説明

情報記録媒体及びその製造方法

【課題】記録層に可視情報を記録する際に、かすれが生じて印字品質が低下したり、RFIDインレットが埋設されている領域が削られたりすることを防ぐことができる情報記録媒体及びその製造方法を提供することにある。
【解決手段】情報記録媒体1aは、固有の識別情報を格納したICチップとこの識別情報を送信可能なアンテナとを備えるRFIDインレット7と、RFIDインレット7が埋設された樹脂層6と、樹脂層6上に設けられ可視情報を記録可能な可逆性感熱記録層3とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報記録媒体及びその製造方法、特に、RFIDインレットを備える情報記録媒体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、利用状況に応じて券面情報を書き換えるポイントカードや有効期限の表示を更新する交通券のカードといった一時的に記録層に可視情報を記録する情報記録媒体が提案されている(特許文献1参照)。この情報記録媒体としては、ロイコ化合物や、有機低分子/高分子を用いたものが知られている。一般的にロイコ化合物を用いた場合では、透明もしくは白の背景色から、主に青もしくは黒へ変化するものが用いられている。また、有機低分子/高分子を用いた場合では、透明から白色へ変化するものが用いられている。このように記録層に可視情報を記録する際には、記録装置により記録層に熱が加えられる。通常は、記録装置としてプリンタが用いられ、プリンタのサーマルヘッドにより情報記録媒体の記録層に熱が加えられる。
【0003】
この情報記録媒体としては、可視情報を記録層に記録するとともに、磁気記録層やICチップを内蔵し、クレジットカードサイズのものが提案されている。カードサイズは形態性・利便性・ハンドリングの観点から相対的に硬めの媒体が用いられてきた。最近ではICチップを使用して非接触で通信を行なうRFIDインレットを設けた情報記録媒体も提案されている。
【0004】
RFIDインレットを設けた情報記録媒体は、クレジットカードより小さいものから、大きいものまで多岐に亘り、例えばA5サイズやA4サイズのものが知られている。サイズが大きい情報記録媒体は、記録する可視情報(文字、図柄、コード等)の情報量が多い場合に用いられる。また、繰り返し可視情報を記録層に記録する際に、情報記録媒体が折れたり、しわになったりすることにより、記録層への可視情報の記録に支障をきたさない情報記録媒体が提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平2−188293号公報
【特許文献2】特開2004−226488号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の技術では、情報記録媒体を製造する際に、平面状の基材上にRFIDインレットを配置するとともに、RFIDインレットが配置されていない基材上の領域に接着層を設け、基材とその基材上に形成される樹脂層とを接着層により接着している。
しかしながら、RFIDインレットに比べて接着層は柔軟性が大きいため、樹脂層のRFIDインレットが配置されている領域が、RFIDインレットが配置されていない領域に比べて凸状に隆起し、樹脂層上に設けられる記録層にプリンタで可視情報を記録する際に、かすれが生じて印字品質が低下したり、RFIDインレットが埋設されている領域が削られたりするという問題があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、記録層に可視情報を記録する際に、かすれが生じて印字品質が低下したり、RFIDインレットが埋設されている領域が削られたりすることを防ぐことができる情報記録媒体及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、固有の識別情報を格納したICチップとこの識別情報を送信可能なアンテナとを備えるRFIDインレットと、前記RFIDインレットが埋設された樹脂層と、前記樹脂層上に設けられ可視情報を記録可能な記録層とを有することを特徴とする情報記録媒体である。
本発明では、RFIDインレットを樹脂層に埋設するようにしたので、RFIDインレットの厚みに起因する段差が情報記録媒体の表面に生じることを防ぐことができる。よって、プリンタなどで記録層に可視情報を記録する際に、かすれが生じて印字品質が低下したり、RFIDインレットが埋設されている領域が削られたりすることを防ぐことができる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、前記RFIDインレットが埋設された領域の樹脂層の厚みと前記RFIDインレットが埋設されていない領域の樹脂層の厚みとの差が100μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の情報記録媒体である。
