説明

情報発行システム及び情報発行方法

【課題】データ発行までの手順を簡略化することができ、通信料も抑えることができる情報発行システム及び情報発行方法を提供する。
【解決手段】情報発行システム100は、FeliCaチップ10と、FeliCaチップ10が搭載された携帯電話機20と、ICキャッシュカード30から口座情報などの会員情報を読み取る読取手段421と、読取手段421が読み取った情報をFeliCaチップ10に書き込む書込手段422とを備え、携帯アプリダウンロードサーバ61からダウンロードしたエリア確保用アプリによって、FeliCaチップ10に書き込み領域を確保し、ICキャッシュカード30から読み取った口座情報などの会員情報に基づいて生成された発行データをFeliCaチップ10の書き込み領域にリーダライタ42で直接書き込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICチップ搭載型携帯電話機を取り扱う情報発行システム及び情報発行方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のICチップ搭載型携帯電話機には、モバイルFeliCa(FeliCaチップが搭載された携帯電話機;「FELICA」は登録商標)があり、このモバイルFeliCaにデータを書き込む際には、インターネットデータセンター内にデータ発行用のサーバを準備し、ネットワーク経由でデータの発行処理をしていた(例えば、特許文献1)。
【0003】
図5は、従来の発行処理の流れを示す図である。なお、以下の括弧内の番号は、図中の丸の番号に対応している。
(1)利用者1は、申込み書2に必要事項を記入し、その申込み書2を持参して、申込みカウンター3に行く。
(2)申込受付者4は、イシュアホスト(ICカード発行/管理ホスト)80に与信審査の要求を行う。
(3)オペレータ5は、イシュアホスト80の会員ホスト(会員データベース)81及び審査ホスト82を利用して与信審査を行い、与信の確認がとれた場合には、カード製造会社6に発券データを送信する。
【0004】
(4)カード製造会社6では、発行データ生成システム7によって、台紙用,カード用及びモバイル用の発行データが生成される。生成されたデータのうち、台紙データ及びカードデータは、製造工場8に送信され、モバイルデータは、インターネットデータセンター60に送信される。
製造工場8では、台紙データ及びカードデータを元に、携帯アプリダウンロードURL,ユーザID及びパスワードを台紙に印字して郵送物が制作されるとともに、キャッシュカードやクレジットカードなどの親カード30が製造/発行される。
インターネットデータセンター60では、モバイルデータを元に、書き込み領域(FeliCaエリア)を確保するための携帯アプリ(以下、エリア確保用アプリという。)及び個人情報などのパーソナライズ情報が準備される。
(5)台紙及び親カード30は、封入・封緘され、封書によって利用者1に郵送される。
【0005】
(6)利用者1は、台紙に印字されているURLに基づいて、携帯アプリダウンロードサーバ61にアクセスし、モバイルFeliCa20にエリア確保用アプリをダウンロードする。
(7)ダウンロードされたエリア確保用アプリは、パーソナライズ情報ダウンロードサーバ62にアクセスし、パーソナライズ情報をダウンロードする。
(8)ダウンロードされたエリア確保用アプリは、管理サーバ70にアクセスしFeliCaチップへのリモート発行要求を行い、利用者1のFeliCa鍵が登録され、その応答によってFeliCaチップに書き込み領域が確保される。なお、管理サーバ70には、カード製造会社6から事前登録申請データが送信されている。
【0006】
(9)利用者1は、モバイルFeliCa20を持って買い物に行き、買うものが決まったら、レジ端末9に行き、レジ端末9のリーダライタにモバイルFeliCa20をかざす。
(10)レジ端末9は、イシュアホスト80に与信審査の要求を行い、与信の確認がとれた場合には、支払いを許可する。
(11)レジ端末9は、モバイルFeliCa20の与信枠(利用限度額)をチャージする。
従来は、このような流れで、モバイルFeliCa20によるキャッシングが実現していた。
【0007】
しかし、従来の方法では、サービスの申込みをしてから発行完了までの間に、登録手続きや審査があり、時間が掛かっていた。
また、利用者1に対し発行準備完了の案内や、サーバーアクセス用のID/パスワードをメールや封書を利用して通知する必要があり、手間となっていた。
さらに、モバイルFeliCa20にデータを書き込むためには、その都度、携帯アプリを事前にダウンロードする必要があった。
さらにまた、モバイルFeliCa20に書き込むためのデータを生成するシステムを構築する必要があった。
一方、FeliCaチップには、管理サーバ70を介さないとデータを書き込むことができないので、管理サーバ70を介してデータを書き込むことになるが、その際新たな通信料が発生してしまい、利用者1にとっては負担となっていた。
