説明

感圧性接着剤組成物

【目的】 適度な接着特性を必要とする用途に対して、無臭性の感圧性接着剤組成物を提供する。
【構成】 23℃における飽和蒸気圧が2.6×10-3mmHg以下で、アルキル基の炭素数が11〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主モノマ―とするポリマ―を用いて、感圧性接着剤組成物を構成させる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、無臭性の感圧性接着剤組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、感圧性接着剤は、一般に、臭気が残つており、製造・加工時や使用時の作業環境に問題がある。この臭気の原因は、未反応モノマ―、残存溶剤、各種添加剤などがあるが、最も強くまた不快なものは未反応モノマ―である。
【0003】このような臭気の問題を改善した感圧性接着剤として、たとえば、特開平2−115291号公報には、アルキルグリシジルエ―テルとアクリル酸との付加反応などで得られる特定のモノマ―を重合ないし共重合させて得たポリマ―を使用したものが知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかるに、この公知の感圧性接着剤では、使用ポリマ―の種類が限られ、また接着特性と臭気の問題を両立させることが難しい場合もあり、この種の接着剤とは異なる新規な無臭性の感圧性接着剤の出現が望まれていた。
【0005】本発明は、上記の事情に鑑み、適度な接着特性を必要とする用途に対して、無臭性の感圧性接着剤組成物を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の目的を達成するため、鋭意検討した結果、特定のモノマ―組成からなる接着性ポリマ―を用いることにより、無臭性の感圧性接着剤組成物が得られることを知り、本発明を完成するに至つた。
【0007】すなわち、本発明は、23℃における飽和蒸気圧が2.6×10-3mmHg以下で、アルキル基の炭素数が11〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主モノマ―とするポリマ―を含んでなる感圧性接着剤組成物に係るものである。
【0008】
【発明の構成・作用】本発明において主モノマ―として使用する(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、上述のように、アルキル基の炭素数が11〜18の範囲にあることが必要で、この炭素数が11未満のものでは、室温における飽和蒸気圧が高くなつて、未反応モノマ―の臭気がひどくなり、またアルキル基の炭素数が18を超えるものでは、実質上感圧性接着剤としての機能が発揮されない。
【0009】また、アルキル基の炭素数が上記範囲の(メタ)アクリル酸アルキルエステルであつても、その炭素鎖の性状や不飽和度などによつては、室温における飽和蒸気圧が高くなることもある。このため、本発明では、上記エステルの中で、とくに23℃における飽和蒸気圧が2.6×10-3mmHg以下のものを使用する。これより高い飽和蒸気圧となると、臭気を感じるようになる。
【0010】本発明の主モノマ―として、上記の要件を満たす(メタ)アクリル酸アルキルエステルの例としては、ラウリル(メタ)アクリレ―ト、ミリスチル(メタ)アクリレ―ト、 イソミリスチル(メタ)アクリレ―ト、ステアリル(メタ)アクリレ―トなどが挙げられる。これらの中から、その1種を単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0011】本発明においては、上記の主モノマ―とともに、これと共重合可能な他のモノマ―を併用してもよい。併用可能な他のモノマ―としては、アルキル基の炭素数が1〜10の(メタ)アクリル酸アルキルエステルのほか、カルボキシル基含有モノマ―、水酸基含有モノマ―、アミノ基含有モノマ―、アミド基含有モノマ―、グリシジル基含有モノマ―や、スルホプロピル(メタ)アクリレ―ト、N−ビニルカプロラクタム、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニルなどの各種のエチレン性不飽和モノマ―などが挙げられ、これらの中から、その1種を単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0012】上記のアルキル基の炭素数が1〜10の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、たとえば、メチル(メタ)アクリレ―ト、エチル(メタ)アクリレ―ト、プロピル(メタ)アクリレ―ト、ブチル(メタ)アクリレ―ト、オクチル(メタ)アクリレ―ト、ノニル(メタ)アクリレ―トなどがある。