本発明では、RFIDインレットが埋設された領域の樹脂層の厚みとRFIDインレットが埋設されていない領域の樹脂層の厚みとの差が100μm以下であるので、RFIDインレットの厚みに起因する情報記録媒体1aの表面上の凹凸が現れなくなる。よって、プリンタなどで記録層に可視情報を記録する際に、かすれが生じて印字品質が低下したり、RFIDインレットが埋設されている領域が削られたりすることを防ぐことができる。
【0009】
また、請求項3に記載の発明は、前記記録層上に保護層を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の情報記録媒体である。
本発明では、記録層上に保護層を設けるようにしたので、外部からの衝撃などにより記録層が損傷を受けることを防ぐことができる。
【0010】
また、請求項4に記載の発明は、前記樹脂層は、高分子エラストマーからなることを特徴とする請求項1から3までのいずれかの項に記載の情報記録媒体である。
本発明では、樹脂層を弾力性のある高分子エラストマーで形成するようにしたので、プリンタなどで記録層に可視情報を記録する際に、情報記録媒体がプリンタ内を通過できないといった事態が生じることを防ぐことができる。
【0011】
また、請求項5に記載の発明は、前記記録層は、ロイコ染料及び顕色剤を含むことを特徴とする請求項1から4までのいずれかの項に記載の情報記録媒体である。
本発明では、記録層にロイコ染料及び顕色剤を含めるようにしたので、着色と消色とを繰り返し行なうことができ、記録層に可視情報を複数回記録することができる。
【0012】
また、請求項6に記載の発明は、前記樹脂層と前記記録層とが接着剤により接着されていることを特徴とする請求項1から5までのいずれかの項に記載の情報記録媒体である。
本発明では、樹脂層と記録層とを接着する際に加熱する必要がないので、情報記録媒体の製造工程を簡略化することができる。
【0013】
また、請求項7に記載の発明は、固有の識別情報を格納したICチップとこの識別情報を送信可能なアンテナとからなるRFIDインレットを樹脂層に埋設する樹脂層埋設工程と、可視情報を記録可能な記録層を前記樹脂層上に形成する樹脂層形成工程とを有することを特徴とする情報記録媒体の製造方法である。
本発明では、プリンタなどで記録層に可視情報を記録する際に、かすれが生じて印字品質が低下したり、RFIDインレットが埋設されている領域が削られたりすることを防ぐことができる情報記録媒体を製造することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、情報記録媒体の記録層に可視情報を記録する際に、かすれが生じて印字品質が低下したり、RFIDインレットが埋設されている領域が削られたりすることを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態による情報記録媒体1aの構成を示す断面図である。この情報記録媒体1aは、保護層2、可逆性感熱記録層3(記録層とも称する)、基材4、接着層5、樹脂層6、RFIDインレット7からなる。樹脂層6には、RFIDインレット7が埋設されている。
樹脂層6上には、基材4が設けられている。樹脂層6と基材4とは、接着剤からなる接着層4により接着されている。樹脂層6としては、例えば、高分子エラストマーなどが用いられる。基材4上には、可視情報(文字、図柄、コード等)を記録可能な可逆性感熱記録層3が設けられている。可逆性感熱記録層3は、ロイコ染料及び顕色剤などを含んでいる。可逆性感熱記録層3上には、可逆性感熱記録層3を外部の衝撃から保護するための保護層2が設けられている。
【0016】
図2は、図1の情報記録媒体1aの樹脂層6の部分の構造を説明するための断面図である。図2に示すように、RFIDインレット7が埋設された領域r1の樹脂層6の厚みw1と、RFIDインレット7が埋設されていない領域r2の樹脂層6の厚みw2との差が100μm以下となるように、RFIDインレット7が樹脂層6中に埋設されている。
厚みw1と厚みw2との差が100μmを超えた場合、数枚の情報記録媒体1aを積層した時は影響が少ないが、300枚量程度の情報記録媒体1aを積層した場合には、RFIDインレット7が埋設された領域r1が、RFIDインレット7が埋設されていない領域r2に比べて30mm程度厚くなるため、プリンタに搭載できなくなってしまう。更に、RFIDインレット7が埋設されていない領域r2だけサーマルヘッドでより擦られることとなり、保護層2の耐久性も極端に悪くなってしまう。
【0017】
図3(a)〜図3(c)は、図2の構造を持つ樹脂層6及びRFIDインレット7を製造する方法の一例を説明するための断面図である。
始めに、図3(a)に示すように、容器8中に液体状の樹脂6aを深さがw3となるまで注入する。樹脂6aが固まったら、図3(b)に示すように、樹脂6a上の所定の場所にRFIDインレット7を配置する。そして、図3(c)に示すように、容器8中に液体状の樹脂6bを深さがw4となるまで注入する。
樹脂6bが固まると、図2に示すような、RFIDインレット7が樹脂中に埋設された樹脂層6ができる。なお、図3(c)において、樹脂6a及び6bが樹脂層6に相当し、w3+w4=w2(図2参照)である。