【特許文献1】特開2004−102698号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、データ発行までの手順を簡略化することができ、通信料も抑えることができる情報発行システム及び情報発行方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施例に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
請求項1の発明は、書き込み領域が確保されたICチップ(10)と、前記ICチップ(10)が搭載された携帯電話機(20)と、情報記録媒体(30)から所定の情報を読み取る読取手段(421)と、前記読取手段(421)が読み取った所定の情報を前記ICチップ(10)の書き込み領域に書き込む書込手段(422)と、を備える情報発行システム(100)である。
請求項2の発明は、請求項1に記載の情報発行システム(100)において、前記ICチップ(10)の書き込み領域は、携帯アプリダウンロンドサーバ(61)からダウンロードされたアプリケーションが書込領域管理サーバ(70)にアクセスしその応答によって確保されること、を特徴とする情報発行システム(100)である。
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の情報発行システム(100)において、前記情報記録媒体(30)の利用者の認証を行う認証手段(41)を備えること、を特徴とする情報発行システム(100)である。
請求項4の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の情報発行システム(100)において、前記所定の情報に基づいて、発行データを生成する発行データ生成手段を備えること、を特徴とする情報発行システム(100)である。
請求項5の発明は、携帯電話機(20)に搭載されたICチップ(10)の書き込み領域を確保する第1の工程と、情報記録媒体(30)から所定の情報を読み取り、その所定の情報を前記ICチップ(10)の書き込み領域に書き込む第2の工程と、を備える情報発行方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、書き込み領域が確保されたICチップに、情報記録媒体から読み取った所定の情報を直接書き込むので、データ発行時には、管理サーバなどを経由する必要がなく、発行手順を簡略化することができる。
また、データ発行時には、管理サーバなどを経由しないので、利用者にとっては、通信料がかからないメリットがある。
一方、携帯電話機に搭載されたICチップの書き込み領域を確保し、情報記録媒体から読み取った所定の情報を書き込み領域に書き込むので、一旦、書き込みエリアを確保した後には、管理サーバなどに接続する必要がなく、サービスの申込みから発行までの処理が簡略化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、データ発行までの手順を簡略化することができ、通信料も抑えることができる情報発行システム及び情報発行方法を提供するという目的を、管理サーバを経由してFelicaチップの書き込み領域を確保し、その書き込み領域に口座情報などを含む発行データをリーダライタで直接書き込むことにより実現する。
【実施例1】
【0012】
以下、図面等を参照して、本発明の実施例について、さらに詳しく説明する。
図1は、本発明による情報発行システムの実施例1を示す図である。
なお、前述した従来例と同様な機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾に統一した符号を付して、重複する説明や図面を適宜省略する。
実施例1の情報発行システム100は、FeliCaチップ10と、携帯電話機20と、ICキャッシュカード(親カード)30と、ATM40と、ネットワーク50と、インターネットデータセンター60と、管理サーバ(書込領域管理サーバ)70などとを備える。
【0013】
FeliCaチップ10は、CPU,メモリ及び通信手段を有するICチップが搭載されたICカードである。
FeliCaチップ10のメモリは、後述するサービス初期登録によって、書き込み領域が確保される。具体的には、書き込み領域は、携帯アプリダウンロードサーバ61から携帯電話機20にダウンロードしたエリア確保用アプリが、管理サーバ70にアクセスしその応答によって確保される。
携帯電話機20は、FeliCaチップ10を搭載可能な電話機であり、FeliCaチップ10が搭載されるとモバイルFeliCaとなる。なお、携帯電話機は、あらかじめFeliCaチップが内蔵されているものであってもよい。
ICキャッシュカード30は、ATM40を利用するための情報記録媒体であり、会員情報(所定の情報;口座番号を含む口座情報、支店番号、銀行番号など)が記憶されている。
【0014】
ATM40は、銀行などに配置された現金自動預け入れ支払い機であり、認証手段41と、リーダライタ(ICカードR/W)42とを備える。
認証手段41は、ICキャッシュカード30の利用者の本人確認を行うものであり、例えば、指紋などのパターンを読み取り、予め登録してあるデータと照合して本人確認を行う生体認証システムなどである。
