説明

意匠性に優れたZn−Al−Si合金めっき鋼板の製造方法

【課題】 ライン内焼鈍炉を備えた連続式溶融めっき設備で、不めっきやめっき密着性の低下を伴わずに、スパングル模様が微細化せずに開華した意匠性に優れた溶融Zn−Al−Si合金めっき鋼板を製造する。
【解決手段】 焼鈍炉内の雰囲気ガスの露点と水素濃度が下記 (1)〜(3) 式を満たす条件で焼鈍を行う。
(1) +10℃≧ (露点) ≧−40℃(2) 2%≦ (水素濃度) ≦30%、残部窒素(3) (露点) ≧[(水素濃度)×2−(焼鈍温度)/10+10]℃

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、建材、家電用途等に適した、高耐食性で意匠性に優れた溶融Al−Zn系めっき鋼板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】建材、家電用途には、従来より溶融亜鉛めっき鋼板が使用されていたが、近年、より高耐食性・高耐久性を有する溶融Al−Zn系めっき鋼板の使用量が増加している。このうち、めっき皮膜中にAlを約55wt%、Siを1〜2wt%含有する溶融Zn-Al−Si合金めっき鋼板は、表面に美麗なスパングル模様を有していることから、意匠性もひとつの特徴である。
【0003】しかし、この溶融Zn−Al−Si合金めっき鋼板を連続式溶融めっき設備で製造する場合、表面のスパングル模様には、製造チャンスごとにコイル間で、さらには同じコイル内でも長手方向および幅方向で、大きさのバラツキがよく見られる。例えば、母材コイルが変わると、同じめっき条件でめっきしても、スパングルの大きさが異なることがしばしばある。特に、非常に微細なスパングルが形成される場合があり、このような製品は意匠性が劣るため、外観が重要視される用途には通常用いることができない。
【0004】この溶融Zn−Al−Si合金めっきのスパングル模様のバラツキを抑える技術としてこれまでに下記の手法が提案されている。まず、母材鋼板に関しては次の提案がある:(1) 特開平9−235661号公報:鋼板表面を0.05μm以上研削する、(2) 特開平10−18009 号、同10−18013 号各公報:鋼板表面の粗さとうねりを制御する、(3) 特開平10−18010 号、同10−18012 号各公報:鋼板表面の集合組織、結晶粒径を制御する。
【0005】めっき条件に関しては、次の提案がある:(4) 特開平9−241814号公報:めっき浴浸漬時間を2秒以上とする、(5) 特開平9−25550 号公報:めっき設備のスナウト内の露点、水素濃度、浴温を管理する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記手法はそれぞれ以下のような問題がある。まず、(1) 、(2) 、(3) の手法では、圧延工程などの、連続式めっき設備の前の工程に制約をかけることになり、また、条件に外れた鋼板をめっき原板として用いることができなくなる。
【0007】(4) の手法は、めっき条件だけでスパングル模様を制御できる点で好都合であるが、浴中ロールの昇降装置等の設備を新たに設ける必要があり、コスト的に不利である。また、浸漬時間を長くしすぎると、スパングルが全体に微細化し、本来の溶融Zn−Al−Si合金めっき鋼板の持つ意匠性が損なわれる。
【0008】(5) の手法は、スナウト内の雰囲気制御により、めっき浴からの亜鉛蒸気の発生を抑えるものである。めっき浴から蒸発した亜鉛蒸気がスナウト壁面で凝縮して付着し、鋼板表面やめっき浴に落下付着して、めっきの欠陥もしくはスパングルのムラの原因となる。従って、この手法は、例えばめっき母材(例、コイルの変更)に起因するような一般に見られるスパングル模様のバラツキをそれ以上には悪化させないというだけであり、めっき母材に起因するバラツキそれ自体を抑えることはできない。
【0009】本発明の課題は、上記のような問題点を伴わずに、連続式溶融めっき設備で、スパングル模様のバラツキが少なく、特にスパングル模様の微細化を防止することができる溶融Zn−Al−Si合金めっき鋼板の製造方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、溶融Zn−Al−Si合金めっき鋼板のスパングル模様の微細化を防止する操業条件について検討した結果、めっき密着性の確保に必要なめっき金属との合金化反応を促進する目的でめっき前に行われる、還元雰囲気下での焼鈍による鋼板表面の活性化処理において、鋼板表面の反応性をある程度抑制した方がスパングル模様が全体として大きくなり、微細なスパングルが発生しにくくなることを見出した。
【0011】従来の代表的な焼鈍条件は次の通りである:焼鈍炉内の露点:−40℃以下、雰囲気ガス:水素+窒素 (水素濃度5〜75%) 、焼鈍温度:約 600℃〜800 ℃超 (材質、機械特性により異なる) 。
【0012】しかし、このような条件下で焼鈍を行うと、めっき前の鋼板表面が高度に活性化され、反応性が非常に高くなるため、溶融めっき浴侵入時に鋼板表面とめっき金属との反応が速すぎて、スパングルが微細になり、また不均一化するものと考えられる。
【0013】これとは逆に、例えば、鋼板を酸化性の大気雰囲気で焼鈍した後、溶融めっき浴に浸漬すると、安定して美麗なスパングルを得ることができる。しかし、この場合には、鋼板表面の反応性が大きく阻害されてしまい、鋼板表面とめっき浴がほとんど反応しなくなるため、めっき密着性が全く得られず、不めっきも発生しやすくなる。
