説明

情報端末

【課題】アイドリングストップ機構により停車時にエンジンを停止させる車両にあっても精度良く燃料消費量を推定し、経路を探索する。
【解決手段】情報端末1は、アイドリングストップ機構により停車時にエンジンが停止する車両に接続される。情報端末1は、リンクデータを含む地図データを記憶している。情報端末1は、第1タイマ10cおよび第2タイマ10dを備え、車両の走行時間と、車両のアイドリングストップ時間とを測定し、RAM10bに記憶し、所定のタイミングで記憶部11の補正データ11bに記憶する。情報端末1は、記憶部11にそれぞれ1個以上記憶した走行時間とアイドリングストップ時間とに基づいて、補正値を算出する。情報端末1のCPU10aは、補正値でリンクの燃料消費量を補正し、リンクの燃料消費量に基づいて経路の燃料消費量が最小となる出発地から目的地までの経路を探索する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料消費量を推定する情報端末に関する。
【背景技術】
【0002】
リンクの旅行時間に基づいて、車両のエンジンにより消費される燃料消費量を推定し、推定した燃料消費量に基づいて経路を探索するナビゲーションシステムが知られている(たとえば、特許文献1)。また、停車時に自動的にエンジンを停止するアイドリングストップ機構を備えた車両が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−53162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アイドリングストップ機構を備えた車両では、車両が停車するたびにエンジンが停止状態となるため、アイドリングストップ機構を備えない車両よりもリンクの旅行時間とエンジンの動作時間との差が大きくなる。そのため、アイドリングストップ機構を備えた車両にあっては燃料消費量推定の精度が低下する虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、アイドリングストップ機構により停車時にエンジンが停止する車両に接続される情報端末であって、出発地を指定する出発地指定手段と、目的地を指定する目的地指定手段と、道路地図上の道路を表すリンクごとにリンクデータを有する地図データを記憶する地図データ記憶手段と、車両の走行時間を測定する走行時間測定手段と、アイドリングストップ機構がエンジンを停止させているアイドリングストップ時間を測定するアイドリングストップ時間測定手段と、走行時間測定手段により過去に測定された走行時間と、アイドリングストップ時間測定手段により過去に測定されたアイドリングストップ時間とをそれぞれ1個以上記憶する第1の時間記憶手段と、第1の時間記憶手段に記憶した1個以上の走行時間および1個以上のアイドリングストップ時間に基づいて、補正値を算出する補正値算出手段と、出発地と目的地とを少なくとも含む所定範囲内の各リンクについて、補正値に基づいて、燃料消費量を算出する燃料消費量算出手段と、燃料消費量算出手段により算出されたリンクの燃料消費量に基づいて、出発地から目的地までの経路を探索する経路探索手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、アイドリングストップ機構によりアイドリングストップする車両にあっても精度良く燃料消費量を推定し、経路を探索することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】アイドリングストップ機構を有する車両のための経路探索システムのブロック構成図である。
【図2】本発明の一実施携帯による情報端末のブロック構成図である。
【図3】地図データの概略データ構造である。
【図4】リンクデータの概略データ構造である。
【図5】補正データの概略データ構造である。
【図6】計時データの概略データ構造である。
【図7】計時データの計測処理に関するフローチャートである。
【図8】補正データの更新処理に関するフローチャートである。
【図9】経路探索処理に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、本発明に係る情報端末を備える経路探索システムのブロック構成図である。図1に例示される経路探索システム100は、アイドリングストップ機構を有する車両のために燃料消費量の少ない経路を探索するためのシステムである。以降、アイドリングストップ機構を有する車両のことを単に車両と略記する。車両は、その設計段階からアイドリングストップ機構を備えていてもよいし(所謂アイドリングストップ車)、アイドリングストップ機構を後付けした車両であってもよい。
【0009】