【0018】
図4は、本発明の実施形態によるRFIDインレット7(図1)の具体的な構成を示す断面図である。RFIDインレット7は、樹脂シート71上に、アルミニウムや銅などの金属からなるアンテナ72が設けられている。アンテナ72の一部領域上には、各ICチップ73に固有の識別情報を記憶するICチップ73が備え付けられている。アンテ782は、ICチップ73が記憶している固有の識別情報を、リーダー/ライターに送信する。
【0019】
以下に、各層の機能と使用される材料に関して説明する。
保護層2は、可逆性感熱記録層3を保護するためのものであって、例えばアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、エポキシ系樹脂、フェノキシ系樹脂等、あるいは紫外線硬化型樹脂や電子線硬化型樹脂等を単独または複合して使用可能である。また必要に応じ、感熱記録適性を疎外しない範囲でフィラー類やワックス類を滑り性、耐熱性、焼き付き防止等の効果を付与するために添加しても差し支えない。
保護層2の塗布厚は0.1〜10μm、好ましくは1〜5μmであるが、これに限定することなく、必要に応じ設けることができる。保護層2を設ける方法としては、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法、ロールコーティング法、マイクログラビアコート法、ダイコート法、カーテンコート法、スピンコート法等が使用可能である。
【0020】
可逆性感熱記録層3は、サーマルヘッドやレーザーあるいはホットスタンプ等を用いて感熱記録を行なうための層であり、温度に依存して色調が変化する材料から構成される。一回記録のみの感熱記録材料でも多数回記録可能な感熱記録材料でもよく、用途によって使い分けることができる。これらの材料は一般的にロイコ染料及び顕色剤と呼ばれる。
【0021】
ロイコ染料としてはトリフェニルメタンフタリド系、トリアリルメタン系、フルオラン系、フェノチジアン系、リオフェルオラン系、キサンテン系、インドフタリル系、スピロピラン系、アザフタリド系、クロメノピラゾール系、メチン系、ローダミンアニリノラクタム系、ローダミンラクタム系、キナゾリン系、ジアザキサンテン系、ビスラクトン系等の材料が使用可能である。具体的な化合物としては、例えば3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−フタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(別名クリスタルバイオレツトラクトン)、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジエチルアミノフタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−クロルフタリド、3,3−ビス(p−ジブチルアミノフェニル)フタリド、3−シクロヘキシルアミノ−6−クロルフルオラン、3−ジメチルアミノ−5,7−ジメチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7,8−ベンズフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロルフルオラン、3−(N−p−トリル−N−エチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、2−{N−(3'−トリフルオルメチルフェニル)アミノ}−6−ジエチルアミノフルオラン、2−{3,6−ビス(ジエチルアミノ)−9−(o−クロルアニリノ)キサンチル安息香酸ラクタム}、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(m−トリクロロメチルアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−クロルアニリノ)フルオラン、3−ジブチルアミノ−7−(o−クロルアニリノ)フルオラン、3−N−メチル−N−アミルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−メチル−N−シクロヘキシルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−5−メチル−7−(N,N−ジベンジルアミノ)フルオラン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、6'−クロロ−8'−メトキシ−ベンゾインドリノ−ピリロスピラン、6'−ブロモ−3'−メトキシ−ベンゾインドリノ−ピリロスピラン、3−(2'−ヒドロキシ−4'−ジメチルアミノフェニル)−3−(2'−メトキシ−5'−クロルフェニル)フタリド、3−(2'−ヒドロキシ−4'−ジメチルアミノフェニル)−3−(2'−メトキシ−5'−ニトロフェニル)フタリド、3−(2'−ヒドロキシ−