23と同じ構成である。
【0026】
調停/リプライ部1-20で選択されたリクエストは、IDテーブル1-21の任意のエントリに、該リクエストが保持する登録ID3-01と、リクエスト種別3-02とが記録される。また、有効ビット3-00がセットされ、登録ID3-01の代わりに、記録したエントリに対応するエントリIDが付与されて送受信部1-24に送出される。
送受信部1-24は、メモリ制御部1-25にリクエストを発行し、メモリアクセス実施後のリプライを送受信部1-24に返却する。
なお、送受信部1-24は、リプライを調停/リプライ部1-20に渡す際、持ち回ったエントリIDでもってIDテーブル1-21を検索し、該リプライに対して登録ID3-01の付け戻しを行う。登録ID3-01を付け戻されたリプライは、調停/リプライ部1-20を経て発行元のリクエスタに返却され、リクエスト処理が完了する。
【0027】
次に、IDテーブル1-21を用いたタイムアウト監視動作について説明する。
リクエスタ1-10〜1-1mからのリクエストの記録と、その処理時に使用されるIDテーブル1-21は、一般的には、リプライ順序が保証されないことを考慮し、空き番選択で登録動作が行われる。しかし、本実施形態に係る情報処理装置では、このIDテーブル1-21に、リクエスト種別に応じたタイムアウト監視機構を実装する。
リクエストがIDテーブル1-21に登録ID3-01、リクエスト種別3-02を記録する際、エントリの有効ビット3-00がセットされ、同時にリクエスト登録順序を識別可能にするオーダー3-03のセット及び検出フラグ3-04と監視回路3-05の初期化を行う。
オーダー3-03は、リクエストを記録する度に、昇順更新された値が記録され、IDテーブル1-21内のリクエストの順序関係を記録する。
【0028】
監視回路3-05は、エントリ情報としてレイテンシタイマ3-06の動作を監視させる指示情報を記載するものであり、ここに有効ビット3-00がセットされている間、タイムアウト監視部1-22(図1)が、フリーランで動くレイテンシタイマ3-06を監視し、リクエスト種別3-02により決定される規則に従って、時間選択回路3-07がレイテンシタイマ3-06の監視時間を選択する。
レイテンシタイマ3-06は、タイムアウト監視のために、リクエストに対応して唯一つだけ搭載される。
監視回路3-05は、時間選択回路3-07が選択した選択時間毎に更新される小ないビット数のカウンタを有する。
【0029】
ここで選択される監視時間は、監視サンプリング時間(例えば1秒とか500ミリ秒等)であり、監視回路3-05のエントリ情報は、このサンプリング時間が経過する毎に更新される。監視回路がオーバーフローした時には、検出フラグ3-04をセットしてタイムアウトを検出する。
レイテンシタイマ3-06は、通常動作時にリセットされないフリーランカウンタとし、これをIDテーブル1-21の各エントリで共用することで、各エントリに設定された監視回路3-05の更新タイミングに統一性を持たせることができる。
前述の監視回路3-05は、IDテーブル1-21の各エントリに記録したリクエストのリプライが返却されたときに、該当するエントリの有効ビット3-00をリセットする。これにより、監視動作が停止される。
【0030】
このように構成したことにより、リクエスト種別に応じたタイムアウト時間の指定を可能とし、各リクエストの発行順序の記録及びリクエスト種別に応じた経過時間監視が可能となる。さらには、タイムアウト検出を可能にすることにより、本装置内に滞在するリクエストの時間関係や依存性を把握することができるようになる。
以下、上記の動作を分かり易くするために、監視回路3-05と時間選択回路3-07によるタイムアウト監視処理の具体例を説明する。
【0031】
図4は、タイムアウト監視部1-22が有する監視回路(カウンタ)の遷移状態を示す説明図であり、図4(a)は、サンプル時間が1〔s〕、図4(b)は、サンプル時間が500〔ms〕の場合の監視回路(カウンタ)の遷移状態をそれぞれ示すものである。
図4(a)は、監視回路4-00(カウンタ)と、時間選択回路4-01(時間選択回路3-07の1実施例)とを掲載し、図3に示す監視回路3-07(時間選択回路)の1〔s〕毎のサンプルで動作する様子を示している。
時間選択回路4-01からはリクエスト種別により、1〔s〕毎のサンプリング情報が監視回路4-00(カウンタ)に反映され、該回路(カウンタ)は、1〔s〕経過で1、更に1〔s〕経過(計2〔s〕経過)で2進数の10、更に1〔s〕経過(計3〔s〕経過)で2進数の11、・・・と更新されていき、監視回路3-07が有する該回路(カウンタ)のカウント可能分が更新されるとタイムアウトとなる。
【0032】
同様に、図4(b)は、監視回路4-02(カウンタ)と、時間選択回路4-03(時間選択回路3-07の他の1実施例)とを掲載し、図3に示す監視回路3-07(時間選択回路)の500〔ms〕毎のサンプルで動作する様子を示している。
時間選択回路4-03からはリクエスト種別により、500〔ms〕毎のサンプリング情報が監視回路4-02(カウンタ)に反映され、該回路(カウンタ)は、500〔ms〕経過で2進数の1、更に500〔ms〕経過( 計1000〔ms〕経過)で2進数の10、更に500〔ms〕経過(計1500〔ms〕経過)で2進数の11、・・・と更新されていき、監視回路3-07が有する該回路(カウンタ)のカウント可能分が更新されるとタイムアウトとなる。