【0013】上記のカルボキシル基含有モノマ―としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸などが、水酸基含有モノマ―としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシビニルエ―テルなどが、アミノ基含有モノマ―としては、N・N´−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレ―ト、N−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレ―トなどが、アミド基含有モノマ―としては、(メタ)アクリルアミドなどが、グリシジル基含有モノマ―としては、グリシジル(メタ)アクリレ―トなどが、それぞれ挙げられる。
【0014】主モノマ―と、これと共重合可能な他のモノマ―との使用割合としては、主モノマ―が50〜100重量%、これと共重合可能な他のモノマ―が50〜0重量%であるのがよく、より好ましくは主モノマ―が70〜100重量%、これと共重合可能な他のモノマ―が30〜0重量%である。主モノマ―が50重量%より少なくなると、臭気性の面で問題が生じてくる。
【0015】本発明においては、上記の主モノマ―またはこれと共重合可能な他のモノマ―との混合物を用いて、これを公知の重合方法、たとえば、溶液重合、乳化重合、塊状重合などの方法により、重合また共重合させて、ポリマ―を生成する。この際、重合後の反応液中に残存する未反応モノマ―が10重量%以下となるように、重合率を90重量%以上、好ましくは95重量%以上、さらに好ましくは99重量%以上となるようにするのがよい。
【0016】このようにして得られるポリマ―は、分子量が重量平均で20万〜180万、好ましくは30万〜120万であるのがよい。また、このポリマ―中に含まれる未反応モノマ―は、既述のように、10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下である。このような未反応モノマ―量とするため、必要なら重合後に未反応モノマ―の除去処理を施してもよい。
【0017】本発明においては、このようなポリマ―を主成分とし、これに必要に応じて、粘着付与剤、可塑剤、乳化剤、軟化剤、充てん剤、顔料、染料などの公知の添加剤を含ませて、感圧性接着剤組成物とする。
【0018】この感圧性接着剤組成物は、適宜、架橋処理を施してもよい。架橋処理としては、ポリマ―合成時にエチレングリコ―ルジ(メタ)アクリレ―ト、ペンタエリスリト―ルジ(メタ)アクリレ―ト、トリメチロ―ルプロパントリ(メタ)アクリレ―トなどの多官能性モノマ―を共重合させて、内部架橋する方法や、重合後のポリマ―に多官能イソシアネ―ト系化合物、多官能エポキシ系化合物、過酸化物系化合物などの架橋剤を添加して、外部架橋する方法があり、その他電子線や紫外線などの放射線を照射して架橋する方法であつてもよい。
【0019】本発明の感圧性接着剤組成物は、任意の支持フイルムやシ―ト上に直接塗布,乾燥するか、セパレ―タ上に塗布,乾燥したのち、任意の支持フイルムやシ―トに転写するなどして、感圧性接着テ―プやシ―トとすることができる。また、通常の製造方法にしたがい、両面接着テ―プやシ―トとしてもよい。
【0020】
【発明の効果】以上のように、本発明においては、特定のモノマ―組成からなる接着性ポリマ―を用いたことにより、適度な接着特性を必要とする用途に対して、無臭性の感圧性接着剤組成物を提供することができる。
【0021】
【実施例】つぎに、本発明の実施例を記載してより具体的に説明する。なお、以下において部とあるのは重量部を意味する。また、主モノマ―について23℃における飽和蒸気圧は、下記の方法で測定したものである。