4'−ジエチルアミノフェニル)−3−(2'−メトキシ−5'−メチルフェニル)フタリド、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(2',4'−ジメチルアニリノ)フルオラン、3−(2'−メトキシ−4'−ジメチルアミノフェニル)−3−(2'−ヒドロキシ−4'−クロル−5'−メチルフェニル)フタリド、3−モルホリノ−7−(N−プロピル−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−ピロリジノ−7−トリフルオロメチルアニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−5−クロロ−7−(N−ベンジル−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−ピロリジノ−7−(ジ−p−クロルフェニル)メチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−5−クロル−7−(α−フェニルエチルアミノ)フルオラン、3−(N−エチル−p−トルイジノ)−7−(α−フェニルエチルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−メトキシカルボニルフェニルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−5−メチル−7−(α−フェニルエチルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ピペリジノフルオラン、3−(N−ベンジル−N−シクロヘキシルアミノ)−5、6−ベンゾ−7−α−ナフチルアミノ−4’−ブロモフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−メシチジノ−4’、5’−ベンゾフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(2',4'−ジメチルアニリノ)フルオラン、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−{1,1−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)エチレン−2−イル}フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−{1,1−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)エチレン−2−イル}−6−ジメチルアミノフタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(1−p−ジメチルアミノフェニル1−フェニルエチレン−2−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(1−p−ジメチルアミノフェニル1−p−クロロフェニルエチレン−2−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4'−ジメチルアミノ−2'−メトキシ)−3−(1''−p−ジメチルアミノフェニル1''−p−クロロフェニル1'',3''−ブタジエン−4''−イル)ベンゾフタリド、3−(4'−ジメチルアミノ−2'−ベンジルオキシ)−3−(1''−p−ジメチルアミノフェニル1''−フェニル1'',3''−ブタジエン−4''−イル)ベンゾフタリド、3−ジメチルアミノ−6−ジメチルアミノ−フルオレン−9−スピロ−3'−(6'−ジメチルアミノ)フタリド、3,3−ビス{2−(p−ジメチルアミノフェニル)−2−(p−メトキシフェニル)エテニル}−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−ビス{1,1−ビス(4−ピロリジノフェニル)エチレン−2−イル}−5,6−ジクロロ−4,7−ジブロモフタリド、ビス(p−ジメチルアミノスチリル)−1−ナフタレンスルホニルメタン、3(N−メチル−N−プロピルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3,6−ビス(ジメチルアミノ)フルオランスピロ(9,3’)−6’−ジメチルアミノフタリド、3−ジエチルアミノ−6−クロル−7−アニリノフルオラン、3−N−エチル−N−(2−エトキシプロピル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−エチル−N−テトラヒドロフルフリルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−メシチジノ−4’,5’−ベンゾフルオラン、3−N−メチル−N−イソブチル−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−エチル−N−イソアミル−6−メチル−7−アニリノフルオラン等が使用可能である。