【0014】そこで、めっき密着性を確保し、かつ不めっきを発生させない範囲で、鋼板表面の反応性を適度に抑制することにより、スパングル模様のバラツキや微細化を抑えるという観点から検討した結果、焼鈍炉内の還元ガス雰囲気の露点と水素濃度を制御することにより、これが可能となることが判明した。
【0015】本発明は、Al:30〜70重量%、Si:0.05〜2.0 重量%、残部:Znおよび不可避不純物からなるめっき組成を有する溶融Zn−Al−Si合金めっき鋼板を、ライン内焼鈍炉を備えた連続式溶融めっき設備で製造する際に、焼鈍炉内の還元ガス雰囲気および露点が下記 (1)〜(3) 式を満たす条件で焼鈍を行うことを特徴とする、めっき表面のスパングルが微細化せずに開華した、意匠性に優れた溶融Zn−Al−Si合金めっき鋼板の製造方法である。
【0016】(1) +10℃≧ (露点) ≧−40℃(2) 2%≦ (水素濃度) ≦30%、残部窒素(3) (露点) ≧[(水素濃度)×2−(焼鈍温度)/10+10]℃。
【0017】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の溶融Zn−Al−Si合金めっき鋼板の製造方法について詳しく説明する。
【0018】本発明の方法に従って溶融Zn−Al−Si合金めっきを施す母材鋼板の鋼種については特に制限されない。例えば、Alキルド鋼、Ti, Nb等を添加した極低炭素鋼、C、P、Si、Mn等を加えた410N級以上の高強度鋼等を用いることができる。また、母材鋼板は冷延鋼板と熱延鋼板のいずれでもよく、それらの圧延条件についても特に制限されない。
【0019】母材鋼板は、必要に応じてアルカリ脱脂等の前処理を施した後、ライン内焼鈍装置を備えた連続式溶融めっき設備を用いてZn−Al−Si合金めっきを施す。使用する連続式溶融めっき設備は、ライン内焼鈍炉を備えているものであればどのようなものでもよい。この種の連続式溶融めっき設備は溶融亜鉛めっき用に開発されたのものであり、主要装置として、鋼板表面清浄化装置 (酸化炉、無酸化炉等) 、焼鈍炉、溶融めっき装置、冷却装置、化成処理装置を一般に備えている。
【0020】この種の一般的なめっき設備においては、鋼板をまず酸化炉または無酸化炉で加熱して、表面に付着した油分を除去し、鋼板表面を清浄化する。この加熱により鋼板表面が酸化状態または弱酸化状態になるので、次の焼鈍炉内で還元雰囲気下に焼鈍を行う。この還元雰囲気での焼鈍により、歪みの除去という焼鈍本来の作用に加えて、鋼板表面の酸化鉄が還元されて表面が活性化される。それにより鋼板表面とめっき金属との合金化反応が容易になり、めっき密着性が確保される。従って、還元雰囲気での焼鈍はめっき密着性を得るのに必要な処理である。
【0021】焼鈍炉内の還元雰囲気は、一般に乾燥水素ガスと乾燥窒素ガスを焼鈍炉に供給することにより保持される。従来は、鋼板表面をできるだけ活性化するように、焼鈍炉には乾燥水素ガスと乾燥窒素ガスだけを供給して、焼鈍炉内の還元雰囲気ガスの露点をなるべく低くなるように管理していた。
【0022】しかし、このような条件下での焼鈍により鋼板表面を活性化して反応性を高めることが、鋼板を溶融めっき槽に浸漬した時のスパングルの微細化や不均一化の原因となりうることを本発明者らは見出した。スパングル微細化の機構の詳細は不明だが、本発明者らは鋼板表面の還元の進行により、めっき浴との反応性が高くなりすぎるためと推定した。そのため、本発明では、スパングルを大きく開華させる目的で、鋼板表面の反応性を、不めっきやめっき密着性の低下が発生しない範囲で抑制する。
【0023】即ち、還元雰囲気に保持されている焼鈍炉内のガス雰囲気を、下記 (1)〜(3)式を満たすように制御しながら、焼鈍を行う:(1) +10℃≧ (露点) ≧−40℃(2) 2%≦ (水素濃度) ≦30%、残部窒素(3) (露点) ≧[(水素濃度)×2−(焼鈍温度)/10+10]℃。
【0024】焼鈍炉内のガス雰囲気の露点が高すぎるか、または水素濃度が低すぎると、鋼板表面の還元による活性化が不十分となり、鋼板−めっき界面に成長する合金層が十分または均一に成長しないため、めっきの密着性に劣り、甚だしい場合には不めっきもしくはめっき剥離が発生する。一方、この露点が低すぎるか、または水素濃度が高すぎると、鋼板表面の反応性が高すぎて、スパングルが微細化する傾向があり、スパングルのバラツキも大きくなる場合がある。また、焼鈍温度もスパングルの開華状態に影響する。即ち、(3) 式に規定したように、焼鈍温度が低くなるほど、また水素濃度が高くなるほど、露点を高めに制御しないと、スパングルの微細化が起こり易くなる。つまり、露点の下限が高くなり、露点の管理範囲が狭くなる。
【0025】なお、本発明において、焼鈍温度とは、焼鈍炉内の最高鋼板温度を意味する。また、水素濃度は、常温での水素の体積割合である。操作条件や測定バラツキを考えると、焼鈍炉内のガス雰囲気は、露点を−35℃〜+5℃、水素濃度を5〜15%の範囲とし、焼鈍温度との関係で上記(3) 式を逸脱しない条件で焼鈍を行うことが好ましい。
【0026】本発明では、焼鈍炉内の露点を高めに管理するので、従来のように乾燥水素ガスと乾燥窒素ガスだけを焼鈍炉に供給することでは所望の露点を得ることができない場合が多い。その場合には、焼鈍炉内の露点を高めるように、焼鈍炉に水分を水および/または水蒸気の形で供給する必要がある。この水分は、水素ガスまたは窒素ガスの一方または両方に未乾燥のガスを使用することでも供給できるが、露点を厳密に管理することが困難となるので、焼鈍炉に乾燥水素ガスと乾燥窒素ガスの配管系とは別に、制御された量の水および/または水蒸気を供給できる配管系を付設して、露点を計測しながら露点管理に必要な量の水分を制御した量で供給することが好ましい。