経路探索システム100は、情報端末1とアイドリングストップ機構2とエンジン3とを備える。情報端末1は、車両に搭載されるナビゲーション装置や、携帯情報端末などである。情報端末1は、車両に備わるアイドリングストップ機構2と無線または有線で接続し通信を行う。
【0010】
アイドリングストップ機構2は車両に備わっており、車内LAN20とエンジンECU21と車速センサ22とブレーキスイッチ23とアイドリングストップECU24とを備える。
【0011】
車内LAN20は、車両内に構築された通信ネットワークであり、アイドリングストップ機構2に接続した情報端末1とエンジンECU21とアイドリングストップECU24とその他車内機器とを接続する。情報端末1とエンジンECU21とアイドリングストップECU24とは、車内LAN20を介して相互に情報の送受信を行う。
【0012】
エンジンECU21は、エンジン3の燃料噴射系や、点火系、始動制御系などを制御して、エンジン3を制御する。エンジンECU21は、車内LAN20を介してアイドリングストップECU24と接続している。また、エンジンECU21は、車速センサ22およびブレーキスイッチ23と接続されている。
【0013】
車速センサ22は、車両の速度を検出し、車速パルスをエンジンECU21へ出力する。ブレーキスイッチ23は、車両のブレーキペダル(不図示)が踏み込まれているときは、オン信号をエンジンECU21へ出力する。一方、ブレーキペダルが踏み込まれていないときは、ブレーキスイッチ23はオフ信号をエンジンECU21へ出力する。
【0014】
アイドリングストップECU24は、エンジン3のアイドリングストップに関する制御を行う。アイドリングストップECU24は、車両が停車したとき、エンジンECU21に所定の停止信号を送信する。また、アイドリングストップECU24は、車両が停車状態から発進するとき、エンジンECU21に所定の駆動信号を送信する。
【0015】
アイドリングストップECU24は、エンジンECU21を介して車速センサ22やブレーキスイッチ23からの車速パルスや、オン信号、オフ信号などを受信する。そして、アイドリングストップECU24は、それらの情報に基づいて車両の停車や発進などの状態を判断する。たとえば、車両の速度が零でありブレーキスイッチ23の出力信号がオン信号のとき、アイドリングストップECU24は車両が停車すると判断する。また、車両の速度が零でありブレーキスイッチ23の出力信号がオフ信号のとき、アイドリングストップECU24は車両が発進すると判断する。
【0016】
アイドリングストップECU24が車両の状態を判断して送信した停止信号や駆動信号はエンジンECU21が受信する。停止信号を受信したエンジンECU21は、エンジン3の燃料噴射系や点火系統を停止させ、エンジン3の駆動を停止させる。一方、駆動信号を受信した場合は、エンジンECU21はスターターモータなどの始動制御系を制御してエンジン3のクランク軸を回転させ、燃料噴射系や点火系統を駆動してエンジン3を始動させる。
【0017】
エンジン3は、車両の動力源となる内燃機関であって、ガソリンやディーゼル燃料などを燃料とする。エンジン3は、燃料噴射系や、点火系、始動制御系などを有し、前述のエンジンECU21により制御される。
【0018】
図2は、情報端末1のブロック構成図である。情報端末1は、制御部10と記憶部11と表示部12とGPS受信部13と入力操作部14と通信部15とを備える。
【0019】
制御部10は、CPU10aとRAM10bと第1タイマ10cと第2タイマ10dとを備え、その他にROMや、その他周辺回路を備える。CPU10aは、ROMや記憶部11に記憶されている制御プログラムをRAM10b上で実行し、経路探索処理、公知のマップマッチング処理などの各種処理を実行する。
【0020】
記憶部11は、ハードディスクやフラッシュメモリなどの不揮発性の記憶媒体である。記憶部11は、地図データ11aや、補正データ11b、情報端末1の各種設定を記憶している。
【0021】
図3は、地図データ11aの概略データ構造を示す図である。地図データ11aは、道路地図上の区画された所定サイズの領域であるメッシュ単位で分類されており、メッシュ識別番号31と信号機情報32とともに、各メッシュに含まれる道路区画を表すリンクのリンクデータ33と、各メッシュに含まれる交差点等を表すノードのノードデータ34とを含んでいる。信号機情報32は、各メッシュに含まれる信号機数を表す。
【0022】