【0022】
また、顕色剤としては例えばフェノール性化合物、チオフェノール性化合物、チオ尿素誘導体、有機酸及びその金属塩等を適用することができ、その具体例としては以下に示すようなものが挙げられる。4、4'−イソプロピリデンビスフェノール、3、4'−イソプロピリデンビスフェノール、4、4'−イソプロピリデンビス(o−メチルフェノール)、4、4'−セカンダリーブチリデンビスフェノール、4、4'−イソプロピリデンビス(o−ターシャリーブチルフェノール)、4、4'−シクロヘキシリデンジフェノール、4、4'−イソプロピリデンビス(2−クロロフェノール)、2、2'−メチレンビス(4−メチル−6−ターシャリーブチルフェノール)、2、2'ーメチレンビス(4−エチル−6−ターシャリーブチルフェノール)、4、4'−ブチリデンビス(6−ターシャリーブチル−2−メチル)フェノール、1、1、3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−ターシャリブチルフェニル)ブタン、1、1、3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタン、4、4'−チオビス(6−ターシャリーブチル−2−メチル)フェノール、4、4'−ジフェノールスルホン、4、2'−ジフェノールスルホン、4−イソプロポキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホン、4−ベンジロキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホン、4、4'−ジフェノールスルホキシド、P−ヒドロキシ安息香酸イソプロピル、P−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、プロトカテキユ酸ベンジル、没食子酸ステアリル、没食子酸ラウリル、没食子酸オクチル、1、7−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)−3、5−ジオキサヘプタン、1、5−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)−3−オキサペンタン、1、3−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)−プロパン、2、2'−メチレンビス(4−エチル−6−ターシャリブチルフェノール)、1、3−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)−2−ヒドロキシプロパン、N、N'−ジフェニルチオ尿素、N、N'−ジ(m−クロロフェニル)チオ尿素、サリチルアニリド、5−クロロ−サリチルアニリド、サリチル−o−クロロアニリド、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸、チオシアン酸亜鉛のアンチピリン錯体、2−アセチルオキシ−3−ナフトエ酸の亜鉛塩、2−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、ヒドロキシナフトエ酸の亜鉛、アルミニウム、カルシウム等の金属塩、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)酢酸メチルエステル、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)酢酸ベンジルエステル、4−{β−(p−メトキシフェノキシ)エトキシ}サリチル酸、1、3−ビス(4−ヒドロキシクミル)ベンゼン、1、4−ビス(4−ヒドロキシクミル)ベンゼン、2、4'−ジフェノールスルホン、3、3'−ジアリル−4、4'−ジフェノールスルホン、α、α−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−α−メチルトルエンチオシアン酸亜鉛のアンチピリン錯体、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールS、4、4'−チオビス(2−メチルフェノール)、3,4−ヒドロキシ−4’−メチル−ジフェニルスルホン、4、4'−チオビス(2−クロロフェノール)等が使用可能である。
可逆性感熱記録層3の塗布厚は1〜30μm、好ましくは10〜20μmであるが、これに限定することなく、必要に応じ設けることができる。可逆性感熱記録層3を設ける方法としては、保護層2と同様の方法を取ることができる。
【0023】
基材4は、ある程度の耐熱性と強度を有するものが使用可能であり、1〜2000μm、好ましくは50〜1000μm程度の厚さのポリエステルフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリサルホンフィルム、アラミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、セロファン等のフィルムが使用可能である。