【0033】
図5は、タイムアウト監視部1-22が有する監視回路(カウンタ)のタイムアウト観測例を示す説明図である。
同図は、各エントリのテーブル内の順序と、処理(即ち、リクエストの記録処理)のイメージとを示し、IDテーブル1-21が8エントリを有する。
また、各エントリID=000〜007に登録されたリクエスト種別によるタイムアウト時間選択の指示が5-00〜5-07である場合を示している。
同図は、また、リプライの返却順序が5-40通りに遷移した時の各エントリの検出フラグの状態5-20〜5-27と、5ビットで構成される監視回路の状態5-30〜5-37とを示している。
【0034】
観測される状態は以下の通りである。
リクエスト登録順序はオーダーと処理イメージ5-40に示され、エントリID=000、001、002 〜007の順序でリクエストがそれぞれのオーダー0、1〜7で記録されている。
その後、エントリID=002、005 、006 とリプライ処理される。このリプライ処理で空いたエントリID=002のエントリにはオーダー8 で、エントリID=005のエントリにはオーダー9で、エントリID=6のエントリにはオーダー10で、それぞれ後続のリクエストが登録されている。
この時の各エントリのリクエスト種別によるタイムアウト時間選択指示5-00〜5-07は、エントリID=000、001、003、006が、1〔s〕のサンプリングを指示し、エントリID=002、004 、005 、007が、それぞれ500〔ms〕のサンプリングを指示している。
また、各エントリの監視回路5-30〜5-37には、滞在時間の経過状況が記録されている。
【0035】
例えば、エントリID=000に対応する監視回路5-30の状態は、1〔s〕のサンプリング指定で11000となり、換算すると、最大観測時間32〔s〕の内、24〔s〕が経過した状態となる。
同様に、エントリID=007に対応する監視回路5-37の状態は、500〔ms〕のサンプリング指示で10000となり、換算すると最大観測時間16〔s〕の内、8〔s〕が経過した状態となる。
そして、500〔ms〕のサンプリング指定のエントリID=004が、1〔s〕のサンプリング指定で先行するエントリID=000、001、003よりも早く監視回路5-24においてオーバーフローを生じる。また、16〔s〕経過によるタイムアウトによって検出フラグ5-24を1にセットしている。
【0036】
このように、或るエントリがタイムアウトを検出した場合に、IDテーブル1-21の各エントリの状態を参照することで、IDテーブル1-21に滞在する仕掛かり中のリクエストの滞在時間と、時間関係や依存関係とを把握することが可能となる。
本発明は、以上の実施形態に示すように、必要最小限のHW量投資で、滞在するリクエストの時間関係や依存性を把握することにより、先行するリクエストの詰まりが原因の場合などに発生するリクエストタイムアウトの障害解析性を向上させ、また、タイムアウトの監視時間を、リクエスト毎に対応して設定することでタイムアウト監視の柔軟性や、きめ細かさを向上させることができる効果が有る。
【0037】
より具体的には、リクエスト種別に応じたタイムアウト時間を指定可能とし、各リクエストの発行後経過時間とリクエスト種別に応じたタイムアウト検出とを可能にすることで、滞在するリクエストの時間関係や依存性を把握することができる効果が有る。
また、これにより、先行するリクエストの詰まりが原因の場合などに発生するリクエストタイムアウトの解析性を向上させ、また、タイムアウト検出をリクエスト毎可変にすることで、タイムアウト監視の柔軟性や、きめ細かさを向上させるという効果が有る。
【0038】
この実施形態に係る情報処理装置は、前述のとおり、その特徴的な機能として、リクエスト経路の時間監視動作と、リプライ経路の時間監視動作とを独立させることができる。
以下、この点についてさらに詳細に説明する。
リプライレディ識別子3-06(図3)は、IDテーブル1-21にリクエストのエントリ情報を登録する際に初期化される。送受信部1-24からメモリ制御部1-25にリクエストが発行されるとメモリアクセスを実施する。
このメモリアクセスを伴う処理が完了し、リプライを返却する時に、リプライ検出回路1-26はIDテーブル1-21内のタイムアウト監視部1-22に処理したリクエストに対応するエントリIDを持ったリプライレディ信号をリプライレディ通知手段1-27を経由して通知する。
タイムアウト監視部1-22は、このリプライレディ信号を受信すると、該当エントリIDに対応する監視回路3-05をリセットし、同時に、リプライ識別子3-06をセットする。
【0039】
監視回路3-05は、リセットされた後も該リプライが返却されるまで監視動作を継続する。
タイムアウト監視部1-22は、リプライ識別子3-06が初期状態の時にタイムアウト検出すると、リクエスト経路でタイムアウトを検出したと判断する。また、タイムアウト監視部1-22は、リプライ識別子3-06がセット状態の時にタイムアウトを検出すると、リプライ経路でタイムアウト検出したと判断する。
この場合、タイムアウト監視は、リクエスト経路、リプライ経路を独立して監視することができる。