図4は、リンクデータ33の概略データ構造を示す図である。リンクデータ33は、リンク単位で分類されており、リンク識別番号41と道路種別42とリンク旅行時間43と始点ノード44と終点ノード45とを含む。道路種別42は、高速道路や国道、細街路など、道路の種類のことであって、たとえば「高速道路または有料道路」や、「国道」、「都道府県道」、「細街路」などに分類される。リンク旅行時間43は、リンクが示す道路区画を車両が通過するのに要する所要時間である。
【0023】
ノードデータ34は、ノード番号と位置情報(緯度、経度)とを含む。リンクデータの始点ノード44および終点ノード45に含まれるノードは、同メッシュのノードデータ34に記憶されている。
【0024】
図5は、補正データ11bの概略データ構造を示す図である。補正データ11bは、地域、道路種別および時間帯に応じて分類されており、分類情報50と補正値51と時間履歴52とを含む。分類情報50は、上記の分類を表すための情報であり、地域情報50aと道路種別50bと時間帯情報50cとを含む。
【0025】
地域情報50aは、補正値51により補正するリンクが含まれる地域分類を表す。たとえば、地域情報50aは、「市街地」と「郊外」と「山道」という地域分類を有する。市街地では、交差点での信号待ち等により停車することが多いため、アイドリングストップの影響が大きくなる。
【0026】
道路種別50bは、補正値51により補正するリンクの道路種別を表す。道路種別50bは、リンクデータ33の道路種別42と同様の道路分類を有する。たとえば、道路種別50bは、「高速道路または有料道路」や、「国道」、「都道府県道」、「細街路」などを有する。
【0027】
時間帯情報50cは、補正値51により補正するリンクを通過する時間帯に関する分類である。たとえば、時間帯情報50cは、「6:30〜9:30」と「9:30〜17:00」と「17:00〜20:00」と「20:00〜6:30」という時間帯を有する。
【0028】
補正値51は、リンクごとの燃料消費量を推定するときに利用されるパラメータである。リンクLの燃料消費量Qは、下式(1)によって推定される。tはリンクLのリンク旅行時間43である。F(t)は、リンク旅行時間43を引数とする関数で、リンクLの基礎燃料消費量を表す。基礎燃料消費量とは、負荷を零にしたときの燃料消費量に相当する。Risは、補正値51を表す。Eは、摩擦抵抗や、勾配抵抗、空気抵抗、加速抵抗などによるエネルギー損失を表す。リンクLの基礎燃料消費量F(t)に(1−Ris)を乗ずることにより、リンクLの基礎燃料消費量F(t)の中からアイドリングストップ時に消費した燃料消費量を除去する。
=F(t)×(1−Ris)+E…(1)
【0029】
補正値51は、時間履歴52に記憶された走行時間52aとアイドリングストップ時間52bとに基づいて算出される。時間履歴52には、走行時間52aとアイドリングストップ時間52bとが1組以上の所定組数(たとえば、14組)記憶されている。時間履歴52は、リングバッファ方式の記憶領域であって、新しく走行時間52aとアイドリングストップ時間52bの組が記憶されるとき、最も古い走行時間52aとアイドリングストップ時間52bの組を削除する。補正値51は、時間履歴52に記憶されるアイドリングストップ時間52bの総和を、走行時間52aの総和で除した値が記憶される。時間履歴52が更新されるたびに補正値51の値が算出されて更新される。
【0030】
図2の表示部12は、液晶式の表示モニタであって、道路地図や、メニュー画面、設定画面、経路探索処理により探索された経路などを表示画面上に表示する。GPS受信部13は、GPS衛星からGPS信号を受信し、制御部10へ出力する。制御部10は、GPS信号に基づいて、現在時刻や情報端末1が存する現在位置、すなわち情報端末1が接続されている車両の現在位置を検出することができる。入力操作部14は、タッチパネル、スイッチ、レバー、キーボード、マウスなどであって、ユーザが情報端末1の操作入力に用いる。
【0031】
通信部15は、車両に備わるアイドリングストップ機構2と無線または有線で接続し、通信を行う。制御部10は、通信部15を介してアイドリングストップECU24から停止信号と駆動信号とを受信する。制御部10は、アイドリングストップECU24から停止信号を受信したら情報端末1が接続されている車両がアイドリングストップを開始したと判断する。
【0032】
補正データ11bの更新について説明する。制御部10は、補正データ11bを更新するために走行時間とアイドリングストップ時間とをRAM10bに記憶し、それらのデータを所定の測定期間、たとえば1日ごとに記憶部11へ出力する。この補正データ11bの更新は、測定期間を経過した後、予め設定された所定のタイミングで行うことができる。たとえば、所定時刻(たとえば、午前6:30)になったとき、車両の運転を開始してから1時間後、車両を駐車するときなどに、走行時間とアイドリングストップ時間のデータを記憶部11へ出力し、補正データ11bの更新を行うことができる。