【0024】
接着層5は、各構成部材を一体化するための接着剤であり印刷法、コーティング法等により、膜厚0.1から200μm程度に設けることができる。使用される樹脂としては、例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂等、通常接着剤として用いられるもので良く、感熱接着剤、感圧接着剤等が用いられ特に限定されるものではない。
【0025】
樹脂層6は、高分子エラストマーが使用される。高分子エラストマーとしては特に限定されるものではなく、成型や加工適正の観点からオレフィン系熱可塑エラストマーやスチレン系熱可塑エラストマーが用いることができる。熱可塑性エラストマーはハードセグメントとソフトセグメントの共重合物から構成され、これらオレフィン系熱可塑エラストマーやスチレン系熱可塑エラストマーの混合物が好適である。
【0026】
RFIDインレット7はICチップ73とアンテナ72から基本的に構成されており(図4参照)、アンテナ72は共振周波数が125KHzや13.65MHz、900MHz、2.45GHz等に合う長さにアルミニウム、銅、銀、金等の金属薄層で形成されたループ状またはダイポール形のアンテナパターンとして作製してある。ここで、ICチップ73とアンテナ72の接合方法は異方導電性フィルムや異方導電性ペーストなどの接続用材料を用いて熱圧着することで行なうことができる。
【0027】
ICチップ73は集積回路として形成されるものであり、制御部、変復調部を有すると共にメモリー領域を有するものであって、メモリー領域には固有の識別情報などID情報が格納してある。またメモリー領域に格納されているID情報は制御部によって呼び出されてアンテナ72から発信することができるようにしてあり、アンテナ72から発信されたID情報をリーダー/ライターとして形成されるスキャナーで受信して読み取ることができるようにしてある。このID情報の発信・受信は、電源を有しない非接触ICカードの場合と同じ原理で行なわれるようになっている。すなわち、スキャナーからは微弱な電波で呼び出しが行なわれるようになっており、この電波で誘導電磁界が形成されている。そして誘導電磁界内にアンテナ72が位置する程度に、スキャナーをアンテナ72に近接させると、アンテナ72に電磁誘導で起電力が発生する。ICチップ73ではこの起電力を電源として、メモリー領域に格納されているID情報を制御部で呼び出してアンテナ72から送信することができ、このように発信されたID情報をスキャナーで受信して読み取ることができる。
【実施例】
【0028】
(実施例1)
図1において、RFIDインレット7は樹脂層6に埋設されている。この樹脂層6は熱可塑性エラストマーであり、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリプロピレン、およびこれらの共重合体を溶融させ、金型内の所定位置にRFIDインレット7を配置してこれに可塑性エラストマーを射出し成型した。
他方、厚み125μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる基材4に可逆性記録層塗料をバーコート法にて10μm塗布し可逆性感熱記録層3を得た。この上層に保護層塗料をバーコート法にて5μm塗布し保護層2を設けた。
上記で得られたRFIDインレット7が埋設された樹脂層6と可逆性感熱記録層3と感圧接着剤を用いて一体化し情報記録媒体1aを製造した。
使用した塗料は以下の通りである。
【0029】
<可逆性感熱記録層塗料>
・2−(2−クロロフェニルアミノ)−6−ジエチルアミノフルオラン(ロイコ化合物) ・・・ 20重量部
・ビスフェノール酢酸−ラウリルアミン塩(顕減色剤) ・・・ 40重量部
・メタクリル樹脂(バインダー樹脂) ・・・ 30重量部
・N−ステアリルステアリン酸アマイド(増感剤) ・・・ 40重量部
・トルエン ・・・500重量部
【0030】
<保護層塗料>
・アクリル系樹脂(三菱レイヨン社製 BR−80) ・・・ 50重量部
・炭酸カルシウム(白石工業株式会社製 白艶華O、平均粒子径0.03μm)
・・・1.5重量部
・トルエン ・・・100重量部
・メチルエチルケトン ・・・100重量部
【0031】
<接着層塗料>
・ポリエステル樹脂(富士写真フィルム株式会社製 スタフィックスSOC−30M) ・・・ 50重量部
・メチルエチルケトン ・・・ 50重量部
・トルエン ・・・ 50重量部
【0032】
(実施例2)
実施例1の接着層5を感熱接着剤として、熱プレス法を用いて、プレス温度100℃にて一体化し情報記録媒体1aを成型した以外は実施例1と同様とした。
【0033】
(比較例1)
比較例1として、図5に示すように、実施例1(図1)の樹脂層6にRFIDインレット7を埋設せずに樹脂層6上にRFIDインレット7を配置し、接着層5で一体化し情報記録媒体1bを製造した。
【0034】
以上の実施例1、実施例2、比較例1について、連続100枚の印字テストを行ない、印字品質、段差に関して評価を行なった。この内容を表1に示した。