【0027】焼鈍温度は、主に鋼板の機械特性の確保に必要な温度として設定されるが、通常は約600 ℃〜800 ℃超の範囲である。焼鈍炉内の温度プロファイルは特に制限されない。焼鈍温度がめっき浴侵入時の鋼板温度と同一温度である場合には、焼鈍炉内は一定温度に保持されることになる。それより焼鈍温度が高くなると、焼鈍炉内には、加熱と冷却といった温度変化が見られるので、炉内は、冷却帯、または加熱帯と冷却帯、または加熱帯と均熱帯と冷却帯、に区分される。冷却帯の後に、めっき槽侵入温度に保持する低温保持帯を有する場合もある。
【0028】本発明において「焼鈍炉内」とは、焼鈍炉の入側または加熱帯から冷却帯までの間である。従って、低温保持帯は焼鈍炉内に含まれない。焼鈍炉内の鋼板の滞在時間 (即ち、焼鈍時間) は通常は3〜5分間程度である。最高到達板温度にあるのは通常は1分前後である。
【0029】なお、焼鈍炉内の露点および水素濃度を、「焼鈍炉内」の全帯域について上記範囲に制御する必要はないが、炉内は露点や水素濃度はそれほど変動しないので、できれば全帯域をそのように管理する。露点や水素濃度が変動する場合には、少なくとも焼鈍炉内の最高到達板温度付近で本発明で規定する範囲内となるようにすることが好ましい。
【0030】焼鈍炉内で還元雰囲気下での焼鈍を受けることにより表面が活性化された鋼板は、必要により冷却帯で冷却されて所定のめっき浴侵入温度まで温度を低下させた後、または低下させながら、通常は鋼板を周囲雰囲気から遮断する目的で設置されたスナウトを経て、溶融めっき浴に浸漬され、Zn−Al−Si合金めっきが施される。めっき浴侵入温度は、通常はめっき浴温度±約30℃の温度範囲である。
【0031】特開平9−25550 号公報に記載されているように、スナウトの露点はめっき品質 (めっきムラ、めっき密着性) に影響を及ぼす。しかし、スナウト内は不活性ガス雰囲気に保持され、かつ鋼板の滞在時間が短いので、鋼板表面の反応性、従ってスパングルへの影響は小さい。即ち、スパングルの開華状況は、スナウトより前の焼鈍炉において決定されるのである。
【0032】溶融めっき浴の組成はAl:30〜70重量%、Si:0.05〜2.0 重量%、残部:Znおよび不可避不純物である。Al含有量は、これより高くても低くても表面の美麗なスパングル模様が発現しない。Si含有量は、低すぎるとやはりスパングル模様が発現せず、高すぎると不めっきの表面欠陥が生じやすくなる。好ましい範囲は、Al:45〜65重量%、Si: 1.2〜1.8 重量%で、さらに好ましくはAl:50〜58重量%である。
【0033】上記以外のめっき条件については、表面品質、性能、操業に影響を及ぼさない限り特に制限されず、従来より溶融Zn−Al−Si合金めっきに採用されている条件と同様でよい。めっき付着量は、普通には片面当たり30〜150 g/m2の範囲内である。めっきは通常は鋼板の両面に施すが、既知の手段で片面めっきにすることも可能である。
【0034】本発明の方法により溶融Zn−Al−Si合金めっきを施した鋼板は、化成処理せずに使用しても、高い耐食性を示すことができる。しかし、連続式溶融めっき設備に一般に設置されている化成処理装置において適当な化成処理を施してもよく、それによりさらに耐食性が向上する。化成処理は、リン酸亜鉛処理とすることも可能であるが、クロメート処理の方が耐食性改善に有効であるので好ましい。
【0035】クロメート処理は、塗布型、反応型、電解型のいずれの処理法でもよく、また処理液組成や処理方法も特に制限されず、従来のものから適当に選択することができる。好ましいクロメート処理法は、短い処理時間で耐食性の向上効果が大きい塗布型クロメート処理である。クロメート処理により形成するクロメート皮膜の付着量は、Cr金属換算量として3〜150 mg/m2 の範囲内でよい。
【0036】溶融Zn−Al−Si合金めっき鋼板は、上記のようにクロメート処理を施し、または施さずに、薄膜の樹脂被覆を施すこともできる。被覆に適した樹脂種としては、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル、エポキシ、ビニルブチラール等が挙げられる。この樹脂被覆は、溶剤系の樹脂塗料も使用できるが、樹脂を水に分散ないし溶解させた水系の樹脂塗料を用いて行うことが好ましい。樹脂の被覆厚みは5μm以下とすることが好ましい。樹脂被覆がこれより厚膜になると、コスト増大に加えて成形時に樹脂カスが発生し、外観が悪化する。より好ましい被覆厚みは 0.5〜3.0 μmの範囲である。
【0037】
【実施例】めっき母材として、3種類 (A、B、C) の低炭素Alキルド鋼の冷延鋼帯 (板厚0.6 mm×920 mm) を用いた。これらは後述するように、めっき条件が同一であっても、得られるスパングルの大きさが異なっている。
【0038】これら3種類の鋼帯を、無酸化炉と焼鈍炉を備えた連続式溶融めっき設備を用いて、表1に示す条件 (詳細な焼鈍条件は表3に示す) でZn−Al−Si合金めっきした。焼鈍炉には、H2、N2、水蒸気の各ガスの配管系をそれぞれ独立して加熱帯に設置した。炉内のガス雰囲気および露点は、これらを炉内の板温が最高温度に達する位置に設置した水素濃度計および露点計で計測しながら、各ガスの流量を調整することによって制御した。
【0039】
【表1】