【0033】
RAM10bに記憶する走行時間およびアイドリングストップ時間は、第1タイマ10cおよび第2タイマ10dによりそれぞれ測定されて、補正データ11bと同様に分類されて記憶される。以降、制御部10によりRAM10bに記憶される、補正データ11bを更新するためのデータのことを計時データと称する。
【0034】
図6は、計時データの概略データ構造を示す図である。図6に図示される計時データ60はそれぞれ分類情報61と走行時間62とアイドリングストップ時間63とを有する。分類情報61は、各計時データ60を分類するためのもので、補正データ11bの更新に用いる走行時間62およびアイドリングストップ時間63を検索する際に利用される。地域情報61aと道路種別61bと時間帯情報61cとは、それぞれ図5の地域情報50aと道路種別情報50bと時間帯情報50cと同様である。
【0035】
図7は、制御部10のCPU10aが実行する計時データ60の計測処理に関するフローチャートである。CPU10aは、情報端末1の電源がオンであり、かつ経路探索システム100へ接続されているときに図7の処理を開始する。
【0036】
図7のステップS100では、CPU10aは、第1タイマ10cを制御して時間の計測(計時)を開始する。
【0037】
ステップS101では、CPU10aは、情報端末1が接続されている車両が走行している道路のリンクを検出する。まず、CPU10aは、GPS受信部13からGPS信号を取得し、情報端末1が接続されている車両の位置を算出する。次に、CPU10aは、その車両の位置と地図データ11aとに基づいて、公知のマップマッチング処理を行い、その車両が走行中のリンクを検出する。
【0038】
CPU10aは、ステップS101において検出したリンクに対応する分類情報61を選択し、その分類情報61をRAM10bに記憶する。RAM10bには、今回のステップS101で検出したリンクに対して選択された分類情報61と、前回実行したステップS101で検出したリンクに対して選択された分類情報61とが少なくとも記憶される。
【0039】
ステップS101で検出されたリンクについて、分類情報61のうち地域情報61aは、地図データ11aに含まれるメッシュの信号機情報32に基づいて選択される。CPU10aは、ステップS101で検出されたリンクが含まれるメッシュの信号機情報32が第1所定値s1以上のときは「市街地」を選択する。リンクが含まれるメッシュの信号機情報32が第1所定値s1未満、第2所定値s2以上のときは「郊外」を選択する。リンクが含まれるメッシュの信号機情報32が第2所定値s2未満のときは「山道」が選択される。
【0040】
ステップS101で検出されたリンクに対応する分類情報61のうち道路種別61bは、地図データ11aに含まれるリンクデータ33の道路種別42に基づいて選択される。制御部10は、ステップS101で検出したリンクの道路種別42と一致する道路種別61bを選択する。
【0041】
ステップS101で検出されたリンクに対応する分類情報61のうち時間帯情報61cは、現在時刻が含まれる時間帯を選択する。現在時刻は、GPS信号などに基づいて算出することができる。
【0042】
ステップS102では、CPU10aは、情報端末1が接続されている車両が走行中のリンクについて、リンクの分類が変化したか否かを判定する。CPU10aは、今回のステップS101で検出したリンクに対してRAM10bに記憶された分類情報61と、前回のステップS101で検出したリンクに対してRAM10bに記憶された分類情報61とを比較して、二つの分類情報61が同一か否かを判定する。更新処理は、これらの分類情報61が同一でない、すなわち変化していると判定された場合はステップS103に進み、分類情報61が変化していないと判定された場合はステップS105に進む。
【0043】
ステップS103では、CPU10aは、前回のステップS101で検出したリンクに対する分類情報61と同一の分類情報61を有する計時データ60の走行時間62に第1タイマ10cで計時した時間を加算する。
【0044】
ステップS104では、CPU10aは、第1タイマ10cが計測した時間を零にリセットする。そして、第1タイマ10cは、新たに時間の計測を開始する。
【0045】
ステップS105では、CPU10aは、アイドリングストップECU24から停止信号を受信したか否かを判定する。計測処理は、アイドリングストップECU24から停止信号を受信した場合はアイドリングストップ時の処理を進めるためステップS106に進み、停止信号を受信していない場合はS101に進む。
【0046】