リーダライタ42は、FeliCaチップ10と非接触で通信を行い、データの読み込み及び書き込みを行う装置であり、ICキャッシュカード30から会員情報を読み取る読取手段421と、読取手段421が読み取った会員情報をFeliCaチップ10の書き込み領域に書き込む書込手段422とを備える。
【0015】
ネットワーク50は、インターネットなどの通信網であり、携帯電話機20,インターネットデータセンター60及び管理サーバ70を相互に接続している。
インターネットデータセンター60は、各種データを集中管理する部分であり、エリア確保用アプリが格納されている携帯アプリダウンロードサーバ61と、パーソナライズ情報が格納されているパーソナライズ情報ダウンロードサーバ62とを備える。
管理サーバ70は、FeliCaチップ10の使用状況などを管理するサーバである。
【0016】
次に、情報発行システム100の動作を説明する。
図2は、情報発行システム100の動作のうちサービス初期登録の動作を説明する図である。
まず、利用者が申込みを行うと、サービス提供者のイシュアホスト80からインターネットデータセンター60に申込み情報が送信され、発行情報(キャッシュカード番号など)が生成される(#1)。
ついで、利用者は、携帯電話機20を操作して、携帯アプリダウンロードサーバ61に接続し、エリア確保用アプリをダウンロードする(#2)。なお、携帯アプリダウンロードサーバ61のURL,ユーザID及びパスワードは、従来と同様に、申込み後に封書やメールで通知されている。
【0017】
さらに、ダウンロードしたエリア確保用アプリが、パーソナライズ情報ダウンロードサーバ62にユーザID及びパスワードを送信する(#3)。
ユーザ認証に成功した場合には、携帯電話機20のエリア確保用アプリに発行情報が送信される(#4)。
【0018】
そして、エリア確保用アプリが管理サーバ(Felicサーバ)70にアクセスし、その応答によってFeliCaチップ10に書き込み領域(フリー領域)が確保される(#6)。
利用者は、FeliCaチップ10内の情報を閲覧することができる(#7)。
この流れで、キャッシングサービスを利用するために必要な領域を確保するサービス初期登録(エリア発行)は完了する[携帯電話機20に搭載されたFeliCaチップ10の書き込み領域を確保する第1の工程]。
利用者は、サービス初期登録が完了した携帯電話機20を銀行の店舗に持参する。
【0019】
図3は、情報発行システム100の動作のうち情報発行の動作を説明する図である。
図3(A)に示すように、携帯電話機20のFeliCaチップ10は、図2で説明した動作によって、書き込み領域が確保されており、その書き込み領域は、3つの領域(ポケットA、ポケットB、ポケットC)に区画されている。
まず、図3(B)に示すように、利用者は、ATM40にICキャッシュカード30を挿入し、認証手段41で本人確認を行う。
ATM40は、ICキャッシュカード30から口座情報などの会員情報を読み出し、生体情報を利用して本人確認を行い、本人確認に成功した場合には、ICキャッシュカード30から取得した情報を元に、FeliCaチップ10に書き込むための発行データ(会員情報、子カード情報、子カード番号などを含むデータ)を生成する(発行データ生成手段)。
そして、利用者がATM40のリーダライタに携帯電話機20をかざすと、書き込み領域のポケットAに発行データが書き込まれ、サービスの登録が完了する[ICキャッシュカード30から口座情報などの会員情報を読み取り、その会員情報を含む発行データをFeliCaチップ10の書き込み領域に書き込む第2の工程]。
この流れで、利用者は、携帯電話機20によるキャッシングが行えるようになる。
【0020】
このように、実施例1の情報発行システム100によれば、以下のような効果がある。
(1)書き込みエリアを確保した後には、インターネットデータセンター60や管理サーバ70に接続する必要がなく、サービスの申込みから発行までの処理や手順を簡略化することができる。
(2)データ発行時には、ネットワークを経由しないオフラインのデータ発行が可能となり、利用者にとっては通信料がかからないメリットがある。
(3)データ発行時には、リーダライタ42を利用するため、データ発行用のサーバー(データセンター)が不要となる。
(4)データ発行時には、認証手段41によって認証を行うので、本人確認を行うためのユーザIDやパスワードなどの通知が不要になる。
【実施例2】
【0021】
図4は、本発明による情報発行システムの実施例2を示す図である。
なお、前述した実施例1と同様な機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾に統一した符号を付して、重複する説明や図面を適宜省略する。
実施例2の情報発行システム100−2は、ICキャッシュカード30ではなく、ICクレジットカード30−2を取り扱うものである。
また、実施例2の情報発行システム100−2は、認証手段41−2が、実施例1の生体認証システムから、ネットワーク接続された与信審査システムに変更されている。なお、認証手段41−2のイシュアホスト80とインターネットデータセンター60とは、共通化(一体化)したシステムとしてもよい。