【0040】得られた溶融Zn−Al−Si合金めっき鋼帯の試験片を用いて、スパングルとめっき密着性を下記のようにして評価した。結果を焼鈍条件と一緒に表3 (焼鈍温度600 ℃) 、表4 (同680 ℃) 、表5 (同750 ℃) 、表4 (同850 ℃) にまとめて示す。
【0041】スパングルの評価方法まず、明らかにスパングル模様が異なる7段階の標準サンプルを準備し、これらのサンプルを、そのスパングルの大きさにより、0 (非常に微細) から6 (非常に粗大) に分類した。この数値をスパングルコードとする。
【0042】一方、各標準サンプルの表面拡大写真を撮影し、その写真上で、実際の長さで30 mm に相当する線分を横切るスパングル境界線の数をカウントして、次式によりスパングル径を求めた:スパングル径=30mm/境界線の数このスパングル径の測定を、1標準サンプルあたり5回繰り返し、その平均値を「スパングル径」とした。このスパングル径とスパングルコードとの対応は、表2のようになる。
【0043】
【表2】


【0044】実施例で得られた各溶融めっき鋼帯のスパングルの大きさ (スパングル径) は、上記標準サンプルと目視で比較対照して、スパングルの大きさが最も近い標準サンプルのスパングルコードを記録したものである。A、B、Cの3種類の母材のサンプルがいずれもコード2以上となったときを合格 (○) とした。
【0045】めっき密着性の評価方法めっきの密着性は、得られためっき鋼帯の全幅(920mm) について、ロックフォーマーを用いて密着曲げを行った。板幅方向で全幅にわたって剥離の生じないものだけを合格 (○) とし、残りを不合格 (×) とした。スパングルとめっき密着性 (A、B、C) の全部が○の場合を、総合評価が合格 (○) とした。
【0046】
【表3】