【0035】
【表1】

【0036】
印字品質としては、プリンタで可視情報を記録層3に印字する際に、印字した文字等にかすれが生じたか否かに基づいて評価を行なった。○は印字した文字等にかすれが生じなかったことを示し、△は印字した文字等にかすれが若干生じたことを示している。
また、耐久性としては、ICインレット7が埋設されている領域r1に削れが生じたか否かに基づいて評価を行なった。○は削れが生じなかったことを示し、×は削れが生じたことを示している。
また、段差は、実施例1及び実施例2では、RFIDインレット7が埋設された領域r1の樹脂層6の厚みw1と、RFIDインレット7が埋設されていない領域r2の樹脂層6の厚みw2との差を示している(図2参照)。また、比較例1では、RFIDインレット7と樹脂層6とを併せた厚みw5と、樹脂層6の厚みw6との差を示している(図5参照)。
【0037】
表1からわかるように、実施例1及び実施例2では、段差が100μm以下であったので、印字品質と耐久性がともに良好であった。
一方、比較例1では、段差が250μmであったので、RFIDインレット7が配置されている領域周辺に、印字のかすれが発生した。また、比較例1では、繰返しテストを行なった結果、RFIDインレット7が配置されている領域周辺の保護層2が剥がれ落ちて耐久性のないものであった。
【0038】
上述したように、本発明の実施形態による情報記録媒体1aによれば、RFIDインレット7を樹脂層6に埋設するようにしたので、RFIDインレット7の厚みに起因する段差が情報記録媒体1aの表面に生じることを防ぐことができる。よって、プリンタなどで可逆性感熱記録層3に可視情報を記録する際に、かすれが生じて印字品質が低下したり、RFIDインレット7が埋設されている領域が削られたりすることを防ぐことができる。
なお、上述した情報記録媒体1aは、電子カンバン、工程指示書、表示カード、RFIDタグの表示体としてプリンタで印字表示、タグリーダライタでタグ情報の書き換えを行なう際などに用いられる。
【0039】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施形態による情報記録媒体1aの構成を示す断面図である。
【図2】図1の情報記録媒体1の樹脂層6の部分の構造を説明するための断面図である。
【図3】図2の構造を持つ樹脂層6及びRFIDインレット7を製造する方法の一例を説明するための断面図である。
【図4】本発明の実施形態によるRFIDインレット7(図1)の具体的な構成を示す断面図である。
【図5】比較例1の情報記録媒体1bの構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1a、1b・・・情報記録媒体、2・・・保護層、3・・・可逆性感熱記録媒体、4・・・基材、5・・・接着層、6・・・樹脂層、7・・・RFIDインレット、8・・・容器、71・・・樹脂シート、72・・・アンテナ、73・・・ICチップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固有の識別情報を格納したICチップとこの識別情報を送信可能なアンテナとを備えるRFIDインレットと、
前記RFIDインレットが埋設された樹脂層と、
前記樹脂層上に設けられ可視情報を記録可能な記録層と、
を有することを特徴とする情報記録媒体。
【請求項2】
前記RFIDインレットが埋設された領域の樹脂層の厚みと前記RFIDインレットが埋設されていない領域の樹脂層の厚みとの差が100μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の情報記録媒体。
【請求項3】
前記記録層上に保護層を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の情報記録媒体。
【請求項4】
前記樹脂層は、高分子エラストマーからなることを特徴とする請求項1から3までのいずれかの項に記載の情報記録媒体。
【請求項5】
前記記録層は、ロイコ染料及び顕色剤を含むことを特徴とする請求項1から4までのいずれかの項に記載の情報記録媒体。
【請求項6】
前記樹脂層と前記記録層とが接着剤により接着されていることを特徴とする請求項1から5までのいずれかの項に記載の情報記録媒体。
【請求項7】
固有の識別情報を格納したICチップとこの識別情報を送信可能なアンテナとからなるRFIDインレットを樹脂層に埋設する樹脂層埋設工程と、
可視情報を記録可能な記録層を前記樹脂層上に形成する樹脂層形成工程と、
を有することを特徴とする情報記録媒体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−80760(P2008−80760A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−266439(P2006−266439)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】