【0022】
まず、図4(A)に示すように、サービス初期登録を行い(実施例1と同様)、FeliCaチップ10の書き込み領域を確保する。
ついで、図4(B)に示すように、利用者は、CAT端末(credit authorization terminal;クレジット−カードの信用情報照会端末機)40−2が設置されている店舗に行き、CAT端末40−2にICクレジットカード30−2を挿入する。
CAT端末40−2は、クレジット番号を含むクレジット情報を読み出し、そのクレジット情報をネットワークを介してイシュアホスト80に送信する。
イシュアホスト80では、会員データベース81を用いて本人確認を行い、本人確認に成功した場合には、クレジット情報に基づいて子カード情報を生成し、その子カード情報をインターネットデータセンター60に送信する。
インターネットデータセンター60では、子カード情報に基づいて発行データを生成し(発行データ生成手段)、その発行データをネットワークを介して店舗のライタ42−2に送信する。
利用者がライタ42−2に携帯電話機20をかざすと、書き込み領域のポケットAに発行データが書き込まれ、サービスの登録が完了する。
【0023】
このように、実施例2の情報発行システム100−2によれば、実施例1の効果に加えて、各店舗に本人認証のシステムが備わっていない場合であっても、本システムを適用することができる、という効果がある。
【0024】
(変形例)
以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の均等の範囲内である。
(1)情報記録媒体は、ICカードを用いたキャッシュカードやクレジットカードの例で説明したが、磁気式のカードであってもよい。この場合は、読取手段を磁気読取式のものに変更する。
【0025】
(2)実施例1においては、ATM40で、実施例2においては、インターネットデータセンター60で、発行データを生成する例で説明したが、発行データ生成手段を有する専用サーバを別途設置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明による情報発行システムの実施例1を示す図である。
【図2】情報発行システム100の動作のうちサービス初期登録の動作を説明する図である。
【図3】情報発行システム100の動作のうち情報発行の動作を説明する図である。
【図4】本発明による情報発行システムの実施例2を示す図である。
【図5】従来の発行処理の流れを示す図である。
【符号の説明】
【0027】
10 FeliCaチップ(ICチップ)
20 携帯電話機
30 ICキャッシュカード(情報記録媒体)
30−2 ICクレジットカード(情報記録媒体)
31 ICチップ(媒体用ICチップ)
40 ATM
40−2 CAT端末
41、41−2 認証手段
42 リーダライタ
421 読取手段
422 書込手段
42−2 ライタ
50 ネットワーク
60 インターネットデータセンター
61 携帯アプリダウンロードサーバ
62 パーソナライズ情報ダウンロードサーバ
70 管理サーバ(書込領域管理サーバ)
80 イシュアホスト
81 会員データベース
100,100−2 情報発行システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
書き込み領域が確保されたICチップと、
前記ICチップが搭載された携帯電話機と、
情報記録媒体から所定の情報を読み取る読取手段と、
前記読取手段が読み取った所定の情報を前記ICチップの書き込み領域に書き込む書込手段と、
を備える情報発行システム。
【請求項2】
請求項1に記載の情報発行システムにおいて、
前記ICチップの書き込み領域は、携帯アプリダウンロンドサーバからダウンロードされたアプリケーションが書込領域管理サーバにアクセスしその応答によって確保されること、
を特徴とする情報発行システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の情報発行システムにおいて、
前記情報記録媒体の利用者の認証を行う認証手段を備えること、
を特徴とする情報発行システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の情報発行システムにおいて、
前記所定の情報に基づいて、発行データを生成する発行データ生成手段を備えること、
を特徴とする情報発行システム。
【請求項5】
携帯電話機に搭載されたICチップの書き込み領域を確保する第1の工程と、
情報記録媒体から所定の情報を読み取り、その所定の情報を前記ICチップの書き込み領域に書き込む第2の工程と、
を備える情報発行方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−206770(P2007−206770A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−21759(P2006−21759)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】