【0047】
【表4】


【0048】
【表5】


【0049】
【表6】


【0050】表3〜6に示した各焼鈍温度 (600 ℃、680 ℃、750 ℃、850 ℃) での焼鈍条件 (露点、水素濃度) と、スパングルおよび密着性との関係を図1に示す。この図で、実線で囲まれた領域がスパングルおよび密着性がともに良好な焼鈍条件の範囲である。
【0051】表3〜6からわかるように、焼鈍条件とめっき条件が同じであっても、母材が変わるとスパングルの大きさがかなり変動することがある。しかし、図1および表3〜6に示すように、特に焼鈍温度が低い場合には、本発明で規定された範囲内の条件で焼鈍してから溶融めっきすることにより、母材の種類にかかわらず、密着性を損ねずに、スパングルが微細化せずほぼ均一に開華した美麗なスパングルを得ることができる。一方、本発明で規定された条件から高露点または高水素濃度側に外れて焼鈍すると、めっき密着性が不良となる。逆に、本発明で規定された条件から低露点または低水素濃度側に外れて焼鈍すると、スパングルが微細化する。微細なスパングルは、スパングル径のバラツキも大きくなる。
【0052】
【発明の効果】本発明により、めっき密着性を損なわずに、コイル間もしくはコイル内のスパングルのバラツキ (特にスパングルの微細化) が抑制され、意匠性に優れた溶融Zn−Al−Siめっき鋼板を安定して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の結果を、焼鈍条件 (焼鈍温度、露点、水素濃度) とスパングルおよび密着性との関係として示す。太線で囲まれた部分がスパングルと密着性がともに良好である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 Al:30〜70重量%、Si:0.05〜2.0 重量%、残部:Znおよび不可避不純物からなるめっき組成を有する溶融Zn−Al−Si合金めっき鋼板を、ライン内焼鈍炉を備えた連続式溶融めっき設備で製造する際に、焼鈍炉内の還元ガス雰囲気および露点が下記 (1)〜(3) 式を満たす条件で焼鈍を行うことを特徴とする、めっき表面のスパングルが微細化せずに開華した、意匠性に優れた溶融Zn−Al−Si合金めっき鋼板の製造方法。
(1) +10℃≧ (露点) ≧−40℃(2) 2%≦ (水素濃度) ≦30%、残部窒素(3) (露点) ≧[(水素濃度)×2−(焼鈍温度)/10+10]℃
【請求項2】 請求項1記載の方法で製造された溶融Zn−Al−Si合金めっき鋼板に、クロメート処理を施すことを特徴とする、化成処理溶融Zn−Al−Si合金めっき鋼板の製造方法。
【請求項3】 請求項1記載の方法で製造された溶融Zn−Al−Si合金めっき鋼板または請求項2記載の方法で製造された化成処理溶融Zn−Al−Si合金めっき鋼板に、厚さ5μm以下の薄膜樹脂被覆を施すことを特徴とする、有機被覆溶融Zn−Al−Si合金めっき鋼板の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2000−219949(P2000−219949A)
【公開日】平成12年8月8日(2000.8.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−24258
【出願日】平成11年2月1日(1999.2.1)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】