また、タイムアウト監視部1-22がリプライレディ信号を受信した時、該当エントリIDに対応する監視回路3-05をリセットしないで、単にリプライ識別子3-06だけをセットするように制御方法を変えることも可能である。この場合の制御では、監視回路3-05がリセットされた後もリプライが返却されるまで監視動作を継続すると、リクエスト発行からリプライ受信までの一連の処理に対して、タイムアウト検出したリクエストが何処まで仕掛かっていた状態かを把握することができる。
【0040】
なお、拡張機能として、リプライ検出回路1-26、リプライレディ通知手段1-27、及びリプライ識別子3-06による本実施形態と同等の効果を有する機能を、リクエストの発行から、リプライ受信までの区間の、任意の複数箇所に設けることにより、一層きめ細かなタイムアウト監視を行うことも可能となる。
【符号の説明】
【0041】
1-00 リクエスト制御ブロック
1-10〜1-1m リクエスタ
1-20 調停/リプライ部
1-21 IDテーブル
1-22 タイムアウト監視部
1-23 レイテンシタイマ
1-24 送受信部
1-25 メモリ制御部
1-26 リプライ検出回路
1-27 リプライレディ通知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メモリアクセスを伴う複数のリクエストを発行する手段と、
発行された前記複数のリクエストの各々を調停して選択する手段と、
前記発行された複数のリクエストの各々に対応した、リクエスト元ID情報とリクエスト種別とを含む管理情報を、テーブル内のエントリ情報として登録する手段と、
前記複数のリクエストの各々に対応した前記エントリ内に、前記管理情報の少なくとも1つとして、前記リクエストのタイムアウトを監視するための経過時間カウント領域を設ける手段と、
前記発行された複数のリクエストの各々について、対応するリプライを返却するまでの間の経過時間を、前記経過時間カウント領域を使用して計時する手段と、
前記リクエストに対応するリプライ要求受信時に、前記テーブルを参照してリプライ先を判断する手段と、
前記経過時間カウント領域がオーバーフローした時にタイムウトを通知する手段と、
を備えたことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記経過時間カウント領域がカウントするカウント数の初期値を、前記エントリ情報が登録された時点で0に設定し、以後、所定の時間間隔が経過する毎に1を加算することを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記所定の時間間隔を、前記リクエスト種別に対応して設定することを特徴とする請求項2記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記テーブル内のエントリに対して空き領域管理を実施することを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記複数のリクエストの各々に対応した前記エントリ内に、前記管理情報の少なくとも1つとして、リプライ返却時にセットするリプライ識別子領域を設け、リプライ返却時に、前記リプライ識別子をセットすると共に前記経過時間カウント領域を一旦リセットしてから計時を継続することを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記複数のリクエストの各々に対応した前記エントリ内に、前記管理情報の少なくとも1つとして、リプライ返却時にセットするリプライ識別子領域を設け、リプライ返却時に、前記リプライ識別子をセットすると共に前記経過時間カウント領域の計時をそのまま継続することを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項7】
メモリアクセスを伴う複数のリクエストを発行するステップと、
発行された前記複数のリクエストの各々を調停して選択するステップと、
前記発行された複数のリクエストの各々に対応した、リクエスト元ID情報とリクエスト種別とを含む管理情報を、テーブル内のエントリ情報として登録するステップと、
前記複数のリクエストの各々に対応した前記エントリ内に、前記管理情報の少なくとも1つとして、前記リクエストのタイムアウトを監視するための経過時間カウント領域を設けるステップと、
前記発行された複数のリクエストの各々について、対応するリプライを返却するまでの間の経過時間を、前記経過時間カウント領域を使用して計時するステップと、
前記リクエストに対応するリプライ要求受信時に、前記テーブルを参照してリプライ先を判断するステップと、
前記経過時間カウント領域がオーバーフローした時にタイムウトを通知するステップと、
を有することを特徴とする情報処理装置の実行制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−248759(P2011−248759A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−123252(P2010−123252)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000168285)エヌイーシーコンピュータテクノ株式会社 (572)
【Fターム(参考)】