ステップS106では、CPU10aは、第2タイマ10dを制御して時間の計測(計時)を開始する。ステップS107では、CPU10aは、アイドリングストップECU24から駆動信号を受信したか否かを判定する。計測処理は、アイドリングストップECU24から駆動信号を受信するまでステップS107にとどまり、駆動信号を受信したときアイドリングストップ時の処理を進めるためステップS108に進む。
【0047】
ステップS108では、CPU10aは、前回のステップS101で検出したリンクに対する分類情報61と同一の分類情報61を有する計時データ60のアイドリングストップ時間63に第2タイマ10dで計時した時間を加算する。
【0048】
ステップS109では、CPU10aは、第2タイマ10dが計測した時間を零にリセットする。そして、第2タイマ10dは、新たに時間の計測を開始し、ステップS101の処理に進む。
【0049】
図8は、制御部10のCPU10aが実行する補正データ11bの更新処理に関するフローチャートである。ステップS200では、CPU10aは、記憶部11に記憶された補正データ11bを更新するか否かを判定する。CPU10aは、前述の測定期間が経過した後に所定のタイミングになり、補正データ11bを更新すると判定されるまでステップS200にとどまり、補正データ11bを更新する場合はステップS201に進む。
【0050】
ステップS201では、CPU10aは、RAM10bに記憶されている計時データ60に基づいて、記憶部11に記憶されている補正データ11bの時間履歴52を更新する。CPU10aは、RAM10bに記憶されている計時データ60の分類情報61と同一の分類情報50を検索し、検索された分類情報50の時間履歴52を、計時データ60で更新する。すなわち、検索された分類情報50の時間履歴52のうち、最も古い走行時間52aとアイドリングストップ時間52bとを、対応する計時データ60の走行時間62およびアイドリングストップ時間63で更新する。
【0051】
ステップS202では、CPU10aは、ステップS201で更新された補正データ11bについて、補正値51を算出し更新する。各分類情報50に対応する補正値51は、その分類情報50に対応する時間履歴52に記憶された走行時間52aとアイドリングストップ時間52bとに基づいて算出される。たとえば、前述したとおり、分類情報50に対応するアイドリングストップ時間52bの総和を、当該分類情報50に対応する走行時間52aの総和で除することにより補正値51を算出する。
【0052】
ステップS203では、CPU10aは、RAM10bに記憶されている計時データ60の走行時間62およびアイドリングストップ時間63を、すべての分類情報61についてリセットする。
【0053】
図9は、CPU10aが実行する経路探索処理に関するフローチャートである。図9に処理を例示する経路探索処理では、情報端末1が接続されている車両の燃料消費量が最小となる経路を探索する。
【0054】
ステップS300では、CPU10aは、探索する経路の出発地を指定する。出発地は、GPS信号に基づいて算出した情報端末1が接続されている車両の現在位置でもよいし、表示部12に表示された地図画面の中から入力操作部14を介してユーザが指定した位置でもよい。ステップS301では、CPU10aは、探索する経路の目的地を指定する。目的地は、表示部12に表示された地図画面の中から入力操作部14を介してユーザが指定した位置とすればよい。
【0055】
ステップS302では、CPU10aは、記憶部11から補正データ11bと地図データ11aとを読み出す。記憶部11に記憶されている地図データ11aをすべて読み出してもよいし、ステップS300で指定した出発地とステップS301で指定した目的地とを含む所定範囲の道路地図のデータのみを読み出してもよい。
【0056】
ステップS303では、CPU10aは、ステップS302で読み出された補正データ11bと、ステップS302で読みだされた地図データ11aに含まれるリンクデータ33のリンク旅行時間43とに基づく前述の式(1)に基づいて、各リンクの燃料消費量Qを算出する。
【0057】
ステップS304では、ステップS303で算出したリンクの燃料消費量Qをリンクコストとして、経路の燃料消費量が最小となる経路を探索する。経路の燃料消費量は、経路に含まれるリンクの燃料消費量Qに基づいて算出され、たとえば経路に含まれるリンクLの燃料消費量Qの総和である。リンクコストが最小となる経路の探索は、公知のダイクストラ法などにより算出すればよい。
【0058】
以上で説明した実施の形態によれば、次の作用効果を奏する。