【0022】<23℃における飽和蒸気圧の測定>ヘツドスペ―スボトル(30ml)に、各実施例および比較例で用いた主モノマ―を2ml取り、25℃、40℃、60℃、80℃、100℃の温度条件で、それぞれ15時間加熱した。その後のガス濃度をガスクロマトグラフイ―により求め、検量線を作製した。この検量線から23℃における飽和蒸気圧を求めた。
【0023】実施例1ラウリルメタクリレ―ト(23℃における飽和蒸気圧0.47×10-3mmHg)190部、アクリル酸10部、酢酸エチル200部、アゾビスイソブチロニトリル0.4部の混合溶液を、60℃で10時間重合して、ポリマ―溶液を得た。ポリマ―の重合率は、99.2重量%であつた。
【0024】つぎに、このポリマ―溶液に、ポリマ―100部に対し多官能イソシアネ―ト化合物〔日本ポリウレタン(株)製の商品名コロネ―トHL〕2部を添加して、感圧性接着剤溶液を得た。この溶液を、厚さが25μmのポリエステルフイルムの片面に、乾燥後の厚さが50μmとなるように塗布し、100℃で5分間乾燥して、感圧性接着テ―プを作製した。
【0025】実施例2イソミリスチルアクリレ―ト(23℃における飽和蒸気圧0.33×10-3mmHg)194部、アクリル酸6部、酢酸エチル200部、アゾビスイソブチロニトリル0.4部の混合溶液を、60℃で10時間重合して、ポリマ―溶液を得た。ポリマ―の重合率は、99.7重量%であつた。
【0026】つぎに、このポリマ―溶液に、ポリマ―100部に対し多官能エポキシ化合物〔三菱瓦斯化学(株)製の商品名テトラツドX〕0.2部を添加して、感圧性接着剤溶液を得た。この溶液を用いて、以下実施例1と同様にして、感圧性接着テ―プを作製した。
【0027】比較例1イソデシルメタクリレ―ト(23℃における飽和蒸気圧5.1×10-3mmHg)190部、アクリル酸10部、酢酸エチル200部、アゾビスイソブチロニトリル0.4部の混合溶液を、60℃で10時間重合して、ポリマ―溶液を得た。ポリマ―の重合率は、99.8重量%であつた。
【0028】つぎに、このポリマ―溶液に、ポリマ―100部に対し多官能イソシアネ―ト化合物〔日本ポリウレタン(株)製の商品名コロネ―トHL〕2部を添加して、感圧性接着剤溶液を得た。この溶液を用いて、以下実施例1と同様にして、感圧性接着テ―プを作製した。
【0029】上記の実施例1,2および比較例1の各感圧性接着テ―プについて、下記の要領で、接着力、保持力および臭気性を調べ、その性能を評価した。結果を、後記の表1に示す。
【0030】<接着力>20mm幅に切断した感圧性接着テ―プを、清浄なステンレス板に2Kgのロ―ラ―1往復で貼り合わせ、30分放置後、300mm/分の引張速度で23℃の雰囲気下、180度剥離接着力を測定した。
【0031】<保持力>感圧性接着テ―プを、10mm×20mmの面積でベ―クライト板に貼り合わせ、40℃で20分放置したのち、続けて荷重500gで測定を開始し、1時間経過後からの1時間でのずれ距離を求めた。
【0032】<臭気性>感圧性接着テ―プを、23℃の雰囲気下に放置し、その臭気性を下記の5点法で評価した。
5点:全く臭気なし4点:ほとんど臭気なし3点:臭気あり2点:やや強い臭気あり1点:かなり強い臭気あり
【0033】
【表1】


【0034】上記の表1の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜2の感圧性接着テ―プは、接着特性を満足し、かつ臭気性の低いものであるが、比較例1の感圧性接着テ―プは、臭気性の点でかなり劣ることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 23℃における飽和蒸気圧が2.6×10-3mmHg以下で、アルキル基の炭素数が11〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主モノマ―とするポリマ―を含んでなる感圧性接着剤組成物。
【請求項2】 ポリマ―中の未反応モノマ―含有量が10重量%以下である請求項1に記載の感圧性接着剤組成物。

【公開番号】特開平6−122859
【公開日】平成6年(1994)5月6日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−297855
【出願日】平成4年(1992)10月9日
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)