本発明の一実施形態である情報端末1は、アイドリングストップ機構2により停車時にエンジン3が停止する車両に接続される。情報端末1は、入力操作部14や、GPS受信部13が受信したGPS信号から算出された車両の位置などに基づいて出発地を指定する(図9のステップS300)。情報端末1は、入力操作部14を介して目的地を指定する(図9のステップS301)。情報端末1は、記憶部11に記憶される地図データ11aの中にリンクデータ33を記憶している。情報端末1は、第1タイマ10cおよび第2タイマ10dを備え、車両の走行時間62と、車両のアイドリングストップ時間63とをそれぞれ測定することに利用する(図7)。記憶部11に記憶される補正データ11bの時間履歴52には、走行時間52aと、アイドリングストップ時間52bとがそれぞれ1個以上記憶される。走行時間52aとアイドリングストップ時間52bとは、走行時間62とアイドリングストップ時間63とを所定のタイミングで記憶したものである。情報端末1は、記憶部11に記憶した走行時間52aとアイドリングストップ時間52bとに基づいて、補正値51を算出する(図8のステップS202)。情報端末1は、補正値51で式(1)に基づいて算出されたリンクの燃料消費量Qを補正し(図9のステップS303)、補正後のリンクの燃料消費量Qに基づいて経路の燃料消費量が最小となる出発地から目的地までの経路を探索する(図9のステップS304)。本実施の形態による情報端末1は、アイドリングストップ機構によりアイドリングストップする車両にあっても精度良く燃料消費量を推定し、経路を探索することができる。
【0059】
以上で説明した実施の形態は、以下のように変形して実施できる。
(変形例1)上記の実施の形態では、アイドリングストップECU24は車両に搭載されるものとしたが、情報端末1に備わっていてもよい。たとえば、通信部15を介してエンジンECU21から車速センサ22の車速パルスやブレーキスイッチ23のオン/オフ信号を受信し、これらに基づいて情報端末1が車両の停車を判断してエンジンECU21に停止信号を送信することにしてもよい。すなわち、情報端末1は、後付けのアイドリングストップ装置であってもよい。また、アイドリングストップを検出するために、シフトレバーのシフト位置に関する情報をさらに取得することにしてもよい。このときたとえば、車両がアイドリングストップしているとアイドリングストップECU24が判定する条件に、シフト位置がニュートラル(N)の位置にあることを追加してもよい。
【0060】
(変形例2)上記の実施の形態では、計時データ60に基づいて時間履歴52を更新したとき補正値51を更新したが、図9ステップS303においてリンクごとの燃料消費量推定値Qを算出する直前に補正値51を算出することにしてもよい。
【0061】
(変形例3)上記の実施の形態では、補正データ11bの分類情報50と計時データ60の分類情報61とは、地域情報と道路種別と時間帯情報とを含むものとした。しかし、補正データ11bの分類情報50と計時データ60の分類情報61とは、同一の情報で分類されていれば地域情報、道路種別、時間帯情報のいかなる組み合わせでもよい。また地域情報、道路種別、時間帯情報以外の情報、たとえば道路の渋滞度や、休日か否かといった情報によっても分類することができる。
【0062】
(変形例4)上記の実施の形態では、地域情報50aについては、地図データ11aに含まれる信号機情報32に基づいて分類した。信号機情報32の代わりにメッシュ内に存在する交差点の数に関する情報を記憶し、その数に基づいて地域情報50aを分類してもよい。あるいは、メッシュ単位やリンク単位でどの地域に属するかを予め設定してもよい。
【0063】
上記の実施の形態および変形例は、発明の特徴が損なわれない限り、組み合わせて実行してよい。また、上記の実施の形態や変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されない。
【符号の説明】
【0064】
1…情報端末、2…アイドリングストップ機構、3…エンジン、10…制御部、10a…CPU、10b…RAM、10c…第1タイマ、10d…第2タイマ、11…記憶部、11a…地図データ、11b…補正データ、12…表示部、13…GPS受信部、14…入力操作部、15…通信部、20…車内LAN、21…エンジンECU、22…車速センサ、23…ブレーキスイッチ、24…アイドリングストップECU、32…信号機情報、33…リンクデータ、50…分類情報、51…補正値、52a…走行時間、52b…アイドリングストップ時間、60…計時データ、61…分類情報、62…走行時間、63…アイドリングストップ時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アイドリングストップ機構により停車時にエンジンが停止する車両に接続される情報端末であって、
出発地を指定する出発地指定手段と、
目的地を指定する目的地指定手段と、
道路地図上の道路を表すリンクごとにリンクデータを有する地図データを記憶する地図データ記憶手段と、
前記車両の走行時間を測定する走行時間測定手段と、
前記アイドリングストップ機構が前記エンジンを停止させているアイドリングストップ時間を測定するアイドリングストップ時間測定手段と、
前記走行時間測定手段により過去に測定された前記走行時間と、前記アイドリングストップ時間測定手段により過去に測定された前記アイドリングストップ時間とをそれぞれ1個以上記憶する第1の時間記憶手段と、
前記第1の時間記憶手段に記憶した前記1個以上の走行時間および前記1個以上のアイドリングストップ時間に基づいて、補正値を算出する補正値算出手段と、
前記出発地と前記目的地とを少なくとも含む所定範囲内の各リンクについて、前記補正値に基づいて、燃料消費量を算出する燃料消費量算出手段と、
前記燃料消費量算出手段により算出された前記リンクの燃料消費量に基づいて、前記出発地から前記目的地までの経路を探索する経路探索手段と、
を備えることを特徴とする情報端末。
【請求項2】
請求項1に記載の情報端末において、
前記走行時間測定手段により所定の測定期間の開始時点から現在までの間に測定された前記走行時間と、前記アイドリングストップ時間測定手段により前記測定期間の開始時点から現在までの間に測定された前記アイドリングストップ時間とを記憶する第2の時間記憶手段をさらに備え、
前記第1の時間記憶手段は、前記第2の時間記憶手段により記憶された前記走行時間および前記アイドリングストップ時間を、前記測定期間ごとに前記1個以上の走行時間および前記1個以上のアイドリングストップ時間のうちの一つとして記憶することを特徴とする情報端末。
【請求項3】
請求項2に記載の情報端末において、
前記補正値算出手段は、前記第2の時間記憶手段に記憶された前記走行時間および前記アイドリングストップ時間が前記第1の時間記憶手段に記憶されたとき、前記補正値を算出することを特徴とする情報端末。
【請求項4】
請求項1または2に記載の情報端末において、
前記補正値算出手段は、前記経路探索手段が前記経路を探索するときに前記補正値を算出することを特徴とする情報端末。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の情報端末において、
前記車両の位置を検出する車両位置検出手段と、
前記車両位置検出手段により検出された前記車両の位置に対応する道路を検出する道路検出手段と、
前記道路検出手段により検出された道路の道路種別を、前記リンクデータに基づいて識別する道路種別識別手段と、
をさらに備え、
前記第1の時間記憶手段は、前記道路種別識別手段により識別される前記道路種別ごとに分類して、前記走行時間測定手段により測定された前記走行時間と、前記アイドリングストップ時間測定手段により測定された前記アイドリングストップ時間とを記憶することを特徴とする情報端末。
【請求項6】
請求項5に記載の情報端末において、
前記車両位置検出手段により検出された前記車両の位置に対応する地域を識別する地域識別手段をさらに備え、
前記第1の時間記憶手段は、前記地域識別手段により識別された地域で分類して、前記走行時間測定手段により測定された前記走行時間と、前記アイドリングストップ時間測定手段により測定された前記アイドリングストップ時間とを記憶することを特徴とする情報端末。
【請求項7】
請求項6に記載の情報端末において、
前記地域識別手段は、前記車両の位置を含む所定サイズの領域内に含まれる信号機または交差点の数に基づいて前記地域を分類することを特徴とする情報端末。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の情報端末において、
前記第1の時間記憶手段は、時間帯ごとに分類して、前記走行時間測定手段により測定された前記走行時間と、前記アイドリングストップ時間測定手段により測定された前記アイドリングストップ時間とを記憶することを特徴とする情報端末。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の情報端末において、
前記アイドリングストップ機構をさらに備えることを特徴とする情報端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−76574(P2013−76574A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215084(P2011−215084)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】